ジオシンセティックス技術情報 1996.7 学会紹介:(社)日本繊維機械学会 日本繊維機械学会不織布研究会委員長 京都女子大学教授 矢井田 修 1. は じ め に 日本繊維機械学会は来年創立 5 0周年を迎える学会であり、設立当初は名前通り「繊維機械」に 関する学会活動を行ってきた。しかし、日本の繊維業界の質的変化に対応して現在では繊維に関 する分野全てについての学会活動を行っている。特に、最近では繊維が多種多様な用途で用いら れるようになったことから、従来の衣服用から産業資材用まで幅広い分野を対象としている。ま た、繊維業界の川上から川下までもカバーし、繊維に関することは全て学会の活動対象になると いっても過言ではない。 日本における繊維関連の学会は繊維学会、日本繊維機械学会、日本繊維製品消費科学会の 3つ があり、以前は守備範囲がほぼ限定されていたが、現在ではその境界が不明確となってきており、 ジオシンセティックスに関しでも繊維学会、日本繊維機械学会が活動範囲に含めている。 2 . 学会の構成 8 2名、維持会員(企業)口数 2 9口、賛助会員 平成 7年度の日本繊維機械学会の正会員数は1.1 (企業)日数 1 3 1口、学生会員 1 4名である。 学会運営のために必要な理事会、評議員会、常務理事会の他に常設の委員会として企画委員会、 論文集編集委員会、繊維工学編集委員会、海外繊維技術文献編集委員会、英文版刊行委員会、染 色編集委員会が置かれている。支部としては関東支部、信越支部、東海支部、北陸支部、中国支 部がありそれぞれ講演会を主とした活発な活動を行っている。 また、これら委員会とは別に特定の分野について会員同志の情報交換や研究・調査を行う研究 会が設けられている。現在、織機研究会、産業資材研究会、生活環境と繊維の研究会、染色仕上 研究部会、不織布研究会、アパレル問題研究会(アパレル問題研究会と被服心理学研究分科会)、 7つの研究会があり、研究会によって多少その活動内容は異なるが、 年に 4回程度の研究例会、年に 1回程度の公開講座、研究発表会、研究交流会などを行っている。 コンポジテックス研究会の これまで紹介した各種委員会の中でジオシンセティックスに関係のある委員会や研究会は、ジ オシンセティックスに関する海外文献をも紹介する海外繊維技術文献集編集委員会(編集委員長 :矢井田修)、産業資材研究会(委員長:松本喜代一氏)、不織布研究会(委員長:矢井田修) の 3つである。ここではこの 3つの委員会、研究会におけるジオシンセティックスに関する活動 内容について紹介する。 3 . 活動内容 3 . 1 海外繊維技術文献集編集委員会 0冊の「海外繊維技術文献集 Jを発行している。内容は主要な外国文献 当編集委員会では年間 1 4Ei S4 の翻訳と抄録である。ジオシンセティックスに関する外国文献としては G e o t e c hF a b r i cR e p o r t、 T h eM a g a z i n ef o rE n d U s e r so fT e c h n i c a la n dI n d u s t r i a lT e x t i l e s ( T .U .T )、 T e c h n i c a lT e x e c h n i c a lT e x t i l i e nなどがあり、それらの内容を抄録している。また、学術的に翻訳に t i l e s、T o u r n a lo ft h eT e x t i l e 値する文献であればそれの内容を詳しく制訳し掲載している。その他、 J e x t i l eR e s e a r c hJ o u r n a l、A u s t r a l a s i a nT e x t i l e s、T e x ti 1eW or 1d、C h e m i e f a s e r n、 I n s t i t u t e、T M e l l i a n dT e x t i l b e r i c h旬、 T e x ti 1v e r e d l u n g、I n t e r n a t i o n a lT e x t i l eB u l l e t i nなども抄録して おり、ジオシンセティックスに関する論文も一部抄録されている。 3 .2 産業資材研究会 1 9 8 3年に発足した研究会で、現在の会員数は約 4 0名である。研究対象は産業資材全般であり、 特に高性能・高機能繊維に関する研究・調査が多い。この会の目的は「繊維に関する産業資材の 科学と技術の基礎的研究並びに応用、開発的技術の向上をはかり、もって繊維工学全般の進歩発 展に寄与する」であり、研究活動として「機能性を重視した産業用繊維資材について、①繊維素 材の性能と機能、②糸形成技術、③製布技術、④加工技術、⑤用途開発、⑥その他の事項につい て定例の研究会、公開講座、討論会、講習会、見学会を開催し、また図書、諸資料等を刊行する」 と決められている。 ジオシンセティックスに関しては、これまで主として講演を通じて情報を得ている。ジオシン セティックスに関して多くの講演が行われたが、その一部を紹介すると、 「繊維資材の土木への 応用(福岡正巳氏) J、 「環境保全と高分子材料(本多淳裕氏) J、 「ジオテキスタイルの素材 (永野豊氏) J、 「ジオテキスタイルの土構造物への利用技術の現状と動向(久楽勝行氏) J、 「農業と繊維資材(河野市三郎氏) J、 「関西新空港建設における汚濁防止膜(法貴貫志郎氏 ) J、 「瀬戸大橋の鉄道建設(御船直人氏) J、 「繊維資材を用いた排水処理(藤井正博氏) J、 「 ジ r オテキスタイルのための土質工学(嘉門雅史氏) J 軽量盛土材としての発砲スチロール(高橋 幸雄氏) J、 「ジオテキスタイルの圧縮及び水理特性(近田富士雄氏) J等があり、これからも ジオシンセティックスに関する講演が増えると予想される。 3.3 不織布研究会 1 9 8 9年に発足した研究会で、現在の会員数は約 1 5 0名である。不織布を研究対象として活動し ている。日本繊維機械学会の研究会としては会員数が最も多く、また対外的にも日本不織布工業 会、日本不織布振興会と共に日本不織布連合会 (ANNA) を構成し、ヨーロッパ不織布工業会 (EDANA) やアメリカ不織布工業会(1NDA) との連携を深めている。特に、不織布関連 試験方法の J 1S化については積極的に参加し、 布試験方法」、 「一般短繊維不織布試験方法」、 「医療用不織 「不織布しん地試験方法 Jの制定や見直しを現在行っている。 研究会の目的は「不織布技術の向上、不織布産業の発展並びに用途開発を図る Jであり、研究 活動として産業資材研究会と同じく、研究例会、公開講座、研究交流会、見学会の開催や図書・ 資料の刊行等がある。特に本研究会の検討テーマとして、①不織布の機能的特徴の把握、②他産 業の不織布に対するニ ズの把握、③不織布の特徴を生かした用途開発、④不織布の製造パラメ ータと布性質との関連、⑤不織布製造機械の改善、⑥不織布に関する世界的な統計データの収集、 ⑦不織布の機能性の向上、⑧不織布に応用できる他分野の最新技術の情報収集、⑨不織布の性能 評価方法の確立、⑩不織布用語の統一、⑪不織布関連試験法の J 1S化の推進等があり、着実な Fhd 4Ei 進展をしている。 不織布はジオテキスタイルとして用いられることも多く、ジオテキスタイルは研究会の主要課 題となっている。当研究会におけるジオテキスタイル関連の講演としては、 「不織布の土木資材 J、「プラス 分野への展開(西川文子良氏) J、 「土木工事における不織布の利用(諏訪靖二氏 ) チックドレーンによる軟弱地盤の改良(野村忠明氏) J、 「ジオテキスタイル用不織布の細孔分 布と漉過特性(赤井智幸氏) J、 「スパンボンド不織布の現状と将来(長谷川雅保氏) J、 「超 軽量ビル緑化システム(久保正年氏) J等がある。その他、世界中で開催される不織布関連の国 際見本市や国際会議 (INDEX (ヨーロッパ)、 1DEA (アメリカ)、 ENA (日本)、韓 国国際不織布展、台湾国際不織布展、上海国際不織布展、北京国際産業資材用繊維及び不織布展、 広州国際不織布展、イスタンプール国際不織布展、 HIPER' FAB (シンガポール)、テク テキスタイル展(フランクフルト)、テクテキスタイル・アジア展(大阪)など)に積極的に参 加し、そこで得られたジオテキスタイルに関する技術情報や統計資料を研究例会で紹介している。 4 . まとめ 日本繊維機械学会は前述のように繊維に関するあらゆる分野を研究活動の対象としているため に、ジオシンセティックスに対しても 2、 3の委員会や研究会が研究対象としているに過ぎない。 ここではジオシンセティックスに比較的関係のある委員会や研究会の活動内容について解説した が、その他に繊維あるいは高分子材料の高性能化や高機能化に関する情報が学会誌にしばしば掲 載されており、これらをジオシンセティックスに応用することができる。 ジオシンセティックスに含まれるジオテキスタイルの分野では、不織布の使用が年々増加して おり、日本の繊維会社もその重要性を認識しつつある。日本における不織布の成長率は年間約 10%であり、この成長率を支えている 1つの重要な用途としてのジオテキスタイル分野の成長を 切に願っている。 phU A 4a ・
© Copyright 2024 Paperzz