企業と社員にとってのMOOCの可能性

企業と社員にとってのMOOCの可能性
2016.11.14
一般社団法人
日本オープンオンライン教育推進協議会
常務理事・事務局長
福原 美三
1
MOOCとは?
2
MOOCとは?
Massive Open Online Courses
(大規模公開オンライン講座)の略
 2012年より米国からスタート
 数週間で学べる学習コースを開設



大学講座の短縮版が多い(講師は大学教員)
世界中で約4000万人以上が受講


オンラインでの登録だけで、誰でも無料で好きな
講座の受講が可能
学習者は事前に登録し、スケジュールされたオン
ライン教育(e-Learning)を学習、課題や宿題など
にオンラインで回答し、コース修了認定基準を満
たすと修了証が交付される
3
MOOCとは
大学
大学
企業
企業

学習者
プラットフォーム
プラットフォーム
講座DB
学習者から見た特徴





オンライン無料講座
高品質な講座内容
修了証発行
多様な学習スタイル
学び合い
学習者
学習履歴

講義提供者から見た特徴





多数の学習者に提供できる
学習者の詳細な学習記録が確認
できる
大量の学習者の学習評価が可能
反転授業との組み合わせなど新
たな学習方法の活用が容易
講義内容の体系的構造整理がで
きる
4
世界のMOOCの動向
5
海外MOOCプラットフォーム①


Coursera(コーセラ)
 2012年スタンフォード大教授らが設立(VCか
らの調達額:85億円)
 世界中から2100万人以上が登録
 29カ国、147の教育機関の1878講座の受講
可能(2016.11.7現在)
 東京大学がこれまでに4講座提供
edX(エデックス)
 2012年にMIT(マサチューセッツ工科大学)と
ハーバード大が約70億円を出資し共同設立
 世界中から830万人以上が登録
 107大学・機関がのべ1258講座提供
(2016.11.7現在)
 京都大学、東京大学、大阪大学、東京工業大
学、早稲田大学が参加
6
Couseraの学習者国別トップ10
7
Courseraモバイル活用ランキング
8
海外MOOCプラットフォーム②

2013年には、イギリス、フランス、スペイン、
ドイツ、EUや中国でも相次いでMOOCプラット
フォームが立ち上がる
イギリス:FutureLearn
500万人以上登録
日本からは慶應大が参加
フランス:FUN
220万人以上登録
スペイン:miriada X
280万人以上登録
9
世界のMOOC
名称
学習者数
参加機関数
コース数
Coursera(米)
2000万人+
145
2001
edX(米)
830万人+
105
1081
FutureLearn(英)
500万人+
94
402
FUN(仏)
220万人+
102
226
miriadaX(西)
281万人+
76
225
JMOOC(日)
27万人
49
148
その他:ドイツ、中国、韓国、オーストラリア、タイ、インドネシア、マレーシアなど
10
主要PFの単位・学位付与サービス
2012
2013
2014
2015
2016
PF開設
無料修了証発行
Udacity
Nanodegree $199/月
Nanodegree Plus
$299/月
試験会場での修了試験 $89
修士プログラム
ジョージア
工科大
PF開設
無料修了証発行
オンライン個人認証付有料修了証発行 $29~215
Coursera
Specializations
修士プログラム
イリノイ大
PF開設
無料修了証発行
オンライン個人認証S25 ~300
試験会場での修了試験 $95
edX
XSeries 試験実施
XSeries
アリゾナ
州立大
MITなど14大学
PF開設
FutureLearn
ハードコピーの
み有料修了証発
行(£34)
Global Freshman Academy
(単位付与)
MicroMasters
(単位互換)
デジタル&ハードコピー
版有料修了証発行(£34)
11
リーズ大、
オープン大
FutureLearn Programs
(単位付与)
Coursera: Specialization



専門分野についての体系的な学習のための講座群
現在85体系に達している。
ビジネス、データ科学、コンピュータ科学などが多く提供されてい
る。
12
Coursera Specialozation事例1



ビジネス:Construction Management, Columbia University
構成:4コース 各コースは5週程度
事前の経験、知識は不要
13
Coursera Specialozation事例2



コンピュータ科学:Algorithms, Stanford University
構成:4コース 各コースは4週程度
ある程度の経験知識は必要
14
Coursera for Business

Courseraの企業向け人材育成サービス

導入企業例
•
•
•
15
edX MicroMasters
修士プログラムの一部科目(4~5科目前後)をまとめてプログラム化したもの。
14のパートナー大学が特に人材不足の職種に必要な知識スキルを中心に提供。
MicroMasters修了後、正規の修士プログラムを受験し入学した際には、修士課程の単
位としてカウントされるため、時間を短縮して修士を得ることができる。プログラ
ム提供大学以外の大学が他大学のMicroMastersを修士課程の単位として認めるケース
もある。2016年10月よりスタート。
提供大学
プログラム名
提供大学
プログラム名
MIT
Supply Chain Management
Michigan
User Experience(UX) Research and Design
RIT
Project Management
Social Work: Practice, Policy and Research
Thunderbird
International Business Management
Leading Educational Innovation and
Improvement
IIMB
Business Management
Columbia
Artificial Intelligence
香港理工大学
International Hospitality
Management
Wageninge
n
Biobased Sciences for Sustainability
Galileo
e-Learning: crea actividades y
contenidos para la enseñanza
UPValencia
Liderazgo y trabajo en equipo en grupos de
mejora continua
Professional Android Developer
Louvain
Management
IIMB
Entrepreneurship
U of
Queensland
Leadership in Global Development
Australian
National U
Evidence-Based Management
International Law
Curtin
Human Rights
edX MicroMasters


Walmart, GE, IBMなど10社が推奨
19コースが開設済み
17
MicroMaster事例1






コロンビア大学、人工知能
コース数:4
学習時間:12週/コース
1コースあたり週8-10時間
コスト:300USD/コース
学位提供:コロンビア大学
18
MicroMaster事例2






MIT、サプライチェーンマ
ネージメント
コース数:5
学習時間:8-13週/コース
1コースあたり週8-10時
間
コスト:150USD/コース
学位提供:Massachusetts
Institute of Technology,
Curtin University, The
University of Queensland
19
Udacityモデル(米国第3のMOOC)


「企業での実務に特化した講座」を企業とのタイアップにより構築
し、修了者は”nanodegree” として認定
タイアップ企業
20
Udacity Nanodegree
21
Udacity: Artificial Intelligence
22
Udacity: Self-Driving Car Engineer
23
Udacity Partners
24
Udacity for Business
25
Udacity for Business
26
Udacity & Georgia Tech

3社共同でコンピュータサイエンスのマスターコースを
開設
27
Udacity 雇用促進策

学習者と雇用社を直接つなぐ

Udacity Talent Source
28
JMOOCとは?
29
JMOOC/組織と運営


JMOOCミッションステートメント
 JMOOCは日本とアジアのための
「学びによる個人の価値を社会全体の共有価値へ拡大
するMOOC」の実現を
産学の連携によって強力に牽引します
先行欧米MOOCとの違い
 欧米のMOOCはVC、財団、特定大企業の資金提供が多
い
 アジアのMOOCの多くは国主導型
 VCや特定大学から一括して大規模な資金提供を受ける
のではなく、できるだけ多くの組織から広く会費の提
供を受ける
 「皆で汗をかき、共通の目標を達成する」
 年会費をベースにして持続可能な体制を目指す
JMOOC(会員)



特別会員:大企業を想定
 年会費:500万円
 現会員数:6社
正会員:大学、企業
 年会費:10万円/口、年5口以上
 現会員数:89団体(内訳:49大学,32企業,8機関)
協賛会員:非営利団体、教育団体、学会など

年会費:
2万円/口、年5口以上
年会費:
1万円/口
現会員数:9団体
個人会員:



31
講義内容の体系的構造整理

10分を基本単位とした構造設計
10分程度
のビデオ
学習確
認の小
テスト
10分程度
のビデオ
学習確
認の小
テスト
課題
掲示板での議論
第1週
第2週
第4週
総
合
課
題
32
JMOOC学習画面
Open Learningの例⇨
⇩gaccoの例
33
JMOOC近況報告
〜講座数〜
JMOOC公認プラット
フォーム
OUJ-MOOC
(放送大学)
gacco
(NTTドコモgacco)
OpenLearning,Japan
(NetLearning)
Fisdom
(富士通)
開講中
0
3
1
0
募集中
0
6
2
3
終了
9
102
21
1
合計
9
111
24
4
総計
(2016.10.31時点)
148
34
JMOOC登録者数
(2016.10.31時点)
述べ学習者数,
700000
645110
600000
500000
400000
登録者数,
300000
270884
200000
100000
0
登録者数(ユニーク):約27万人
延べ学習者数
:約64.5万人
35
反転授業との組み合わせなど
新たな学習方法の活用が容易


MOOCベースの反転講義(対面を含む)が多数実施され
ている。
これまでのJMOOCでの対面授業
•
•
実施講座数:52講座(全体の35〜40%)
料金:有料が多い(3,000円−5,000円)
東京大学
早稲田大学
36
我が国でMOOC企業内活用
「情報セキュリティ入門」講座を通信会社内社
内研修として活用
 携帯系キャリアにおいて管理者4,000名に対して
MOOC講座「モチベーションマネージメント」
を活用した研修を実施
 通信系SI ベンダーにおいて「統計学」講座を
データサイエンティスト育成目的の一環で実施



MOOC+座学の反転型研修により実践力を強化
本格的な活用はこれから
37
国の政策におけるMOOC(1)
文科省:教育振興基本計画(H25.6閣議決定)
 <5年間における具体的方策>



基本施策8 学生の主体的な学びの確立に向けた
大学教育の質的転換
・・・・ICTの活用に関しては,例えば,近年
急速に広まりつつある大規模公開オンライン講座
(MOOC (※1)による講義の配信やオープ
ンコースウェア(OCW (※))2)による教
育内容の発信など,大学の知を世界に開放すると
ともに大学教育の質の向上にもつながる取組への
各大学の積極的な参加を促す。・・・
38
国の政策におけるMOOC(2-1)



教育再生実行会議
平成27年3月4日、第六次提言「『学び続ける』社会、全
員参加型社会、地方創生を実現する教育のありかたにつ
いて」
社会に出た後も、誰もが「学び続け」、夢と志のために
挑戦できる社会へ



障害何度でも、学び中心の期間を持つ人生サイクルを
大学等を若者中心の学びの場から全世代のための学びの場へ
社会全体で学びを支援
• 社会人の多様なニーズに対応する教育プログラムの充実
• 学びやすい環境の整備
39
大学等の社会人学び直し国際比較
35
大学入学者における25歳以上の割合
30
25
OECD平均:18.1%
20
15
10
5
出典:「OECD stat Extracts(2012)」日本の数値は「学校基本調査」と文部科学省調
べによる社会人入学者数(4年制大学)」(文科省)
日本
ベルギー
フランス
メキシコ
オランダ
アイルランド
ギリシャ
ポーランド
ドイツ
トルコ
チェコ
韓国
スロバキア
ポルトガル
スペイン
イギリス
ハンガリー
スイス
デンマーク
ノルウェー
オーストリア
アメリカ
フィンランド
オーストラリア
スウェーデン
ニュージーランド
アイスランド
0
40
国の政策におけるMOOC(2-2)


教育再生実行会議
平成27年5月14日、安倍総理は、第30回教育再生実行会議で、第七
次提言「これからの時代に求められる資質・能力と、それを培う教
育、教師の在り方について」を受け取りました。
41
理工系人材育成に関する産学官円卓会議の概要
1.趣旨
理工系人材育成戦略を踏まえ、同戦略の充実・具体化を図るため、産学官の対話の場として「理工系人材育成に関する
産学官円卓会議」を設置する。同会議において、産業界で求められている人材の育成や育成された人材の産業界における
活躍の促進方策等について、産学官それぞれに求められる役割や具体的な対応を検討する。平成27年5月に第1回を
開催し、これまで5回開催。平成28年春を目処に、産学官の行動計画を策定予定。
2.検討事項
(1)産業界の将来的な人材ニーズを踏まえた大学等における教育の充実方策(基礎学力の強化、専門教育
の充実及び産業界との連携等)
(2)企業における博士号取得者の活躍の促進方策
(3)初等中等教育等における産業を体感する取組の充実方策(産業界からの講師派遣など)
など理工系人材育成戦略を踏まえた産学官の行動計画について
3.委員
<産業界>
内山田 竹志
野路 國夫
横倉 隆
須藤 亮
秋山 咲恵
トヨタ自動車株式会社会長(日本経済団体連合会)
株式会社小松製作所取締役会長、オープンイノベーション協議会会長(経済同友会)
株式会社トプコン特別アドバイザー(東京商工会議所(日本商工会議所推薦))
株式会社東芝常任顧問(産業競争力懇談会)
株式会社サキコーポレーション代表取締役社長
<大学等>
大西 隆
豊橋技術科学大学学長(国立大学協会)
上野 淳
首都大学東京学長(公立大学協会)
藤嶋 昭
東京理科大学学長(日本私立大学団体連合会)
小畑 秀文
独立行政法人国立高等専門学校機構理事長
神谷 弘一
愛知県立豊田工業高等学校校長(全国高等学校長協会)
<省庁>
常盤 豊
文部科学省高等教育局長
井上 宏司 経済産業省産業技術環境局長
42
1/19JMOOC経団連共同シンポジウムでの経済産業省資料より引用
 円卓会議資料抜粋(MOOC活用の効用)
■JMOOC(Japan
Massive Open Online Courses:日本オープンオンライン教育推進協議会)
︎
 誰でもオンラインの登録だけで、大学レベルの授業をネット上で無料で受講可能。
 修了条件を満たすと修了証が取得できる教育サービス。
企業における効用
大学における効用
︎
■専門の基礎科目の習得レベルを高められる。
■入社前・入社後での社員の学び直しに導入可能
■専門外の科目を学ばせることで幅広い知識習得が可
能。
知識レベルが異なる社員の受講
知識の応用
知識の習得
専門科目の履修
■社内研修のアクティブラーニング化
MOOCを活用した
オンライン学習
対面授業での講義
ディカッション等
+
学生A君
社員A氏
授業を演習
等に比重を
置き、習得
レベルを高
められる
社員の学
び直しに
導入
社員B氏
知識の習得
専門外科目の履修
修
了
証
基礎知識
の
平準化
知識を実務(OJT)で活用
知識の習得
知識の習得
修
了
証
幅広い科目の履修
で、
就職先の拡大も可能
社内研修
のアク
ティブ
ラーニン
グ化
基礎知識の習得
社員C氏
知識を実習研修で活用
・基礎知識
の
応用
・研修内容
の
実践化
 円卓会議資料抜粋(基礎科目展開案)
■理工系(技術者)基礎科目の講座展開について
 経団連様加盟企業若手技術者へのアンケートより、企業のニーズの高い基礎科目を50程
度を候補とする。(経団連加盟企業9社409人から回答)
✓「基礎科目シリーズ
<情報系科目>
技術系
第1クール」として講座化を予定。
<電気系科目>
<機械系科目>
<化学系科目> <建築系科目>
<材料系科目>
<管理系科目>
2016年度10〜20科目、2年以内に50科目をJMOOCにて開講予定。
講座提供元は、海外大学(MIT他)、国立高専機構・国公立私立大等を予定
■理工系(技術者)基礎科目
講座展開整理
◆2017年開講予定。(10科目前後を予定)
◆誰でも無料で受講可能。
◆必要な単元単位での受講も可能。
◆チェックテストでの合否判定有り。
◆2017年度内で30科目前後の展開を予定。
◆JMOOC会員には従業員の受講履歴・結果のFB提供。
◆会員には、企業単位での開講も可能。(有償)
1/19JMOOC経団連共同シンポジウムでのJMOOC資料より引用
45
2016年度第一弾(トライアル)展開講座(案)
◆企業ニーズの高い機械・電気系と学び直し調査で多かった統計を中心に展開
学問系統
機械系
電気系
科目名
講座担当候補案
機械力学
学問系統
科目名
講座担当候補案
長岡技科大
確率・統計
長岡技科大
流体力学
長岡技科大
微積分
長岡技科大
工業力学
長岡技科大
品質管理
国立高専機構
機構学
長岡技科大
金属材料学
国立高専機構
電磁気学
長岡技科大
電子回路
長岡技科大
電気回路
国立高専機構
制御工学
国立高専機構
その他
46
今後の課題

学習者の多様なニーズに答える様々な分野の講座を開講
する必要がある。


体系的な講座整備を急ぐ必要がある。


数100種の講座:クリティカルマス
講座開発の効率化と省力化が急務
JMOOCの当面の目標
100大学加盟
100〜講座開講
100万人の登録
47