5 - 日本経済研究センター

日 本 経 済 研 究 セ ンタ ー
Table of Contents
Japan Center for Economic Research
http://www.jcer.or.jp
2014/5
中国経済、「安定成長」は可能か−立ちはだかる...
2014/5
経常収支の赤字化と対外的な金融仲介の役割
2014/5
正念場を迎えるアベノミクス
2014/5
アベノミクス:試練の夏
2014/5
石油危機(5) 価格の力は偉大なり
2014/5
危機からの復元力:日本と米国
2014/5
貿易・経常収支の赤字をどう見るか――債権国型...
2014/5
財政再建と世代間の対立
2014/5
BJPは経済改革を加速できるのか
2014/5
ウクライナは分裂するか―旧東西ドイツとの比較
2014/5
『東アジアのイノベーション』をテーマに議論
2014/5
【帰国にあたって】フィリピンからのスカラー生...
2014/5
金融政策による物価上昇に潜むリスク―円安頼み...
2014/5
AEPR特別セミナー 東アジアのイノベーショ...
2014/5
2014年5月−6月のセミナー(東京・大阪)
2
8
14
18
21
26
33
38
41
46
50
53
56
57
本記事は日本経済研究センターの会報ページを印刷したものです。無断複製、無断転載を禁じます。
2014年05月号
チャイナリスク
中国経済、「安定成長」は可能か
-立ちはだかる「中所得の罠」と「体制移行の罠」
山崎正樹・中国研究室長兼主任研究員
中国が大きな転換期を迎えた。目を見張るほどの発展を遂げ世界2位の経済大国に躍進し
たが、足元の経済成長は大幅に鈍化している。社会の多元化と不安定化も目立ち、先行きへ
の不安感が高まってきた。
前途にはリスクが山積している。これらのリスクは今後、どの程度の確率で表面化するの
だろうか。また表面化した場合、中国の経済、社会、政権に、どのような影響を及ぼすのだ
ろうか。こうした問題意識から、日本経済研究センターは2013年度の中国研究報告書『
チャイナリスク−習近平指導部が直面する難題と行方』をまとめた。そこでは多様な観点か
らリスクを分析しているが、本稿では特に、中国経済の中期的な展望についての考察を紹介
する。
減速する経済扁長
中国経済は1970年代末の「改革開放」以来、ほぼ30年間にわたって高度成長を続け、
国内総生産(GDP)の成長率(前年比伸び率)は80年代に平均9.7%、90年代に同
10.0%、2000年代(2000〜2010年)に同10.3%を記録した。ところが
近年は大幅に低下し、12年と13年はともに7.7%となった。
これは一時的な現象なのだろうか。その判断材料として中国経済の過去の動きを見ると、
大きな「山」と「谷」が3回ずつあり、現在は「第3の谷」の時期であることが分かる(図
表1)。
こうした「山」や「谷」が単なる景気循環なら、中国経済が過去と同様に「第3の谷」を
2
2014年05月号
脱し、2桁成長の軌道に戻ることも考えられる。しかし過去の「山」と「谷」は景気循環と
いうより、以下のように主に外的要因によるものであることに留意すべきである。
◆第1の山:「改革開放」の初期効果=海外からの対中投資増
◆第1の谷:天安門事件(89年)の影響=海外からの経済制裁
◆第2の山:「南巡講話」の効果=対中投資の回復
◆第2の谷:アジア経済危機の影響=外的な経済ショックの波及
◆第3の山:世界貿易機関(WTO)加盟の効果=対中投資の増加や貿易の活性化
これに対し、足元の「第3の谷」については、これといった「外的要因」が見当たらない。
つまり、足元の谷は、これまでと違って「内的要因」によるものと考えられる。その要因と
は、①人口ボーナスの終焉②諸コストの上昇――である。①について言えば、中国の生産年
齢人口(15〜64歳)のピークは15年ごろであり、それ以降は人口オーナス期に入る(
図表2)。また②に関しては労働、資源、不動産、環境などのコストが軒並み上昇しており、
輸出産業にとっては人民元高も痛手となっている。
このように、足元における中国経済の成長鈍化は内的要因、しかも構造的な要因によるも
のである。年率10%以上の高成長期は終わり、6〜8%程度の中成長期に移行したと言え
る。
そこで問題になるのが、この「中成長」を維持できるかどうかである。先行きは楽観でき
ない。前途に「中所得の罠」と「体制移行の罠」が待ち受けているからだ。
立ちはだかる「中所得の罠」
「中所得の罠」とは、世界銀行が07年の報告書『東アジアのルネッサンス』で提起した
概念である。明確な定義はないが、大枠は以下のような図式である。
◆低所得国で、低廉な人件費を活用する労働集約型・輸出型の産業が育つ。
◆そこに、農業セクターから余剰労働力が移動する。
◆輸出産業の成長により経済が成長し、所得水準も向上する。
◆生産性の低い農業セクターから相対的に生産性の高い製造業セクターへ労働力が移動する
ため、国全体の生産性が上昇する。
3
2014年05月号
◆しかし中所得国の段階に達すると人件費は上昇し、輸出に依存する労働集約型企業は国際
競争力を失う。
◆ルイス転換点(経済発展の初期段階における完全雇用の達成)が到来し、産業セクター間
の労働力移動による生産性の向上も減衰する。
過去に「中所得の罠」に陥った国々では上記の労働力投入の変化のほかに産業高度化の遅
れ、格差の拡大、社会階層の固定化などが観察されている。これらは現在の中国に、かなり
当てはまる。つまり中国は「中所得の罠」に陥るかどうかの分かれ道に差し掛かったと言え
る。
罠を回避するには、成長モデルの転換が必要である。これまで中国経済は「投入主導」「
製造業主導」「輸出主導」というモデルで成長してきた。すなわち「労働力」「資本」「資
源・エネルギー」を大量に投入し、製品を大量に生産して輸出するという方式だった。いわ
ゆる「粗放型」「爆食型」であるが、今後は産業を高度化し、生産性の向上を軸とした成長
に切り替えていくことが不可欠だ。輸出主導を内需主導に、製造業主導をサービス業とのバ
ランスの取れた成長に修正していくことも求められる。市場経済化の推進、金融システムの
整備、規制緩和、産業の高度化とそれを支えるイノベーション能力の向上、富の再配分によ
る格差の縮小、社会階層間の移動促進なども重要である。
「体制移镸の罠」に陥る恐れも
「中所得の罠」は世界共通の問題だが、中国にはこれとは別に、同国独自の罠も待ち受け
ている。「体制移行の罠」である。これは清華大学(北京)の孫立平教授らの研究グループ
が11年度の研究報告で提示した概念で、ポイントは以下の5点である。
◆既得権益集団は短期的な利益を求め、資源浪費型の高成長を追求している。経済発展は政
府主導となっている。
◆体制改革は停滞し、移行期の体制が定着している。既得権益集団は旧体制と新体制の要素
を組み合わせ、自らの利益を最大化しようとしている。国有企業による市場独占が、その典
型である。
◆社会的流動性が低く、社会構造が固定化されつつある。階級間に断層ができ、社会の活力
4
2014年05月号
が衰えている。階級間の対立も顕著になり、社会矛盾が激化している。
◆社会の安定維持が国の最重要課題になり、改革が先伸ばしされている。社会の安定維持の
ための対策が、かえって社会を不安定化させる要因になっている。
◆社会崩壊の兆しが顕著になっている。地方政府による権力の濫用が目立っている。農民・
市民と政府の対立が激化し、公平と正義の維持が困難になっている。
孫立平教授らの研究グループは「体制移行の罠」を克服する方策として、①市場経済、民
主政治、法治社会への移行を推進する②政治改革により権力の腐敗を抑制し、政策実行能力
を高める③これまでは改革に関する意思決定を地方政府や中央政府の各部門に委ねていたが、
これを中央政府の上層部によるグランドデザインのもとで進めるようにする。改革は公平と
正義を基本価値とし、国民の声を聴きながら進める−−などを提案している。既得権益層に
よる富の独占を排除し、規制緩和や民主化を進める必要があるとの立場だ。
大幅な改革が不可竌
これまで見てきたように、中国経済の先行きは楽観を許さない状況だ。「中所得の罠」と
「体制移行の罠」を克服するため、成長モデルの転換が欠かせない。それには国有企業改革、
財政・金融改革、行政改革、規制緩和などに同時並行的に取り組み、国有企業による不公正
な市場独占を崩すことが不可欠だ。社会の安定維持については行政・司法改革、格差の縮小、
環境汚染の改善などが重要である。
一連の改革は密接に絡み合っているが、その本質は「ゆがんだ経済・社会システムの是正」
である。これは中国全体から見れば望ましい方向だが、既得権益層の抵抗は必至である。例
えば国家の保護下で市場を独占し、高水準の利益を上げてきた石油、電力などの大型国有企
業や国有商業銀行が、すんなりと改革を受け入れるとは考えにくい。胡錦濤・前政権による
「和諧社会(調和の取れた社会)」に向けての改革が満足できるだけの成果を上げられなか
ったのも、まさに既得権益層の抵抗が主因だった。果たして習近平政権は大幅な改革を実施
し、中国経済を安定成長の軌道に乗せることができるのだろうか。政権の意志と実行力が問
われている。
5
2014年05月号
渜角的な観点からリスクを分析した13夨度報告書
13年度の中国研究報告書『チャイナリスク−習近平指導部が直面する難題と行方』は序
章を含めて全9章から成る。そこでは短期・中期的な中国経済の展望、財政・金融改革の行
方、深刻化する環境・資源制約、社会の不安定化、人口の空洞化、政権への信任、外交の多
面性など多様な観点からリスクを点検している。本報告書が、中国への理解を深める一助と
なれば幸いである。
なお4月14日には東京で、17日には大阪で研究報告会を開催した。東京では亜細亜大
学アジア研究所の遊川和郎教授が「社会の不安定緩和は可能か」、川島真・東京大学大学院
総合文化研究科准教授が「中国外交の多面性」と題して講演した。遊川氏は「社会の新たな
不安定化要因が増えている」として群体性事件、突発事件、国民の権利を求める運動、社会
階層の固定化などを挙げ、「これらを緩和・制御するのは容易ではない」と論じた。川島氏
は中国の外交姿勢が「大国とは協調、周辺国には強硬」であると分析し、「周辺国である日
本は厳しい立場に置かれる」と指摘した。大阪では神戸大学大学院経済学研究科の梶谷懐教
授が金融・財政・土地問題について講演し、「地方財政のガバナンス強化、融資平台を通じ
た債務の縮小、土地に対する農民の権利強化などを全面的に実施すると『痛み』が大きい。
このため既得権益層、特に地方政府にとって直接の『痛み』になるような改革を後回しにす
る可能性が高い」と述べた。
◆2013年度の中国研究報告書『チャイナリスク−習近平指導部が直面する難題と行方』
の概要および全文はホームページをご覧ください。
http://www.jcer.or.jp/report/asia/detail4756.html
6
2014年05月号
7
2014年05月号
岩田一政の万理一空
経常収支の赤字化と対外的な金融仲介の
役割
経常収支赤字化についての異論
経常収支赤字が4カ月連続している。原発停止による原油・液化天然ガス(LNG)輸入
量の増加は一巡しているが、円安が輸入金額を押し上げている。加えて、実質輸出は、中国
を中心とするアジア市場の伸び鈍化に加えて、海外生産の拡大や一部輸出産業が輸出競争力
を失ったことによって伸び悩んでいる。円安の進展にもかかわらず貿易収支は22カ月連続
して赤字を計上している。
市場のコンセンサスの見方では、いずれ消費税の前倒し需要の剥落とともに貿易赤字幅は
縮小し、再び、経常収支黒字が戻ってくるとしている。しかし、私は、中長期の視点に立つ
とき、黒字が戻ってきてもそれは一時的なものであると考えている。
新古典派開放成長モデルによる説明
中長期の視点に立って、経常収支の赤字、黒字を論ずる場合には、開放経済における新古
典派成長モデルが有用だ。
このモデルでは、各国で採用されている生産関数が同一であるとすれば、国際的な資本移
動によって資本収益率は均等化するはずである。資本収益率が均等化するという仮定の下で、
浜田宏一・イエール大学名誉教授と私は、1989年にヨーロッパの学術誌に日米間の資本
移動の将来を予測する論文を寄稿したことがある。
この枠組みの下では、一国の経常収支の赤字、黒字は、両国の純国民貯蓄率、労働力人口
増加率、対外純資産(純負債)残高保有による利子収入(利払い費)の3つの要因によって
8
2014年05月号
影響を受ける。利子収入(利払い費用)を除けば、経済成長の主要な決定要因である、資本
蓄積率と労働力人口投入の伸び率の差によって、ネットの国際資本移動を示す経常収支の赤
字幅、黒字幅が決定されることになる。とりわけ、純国民貯蓄率(資本蓄積率)の差は、各
国で大きな相違があり、経常収支の主要な決定要因になる。
換言すると、資本は国内貯蓄の豊かな国から国内貯蓄の貧しい国へ流れるのであり、その
背後で経常収支黒字国は対外資産を蓄積し、経常赤字国は、対外借り入れを増加させること
になる。
3つの決定要因
図1(文末参照、以下同様)は、日本、米国、ドイツの純国民貯蓄率を示している。プラ
ザ合意のあった1980年代半ばには、米国と日本の純貯蓄率の差は、15%もあった。と
ころが、2012年の時点では、両国ともにゼロである。これに対して、ドイツの純貯蓄率
は10%程度で安定的に推移している。ドイツは名目GDP比率で5−6%の黒字を計上し
ており、米国は2−3%程度の赤字を計上している。日本は経常収支赤字計上を開始したと
ころである。
図2に見るように、労働力人口増加率の各国間の差は、余り大きなものではない。ただし、
米国の人口増加率は、日本よりも大きいので経常収支赤字が持続しやすい。
図3には、3国の対外純資産(負債)の名目GDP比率が示されている。米国と日本、ド
イツの対外ポジションは対照的である。日本の対外純資産は、名目GDP比率で60%を超
えており、ドイツも40%を超えている。他方、米国の対外純負債は20%を超えている。
図4には、対外利子収入(利払い費)の名目GDP比率が示されている。興味深い事実は、
米国は、対外純負債国であるにも関わらず、日本、ドイツと同じく名目GDP比率で5%程
度の利子収入を得ていることである(マイナスの利払い費)。
これは、米国が、世界の銀行として、海外から短期資金を取り入れ、それを海外で長期運
用し、そこから利潤を享受するグローバルな金融仲介機能を果たしていることを示している。
しかも、その資産運用は、かなり効率的である。
9
2014年05月号
構造宛な経常収支赤字国へ
日本の家計の貯蓄率は、2012年に1%である。日本経済研究センターの中期予測(※
1)は、先行き2020年にかけて、高齢化を反映してマイナス5%程度まで低下するとし
ている。消費税増税の前倒し需要に伴う一時的な民間内需の高まりによる輸入量の増加はや
がて剥落し、貿易赤字幅を縮小させるであろう。しかし、貿易収支、貿易・サービス収支の
赤字が黒字に転換することはないであろう。さらに、日本経済が1960年代半ば以降構造
的にこれまで蓄積した対外資産を取り崩す段階に入ることは、時間の問題であろう。日本は、
もはや貯蓄の豊かな国ではなく、むしろ貯蓄の貧しい国になっているのである。
※1
http://www.jcer.or.jp/research/middle/detail4735.html
経常収支赤字化に対する政策対応
経常収支赤字化に対する対応策は2つある。
第一は、経常赤字化に歯止めをかけることである。ケインズは、政府は国内経済における
総貯蓄と総投資の水準を決定することに責任があると考えていた。従って、総貯蓄と総投資
の差である経常収支の水準についても、各国政府はコントロールすべきであると考えていた。
とりわけ、1930年に「貨幣論」を執筆した時点では、金本位制度の下における為替レー
トの均衡と並んで、世界と国内における投資の均衡水準を同時に達成することに主な関心が
あった。
また、ケインズは経常収支赤字国のみならず黒字国も対称的な責任を負うべきだと考えて
いた。プラザ合意において、赤字国である米国は、黒字国である日本に対して、円高誘導、
市場開放のみならず公共投資5年間面積倍増による内需拡大を迫ったのは、ケインズ的な発
想に立つものといえる。
円高誘導と内需拡大のいずれを重視するかによって、金融政策は金利引き上げをすべきか、
金利引き下げをすべきかという選択を迫られることになる。興味深いことに、プラザ合意直
後に、日本銀行は市場金利の高目誘導を行ったが、当時のボルカー連邦準備制度理事会議長
10
2014年05月号
をふくめ米国政府は、金利引き下げによる内需拡大の方を重視したようである。この理由は、
ボルカー氏自身が、変動レート制度よりも固定レート制度を望ましいと考えていたことにあ
ると、私は推測している。
国内の貯蓄―投資バランスを重視するケインズ的発想に立つとすれば、日本政府は経常収
支赤字化回避のために、公共投資削減による内需縮小を図ることが必要になる。財政部門の
投資超過が縮小すれば、経常収支赤字圧力を軽減するであろう。しかし、財政緊縮政策への
転換は、デフレ克服目標の実現のみならず成長戦略とも矛盾をきたすことになろう。
第二の政策対応は、中長期的な国内純貯蓄率の変動を重視する新古典派成長論の視点に立
って、経常収支赤字化を受け入れることである。ただし、この場合、ネットで海外から恒常
的に資金が流入するような環境を整備する必要がある。
この観点からすると、2つの政策を実施することが、求められる。
その一つは、日本の金融市場が多様であり、深みをもったものであると同時に、投資家に
とって信頼のできるものでなければならない。信頼を維持するためには、円や国債に対する
国際的投資家の信認を得ることが不可欠である。特に、日本の国債は、国際的な安全資産で
あるという信認を維持することが重要だ。
そのため第一に、日本政府は、中長期の財政目標の提示とそれを実現するための道筋を明
示する必要がある。2020年度の基礎的財政収支黒字化目標だけでは不十分であり、政府
債務・名目GDP比率目標(例えば、200%)を提示すべきである。
第二に、経常収支の赤字幅が大きくなり過ぎないために、対外資産の収益率を高める必要
がある。米国のように対外純負債となっても利子収入がプラスである状態を維持することが
望ましい。日本は、グローバルな、とりわけ、アジア太平洋地域における対外的な金融仲介
を強化し、展開する必要がある。そのための環境を早急に整備すべきだ。日本における国際
金融センター設立はその助けとなるであろう。
(日本経済研究センター
理事長)
11
2014年05月号
12
2014年05月号
13
2014年05月号
新井淳一の先を読む
正念場を迎えるアベノミクス
物事が宙ぶらりんの状態で続くのが人の魂を一番参らせる
(阿川弘之
大人の見識
新潮新書)
アベノミクス第3の矢である成長戦略作成予定の6月が迫っている。残された時間はわず
かで、文字通り正念場のはずだが、一向にその中味が浮かんでこない。法人税の実効税率は
本当に下がるのか。財政赤字の元凶である社会保障改革が進むのか。成長を阻害している岩
盤規制にメスが入るのか。国家戦略特区に6地域が指定されたが、これまでの特区と何が違
うのか。加えてTPP(環太平洋経済連携協定)は本当にスタートできるのか。
全てが阿川さんの言う「宙ぶらりん」の状態なのである。英国のエリートは、物事がどち
らにも決まらない気持ちの悪さに延々と耐える教育を受けていると言われるが、そんな伝統
もなく基本的に短気な国民性の日本人には、この宙ぶらりんは結構、きつい。なかでも短気
を地で行く株や為替の市場関係者は参りっぱなしだろう。
年初来、日本の株価は足取りが重く、円相場も膠着状態だ。株高・円安の昨年とは様変わ
りである。これに第3の矢が見えない宙ぶらりんの居心地の悪さが関係しているのではない
か。年初から4月上旬までの日経平均の下げ幅は、ウクライナ・クリミア問題で世界の制裁
を受けているロシア株より大きいのである。4月11日までの下落幅はロシアが9%、日本
が14%。脆弱な経済が不安視された南欧諸国や新興諸国が上昇に転じる中で、日本の騰落
率はG20の最下位である。
消費税率の引き上げに加え昨年の円安・株高の動きが急だったという日本固有の事情があ
るにしても、春闘での久方ぶりの賃上げ実現、企業収益の改善、デフレギャップの縮小、マ
イナス物価の解消などの「朗報」の割には、株価の走りがG20の最後尾というこの体たら
く。成長戦略が中途半端となり改革姿勢が消えてしまう不安感が影響していると見てよい。
「もやもや」が「不安」となり、「不満」から「不信」にまで至っているのが市場関係者
14
2014年05月号
だろう。先ごろ話題となった日銀の追加緩和をめぐるドタバタなどがその典型だ。4月8日
の会見で黒田日銀総裁が「追加緩和は現時点では考えていない」と発言、それがきっかけで
日経平均が1万4000円割れとなった。総裁の「考えていない」が「追加緩和がない」と
内外の市場関係者に受け取られ、株安・円高が進んだのだが、元はと言えば、市場に年度替
わり早々の追加緩和期待があったことだ。消費税上げで実体経済が悪くなる。成長戦略が期
待できるなら企業が設備投資などを増やす局面だが、足取りの重い第3の矢論争を見れば、
その可能性もまずない。結局、金融緩和に頼るだろうとの読みなのである。第3の矢の姿が
見えない「もやもや」がアベノミクスに対する「不信」まで至っている証拠ではないか。
同じ市場関係者でも、この点は欧米の方がもっと厳しい見方をしているような気がする。
BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏によると「欧米はまず例外なく日銀の
追加緩和があると思っている」という。第3の矢が放たれることはたしかにせよ、さほど強
烈なものにならない。改革路線への道も中途半端だろう。だから金融のさらなる支えがない
とアベノミクスは失速の恐れがある、との見方なのだ。昨年、猛烈な勢いで日本に入ってき
た欧米の機関投資家の資金がいま逆流傾向にあるのも、そうした見方の反映だろう。
追加緩和をめぐる4月の乱は、総裁会見の1週間後の15日の安倍首相と黒田総裁の何や
ら意味ありげなサシの会談につながり、総裁から「ちゅうちょなく政策調整を行う」と言う
発言を引き出した。一方で、麻生財務相からも、130兆円の公的年金を運用する年金積立
金管理運用独立法人(GPIF)の株買いを示唆する「6月以降に動き」とのハプニング発
言も。
政府首脳が市場を意識すること自体、マーケットの時代だから悪いことではない。だが、
ここへきてのバタバタ感のある連続発言は、うがって見れば、第3の矢、成長戦略の作成の
遅い歩みを何とかカバーしたいリップサービスとも取れる。しかし、本当にそれでよいのか。
いま安倍政権にとって必要なことは、他でもない、正面突破、第3の矢の中味を充実させる
ことだろう。与えられた期間は2カ月。税制改革、社会保障改革、規制緩和、いずれも難問
だが、宙ぶらりんはもうやめてもらわないといけないのである。
ボルドーの平凡なワインでも本人が意中の相手を惚れさせる媚薬が入っていると思って飲み、
一生懸命に口説けば、落とせなかった相手も落とせるようになる
(浜田宏一イエール大学名誉教授
アメリカは日本経済の復活を知っている
講談社)
浜田さんが小泉政権時代にオペラ好きの小泉首相に「デフレ脱却には人々の予想・期待か
15
2014年05月号
ら変える必要がある」ことを理解してもらうために語った例えが、このボルドーワインの話
である。ドニゼッテイのオペラ「愛の妙薬」がベースだが、小泉さんは即座に理解したとい
う。安倍首相の経済ブレーンとなって浜田さんの持論である「人々の予想・期待形成を変え
る」政策が実現した。第1の矢の金融と第2の矢の財政で展開中である。世論調査や各種の
経済予測に「変化」が出始めたことも確かである。しかし、問題はこの媚薬効果の持続力で
あろう。くどいようで恐縮だが、日本経済再生のため人々の予想・期待を根っこから変える
には、成長戦略の充実しか方法がないのである。
6月にまとまる成長戦略で欠かせないのは、第1に法人税率の引き下げであろう。現状の
実効税率35%は英国の21%、シンガポールの17%に比べ格段に高い。英国もシンガポ
ールも世界の中で外資の取り込みが巧みな国として知られる。日本企業の海外脱出を防ぎ、
外資を日本に呼び込むには、税率を少なくとも10%は下げる必要がある。
第2に社会保障改革に手を付ける必要がある。06年に誕生した第一次安倍内閣では、雇
用保険に対する国庫負担を減らし、生活保護費を圧縮して社会保障費の伸びを年2000億
円抑制する目標を達成するなど、この分野に力を入れた。だが、いまの安倍内閣にはそのこ
とが数値目標優先と批判を浴び、自公政権の野党落ちにつながったとの思いもあり、今回、
数値目標設定に及び腰だといわれる。ただ日本は既に高齢化社会の本番に入っており、社会
保障にメスを入れないで財政が維持できるはずがない。数値目標はどうしても欠かせないの
ではないか。
第3は国家戦略特区を使い勝手のよいものにすることだ。小泉政権の構造改革特区から始
まり、民主党政権の国際戦略総合特区や地域活性化総合特区など、日本には似たような地域
再生特区が多数存在している。廃止になったものも含めれば累計で1666件である。うま
く活力につながった特区がないわけではないものの、大多数は特区とは名ばかりで成功とは
言い難い。理由は中央官庁が権限を手放さないからだ。安倍政権も国主導で規制の岩盤を切
り崩すのが特区だというからには、「特区を1国2制度のように」する姿勢が必要だろう。
第4は労働規制の撤廃・緩和だ。安倍首相の指示で外国人材の活用の仕組みの検討が始ま
っている。家事、介護、建設などの分野の人手不足対策ということだが、実際にどれぐらい
実効性のあるものになるのか。育児や介護を理由に就業できない女性は220万人に及ぶ。
この女性パワーの活用が労働人口減少ペースを遅らす要因になることはたしかである。
第5は成長戦略の枠には入っていないが、日本経済の成長を底から支えるTPPの締結だ。
16
2014年05月号
この5つが全て完結して初めて意味のある成長戦略と言えるのではないか。
アベノミクスと同じように、リーマン・ショックからの脱出策として金融の超緩和を選ん
だ国々の中では、唯一米国が超緩和の縮小を進めている。この縮小が円滑に進むかどうかが
世界の注目の的だが、日本の場合、GDP(国内総生産)に占める国債残高が突出して高い
という事情もあって、将来の縮小局面では、米国以上に政策的にむずかしい綱渡りが要求さ
れる。それをあらかじめ考慮に入れれば、できることなら金融面での追加緩和がない方がよ
い。追加緩和がいらないくらいの充実ぶりを第3の矢に期待したいのである。
日本の国債残高はGDPの2.3倍だ。歴史的にみれば、この比率がもっと高くても長期
安定成長を実現した国がある。19世紀の英国のケースだ。ナポレオン戦争の戦費調達に苦
労し、19世紀初頭には国債残高がGDPの2.5倍にも上っていた。それを100年かけ
てGDPの0.25倍、10分の1の比率まで落とした。鉄道ブームと大英帝国の極限まで
の拡大という恵まれた環境下での財政再建だが、財政規律をかたくなに順守したことも確か
である。緊縮政策をやりすぎてアイルランドの飢饉を救えなかったこともあったという。
19世紀の英国と21世紀の日本。当然のことながら置かれた立場が余りに違うので単純
には英国の政策は参考にならない。しかし、英国のように恵まれた状況のなかでもいったん
高くなった国債残高を減らすには、かたくなな財政規律の保持が必要だったのである。その
点は記憶に留めるべきではないか。日本の場合、第3の矢の成長戦略の作成にあたっても長
期的観点からの財政再建という視点を欠かせないということであろう。端的に言うなら来年
の消費税の10%引き上げを誰もが反対しないような中味の濃い成長戦略をこの2カ月で作
るということだ。媚薬の賞味期限が切れないうちにということである。
(日本経済研究センター研究顧問)
17
2014年05月号
竹中平蔵のポリシー・スクール
アベノミクス:試練の夏
2012年12月に発足した安倍政権は
アベノミクス
を掲げ、経済政策の面で上々の
スタートをきった。昨年1年間の株価上昇率は57%。バブル期の80年代後半の平均上昇
率と、ほぼ同様の姿となった。その背後に、外国人投資家による約15兆円と史上最高額の
買い越しがあった。大胆な金融緩和によって「期待」が変わり、それが株価上昇を実現、株
価の上昇が「資産効果」を通じて実体経済に影響を与えた、と考えられる。昨年の実質成長
率が1.5%に留まったことを厳しく評価する向きもあるが、内需に関しては約3%の成長
を示している。
しかしここに来て、海外投資家の日本経済に対する評価は厳しさを増している。年初から
4月20日までの期間、米国やドイツの株価は横ばいもしくは微増であったのに対し、日本
の株価は8%下落した。3月の外国人投資家の売り越しは1兆円を超え、もしもいまのペー
スが続けば昨年の買い越しを完全に打ち消してしまうという計算になる。アベノミクスにと
ってこの夏は、試練の時となる。
成長戦略をめぐる評価
アベノミクスに対する厳しい評価は、もっぱら第3の矢「成長戦略」に集中しているよう
だ。しかし、成長戦略というのは、金融政策(第1の矢)や財政政策(第2の矢)と根本的
に異なる性格を持っている。つまり金融・財政政策はもっぱら需要サイドの政策であるのに
対し、成長戦略の多くは供給サイドの政策であることだ。具体的な政策決定プロセスも、根
本的に異なる。金融政策は日銀の政策決定会合で政策審議員が決められる。現実に第1の矢
は、昨年4月4日の決定会合で直ちに決定され、実行された。財政政策は、それより時間が
かかる。財務省が予算案をつくり、それを国会で承認しなければならない。それでも昨年2
月の10兆円規模の補正予算は、今年2月の5.5兆円の補正予算も、短期間の審議で順調
に決定・実行された。
18
2014年05月号
これに対し、成長のための制度変更や規制改革など、多くのものは法律改正を必要とする。
法律改正には通常、審議会での審議や与党政調会での議論など最短でも半年、通常は1−2
年の時間を要する。また、制度の変更によって企業行動が変わり、それが経済的成果(設備
投資の増加など)に結びつくにも相当の時間がかかる。したがって、第3の矢を第1、2の
矢と同次元で議論することに、そもそも無理がある。メディアにおける成長戦略の批判の多
くは、こうした基本認識を欠いていると言える。
しかしながら、そうした問題点を考慮したとしてもなお、現状の成長戦略には厳しい見方
が下されるかもしれない。それは、「岩盤規制」と言われる強固な規制(おおむね20程度
と考えられる)に、ほとんど手がつけられていないからだ。株式会社による農地所有、混合
診療など、10年以上も前と同様の議論が行われ、堂々巡りが続いているように外部からは
見えるだろう。現実には、いくつか目に見える進化がある。また国家戦略特区という新しい
枠組みに関して、法律が昨年12月に成立し、先般6カ所の特区指定が行われたことなど、
通常をはるかに上回る速度で改革が進行しているとも言える。
日本の政策に関する報告書(骨太方針や成長戦略、各審議会の報告など)は、「・・・を
検討する」「・・・を目指す」といった論調のものが多いが、世界の投資家が求めているの
は、新しい政策の「決定」であり、改革の「成果」である。冒頭で「アベノミクス、夏の正
念場」と書いたが、6月の骨太方針・成長戦略決定を控えて、まさにこの夏に「決定」と「
成果」が示せるかどうかが問われている。
非連続型の大玉改革
成長戦略に対する海外投資家の評価が厳しい一つの原因は、「国家戦略特区」の設置が動
き出したこと以外は個々の政策課題の改良型の、いわば地味な政策が多いことだろう。言う
までもなく、こうした地道な改革にはもちろん大きな意味がある。またどれ一つをとっても、
困難なものばかりだ。しかし、政策に精通していない人々や海外投資家は、いわば「非連続
型」で「ショック・セラピー的」な大玉の改革を期待している。こうした大玉の改革は、現
実の経済効果以上に、内閣の成長戦略への姿勢がいかに強固で揺るがないものかを示す効果
もある。
そうしたなかで一つの好材料は、今年1月のダボス会議で安倍総理が極めて大胆なスピー
チを行ったことだ。そこでは、特区の枠組みを使って2年で全ての岩盤規制に突破口を開く
19
2014年05月号
こと、法人税率を日本企業が国際競争できる水準に引き下げること、女性の活躍を助けるた
め家事や介護に外国人労働を活用すること、政府の年金基金(GPIF)を抜本改革するこ
となど、非連続改革に繋がる項目が掲げられている。
6月の成長戦略第2弾公表までの時間制約を考えると、これらの大玉改革をどこまで実現
することができるか、が問われよう。このうち特区については、地域指定を受けて各地域の
「区域会議」を円滑に起動させ、「区域計画」をどこまで明確にできるかどうかが問われる。
その際、中心となるべき東京都の改革色が弱いことが懸念材料である。
法人税については、総理の意向と自民党税制調査会の意向に、従来から食い違いがあるこ
とが懸念される。また、大胆な減税の財源をどう確保するか、明確化が求められる。筆者は、
過去6年で15%も拡大した歳出の一部削減、税の徴収の徹底(そのための歳入庁創設)な
どが必要と考えるが、議論はこれからである。外国人労働に関しては、まだ議論の入り口の
段階であり、受け入れの制度設計が見えない。また、特区でこれを実施することも考えられ
るが、その際は先に挙げた東京都の姿勢が課題だ。GPIFについては、すでに運営委員会
の人事に手をつけた点が評価される。これを含め、資産運用基準の弾力化など当面(現制度
内で)できることを実施するとともに、組織の抜本的強化のための法律改正を確約できるか
どうかが課題である。
アベノミクスは、日銀に対する物価目標の導入という、まさに非連続改革から始まった。
これが奏功して、昨年の株価大幅上昇が実現された。かつての小泉内閣は、不良債権処理、
郵政民営化、など非連続改革を断行したが、それでもこうした大玉は、1年か2年に一つの
ペースだった。
安倍内閣発足から間もなく1年半。今こそ非連続・ショック・セラピー的な大玉改革に取
り組むべき時だ。
(日本経済研究センター
研究顧問)
20
2014年05月号
小峰隆夫の私が見てきた日本経済史
石油危機(5) 価格の力は偉大なり
我々は何のために歴史を振り返るのだろうか。もっとも平凡な理由付けは「将来への教訓
を得るため」ということだ。
私は、経済企画庁で実際に目の前で起こりつつある第1次、第2次の石油危機を観察し、
そこから様々な問題が生まれてくる現場に実務家として居合わせたという経験を持つ。考え
てみると、現役のエコノミストの中で、実体験として石油危機を知る人は次第に貴重な存在
になりつつあるようだ。だとすれば、少しでも石油危機から得られた教訓を書き残しておく
ことは(やや大げさだが)、私の務めだと言えるかもしれない。
石油危機から私が学んだことの中で最も印象深いのは、価格の力がいかに大きいかという
ことであった。
石油価格上昇によって甠まった石油生産性
第1次石油危機によって石油の価格は約4倍になり、第2次石油危機でさらに2倍になっ
た。当然、ガソリン、灯油などの石油関連製品も大幅に値上がりした。この価格の変化によ
って、経済全体は大きく旋回し始めた。前回述べたように、家庭でも、企業の生産現場でも、
エネルギーを少しでも節約しようと動き始め、そのための技術が開発され始め(必要は発明
の母)、エネルギー効率を売り物にした自動車や家電製品が現れ始め、エネルギー多消費型
の産業は次第に駆逐されていった。
その結果、日本経済全体でのエネルギー効率化が進み、石油輸入量は激減した。産業構造
も高付加価値化し、輸出は再び盛り返し始めた。私は、改めて価格の力はすごいものだと感
心した。
この点について、私は、1982年に出版した『石油と日本経済』(東洋経済新報社)と
21
2014年05月号
いう本の中で1章を割いて分析している(同書第6章「省石油の経済学」)。まず私は、「
石油生産性」という概念を使って、省石油の背景を分析した。それまで、石油消費とマクロ
経済の関係を分析する際には、「石油原単位」(石油消費量/GDP)や「石油消費のGD
P弾性値」(石油消費の伸び/GDP成長率)という概念が使われることが多かった。この
点について、私は、経済的思考としては、石油生産性(GDP/消費)という概念の方が適
当であるとして、この概念を使ったのである。
要するに、「付加価値生産性」「労働生産性」「全要素生産性」などが上昇することが、
経済的諸問題を解決してきたように、「石油生産性」の上昇が日本経済を救ったと主張した
のである。
当時私は、この考えは多くの経済学者に納得してもらえるだろうから、これからは「石油
原単位」という概念は使われなくなり、「石油生産性」という概念が一般化するだろうと考
えた。しかし、この予想は全然外れて、使われなかったのは「石油生産性」の方であった。
私のエコノミストとしての影響力は極めて限定的だ(「小国の仮定」しか成り立たない)、
ということも、この時私が学んだことの一つである。
なお、誠に興味深いことに、当センターのコラムで新井淳一研究顧問が、「電力生産性」
という概念を紹介している(2013年8月16日「『知る』と『合点』の経済学」)。
http://www.jcer.or.jp/column/arai/index521.html
これは、伊丹敬之氏が『日本企業は何で食っていくのか』という本の中で提唱している概
念で、産業・企業が生み出す付加価値総額を使用する電力量で割ったものである。私の「石
油生産性」と全く同じ発想だ。石油不足の時代に私が考えていたことが、電力不足の時代に
再び蘇ったのだと思うと、なかなか感慨深いものがあった。
石油文明論批判
私は、この石油生産性という概念を使って、日本の石油消費節約が急速に進んだ経済的背
景を分析したのだが、こうした分析を踏まえて、次のようなことを述べている。
まず、価格の力を使わずに、政策的に消費を節約しようとすることは、長期的にかえって
マイナスになることさえあると言っている。例えば、第1次石油危機後は生活必需品であっ
22
2014年05月号
た灯油価格(当時は暖房に灯油が使われていた)を政策的に低めに抑えようとした。灯油価
格上昇への国民的不満が大きかったからである。しかし、これによって石油多消費型の温風
暖房機などのストックが蓄積されてしまい、その次にやってきた第2次ショックの影響を大
きくしてしまったのである。
「石油文明を転換せよ」という主張にも猛烈に反論を加えている。当時は、いわゆる文化
人的な人たちが「石油浪費型の文明を変えなければならない」という精神論を展開していた
のだ。これに対して私は次のように書いている。
「石油文明変革論の最大の欠点は、なぜ石油依存型の現代文明が生じたのかという理由を
考慮していないことである。われわれの経済社会が石油への依存度合いを強めてきた最大の
理由は、とにかくそれが他のエネルギー源よりも安かったからである。したがって、石油が
相対的に安い状況が変わらなければいくら口をすっぱくして変革を説いても石油文明は生き
続けるに違いない。逆に、石油を使うことが高くつく(石油を使うと損をする)ようになれ
ば、石油文明も自然に解消していくであろう」
価格を使うのが効率的
特定の財貨・サービスの消費量を政策的にコントロールしようとするのであれば、制度的
・法的仕組みを整備するよりも、価格の力に任せた方が効率的である。
例えば石油価格・同関連製品の価格が上昇すると、家計も企業もその消費を減らそうとす
る強いインセンティブが作用するようになる。すると、政府がいちいち考えないでも、いわ
ば自動的に消費が減っていく。各人の「損してたまるか」という意志と知恵の力に比べれば、
政策当局のアイデアなどはたかが知れている。
この点についても、前掲書で私は、当時出ていた、エイモリー・ロビンスの『ソフト・エ
ネルギー・パス』という本を例にとって、いろいろ述べているので、少し例示してみよう。
ロビンスの本では「電力はエネルギーロスが大きい」という点が強調されている。確かに、
発電した後、送電線で消費地まで運ぶまでに、相当の電力ロスが生じることは事実である。
これについても、価格を絡ませて、私は次のように書いている。
23
2014年05月号
「エネルギーロスを即ムダとする考え方も誤りのもとだ。こうしたロスは、必要なコスト
だと考えるべきだ。ロスがあるとすれば、それだけのエネルギーロスが許されるほどエネル
ギー価格が十分安いということにつきる」
またロビンスは「異質な最終用途を、各々の仕方にもっとも効率的なやり方で供給された
最小のエネルギーでいかに満たすかが問題だ」と言っているのだが、これに対しても私は、
「それは高価格によって市場メカニズムがもっとも効率的に解決する」と書いている。
石油の価格が上がれば、石油を最も必要としない人から順番に石油を使わなくなる。これ
ほど効率的な節約方法はない。
価格を使うのが公平
市場経済は「公平性」を損なうという議論がある。しかし、同じだけの石油消費を節約し
ようとするのであれば、価格を使うのが「公平」だとも言える。
この点についても私は前掲書の中で、いわゆる「節約」は社会的に不公平だと主張してい
る。当時は、政府が率先して石油消費の節約を呼び掛けていた。石油供給制約に直面して、
節約を呼び掛けるのは当然に見えるが、私はこれは社会的に不公平だとして、次のように書
いている。
「例えば、日曜日のマイカー使用は好ましくないという社会的判断があったとしよう(当
時まさにそういう判断があった)。これを一般的な良心への呼びかけによって達成したらど
うなるか。呼びかけにこたえてマイカーを自粛した人は、それなりの節約に応じたコストを
払うことになる。一方、呼びかけにもかかわらずマイカーを乗り回す人は、何のコストも払
わずに済む。それどころか、自粛した人がいる分だけ道がすいているから、従来よりもメリ
ットを享受することになる。つまり、社会的に望ましいことをしている人のみがコストを負
担してしまうことになるという不公平が生じるのである」
こうして当時の自著を読み直してみると、「30年前の私も結構いいこと言っているじゃ
ないか」と、褒めてあげたくなる。
なお、以上述べてきたようなことは、2011年の大震災後の電力不足の際にも繰り返さ
24
2014年05月号
れている。この時も、電力が足りないという事態が生じた時、多くの人は電力料金を引き上
げるという手段を嫌い、自主的な節電を呼び掛けた。しかし、短期的な評判は悪くても、本
当に効率的に電力消費を節約しようとするのであれば、電力料金を引き上げるのが正しい政
策的対応だったのではないかと私は考えている。
(日本経済研究センター
研究顧問)
25
2014年05月号
齋藤潤の経済バーズアイ
危機からの復元力:日本と米国
【米国の復元力】
2000年代後半の金融危機は、米国におけるサブプライム住宅ローンに始まり、リーマ
ン・ショックで深まりました。その影響は深刻で、米国に止まらず、日本を含む世界各国に
及び、世界的な金融・経済危機へと発展することになりました。その影響から脱するのには
「全治3年」に及ぶとの言葉は、まだ記憶に新しいことかと思います。
しかし、米国は、その危機の震源地であったにもかかわらず、いち早く危機から回復した
ように見えます。例えば、危機による落ち込みから危機前のピークに戻るまでの期間で見ま
すと、実質GDPは約3年で回復していますし、名目GDPの場合には約2年で取り戻して
います(第1図)。
もっとも、資産価格では、多少状況は異なります。特に住宅価格(ケース・シラー全米指
数)の場合には、バブルの生成と崩壊があったので、依然として2006年頃のピークには
戻っていませんし、当面戻ることは期待できないように思えます。しかし、その住宅価格で
さえ、2011年後半からは上昇傾向を示すに至っています。また、株価(ダウジョーンズ
平均指数)は、2007年後半のピークを5年余りで取り戻しています(第2図)。
【日本の復元力】
実は、日本の動きは、このような米国の動向とは対照的なものとなっています。日本は、
震源地ではなかったにもかかわらず、危機前の水準に戻るのに時間がかかっており、多くの
経済指標は未だに取り戻せてはいません。
26
2014年05月号
例えば実質GDPは、2008年第1四半期にピークに達した後、大きな落ち込みを示し、
2009年以降は回復傾向にありますが、完全に取り戻すことなく今日に至っています(2
013年第4四半期でもまだわずかに下回っています)。名目GDPは、落ち込んだ後、あ
まり力強い回復を示しておらず、直近時点でも、まだピークを約7%下回る状態にあります
(第3図)。
資産価格の面でも同様です。株価(日経平均)は、約7年たってもピークにまで戻しては
いませんし、地価(市街地価格指数<住宅地>)に至っては、未だに1990年代初頭のバ
ブル崩壊後の水準調整局面にあり、明確な上昇基調は見られません。
【復元力の違いの理由】
このような違いは、どのように説明できるのでしょうか。
一般的には、米国の経済構造の柔軟性、市場メカニズムの機能性にその原因が求められる
ようです。価格が柔軟に変化し、それに応じて各主体が速やかな調整を行うことによって、
経済は新たな均衡に至っている、というイメージです。これに対して、日本の場合には、経
済構造が硬直的であり、規制・慣習が市場メカニズムの機能を制約しているので価格の変化
が限られており、調整が遅い、というのが説明になります。
【対照的な労働市場の状況】
しかし、実はこの説明は、労働市場には当てはまりません。労働市場においては、日米は、
今見てきたのとは全く逆の動きを示しているのです。
米国の失業率は、直近の2014年3月でも6.7%に止まっており、危機前の最低水準
の4.4%には遠く及びません(第5図左)。これに対して日本の失業率は、2013年6
月には危機前の4.0%を下回り、2014年には3.6%にまで低下をしています(第6
図左)。
これに対応するかのように米国の賃金水準は危機の前後を通じて、一貫して上昇を続けて
27
2014年05月号
いたのに対して、日本の賃金水準は危機後に下落をしています。あたかも米国では数量調整
が、日本では価格調整が行われているような動きになっているのです。
ひとつ注意をしておくべきことは、日米両国では高齢化が進行しているということです。
一般に高齢化が進行すると労働参加率が低下するので、労働力人口がそれだけ減少します。
このことは、労働需要の方に変化がなければ、失業率を低下させる方向に寄与することを意
味します。日本の場合には、そのことで失業率の低下が助けられたという面はあります。し
かし、逆に米国の場合には、高齢化があったにもかかわらず、失業率の低下が限定的だとい
うことになります。
【楮期失業者増加の背景】
それでは、労働市場における日米の動向の違いは、何によってもたらされているのでしょ
うか。
米国の失業率の内容をみると、特に目立つのが長期失業者の増加です(第5図右)。この
背景の一つには、レイオフの変化がある可能性があります。レイオフは勤続年数(シニオリ
ティ)の短い順に一時解雇し、長い順に再雇用する制度です。これが機能していれば長期失
業は防げるはずです。しかし、近年、事業転換の動きや産業構造の変化から、こうした機能
が変化している可能性があります。
しかし、そうなりますと、長期間失業している人は技能の陳腐化が起こり、ますます雇用
されにくくなり、失業がさらに長期化するおそれがあります。このような現象(「履歴効果」
あるいは「ヒステリシス」と言われています)は、欧州の長期失業の背景にある要因として
指摘されてきた現象ですが、これが米国でも起こっている可能性があるのです。
このような現象は、日本では相対的に起きにくいと考えられます。もともと終身雇用制を
とっており、解雇が生じにくいシステムになっています。このため、景気が悪化しているよ
うな時期には、「雇用保蔵」とか「企業内失業」とかという言葉で表現される現象を生み出
すことになります。確かに業務にはついていないという意味では失業状態にあります。しか
し、雇用者は企業内に止まっているので、長期失業化する可能性はそれだけ低いことになり
ます。
28
2014年05月号
しかも、日本では政府が企業による雇用維持を後押しするような政策を実施してきました。
「雇用調整助成金制度」がそれです。企業が雇用者を(解雇ではなく)休業させたり、研修
させたりする場合に、その期間の賃金を政府が補助してきたのです。
【雇琇維持と事業転換】
このように、日本では、官民の努力によって失業が抑制され、失業の長期化を防止する効
果をもたらしていたと考えられます。しかし、だからと言って問題がないわけではありませ
ん。
残念ながら、日本においても長期失業者(失業期間6カ月以上)は、まだ危機前の水準に
まで戻っていないのです(第6図右)。ということは、日本の失業率低下は、もっぱら6カ
月未満の短期失業者の減少によってもたらされているということになります。これは、雇用
調整しやすい非正規雇用者が増えていることに対応しているものと考えられます。
しかも、こうした企業内の雇用維持によって、企業は事業の効率化・再構築、あるいは事
業転換のインセンティブが失われてしまう恐れがあります。第7図で見られるように、日米
では労働生産性の伸びに大きなかい離が生じていますが、これがそうしたことの結果を示し
ている可能性があります。
ショックに対して頑健でありながら、持続的な経済成長と安定した雇用を実現できるよう
な経済システムとは何か。以上のことは、このことを考える必要性を示しているように思え
ます。
(日本経済研究センター研究顧問)
29
2014年05月号
30
2014年05月号
31
2014年05月号
32
2014年05月号
小島明のGlobal Watch
貿易・経常収支の赤字をどう見るか――
債権国型の国際収支構造への転換に必要
な国内改革
「貿易収支でも経常収支でも
経常収支の赤字)国
黒字大国
だと思っていた日本が
双子の赤字(財政と
になってしまうのか」――このところ国内で議論が生まれているだけ
でなく、海外投資家もしきりに問いかけてくる。
1980年代に日米の貿易・経済摩擦が激しかった際には突出した日本の対外黒字が批判
され、日本は「黒字減らし」を迫られ、その手段としての内需拡大策が行き過ぎ、バブル景
気を生んでしまった。そこからの教訓は、対外収支は黒字であれ赤字であれ収支ジリだけ重
視してその是正を政策目的化することは問題だということだろう。
対外収支の変化をもたらしている国内経済、産業の構造や企業経営の状況に何が起こって
いるのかを点検し、国内の構造問題に必要な改革を進めることが肝要だと思われる。持続的
な経済成長を確保するための国内的な課題にまず目を向けるべきであり、結果、あるいは
症状
として表れる対外収支を政策目的化する必要はない。
されど経常収支
2008年の世界経済危機の際には、世界的な経常収支不均衡が問題になった。2010
年代の欧州の財政・金融危機では南欧の財政赤字と経常収支赤字が問題となった。さらに米
国の量的金融緩和政策の調整をきっかけに生じた最近の新興経済の変調に関しては、その背
景として新興経済の経常収支赤字が議論されている。また、世界的な経常収支の変化が国際
間の資本の流れを突然変えるきっかけともなってきた。
長期的な視点で経済の構造問題をいつも的確に論じている中前忠氏(中前国際経済研究所
代表)は、グローバルな経常収支不均衡問題の震源地ともいうべき米国の経常収支赤字がこ
33
2014年05月号
のところ劇的に縮小しているのと対照的に、日本の経常収支黒字がこれまた劇的に縮小して
いることに注目している。米国の経常収支の赤字は2007年には7130億ドルで、GD
P(国内総生産)比4.9%だったものが2013年には4510億ドル(国際通貨基金予
測)、GDP比2.7%へと縮小した。同じ6年間に日本の経常収支黒字はGDP比で4.
9%から1.2%へ縮小、この6年間で経常収支が最も悪化したのは日本だと中前氏は指摘
している。
日本の経常収支の変調に海外投資家が関心を高めているいま、それがなぜ生じているのか、
どういう意味を持つのかを日本自身も冷静に点検する必要がありそうだ。
“双子の赤字”化への懸念
だが、この問題についての日本国内の議論はやや混乱している。それは経常収支の黒字縮
小、とりわけその最大の要因である貿易収支の赤字があまりに急に拡大しているためだ。
経常収支はモノやサービスなどの海外との取り引き状況全体を示すもので、モノの輸出入
の収支である貿易収支、運賃・旅行・特許権など知的財産使用料を含むサービス収支、海外
投資に伴う利子や配当などの所得収支、および政府開発援助(ODA)のうち医薬品など現
物援助等の合計である。
日本の経常収支は1981年以降つねに黒字で、その規模は名目GDP比で1981−2
013年平均2.6%である。しかし、黒字は2010年の17.9兆円をピークとし3年
続けて加速度をつけながら減少し、2013年は3.3兆円と現行統計で遡及可能な198
5年以降では最小の黒字幅となった。
しかも月次では2013年10月から4カ月連続して赤字となった。これをきっかけに、
いっこうに健全化への道筋が見えない財政赤字に、経常収支も赤字化し日本が
双子の赤字
体質に転換するのではないか、その際は財政赤字を国内貯蓄だけではファイナンスできず、
外国からの借金に依存しなければならない体質となり、日本の国債市場も外国為替市場も不
安定化するのではないか――といった懸念が内外に生まれている。
そこでまず経常収支黒字縮小の要因を点検してみよう。最も注目されているのは、もちろ
ん貿易収支赤字の急激な拡大である。2011年に東日本大震災の影響もあって赤字になっ
34
2014年05月号
た貿易収支は、2013年には11兆4745億円と過去最大の赤字(通関ベース)となっ
た。
ただ、貿易収支の赤字は必ずしも悪いことではない。「赤字」という言葉のニュアンスは
消極的だが、それは輸出額と輸入額の差であり、輸入品の消費は人々の生活水準を高めるこ
とになるし、輸出でも「出血輸出」、つまり儲からない、赤字輸出もある。また、貿易収支
を単年度で議論するのではなく、どれだけ持続的なものかという視点も必要である。その際、
一時的な要因、構造的な要因、海外市場の要因、国内経済における要因など、複眼的な分析
が重要である。
構造問題としての付加価値低下
貿易収支が赤字になったのは大震災の年からであり、とりわけ原子力発電の停止に伴う火
力発電強化のための化石燃料輸入の急増が原因だとする見方がある。それは原発を再稼働す
れば貿易収支は改善するという議論にもつながるが、問題はそれほど単純ではない。確かに
化石燃料の輸入は増えたが、仮に原発が再稼働しても貿易収支改善効果は数兆円であり、貿
易収支全体の赤字は依然史上最高水準のままである。
円安はどう影響したのか。2013年には為替が対ドルレートで約22%円安に振れた。
それにともなってドル建ての輸入の円建て金額が膨らんだ。こちらの方が化石燃料輸入の影
響より大きそうだ。化石燃料輸入も円安の結果、金額が膨らんでいる。
円安と輸出の関連にはもっと注目すべきである。2013年の輸出は金額(円)ベースで
は10%程度増えたが、輸出数量指数では逆に1.5%減少している。輸出のピークは20
07年の約84兆円であり、輸入のピークは赤字記録を更新した2013年の81兆円強で
ある。
一般に為替レートが下がると輸入品価格が上がり輸入額が膨らんで一時的に収支が悪化す
るが、輸出品の価格競争力が高まり、やがて輸出が増えて貿易収支全体が次第に改善する。
収支はJ字型、つまり最初一時的に貿易収支は悪化するが、やがて改善するパターンになる
とするJカーブ効果が指摘される。そのため、貿易収支改善をねらった為替安への意図的な
誘導(為替操作)が、他国の犠牲のうえに行われる近隣窮乏化政策だと言われ、各国がそう
した為替誘導をする為替レートの切り下げ競争が問題視され、国際的な協議でもそうした政
35
2014年05月号
策を回避する必要性がしばしば強調されてきた。
しかし、アベノミクスの登場前後からの大幅な円高修正で円安が1年以上続いているのに
未だに輸出数量は伸び悩み、輸入金額ばかりが膨らんでいる。Jカーブ効果が表れていない。
Jカーブ効果がいまだに表れない原因を点検してみる。まず輸入だが、鉱物性燃料、食料
品、鉄鉱石など原料品が3大輸入品である。天然資源が乏しい日本にとっては鉱物性燃料と
鉄鉱石等の原料品の輸入は不可欠であるが、スマートフォンを中心とする通信機の輸入が2
013年に2.8兆円近くにのぼり、鉄鉱石の輸入額1.7兆円弱をはるかに上回っている
ことは「加工貿易」日本のイメージをかき消すものだ。
同年の通信機の輸出額は約5300億円でしかなく、通信機の貿易赤字は2兆円を超えて
いる。これは日本の電子・電気産業の競争力の劣化を示唆するのかもしれない。そうだとす
ると、日本企業は新興国の低コスト、低価格商品と競合するのではなく、より付加価値の高
い、非価格競争力も有する新しい商品の開発にもっと資源を配分していく必要がある。
技術進歩のペースが速く、技術の海外への移転のスピードも高まっているなかで、あらた
に競争力を確保できる新しい技術・商品・サービスの開発、開拓をダイナミックに展開でき
る企業経営が重要である。
バブル景気崩壊後、1990年代以降の日本企業の経営は節約重視の消極的な経営に傾斜
しすぎたきらいがある。それはリスクに挑戦せず、ひたすら回避する消極経営であり、節約
で生み出された利益を内部に貯めこんで積極的な研究開発投資、設備投資を怠った
経営
草食系
である。日本の製造業が過去20年間、世界市場で注目された新商品をどれだけ開発
できたのか。貿易収支赤字も経常収支赤字もそうした企業経営の総合的な「結果」であり、
「症状」である。重要なのは、そういった結果、症状をもたらした国内の産業、企業経営の
状況ではないか。
国際収支構造の発展段階論と成熟型債権国への軟着陸
経常収支問題ではもう1つの視点として国際収支構造に関する発展段階論を点検する必要
がある。
36
2014年05月号
貿易収支が記録的な大赤字になっているのに、経常収支がかろうじて黒字を維持している
のは日本が世界最大の対外純資産を有し、それに伴う利子や配当の受け払いである所得収支
が大幅な黒字になっているためだ。2012年には14兆円強、2013年は16.5兆円
の黒字である。
対外純資産は経常収支が累積して生まれたものである。日本はこの発展段階論における未
成熟債権国の段階にある。貿易収支は高齢化の進行などにより赤字が拡大しても所得収支黒
字がさらに大きくなり、この所得収支黒字で消費生活も豊かになる資産国家の段階が成熟債
権国段階である。
現在の大きなトレンドは、日本が未成熟債権国から成熟債権国へと国際収支構造が移行し
つつあるというものだろう。ただ、貿易面での赤字拡大のペースがこのところ速すぎる。そ
れを是正し、成熟債権国に円滑にシフトするのが、日本の課題である。それには、国内産業
の高度化、新陳代謝の加速、新技術、新製品、新サービスの開拓である。それは国内経済を
ダイナミックなものにすることで、対外収支はその結果として国内経済を投影する。アベノ
ミクスの「第3の矢」つまり成長戦略、構造改革が肝要なのはそのためである。またそうし
て政策努力、制度改革と対応した企業経営の革新が不可欠である。そうした対応が十分行わ
れるなら、自動車産業などによる生産の海外移転に伴う国内の部分的な空洞化を埋め合わせ
るだけの新規分野も生まれる。
さらに、膨大な対外純資産から収益(所得)を生む収益力の強化も課題である。貿易収支、
経常収支の問題は、そうした多面的な視点、歴史的、長期的な視点から議論する必要がある。
高齢化がさらに進行し、国内貯蓄が減少し、財政赤字のファイナンスの問題が表面化する前
に、そうした観点から日本の構造改革を進めることが重要である。
(日本経済研究センター参与)
37
2014年05月号
深尾光洋の金融経済を読み解く
財政再建と世代間の対立
5%消費冎増冎と財政赤字
長期的な観点から見て、日本経済にとっての最大のリスクが巨額の財政赤字の累増である。
国内総生産(GDP)比140%もの政府純債務が、毎年GDP比10%近い財政赤字で膨
張を続けている姿は、極めて不健全であり、これを放置すれば早晩日本政府に対する信用が
失墜するのは確実だからだ。
財政再建にはプライマリー・バランス(利払いを除く財政収支)の黒字化が必要だ。将来
の景気回復による税収増加を考慮しても、黒字化には少なくともGDP比10%規模の増税
が必要となる。人口高齢化のために財政負担の増加が予想されるので、歳出の徹底的な抑制
を想定しても、政府支出のGDP比率を横ばいにするのが精一杯だからだ。
安倍政権の財政再建寿針
安倍政権は2013年8月に発表した中期財政計画目標において、2015年度までに2
010年度に比べ国・地方合計の基礎的財政収支赤字のGDP比を6.6%から3.3%へ
と半減させ、さらに2020年度までに黒字化し、その後の債務残高・GDP比の安定的な
引き下げを目指すとしている。そのために基礎的財政収支赤字の金額を2013年度の34
兆円から2015年度には17.1兆円まで削減する方針だ。
この方針をベースにして推計された、2014年1月20日の中長期の経済財政に関する
試算によれば、非常に楽観的な経済再生ケースにおいて、実質2%以上の成長と消費者物価
上昇率2%を見込んでもGDP比4%台の大幅な一般政府赤字が継続する見通しとなってい
る。さらに2020年の基礎的財政収支赤字についてもGDP比1.9%となり、黒字化目
標は達成できない。
38
2014年05月号
安倍内閣が野田政権から引き継いだ消費税の2段階の合計5%引き上げによる歳入増加は、
GDP比2.5%前後である。消費税増税だけで財政を黒字化するには、この4倍にあたる
20%引き上げが最低限必要だ。そうなれば、消費税率は25%となる。高齢化による年金
・医療・介護支出の増加を見込めば、さらなる税収増が必要となる。このため財政再建には、
消費税だけではなく、所得税、相続税、固定資産税の引き上げや広範な環境税の導入などの
増収策と厳しい歳出削減が必要となるだろう。
財政拆担と世代間の対立
財政再建を可能とするほどの大規模な増税を行えば、景気を悪化させて、財政再建自体を
より困難にする可能性が高い。高い税率は脱税や節税を誘発し、経済成長や雇用情勢を悪化
させるだろう。これは現役の世代にとって非常に重い負担になる。
では、財政再建で守られるのはだれの権益だろうか。国債の元利金支払いのために増税す
れば、日本の金融資産の大部分を保有する年配層の財産が保全されることになる。全国消費
実態調査からの推計によれば、家計部門の保有する純金融資産(金融資産マイナス負債)の
大部分は50歳以上の年配層が保有しており、50歳前後までの大部分の現役層は、金融資
産と負債が拮抗しているため、純金融資産を保有していない(図表参照)。日本の家計が直
接保有する国債はさほど多くないが、銀行預金や生命保険契約の大きな部分を支えているの
が国債だからだ。
現在の高齢世代は、これまでの低い税・社会保険料負担の下で財産を形成してきている。
いわば低税率で勝ち逃げした世代の利益が、主に現役世代に対する大幅な増税で守られるこ
とになるのだ。財政再建のための増税が行われていけば、高齢世代と、増税と雇用情勢悪化
に直面する現役世代との間に深刻な対立が発生しかねない。財政再建のためには、増税だけ
でなく、年金支給開始年齢のさらなる引き上げや、社会保障給付に対する全面的な所得テス
トの導入など、抜本的な支出削減策を実施する必要がある。
(日本経済研究センター参与)
39
2014年05月号
40
2014年05月号
山田剛のINSIDE INDIA
BJPは経済改革を加速できるのか
いよいよ一斉開票まで半月余りと迫った2014年インド総選挙は、最大野党インド人民
党(BJP)主導の政党連合による10年ぶりの政権奪回が濃厚となってきた。西部グジャ
ラート州に高成長をもたらした実績で人気上昇中のナレンドラ・モディを首相候補に立てた
BJPは、経済の減速や物価高騰、汚職の蔓延や社会正義・治安に不満を強める若者や都市
住民から「変化」への期待を一身に集める。党や政権内外にいまだ改革への抵抗勢力が残る
中、こうした期待に応えて直ちに結果を出すことができるのかーー。
今回は政権党への復帰が有力視されるBJPの知られざる側面に光を当ててみたい。
80~90夨代に党勢急拡大
1998年から2004年までの約6年間、アタル・ビハリ・バジパイ首相率いるBJP
主導の連立政権は外資規制の緩和や民営化などの経済改革を進め、2000年代中盤にイン
ドが3年連続の9%成長を達成する下地をつくった。
BJPの前身は独立後間もない1951年に創設されたインド人民協会(BJS)。最大
のヒンドゥー教団体・民族奉仕団(RSS)のいわば政治部門として発足した経緯がある。
77年、時の国民会議派・インディラ・ガンディー政権に対抗してBJSなどいくつかの政
党が結集し「ジャナタ(人民)党」を結党。モラルジ・デサイ、チャラン・シン(アジット
・シン現民間航空相の父)と、2代続けて首相を輩出するが、内紛により崩壊。第2次イン
ディラ・ガンディー政権の誕生を許すことになる(図表1)。
※図表1「BJPの歴史」は会員限定PDFをご覧ください。
80年、デサイ内閣で外相を務めたバジパイが初代総裁となり、のちに副首相となるL・
K・アドバニらジャナタ党メンバーの一部が集まってBJPを結成した。BJPとは「Bh
41
2014年05月号
aratiya
(インドの歴史的名称)Janata(人民)
Party」の略。
84年総選挙でわずか2議席の獲得に終わったBJPは、民族主義や国産主義を訴え、ヒ
ンドゥー色の濃い主張が支持されてアドバニ総裁の下で勢力を急拡大、89年に86議席、
96年には161議席を獲得し、同年にバジパイが首相に指名されるが、友党の支持を得ら
れずわずか13日間の短命内閣に終わる。しかし98年総選挙でBJPは182議席を獲得
する大躍進を見せ、ヒンドゥー右派政党シブ・セナやビジュ人民党(BJD)、テルグ人国
家党(TDP)などの小政党・地方政党との連立・閣外協力によってついに本格的な第2次
バジパイ内閣を発足させた。
経済改革の功績と核盯験
BJPは製造業を中心とした外資規制緩和を進める一方、「民営化省」までつくって国際
電話会社VSNLやバーラト・アルミニウム、亜鉛精錬会社ヒンドスタン・ジンクなどの民
営化に取り組んだ。また、62年の国境紛争以来冷え込んでいた対中関係や、冷戦期に悪化
した対米関係の改善を進めるなど、経済や外交で多くの成果を挙げた。
その一方、92年12月には、北部ウッタルプラデシュ州アヨーディヤで、ラーマ神生誕
の地とされたヒンドゥー寺院の跡地に建っていたイスラム礼拝所「バーブル・モスク」に暴
徒らが乱入しこれを破壊する事件が発生、インド各地にヒンドゥー・イスラム両教徒の衝突
が拡大した。事件はBJP幹部や活動家が背後で煽動したとの疑惑が残る。
またバジパイ政権発足後間もない98年5月には隣国パキスタンと張り合う形で核実験を
強行、米欧日など国際社会から経済制裁を科されインドが孤立する原因をつくった。そして
2002年には西部グジャラート州で1000人以上が死亡する宗教暴動が発生、今やBJ
Pの首相候補となったモディも法的・人道的な責任を問われたのは周知の事実だ。
2004年総選挙では事前の予想で優勢が伝えられたが、まさかの敗北。続く09年の総
選挙でも大きく議席を減らした。だが、州レベルではモディ率いる西部グジャラート州、民
生向上においてモディに劣らない実績を挙げているシブラジ・シン・チョウハン首相率いる
中部マドヤプラデシュ州、グワリオール藩王国最後のマハラジャを父に持つバスンダラ・ラ
ジェ首相の西部ラジャスタン州などでBJPが政権の座についている。
42
2014年05月号
改革継続への決意は……
「変革」への期待から若者ら有権者が続々と投票所に足を運んだことで、今回選挙の投票
率は前回を10ポイント前後上回り、70%に迫る史上最高となりそうだ。農村部やイスラ
ム教徒、被差別カースト民の投票行動は読みにくいものの、新党・庶民党(AAP)が伸び
悩む中、都市住民や若者の票はどっとBJPに流れ込む可能性もある。
だが、老舗政党・国民会議派が率いる現政権が積み残した経済改革アジェンダは、小売市
場開放や税制改革、そして労働法改正など、いずれも零細商工業者や労組、そして州政府か
らの激しい反発が続いている難題だ。改革を再び加速させようとすれば前政権同様の困難に
直面する。BJP自身もこうした風向きを肌で感じ、税制改革や民営化、労働法見直しなど
を盛り込んで4月上旬に公表するはずだった「経済政策綱領」とでもいうべき「Visio
n2025」を土壇場で引っ込めている。有権者の反発が必至の政策を選挙戦の最中に公表
するのは得策ではないと判断したようだ。
党として庶民に痛みを強いる改革を推し進めていく覚悟はまだ固まっていないと思われる。
そして4月7日に公表した選挙マニフェストでは、「核ドクトリンの見直し」や「小売業
への外資導入禁止」と並んで、イスラム教徒が多数派を占める北部ジャンム・カシミール州
に特別ステイタスを与える憲法第370条の改正や、宗教対立の元凶とも言えるアヨーディ
ヤの「ラーマ寺院」再建、そしてヒンドゥー、イスラムなど様々な宗教の国民に対し共通の
民法を適用させる「統一民法典」の導入など、宗教色の強い項目を盛り込んでいる。これら
はまさに、RSSがモディ支持の条件に挙げていたものだ。
「核」はかなりのインパクトがあるテーマだが、所詮は内向きのアドバルーンと思われる
のであまり大騒ぎする必要はないだろう。現にラージナート・シン総裁はすかさず「核先制
不使用の原則は堅持する」と言明している。「小売」も、本当に外資導入を禁止すれば「国
際公約を反故にした国」とのレッテルを貼られることになり、外面を気にするインドには耐
え難い事態だ。いずれもなりふり構わない選挙中の方便とみていいだろう。しかし、宗教色
の濃い公約の数々で、せっかくモディやBJPへの警戒感を緩め始めていたイスラム教徒や
被差別カースト層の疑念がぶり返す可能性もある。
43
2014年05月号
BJPの「本音」に注目
BJPのこうした一連の行動は、政権復帰が現実味を帯びてきたからこそ出てきた本音と
見るべきだろう。そしてインド最大のヒンドゥー教団体でBJPの有力支持母体である民族
奉仕団(RSS)がいまだにBJPの政策に影響力を与えているという現実も浮き彫りにな
った。BJP幹部はいずれも「我々はRSSの支配は受けていない」と口をそろえるが、パ
キスタン建国の父ムハンマド・アリ・ジンナーを称賛して党総裁の座を追われたアドバニ、
同様の行動をとった結果、今回の選挙で党の公認をもらえなかったジャスワント・シン元外
相など、RSSににらまれた政治家が「干される」例は枚挙にいとまがない。モディ「首相」
が、大先輩のバジパイのように二枚腰でRSSと渡り合っていけるかどうか、有権者は注視
していくだろう。
徐々に薄れているとはいえ、イスラム教徒や被差別カースト民の「BJPアレルギー」は
いまも根強い。BJP陣営内でも、モディの「首相候補」への大抜擢を快く思わない長老の
アドバニ元副首相と、彼を支援する連立友党のシブ・セナの存在は無視できない。BJPの
真価が問われるのは、むしろ選挙後だ。
モディ人気、BJP人気の本質は国民会議派政権の無為無策の裏返し。「汚職と停滞の会
議派」「改革と成長のBJP」というように単純な構図にまとめる報道も目立つが、BJP
が極めて進歩的かつクリーンというわけではない。BJP所属のイエデュラッパ・カルナタ
カ州元首相は汚職疑惑で辞任し、挙句の果てに党を飛び出したし、ニティン・ガドカリ前総
裁は自身が関与する企業の不正疑惑が浮上し、総裁続投を断念している。
このようにBJPという政党は、内紛や外圧といったいくつもの制約を抱えていることを
忘れてはならない。
「モディ大統領制」の条件
気の早い現地メディアはすでに「モディ内閣」の閣僚予想まで試みている。「モディ首相」
が実現すれば、スシュマ・スワラジ下院議員団長(元情報放送相)、アルン・ジェイトレー
上院議員団長(元法相)というBJPの「飛車角」的二大論客が外務、財務などの重要閣僚
に就任する可能性が高い。選挙の論功行賞で、ラージナート・シン総裁も国防相などの目が
44
2014年05月号
ある。そしてバジパイ政権時代に民営化相や通信IT相などを務めた経済通のアルン・ショ
ウリーも商工相など経済閣僚への就任が取りざたされている(図表2)。
※図表2「BJPの主要指導者」は会員限定PDFをご覧ください。
そして、グジャラート州の閣僚としてモディを支えた側近で、人口2億人超、下院での割
り当て議席80という大票田である北部ウッタルプラデシュ州の選挙責任者となったアミッ
ト・シャーも、同州でBJPが躍進すれば首相府担当国務相(官房長官に相当)などへの抜
擢が考えられる。
モディが存分に権力を掌握できるかどうかは、総選挙でBJPがどれだけ得票できるかに
かかっている。おおよその目安が、BJP単独で220−230議席以上、国民民主連合(
NDA)の友党を合わせて280議席以上の安定過半数(下院定数は545議席)、という
ところだろう。いわゆる「第3勢力」を旗揚げした地方政党などの力を借りずに政権が発足
できれば、政策の自由度も高まり改革加速には追い風だ。
そして今回の選挙では、「経済発展」を掲げるモディのスローガンが、「カースト」や「
宗教」というインド政治を長年縛ってきたファクターを乗り越えることができるか、そして、
RSSの支持をバックに長年にわたって集団指導体制・コンセンサス政治を進めてきたBJ
Pが、モディに権力が集中する「大統領制」的統治システムに適応するのか、という2つの
点に注目が集まっている。これらはもちろん、インド政治の大転換にもつながる大きなテー
マだ。
インドでしばしば使われる「100日間の蜜月」という言葉通り、有権者、特に現在の政
治経済状況に閉塞感を強める若者や都市インテリは、政権に対して数カ月以内に結果を出す
ことを求める。改革がもたつけば、期待が失望に変わる反動も大きい。BJP政権は時間と
の戦いも強いられることになりそうだ。
(日本経済新聞NAR<Nikkei
(文中敬称略)
Asian
Review>編集部編集委員、
前日本経済研究セ
ンター主任研究員)
45
2014年05月号
林秀毅の欧州経済・金融リポート
ウクライナは分裂するか―旧東西ドイツ
との比較
ウクライナ危機が一段と深刻化している。3月のクリミア自治共和国における住民投票の
結果を受け、ロシアがクリミア半島を実質的に支配下に置いた。欧米主要国の制裁措置が実
効性を欠く中で、ロシア系住民の多いウクライナ東部にどこまでロシアの影響力が及ぶかが
焦点になっている。ウクライナ国内に目を向けると、5月25日に予定される大統領選では
親欧州派が優勢だが、誰が大統領になっても、経済の難局を切り抜けなければ、早晩国民の
支持を失うことになる。さらに世界全体の動きをみると、強硬なロシアの姿勢に対し、欧米
などによる制裁措置の効果は現状限られているが、今後「市場の圧力」が一段と強まれば、
ロシアも落とし所を探らざるを得なくなるだろう。
以下、ウクライナ危機の今後の展開について、ロシアの動向、ウクライナ国内の政治情勢、
世界の対応の3点から検討したい。さらに、このまま混乱が続けばウクライナが東西に分裂
するという事態も取り沙汰され、「第2の冷戦の始まり」といった見方もあることから、現
在のウクライナを、第2次大戦後、東西に分裂したドイツと比較検討することにしたい。
ロシアの動向:「連邦制」により着地点を探る展開へ
第1に、ロシアが今後ウクライナ東部に対しどのような動きを見せるかという点について、
前月の本レポートでは、東部への軍事進攻というシナリオは、欧州・米国だけでなく、事態
の泥沼化につながるため、ロシア自身も内心では望んでいないだろうと述べた。この点は現
状でも変わっておらず、以前はロシア領だったクリミアと、東部地区ではロシアとの親しさ
の度合いが異なっている点には注意が必要だろう。
さらにその後、ロシアが想定通りクリミア半島を実質的な支配下に置いたため、クリミア
を拠点に東部の各地区に影響力を及ぼすというロシアの戦略がより現実味を増してきたので
はないか。具体的には、ロシアから「ウクライナは連邦制を導入すべき」という声明が出さ
46
2014年05月号
れ、これに呼応するかのように東部のいくつかの州が「共和国」になると宣言した。このよ
うな動きから、ロシアは東部に軍事介入し短期間で支配下に置くという展開より、連邦制の
下で、時間をかけ徐々に影響力を強める戦略を取ろうとしているといえるのではないか。
ウクライナの政治情勢:5月の大統領選後、経済政策が焦点に
第2に、ウクライナ国内の政治体制と政策運営が問題となる。前月の本レポートでは、5
月25日に予定される大統領選挙では、国内の二派をまとめることのできる指導者と体制が
求められ、その背景として、同国は従来から親ロシア派と親欧州派のどちらが政治の実権を
握っても、他方に残るという不安定な構造を抱えていることについて述べた。さらに、混乱
した経済を立て直すためには、欧州とロシア双方から援助を引き出すしたたかさが求められ
るという面も重要だ。大統領選後、対外収支の赤字を補うために必要となる資金支援に加え、
経済安定化のために必要となる低価格のエネルギーを調達することが、改めて問題となるだ
ろう。
以上のような観点から、現在の大統領選に出馬すると伝えられる候補者の顔ぶれを検討す
ると、第1に、最有力候補である親欧州派のポロシェンコ氏の政治的手腕が問題となる。実
業家出身であり、政治姿勢が比較的中立な穏健派とされていることはプラス要因だ。第2に、
同じ親欧州派のティモシェンコ氏の動向が注目される。同氏は当初、今回の大統領選には出
馬しないと伝えられていた。しかし、現在は候補者としてポロシェンコ氏に大きく離されて
いるものの、一定の支持を集めている。この点から、ポロシェンコ氏が当選した場合にも一
定の影響力を維持し政権作りで協力するといった、今後に向けた狙いがあるのではないか。
また新政権に加わった場合には、クリーンなイメージを持つポロシェンコ氏に対し、ロシア
との水面下の駆け引きといった役割を務めることになるだろう。
かつて「オレンジ革命」により誕生した親欧州派政権は、ユシチェンコ大統領の政治的手
腕が十分でなかったため崩壊し、その後ティモシェンコ首相の逮捕につながったという見方
ができる。今回もまた、親欧州派の2人の動向が注目される。
47
2014年05月号
国際宛な反応:制裁の実効性は限定宛だが、市杲の力は無視でき
ず
第3に、ロシアの動きに対する国際的な批判や制裁措置は、①クリミア編入は国際法上無
効であるという国連決議に代表される法的な主張、②G8からロシアを外すことに代表され
る国際社会及び世論からの批判、③欧米によるロシア高官の資産凍結―などのさまざまな経
済制裁に代表されるが、どれも実効性に欠けている。経済制裁が効果を生むには時間がかか
る上、ロシアとの経済関係が停滞すれば、制裁を行う側にとってのデメリットともなる。
一方、金融市場でロシアに対する批判が高まっていることが、ロシアに対し大きな影響力
を持つ可能性がある。ロシア経済が元々エネルギー輸出への依存から脱却していない上、従
来から続く新興国から資金が流出する傾向が、ロシアについて一段と強まっていると考えら
れるためだ。この傾向が続けば、冒頭述べたようにロシアがウクライナ東部における「落と
し所」を探る展開にもつながるだろう。このように「市場の力」の効果まで考慮に入れれば、
ウクライナが最終的に分裂にまで至る可能性は低いといえるのではないか。
東西ドイツ分裂との比較:宜外情勢が大きく異なる
最後に、ウクライナについて上述した点を、東西に分裂したドイツと比較して考えたい。
第1に、第2次大戦後、欧州は米国から「マーシャルプラン」により資金援助を受け復興を
図ろうとした。しかし旧ソ連はこの枠組に加わらなかったため、その後は西欧で同プランの
受け皿として欧州統合が進められ、西欧と東欧との分断が固定化された。いわば
既成事実
が積み重ねられた上で東西ドイツが分裂し、これにより冷戦構造が名実ともに明らかになっ
たという面が強い。第2に、旧西ドイツでは速やかに通貨改革が行われ、1950年代には
エアハルト氏(経済相、後に首相)のもとで、インフレを安定させながら奇跡の成長を遂げ
た。このように非常に早い段階で、ドイツ国内に強力な指導者が存在し、経済政策を遂行し
た。旧東ドイツもまた、発足当初はベルリンなど有数の工業都市を抱えていた。第3に、1
949年の東西ドイツ分裂は、上に述べたように、当時既に進んでいた東西の冷戦構造の延
長線上で行われ、国際的な批判の対象にはなりにくかった。また金融市場における資金の動
きも現在のように激しくなく、自国の為替レートを管理することが可能であった。
以上のように考えると、東西ドイツの分裂は、当時の国際情勢を背景に進められ、かつ国
48
2014年05月号
内外の諸条件に支えられ固定化していったといえる。現在のウクライナは、以上の各点で、
旧東西ドイツとは全く異なる条件に置かれているといってよいのではないか。
(特任研究員
林秀毅)
49
2014年05月号
AEPR編集会議
『東アジアのイノベーション』をテーマ
に議論
日本経済研究センターは4月5日、アジアの諸問題を取り上げる政策提言型英文ジャーナ
ル「Asian
Economic
Policy
Review
(AEPR)」の編集
会議を都内で開いた。テーマは「東アジアのイノベーション」で、国内外の研究者ら30人
弱が出席。来年1月に発行する第10巻第1号(通算第19号)の掲載予定論文6本につい
て、経済成長と関連付けた視点から議論した。
成長の原動力としてのイノベーションについて討議
成長センターとして注目を集めているアジア地域は、今後の更なる成長・発展を目指すう
えで、新しい技術などの開発を通じて、成長の原動力を自ら創出できるかどうかが課題とな
っている。そこで注目されるのが、イノベーション、すなわち技術革新の実現である。イノ
ベーティブな社会を作り上げるのは、一朝一夕にできることではない。東アジアで技術革新
を進めるにはどうすべきか、という視点を踏まえて、様々な議論が展開された。
発表の口火を切ったのは胡光宙(アルバート・フー)・中欧国際工商学院准教授で、東ア
ジアにおけるイノベーションと経済成長についての論文を発表した。胡教授は、韓国の過去
50年間における成長過程を、先進国に対する技術面の追い上げのケーススタディとして分
析、技術の発展と経済成長の間には高い相関関係があると強調するとともに、域内における
技術発展の達成度や発展パターンには多様性が見られると指摘。既存技術の吸収・適用のレ
ベルから、世界の最先端水準での技術革新のレベルまで幅広いと述べた。
胡教授は韓国を域内の技術発展の基準として位置づけたが、これに対しては適当であると
いう見方と、マレーシアなど他国の視点から見るとあまり有益ではないという見解に分かれ
た。また、黄益平・北京大学教授は、東アジアのイノベーションと経済成長に関して「何が
起きているのか、と同時に、なぜそうなったのかについての議論が必要」との考えを示した。
50
2014年05月号
タイ開発研究所のチャロンポップ・スサンカーン・特別フェローは、胡論文が提起した議論
はタイなどが直面する中所得国の罠の議論とも絡んでくると主張した。
3番手の発表者として登場したソウル大学の李根(リー・クゥン)教授は、技術と科学を
峻別したうえで、技術面・科学面の知識と経済発展について、東アジアと中南米の比較の視
点から論じた。李教授は、1980年代に両者は同じようなレベルにあったが、韓国や台湾
などが低価格の製品をベースにした成長から、技術開発による成長を目指すようになったこ
とに着目、現在では東アジアと中南米の技術・科学面の知識や経済成長で相違が生じている
ことから、両者における科学技術政策面からの比較を試みた。ただ、具体的に比較する国を
巡っては、中南米にブラジル、メキシコのみならずチリを含めるべきとする意見や、中南米
との比較に適した東アジアの個別国は韓台よりもフィリピンやミャンマーではないか、など
の意見も出された。また、同じアジアでも、韓台などと、ASEAN(東南アジア諸国連合)
の国々では相違があるとの指摘も聞かれた。
知的財産権の保護とイノベーション
イノベーションを推進するうえで、新たに生み出された技術革新の知的財産権をきちんと
保護することは欠かせない。バンダービルド大学のサギ教授は、TRIPS協定(知的所有
権の貿易関連の側面に関する協定)成立後のアジアにおける展望を取り上げ、先進国=途上
国間の知的所有権に関する格差は縮小しており、最近では中国とインドが知的財産権の保護
を重視するようになっていると指摘した。
編集会議の前日の4日には、2015年7月発行の第20号に向けた会議を開催。統一テ
ーマとして東アジアの社会保障制度のうち、特に年金制度を中心に議論することが決まった。
(国際・アジア研究グループ)
◆AEPRの詳細は下記をご覧ください。
http://www.jcer.or.jp/international/international01.html
51
2014年05月号
8時間に及ぶAEPRの編集会議は岩田理事長の挨拶で幕を開けた
(日経新聞ビル内)
52
2014年05月号
【帰国にあたって】
フィリピンからのスカラー生、ヴァレリ
ー・ウレプ氏
日本の自立した高齢者に驚き
アジアの若手研究者を招聘する「日経アジア・スカラシップ」プログラムによる客員研究
員として、2014年1月から3カ月強、日経センターに滞在していたヴァレリー・ウレプ
氏(フィリピン)。帰国を前に、「とても思い出に残る」という滞日生活を振り返ってもら
った。
――日本での滞在は、振り返ってみていかがですか。
フィリピンはインフォーマルな職場環境でしたが、日本はややフォーマルな雰囲気があっ
て、そこがちょっと違いましたね。日経センターのスタッフが生活の面倒を見てくれただけ
でなく、研究分野の専門家(研究者や保健医療担当の実務家)を紹介してくれて、とても役
に立ちました。欲を言えば、英文の論文/ジャーナルへのアクセス、さらにはライブラリー
で英語の専門書の閲覧ができればもっとよかったのですが。
実際に日本に住んでみて、日本人の生活の基準というか、生活文化的な側面に触れること
ができました。将来、海外で生活する際に日本での体験と比べることになると思います。東
京では自然と触れ合う機会があったことも発見でした。もちろん、駅の周辺は混んでいます
が、街中に公園があり、自然や緑を楽しめます。マニラだと人が多くてどこも混んでいて、
静かなのは自分の家だけですが、日本の都市は人混みでうるさい場所もあれば、比較的静か
な場所もあり、様々な選択肢があります。
――食べ物はどうでしたか。
食べ物はどれもおいしかったですね。元々、マニラで日本食のファンだったのですが、本
場の味は、海外でアレンジされたものと違って、とても新鮮で、おいしかったです。ベスト
テンを挙げるとすれば、トップは鳴門の和食の店で食べたお寿司ですね。獲れたての魚の刺
し身は抜群のおいしさでした。それから、東京で食べたすき焼きと、札幌で雪が降る中、屋
台で食べたラーメン。札幌のラーメンは他の地方とは味が違います。日本ではその地方ごと
の食べ物が随分異なり、その多様性に驚きました。
53
2014年05月号
――各地を積極的に回って歩きましたね。
2月に札幌の雪祭りをみましたし、蔵王では温泉も満喫しました。広島では宮島も行きま
したが、原爆ドームなどを見て現代史を学びました。第二次大戦前の日本人の生活や戦争中
・原爆投下、そしてその後について、生きた歴史を学んだと思います。高校時代に第二次大
戦を含めた現代史の授業がありましたが、教室では教わらない歴史を広島で目の当たりにし
ました。
3月末には京都を訪れて、二条城や有名なお寺などに行きましたが、回りが山に囲まれて、
とてもよい環境でした。南国のフィリピンとはまた違った風情がありますね。
また、2月には研究内容のプレゼンテーションのために大阪と神戸に行きましたが、特に大
阪では会員企業、つまり、一般のビジネスマン向けのセミナーだったので、非常に勉強にな
りました。普段は保健医療の専門家を相手に話をしているので、全く違う畑の人へのプレゼ
ンはよい経験になりました。
――日本では一人住まいでしたが、週末はどう過ごしていましたか。
都内のモールやショッピングセンターに行ったりして、普通の人々がどのように過ごして
いるのか、日常の生活を眺めました。フィリピンからの留学生などと一緒に銀座、渋谷、上
野、六本木、築地、新宿などに行ったりしましたが、できれば、日本の友人とも週末を過ご
したかったですね。
1つ気がついたことは、日本では高齢者が自立していることです。高齢者の自立を促すよ
うに、エスカレーターなどのインフラを行政が整備しており、このようなバリアフリーの取
り組みは見習いたいと思います。広島や鳴門では高齢者がボートレースの観戦を楽しんでい
ると聞きましたが、フィリピンでは高齢者は家にいるというイメージがあって、社会全体で
高齢者の自立を支えるという意識が足りません。
両国の違いの背景には、日本は社会的なまとまりがあって、社会全体として効率を目指す
ということがあると思います。個人主義のフィリピンとは対照的ですね。日本ではコミュニ
ティーとしての意識があり、それが社会を発展させる原動力になっているのではないでしょ
うか。例えば、電車では列を作って待つ日本は、押し合いへし合いのフィリピンとは異なり
ます。これは政府が決めたから実現できるものではなく、社会が自ら律して初めてできるこ
とです。
54
2014年05月号
――帰国したら、忙しい生活になるでしょうね。
この3カ月の体験で自分の視野が広がり、色々な研究についての意欲もさらに湧いてきま
した。海外での生活を通じてエネルギーをもらって、新たな研究に向けて再充電したという
感じでしょうか。
(国際アジア研究部)
Valerie
Ulep
PIDS(フィリピン開発研究所)で医療保険関連の研究プロジェクトを担当している。
日経センターの客員研究員として4月初めまで滞在した。
桜を楽しむウレプ氏(2014年4月)
55
2014 年 5 月号
研究リポート(サマリー)
《経済百葉箱第 70 号》
金融政策による物価上昇に潜むリスク
―円安頼みの物価上昇には限界、成長戦略で前向きの循環を
2014 年 3 月 31 日発表 登地孝行 、<監修>短期予測班主査:愛宕 伸康、総括:増島 雄樹
昨年来、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は大方の予想を上回る上昇を続け、2014 年 1 月に
は前年比プラス 1.3%と、08 年後半以来の高い伸びを記録した。ただし、これが日本銀行の想定する予
想インフレ率の上振れを通じた上昇かどうかは意見が分かれる。金融政策はどのような経路を通じて物
価上昇に波及しているのか、時系列分析等で検証する。
▼ポイント▼
●いわゆる「包括緩和」が実施された 2010 年 10 月以降、金融市場から見た予想インフレ率(ブレーク・
イーブン・インフレ率)の上昇が円安を促し、その結果消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、以下C
PIコア)物価の上昇に波及したことが分かった。
●一方、マネタリーベースの増加が直接CPIコアを上昇させる、あるいは予想インフレ率に波及して
CPIを上昇させる、といった経路は見出せなかった。
●昨年 4 月に日銀が打ち出した量的・質的金融緩和(QQE)、あるいは一昨年 12 月のアベノミクス登
場後の急激な円高修正は、極端な金融緩和を行うとのアナウンスメントが、市場に心理的ショックを与
えた可能性がある、とIMFのレポートにもある。
●いずれにせよ、円安を背景とする輸入物価上昇というコストプッシュ型の物価押し上げ効果は、円安
が落ち着けば剥落する。また、金融政策に係るアナウンスメント効果で心理的ショックを市場に与え続
けることも難しい。
●やはり、生産・所得・支出の前向きの循環が働く下で、家計の物価見通しが自律的に上向くことが重
要であり、QQEといういわば「時間を買う政策」が有効なうちに大胆な成長戦略を打ち出し、着実に
実行して行くことが求められる。
詳細は http://www.jcer.or.jp/report/econ100/index4748.html をご参照ください。
56
2014 年 5 月号
セミナーリポート
AEPR 特別セミナー
「東アジアのイノベーションと経済成長」
胡
光宙・中欧国際工商学院准教授
2014 年 4 月 4 日開催
イノベーションは成長の基礎
―中国では特許出願が急増
<要旨>
①東アジアの3カ国(日本、韓国、中国)および東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟諸国を対象
に、経済成長と技術のキャッチアップの状況を点検した。両者には統計的に有意な正の相関関係
があり、技術格差を縮小すれば経済成長に結びつくことが明らかになった。
②韓国をケーススタディーとして技術進歩の過程を分析した。低中所得期には技術革新は低調だ
が、高中所得期になるとイノベーションが進み始め、高所得期になるとそれが本格化することが
わかった。
③中国の特許出願が急増している。背景には企業間競争の激化、知的財産権への認識の深まり、
政府の政策的誘導などがある。中国のイノベーション能力の向上は非常に早く、経済発展の段階
から見れば、相対的に早い時期(所得水準が低い時期)に一定の技術革新を成し遂げている。
▼詳細は http://www.jcer.or.jp/seminar/sokuho/index201401.html#20140404 をご参照ください。
57
2014 年 5 月号
最近掲載のセミナーリポート
開催日
タ イ ト ル
講 師
4 月4 日
≪AEPR 特別セミナー≫
東アジアのイノベーションと経済成長
イノベーションは成長の基礎
―中国では特許出願が急増
胡光宙・中欧国際工商学院准教授
3 月 25 日
The U.S. Economy Five Years after the
Crisis
ジェイソン・ファーマン・米大統領
経済諮問委員会(CEA)委員長
司会)齋藤潤・日本経済研究センタ
ー研究顧問
3 月5 日
再生可能エネルギーと経済社会への影響
―今後のエネルギー政策を考える
「固定価格買い取り」で導入加速―地
域経済循環も視野に
植田和弘・京都大学大学院経済学研
究科教授・研究科長
詳細は
掲載項目
( 聴くゼミ:音声)http://www.jcer.or.jp/seminar/kikusemi/index.html
(読むゼミ:抄録)http://www.jcer.or.jp/seminar/sokuho/index.html
58
ピッ
ピックアップセミナー
大阪
5月21日 14:00〜15:30
東京
5月26日 14:30〜16:00
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
これからの産業の扉
―ビジネスの目と地域経済
鍋山
徹・日本経済研究所チーフエコノミスト・
専務理事・地域未来研究センター長
公益社団法人
*会場:日経東京本社ビル6階・カンファレンスルーム
≪第51回通常総会記念講演≫
日本の未来とエネルギー・
環境政策の課題
鈴木
達治郎・前内閣府原子力委員会委員長代理
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
TEL:03 6256 7720 〒100 8066 東京都千代田区大手町1 3 7 日本経済新聞社東京本社ビル11階
TEL:06 6946 4257 〒540 8588 大 阪 市 中 央 区 大 手 前 1 1 1 日本経済新聞社大阪本社ビル 8 階
参加ご希望の皆様へ
会場の席数に限りがございますので、当センターホームページ(http://www.jcer.or.jp/)または裏面のFAX申込書
で事前お申し込みをお願いします。
セミナーの追加や日時の変更の場合もありますので、当センターホームページでご確認ください。
■会費
会員無料、一般は1回8,000円(税込)
■会場
東京:日本経済新聞社東京本社(東京都千代田区大手町1 3 7)
日経茅場町カンファレンスルーム(東京都中央区日本橋茅場町2 6 1)
大阪:日本経済新聞社大阪本社8階・日 経 セ ン タ ー 会 議 室(大阪府大阪市中央区大手前1 1 1)
※地図はホームページをご覧ください
■入場
先着順(セミナー開始の30分前より受付を始めます)
■お問い合わせ(電話) 東京:
(03)6256−7720/大阪:
(06)6946−4257
大阪
5月9日 14:00〜15:30
東京
5月23日 14:00〜15:30
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
*会員、一般とも無料
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
大阪
景気点検講座
5月26日 14:00〜15:30
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
4月に消費税引き上げが実施され、その後の日本経済の
動向が注目されます。毎年5月と11月に開催する「景気点
検講座」では、その時々の経済動向、物価、景気の先行き
日経センター短期経済予測説明会
などについて、日本銀行大阪支店の担当者が最新の情報を
予測期間:2014年4−6月期〜2016年1−3月期
解説します(本セミナーは「聴くゼミ」、
「読むゼミ」、資
料のホームページ掲載は致しません)
。
山口
智之・日本銀行大阪支店営業課長
愛宕
伸康・日本経済研究センター短期経済予測主査
1989年東京大学法学部卒、日本銀行入行。企画局企画役、総
務人事局企画役、政策委員会室広報課長などを経て、2012年か
ら現職
東京
大阪
5月21日 14:00〜15:30
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
これからの産業の扉
―ビジネスの目と地域経済
5月26日 14:30〜16:00
*会場:日経東京本社ビル6階・カンファレンスルーム
≪第51回通常総会記念講演≫
日本の未来とエネルギー・環境政策の課題
14年度の日経センターは、昨年度「2050年への構想」で
東京一極集中が進む中、産業の再編や市場の多様化によ
提示した成長シナリオを実現するための具体的な方策をエ
って企業の異業種間競争が激化し、地域経済に影響が出始
ネルギーや技術革新の側面から考える「成長への道筋」プ
めています。企業や地域が成長するためには、どのような
ロジェクトに取り組みます。特に中長期のエネルギー選択
産業領域に注目すればよいのでしょうか。モノづくりに詳
問題は、原子力発電のあり方や新エネ開発・省エネ余地を
しい鍋山氏が、産業別の労働生産性、技術の組み合わせ、
はじめ、議論が尽くされていません。確かなエネルギー・
交通アクセス、
「ABCの成功法則」など、ビジネスの目を
パスを選択するための論点について、前内閣府原子力委員
もとに、地域経済の将来を展望します。
会委員長代理の鈴木氏を招いてお話しいただきます。
鍋山
鈴木
徹・日本経済研究所チーフエコノミスト・専務理事・
地域未来研究センター長
1982年早稲田大学法学部卒、日本開発銀行(現日本政策投資
銀行)入行。米スタンフォード大学国際政策研究所客員研究員、
日本政策投資銀行調査部長、同行チーフエコノミストなどを経
て、2013年から現職
達治郎・前内閣府原子力委員会委員長代理
1975年東京大学工学部卒、78年マサチューセッツ工科大学修
士課程修了、東京大学工学博士。2010年1月から14年3月まで
原子力委員会委員(委員長代理)
東京
5月28日 18:30〜20:00
東京
6月3日 15:00〜17:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
*会員無料、一般2000円(税込)
*会場:日経東京本社ビル2階 SPACE NIO
≪イブニング・マーケット・セミナー≫
アベノミクスと2020年の日本経済
―成長戦略を軸に展望する
変貌するアジアのマネーフロー
―アジアでいま、
何が起きているのか
国際金融の専門家が、アジアをめぐる最近のマネーフロ
ーをアジア通貨、証券化、資本規制の視点でとらえ、先行
2年目に突入したアベノミクス。成長戦略の行方が焦点
きについて討論します。また、これまで欧米主要国の金融
になっています。消費増税も実現し、財政再建にも踏み出
政策がアジアのマネーフローに及ぼした影響から、今後の
しました。東京オリンピックが開催される2020年までの日
出口戦略の影響についても考えます。
本経済の成長の道筋はみえてきたのでしょうか。専門家が
モデレーター)小川
展望します。
木下
智夫・野村證券金融経済研究所チーフ・エコノミスト
1987年京都大学経済学部卒、野村総合研究所入社。米国、シ
ンガポール駐在などを経て、2004年に野村證券に転じ、05年ア
ジア・チーフ・エコノミスト(野村シンガポール)。12年から
現職
司会)越中
秀史・日本経済新聞社編集委員
英治・一橋大学副学長・同大学院商学研究科教授
山上
秀文・近畿大学経済学部教授
清水
順子・学習院大学経済学部教授
金木
利公・三井住友信託銀行調査部長
名古屋
6月5日 14:00〜15:30
*会場:日経名古屋支社ビル3階・会議室
東京
5月29日 15:00〜16:30
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
消費増税後の日本経済
―反転への展望と中国リスク
消費税増税後の動向が注目を集める日本経済。5月末公
GSR特別セミナー
「インクルーシブ・ビジネス」で
貧困脱出を手助け
表となる4月の経済指標も踏まえ、当センター短期経済予
測主査が日本経済の先行きを見通します。また海外では新
興国経済、特に中国経済のリスク要因が懸念されています。
当センターの中国経済研究担当者が日本の経済や企業に大
45億人と世界人口の3分の2を占めるBOP(Base of the
きな影響を及ぼすチャイナリスクについて解説します。
Economic Pyramid)という貧困層を生産、消費、流通の
バリューチェーンに組み込むインクルーシブ・ビジネスは
愛宕
伸康・日本経済研究センター短期経済予測主査
高い成長を見込める事業モデルです。このモデルを展開す
北原
基彦・日本経済研究センター主任研究員
る企業への積極的な投融資をしてきた世界銀行グループの
国際金融公社(IFC)から最新情報をお話しします。
15:30〜 懇親会
後援:国際協力銀行、海外投融資情報財団
※GSR:Global Social Responsibility
セミナー終了後、軽食をとりながら質疑応答と情報交換の時
間を設けます。
増岡
俊哉・国際金融公社インクルーシブ・ビジネス局長
〒460‑8366
愛知県名古屋市中区栄4−16−33
▲名古屋城
地下鉄
名古屋駅
▲市役所
地下鉄久屋大通駅
久屋通り
大津通り
桜通
地下鉄鶴舞線
匡明・国際協力銀行執行役員企画・管理部門長
JR名古屋駅
司会)安間
●日経名古屋支社ビル
▲京都
1982年早稲田大学政治経済学部卒、富士銀行(現みずほ銀
行)入行、87年米ウォートンスクール修了、MBA(経営学修士)。
89年世界銀行に転職、2010年から現職
錦通
地下鉄桜通線
テレビ塔
地下鉄栄駅
地下鉄東山線
広小路通
伏見通り
三越
松坂屋
北館
電通名古屋ビル
東京▼
松坂屋
白川公園
名古屋高速
中日ビル
松坂屋
南館
日経経済新聞社
名古屋支社
地下鉄矢場町駅
地下鉄 栄駅 13番出口から徒歩5分
地下鉄 矢場町駅 1番出口から徒歩5分
東京
6月18日 13:30〜15:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
「アジアの未来」参加者募集
株価座談会
世界経済と日本株
―2014年後半の相場展望
デフレ脱却への期待を手掛かりに、日本株は上昇基調を
たどってきましたが、先行きには不透明感が漂っています。
日本経済は消費増税後のマイナス成長を4〜6月で克服し、
7月以降、元の成長軌道に復帰できるのでしょうか。中国
など新興国の景気減速の影響も懸念されます。専門家お二
人に議論していただき、2014年後半の株式相場を展望しま
す。
阪上
亮太・SMBC日興証券チーフ株式ストラテジスト
2000年京都大学経済学部卒、02年東京大学大学院経済学研究
科修了、野村総合研究所入社。野村證券のエコノミスト、スト
ラテジストを経て、11年から現職
河野
眞一・ブラックロック・ジャパン取締役
チーフ・インベストメント・オフィサー
証券会社、外資系銀行で運用、モデル構築、リスク管理等の
経験を積んだ後、2012年9月から現職。リッチモンド大学(ロ
ンドン)卒業
司会)吉次
大阪
第20回国際交流会議
弘志・日本経済新聞社編集局次長兼証券部長
6月20日 12:30〜14:00
*会費:3000円(税込、当日ご持参ください)、定員になり次第締め切ります
*会場:帝国ホテル大阪(大阪市北区天満橋1−8−50)
日本経済新聞社と日本経済研究センターは5月22日、23
日の両日、「羽ばたくアジア〜次の20年へのメッセージ」
をテーマに第20回国際交流会議「アジアの未来」を都内で
開催します。経済連携のネットワークがアジア域内でより
緊密化し、同時にアジアを超えて大きく広がる中、これか
らの20年を展望します。各国・地域から首相、主要閣僚、
有力経営者、さらには主要国際機関の幹部らが集まり、ア
ジアのダイナミズムについて議論します。
■主な講師(予定):リー・シェンロン・シンガポール首
相、マハティール・ビン・モハマド・マレーシア元首相、
ブー・ドク・ダム・ベトナム副首相、ソー・テイン・ミ
ャンマー大統領府相、ティム・グローサー・ニュージー
ランド貿易相、スパマス・トリウィサワウェー・チョー
カンチャンパワー(タイ民間電力)社長、サイモン・シ
ェン・新金宝グループ(台湾・電子機器受託製造サービ
ス)CEO、スリ・ムルヤニ・インドラワティ・世界銀
行最高執行責任者・専務理事、中尾武彦・アジア開発銀
行総裁、スリン・ピッスワン・前東南アジア諸国連合事
務局長、閻学通・清華大学現代国際関係研究院長ら
■受講料:43,200円(税込)、2日間の昼食付き、
同時通訳あり
■申し込み・詳細:ホームページ(http://future-of-asia.
nikkei.jp/)または「アジアの未来」事務局(TEL:03
−3508−1249)まで。締め切りは5月12日㈪、申し込み
多数の場合は抽選とさせていただきます。
大阪昼食会
日本経済の将来像
―競争と差別化の混合戦略
アベノミクスが2年目に入り、成長戦略に具体的な政策
が求められています。人口減少下で市場規模全体が小さく
参加者募集
2014年度 経済動向研究会
なる中で、拡大する市場、縮小する市場の競争と選別が進
むものと考えられます。企業は今何をすべきなのか、消費
者はどう行動すべきなのか、人口減少下時代の経済成長へ
の処方箋をお話しいただきます。
中島
隆信・慶應義塾大学大学院商学研究科教授
1985年慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程、88年同博
士課程修了。同大学商学部助教授などを経て、2001年から現職。
商学博士(慶應義塾大学)
大阪
6月中旬の予定
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
世界経済の潮流2014
村山
Ⅰ
裕・内閣府参事官(海外担当)
1988年経済企画庁(現内閣府)入庁。経済協力開発機構日本
政府代表部、消費者庁消費者政策課などを経て、2013年より現職
直近のマクロ経済動向・金融情勢を解説するセミナー
「経済動向研究会」の参加者を募集します。2014年度は下
記の2グループを各々2カ月に1回、年間6回開催します。
メンバーシップ制で、年度途中からの参加も可能です。
◆増島グループ
講 師:増島 稔・内閣府参事官
(経済財政分析−総括担当)
開催日:第1回 4月25日㈮ 12:00〜13:30(昼食付き)
◆亀田グループ
講 師:亀田制作・日本銀行調査統計局経済調査課長
開催日:第1回 5月12日㈪ 12:00〜13:30(昼食付き)
会 場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
受講料:1グループ年間6回 32,400円(税込、
昼食代含む)
詳細・お申込みはホームページ(http://www.jcer.or.jp/)
、
または会員事業部(TEL:03−6256−7720)まで。
研究報告
金融研究
日本銀行、期待のマネジメント難しく
フォワード・ガイダンスがより重要に
日経センター金融研究班では日本銀行が昨年4月から実施している量的・質的金融緩和政策に注目し、
3月18日に研究リポートを公表しました。今回取り上げたのは、中央銀行が将来の政策金利の経路につい
て明示する「フォワード・ガイダンス」と、金融システムのリスクを評価し、システム全体の安定性を確
保する「マクロ・プルーデンス政策」です。
■非伝統的金融緩和策は量的緩和とフォワード・ガイダンス
日本銀行をはじめ主要国の中央銀行は現在、名目の金利がマイナスにはならないというゼロ金利制約に
直面しています。こうした状況下で中央銀行がとり得る金融緩和策に、量的緩和と、フォワード・ガイダ
ンスがあります。世界で初めてゼロ金利制約下に置かれた日本銀行は1999年4月、「時間軸政策」という名
称でフォワード・ガイダンスを実施したことがあります。
量的緩和とフォワード・ガイダンスは補完的な関係にあります。量的緩和政策が主にリスク・プレミア
ムの低下を通じて資産価格に影響を及ぼすのに対し、フォワード・ガイダンスは予想短期金利を通じて設
備投資などの実体経済に影響を及ぼすと考えられているからです。
日銀は量的・質的金融緩和政策の下でCPIのコアインフレ率2%の物価安定目標を「2年程度の期間を念
頭において、できるだけ早期に実現する」というフォワード・ガイダンスを採用してきました。日銀のそ
れまでの緩和策と大きく異なるのは、
「期待の転換」を特に重視している点です。ところが、予想インフレ
率の上昇は2%のインフレ目標を安定的に達成するのに十分とは言えません。
(%)
3.5
■人々の予想インフレ率、2%で安定には至らず
CP
Iベースの予想インフレ率
図は中長期の予想インフレ率を示しています。
2014年 3月10日
2013年10月10日
2013年 4月10日
2012年 8月10日
3.0
2.5
具体的には、物価連動国債と10年物国債の流通利
回り差(ブレーク・イーブン・インフレ率=BEI)
2.0
を、CPIコアベースに読み替えたものです。水色
1.5
の点線はアベノミクスが打ち出される前の水準、
1.0
太い赤い実線が直近の予想インフレ率を示してい
0.5
ます。赤い実線を見ると、人々が2年後の2016年
0.0
15/3 15/6 15/9 15/12 16/3 16/6 16/9 16/12 17/3 17/6 17/9 17/12 18/3
(注1) 物価連動国債と新発10年物国債の流通利回り差
(ブレーク・イーブン・インフレ率=BE
I)
をCP
Iコアベースに読み替えたもの。
(注2) 消費税率の引き上げ分を含んでいる。
6月に2.5%、3年後の17年6月に1.5%のインフレ
を予想していることがわかります。これらは今年
4月と来年10月に予定されている消費税率引き上
げの影響が剥落した後の数値です。その後、予想
インフレ率は0.5〜1%程度となっています。家計や企業が長い間、
「物価が上がらない」ことを前提にした
行動を続けていると、これを変えるのは容易ではありません。
人々の期待の転換を図るために日銀は、より透明性の高いコミュニケーションが求められます。もし、
2%の物価安定目標の達成が困難と判断された場合に、日銀はどのような金融政策を打ち出すのでしょう
か。現行の量的・質的金融緩和政策を延長するのでしょうか、あるいは目標を変更するのでしょうか。こ
れまでのフォワード・ガイダンスに加えて、緩和縮小に向けた閾値(threshold)や将来の金利経路につい
ても、何らかの指針を打ち出す必要があるでしょう。
■マクロ・プルーデンス体制の強化を
量的緩和が行き過ぎると、資産価格高騰の懸念が生じます。リーマン・ショック後、欧米では金融市場
のシステミックリスクや将来のバブル発生のリスクに備えて、マクロ・プルーデンス体制を強化しました。
他方、日本は体制強化に向けた取り組みが遅れています。人々の予想インフレ率を2%にアンカーするよ
うな期待のマネジメントが難しく、量的緩和が長引く恐れもあるだけに、マクロ・プルーデンス政策を早
期に強化する必要があると言えるでしょう。
※金融研究リポートの詳細は、ホームページ(http://www.jcer.or.jp/report/finance/detail4745.html)を
ご覧ください。お問い合わせは予測分析部(TEL:03−6256−7730)まで。
03(6256)7925
大阪のセミナーは… 06(6947)5414
東京のセミナーは…
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2014 年5•6月の催し
ホームページまたはFAXでお申し込みください。
ホームページ
TOKYO
月
5
http://www.jcer.or.jp/
FAX ■ご希望のセミナーに○をしていただき、必要事項を
ご記入のうえ、このページをお送りください。
*詳細はホームページをご参照ください。*■は会員限定セミナーです。
日
曜日
開催時間
セミナー名
参加希望
23
金
14:00〜15:30 日経センター短期経済予測説明会
26
月
14:30〜16:00
28
水
18:30〜20:00 アベノミクスと2020年の日本経済―成長戦略を軸に展望する
愛宕伸康
≪第51回通常総会記念講演≫
日本の未来とエネルギー・環境政策の課題
鈴木達治郎 氏
≪イブニング・マーケット・セミナー≫
木下智夫 氏・越中秀史 氏
6
29
木
15:00〜16:30
3
火
15:00〜17:00
GSR特別セミナー
「インクルーシブ・ビジネス」で貧困脱出を手助け
増岡俊哉 氏・安間匡明 氏
変貌するアジアのマネーフロー ―アジアでいま、何が起きているのか
小川英治 氏・山上秀文 氏・清水順子 氏・金木利公 氏
株価座談会
18
水
13:30〜15:00 世界経済と日本株―2014年後半の相場展望
阪上亮太 氏・河野眞一 氏・吉次弘志 氏
OSAKA
月
*詳細はホームページをご参照ください。*■は会員限定セミナーです。
日
曜日
開催時間
セミナー名
9
金
14:00〜15:30 景気点検講座
山口智之 氏
5 21
水
14:00〜15:30 これからの産業の扉―ビジネスの目と地域経済
鍋山
26
月
14:00〜15:30 日経センター短期経済予測説明会
5
木
14:00〜15:30 消費増税後の日本経済―反転への展望と中国リスク
20
徹氏
愛宕伸康
名古屋セミナー
※15:30〜
6
参加希望
金
12:30〜14:00
中旬の予定
愛宕伸康・北原基彦
懇親会
大阪昼食会
日本経済の将来像―競争と差別化の混合戦略
中島隆信 氏
世界経済の潮流2014 Ⅰ
村山
5 • 6月のセミナー参加申込
会
社
名
所属・役職
氏
名
TEL
*皆様の個人情報は上記セミナーに関する確認のほか、
日経センターの事業のご案内にのみ使用いたします。
Mail
FAX
裕氏
公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
http://www.jcer.or.jp
設立
代表理事
会長
杉田 亮毅
内外の財政、金融、経済、産業、経営等の諸問題に関する調
代表理事
理事長
岩田 一政
査、研究を行い、あわせて会員相互の研修を図り、日本経済
理事
新井 淳一
槍田 松瑩
大田 弘子
喜多 恒雄
小峰 隆夫
長谷川 閑史
御手洗 冨士夫
吉川 洋
監事
田村 達也
本田 敬吉
開始 1963年12月23日
目的
役 員
2010年(平成22年)4月1日(公益社団法人としての登記日) 事業
の発展に寄与することを目的としています。
事業
会員
上記の目的に沿って、主に次のような事業を展開しています。
1
内外の財政、金融、経済、産業、経営等の諸問題に関する調査、研究
2
経済予測・分析・研修
3
セミナー・討論会・研究会等の開催
4
ライブラリー・情報サービス
5
研究奨励金の交付
研究顧問
新井
大竹
小林
小峰
齋藤
竹中
西岡
名誉顧問
金森 久雄
香西 泰
研究主幹
斎藤 史郎
普通会員、アカデミー会員(自治体、大学)、特別会員、名誉
会員で構成してい ます。
運営
会費、寄付金などで運営しています。
日本経済研究センター 直通電話番号
総務・事業本部
研究本部
管理部 03(6256)7710
予測分析部 03(6256)7730
(経理) 03(6256)7708
研修事業部 03(6256)7725
会員事業部 03(6256)7718
国際アジア研究部 03(6256)7750
(セミナー) 03(6256)7720
国際本部
日米研究室 03(6256)7659
グローバル研究室 03(6256)7732
茅場町支所 03(3639)2825
ライブラリー
大阪支所 06(6946)4257
淳一
文雄
光
隆夫
潤
平蔵
幸一
事 務 局
事務局長
源関 隆
総務・
事業本部長
石塚 慎司
国際本部長
村井 浩紀
研究本部長
佐藤 恭子
大阪支所長
石塚 慎司
会報編集長
石塚 慎司
所在地
東京・大手町
茅場町支所 (ライブラリー) 大阪支所
〒100-8066
〒103-0025
〒540-8588
東京都千代田区大手町1-3-7
日本経済新聞社11階
東京都中央区日本橋茅場町2-6-1
日経茅場町別館2階
大阪府大阪市中央区大手前1-1-1
日本経済新聞社8階
JCER
検索する
www.jcer.or.jp
日本経済研究センターでは、経済予測
T E L: 03(6256)7710
FAX: 03(6256)7924
T E L: 03(3639)2825
FAX: 03(3639)2879
T E L: 06(6946)4257
FAX: 06(6947)5414
や研究レポート、会報などの情報を
ホームページで公開しています。