Structured Finance

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格付基準レポート
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スザンヌ・ミストレッタ
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スチュワート・ジェニングス
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黒田 篤
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本レポートは、同名の 2009 年
9 月 30 日付レポートに取って
代わるものである。
SF の基本点
 法的構造
 資産の質
 信用補完
 財務ストラクチャー
 オリジネーターとサービ
サーの質
ストラクチャード・ファイナンスの
包括格付基準
概要
ストラクチャード・ファイナンス(SF)案件の投資家は、その元利払いを主として
案件の担保となる裏付資産プールに依拠している。法人であるオリジネーターの信
用リスクから資産を有効に隔離することによって、SF 証券がオリジネーター・レベ
ルの損失から十分に保護される場合、SF 証券はオリジネーター自体の格付を上回る
高い格付を取得することが可能となる。案件の契約条項に従って、投資家に対して
全額支払が履行されるか否かを評価するために、フィッチ・レーティングス
(フィッチ)では SF の基本となる 5 つの観点である法的構造、資産の質、信用補完、
財務ストラクチャーならびにオリジネーターおよびサービサーの質を重視している。
5 つの観点のすべてが、案件の信用プロファイルを形成し、案件の格付意見を決定す
るうえでの主要な要素となっている。
資産の質を評価するにあたって、フィッチでは、資産プールのオリジネーター、
サービサーまたはアセット・マネージャーが、関連する案件の契約書類に従って責
務を果たす能力について分析を行うが、これは当該案件当事者が裏付担保のパ
フォーマンスに影響を及ぼすためである。また、案件の財務ストラクチャーを評価
するにあたって、デリバティブ、銀行口座および金融保証の提供といった、カウン
ターパーティに対する依存度を分析する。これは、カウンターパーティに対する依
存が、証券化された資産プール以外の信用エクスポージャーを表すこととなるため
である。裏付けとなる組織や保証提供者の信用力に依拠するような SF 案件の信用リ
スクは、ストラクチャー上のリスク緩和策が存在しない場合、通常、当該組織の信
用力にリンクすることとなる。フィッチでは、案件に格付を付与した後、当該証券
が全額償還する、または格付が取り下げられるまで、フィッチのサーベイランス・
プロセスを通じて、案件のパフォーマンスをモニタリングすることとなる。
ここで論じられる原則は、住宅ローン担保証券(RMBS)、商業用不動産ローン担保
証券(CMBS)、資産担保証券(ABS)、ストラクチャード・クレジット(SC)案件
を始めとする SF の資産クラス全体に適用されるものである。また、本レポートで説
明する格付基準は、すべての SF 案件に適用される包括的な枠組みを提供するもので、
フィッチが公表する資産クラス個別の詳細な格付基準を補完するものである。
フィッチでは、当該原則のうち適用できない部分がある場合には、必要に応じて、
資産クラス個別の格付基準レポート上で、言及または説明することとする。
法的構造
SF 案件の特徴は、裏付資産の原保有者即ち「オリジネーター」の企業信用リスクか
らの裏付資産プールの隔離、即ち「切り離し」にある。その目的は主に、案件の主
な信用リスクを、オリジネーター固有の信用リスクではなく、資産プール自体の信
用リスクに関連付けることにある。これは、オリジネーター/セラー(売り手)の倒
産時に、案件の裏付資産とその収益が破産財団等の一部に含まれないように、オリ
ジネーターの保有資産のうち特定可能な具体的プールを特別目的会社(SPV)に売却
することによって、通常、実現される。
SPV は、通常、債務を発行して、その発行代わり金を、資金生成資産(または資金
調達を伴うシンセティック案件では担保資産)の購入資金として充当する。SPV で
は、当該資産から得た資金を債務の利払い、または多くの場合、SPV の債務の全額
もしくは一部の弁済に充当する。例外として、債務を発行せずに、資金調達を伴う
ことなく参照資産に対するエクスポージャーを提供するシンセティック取引も存在
する。
www.fitchratings.com / www.fitchratings.co.jp
2010 年 8 月 16 日
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SPV は、その倒産による案件の破綻リスクが、様々なストラクチャー上の特性に
よって僅少とみなされることから、「倒産隔離」されていると評されることが多い。
SPV に関する契約上の制約によって、SPV に遂行可能な業務は制限されている。SPV
が案件とは無関係の別の業務を遂行し得ることにより生じる信用リスクから、案件
は可能な限り保護されるようになっている。証券化される裏付資産プールのオリジ
ネーターとは異なり、SPV は事業の運営を意図していないため、例えば他の債務を
負うことができない。その名称が示唆するとおり、SPV は、通常、SF 債券の発行と
いう特別で限定された目的のために設立され、オリジネーターからは法的に分離独
立した存在となっている。そのため、SF 案件に関連するリスク要因が、主に SPV に
移転された資産プールに限定されることから、SPV のパフォーマンスは、企業の信
用力と比較して予測しやすくなる。
フィッチでは、様々な法的形態をとる SPV を用いた多様な案件に対して、格付の付
与を検討するように求められる。SPV の法的形態は、それが設立された法域におけ
る現地法によって決まり規制されることとなる。通常、SF 案件における SPV は、
(設立地の現地法に従い)有限責任会社、信託、有限責任パートナーシップまたは
その他の法人組織の形態をとる。倒産隔離に関するフィッチの分析や適用される原
則については、フィッチの SPV に関する格付基準レポート上で詳述されており、
フィッチのウェブサイト www.fitchratings.com から入手可能である。
法律意見書と案件関連書類のレビュー
SPV の設立関係書類ならびに特定の案件に関する文書および法律意見書は、オリジ
ネーターの倒産リスクからの資産の分離度合いや個々の案件におけるストラク
チャーの堅牢性、その結果として案件が予定どおりに機能するか否かを評価するう
えで重要である。
フィッチでは、案件関連書類
をレビューする。法律意見書
は、案件書類が適法かつ有効
で、法的拘束力があり強制執
行可能であることを含む案件
の法的側面について言及する
ことが、想定される。
フィッチのアナリストは、案件の主要な関連書類をレビューし、当該関連書類が
フィッチに提示されたとおり案件およびそのストラクチャーを示しているかを判断
する。アナリストは当該関連書類の内容について質問し、または関連書類上の特定
条項が格付分析に与える影響について説明する場合がある。しかしながら、フィッ
チが格付する SF 商品の設計や案件の関連書類の内容について、アナリストが提案ま
たは推奨することはない。
フィッチでは、関連する各 SPV や他の各案件当事者が設立される法域の法律、案件
の関連書類の準拠法、資産に適用される法律(資産売却の履行強制可能性を含む)
を担当する案件の弁護士が発行する法律意見書の写しを受領することを想定してい
る。関連する法律の一部または全部が異なる可能性があることから、フィッチでは
法律意見書がすべての関連法を網羅することを想定している。
フィッチでは法律意見書のレビューを行うが、当該意見書において、案件の関連書
類が適法かつ有効で、法的拘束力があり強制執行可能であるなど、案件の法的観点
が言及されていることを想定している。フィッチでは、倒産手続の包括的な適用除
外が当該法律意見書上で記載されることではなく、各当事者の倒産が当該法律意見
書に影響を及ぼす範囲内において、かかる影響が案件担当弁護士によって特定され
説明されることを想定している。
フィッチが想定し得る弁護士からの法律意見書の典型例は次のとおりである(但し、
以下がすべてを網羅しているわけではない)。

資産は、有効に SPV に移転され、(オリジネーターが倒産した場合でも)オリ
ジネーターの破産財団等には属さない。

いかなる担保権も対抗要件を具備し、適法かつ有効で、法的拘束力があり、執行
可能であり、該当する場合には、関係当事者のために第一順位となっている。

オリジネーターが倒産した場合、SPV またはその資産がオリジネーターに実質的
に連結されることはない。
さらにフィッチでは、法律意見書が例えば相殺権や消費者保護法の影響といった案
件特有の法的問題に関しても言及することを想定している。加えて、フィッチは税
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ストラクチャード・ファイナンスの包括格付基準
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務意見書の受領も想定している。フィッチでは、案件のストラクチャーに課税され
ないことの確認または課税される場合にフィッチのキャッシュ・フロー分析で考慮
する要素としての課税額を算定するため、税務意見書を受領することを想定してい
る。
案件の担当弁護士が、「明解な」意見を記述できない論点がある場合には、フィッ
チは、当該弁護士が残存する法的リスクを特定して説明することを想定している。
フィッチは、これにより当該リスクを妥当と考えられる範囲内で、信用分析に織り
込むことが可能となる。事業会社とは異なり、SPV は設立形態や案件の関連書類に
よって制約されているため、キャッシュ・フロー不足や資産、証券または案件のス
トラクチャー上の問題を解消するための借入や資金調達ができない。単一または複
数の法的リスクが残る場合、フィッチは当該証券を格付できないことがある。
資産の質
SF 案件は幅広い金融資産を担保とする。住宅や商業不動産を担保とするモーゲー
ジ・ローン、クレジット・カード債権や自動車ローン等の消費者向け債権、企業向
けローンや証券が、最も一般的な証券化対象資産である。フィッチでは対象となる
SF 商品を、RMBS、CMBS、ABS、債務担保証券(CDO)の 4 つの主要セクターに大別
している。さらにこれらのセクターは様々なサブセクターに分けられる。例えば、
ABS セクターには消費者資産(自動車ローン、クレジット・カード、学資ローン
等)や商業資産(航空機リース、フランチャイズ・ローン、事業活動によって創出
される将来キャッシュ・フロー等)に加えて、資産担保コマーシャル・ペーパー
(ABCP)コンデュイットが含まれる。
フィッチでは、通常、信用特
性分析によって、状況が現在
の想定範囲内に留まった場合
に最も蓋然性が高いと思われ
る結果を反映した予想損失を
導出する。これは一般にベー
ス・ケース・シナリオと呼ば
れる。
裏付けとなるローンや担保資産からの元利払いは、SF 案件の格付された債券の元利
払いに充当される。フィッチでは、通常、裏付資産の信用特性を分析し、フィッチ
の現時点の予測に従って蓋然性が高いと思われる結果を反映したシナリオ上で予想
損失を導出する。これは、通常、ベース・ケース・シナリオと呼ばれる。ベース・
ケース・シナリオは資産の損失のみを表すものであり、損失を減少させ得る案件上
の構造特性を反映していない。ベース・ケース・シナリオ上の予想損失に対する
フィッチの見解は、通常、以下の手法のうち 1 つを用いて導いた評価に基づいて、
格付委員会でまとめられる。

フィッチが開発した分析モデルからのアウトプットを用いて、ローン・レベルの
特性に基づき、個別ローンに対するデフォルト確率と損失度を割り当て、フィッ
チの格付委員会における議論の基礎とする。裏付資産プールにおける損失率は、
保険数理的な確率モデルを通じて算出される。本手法は、通常、RMBS や米国の
マルチボロワー型 CMBS 案件の分析に用いられる。

格付委員会が予想損失を導出するために、オリジネーターの過去のパフォーマン
スに基づく資産ポートフォリオの分析を行う。本手法は、通常、消費者向け債権
を裏付けとした ABS 案件の格付に用いられる。

モンテカルロ・シミュレーションを用いてポートフォリオの累積損失率を見積も
る。すなわち、確率論的なプロセスを非常に多く繰り返すことで、裏付ポート
フォリオの信用リスクの挙動を表そうとするものである。本手法は相関がある企
業エクスポージャーからなるポートフォリオに対するフィッチの分析モデル上で
使用され、通常は、CDO や欧州 CMBS セクターの分析に用いられる。個々のシ
ミュレーション・モデルには、異なる調整やストレスが組み込まれる場合がある。
例えば、欧州 CMBS の分析では、賃料収入の低下やキャップ・レートにはストレ
スが付加された値が用いられることが多い。
フィッチの「Bsf」格ストレス・シナリオに通常相当するベース・ケースの導出に加
え、より厳しい想定のもとで予想損失が生成される。「AAAsf」格や「AAsf」格と
いった、高位の投資適格カテゴリーに格付された債券の予想損失が、低い確率かつ
厳しいストレス・シナリオにおける損失となるよう、「Bsf」格より高い格付カテゴ
リーになるにつれて、予想損失は次第に高くなる。フィッチでは、将来を見据えた
格付方針をとり、比較的高い格付のシナリオにおいては、景気循環(through the
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cycle)を考慮に入れた格付手法、比較的低い格付のシナリオでは予想をベースとし
た手法を採用している。即ち、高位の格付シナリオにおいては、予想損失が、長期
的に安定した蓋然性の低いストレス・シナリオを反映することを想定している一方
で、低位の格付のシナリオでは、一時点における裏付資産パフォーマンスの予想と
より密接に関連する想定を反映している。フィッチの「AAAsf」や「AAsf」格付は最
も低いまたは非常に低いデフォルト・リスクを表すもので、予見できる事由によっ
て返済能力が悪化する可能性が低いことを示している。
高位の格付カテゴリーにおける予想損失は、ベース・ケースの予想損失に対する倍
率で示されることが多い。例えば、ベース・ケース・シナリオ上、資産プールのう
ち 2%の損失が想定されるものの、「AAAsf」格付のシナリオでは、担保資産プール
は、ベース・ケース・シナリオの 4 倍の損失、即ち担保資産プール残高の 8%の損失
が想定される場合がある。
一部の SF 案件では、分散した
資産プールに依存せずに、リ
スクが裏付となる組織や保証
提供者の信用リスクにリンク
する案件や、集中した資産
プールが裏付資産となる案件
がある。
大多数の SF 案件は分散した資産プールを裏付けとしているが、例えばファースト・
トゥ・デフォルト・バスケットのように、より集中したプールに裏付された案件も存
在する。さらに、案件の中には信用力が資産プールに完全には依存せず、裏付けとな
る組織や保証提供者に依存する案件もある。そのような案件における資産の質は、裏
付けとなる組織や保証提供者に対する格付に由来することが多い。裏付けとなる組織
には、単一の企業、金融機関、地方自治体、ソブリン、金融保証会社などが含まれる。
単一の組織や分散した資産プールではなく、幾つかの大口のエクスポージャーから
なる集中したプールに裏付されるストラクチャーの場合には、過去のデフォルト・
データとの関連性が低下する場合がある。これは、当初は分散したプールであって
も償還期日に近づくにつれて、資産集中が進行することにより生じることもある。
フィッチでは一定の決定論的なストレスを用いて、資産プールが当該大口エクス
ポージャーからのデフォルト・リスクに過度にさらされることがないことを確認す
る。デフォルトを想定するエクスポージャーの数は、目標とする格付水準によって
異なることとなる。
格付委員会のインプット
格付委員会は、SF 格付に関するすべての重要な決定を行う。格付委員会は、案件の
格付アナリストおよび SF グループのシニア・メンバーから構成される。発行体、
サービサーまたは業種に関連する知識を有する、金融機関や事業会社等他の債券セ
クターを担当するアナリストが格付委員会に参加する場合もある。格付委員会には、
分析を行う格付チームから独立したシニア・メンバーが最低一名は含まれなくては
ならない。
格付委員会は、アナリストから提示された格付意見案が案件に関連するリスクを反
映しているか否かを判断する。これには、裏付資産プールに対する予想損失の評価
および既述の基本的論点がすべて考慮されているか否かの確認が含まれる。格付委
員会が、既定のモデルや方法論では必ずしも捕捉し得ない案件特有の定性的要因に
ついて討議して、当該要因が格付意見に織り込まれるようにする場合もある。格付
委員会においては、各債券に付与される妥当な最終格付が決定される。
主要な格付決定要因が追加的なストレスを受けやすい場合、格付に対する影響度を
示すために、フィッチのアナリストによって感応度分析も実施される。感応度分析
は、担保資産のパフォーマンスや予想損失が各格付カテゴリーに応じたストレス想
定よりも悪化した場合における債券格付変更の脆弱度を示すものである。
信用補完
信用補完には、劣後部分、超
過利息、超過担保から提供さ
れる内部信用補完と、第三者
からの金融保証や準備金勘定
の設定による外部信用補完が
ある。
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信用補完は、裏付資産プールの損失から債券保有者を保護する仕組みであることから、
SF 案件の重要な要素となっている。各債券に対するフィッチの格付は、当該債券格付
に対応する格付ストレス・シナリオ上でフィッチが想定する裏付担保資産プールのデ
フォルト時損失に対して十分に耐え得る利用可能な信用補完を、当該債券が有してい
るか否かを反映している。信用補完には、優先劣後構造、超過利息もしくは超過担保
(O/C)等の内部信用補完もしくは金融保証を行う第三者の保証提供者、準備金勘定、
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外部エクイティまたはこれらを組み合わせた外部信用補完がある。クレジット・リン
ク型の SF 案件は、通常、追加的な信用補完を有することなく、当該案件の格付は裏
付けとなる組織や保証提供者に依存する。
優先劣後構造
優先クラスと劣後クラス(優先/劣後)の単純な 2 クラスのストラクチャーでは、資
産プールに生じた損失のすべてが、劣後クラスの残高がゼロになるまでまず劣後ク
ラスに割り当てられるため、劣後クラスが優先クラスに信用補完を提供することと
なる。通常、優先トランシェに対する元利金が優先的に支払われ、残余のすべての
キャッシュが劣後トランシェに支払われる。劣後債券は、裏付担保資産の実現損相
当額が月次で減額される、または回収額が、支払期日の到来した弁済額に満たない
場合には、不足を被る可能性がある。優先債券については、信用補完の大きさが
「AAAsf」格のストレス・シナリオから導かれた予想損失に見合っており、期日どお
りの利払いが可能であれば、「AAAsf」格取得の可能性がある。
SF 案件は、「AAAsf」格から「Bsf」格の範囲にわたる複数の優先/劣後クラスの階層
に切り分け(トランシェ)られることが多い。損失の割り当ては、通常、格付が最
下位のトランシェであるジュニア・トランシェから開始される逆順となる。ジュニ
ア・トランシェに対する保護としては、超過担保(O/C)、超過利息、残高がゼロに
なるまで損失が第一に割り当てられる無格付のクラス、第一の損失填補用に発行時
に(または月次超過利息によって)十分に確保される現金準備金勘定のいずれかが、
通常、用意される。ジュニア・トランシェの格付は、当該格付カテゴリーの損失シ
ナリオを基に、すべての信用補完またはその他の形態の保護の妥当性を反映する。
通常、最上位トランシェが利用可能な保護は、ジュニア・トランシェが利用可能な
信用補完および劣後となるジュニア・トランシェ自体である。
超過利息
債券に利用可能な劣後部分の規模・金額が、当該格付のストレス・レベルにおける
フィッチの予想損失を下回るような場合であっても、超過利息(超過スプレッドと
もいう)が損失を填補する追加的信用補完として利用できる場合には、債券がかか
る格付を取得可能な場合がある。超過利息とは、各支払期日に債券保有者に対して
必要額をすべて支払った後の残余の収入で、通常、資産プールの正味加重平均クー
ポン(net WAC)と発行債券の加重平均利率に案件上上位に位置する経費率を加え
た合計との差に相当する。発生する超過利息額は、非常に大きくなることもあり、
案件の要項に従って、当該支払期間における裏付資産プールの実現損および/または
延滞額の残高を上限として、各支払期間の債券保有者に対する元本償還に充当され
得る。
信用補完を提供する超過利息の価値は、資産クラスやストラクチャーによって大幅
に異なり、デフォルト、償却または損失のタイミング、裏付資産プールの元本返済
率および金利の変化等に大きく左右される。超過利息は、「活用するか喪失するか
(use it or lose it)」という形でのみ利用可能な場合が多く、従って、一定期間内
に損失が実現しなければ、余剰キャッシュは利用可能であっても放出される。この
場合、当該キャッシュの信用補完としての価値はゼロとなる。反対に、期間中に損
失が発生しても、元本償還に充当するための余剰キャッシュが存在しない場合もあ
る。各期間に使用されない余剰キャッシュが、準備金勘定に留保すなわち「トラッ
プ」されるのではなく、放出される場合、デフォルトや損失のタイミングが非常に
重要となる。
超過利息による信用補完としてのメリットを測るうえでは、裏付資産プールの元本
返済も重要な要素となる。高い元本返済率は、現在および将来における損失を填補
するために利用可能な月次超過利息額を減少させ得る。相対的に高クーポンの担保
資産において比較的速いペースで償還が進行またはデフォルトが発生することに
よって、担保からの受取利息が減少、即ち WAC が圧縮され、超過利息が減少するこ
ともある。また、債券の利息が裏付担保資産の net WAC よりも速いペースで上昇す
る場合にも、超過利息は減少する。例えば、債券の金利が変動金利指標に基づいて
いるのに対して、裏付資産が固定金利の支払である場合やレバレッジが解消される
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につれて、金利のミスマッチは生じ得る。通貨のミスマッチについても、未ヘッジ
の範囲内で、超過利息に影響を与え得る。
フィッチは、デリバティブ
が内包されている、または
超過利息への依存度が高い
場合、財務ストラクチャー
の評価にキャッシュ・フ
ロー分析を行う。
これらの要因が超過利息の利用可能性に直接的かつ重要な影響を与えることから、
フィッチでは超過利息を信用補完として利用する各 SF 資産クラスに対して、キャッ
シュ・フロー分析を実施する。フィッチでは、資産クラス個別のキャッシュ・フ
ロー・モデルを開発すると共に、損失発生のタイミング、元本返済、金利および各
資産固有の他の要因に関する想定を行う。各資産クラスにおける格付分析上で超過
利息が考慮される度合いは、各ストレス・シナリオで利用可能と想定される超過利
息額によって決まる。キャッシュ・フロー格付基準および各資産タイプに適用可能
な想定は、フィッチのウェブサイト www.fitchratings.com から入手可能である。特
定の国におけるフィッチの金利想定に関する基準もウェブサイトから入手可能であ
る。
準備金と超過担保
案件の中には、上述の形態の代替または追加として、準備金または超過担保(O/C)
を信用補完として用いる場合がある。準備金は発行時に(例えば現預金または劣後
ローンによって)資金拠出され得る。同様に、超過担保についても発行時において、
案件の裏付けとなる資産価値が、(例えば無格付のジュニアまたは劣後クラスの証
券によって)格付された発行証券の価値を上回ることで創出され得る。案件の仕組
みの中には、超過利息が、各支払期間に損失を填補した後、放出されないものもあ
る。その代わりに、キャッシュは準備金への積立て(または上積み)や債券の元本
償還に充当される。残余の超過利息は、一定額に到達するまで現金準備金に積み増
される場合もある。準備金が目標額に達すると、未使用部分の超過利息は案件から
放出される。準備金の残高が目標額を下回る場合、超過利息によって再び補充され
ることとなる。
案件によっては、損失填補後の残余の超過利息が債券の元本償還に充当される。利
息を元本償還に充当することによって、債券の未償還元本残高は、担保を追加創出
する裏付資産プールの場合と比較して、速いペースで減少する。創出された超過担
保は、超過利息によって吸収されなかった損失を填補するために、使用可能となる。
プール残高に対する一定の割合で示される目標超過担保額が、多くの場合設定され、
その目標額に到達した場合には、当該期間における未使用超過利息が、案件から放
出されることとなる。
未使用超過利息を直ちに放出
しない案件や発行時から準備
金や超過担保を有する案件
は、放出する特性を有する案
件に比べて、通常、劣後クラ
スが小さい。
あらゆる種類のストラクチャーにおける超過利息の利用可能性評価において、
キャッシュ・フロー分析および想定は同じである一方、発行時に準備金もしくは超
過担保を備えた、または未使用の超過利息をトラップする案件は、外部に放出する
案件に比して、通常、劣後クラスが小さくなる。これは、各格付シナリオで利用可
能な超過利息を減少させるといったフィッチの格付ストレスにもかかわらず、
キャッシュが準備金として留保される、残存する債券の弁済に用いられて超過担保
を形成するといった場合、フィッチの分析上、このような「ハード」な信用補完額
に対してより重きが置かれるためである。
第三者の保証
第三者による損失保護を伴う
SF 案件の格付意見には、裏
付資産プールに関連する主要
信用リスクに加えてカウン
ターパーティ・エクスポー
ジャーから生じるリスクが反
映される。
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SF 案件には、外部のカウンターパーティから信用補完が提供される場合がある。損
失保証を行うカウンターパーティは、支払期日を迎えた裏付担保資産の元利金と実
際に受領したキャッシュとの差額、即ち実現損相当額を SF 債券保有者に支払うこと
となる。SF 債券保有者への支払が完全に履行されることを確保するうえで、カウン
ターパーティによる当該支払義務が重要となる。そのため、第三者による損失保護
が組み込まれた SF 案件に対する格付意見には、裏付資産プールに関連する主たる信
用リスクに加えてカウンターパーティ・エクスポージャーに関連するリスクが反映
される。
外部信用補完に関連する主要リスクは、カウンターパーティの支払義務に対する SF
案件の依存度である。この外部の関係当事者に対する依存は、事業体であるカウン
ターパーティに悪影響を及ぼし得る固有リスクからの SF 案件の隔離を弱めることと
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なる。しかし、SF 案件には、通常、カウンターパーティの信用力への依存とエクス
ポージャーを最小化するためのストラクチャー上の手当てが含まれている。フィッ
チでは、SF 案件のカウンターパーティ・リスクに関する格付基準に従って、当該ス
トラクチャー上の手当てを分析する。詳細については、フィッチのウェブサイト
www.fitchratings.co.jp から入手可能なカウンターパーティ・リスクに関する格付基
準レポートを参照されたい。
案件をカウンターパーティから隔離するうえで、ストラクチャー上の手当てが十分
ではなく、カウンターパーティによる信用補完が、格付を維持するうえで重要であ
る場合、当該案件はカウンターパーティの信用力に依存する可能性があり、その場
合、当該案件に対する格付をカウンターパーティに対する格付から切り離すことが
できなくなるであろう。いわゆる「モノライン・ラップ」を提供する金融保証会社
がその一例である。この場合、金融保証会社のエクスポージャーを軽減するストラ
クチャー上の手当ては存在せず、当該案件は、通常、カウンターパーティの信用力
に依拠することとなる。フィッチでは、通常、案件に対して第三者保証を含めない
単独ベースでの格付付与も行うことで、案件の格付のカウンターパーティに対する
依存度を示すこととする。
財務ストラクチャー
劣後部分、超過スプレッド、
超過担保によって有格付トラ
ンシェに提供される信用補完
額は、通常、財務ストラク
チャーに影響されない一方、
資産プールから回収される元
本の分配方法は、債券ごとに
異なる。
優先・劣後クラスからなる SF 案件では、劣後クラスよりも優先クラスの元利払いが
優先される。しかし、通常「AAAsf」格が付与されるトランシェである最上位の優先
クラスは、償還期日や支払スケジュールが異なる複数の債券に分けられる場合が多
い。劣後部分、超過利息または超過担保を通じて提供される有格付トランシェのた
めの信用補完額は、通常、財務ストラクチャーには影響されない一方、資産プール
から回収される元本の分配方法は債券によって様々である。
様々なストラクチャーに対するフィッチの分析手法は、資産個別の格付基準レポー
トまたはキャッシュ・フロー格付基準レポートに説明されており、フィッチのウェ
ブサイト www.fitchratings.com から入手可能である。SF 案件において最も一般的な
ストラクチャーの種類については、以下で概説される。キャッシュ・フローのモデ
リングは各格付レベルにおける信用補完の妥当性を評価するうえで、当該案件特有
のストラクチャーを反映する。キャッシュ・フロー格付基準は、各格付レベルで適
用される多くのストレス想定を含み得る。ストレスには次のものが含まれる。

期限前返済(プリペイメント)に対する上方および下方ストレス

収入水準にストレスを与える裏付資産のクーポンの低下

デフォルトまたは損失の発生時期を前期または後期(またはその他のタイミン
グ)に集中

未ヘッジのエクスポージャーの重要性およびデフォルト資産に関するキャリー・
コストを評価するための金利ストレス

資産と負債における異なる金利基準に関する未ヘッジのエクスポージャーを評価
するためのベーシス・リスク・ストレス

未ヘッジの為替リスクに対するエクスポージャーを評価するための為替ストレス
適用されるキャッシュ・フロー・ストレスの範囲や性質は、関連する資産クラスや
種別および当該案件の財務ストラクチャーによって決まる。例えば、キャッシュ・
フローが内包されるデリバティブの契約条件に著しく依存している場合には、案件
に合わせた個別のストレスが適用されることもある。
プロラタ・ペイ方式の債券
プロラタ払いのストラクチャーにおいては、資産プールからの元利回収金が、各ト
ランシェに対してその残高比に応じて支払われることとなる。例えば、優先クラス
90%、劣後クラス 10%からなるストラクチャーにおいては、担保資産からの全受領
額の 90%が優先クラスに分配され、残りの 10%が劣後クラスに支払われる。資産セ
クターの中には、期限前返済やデフォルト・ローンおよび実現損といった予定外の
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元本については、全額を優先トランシェに対する支払に充当する一方、劣後クラス
に対しては予定元本回収分のみが比率に応じて支払われるものがある。当該ストラ
クチャーでは、劣後クラスが予定外の元本回収額の受領からロックアウトされるこ
ととなる。
予定外の元本回収金をすべて優先トランシェに分配することで、優先トランシェの
残高が劣後クラスに先んじて速く減少することとなり、劣後比率を上昇させる。通
常、数年間に固定されたこのロックアウトという特性は、担保のデフォルトの後期
集中または逆選択による損失から優先トランシェを保護することを意図したもので
ある。案件期間の終盤で、案件がストレス期に入った場合に、デフォルトの後期集
中が起こり得る。信用力が最も高い担保資産の期限前返済が進み、シーズニングが
進んだ資産プールの大部分が、信用力がより低くリスクの高い資産で占められる場
合に逆選択が生じることとなる。
シークエンシャル・ペイ方式の債券
シークエンシャル・ペイ方式に基づくストラクチャーでは、元本が優先順位に従っ
て償還され、最上位の優先債券がまず償還される。また、同順位内の債券が、償還
期日ごとに償還されるシークエンシャル・ペイ方式債券に分割されている場合があ
る。その場合、元本回収金のうち当該クラス分に分配された金額のすべてが、最も
早期に償還期日を迎える債券が全額償還されるまで、その弁済に充当されることと
なる。当初はプロラタ方式を採用していた債券が、主に裏付担保のパフォーマンス
に基づく一定のトリガーに抵触することで、シークエンシャル・ペイ方式に切り替
わる場合がある。
一括償還型の債券
期日一括償還型の債券には、各支払期間中は利払いのみが行われ、定期的な元本償
還はない。当該債券の元本は、社債と同じように、予定償還期日に一括償還される
か予定償還期日前の 6 ヶ月から 12 ヶ月の期間内に一括償還される。リボルビング期
間と呼ばれる利息だけが支払われる期間中は、裏付担保からの回収金が新たな債権
に再投資されることが多い。リボルビング期間は、裏付資産クラスによって異なる
が、予め期間が決定され、2 年から 30 年に亘る場合がある。リボルビング期間があ
る SF 案件は、通常、クレジット・カード債権、自動車ディーラーのフロアプラン・
ローンやホーム・エクイティ信用枠などのリボルビング資産を裏付けとしているが、
住宅ローンといった長めの資産を裏付けとする場合もある。
予定償還期日から法的償還期
日までの期間は、一括償還型
債券の格付ストレス・シナリ
オにおける回収元本の積立て
や分配に必要な時間に関する
フィッチの想定を反映する。
主にリボルビング期間の終期など一定の時期に、元本の特定勘定への積立てまたは既
定の分割償還スケジュールに従った債券の弁済が開始される。担保資産のパフォーマ
ンスの急激な悪化、低水準の期限前返済または再投資もしくは債権残高の維持が不可
能になる等の一定の事象の発生によって、早期償還事由に抵触する場合がある。その
場合、予定された積立開始日または予定償還期日前に、元本の積立てまたは分配が開
始される。全額償還は、通常、予定償還期日を基準としているものの、フィッチでは、
予定償還期日から通常は数年後となる法的償還期日までに元本が全額償還されること
を格付の対象とする。フィッチの格付分析は、デフォルト資産のワークアウト後の回
収分を含む元利回収金の分配が、法的最終償還期日までに債券が全額償還されるため
に十分であるか否かついての評価を行う。
すべての種類の財務ストラクチャーについて、フィッチでは、該当する特定の資産
クラスに対して、必要に応じてキャッシュ・フロー格付基準を適用する。例えば、
当該基準では、様々な期限前返済スピードを含むシナリオを指定している場合があ
り、裏付資産の償還期日よりも法的償還期日が早い比較的短期の債券が、当該償還
期日に全額償還されるか否かを見極めるために、期限前返済率の低下ストレスが用
いられる。類似のストレスを用いて、案件ストラクチャーが十分な元本返済用資金
を積立て、法的償還期日までに一括償還できる能力を評価することもある。フィッ
チでは、予定償還期日から法的償還期日までが、ローンのワークアウトを行ううえ
で十分な期間であるか否かについても評価を行う。プロラタ方式の支払を行う債券
についても同様に、資産クラス別の基準に沿ったテストを実施し、ポートフォリオ
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の償還が進み、ポートフォリオ内に資産の集中や逆選択のような問題が発生し得る
案件の後期においても、信用補完が十分であり続けているか否かについて評価する。
オリジネーター、サービサー、アセット・マネージャーのレ
ビュー
フィッチのオペレーション・
リスク・チームまたは格付ア
ナリストが、格付対象の SF
案件に関わる各オリジネー
ター、サービサーおよびア
セット・マネージャーのプロ
セスについて評価する。
案件当事者としてのオリジネーター、サービサーおよび CDO アセット・マネー
ジャーは、裏付資産のパフォーマンス、ひいては SF 案件に影響を与え得る。フィッ
チのオペレーショナル・リスク、ファンドおよびアセット・マネージャーを担当する
チームまたは特定資産の格付を担当するアナリストが、フィッチが格付する SF 案件
に関与する各オリジネーター、サービサーおよびアセット・マネージャーに関するオ
ペレーション・プロセスを評価する。評価は、内部スコア、意見または公開格付に
よって示されているか否かにかかわらず、案件のベース・ケースとなる予想損失およ
び信用補完水準への調整、格付キャップの設定、またはフィッチによる案件への格付
付与の謝絶に至る場合もある。フィッチによるオリジネーター、サービサーおよびア
セット・マネージャーの評価に関する格付基準は、各資産セクターの格付基準レポー
トの一部または独立した格付基準レポートとして公表されており、フィッチのウェブ
サイト www.fitchratings.com から入手可能である。
オリジネーターのレビュー
フィッチでは、オリジネーターが提供する商品、プログラムおよび審査基準に関す
るリスクを評価する。当該評価には、緩慢でアクレッシブなオリジネーション実務
および管理を行う場合に内包されるリスクを検討することも含まれるが、それは、
当該資産のパフォーマンスが、より厳格な指針や管理のもとで組成された場合に比
べて劣る傾向が強いためである。オリジネーターに対するレビューでは、ストレス
期に、オリジネーターの担保パフォーマンスが競合他社となるその他のオリジネー
ターの担保パフォーマンスと比較して同水準、上回る水準または下回る水準のいず
れであるかを評価する。オリジネーションの管理の質や最良の取り組みの実施に
よって、良好なパフォーマンス傾向が示される可能性がある。既存ポートフォリオ
における元本回収金を用いて、将来組成される債権が案件に売却されるリボルビン
グ案件においては、オリジネーターの実務および管理の質が、特に重要となる。
フィッチでは様々な SF 資産グループによって定められた特定の高リスク資産タイプ
につき、ファイル・レビューを実施することもある。
フィッチでは、通常、オリジ
ネーター/SF 発行体が当該市
場において少なくとも 18 ヶ
月間の業歴および資産プール
を構成する商品組成実績を有
することを期待する。
あるセクターにおいては、会社および経営陣の経験、ソーシング手順、審査基準や
信用評価、(必要に応じて)所有資産の評価等に基づく内部評価が、オリジネー
ターについて課される。フィッチでは、オリジネーターが、通常、当該市場で少な
くとも 18 ヶ月間の業歴と資産プールを構成する商品組成実績を有することを期待す
る。また、フィッチでは、オリジネーターからの十分なサンプル数に基づく過去の
パフォーマンス・データならびに損失度および回収率に関する過去データの提供も
想定している。
サービサーのレビュー
サービサーの内部統制の枠組
みは、健全な業務オペレー
ションの実践に対するサービ
サーのコミットメントを表す
ものであるため、フィッチの
分析上、とりわけ重要であ
る。
サービサーの主な責務は、債券保有者のために裏付資産からの支払を回収して、受託
者に分配することである。一定の SF セクターにおいては、サービサーが延滞債権を
前払いするまたは貸付金のワークアウトの交渉を行うといった追加的責任を果たす場
合がある。サービサーのレビューおよび格付プロセスは、サービサーのローン管理お
よびデフォルト管理に関するプロセスの質、既定ガイドラインの遵守状況、業務と財
務上の安定性等を確認し、その評価を行うことを意図している。サービサーの格付プ
ロセスでは、企業における様々な法域および状況における資産の取り扱いに対する戦
略、常に最新の立法動向を把握する手順、法令変更があった場合にローン・サービシ
ングの業務プロセスに統合させる手法も評価される。加えて、サービサーの内部統制
の枠組みも、健全な業務オペレーションの実践に対するサービサーのコミットメント
を表すものであるため、フィッチの評価においてとりわけ重要である。
RMBS、CMBS および ABS のサービサーに対しては、公開のサービサー格付が付与さ
れている場合がある。フィッチでは各サービシング業務別の基準を盛り込んだ詳細
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な個別のスコアカードのメンテナンスを行う。各サービサー格付は選別された一連
の基準に基づいており、そこから合成スコアが導出される。当該スコアはサービ
サーの会社組織、財務状況、人員配置、手順およびテクノロジー上の能力などのレ
ビューに基づいている。フィッチでは、格付対象の SF 案件に関与している各サービ
サーに対しては、公開サービサー格付を付与しているか否かにかかわらず、レ
ビューを実施する。
アセット・マネージャーのレビュー
CDO アセット・マネージャーに対するレビューおよび格付は、対象となるアセッ
ト・マネージャーの特定の CDO 案件への適合性、そして新規・既往の格付対象 CDO
に関してフィッチが想定するデフォルト率、損失率または市場価値のストレスに対
して必要に応じて加えられる調整水準のベースとなる。フィッチが行う CDO アセッ
ト・マネージャーの評価には、運用される資産タイプに基づきアセット・マネー
ジャーを評価するための定性的および定量的基準が含まれている。運用対象の資産
タイプには、レバレッジド・ローン、SF(ABS)、投資適格企業、ハイ・イールド債、
新興市場の債券/ローン、信託優先証券、商業用不動産(ローンおよび証券)やパ
ブリック・ファイナンス(ローンおよび証券)が含まれる。フィッチでは、格付を
行うすべての CDO について、格付基準に従って CDO アセット・マネージャーに対す
るレビューを行う。
サーベイランス
フィッチが SF 案件に対して格付を付与し、当該格付が特定の時点(PIT)における
ものでなければ、当該案件は、フィッチの資産セクター担当のサーベイランス・グ
ループが担当することとなる。フィッチでは、サービサーや受託者から提供される
送金情報およびその他の関連情報を用いて、格付案件のパフォーマンスのモニタリ
ングを行う。
サーベイランスの過程では、プール・レベルでのパフォーマンス指標のモニタリン
グ、現在の信用補完水準と将来の予測やストレス想定との比較、市場動向が案件の
パフォーマンスに与える影響に関する評価、ローン・レベルでの分析といった、
様々な定性的および定量的な要素を取り入れることにより、格付したトランシェの
パフォーマンスを評価する。
案件の見直しは直近の送金報
告書や利用可能な他の関連情
報を用いて実施される。
通常、案件の評価は直近の送金報告書の受領後に実施される。格付は少なくとも 2
年に 1 度のペースで見直され、案件の大部分については、毎年見直される。すべて
の見直しはフィッチの委員会を通じて実施される。一部の案件では、特に、裏付資
産プールのパフォーマンスが急速な悪化を示している場合、格付アクションの頻度
が高くなる。
各資産グループのサーベイランス・プロセスや格付のサーベイランス特有の方法論
を説明するために、個別のサーベイランス格付基準が各資産グループによって公表
される場合がある。例えば、特定のサーベイランス格付基準においては、ストレス
を被ったセクターにおける格下げのプロセスに焦点を当てて、格付アクションに至
る過程が説明される場合がある。公表されている資産セクター個別のサーベイラン
ス格付基準は、フィッチのウェブサイト www.fitchratings.com から入手可能である。
(本レポートは 2010 年 8 月 16 日付英語版格付基準レポート「Global Structured
Finance Rating Criteria」を翻訳したものです。内容に関するご質問・ご不明の点
は、上記の担当アナリストにお問い合わせください。)
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び免責事項をご覧ください(www.fitchratings.co.jp :「格付の定義」>「格付の概要」>「信用格付を
理解する:利用と制約」)。さらに、格付の定義及び利用規約は弊社のウェブサイト
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基準、格付手法も同サイトに常時掲載されています。フィッチの行動規範、守秘義務、利益相反、関連会
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務を果たすことに依拠しなければなりません。さらに、格付は本質的に将来を見据えたものであり、事実として検証できない将来の事象に関
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