大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) 創薬基盤技術の開発に関するシンポジウム 米国における新薬開発の動向 (インタビュー・報告) おります。一方、本日の講演時間は30分という ことで、突貫工事で30分程度にまとめましたの で、かなり荒っぽい原稿になっております。そ の点についてはご容赦頂きたいと思います。 国立医薬品食品衛生研究所 はや 副所長 早 かわ 川 たか 堯 お 夫 はじめに ご紹介頂きました早川です。本来ならば、F DAのランプキン副長官がこので講演される 予定であったようでございますが、日程の都合 で出来ないということで、私がインタビューし て、その内容について講演、ご報告するという ことでございます。初めにお断りしなければい 〔インタビュービデオ放映:上の写真 インタビューアー けないのは、ここに「米国における新薬開発の 早川副所長〕 動向」ということになっておりますが、実はや 21世紀というのは生命の世紀といわれていて、 はりFDAは、新薬開発そのものを行うところ 創薬に関してこれから非常に大きな期待がもた ではなくて、審査を行うところです。そういう れているところであります。創薬の中核産業の 意味で動向そのものがずばり聞けたかどうかと 一つとしてバイオテクノロジーが位置づけられ いうことに関してはそうではない、むしろ審査 ました。そのバイオ産業の発展に必要なクラス 状況といったことでお話をお聞きしています。 ターとして、北大阪に本格的なバイオクラクタ もう一つはインタビューは2時間余り行って ーを形成する、それが彩都ライフサイエンスパ -1- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) ーク構想であるということであります。特にこ FDAが対象にし関与しているのは民間企業や の彩都周辺には我が国有数の大学であります大 大学の研究であっても、或いはNⅠHのクリニカ 阪大学をはじめとして、研究所、或いは道修町 ルセンターでなされている研究であっても、要す に代表されるような医薬品産業の基盤があると るに医薬品開発を目指して人を対象にして行うこ いうことです。国のレベルでも非常にこの地域 とに関しては全て対象にしているということです。 に対して大きな期待を抱いています。いろいろ 具体的な方法としてはガイドラインの提示で な形でそういう事業を発展させるような後押し あるとか、シンポジウム、コンサルテーション が現在あるわけであります。その一つといたし などがあるということです。 まして、厚生労働省の医薬基盤研究所(仮称) スライド3をご覧下さい。 をここに設けて、産官学で共に良い薬の開発に 役に立つような、基盤になるような仕事をしよ スライド3 うという計画をもっているところであります。 回答1-2 • コンサルテーションは義務付けによって ではなく、あくまで自主的な申し出によ る。 • 民間企業であれ、NIHの開発担当であ れ、このようなコンサルテーションの機 会を持つことは、彼らにとってベネフィッ トがあると考えているようである。 1.FDAの医薬品開発への関わり スライド1をご覧下さい。 スライド1 質問 1 米国FDAでは、医薬品開発を目 指した基礎研究から臨床試験に 至るまで、どのような対象に、ど のような形でガイド、コンサルティ ングを行っていますか? このコンサルテーションは義務としてではな く、あくまで自主的な申し出によって行ってい る。しかしながら民間企業であってもNⅠHの 開発担当であっても、このようなコンサルテー ションの機会を持つことは、彼らにとってベネ 一応、インタビューの趣旨をご紹介いたしま フィットがあると考えているようです。 して、アメリカのFDAでは医薬品開発を目指 もちろん、これはFDAが最終的に人に対す した基礎研究から臨床研究に至るまでどういうよ る医薬品についてゴーサイン出すか、出さない うな機関や、人を対象にどういうような形でコミ かという立場にあるわけですから、それを目指 ットをしているかということを伺いました。 すあらゆる関係者にとってコンサルテーション の機会を持つことはベネフィットがあるのは当 スライド2をご覧下さい。 然のことです。 スライド2 スライド4をご覧下さい。 回答1-1 ちなみに昨年(平成14年、2002年)の数字と ・ 民間企業でも、政府が資金を提供している して約1,200件のこの種のコンサルテーションが 大学での研究でも、またNIHのクリニカルセ ンターでなされている研究でも全く法律上 の扱いに違いはなく対象となる。 ・ 方法的には、ガイドラインの提示、さまざま な会合、シンポジウム、コンサルテーシ ョンなどがある。 民間企業やNⅠH内の研究者との間で、非臨床、 或いは臨床試験の段階に関してなされたという ことです。 NIHのなかに、例えばNCI(米国がん研 究所)というものがあります。NCIでは実際 に医療に役立つ医薬品の開発も含めて行ってい るわけですが、FDAとこうした国立機関であ -2- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) スライド4 回答1-3 • 2002年の数字として、約1,200件のこの種のコンサル テーションが民間企業、NIHの研究者との間で非臨床 及 び 臨床 試験 の段 階に 関 してなされた。 • 特にFDAの新長官マックレラーと、National Cancer Institute(NCI:米国がん研究所)の新所長の間では、 より協力を密にしていこうという申し合わせが行われ ている。FDA及びNIHのそれぞれの役割や使命につ いての理解を深めて協力関係を円滑にしていこうとい う趣旨である。 るNCIというものが役割は違うけれども、そ スライド6 れぞれ最終的に患者さんに良いくすりを提供し 回答1-5 ょうという立場で、それぞれ理解を深めて協力 個人の場合には、Individual Investigator, Investigator INDというもので、インベステ 関係を円滑にしていこうという申し合わせをし ているということです。 ィゲーター個人が行うINDということになる。 そのような場合も、法的規制に則って治験を 行うことが必要。まず、医師は患者さんからイ ンフォームド・コンセントをとらなくてはならな いし、FDAが期待しているスタンダードに基 づいて、その治験を実施する必要がある。 スライド5をご覧下さい。 スライド5 回答1-4 INDに関しては、製薬会社はもとよりの こと、医師がまだ未承認の薬を患者さ んに投与したい、使いたいという場合に は、まずFDAから許可を得ることが必 要。法的にはそのような手続きが求め られる。 し、その場合でも法的規制に則って治験を行っ て欲しいと。例えば、取りあえず医師が患者さ んからインフォームド・コンセントをとらなく てはいけないし、FDAが期待している基準に 基づいて治験を実施しなければならないという ような事情だということです。 スライド7をご覧下さい。 それから、INDでありますが、これは製薬 会社はもちろんのことですけれど、医師が個人 ただ、唯一、例外があるとすればそれは緊急 的にというか、未承認のくすりを患者さんに投 事態の時ということでして、その患者さんに今 与したい、或いは使いたいという場合に、やは 直ちに未承認のくすりを使う必要があるという りこの場合は、アメリカではFDAから許可を 時に、医師のほうからFDAのほうに電話で取 とることが必要である、法的にそうであるとい りあえずコンタクトをとっておく、それで許可 うことのようであります。 を得るというこういう仕組みがあるようです。 しかしながら、電話で一応連絡しておいて企業 スライド6をご覧下さい。 のほうから新薬候補が医師に供給されて患者さ 個人の医師が行う時にどうするかいうことで んに投与されるわけでありますが、その後で、 すが、これはインディビィデュアル・インベス 必要な情報をFDAに出して頂くということに ティゲーター、つまりインベスティゲーター個 なっているそうです。しかしながら、こういう 人がINDを取るということのようです。しか ような研究のINDの場合においても患者さん -3- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) スライド7 回答1-6 唯一の例外は緊急事態の時。ぜひとも今、この患 者さんに未承認の薬を使う必要があるという時には 医師の方からFDAの方にコンタクトをとって頂き、そ れに対してFDAから電話でとりあえず許可を出すと いうことがなされる。それをベースに企業の方から 開発中の新薬が医師の方に供給されて患者さんに 投与される。それが行われた後に事後という形で必 要な情報を当局に提出する。このような緊急のIND においても、患者さん個人、ないしは患者さん自身 が対応できない場合には、その近親者に対するイン フォームド・コンセントが必要となる。 今のことに関連してFDAにとってトランス 個人、或いはその近親者に対するインフォームド・ レーションリサーチという言葉は、一体どうい コンセントは必要であるということです。 う概念なのかということをお聞きしました。 といいますのは我が国でもトランスレーショ 2.FDAにとってのトランスレーショナルリ サーチ ンリサーチというのはいろいろな意味で使われ スライド8をご覧下さい。 ていて、一番これが正統的な言い方ではないか と言われているのは、探索的臨床研究というこ スライド8 とで、これは画期的な医薬品であるというタネ 質問2 が見つかったときに、通常の医薬開発の段階を 今うかがったことに関連してFDA にとってトランスレーショナルリサー チ(TR)という言葉はどのような 概念ですか? 踏んでいくというステップバイズではなく、あ る段階をスキップしてできるだけ早く患者さん のレベルで有効性を確かめてみたい、そういう 探索的臨床研究があるので、アメリカの事情は どうかということになったわけであります。 スライド9をご覧下さい。 お答えは、ランプキン氏の理解、解釈でいえば、 スライド9 回答2-1 TRについて私の理解、解釈では、極めて有望な発 見が基礎研究レベルであったとき可能な限り速や かに患者さんのベネフィットにつなげていこうという ことが概念の根幹にある。しかし、その過程におい て、ある段階をスキップするということは基本的に許 されない。新しい薬をヒトに使用する際には、まず十 分に安全性評価がなされていることを確認しておく 必要があるという考え方からである。そのように安 全性評価が適切になされていることが、患者さんに 対するインフォームド・コンセントを行う際の情報提 供の前提となるからである。 -4- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) 極めて有望な発見が基礎研究レベルであったと 患者さんにとってのベストチャンスであると、 きに可能な限り速やかに患者さんのベネフィッ こういった時には医師としてトライすることは トにつなげていこうということが、概念の根幹 可能である。しかしながらその場合にも、まず にあるということは、ここは我が国と全く同じ はFDA当局に対して、申請を行うということ わけでありますが、その過程においてある段階 が必要だと。それに基づいてFDAで判断を行う。 をスキップするということは基本的には許され 当然これも実際に使用する場合には患者さんに、 ない。新しいくすりを人に使用する場合には安 例えば、インフォームド・コンセントをとってい 全性評価等を十分に確認しておくことが必要で かないといけないということのようです。 ある。そういう評価が適切になされているとい スライド11をご覧下さい。 うことは、例えば、患者さんに対してインフォ その中で患者さんに対する説明として、医薬 ームド・コンセントを行う際にも情報提供の前 品については十分な安全性評価も行われていな 提になる、ということでした。 い。それから、患者さんの今後の状態をどうい スライド10をご覧下さい。 う形でモニタリングするのか、そういう方法に しかしながら、例外もあると。その疾患が非 ついても必ずしもベストな方法は確立していな 常に重篤なものであって、生命に危険を及ぼす、 いのだというようなことも、きちんと説明した 他に治療方法がない、今まさに新しい治療法が うえでインフォームド・コンセントをとる。患 スライド10 回答2-2 例外としてその疾患が非常に重篤なもので、生命 に危険を及ぼすものであり、なおかつ、他にこれと いった治療方法がない、その新しい治療法がまさ にその患者さんにとってのベストチャンスという時 には、医師は試すことが可能。その際にもまず、 FDA当局に対して申請を行って頂くことが必要で ある。それに基づいてFDAで判断を行う。また、実 際にそれを使う場合、やはり、医師は患者さんの インフォームド・コンセントをとらなくてはならない。 スライド11 その中で患者さんに対する説明として、この薬に ついてはまだ十分に安全性評価も行われていない し、また、どのような方法で患者さんの今後の状態 をモニタリングするのか、ベストなモニタリングの方 法も確立していない、ということを説明した上で、イ ンフォームド・コンセントをとっていく必要がある。患 者さんの側ではそのような情報を受けて、「なるほ ど、そのようなリスクがあるのか。しかし、この疾患 はとても自分にとっては深刻な疾患である。」という 理解のもとで、同意するということを患者さんが決 定するという場合である。このような場合もあるが、 しかしそれはあくまで例外である。 -5- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) 者さんの側ではそういう情報をもとに自分の状 スライド14 況と照らし合わせて、リスクはあるけれども、 回答3-2 やって欲しいという、そういった理解のもとで 資料提出に関しては、紙ベースでは なく、電子媒体として提供されるよう になってきた。それにより、データをF DA独自で再分析したり、解釈するこ とが可能になった。また、解析や評価 が非常にやり易くなり、時間の節約に もつながった。 同意されて、患者さんが決定をすると、そうい う場合は例外的にはあるようでありますが、あ くまで例外であるというようなことをおっしゃ っていました。 3.FDAにおける申請データの評価・解析 スライド12をご覧下さい。 スライド12 を自分たちが独自に解析、評価するというそう いうやり方を行っていると、そういうやり方を 質問 3:申請データの評価・解析 とることと関連して、最近、紙ベースではなく FDAが、申請データを評価するうえ での標準的方法を作り、利用してい ると聞きます。これを用いると個々 の製薬メーカーからのデータ評価に 役立つとされていますが、これにつ いて具体的に説明してください。 て、電子媒体でその資料を提供して頂くように なった。そういうことによって、電子媒体から FDAが独自にデータをあちこちから引っ張り 出したり、再構築する、再分析する、解釈する ということが可能になったということで時間の 節約にもつながったということであります。 スライド15をご覧下さい。 次にFDAが申請データを評価するうえで、 それからもう一つ、複数のいろいろな会社か 最近標準的な方法を作って利用しているというよ ら申請があるわけですが、そういう申請に対し うなことを伺ったので、それについて具体的にご て審査が公平で同じレベルに一貫性がないといけ 説明頂きたいということを申しあげました。 ないということで、3年ほど前からGood Review Practice(GRP)というものを設定して実施 しているということです。企業が医薬品を作る スライド13、14をご覧下さい。 際、非臨床試験段階のGLPに始まって、GC スライド13 P、或いはGMPということを行っております 回答3-1 が、規制当局としてもGRPというものを実施 FDAにおけるNDAの審査においては、 サマリーではなく、企業がどのように生 データを解析し、そのデータが何を意味 するか、企業がどう理解していくかという ことに関心があり、それが重要だが、同 時に生データに基づいて独自にそれを 審査し、評価することが重要だと思って いる。 しているということであります。 そのGRPでは審査の際に、ある種の雛形が あって審査官がこれは基本的に考えないといけ ない項目、重要な質問項目をアウトラインとし て示しているということであります。 スライド16をご覧下さい。 その目的は、一つはプライマリー・レビュー 答えですが、FDAの基本的な態度、ここは ワーがいて、その人が一番詳細に最初の段階で 少し日本と違うところですが、生データから見 特定の審査案件を審査するわけですが、そうい ていくと、日本はサマリーから見ていって必要 う人とそれを監督するスーパーバイザー、更に があれば生データということですが、FDAの その上のディビジョン・ディレクターとこうい 場合は生データから見ていって、その生データ う人たちがなるべく同じスタンダードで見れる -6- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) スライド15 回答3-3 さらに、複数の申請に対しての審査の一貫性とい う観点から、 3年前からGood Review Practiceを 設定し、実施している。 これまで企業側に対してGCP、GLP、或いはG MPといった基準に従うことを要請してきた。FDA もGood Review Practiceを実施している。これは、 例えば非臨床や臨床データの審査の際に、テンプ レートのような形で審査官が考えなくてはいけない 重要な質問項目をアウトラインとして示している。 スライド16 回答3-4 • GRPの目的は、まず主として特定の申請案件 を審査するPrimary Reviewerとそれを監督する Supervisor、さらにその上のDivision Director が、GRPを介して審査に対する一貫性を確保す ることにある。 • Supervisorは、自分の傘下にいる審査官たちが このGood Review Practiceについて十分な訓練 を受け、そしてGRPに基づいて審査を行うことを 確保する役目を担っている。 という審査に対するFDA内での審査の一貫性 スライド17 を確保するということが一つあります。これは 質問 4 縦の関係ですが、横の審査官どうしの一貫性と FDAは、新規技術の開発、新 規診断法や医薬品の開発に 対し、どこまでの役割を持って いますか? いうこともあるかと思います。また、こういう システムをとっておりますから、スーパーバイ ザーとしては実際の審査官たちにGRPについ て十分習熟するようにという指導する役割もあ るのだということであります。 先程のGRPにつきましては、複数の会社が 同じレベルの申請をしたときには一貫したFD Aとしての評価を下していくということだろう ているかということを伺ったわけです。 と思います。 スライド18をご覧下さい。 4.FDAにおける医薬品開発への役割 これに対しましては、FDAの主たる任務は スライド17をご覧下さい。 あくまで研究ではなくて審査をするという答え 次の質問ですが、FDAが新規診断法、或い でした。しかし、FDAにも基礎研究に携わっ は医薬品の開発に対してどこまでの役割をもっ ているものがいると。その目的でありますが、 -7- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) 維持し続けるための基礎的研究、ということが スライド18 一つです。 回答4-1 • FDAの主たる任務は、研究ではなく、 審査する、製薬会社からFDAに提出さ れてきたいろいろな情報を独立した立 場から評価することにある。しかし、FD Aには基礎的研究に携わっている者が いる。 • この基礎的研究の目的は主として二つ ある。 スライド20をご覧下さい。 もう一つの目的は、新しい技術のなかには十 分、基準が確立していないようなものがありま す。これは特にバイオロジックスというような 製品に関しては、そのものが初めてのことが多 いということで、必ずしもスタンダードが確固 として確立しているわけではない。しかしなが ら、最終目的は常に品質の優れた製品を保証し 二つほどあるということであります。 ていくということが使命ですから、そういうこ とでFDA自らがある種の研究を行うことによ スライド19をご覧下さい。 って必要な試験方法等を確立していく、また、 スライド19 それを基準の設定や運用に役立てるために研究 が必要であるということです。 回答4-2 まず、第一点は、実際に審査にあたる担当者 が発展する新技術や新製品に適切に対応でき るように、新技術や製品に対する理解力や能 力を維持し続けるための基礎的研究である。 すなわち、適切に審査していくためには、新し い技術や製品の背後にある知識や技術を十分 に持っていなくてはいけないので、実際にベン チで自分が研究に携わるということである。 スライド21をご覧下さい。 それから今申しましたのは、開発レベル或い は品質、非臨床面の話ですが、臨床をみる立場 の人の場合にも、だいたい10%から20%ぐらい は病院、或いはERとかに行って、臨床のスキ ルを維持しているということです。これも当然 であります。 臨床部分の担当者は優れた臨床面での知識を その一つは当たり前のことですが、実際に審 査にあたる担当者がどんどん発展する新技術で もっていなければならないということですから。 すとか、新製品に適切に対応できるように新技 術、或いは製品に対する理解力、或いは能力を スライド22をご覧下さい。 スライド20 回答4-3 二つ目の目的は、このような新しい技術の中に は未だ確固たる基準が確立されていないものが あるという点が背景にある。特にBiologicsの製 品に関しては製造にあたっての留意事項、基準 (例:MCBの特性解析、管理法等)が非常に重 要になってくるが、新しい技術に関しては製造基 準がきちんと確立されていないものがある。品質 の優れた製品を保証していくために、自らが研 究を行うことによって必要な試験法などを確立さ せていき、それを基準の設定や運用に役立てよ うというものである。 -8- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) スライド21 回答4-4 品質、非臨床面の審査と同じように臨床面での 審査についても同じようなことが言える。CDER であれ、CBERであれ、臨床担当者の時間の 10%、20%位は病院、ERなどにいって臨床のス キルを維持して欲しいと思っている。品質確保の ために製造過程を審査する担当者たちにとって 製造プロセスをよく知っておくということが重要で あるように、臨床部分の担当者にとっても、優れ た臨床面での知識をもっていなければというよう に考えている。 スライド23をご覧下さい。 スライド22 最近、ファーマコゲノミクス、ファーマコゲ 回答4-5 ネティクスということが話題になっております 優れたReviewerは同時に優れた 臨床家であり、ないしは優れた化 学者であり、ないしは優れた生物 学の専門家でなくてはならない。 ので、それを規制当局としての立場からFDA の見解、或いは取り組みについてお聞かせ願い たいということでお聞きいたしました。 スライド24、25、26をご覧下さい。 スライド24 回答5-1 これはあらゆるレビューアーについていえる この分野は、今回のICHの会議でも非 常に大きな議論の中心になったが、ま だ発展の緒についたばかり、まだ本当 の揺籃期にある。しかし今後の展開に よってはいろいろなことが大幅に変化し ていく可能性がある。 ことであります。例えば、臨床担当であれば優 れた臨床家でもあると、科学のところをみる人 は優れた科学者であると、生物学のところは優 れた生物学の専門家でなければならない。こう いう趣旨から研究活動や臨床実践が必要という ことであります。 スライド23 質問 5: New Biotechnology の 利用と臨床試験 スライド25 回答5-2 Pharmacogenomics/Pharmaco genetics(PGx)について、 規制当局としての立場から、 FDAの見解又は取り組みにつ いてお聞かせください。 • 今後の展開によっては、医薬品の開発のさ れ方、効能・効果、用法・用量等の記載、な いしはその医薬品の使い方に大きな変化 が生じてくるのではないか。 しかし、まだそ の段階には至っていない。そこに行き着くに は未だいろいろ学ばなくてはいけない情報 が沢山ある。この点については、日本、ヨー ロッパの動向も同じようなものではないか。 5.New Biotechehologyの利用と臨床試験 -9- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) スライド26 ょうということです。そういうことをいってい る一方で、FDAでは今月(平成15年11月)ド 回答5-3 ラフトガイダンスというかたちでGuidance for 一方、FDAでは、今月ドラフトガイダンス (Guidance for Industry Pharmacogenomic Data Submissions) を発表した。 なお、このドラフトガイダンスは法的に はなんら効力をもっていない。 Industry Pharmacogenomic Data Submissionsと いうものを発表しております。そういうものを 発表しているわけですが、ランプキン副長官に よりますと、これはあくまで法的に何か意味が あるというものではないということです。 スライド27をご覧下さい。 これがそのドラフトガイダンスの表紙という これは今回のICH-6の会議でも非常に大 きな議論の中心になったわけですが、この分野 か、最初の出だしの部分です。 はまだ発展の緒についたばかりで、本当の揺籃 期にあるということが一つの認識であります。 スライド28をご覧下さい。 しかしながら今後の展開によっては、医薬品の 要するにこのドラフトガイダンスによって企 開発のされかた、効能・効果、用法・用量等の 業側に何かを義務付けるということではない 記載、或いはその医薬品の使い方に大きな変化 と。FDAがこういう問題に対して、今、どう が生じてくるのではないかということでありま いう見解をもっているかということを公表した す。しかしながら、認識としてはまだ実際に具 と、認識としてどういうデータにFDAが関心 体的な段階に至っていないのではないかと、そ をもっているかという内容を単に公表したもの こに行き着くにはいろいろと学ばなくてはいけ であるということです。 ない情報があると、これはどこの国も同じでし スライド27 Guidance for Industry Pharmacogenomic Data Submissions DRAFT GUIDANCE This guidance document is being distributed for comment purposes only. Comments and suggestions regarding this draft document should be submitted within 90 days of publication in the Federal Register of the notice announcing the availability of the draft guidance. Submit comments to the Division of Dockets Management (HFA-305), Food and Drug Administration, 5630 Fishers Lane, rm. 1061, Rockville, MD 20852. All comments should be identified with the docket number listed in the notice of availability that publishes in the Federal Register. For questions regarding this draft document contact (CDER) Lawrence Lesko 301-594-5690, (CBER) Raj Puri 301-827-0471, or (CDRH) Steve Gutman 301-594-3084. U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research (CDER) Center for Biologics Evaluation and Research (CBER) Center for Devices and Radiological Health (CDRH) November 2003 Procedural -10- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) スライド28 回答5-4 • これを出したからといって、企業側が何かを 義務付けられるということではない。このドラ フトガイダンスは、現在FDAがこの問題にど のような見解を持っているかを単に公表する という類のものである。 • つまり現状はこういう風に認識していると、こ ういったデータにFDAは関心を持っていると いうような内容を単に公表したものである。 スライド29 回答5-5 • ただし、今回のICH会議の中で業界の方々が述 べていたように、この種のデータを業界が作成し た際、そのデータをFDAとの間で協議する何ら かのプロセスを設定することは重要だと思ってい る。しかし、協議したとしても、直ちに結論が出せ るほど、全体として知識や経験、データが蓄積さ れていない。 • 情報をお互いに協議し、その内容を解釈したり、 意味を把握するには、様々な討議が必要で、ま た経験もつんでいかなくてはいけない。 スライド29をご覧下さい。 つごろ、近い将来とれるのでしょうかと伺った しかしながら、ICHでもいろいろ話題にな のですが、近い将来正式のガイダンスになるとは りましたけれども、この種のデータをもし業界 いえないと。やがてはなるだろう。やがてはなる が作成してきた場合に、そのデータをFDAと だろうけれども、それに至るまでには先程の繰り の間で協議する何らかのプロセスを設定するこ 返しではありますが、業界と規制当局が協力して とは非常に重要ではないかと思っているという こういう分野を育てる、知識を更に成熟させてい ことです。しかし、今の段階で協議したとして くプロセスがまず必要だということのようです。 も、直ちに結論が出せるほど、全体としてその そのための一環として、今、パブリックコメン 知識、経験データが蓄積されているわけではな トを求めている段階にあるということです。 いだろうと。まずはステップ・バイ・ステップ スライド31をご覧下さい。 で情報をお互いに協議してその内容を解釈した その場合に強調されていたことは、単に学会、 り意味を把握するということで、それにも様々 な討議が必要で経験を積んでいかないといけな 業界からの意見だけではなくて一般市民からも いと考えているということです。 いろいろとコメント、或いは協議をしていきた いと、それは非常に重要だと思っているという スライド30をご覧下さい。 ことであります。これはどういうことかといい 今回のガイガンス案ですが、この「案」がい ますと、ICHの会議でもいろいろ出ていたの -11- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) スライド30 回答5-6 • 今回のガイダンス案について、近い将来、正 式なガイダンスになるとはいえないが、究極的 にはガイダンスになっていくだろう。 • それに至るまでには、業界と規制当局が協力 してこの分野を育て、知識をさらに成熟させて いくプロセスが、まず必要である。そのための 討議の一環として、このドラフトガイダンスが、 パブリックコメントの段階にある。 スライド31 回答5-7 • その場合、単に業界や学界からの意見だけで はなくて、一般市民からもいろいろとコメントを 求め、討議をしていくことが、重要である。 • 今回のICHの会議の中でも出ていたように、個 人の遺伝子にかかわる医学的な情報は、一般 市民にとっては、かなり特殊なもので、受け取り 方や感じ方が他の医学情報とは違っていると いう認識が必要。 ですが、個人の遺伝子に係わる医学的な情報とい どうするのか、また、この種の遺伝学的な情報 うのは、これは従来の医学的な情報とは違って、 は保険にどのような意味合いをもっているの 一般市民にとっては、それぞれの人の遺伝子情報 か、と様々な問題がある。非常に機微にふれる ということであって、非常にというか、かなり特 内容だということで、単に科学的な側面からの 殊なもので、受け止め方、感じ方が他の医学情報 討議だけではなくて、社会学的な側面からの討 とは違うという認識で扱わないといけないので 議が必要だということです。 はないかと、そういうことであります。 6.今後の創薬において国が支援すべき創薬基 スライド32をご覧下さい。 盤技術について ここにまとめていますが、一般市民もこの種 スライド33をご覧下さい。 の情報の取扱い方に関しましては、積極的に議 次に今後の創薬において国が行う、又は支援 論に参加してコメントしてもらうべきだという すべき創薬基盤技術について考えをお聞かせ下 ことです。つまり、取り扱う情報が、どのよう さいという問いかけをしました。こういう時に な遺伝的な情報のことを言っているのか、その もしアメリカで従来言われていることとはまた 遺伝的な情報について、誰が、どのような保管 違った何か新しいアイデアがあれば当然、それ をするのか、アクセスできるのはいったい誰な は言ってくれないでしょうけれども、というこ のか、本人が亡くなったらそのデータをその後 とを承知の上で問いかけをしたのです。 -12- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) スライド32 回答5-8 • 従って、一般市民も、この種の情報の取扱い方に関 しては、積極的に議論に参加し、コメントしてもらうべ きだと考えている。つまり取扱う情報は、どのような 遺伝的な情報のことをいっているのか、その遺伝的 な情報について誰がどのような保管をし、アクセスで きるのは誰なのか、本人が亡くなったらそのデータを その後どうするのか、またこの種の遺伝学的な情報 は保険にどのような意味合いをもってくるのか、など といった様々な問題があるからである。 • 極めて機微に触れる内容なので、単に科学的な側 面からの討議だけではなく社会的側面からの討議 が必要である。 スライド33 スライド35 質問 6 回答6-2 今後の創薬において、国が行う、 または、支援すべき創薬基盤技 術についてお考えをお聞かせく ださい。 • FDAでもこれらの新技術によっ て開発されてきた製品を評価す るにあたって、新技術を理解し、 あるいは評価手段として活用す ることは、非常に重要だと思って いる。 FDAとしてはそういうニューテクノロジー スライド34をご覧下さい。 から生まれてきた画期的な新しい薬、或いは医療 スライド34 機器その他について評価をする立場ですから、ど ういうようにしてそういうものができてきたの 回答6-1 かと、或いはそれをどう評価できるのかという • 全般的には、各種ゲノミクス、プ ロテオミクス、ナノテクノロジー等 への関心と支援度は、大変高い。 ことに関しては当然学ばなければいけないし、 理解していなければいけない。それと同時に、 どのステージで一番よくそのテクノロジーを使 えば、一番効率的に医薬品を評価できるのか、 適切なのか。今まで動物を使ってた部分をニュ ーテクノロジーで評価することもあるでしょう し、今まで検知できなかった、例えば、感染性 答えとしては、全般的にはこれは先程からず 物質を検知できるようになる方法の開発。そう っと出てきている話でありますが、各種いろい いうところあたりからがFDAの役割であると ろなゲノミクス、プロテオミクス、ナノテクノ いうように理解したのですが、それでよろしい ロジーなどへの関心、或いは支援は非常に関心 でしょうかと聞きました。お答えは「Exactly」 が高いものがあるということです。 ということでした。「Exactly」と言っているの は、どういう基盤技術がありますか、開発を支援 スライド35をご覧下さい。 していますかということには答えて頂けないでし -13- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) ょうし、FDAは一体どういうことをやるので スライド37 すかということにも答えて頂けないと考え、私 回答7-1 がどんどん抗体、遺伝子治療などを例にして聞 それは、ICH6の早川先生ご自身 の講演の中でご説明されていまし た。 きましたところExactlyというお答えでした。 これは当然のことでありますが、FDA自体は そうした基盤技術を開発するうんぬんではなく て、そういう新技術によって開発されてきた製品 を評価するにあたって今ビデオで申されていたと おり、技術の理解、評価手段として活用していく、 そういうことが組織としての役割だし、非常に重 要だということです。これは私がつくった文章で す。exactlyという言葉を、こんなふうに翻訳し を少しご紹介いたします。 たということです。 スライド38をご覧下さい。 ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロ 7.今後の新薬開発のターゲットになりうる生 体内分子 テオミクス等によって、例えば、先程来出てき スライド36をご覧下さい。 ておりますように、病因等に関連する可能性が 想定される遺伝子やタンパク質がある種、包括 スライド36 的、網羅的に解析されて、ある種の候補が出て 質問 くるだろうということであります。 7 基盤研では、一つは疾患関連プロテオームプ どういう生体内分子が今後の新薬開発の タ ー ゲ ッ ト に な り う る と お考 え で す か ? 一方、薬の側から(プロダクトとして)見た ときに は、どういうタイプの物質が New Drug/Biologicalとして有望だとお考えで すか?例えばNew Biotechnologyとして は、抗体、遺伝子治療、再生医療などが ありますがこれらについてどうお考えです か? ロジェクトというのがありますけれども、例え ば、プロテオームで疾患のものと、正常のもの を扱ったとして、だいたい10%ぐらいは変動が みれるということもありますし、それから実際 プロティン自体が常時動いていますから、空間 的、或いは時間軸で両方どこかでフリージング した状態でみないと比較、対照できない。そう これは最後の質問になりますけれども、どう いういろいろな問題があると思います。先程、 いう生体内分子が今後の新薬開発のターゲット 前処理が非常に大事だという話が出ました。事 になるとお考えですかと。要するにくすりの側、 実、それはそういうことだと思うのですが、そ プロダクトからみたときにどういうタイプの物 うは言っても、それで終りではない。先程のバ 質がニュードラッグ或いはバイオロジカルとし イオインフォマティックスも含めていろいろな て有望だとお考えですかということをお聞きし 候補が網羅的な意味で推定されるものが、ドカ ました。これについてもあまり答えて頂けない ッと出てくると、実際にはそういうものを絞り かなと思っていました。 込んでいかないといけないというか、実験によ って実証的に解析していかないといけない。網 スライド37をご覧下さい。 羅的解析は、今ずいぶん大勢でやっているので それは、インタビューの日の午前にICHで私が すが、次の段階ではタンパク質や遺伝子機能の 講演したのですが、そこで説明されていたのではな 実証的解析、つまり細胞や動物を使って、具体 いかというようなことになってしまいました。 的に機能を実証する必要がある。例えば、100 というわけで、認識としては共通だと思いま したので、ICHでどういうことをお話したか のタンパクが出て来ると、100のタンパクのうち で、実は引き金になるのは一つか二つであって、 -14- 会報(平成16年3月・第662号) スライド 38 大阪医薬品協会 -15- 会報(平成16年3月・第662号) スライド 39 大阪医薬品協会 -16- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) 我々が見ているのは結果として、後で連続的に siRNAであるとか、リボザイム、アンチセンスと 出てきたものを見ているのか、或いはあるタン か、そういうふうなRNAセラピーみたいなも パクと、あるタンパクのインターラクションが のもあるでしょうと、こういうお話を当日、I あるイベントをおこしているのか。そういうこ CHの場でしたわけであります。 とは個別に、丁寧に解析していかないといけな スライド40をご覧下さい。 い。そのような解析技術はまだあまりブレイク スルーされていなくて、それは実際にこれから 基盤研でやっていかないといけないことではな いかと思っているわけです。そういうことを経 スライド40 Genomic Drug Discovery ・Protein Products ・Human Antibodies ・Gene-based Products ・Cell-based Products ・Nucleic Acid Products such as small interfering RNA (siRNA), micro RNA, ribozyme or antisense ・Tailor-made Medicine 由して、遺伝子或いはタンパク質の機能が明ら かにされていくだろう。 スライド39をご覧下さい。 こうして、ひとたび遺伝子やタンパク質の機 能が明らかにされますと、これをベースにして それを制御するような低分子薬、これは生体内 のペプチドドリガンドでもいいのかもしれませ それをここに改めてまとめてあります。ゲノ んが、合成化合物でいいのかもしれません。そ ム、或いはタンパク機能ベースで発見される医 ういうものを薬にする。或いは、見つかったタ 薬品としては例えばペプチド等も含むプロテイ ンパク自体が機能的に非常に医薬品として有望 ンプロダクト、抗体、Gene-based Productsとか であると、先程ぺプチドの話も出ておりました Cell-based products、それからマイクロRNA けれども、ぺプチドもそうかもしれません。つ とかsiRNAとか、そういったものがあります。 まり、従来のインシュリンとか、成長ホルモン それからもちろんこれはテーラーメイド型の医 とか、エリスロポエチンとかいったような形の 薬品や低分子も含めた分子標的薬のような医薬 タンパク性の医薬品も期待できるでしょうと。 品がある。こういう発表をしたわけです。 また機能タンパク質をターゲットにするような 抗体医薬品というようなものもあるでしょうし、 遺伝子の機能が分かれば、遺伝子そのものを治 スライド41をご覧下さい。 スライド41 療に用いるというような場合もある。今はベク Other Approaches for Producing Novel Types of Biologicals ターがうまくブレクスルーされていないので、 多少スローペースですが、一旦遺伝子治療用の ベクターが相当いいいものができると遺伝子を のせて治療をするというアイデア自体は決して 悪いものではないので、そういう遺伝子治療も ひらけていく。結局、我が国としてどれだけ多 くの日の丸遺伝子、日の丸タンパク質を、新し いものに対して日の丸をたてるかということが -Combination products (a biological used with either a therapeutic agent, or a device, or both) -Some engineered proteins made by the combination of functional domains -Cell/Tissue-based products derived from stem cells, committed progenitor cells, and tissues “engineered” ex vivo -Cancer vaccines -New dosage forms of biologicals including nanotechnology-based delivery systems 非常に重要な課題だと思います。 そういう遺伝子で細胞を改変して、その細胞 ゲノムからアプローチするものだけではなく を細胞治療的に或いは再生医療的に使うという て実は最近主にバイオロジックスでありますけ 場面もあると思います。一方では、核酸自体を れども、例えば、あるバイオロジカルとデバイ 制御しましょうということで、ここでは書いて スを組み合わせてやると、或いはもっと極端に おりませんが、マイクロRNAであるとか、 はバクテリアをそのカプセルのなかに入れて、 -17- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) それで体内に入れて、体内の代謝物をそのバク スライド43 テリアで代謝していこうというものも試されて 回答7-3 います。こうしたコンビネーションプロダクト • 最近大きな関心を集めているのが、Tissue Therapy, Cell Therapyの分野である。同種移 植片、ないしは他家移植、あるいは移植片の 培養等に関する活動が大きな脚光を浴びてい る。 • しかしTissue Therapy, Cell Therapyの分野 が進んでいく事によって、いろいろな問題点が 出てきている。 というものがゲノムベースの創薬とは別のア プローチとしてありますし、それからタンパク 質のいろいろなファンクショナルドメインを コンビネーションして人工的につくりあげた タンパク質というものもあります。当然、ステ ムセルとかプロジェニターセルとか、そういっ たものからつくられた細胞治療薬、或いは再生 医療に使われるようなもの、それからガンワク チンであるとか、ナノテクを利用した新しい形の スライド44 製剤というものもあります。こういった講演をし たわけですが、これに対して、FDAからみて 回答7-4 もそういうことですということでありました。 感染性物質の懸念はどうなのか、細胞は どういうふうに培養し、どういうふうに増殖 させたのか、その由来はどこなのか、ウイ ルス等の病原体の感染に対して、どう対 処なされるのかといったような問題である。 これもヒトからヒトへの感染もあれば、由 来によっては動物からヒトへの感染という 問題もある。 スライド42をご覧下さい。 スライド42 回答7-2 これまでに公表されてきている情報と いうことに限り、全般的に幅広く見ると、 遺伝子治療、ないしはその安全性に大 変関心が高い。 つまり、それを実際に人に投与するわけです から、投与している製品、或いは投与する前に 原材料段階で試験をするしないということも含 めて、感染性物質に関する状況はどうなのかと いうことが非常に大きな問題ですし、細胞をど ういうキャラクタライズするのか、どういうふ FDAのランプキン副長官の直接の答えとし うに培養するのか、どういうふうに増殖させる ては、話できるのは今、公表されている情報に限 のか、その由来はどうなのか、こういったこと るということで、答えとしては、全般的にみると についていろいろな意味で解決していくべき問 遺伝子治療、或いは安全性に非常に関心が高いの 題があるということを述べておられました。 ではないかということを述べておられました。 スライド45をご覧下さい。 スライド45 スライド43をご覧下さい。 もう一つ非常に大きな関心を集めているのは、 ティシューセラピー、セルセラピーの分野であ るということであります。ただ、ティシューセ ラピー、セルセラピーというのは当然のことで ありますけれども、進んでいくに従っていろい ろな問題点が出てくる。 スライド44をご覧下さい。 -18- 回答7-5 また、 Pharmacogenomics/Pharmaco genetics(PGx)を利用した創薬 も考えられる。 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) それから先程出てまいりましたけれども、フ ァーマコゲノミクス、ファーマコジェネティク 結びつける一番の早道というのは、寒川先生は どのように考えておられますか。 ス、こういうものを利用した創薬というものも ランプキン氏の理解する範囲では考えられると (寒川先生) いうようなことでございます。 私自身はやはり臨床の先生方が、例えばこう 以上で私の説明を終わりたいと思います。ご 静聴有難うございました。 いった因子が関係あるのではないかといった一 つの目安といいますか、ある程度焦点を絞らな いと、むやみやたらにやっていって、それをコ 総合討論 ンピュータで処理するといった方法ではなかな かうまくいかないと思います。ですから、やは り臨床での情報、実際治療にあたられているド クターの情報と結びつけるということが非常に 重要ではないかと思います。 (堀先生) ということは、臨床の側からこういうタイプ のものが有効なのではないかというヒントが出 て来て、それに合うようなものを基礎研究の中 から抽出していく、それで両者がドッキングす れば効率的に創薬が出来る。 (堀先生) それでは、総合討論に移らせて頂きたいと思 (寒川先生) います。 時間が迫っておりますので、ご講演の内容に それをもう少し拡大するような形で、解析自 ついて理解を深めるため、ご質問やコメントを 体をもっと効率的に出来るようにするというの 頂きたいと思います。逐次フロアの方からご質 が良いのではないかと思います。ですから、今 問がありましたら、どうぞいつでも受け付けた までだと個人レベル或いは点と点みたいな形で いと思いますのでよろしくお願いいたします。 あったのをもう少し拡げるということが今回の 寒川先生はご自分のお仕事が新規のペプチド プロテオームファクトリーの中でも必要ではな を発見して、それを生体の中でどういう働きを いかと思います。ですから、単に病院或いは医 しているのかということを解明して、そしてそ 療機関から試料を提供してもらうという形では れを治療に使えないかというプロセスでやって なしに、やはりその中で提供する側も単に提供 きておられるわけです。しかもANPというの するだけではなしに、やはりそれを調べてもら は循環器の治療に使われておりますし、BNP うことによって、何かわかるのではないかとい も心不全の診断薬として使われる。アメリカで う積極性がないと、なかなか両方がうまくいか はBNPが治療薬として使われています。寒川 ないのではないかと思います。 先生もご指摘になりましたように、まだわかっ ていないタンパク質のほうが多いわけですね。 (堀先生) 既知のものはごくわずかで、未知のもののほう ゲノムシークエンスの場合には、それがどう がずいぶん多いということになりますと、網羅 いう機能を持っているかどうかは別にして、と 的にタンパクいわゆるプロテオームのライブラ にかく全て解読をして、その情報をオープンに リーを片端から解析して、その中からその機能 して皆様に提供するということが、大変プラス 解析をしていくというのが一般的な流れになり になっているのですね。100%とはいえないにし つつあると思うのですけれども、実際に創薬に ても90%のゲノム情報が全部コンピュータで利 -19- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) 用出来るということは非常にプラスになってい を顧客に渡すわけです。結果的には、その中か ると思うのですが、それと同じ発想をタンパク ら当たりがほんの1個か2個見つかるというよ にもっていくのはどうでしょうか。 うな悲惨な状態になっていて、そういう状況で 最近では予測する価格がかなり安価になってき (寒川先生) た。 それは無理だと思います。先程も言いました 今おっしゃっておられましたように、バイオ ように、ゲノムというのは直線的な塩基配列デ インフォマティクスでなんともならないとおっ ータが並んでいる。ゲノム自体は一個の細胞が しゃっていた原因の一つというのは、まだ経験 ひと組の遺伝子を持っており、その数は同じだ 測というものがそれほど充実していない事に起 というので、機能発現にはどういうインタラク 因するのであろうと考えられます。まだまだデ ションをするのかということが問題になって来 ータが出そろっていない。ゲノムに関してとい るのですが、タンパク或いはペプチドの場合に うことなのですけれども、例えば、ゲノムでも は量的な変動というのが、すなわち制御にかか インフルエンザ菌のゲノム全配列が出たのはた わってきます。或いは質的に変わることが、何 かだか7年前です。たった7年前に初めてバク が正常で何が異常かということに結びつきます。 テリアのゲノム全配列が出てそれ以来7年間で そこの情報が重要であって、その違いが見つか ここまで発展したわけです。だからプロテイン らなければなかなかターゲットにはなりにくい に関しても今後経験則を集積することで、ひょ のではないかと思います。 っとしたら何か見えて来るのかもしれない。そ の前段階としてやはり臨床データから的を絞っ (堀先生) てドンドン情報を蓄積していく必要がある。そ 黒川先生にお訊ねします。バイオインフォマ の蓄積していったデータから逆算をして何か経 ティクスの立場から今の臨床のニーズと基礎か 験的なものを発見していこうというのが、バイ らあがってくるシーズとうまくドッキングさせ オインフォマティクスの一つの立場ではないか るのはバイオインフォマティクスの仕事ではな と思います。 いかなというような気もするのですけれども、 効率よくうまくセットするために、バイオイン (堀先生) フォマティクスが何が出来るかということをお っしゃって頂けませんでしょうか。 おそらく製薬企業の研究所の中ではこのバイ オインフォマティクスのプロトタイプのような ものをすでにやっておられるのではないかと思 (黒川先生) うのですけれど、これまでバイオインフォマテ 臨床データということをおっしゃっておられ ましたけども、臨床データからある程度情報が ィクスが創薬に非常に役に立ったというわかり やすい事例はあるのですか。 集まった段階でバイオインフォマティクスを適 用していくというのは、今後も重要になって来 (黒川先生) るだろうと思われます。元から何もない状況で 私もそれほど詳しくはないのですけれども、 バイオインフォマティクスで何か出来ないのか HIVのカクテル療法で使用されているプロテ というと、今ちょうどsiRNAとかでも話題と アーゼ阻害剤もそのひとつでしょうし、インフ いうか問題になりつつあるのですが、siRNAなど ルエンザウイルスに対するノイラミニダーゼ阻 は具体的にどういうように予測したらいいのか 害剤開発にもバイオインフォマティクスによる という事がまだ理解されていない、バイオイン タンパクの立体構造解析などが有効に働いたケ フォマティクスチャレンジの一つなんですけれ ースということは聞き及んでいます。 ども、米国のある企業では、可能性がある候補 をとにかく網羅的に調べあげて、大量のデータ (堀先生) -20- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) タンパクを網羅的に解析するというのは大変 な作業だと思うのですが、了戒先生のトキシコ のですが。何かアルゴリズムのようなものがあ るのですか。 ゲノミックスのほうがより的が絞られているよ うな気がするのですね。仕事のターゲットが比 (了戒先生) 較的絞り込まれているので、むしろバイオイン 理想的には将来、このシステムに未知の新し フォマティクスも使いやすいだろうし、今の議 い医薬品の候補化合物の遺伝子発現プロファイ 論がより現実に近いところにあるような気がす ルを入力したときに、その化合物の毒性が予測 るのです。そこで、現在進行しているプロジェ 出来る、先程黒川先生から天気予報のお話があ クトの中で、もし、お差支えなければどの程度 りましたが、まさにそういう確率的なもので、 の段階まで進んでいて、そのライブラリーが当 このタイプの化合物であれば毒性でこの段階で 初思っておられるものの何パーセント位か、ま 中止になる確率が何パーセントというシステム た、今どういうステージまで進んでいるのか、 が出来れば一番よろしいのですけれども、そこ その進行状況をかいつまんでご説明願えますで までいくかどうかはまだまだ予測できません。 しょうか。 (堀先生) (了戒先生) 臨床の立場から考えますと、どういう遺伝子 先程もちょっと触れましたように、150化合物 が発現したら、どういう毒性が出て来るかとい のデータ取得を当初の目標としておりまして、 うそこのマッチングはまだわからないのではな この数は出来ればもう少し増やしたいわけです。 いでしょうか。 このプロジェクトで実際にデータをとっていく 例えば、ある薬剤の代謝酵素の遺伝子の発現 のは、ラットのデータが主ですが、動物実験に が非常に上がっているとすると、その代謝酵素 着手しているのが約4分の1、すなわち25%。 活性が亢進するので、非常に代謝され易いであ 遺伝子発現解析が終わったものが約10%という ろうというのは安易に想像が付きやすいですよ 段階です。 ね。しかし、一般に毒性がいろいろな副作用と して出て来ると思うのですが、それが必ずしも (堀先生) どの遺伝子或いはどのタンパクによって生じて いるのかというのはわかっていない現状でしょ それは細胞レベルですか。 う。それを今から見ようとされているのでしょ (了戒先生) うか。そういうことではないのでしょうか。 ラットに単回、連続経口投与時の肝臓サンプ (了戒先生) ルを用いたチップデータです。 臓器は今のところは肝ですが、遺伝子発現の おっしゃるとおり、まずそういう文献的にも データの進捗率が10%、発現データを格納する 既知の毒性と遺伝子発現の関係を検討し、開発 データベースはすでに出来ておりまして、その や販売中止化合物についての情報も取り込んで、 バージョンアップと共に、そこに順次データを いろいろと遺伝子と毒性の関係を整理していく 格納中ということと、予測システムについては ことも必要です。 いろいろな考え方があるそうで、その検討に取 りかかっているという状況です。 (寒川先生) (堀先生) った毒性についても細胞でやるときと生体の場 今の関連で私が伺いたいのは、例えばそうい 今おっしゃった予測のシステムというのは講 合に、要するにそのものが直接作用するのか、 演の中にも出て来てたのですが、具体的にどう 代謝されたものが作用しているのかという問題が いうイメージですか。イメージがわかなかった 出て来るのですが、そういうところは今のシステ -21- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) によって、どこが強力であるのかというのがか ムをどういうふうに考えていくのでしょうか。 わってくると思います。ですから、ゲノム解析 (了戒先生) のようにですね、解析手段がそろっていて後は 今はビボのデータ、すなわちラットに単回投 パワーとデータ処理能力のある機関が見えてい 与或いは連続投与したときの遺伝子発現のデー るという状況ではありません。先程も言いまし タとそれから、ラット或いはヒトのビトロデー たように、タンパク質の場合は非常に量の多い タについての検討をやっておりまして、データ ものから少ないものまであり、また種類も多い を集めているというのが今の現状です。 ということになりますと、かなり基盤技術を開 発しない限りなかなか進まないのではないかと (堀先生) 考えております。 例えば、ある薬剤を服用したときに頭痛が起 こるというときに、その薬剤を細胞に振り掛け (堀先生) るとNOの産生酵素(NOS)の遺伝子発現が 上がったとすると、このNOが血管を開いて頭 了戒先生、トキシコゲノミックスで海外の現 状というのはいかがでしょうか。 痛の原因になっているのではないかという勝手 な仮説が立てられますね。それが、ひょっとし (了戒先生) て、将来結びついてくるかもわからないわけで アメリカの場合ですが、アメリカにジーンロ すね。そういう意味ではいろいろな遺伝子の発 ジック社という会社がございまして、ここのト 現で特に大きく変化するものを見つけて、それ キシコゲノミクスのデータベースは私ども三共 らでライブラリー化しておくと、将来、頭痛な をはじめとして、購入して使っている会社が結 ら頭痛事象で、共通して動いてくるようなもの 構あります。ジーンロジック社とFDAが今年 を見つけると、それが頭痛の原因になっている の8月19日に共同研究を発表しております。そ というようなことが遺伝子レベル或いはタンパ れによりますと、ゲノミクスデータの評価基準 クレベルでわかってくるといいなということで 構築についての共同研究ということです。FD すね。 Aとしては、先程の早川先生のお話にもありま したように、ファーマコゲノミクスのガイダン (了戒先生) スのドラフトを出したばかりです。ガイダンス 案の内容、或いは最近のシンポジウムでの討議 そうなればいいなと思っております。 の模様を見ますと、トキシコゲノミクスのデー (堀先生) タ、すなわち、毒性評価にかかわる部分がファ わかりました。 ーコゲノミクスデータとして、必須のデータに 実は寒川先生と了戒先生それから、黒川先生 なる場合、或いは、任意・自発的にに出してい にお聞きしたいのですが、プロテオーム、それ い場合というような考え方で整理されていくと から、トキシコゲノミクス、バイオインフォマ いうふうにみられます。これもあくまでドラフ ティクスの海外の実情といいいますか、どうい トでまだパブリックコメント中ですので、これ うレベルにあるかというのをわかっておられる からの話ですけれども、やはり、これからも一 範囲でお聞かせ下さい。 歩先を進んで行くという状況です。 (寒川先生) (堀先生) 私はそれほどプロテオームについては詳しく これからは、そういう情報を一緒につけて出 はないのですが、ただいずれにおいてもこれと していくのはまだ、義務付けされていませんが、 いった決定的な解析技術はまだ無いと思います。 そういう方向になっていっていると、恐らく少 ですから今後それがどういうように発展するか し遅れてわが国でもそのようなことになるだろ -22- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) か、ヨーロッパだとEBIであるとか、要する うということが推測されるということですね。 黒川先生、バイオインフォマティクスの学者 にそういう巨大なセンターバイオインフォマテ が非常に日本に少ないと思うのですが、海外で ィクスのセンターとなるようなところがうまく の実態というのはいかがでしょうか。 機能している。日本ではまだいろんなところに バイオインフォマティクスの研究室がある程度 (黒川先生) で、センターと呼ばれるようなものがまだまだ 例えば、アメリカとかイギリスとか含めて、 少ないわけですね。こういうものを早急に整備 一見多いように思えるのですが、実は先程私の すれば、人材育成とか先程言ったコミュニケー 講演の中で言ったようにですね、例えば、バイ ションとかも解消するのかなと個人的には思っ オロジーとインフォマティクスを両方理解して ています。 いるような研究者というのは、まだ非常に少な いというのが現状です。ただ、彼らが優秀なと (堀先生) ころは人材育成というものに早くからとりかか 確かに臨床のクリニカルトライアルなども日 り、パワーを注いでいるという点です。したが 本は非常に遅れています。そういうデータを解 って、近い将来はひょっとしたら海外と大きな 析するデータセンターがやっと最近東京に一 差が出て来る可能性があるということです。先 つ、神戸に一つというような感じで出来て来て 程寒川先生が、ゲノムシークエンスは先が見え います。そうすると、生物統計学専門家も育っ るということをおっしゃってましたが、実は当 て来るわけです。それと同じようにバイオイン 時のゲノムシークエンスというのは先が見えな フォマティクスの分野でもそういうセンターと かった状態でした。シークエンス技術とかもや いうものが出来ると、そこに人材がどうしても はりまだまだ発展途上であり、また、どのよう 必要だというので、育って来ると思われます。 にアッセンブルしていくかというところもいろ だから、このような仕掛けがこれからいるので いろなノウハウが必要であった。シークエンサ はないかと思います。今、お話を聞いていてそ ーに限っていいましても、日本は早くから良い れこそ産官学でやっていく必要があるのではな 機械を作っていたわけです。ところが、やっぱ いかと思いました。 り負けてしまっている、更に、インフォマティ 土屋先生と早川先生はどちらかというと各論 クスに関するソフトウェアにおいても良いもの というよりも制度のあり方など、基盤整備に関 を持っていたのですが敗れた。何でそういうよ するお話を頂いたのですが、わが国の製薬メー うにどんどん敗れていってしまうのかというこ カーの研究開発、海外の大企業と比較して規模 とが、相変わらず疑問のまま残ったままです。 が小さいということだけなのか、何か本質的に もう一つは圧倒的に差を感じるのは、最後の面白 システム上違うというようなことがあるのでし くないスライドを見せて愚痴りましたけれど、や ょうか。いかがですか。 はり人と人とのネットワークというところ、コ ミュニケーションというところで、向こうの研 (土屋先生) 究者はバイオインフォマティクスが当たり前に 海外の大手製薬企業と共同研究や共同開発を なっている。それを使うことが大前提であると 進めていて感じますのは、やはり、彼らはステ いうようなスタンスで研究をされている方が特 ップバイステップに研究を実施するのではなく にゲノム関連では非常に多い。日本ではまだ例 て、網羅的に、要するに初期の段階から薬物動 えば、配列を出したから黒川君何とかしてよと 態とか探索毒性なども同時並行的にやっていく いうような先生もおられるような状況で、まだ というような戦略が多いということですね。だ まだそういうことが出来ていない。もう一点だ からスピードがあるし、臨床開発試験に入るの け言わせて頂くと、海外では非常にセンター化 も早いです。しかし同時に、無駄も多く発生し が進んでいる。例えば、NCBIでありますと ていると感じています。我々がもしそこで対抗 -23- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) して行くためには、効率的なことをいかに求め (堀先生) まだまだ、アライアンスは日本は足らないと ていくか、すなわち規模の論理では出来ないと ころで勝負することですね。我々はいろいろな いうふうにお考えですね。 共同研究を海外の大手とやっていますけれども、 (土屋先生) 一つ一つのテーマについては、5人なり10人な りの研究員が担当してやっているわけで、人員 だから、国内外、産学官問わず、いろんな関 係でやったらいいと思います。 や能力に差がある訳ではなく、海外の大企業に 十分対抗出来ると考えています。最終的には、 (堀先生) その一つ一つのテーマにおいて、いかに他社に 今でもやっておられるのかどうかわかりません 勝つかということになる。そうすると、重要な が、海外の大学や研究所に高額な寄付をして、 ことは自社の研究の実をいかに上げるか、テー そこに共同研究施設をつくることが流行りまし マのレベルをいかに上げるか、質の高い研究を たが、うまくいっているのですか。 いかに行うかと言う事になります。それと同時 (土屋先生) に、自社以外の技術力をどう生かすか、どう使 確かに一時そのような方法が流行りましたけ うかというところが大切なポイントとなって来 れども、今は少し反省期に入っているのではな る訳です。質の高い研究をすれば、むしろ相手 いかと、私は想像しています。これには日本企 の方から一緒に共同研究をしたいと言って来る 業の創薬力が向上していること、産学官の連携 ので、日本の製薬会社であっても個別のテーマ が多様化し、これらを活用する“場”が拡大し ごとにおいては、それぞれ規模の論理だけでは ていることなどにもよると考えております。 規定されない方法があるだろうと思っておりま (堀先生) す。 そうすると、そういう箱ものを一生懸命作っ て大学と一緒にやっていこうというのは、あま (堀先生) 実際、海外の企業といわゆるアライアンス、 提携しておられる企業もたくさんおられると思 り成果としては投資のわりには少なかったとい うことですか。 うのですけれど、その中の経験を通じて、アラ イアンスというのを進めていけば、わが国のレ (土屋先生) ベルが上がるのでしょうか。或いは、対等に動 期待通りの成果が得られている会社もあると いているというように考えていいのか、いかが 思います。私のところは、先程申し上げたよう でしょう。 にサンディエゴの研究所に30人ぐらいの研究員 がおりまして、ここではそれなりの研究成果が 得られているのではないかと考えております。 (土屋先生) まず基本的には自社の研究をいかにレベルの 高いものにするかということがあって、そのと (堀先生) きに相手の力をいかに活用するかということで それは一例でありましたけれども、いろいろ す。創薬に必要な技術の全てが全て自社で対応 な形態でもっと連携をしていくべきであるとい 出来ればいいのですけれど、現実にはそれが難 うのが、土屋先生の手法であったと思うのです。 しい。むしろ相手の強いところと、こちらの強 早川先生にお聞きします。インタビューの中 いところを組み合わせることによって、相乗効 で、今までGCP、GLP、GMPというガイ 果的に効果が現われるのであれば、アライアン ドラインが出来たのですが、GRPというのは スを積極的に活用したらいいだろうと思ってい 立場をかえて出されているというのが、非常に ます。現実に欧米企業の方がより積極的にアラ 印象的でした。いわゆる評価するというか監査 イアンスを活用しております。 する方にもよい監査のあり方というガイドライ -24- 大阪医薬品協会 会報(平成16年3月・第662号) ンをきちんと作ってやっているというのは、非 いけない一つの手法ではないかなというように 常にアメリカらしいと思いますが、そういう意 思いました。 時間がなくて十分なディスカッションができ 味では、わが国もそういうラインにあるという なかったのですが、どなたか会場からご質問あ ように考えてよろしいのでしょうか る方ございませんでしょうか。 (早川先生) 私は審査当局者ではないので、どういう状況 (寒川先生) かは正確にはわかりませんが、多分そういう方 会場から質問を頂いておりますので、簡単に 向だと思います。アメリカは比喩的に言えば、 ご紹介します。グレリンが多様な生理反応を起 誰がやっても多分同じ結果を出せるシステムを こすというのは受容体がちがうのかどうかとい 作っていく、もちろんいろいろな自由度の高い うこと。それから、作用後の細胞内シグナル伝 やり方をするというのも一方ではありますが、 達系が異なるのかというようなことの質問です。 一方では非常に堅固にシステムを作り上げてい グレリンの作用の一つは成長ホルモンを介す くというのが、アメリカのやり方です。比喩的 る反応といいますか、成長ホルモンが分泌され ですけれど、山に登るのに100人の隊員と100人 ることによって生じる作用と、食欲促進のよう のポーターと100本の酸素ボンベと10個のテン に成長ホルモンを全く介さない反応という二つ トでアメリカは登っていく。ヨーロッパは50人 があります。それから、作用の方法としまして ずつ、日本は10人の隊員と10人のポーターで登 もダイレクトに末梢の細胞に作用する場合と、 る、日本は何でそんなことが出来るのですかと 求心性の迷走神経を介して一度中枢にシグナル いうと、日本はふもとできちっと訓練するから がいって、それからまた、遠心性に作用すると だと、アメリカの場合だと訓練しなくても登れ いうようなメカニズムがあります。このように るようなシステムを作ると。ちょっと話がそれ そういったものが組合わされることによって、 ましたけれども、多分GRPはそういう一つの グレリン作用の多様性が出て来るのではないか やり方なんだろうと思います。日本の審査が必 というように考えています。もう一つは成長ホ ずしも一貫性が無いということで、産業界から ルモン分泌なんかに関しましては、多量に連続 非常にご不満が多いとすると、そういう形で一 投与しますとダウンレギュレーションが起こり 貫性のあるような形にはしていく、それはどの ます。ところが食欲に関しましては、慢性投与 程度トレーニングによってするのか、わざわざ を行っても反応性が落ちるということはありま システムを作ってやっていくのかということは せん。その面からいきますと細胞内の情報伝達 あるとは思うのですけれども、多分システムも 系についてもやはり、細胞によって異なるので それなり作る方に向かうような気がいたします はないかということが、現在わかっております。 けれども… (堀先生) (堀先生) 有難うございます。 最近はFDAがやっているように、いわゆる 会場の方からのご質問にお答え頂きました。 機構相談というようなものも昔はなかったので それでは、予定の時間をオーバーいたしました すけれども、事前にそういうものを聞いてお互 ので、これでパネルディスカッションを終わら いにディスカッションしていくという場も広が せて頂きます。 ってきているのは事実です。おそらくこれから 本日ご講演の内容及びその後のディスカショ は評価する者と申請する者の間のコミュニケー ンの内容がまさにこの創薬基盤技術の開発に非 ションももっと柔軟にとっていって、しかも透 常にプラスになって関西の活性化にお役に立て 明性の高い評価が出来るという意味ではこのG ば幸せでございます。演者の先生方どうも有難 RPというのも今後我々が考えていかなくては うございました。 -25-
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