ポーラ美術館10周年事業計画のご紹介 2012 コレクター鈴木常司 美へのまなざし 4 遊歩道開放 公募型グッズデザイン募集開始 Ⅰ期 ピカソ とポーラ美術館の絵画 7 第 7.14 [土] ∼ 10.2 美術館ガイドブック刊行 [火] 化粧道具:ヨーロッパの香りと化粧 ―ロココからアール・ヌーヴォー 工芸 :伝統の技と美 屋外彫刻設置 8 9 パブロ・ピカソ 《母子像》 1 9 21 年 油 彩 ・カン ヴ ァ ス 開館10周年記念日 9月6日 9月9日(日) The 10th Anniversary Present ! 10周年記念プレゼント! (c)2012-Succession Pablo Picasso-SPDA(JAPAN) 10 Ⅱ期 モネ とポーラ美術館の絵画 第 10.5 [金] ∼ 2013.2.26 [火] 化粧道具:江戸の化粧 ―婚礼化粧道具と髪飾り 古陶磁:中国・日本・韓国陶磁名作選 11 ナイトミュージアム開催 クロード・モネ 《睡蓮の池》 1 8 99 年 油 彩 ・カン ヴ ァ ス 12 Ⅲ期 杉山寧とポーラ美術館の絵画 第 2013.3.1 [金] ∼ 7.7 [日] 化粧道具:20世紀の化粧 ―アール・ヌーヴォーから アール・デコ 古陶磁:中国・日本・韓国陶磁名作選 1 2 杉山 寧 《薫》 1 9 7 5 年 ( 昭和 5 0 ) 紙 本 彩 色 ・ 額 装 12 3 公募デザインミュージアムグッズ・ オリジナルキューピー発売! News Release ポーラ美術館 報道資料 ポーラ美術館開館10周年記念展 コレクター鈴木常司 美へのまなざし Ⅰ期 ピカソ 第 7.14 [土] -10.2 と ポーラ美術館の絵画 [火] 【報道に関するお問い合わせは】 ポーラ美術館 広報事務局 担当:増田、小椋、三井 Tel 03-3575-9823 / Fax 03-3574-0316 ポーラ美術館 学芸部広報担当: 比良田(ひらた) Tel 0460-84-2111/ Fax 0460-84-3108 ポーラ美術館開館 10周年を迎えるにあたって ポーラ美術館は、「箱根の自然と美術の共生」のコンセプトのもとに、2002年9月、緑豊かな富士箱根伊豆 国立公園内の神奈川県足柄下郡箱根町仙石原に開館しました。 ポーラ美術館が収蔵するコレクションは、ポーラ創業家2代目であり、現ポーラの会長も務めた鈴木常司 (1930-2000)が戦後、40数年をかけて収集した作品群です。分野は、西洋絵画・日本の洋画・近現代の日 本画・版画・彫刻・東洋陶磁・日本の近現代陶磁・ガラス工芸・化粧道具など多岐にわたり、総数は約 9,500点におよびます。 開館10周年を迎える本年は、国内では戦後最大級のコレクションを創り上げた知られざるコレクター、 鈴木常司をご紹介する記念展覧会の開催をはじめ、4つの柱にわたってさまざまなイベントや事業を開催 していく予定です。 10周年を迎えるポーラ美術館のこの1年に、どうぞご期待ください。 1. 10周年記念展 コレクター鈴木常司 美へのまなざし 本展覧会では、鈴木常司の知られざる人物像とその美意識に関わるコレクション、手がけた文化事業を 12のテーマに より全展示室でご紹介します。また、展覧会会期を3期に分け、第Ⅰ期では20世紀絵画の巨匠ピカソ、第Ⅱ期では印象 派の巨匠モネ、第Ⅲ期では現代日本画の巨匠である杉山寧の絵画を特集してご紹介します。 2. 遊歩道の開放 富士箱根伊豆国立公園内に位置するポーラ美術館の周辺は、ブナの巨木やヒメシャラの群生が育つ地として有名で自 然度が高く、季節ごとにさまざまな野鳥が集う樹林が広がっています。開館10周年の節目に、人と自然に配慮した環 境整備を行い正式に開放できることとなりました。(11ページにて紹介) 3. イベント 今年10周年を迎えるにあたり、お客様に感謝の気持ちを込めてプレゼントを用意するほか、下記の通りイベント、キャン ペーンを行います。詳細につきましては随時HP等で情報を公開します。 ・The 10th Anniversary Present ! ―10周年記念プレゼント (10ページにて紹介) ・ポーラ美術館オリジナルキューピーデザイン大募集! (10ページにて紹介) ・ナイトミュージアム(11月開催予定) 4. 出版物 ・10周年記念展展覧会図録「コレクター鈴木常司 美へのまなざし」 ・発行:公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館 ・2012年7月刊行予定 ・判型・体裁、総頁:A5変型、総頁240頁(予定) ・2,400円(予価) ・2002年の開館から2012年までの10年のあゆみについてご紹介する冊子「ポーラ美術館の10年 2002-2012」を刊行します。(非売品) ・ポーラ美術館ガイドブック 「きょうは一日ポーラ美術館で。箱根の自然と名作アートに親しむ 」 ・ 発行:株式会社武田ランダムハウスジャパン ・ 監修:公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館 ・ 判型・体裁、総頁:A5変型並製、総頁136頁(予定) ・ 1,800円(予価) ・ 2012年7月31日刊行予定 表紙の作品画像: 母子像 パブロ・ピカソ 1921年 油彩・カンヴァス 2 (c)2012-Succession Pablo Picasso-SPDA(JAPAN) 10周年記念展・開催概要 ポーラ美術館のコレクションは、ポーラ・オルビスグループの前オーナーである鈴木常司(1930-2000)が戦後、1950年代末から40数年を かけて収集した作品群です。総数約9,500点におよぶ、西洋絵画・日本の洋画・近現代の日本画・版画・彫刻・東洋陶磁・日本の近現代 陶磁・ガラス工芸・化粧道具など多岐にわたるコレクションは、戦後の個人コレクションとしては質量ともに日本最大級の規模を誇ります。鈴 木常司は寡黙な人物であったため、コレクション生成の経緯や美術作品について語った言葉は多くありません。開館以来、私たちはコレク ションと対話しつつ、この寡黙なコレクターの美を求めるまなざしに迫ろうと努力してきました。開館10周年を記念して開催される本展覧会で は、鈴木常司の知られざる人物像とその美意識に関わるコレクションや手がけた文化事業を、12のテーマにより全展示室でご紹介します。 また、展覧会会期を3期に分け、第Ⅰ期では西洋絵画コレクションの重要な柱のひとつである20世紀絵画の巨匠、パブロ・ピカソの作品の 特集展示をはじめ、日本の近現代陶磁、伝統工芸、西洋の化粧道具をご覧いただきます。 ■「コレクター鈴木常司 美へのまなざし」 展覧会会期と展示内容 第Ⅰ期 2012年7月14日ー10月2日 ピカソとポーラ美術館の絵画 化粧道具:ヨーロッパの香りと化粧―ロココからアール・ヌーヴォー 工芸: 伝統の技と美 第Ⅱ期 2012年10月5日―2013年2月26日 モネとポーラ美術館の絵画 化粧道具:江戸の化粧―婚礼化粧道具と髪飾り 古陶磁:中国・日本・韓国陶磁名作選 第Ⅲ期 2013年3月1日―7月7日 杉山寧とポーラ美術館の絵画 化粧道具:20世紀の化粧―アール・ヌーヴォーからアール・デコ 古陶磁:中国・日本・韓国陶磁名作選 コレクター鈴木常司 美へのまなざし 第Ⅰ期 【会期】 2012年7月14日(土)―10月2日(火) 会期中無休 【主催】 公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館 【会場】 ポーラ美術館 【出品点数】 約300点 【開館時間】 午前9時∼午後5時 (入館は午後4時30分まで) 【休 館 日】 会期中無休 ピカソとポーラ美術館の絵画 (神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285) Tel :0460-84-2111 / Fax: 0460-84-3108 【入館料】 大人 シニア割引(65歳以上) 大学・高校生 中学・小学生(土曜日無料) 個人 1,800円 1,600円 1,300円 700円 団体(15名以上) 1,500円 1,500円 1,100円 500円 ■ 「コレクター鈴木常司 美へのまなざし」 展覧会関連イベント ■ 記念講演会 ■ 「コレクター鈴木常司 美術館の夢」 講師:荒屋鋪 透(あらやしき・とおる ポーラ美術館館長) 【日時】 2012年7月28日[土] 14:00-15:30 (先着100名) 【会場】 ポーラ美術館講堂 【参加費】 無料(当日入館券が必要) ■ 「ポーラの建築:建築主・鈴木常司と建築家・林昌二の幸福な関係」 講師:安田 幸一(やすだ・こういち 建築家、東京工業大学大学 院教授 ポーラ美術館設計者) 【日時】 2012年10月20日[土] 14:00-15:30 (先着100名) 【会場】 ポーラ美術館講堂 【参加費】 無料(当日入館券が必要) ■ ギャラリートーク 学芸員が展覧会会場でテーマ別にみどころを説明します。 ● 2012年7月21日(土) 「鈴木常司 ピカソへの想い」 ● 2012年9月22日(土・祝) 「ポーラのイメージと女性像 ロダンとルノワール」 講師 東海林 洋 (しょうじ・よう 当館学芸員) 講師 岩崎 余帆子(いわさき・よおこ 当館学芸課長) 3 日本の戦後最大のコレクションを創った 知られざるコレクター、鈴木常司とは 穏やかで、寡黙。 「頓着ない」性格だったという。 23歳という若さで、突然 父・忍が創業したポーラ化粧品本舗を継ぐことに・・・ 鈴木常司(すずき・つねし)・プロフィール 肩書、職業 趣味 好きな本 嫌いなもの 好きな食べ物 好きなお酒 ポーラ創業家二代目 美術鑑賞、読書 『十八史略』 経営に通じるところがあり、よく読み返した。 嘘といいわけ そば、うなぎ、静岡おでん 日本酒 (「夕刊フジ」昭和62年12月22日に加筆・修正) 1930年7月 静岡県に生まれる。 1953年8月 経営学を学ぶため、アメリカに留学。 ウィリアムズ・カレッジに学ぶ。 1954年1月 コロンビア大学入学準備のため、ニューヨークへ移る。 同年3月 国際電話で、父、忍の急逝を知る。 留学を中断し、直ちに帰国、社長に就任。 創業者の遺業となった新工場の建設に尽力。 鈴木常司のコレクション活動 個人のコレクションなのに体系的で幅広い!その数、約1万点! コラム コレクションは、西洋絵画400点、日本の洋画280点、日本画160点、版画900点、 彫刻30点、東洋陶磁180点、ガラス工芸790点、化粧道具6700点と多岐にわたる。 個人のコレクターは一般的に珍しいものを好む傾向にあるが、鈴木常司は、美 術史の流れを追う、体系的なコレクションを創りあげた。これは特筆すべき点で ある。19世紀から20世紀の西洋近代絵画と日本の近代絵画の歴史を追い、さら には美術史上、重要とされる画家の重要な時期の作品を集め、その変遷を追っ ている。 「コレクション 日本最多 紹介」 ルノワール15点(彫刻含む)、 ● モネ19点、 ドガ9点(彫刻含む)、● ゴッホ3点、● セザンヌ9点、 ● ルソー8点、● ピカソ19点、● マティス8点 ● モディリアーニ3点、 ● ロートレック3点 ● 杉山寧43点 ● ● *版画は含まない 独学で美術を学び、自らの眼で作品を選んだ コレクターには一般的にアドバイザーがおり、アドバイザーが作品を選ぶということがよく行われるが、鈴木常司は独学で美術を学び、 作品を収集した。では、いつ、どのようなきっかけで、美術を学ぶようになったのか。 まずひとつ考えられることは、元々写真が趣味であり、写真と同じく美的な感性が求められる美術に興味を持った、ということ。 次に考えられるきっかけが、アメリカで学んだ環境である。留学先のウィリアムズ・カレッジでは経営学を 学んだが、同大は、高名な美術史家を多く輩出しており、充実した美術館を 併設していた。 このような背景があり、鈴木常司はアドバイザーに一任するのではなく自ら の眼で作品を選ぶべく、独学で美術を見る眼を養ったのである。 40余年という歳月をかけて収集した 1958年、28歳のときに静岡市の田中屋(現・ 伊勢丹)というデパートでレオナール・フジタ 《誕 生 日》と、荻 須 高 徳《バ ン バ ラ 城》を 購 入。その後、2000年まで収集を続けた。 誕生日 バンバラ城 レオナール・フジタ(藤田嗣治) 荻須 高徳 1958年(昭和33) 油彩・カンヴァス 1958年 油彩・カンヴァス 4 (c)ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2012 (c)ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2012 コレクター鈴木常司について知りたいこと Q&A 「絵画は私に糧を与えてくれる」 鈴木にとって美術収集は、「趣味」ではなかった。 人生の歩みそのものであった。 Q, コレクター鈴木常司、美術収集の動機は? A, 鈴木常司はコレクションについて殆ど語っていない。 しかし、『ル・フィガロ』誌1991年1月号のインタビューには その謎を解くヒントがある。 なかったのです。」 Le Figaro Magazine 1991年1月号 ・・・・・鈴木常司氏は、《後継者》だったの で、アメリカに経営を学ぶつもりだった。彼 は、アメリカに5年間滞在するつもりだった。 しかし、7ヶ月の後、彼は帰国した。亡くなっ た父親の後を継ぐためである。鈴木氏は 23歳であった。若い青年の肩に、事業は 重くのしかかった。実務的な諸々の事柄を 忘れるため、彼は、アール・ヌーヴォーの ガラス工芸、考古学、絵画に興味を持っ た。モネと、その仲間達の作品に、氏は、 すばらしい質のものを選ぶことができた。 「あなたの会社は、あなたのお父様がおつ 50もの印象派の巨匠の作品は、パリの美 術館にさえないが、東京の鈴木氏のコレ くりになったのですか?」 さらにこのように話す人もいる。「年に数回、決断しなけれ 「そのとおりです。私は、内気で多弁では クションには、あるのだ。 ありませんし、孤独でした。私は、私の支 同誌はコレクションの動機を若くして重責 ばならなかったとき、部屋から出てこない。部屋を訪ねて 配下にいる12万人を指揮しなければなら を担う立場にあったことに求めている。 みると、絵を眺めていた」。 (インタビューは一部加筆修正) フランス『ル・フィガロ』誌の1991年1月号 に、編集者ヴェロニク・プラ氏による、美術 品収集に関するインタビュー記事が掲載 された。内容は次のようなものである。 日本の西洋美術コレクターの「第一期」の 功労者として、松方氏、大原氏、石橋氏を 挙げた後、「第二期」の功労者として鈴木 常司を紹介。鈴木を美術品を投機の対象 とする投機家ではなく、芸術として評価す る「コレクター」である、と評した上で、現職、 及び収集活動について質問している。 Q, A, 気に入っていた作品、好きな作品はありましたか? 岡鹿之助の作品についてある雑誌でこう語っている。 私は特に、だれの絵が好きということはありませんが、岡鹿之助の絵は好きな方です。 例えばここに紹介した「掘割」は、静謐な感じで、見ていると心が落ち着きます。 「わが社のこの一点」第20回 ポーラ化粧品本舗社長 鈴木常司『ビッグ・エー』(1988年6月第59号) 近しい人に「マティスの絵からは音楽が聞こえてくる」と話していた。 掘割 岡鹿之助 1927年(昭和2) 油彩・カンヴァス Q, A, いわゆる名品(ピカソの《海辺の母子像》や、モネの《睡蓮の池》など)を 手に入れたのは、いつ頃どのような理由からですか? いわゆる名品をコレクションするようになったのは、収集活動をはじめて20年程経ってから。 美術館設立を意識する気持ちが芽生え、美術館のコレクションの核となるような作品の収集を意識し始めたのでは? 収集活動の動機が個人的なものであった時期と比べ、個人を越えて公益に供すことを意識するようになってからのコレクションに は、変化がみられる。おそらく、もともとの嗜好に加えて、ミュージアムピースとなる作品であるかということも、意識されるように なったと考えられる。自ら美術史を学んで知った名品を、この日本で見られる場を創りたいという意志があったためだろう。 Q, A, こんなにすごいコレクターなのに、何故今まで知られていなかったのですか? ポーラ美術館が開館するまで、コレクションの全容が公開されていなかったことに加え、 本人が寡黙で、自らのコレクションについてほとんど口外しなかったから。 一般的に、個人のコレクターのコレクションがどういうものか―、例えば、誰がどの 画家の、どういった作品を所有しているか、公にされることはほとんどない。というの も、個人の所蔵する作品が美術館で展示される機会は、企画展等の特別な場合に 限られる上、展示の際は「個人蔵」と表記され、所蔵者を明らかにしないからであ る。 鈴木常司のコレクションが公開された初めての展覧会は、1989年に静岡で開催さ れたSUNPU博の美術展覧会であるが、このときも「協力:POLA」として出品されて いる。 ポーラ五反田ビル旧会長室 2000年撮影 5 ポーラ美術館のコレクションの歴史と「コレクター鈴木常司 美へのまなざし」展示構成 ポーラ五反田ビル完成 ● 横浜研究所完 成 ● ●初のファミリーブランド﹁エク セル﹂、シンボルマーク﹁ゆり﹂ が誕生 テレビドラマ﹁ポーラ名作劇場﹂ 放送開始 ● ポーラ銀座ビル完成、 本社機能を ● 静岡より移転 現地法人ハワイポーラ設立 ● 関西支社を開設。 ポーラ銀座ビル 建設着工 1963 33歳 1964 1971 34歳 41歳 出光美術館開館︵ 1966 ︶ 山種美術館開館︵ 1966 ︶ サントリー美術館開館︵ 1962 ︶ 静岡の田中屋で、 藤田嗣治 ︽誕生日︾ 荻須高徳︽バンバラ城︾購入 ● 主な絵画の収集対 フォー レースの帽子の少女 ピエール・オーギュスト・ルノワール 1891年 油彩・カンヴァス あやめの衣 岡田三郎助 1927年(昭和2)油彩・厚紙 (カンヴァスに貼付) 当館コレクションには、女性の美をとらえた作品が多く含まれ ている。本セクションでは、女性の美を表現した古今東西の 代表的な絵画・工芸を展示する。 4 心鎮まる絵画︱岡鹿之助とルソー 鈴木は近しい人々に、ルドンと ルオーの絵を見ていると元気が 沸いてくると語っている。 コレクションの中でも特異な作 家であるこの二人は、会社経 営者としての彼にとってどのよう な存在だったのだろうか。 父・忍が逝去の知らせ受け、 急遽アメリカより帰国 1890年頃 油彩・紙(カンヴァスに貼付) ● オディロン・ルドン 5 1960 30歳 1958 28歳 美の女神たち イカロス 1954 23歳 鈴木常司、アメリカへ留学 ● 1958 ∼ 1970 年 代 初 頭 ま で、鈴 木 は 力 強いタ ッチや 線描による作品、フォーヴィ スムの影響を受けた日本の 洋画を好んだ。またユトリロ も多くの作品がこの頃に収 集されていた。 ● 鈴木常司、ポーラ化成工業及び ポーラ化粧品本舗副社長に就任 1900-1905年頃 パステル・紙(厚紙に貼付) ブリヂストン美術館開館︵ 1952 ︶ 神奈川県立近代美術館開館︵ 1951 ︶ 踊り子たち エドガー・ドガ 父・忍、五十一歳の若さで逝去。 ● 常司、化成・本舗・総本社の社長 に就任。 ● 。 ポーラ化粧品本舗︵現ポーラ︶ ● 商号登記 6 s 絵画の照らす道 ︱ルオーとルドン 3 鈴木常司、静岡県に誕生 初期の収集とユトリロ 2 1929 1930 1931 1953 22歳 0歳 ● 1958年、鈴木が28歳の時に初めて購入したレ オナール・フジタ《誕生日》と荻須高徳《バンバラ 城》を紹介。戦後の日本最大のコレクションの はじまりを辿る。 父・鈴木忍が静岡で化粧品製造 を開始 誕生日 レオナール・フジタ(藤田嗣治) 1958年 油彩・カンヴァス 美術品収集に関することなど ︱コレクションのはじまり 1958年 ● 企業人として︱企業経営と文化事業 1 (c)ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2012 掘割 岡鹿之助 1927年(昭和2) 油彩・カンヴァス 「《掘割》は、静謐な感じで、見ていると心が落ち着きます」と 語った鈴木は、岡鹿之助の絵画に愛着を感じていたようだ。 本セクションでは、穏やかな色調と均整の取れた構図を特 徴とする岡の作品や、彼に影響を与えたルソーの作品などを 特集展示する。 ● 藍綬褒章受賞。 ポーラ美術館開館 ● 10 2000年 鈴木常司死去 ● 東急文化村ミュージアム開館︵ 花束を持つピエロに扮したパウロ 印象派 ︶ 1989 レオナール・フジタ パブロ・ピカソ 1929年 油彩・カンヴァス 鈴木は2000年に急逝した。この年に購入された作品は、コレク ションの多様性を物語っている。東洋陶磁、抽象絵画などもある が、画家自身の子どもたちを描いたピカソ《花束を持つピエロに 扮したパウロ》と岸田劉生《麗子坐像》の2点が含まれている。 ・ 緑釉犬 後漢時代 1-2世紀 9 犬型陶器 エミール・ガレ 1865-1890年代 当館コレクションの際立った特徴を示すセクション。フジタ 「小さな職人たち」シリーズの細やかな描写による子ども たちの姿、紙塑人形、あるいは自らもペットとして可愛 がっていた犬のモティーフの作品など、ここでは鈴木の優 しさと愛に満ちたまなざしが感じられる作品を特集する。 母仔馬 坂本繁二郎 1960年(昭和35) 油彩・カンヴァス 三彩馬 唐時代 8世紀 午年生まれの鈴木にとって、馬は最も親しみ深いテーマのひとつで あった。とりわけ、子に対する母親の深い愛情を表現した坂本繁二 郎の《母仔馬》はお気に入りであった。本セクションでは、坂本をは じめとする日本洋画のコレクションや、古代中国の陶磁などにわた り、馬を主題とした作品を紹介する。 海辺の母子像 パブロ・ピカソ 1902年 油彩・カンヴァス 8 くわ 精しさと厳しさ ︱技法と構図 ピカソ︽海辺の母子像︾ 7 馬︱ 坂本繁二郎から東洋陶磁 小さきものへの愛情 6 このころより印象派の絵画を 積極的に購入するようになる エコール・ド・パリ ● この頃、パブロ・ピカソ ● ︽海辺の母子像︾購入 1979 1980 1981 1989 1996 1997 2000 2002 49歳 50歳 51歳 59歳 66歳 67歳 70歳 世田谷美術館開館︵ 1986 ︶ 安田火災東郷青児美術館開館︵ 1976 ︶ ︱最後のコレクション ● 鈴木常司社長、会長に就任 ポーラ美術振興財団を設立 ● 博︵駿府博︶ヨーロッパ SUNPU 名画館にコレクションを展示 ● 伝統文化ポーラ賞をスタート ● 社団法人日本訪問販売協会 初代会長に就任 ● ポーラ伝統文化振興財団を 設立 1976 1978 46歳 48歳 ● 銀座ラ ポーラを開設 ● ポーラ文化研究所、季刊誌 ● ﹁ ﹂創刊 袋井工場完成 ポーラ文化研究所、銀座に開設 ● 西武美術館開館︵ 1975 ︶ ヴィスム ● ポーラ不動産、貸しビル第一号 として青山ビル完成 ● 1973 43歳 i S (c)2012-Succession Pablo Picasso-SPDA(JAPAN) 膨大な数のコレクション のうち、鈴木が家族の ようにそばに置いて親 しんだ作品は限られて いる。《海辺の母子像》 は、旧会長室のいつも 見える壁に飾 られ、鈴 木は仕事上の決断に 迷 っ た 時、こ の 絵 と 必 ず向き合ったという。 (c)2012-Succession Pablo Picasso-SPDA(JAPAN) グランカンの干潮 ジョルジュ・スーラ 1885年 油彩・カンヴァス 鈴木の集めた絵画には、均整の取れた画面構成と あわせ、細部まで入念な仕上げの施された完成度 の高い作品が多くみられる。そこには、実直な人柄と あわせ、経営者としての厳格な姿勢をもうかがわせる 透徹した美意識をみてとることができる。 7 各セクションの展示替え内容のご案内 展示室2 展示室1 コレクションのはじまり∼心鎮まる絵画 美の女神たち 小さきものへの愛情 ピカソ (c)2012-Succession Pablo Picasso-SPDA(JAPAN) ピカソ《海辺の母子像》 展示室2・セクション7 通りの光景 パブロ・ピカソ 1900年 油彩・カンヴァス 花売り 母子像 パブロ・ピカソ 1937年 油彩・カンヴァス パブロ・ピカソ 1921年 油彩・カンヴァス (c)2012-Succession Pablo Picasso-SPDA(JAPAN) 19点もの傑作が集まったのは 好きだから ピカソの画業が辿れるコレクション 鈴木が収集したピカソの作品群は、貴重な 初期の作品から晩年の作品までを概観でき るコレクションとなっている。スペイン生 まれのまだ駆け出しの画家ピカソが、バル セロナ、マドリード、パリの間を行き来し ていた頃に紙挟みに入れて持ち歩いていた パステル画《坐る女》(1900年)から、終 の住処となった南仏のノートル=ダム=ド= ヴィの別荘で制作した油彩画の大作《すい かを食べる男と山羊》(1967年)まで、絵 画19点を数える。鈴木は「青の時代」の傑 作《海辺の母子像》をはじめ、ピカソのス タイルの変遷を丹念に追った国内随一のコ レクターである。 (c)2012-Succession Pablo Picasso-SPDA(JAPAN) 美の女神たち 女の横顔 藤島武二 1926-27年(大正15-昭和2) 油彩・板 展示室1・セクション5 自然を背景とした横顔の女性像はイタリ ア・ルネサンスの影響。この女性は竹久 女性を美しくする経営者が 洋の東西を越えて集めた珠玉の女性像 ルノワール、ドガ、マネ 藤島武二、岡田三郎助、黒田清輝 当館コレクションの特徴のひとつに、 女性の肖像画が多い、ということがあ げられる。しかしながら「美人画」と いうよりも女性の造形の美しさを追求 した作品が多く収蔵されている。 第Ⅰ期では、印象派、日本の洋画の女 性像の名品、第Ⅱ期では、エコール・ ド・パリの女性像を中心にルノワール と岡田三郎助の女性像、第Ⅲ期は、日 本の洋画のヌードとシュルレアリスム の女性像を展示。 8 よう 夢二のモデルもつとめた「お葉 」(佐々木 ね カ子ヨ)。 ベンチにて エドゥアール・マネ 1879年 パステル・カンヴァス マネは生涯に90点のパステル画を残してい るが、うち70点以上が女性の胸像であり、 この作品はマネ晩年のパステル画のひとつ である。 展示室3 展示室5 展示室4 小さきものへの愛情 展示室1・セクション6 すがすがしさ、愛しさ を感じるもの そして、内面の美に通ずるもの 鈴木のコレクションには、愛らしさが魅力の作品が多くみられる。絵 画ではレオナール・フジタ(藤田嗣治)が子どもをテーマに描いたタ イル画や、熊谷守一の作品があげられる。また、飼っていた犬に似た 形の工芸品もある。また、人形作家で人間国宝の認定を受け、アララ ギ派の歌人としても活躍した鹿児島寿蔵の人形などにも興味を抱き、 収集していた。 精しさと厳しさ 馬−坂本繁二郎から東洋陶磁 最後のコレクション みわらび たなまど 美童女の手窓 鹿児島寿蔵 1974年(昭和49) しそ 紙塑人形 よそおいの美と心 歴史と伝統への憧れ 洸 杉山寧 1992年(平成4) 麻布彩色・額装 精しさと厳しさ―技法と構図 展示室2・セクション8 経営者としての姿勢に通ずる 精緻な構図と巧みな技法 睡蓮の池 クロード・モネ 1899年 油彩・カンヴァス 鈴木が絵画において重視していた緊密な画面構成と 入念な仕上げを、長きにわたる画業の中で追究して いったのが、印象派を代表とするモネと昭和の日本 画壇の巨匠、杉山寧である。第Ⅱ期ではポーラ美術 館の収蔵するモネの全作品19点を、第Ⅲ期では同じ く杉山の収蔵作品43点から名品を選りすぐって展観 し、鈴木常司の絵画コレクションの精髄に迫る。 よそおいの美と心 歴史と伝統への憧れ 展示室4・セクション11 展示室5・セクション12 目指したのは、内面の美 美しくするなら内面まで 古きを温ねて、新しきを知る精神 化粧が盛んになったロココ時 代 に は じ ま り、19 世 紀 末 の アール・ヌーヴォーにいたる化 粧 道 具 を ご覧 いた だ く と と も に、香水瓶のコレクションとコレ クター鈴木常司について紹介 する。また、古代の化粧道具 を特別展示する。 珊瑚象嵌化粧ケース 19世紀中頃 イギリス 鈴木は現代の陶芸家にも高い 関心をよせ、富本憲吉や加藤土 師萌(はじめ) など「人間国宝」 の陶芸家の仕事を高く評価し た。さらに、1979年にはポーラ伝 統文化振興財団を設立し、日 本の伝統の技芸や技術を将来 に伝えるための活動を開始した。 色絵百舌文花壺 藤本能道 1971年(昭和46) 9 10周年を記念して みなさまに、感謝の気持ちを形にして伝えます おかげさまで2012年9月にポーラ美術館は10周年を迎えます。10周年を迎えることができた感謝の気持ちをこめて、 9月9日(日)は特別プレゼントをご用意してお客様をお迎えします。 The 10th Anniversary Present!―10周年記念プレゼント ・9月9日当日にご入館されたお客様(当日入館券をお持ちの方)全員に、チケットホルダー付ご招待券 (9月10日から2013年7月7日まで有効)をプレゼント! ・レストランまたはカフェをご利用されたお客様先着各100名様に、10周年記念焼き菓子をプレゼント! 10周年の記念を、みなさまと共有したいから! ポーラ美術館オリジナルグッズをみなさまと創ります 日本初!公募デザインキューピーをつくろう! ポーラ美術館オリジナルキューピーデザイン大募集! ポーラ美術館で不動の人気を誇るオリジナルグッズ「コスチュームキューピー」の第3弾のデザインを大募集!当館収蔵作品をもとに、デ ザインしてお送り下さい。モティーフ対象作品は以下の9点です。より多くの方にご参加いただけるよう、ご応募いただいたデザイン画の なかからどの作品を商品化するかは、皆さまからの投票で決定します。一人でも多くの方にグッズ制作にご参加いただければ幸いです。 アンリ・ルソー ポール・セザンヌ ポール・セザンヌ 《エッフェル塔とトロカデロ宮殿の眺望》 《砂糖壺、梨とテーブルクロス》 《アルルカン》 フィンセント・ファン・ゴッホ ジョルジュ・スーラ クロード・モネ 《ルーアン大聖堂》 《アザミの花》 《グランカンの干潮》 ワシリー・カンディンスキー 岡田三郎助 《支え無し》 《あやめの衣》 岸田劉生 《麗子坐像》 キャンペーン実施の流れと参加方法 Step2 デザイン画を選ぶ! Step1 デザイン画を送る! 【募集期間】 2012年5月31日―7月31日 【投票期間】 2012年8月初旬―8月下旬(詳細はHPにて発表) デザインを描いて応募! 11月 12月 1月 デザイン決定! (制作に入ります) 2月 3月 発売開始! ● サンプル品製作期間 商品化キュ ーピー発表 9/9 10月 ● 下旬 デザイン画決定・発表 8月 ● 初旬 デザイン画投票締切 7/31 8月 9月 ● デザイン画投票開始 8月 ● 7月 デザイン画募集締切 5/31 6月 ● デザイン画募集開始 ● 5月 商品化したいと思うデザイン画に投票! ● 特設WEBサイトから ● ポーラ美術館館内設置の投票箱から *審査に通った3つの作品から選んでいただきます 特設WEBサイトで 公表します 特設WEBサイトから ● ポーラ美術館館内設置・応募用紙から ● 12月 初旬 デザイン画が採用された方へのプレゼント 一次審査に通った応募者3名様に・・・ キューピーデザインが商品化された1名様に・・・ ポーラ美術館・ペア招待券+レストラン「アレイ」ペアお食事券 箱根ハイランドホテル1泊2食付ペア宿泊券+キューピー10個 協力:箱根ハイランドホテル 10 10周年の、その先へ ササを刈り、箱根の森の林相転換の活動に貢献! さらに、富士箱根伊豆国立公園内の敷地にある遊歩道を開放します! 箱根の森には、生命力の強いササ(ハコネダケ)の密生する部分が急増し、ブナやヒメシャラなどの原生種の生育が妨げられるという問 題が生じています。 ポーラ美術館は、敷地内に過度に繁殖するササの除去作業を行い、在来種の若い苗木を植える活動を行っています。森が活発に育つ には、人間の手入れが必要です。コンセプトに掲げる、「箱根の自然と美術との共生」の一環として、この問題に取り組んでいます。 林相転換とは? 森に生育する樹木の種類や形態(高さや密度など)を転換すること。一般的には人工的に植林したスギ、ヒノキなどの樹種を在来樹 種に転換することによって、森林の機能(水源涵養・生物多様性・防災機能など)を高める目的で実施されます。開館前の2002年4 月と開館後の2003年4月、周辺から採取されたブナ、ヤマボウシ、ヒメシャラなど広葉樹の幼苗を、敷地内の2400㎡のヒノキ植林地 に約4000本植栽し、モニタリング調査を現在も継続して行っています。また開館前から敷地内の帰化植物の除草を定期的に実施し ています。 これらの活動は、周辺のヒノキ植林地を地域固有の夏緑広葉樹林へ転換し、野生動物や鳥類、昆虫が住む豊かで多様な森林の維 持をめざすものです。 ササ刈り前 ササ刈り前 ササ刈り後 第6の展示室 ポーラ美術館の遊歩道開放のご案内 4月21日(土)より、ポーラ美術館は富士箱根伊豆国立公園に位置する立地を 生かした遊歩道を開放します(11月下旬まで。冬季閉鎖)。 「箱根の自然と美術との共生」のコンセプトをより具現化する試みとして、ブナ、 ヒメシャラなどの在来種の木々が生い茂る、箱根の中でも貴重なエリアを皆さ まに安全にご覧いただけるよう環境を整えました。 自然度が高いこの森では、野鳥や野生動物、昆虫など多様な生物が住まい、 その様子を観察することもできます。 また、今後ポーラ美術館の敷地に屋外彫刻を設置することも検討しています。 遊歩道のたのしみかた 1.貴重なブナ・ヒメシャラの森で森林浴 2.バードウォッチングでさまざまな野鳥を観察 3.自然と建築の調和が織り成す四季折々の風景を体感 キビタキ ヤマガラ ヤマボウシの実 遊歩道の様子 ヤマボウシの花 ヒメシャラの花 11
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