Clinical Case Study Accident or Arson: Is CO

Clinical Case Study
Accident or Arson: Is CO-Oximetry Reliable for Carboxyhemoglobin
Measurement Postmortem?
Kalen N. Olson,1 Melissa A. Hillyer,1 Julie S. Kloss,1 Roberta J. Geiselhart,2 and Fred S. Apple1,3*
1
Hennepin County Medical Center and 2 Medical Examiner’s Office, Minneapolis,MN; 3 Department of Laboratory
Medicine and Pathology, University of Minnesota, Minneapolis, MN. * Address correspondence to this author at:
Hennepin County Medical Center,701 Park Ave., Clinical Labs P4, Minneapolis, MN 55415. Fax 612-904-4229; e-mail
[email protected].
Received June 2, 2009; accepted October 13, 2009.
DOI: 10.1373/clinchem.2009.131334
4
Nonstandard abbreviations: COHb, carboxyhemoglobin; GC, gas chromatography; MetHb, methemoglobin.
臨床症例研究
事故か放火か:一酸化炭素測定は、死後症例の一酸化炭素ヘモグロビン測
定にも信頼性があるか?
症例
46 歳の女性が火事の後、死体で彼女の家の地下室から発見された。死体の外部検査から、頭部の傷と、鼻と
口の内部に煤が見られた。検死の結果、煤は気管と気管支内でも見つかった。警察尋問の結果、女性の夫が
夫婦間で口論になり、誤って彼女を押したところ、彼女の頭部が物に当たり、意識を失ったことを認めた。
夫は彼女が死亡したと思い込み、妻の死を隠すために家に火を放った。警察は夫を第 1 級謀殺罪(放火を企
てた、又は犯している時に故意に死亡させた)と、第 2 級過失致死罪(重罪を犯しているときに過失により
死亡させた)に問われた。
検察官の申し立ては、一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)4 濃度測定結果は、火事が起きた時点で妻は生きて
いたことを証明し、よって夫は放火の罪でも有罪だとした。6 波長の一酸化炭素測定計による血中一酸化炭
素ヘモグロビン濃度は、61.4%であった。被告代理弁護士は、死後の一酸化炭素ヘモグロビン濃度測定におい
て、一酸化炭素測定法は他の方法に比べて信頼性に欠け、測定結果は放火が妻の死亡原因であるという、
「合理的な疑いを超える」妥当な証拠にはならないと主張した。
1
考察
一酸化炭素中毒
外因性の一酸化炭素は炭化水素の不完全燃焼による副産物である。一酸化炭素による中毒は、匂いも味もな
いことから気づかれないことが多い。内因性の一酸化炭素も当然体内で産生される。外因性一酸化炭素中毒
の病因は、ヘモグロビンのヘムグループの鉄部分に、一酸化炭素が付着する傾向をもつことである。一酸化
炭素は酸素と比較して 210 倍もの高い親和力をもつ。一酸化炭素結合はヘモグロビンが組織から除去の為に
二酸化炭素を取得することも阻害し、同じヘモグロビンタンパクに結合した酸素分子を安定させる。よって、
酸素分子が、組織に放出されるのを阻害するのである。心臓や脳といった最も酸素を必要とする臓器は、一
酸化炭素中毒による影響を一番受ける。心臓は、一酸化炭素とミオグロビン結合にも影響を受けやすく、つ
まり、ミトコンドリアへの酸素供給を阻害してしまう。230 人の中度から重度の一酸化炭素中毒患者の研究
では、37%の患者で虚血性心電図変化がおきており、心臓のバイオマーカー濃度の上昇が見られる(1)。一
酸化炭素中毒の症状は、頭痛、めまい、虚弱、息切れ、吐き気である。このような一般的で非特異的症状は、
医師の一酸化炭素中毒の見落としを招きやすい。一酸化炭素中毒は、100%酸素での迅速な治療により、一酸
化炭素ヘモグロビンの半減期である 300 分を 90 分に減少させるために欠かせない。>25%の一酸化炭素ヘモ
グロビン濃度で意識を失っているような更に重度の場合は、半減期を 30 分にまで減少させるため、高圧酸素
療法による治療が必要である。
疑問点
1.
検死時の被害者の一酸化炭素ヘモグロビン濃度は、致死レベルだったか?
2.
死後の一酸化炭素ヘモグロビン測定に対して、一酸化炭素測定法はガスクロマトグラフィー(GC)と
紫外分光光度法に比べて、信頼性があるか?
3.
メトヘモグロビン(MetHb)の上昇にはどのようなメカニズムがあり、メトヘモグロビン濃度の上昇
は一酸化炭素測定法による一酸化炭素ヘモグロビン濃度を阻害するのか?
検死時の被害者の一酸化炭素ヘモグロビン濃度は、致死レベルだったか?
一酸化炭素ヘモグロビン濃度の測定は、火事、自動車排気ガスへの暴露、飛行機事故、住宅での暴露におい
て、一酸化炭素が死亡原因であると容認するために、非常に重要である。一酸化炭素ヘモグロビン濃度の知
識は、被害者が火事が発生した時点で、生存していたのか死亡していたのか、またこの症例のように複数の
生死にかかわる傷害が存在していたのか、特定する際に監察医の助けとなる。一酸化炭素の中毒性は暴露時
間、一酸化炭素ガスの濃度、換気の程度に依存する。高濃度の一酸化炭素ガスへの短時間の暴露(一般的に
死に至るとされる濃度よりも高いとしても)は、中程度の濃度に長時間暴露するよりも生存可能である(2)。
非喫煙者で ≤ 3%の血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度が見られ、一方で喫煙者では 10-15%を超える濃度が見ら
れる。死因の毒物学的調査では、>50%の一酸化炭素ヘモグロビン濃度は致死レベルと考えられている。低下
しつつある高齢者の健康状態、新生児での脆弱性の上昇、冠動脈疾患、呼吸器不全を含めたいくつもの要因
2
により、<50%の一酸化炭素ヘモグロビン濃度でも死を招く(2)。今回の症例では、61%という高い一酸化炭
素ヘモグロビン濃度と、口、のど、呼吸器官内部での煤の存在により、被害者が火事以前はおそらく生存し
ており、窒息により死亡したと監察医が結論を下すに至った。
死後の一酸化炭素ヘモグロビン測定に対して、一酸化炭素測定はガスクロマトグラフィー(GC)と紫外
分光光度法に比べて信頼性があるか?
死後サンプルでの一酸化炭素ヘモグロビン濃度測定のための一酸化炭素測定法の有効性は、一酸化炭素測定
法と紫外分光光度法、GC の比較により議論されている。脂質による混濁、メトヘモグロビン、スルフヘモグ
ロビン、微凝固、腐敗、コンタミネーションを含む阻害要因が、一酸化炭素測定法による一酸化炭素ヘモグ
ロビン濃度の精度を疑問視する原因となっている。少ない波長モニターを使う古い一酸化炭素測定法では、
阻害要因により一酸化炭素ヘモグロビン濃度が不正確であることが多かった。そういった限界は 様々な阻
害要因を訂正する≥6波長の一酸化炭素測定法の導入により、改善された。メトヘモグロビンとオキシヘモグ
ロビン値を低下させるための亜ジチオン酸ナトリウム処理、粒子を取り除くためのろ過、またその他の前処
理などにより、死後のサンプルがより一酸化炭素測定に適したものになる(3、4)。>4 波長での一酸化炭素
測定は、非常に低いヘモグロビン濃度[< 40g/L (< 4g/dl)] であったとしても、死後サンプルでの GC の結果との
相関は高い(5)。高濃度のメトヘモグロビン、スルフヘモグロビン、混濁、または低い総ヘモグロビン値と
いった阻害要因を取り除くために、血液サンプルを腐敗処理した場合でも、一酸化炭素測定法での一酸化炭
素ヘモグロビン濃度は処理前の一酸化炭素測定法での結果、GC の結果の両方共に相関が高かった(6、7)。
今回の報告では、自動一酸化炭素測定計(Diametrics Medical AVOX 4000)と、手動紫外分光光度計(Hewlett
Packard 8453 UV spectrophotometer)により得られた一酸化炭素ヘモグロビンの結果を比較した。16 人の死後
の心血液サンプル(EDTA 抗凝血処理)の検死症例が検討された(表 1)。分光光度測定前に、サンプルは亜
ジチオン酸ナトリウムで処理された。540nm (一酸化炭素ヘモグロビン)、555nm (等吸光点)で吸光度を
測定し、一酸化炭素ヘモグロビン濃度%を算出した。死亡時刻と血液採取までの間隔は 0 から 2.5 時間であ
った。一酸化炭素ヘモグロビン濃度は、21%から 83%の間で分布した。一酸化炭素測定法と紫外分光光度計に
よる一酸化炭素ヘモグロビンデータの Deming 回帰分析は、非常に高い相関を示した[ r=0.983、(y=1.04x1.21) ; Sy|x=3.45 ; 図 1]。死後の経過時間と死体の腐敗(どちらもメトヘモグロビン濃度を上昇させると知ら
れている)のどちらも、一酸化炭素測定と分光光度測定結果の相関に影響を及ぼさなかった。よって、一酸
化炭素測定計(適格な波長数を使用)による一酸化炭素ヘモグロビン測定は、法医中毒学症例での死後血液
サンプルの一酸化炭素測定において、妥当で正確な方法であることを示した。
表 1. 一酸化炭素中毒を含む 16 人の検死症例
3
メトヘモグロビン(MetHb)の上昇にはどのようなメカニズムがあり、メトヘモグロビン濃度の上昇は
一酸化炭素飽和度測定による一酸化炭素ヘモグロビン濃度を阻害するのか?
温度の上昇は、ヘモグロビンのメトヘモグロビンへの変化を引き起こし(Fe2+から Fe3+)、酸素解離カーブ
がシフトし、より少ない酸素が組織に放出されることで酸素親和力が上昇する。火事の被害者は、燃えたプ
ラスチックによる窒素酸化物を吸引した結果、メトヘモグロビン濃度の上昇がみられるかもしれない(9)。
特に低から中度の一酸化炭素ヘモグロビンや、バクテリアに伴う熱による死後のメトヘモグロビン濃度上昇
の可能性も見逃してはならない(10)。火傷と煤の所見と合わせて考慮すると、メトヘモグロビン、一酸化
炭素ヘモグロビン、酸化ヘモグロビン、脱酸化ヘモグロビンの測定結果は、火事の死因を特定するのに有効
である。一酸化炭素測定計を一酸化炭素ヘモグロビン濃度測定に使用する場合、メーカーの説明書をよく読
み、サンプルの扱い、技術がメトヘモグロビンの懸念を扱うのに適しているのか確認する必要がある。
症例解決
4
陪審員は夫を第 2 級過失致死罪とした。判決への上告として、被告側は一酸化炭素測定結果の妥当性につい
て異議を唱えた。一酸化炭素濃度結果の許容性を特定するための裁判前会議において、臨床化学者が> 4 波長
を使用した技術で得られる一酸化炭素測定結果は、メトヘモグロビンの阻害を受けないとする専門家として
の証言をした。この証言により、裁判所はこの結果が有効であり、よって裁判において許容されるとした。
図 1. 一酸化炭素測定法と紫外分光光度法(spec)により測定された死後の一酸化炭素ヘモグロビン濃度の相関。
Deming 回帰分析(A)と Bland-Altman バイアスプロット(B)。
覚えておくべきポイント
5
1.
>50%の一酸化炭素濃度は死亡と関連しているが、慢性の暴露や合併症がある場合には、それよりも低
い濃度でも死亡が確認されている。
2.
死後サンプルでの一酸化炭素ヘモグロビン測定において、メトヘモグロビンのような阻害要因は考慮
の対象となり、そういった阻害要因が存在する場合、一酸化炭素測定の精度を保証するには的確なステップ
を踏む必要がある。
3.
適切な複数の波長技術を用いた一酸化炭素測定は、死後の一酸化炭素ヘモグロビン測定において信頼
性があり、正確な方法になりうる。
謝辞
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors’ Disclosures of Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the
Disclosures of Potential Conflict of Interest form. Potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: M.A. Hillyer, Hennepin County Medical Center.
Consultant or Advisory Role: None declared.
Stock Ownership: None declared.
Honoraria: None declared.
Research Funding: None declared.
Expert Testimony: F.S. Apple has served as an expert consultant regarding postmortem blood and COHb measurements.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
参考文献
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6
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論説
Thomas G. Rosano
Olsen らは死後の一酸化炭素ヘモグロビン測定が、刑事訴訟において重要な証拠となる死亡症例を報告してい
る。死因として、一酸化炭素ヘモグロビン濃度の上昇と、おおまかな検死の結果が一酸化炭素中毒と一致し
ていたが、被告側から分光光度法の正確さと信頼性への疑いが挙げられた。
死後の毒物学検査では、分光光度法は確立されており、一酸化炭素ヘモグロビンの測定に一般的な方法とし
て使われている。技術はベールの法則を元にしたもので、特異的であるが部分的に重複する血液中オキシヘ
モグロビン、デオキシヘモグロビン、一酸化炭素ヘモグロビン、そしてメトヘモグロビンの波長範囲の長所
を生かしている。ヘモグロビンのフォーム数と同じか、それを超える波長数での分子吸光率の使用は、一連
の同時数式を解決し、ヘモグロビンの定量化を可能にする。少なくとも 4 つの波長をモニターする必要があ
るが、近年の一酸化炭素濃度計は >100 の波長をモニターするものもある。
一酸化炭素濃度計の分析性能は、モニターされる波長の数だけで決まるわけではなく、方法の妥当性を含め
た確実な法医学原理を用いることで決定される。この症例検討の著者は、一酸化炭素濃度計と手動分光光度
法の結果の適合性の証拠を示しており、一酸化炭素測定法とガスクロマトグラフィーによって測定された、
死後の血液中一酸化炭素ヘモグロビンの結果を比較した研究を引用している。一酸化炭素濃度計は、主に臨
床への使用のために開発されたことを認識しておくことは重要である。死後血液の阻害要因発生源の影響
(例えばメトヘモグロビンの上昇や変動しやすい総ヘモグロビンの存在)は、一酸化炭素濃度計間で相違が
ある。我々の経験上、死後のメトヘモグロビン値上昇は、プラス、またはマイナスの一酸化炭素ヘモグロビ
ン阻害要因を招き、ハイドロサルファイトでの前処理により、この影響を取り除くことが出来る。検死症例
7
中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度上昇の妥当性は、違う化学原理に基づく方法での確認試験を伴わなくては
ならない。法医毒物学検査では、確認試験を行うことが勧められており、毒物学的結果の信頼性と法医学的
弁護可能性を加えることになる。
この症例を証拠として、死後の毒物学報告は検死判定の根拠となりうる、また多くの場合なっており、それ
が重要な法律上の結果に言い換えられるのである。毒物学結果の正確性と信頼性は、常に科学的測定方法と
実証の実践に基づいている。
Department of Pathology and Laboratory Medicine, Albany Medical Center Hospital and College, Albany, NY.
Address correspondence to the author at: Forensic Toxicology and Clinical Chemistry, Department of Pathology and
Laboratory Medicine, Albany Medical Center Hospital and College, 43 New Scotland Ave., Albany, NY 12208. E-mail
[email protected].
Received January 25, 2010; accepted January 27, 2010.
DOI: 10.1373/clinchem.2009.140129
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors’ Disclosures of Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
論説
Barbarajean Magnani
火事から遺体を回収する場合、重要な疑問は「この人は火事の前か、それとも火事が原因で死亡したのか?」
である。その結果として「もしこの人が火事の前に死亡していたとしたら、火事はその殺人を隠すためのも
のなのか?」という疑問が生じる。この症例報告では、主要な疑問への答えは、検死の過程で明らかになっ
た。煤が鼻、口、気管、気管支内で発見された事実は、火事が始まった時点で被害者が換気をしていた(つ
まり呼吸をしていた)ことを示す、議論の余地の無い証拠である。被告側が一酸化炭素ヘモグロビン濃度の
妥当性を疑ったことは、単に事実を不明瞭にし、本来の結果から注意をそらす手段であった。61%の一酸化炭
素ヘモグロビン濃度は、被害者が火事が始まる以前は生存していたことと一致する。検査室からの結果は、
死亡の状況、検死結果、関係する病歴を含め、症例の全体像に沿って考察されるべきである。
>50%の一酸化炭素ヘモグロビン濃度は、一般的に死亡の原因としてそれのみで証拠として受け入れられてい
る。しかし、心機能や呼吸機能を損なうような疾患を持つ患者は、より低い一酸化炭素ヘモグロビン濃度で
も死に至る可能性がある。技術の進歩により、一酸化炭素測定法は一酸化炭素ヘモグロビンを測定する方法
8
として信頼性があり、死後のサンプルで正確な結果を示すことができるようになった。Olson らによって報告
されたこの症例は、複数の波長検波機による新しい測定器は、死後サンプルでの一酸化炭素ヘモグロビン濃
度測定に適しており、結果はガスクロマトグラフィーや紫外分光光度計で得られた結果とよく一致するとい
う確証的な証拠を示した。更に、死後の血液から一酸化炭素ヘモグロビンを測定する場合、法医化学者混同
要因(例えば、メトヘモグロビン、スルフヘモグロビン、低ヘモグロビン値、又は混濁)について、認識し
ていなければならない。
(訳者:加藤 久美子)
Tufts Medical Center, Boston, MA.
Address correspondence to the author at: Tufts Medical Center, 800 Washington St., Box 115, Boston, MA 02111. Fax
617-636-7128; e-mail [email protected].
Received November 12, 2009; accepted November 20, 2009.
DOI: 10.1373/clinchem.2009.140137
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors’ Disclosures of Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
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