第7章 「自然のめぐみ」を守り活かすための取り組み

第7章 「自然のめぐみ」を守り活かすための取り組み
施策目標 3-1:森林・農地等の緑を守り育てる
<本目標の内容>
本市内の緑地(森林・農地)の面積が、約 40 年間で 10%減少している(P.14 表 3-2②を参照)
ことを受け、山なみに沿って広がる斜面森林をはじめとした、本市に残された緑環境が保全される
状態をめざします。
人の手が加わることにより保存される植林地・農地等については適切な管理による保存をめざし、
まちなかの緑化も推進します。
これらの取り組みを、森林浴・散策など人の健康維持、自然環境教育、観光に活かすことができ
るような状態をめざします。
○ 達成度の参考指標:森林面積、農地面積
<施策の方向>
① 自然林の保全・育成
• 自然に近い植生を保全する。
• 植林を行う際には、自然に近い植生を植えることによって、自然林化を進める。
② 植林地・農地の管理・活用
• 農地において、減農薬・減化学肥料栽培を進める。
• 植林地において、松の病害の予防など、適正な管理を図る。
• 森林管理 NPO*などボランティアの活用による森林の保存を推進する(重点プロジェクト
③:P.57 を参照)
。
• 植林地の潜在自然植生*への転換を図る。
• 市民・市外在住者への貸し農園制度をつくる。
③ まちなかの緑化
• グリーンバンクや樹の譲渡制度による樹木の活用を進める。
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<主体別の取り組み>
市
• 植林地の管理の必要性や自然林の重要性についての啓発活動を行う。
• 植林を行う際には、自然に近い植生を植えることによって、多様な動植物が生息できるように自
然林化を進める。
• 銀杏、桜、紅葉並木など、テーマを明確にした街路の整備を行う。
• 市民の参加による自然環境調査を実施する。
• 農業の振興を図るとともに、遊休農地の活用について検討する。
• 遊休農地を借り上げ、貸し農園を整備する。
事業者
• 開発事業区域内での緑化や、開発により失われた緑地の復元を進める。
• ホテル・旅館の庭の保存を行う。
• 建築物の屋上の緑化や、
(ツタなどによる)壁面の緑化を行う。
• ゴルフ場や農地などにおいて、減農薬・減化学肥料での栽培などの取り組みを進める。
• 農家は、遊休農地の活用法として、農地の貸し農園への転化などについて検討する。
市民
• 各家庭で花づくりや庭の緑化に努める。
• ボランティアとして、森林の保存や自然環境調査活動に参加する。
• 貸し農園制度を利用する。
• 庭園の保存を行う。
観光客等
• 森林保存のボランティア活動に参加する。
▲ 市内児童のみかん狩り体験
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施策目標 3-2:海・川・水資源を守り育てる
<本目標の内容>
本市の山に降った雨は、河川を通じて美しい海へと流れます。また、雨の一部は地下に浸透し、
地下水となって、飲み水・生活用水に活かされ、温泉となって本市の観光産業を支えています。
今後とも、生活排水の適正な処理を推進することによって、水循環が健全に保たれるよう努めま
す。
また、温泉の湧出量が減少している(P.12 を参照)ので、温泉を保護するために水源地の保全や
雨水の地下浸透などを進めます。
○ 達成度の参考指標:生活排水クリーン処理率
注)
、温泉湧出量、河川・海の水質
注)生活排水クリーン処理率:生活排水を直接公共用水域に放流せず、下水道への接続などの適正
な処理がなされるようにしている世帯の市内全世帯に占める比率。
「(下水道接続世帯数+合併処理浄化槽接続世帯数)÷市内全世帯
数×100」という式で求められる。
<施策の方向>
① 河川・海の水質保全のための排水の適正化
• 公共下水道の整備・普及を進める。
• 生活排水対策(合併処理浄化槽・集中処理浄化槽の普及など)を進める。
• 事業所からの排水に関して、適正な処理を進める。
② 自然海岸・川べりの保全
• 市民が海や川とふれあえる場所として、自然海岸や川べりを保全する。
• 河川改修にあたって、多様な生物が住めて川遊びもできるような多自然型工法を採用する。
③ 温泉・水資源の保全
• 水源涵養地である山林・緑地を保全する。
• 温泉源泉を保全する。
• 透水性舗装や浸透桝の設置などによって雨水の地下浸透を進める。
• 雨水の貯留、有効利用を行う。
• 節水コマなど節水型設備の導入を進める。
• 一度使用した水の再利用を行う。
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<主体別の取り組み>
市
• 公共下水道の整備・普及を進める。
• 家庭用浄化槽の管理方法について指導を行う。
• 事業者に対する排水の適正管理の指導を行う。
• 公共施設からの排水を適正に管理する。
• 公共施設・市有地において、雨水の利用・地下浸透・一度使用した水の再利用を推進する。
• 開発区域においては、生活排水の処理・雨水地下浸透などに関する指導を行う。
• 公共工事において、雨水の地下浸透を促進する(透水性の高い素材の使用、浸透ますの設置、保
水池の確保などを検討する)
。
• 河川・海の自然浄化能力の維持・回復を進める。
• 排水の適正化や水資源の保全のための啓発活動を行う。
事業者
• 公共下水道整備地域においては、下水道管に接続するよう努める。
• 公共下水道整備区域外においても、事業所からの排水が河川・海の水質を汚濁することのないよ
うな処置を講ずる。
• 事業活動の中で節水を心がける。
• 事業活動の中で、一度使用した水を積極的に再利用する。
• 敷地内に降った雨の利用・地下への浸透を促進する。
市民
• 公共下水道整備地域においては、下水道管に接続するよう努める。
• 公共下水道整備区域外においても、合併処理浄化槽・集中処理浄化槽で生活排水を処理するよう
努め、単独処理浄化槽・汲み取り便所の場合でも適切な管理を行うことで、生活排水が河川・海
の水質を汚濁することのないよう努める。
• 側溝・河川・海岸などをごみや生活排水で汚さない。
• 洗濯時などに使用する洗剤を合成洗剤から石鹸に切り替え、使用量をできるだけ抑える。
• 日常生活の中で節水を心がける。
• 風呂の残り湯を洗濯に利用するなど、一度使用した水の再利用を行う。
• 敷地内に降った雨の利用・地下への浸透を促進する。
観光客等
• 側溝・河川・海岸などをごみなどで汚さない。
• 旅館・ホテル・勤務先などにおいて、節水を心がける。
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施策目標 3-3:多様な生き物と共存する
<本目標の内容>
本市には国・県・市によって指定された天然記念物の樹木のほか、川には豊かな自然環境の中で
しか生きられない多様な動植物が生息しています。それらの動植物や、その生息環境を守ることで
生態系の保全をめざします。
● 数値目標:本市の動植物の生態系や種の保全を図るため、
「大切にしたい生き物リスト*」
をつくり、その中の生物種の種類・個体数を保つ
<施策の方向>
① 動植物の生息環境の保全
• 動植物の生息環境の汚染を防ぐ。
• 自然林の育成により、生息環境の増加を図る。
• ビオトープ(動植物の生息空間)をつくる。
• 海岸や河川の改修・護岸工事にあたって、多自然型工法*を採用する。
• 樹林地のネットワーク(樹林地を孤立させない開発方式の採用)の形成を進める。
• 市街地の緑化を進める。
② 動植物の保護
• 野生動植物の生息状況を把握し、大切にしたい生き物リストを作成するなど、動植物に関す
る調査を行う。
• 希少種(メダカなど)の保護を行う。
• 外来種に関する調査を行い、在来種の保護を行う。
• 建築物などの開発時に際し、動植物への影響が最小限となるよう努める。
• 野生生物の保護を行う。
▲ 本市内の水生生物調査で確認されたサワガニ
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<主体別の取り組み>
市
• 市民と協働して、野生動植物の生息状況に関する調査研究や情報の収集に努める。
• 上記調査結果を活かして、野生動植物保護のために鳥獣保護区対象地域の見直しなどを行う。
• 天然記念物や指定保存樹木の指定を行う。
• 植林に際して多種多様な植生を植えて自然林に近い状態を創り出すことなどによって、
自然林面
積の増加を図る。また、補助などを行い、そういった活動の促進を図る。
• 希少な生物種が確認された地区や特に自然度の高い山林に関しては、保全に努める。
• 河川等の整備にあたって、多様な生物が生息できるような多自然型工法の導入に努める。
• 野生生物の保護に努める。
• 野生動植物及びその生息環境の保全の重要性に関する啓発活動を行う。
事業者
• 野生動植物及びその生息環境の保全や適正な管理に協力する。
• ゴルフ場や農地において使用される農薬の減量化を図る。
市民
• 野生動植物及びその生息環境の保護・管理に協力する。
• 外来種の動植物を不用意に自然に放さない。
観光客等
• 野生動植物及びその生息環境の保護・管理に協力する。
▲水辺の生き物
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