セラミックス 第 11,12,13 回目 『 セラミックス材料の物性 』 ( 2号館 2301教室 ) 磁性の分類,フェライト,強磁性体,永久磁石 サーミスタ特性,誘電体特性,ナノテクノロジー セラミックス材料の今後の応用と展開 2016 年 6 月 28 日(火) 7 月 5 日(火),7 月 12 日(火) 工学部 材料工学科 教授 永山 勝久 ニューセラミックスの物性 ー セラミックスの材料物性 ー 6つの機能大分類 ① 熱的機能(⇒ 耐熱性,次世代エンジン用材料) ② 機械的機能(⇒ エンジニアリングセラミックス) ③ 生物・化学的機能(⇒ バイオセラミックス) ④ 電気・電子・磁気的機能 (⇒ 導電性,半導性,イオン伝導性,圧電性, 誘電体,磁気的機能・磁性材料関連) ⑤ 光学的機能(⇒ 光ファイバー,レーザー発振材料) ⑥ 原子力関連機能(⇒ 核燃料,炉心・制御・遮蔽材) ニューセラミックスの代表的な電気・電子・磁気的性質 1.『絶縁性』:物質に通電する際、大きな電気抵抗により電気を通さない性質 2.『誘電性』:物質に電圧を印加した時、物質の両表面に電荷が現れる性質 誘電特性は比誘電率(:誘電率 ε と真空の誘電率 ε0 の比)の大きさに比例 クオーツ(単結晶SiO2):3.8,サファイヤ(単結晶Al2O3):9.4, チタン酸バリウム(BaTiO3):4,590 ← 強誘電体(コンデンサ)となる 3.『導電性(半導体)』:特定のセラミックスは電気を通し、半導性を示す 1)サーミスタ:温度を上げると抵抗が下がり、電気を流す性質 2)バリスタ:電圧が高くなると電気抵抗が下がる性質 電子回路に必要以上の高電圧がかかるのを防ぐ電子部品 4.『圧電性』:①特定物質に応力(振動,歪)を加えると電気を発生する性質 ②特定物質に電気を流すと振動を発生する性質 「圧電セラミックス」:チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3:PZTセラミックス) 5.『磁性』:通常のセラミックスは磁性を示さないが、フェライト(酸化鉄 Fe3O4, 酸化Ni,Baフェライトなどの混合焼結体)は強磁性(磁石特性)を示す 6.『超電導』:電気抵抗がゼロになり、一度流した電気が流れ続ける性質 ③ ④⑤ ③ ④ ⑤ フェライト磁石発見の歴史的推移 『1930年に世界初のフェライト磁石(OP磁石)の発明』 ①「KS鋼(1917年に本多光太郎博士(東北大)が発見した世界最強の 永久磁石(“近代磁石の始まり”):Fe-35%Co-6%Cr-6%W-0.9%C)」 ②「MK鋼(1932年に三島徳七博士(東大)が発見した析出硬化型・ 鋳造磁石:Fe-Ni-Al合金,KS鋼の倍(500Oe)の保磁力Hcを有する)」 ③「フェライトOP磁石(1930年に加藤与五郎、武井武両博士(東工大) が開発, 鋳造磁石とは原理1)が異なり、セラミックス強磁性粉末の 酸化鉄Fe3O4を主成分とし、これに各種フェライトを混合した結果、 コバルトフェライトCoFe2O4が優れた永久磁石になることを発見」 注)「OP磁石」:酸化物Oxide Powderの略(東工大所在地大岡山のOと 永久磁石Permanent Magnetの頭文字P をとったとも言われている ⇒ その後、Baフェライト,Srフェライト(AFe12O19 )高性能磁石へ発展 「フェライト磁石」は①,②の金属合金磁石とは異なり、セラミックス (酸化物)であること、強磁性の一部 となる“フェリ磁性(セミハード, 磁気記録用磁性体)” を利用した点 が大きな特徴 となる 1)①,②が形状磁気異方性を利用した磁石であるのに対し、フェライト 磁石はSm-Co,Nd-Fe-B磁石同様、結晶磁気異方性 を利用した磁石 ④「Baフェライト磁石:BaFe12O19(BaO・6Fe2O3),1952年にオランダ のフィリップス社によって、フェライト磁石(OP:Oxide Powder磁石 :1952年に日本で発見)の性能を上回る「Baフェライト磁石」が開発 され、「高性能異方性型フェライト磁石として世界に登場した」 ⑤「Srフェライト磁石:SrFe12O19(SrO・6Fe2O3),1961年にアメリカの、 ウェスチングハウス社によりBaフェライトを上回る「Srフェライト磁石」 が開発された」 上記、2つの磁石は、いずれも『マグネトプランバイト型』と呼ばれる 六方晶の結晶構造を有し、フェリ磁性を示す高性能永久磁石である 「フェライト磁石」は「原料が酸化物系セラミックス磁性粉末」と安価 なため、1968年に Sm-Co磁石が発見 されるまでは、低コストかつ 高性能を有する磁石材料として、世界中で研究・開発が行われた なお、「フェライト磁石の工業化と大量生産」に成功を修めたのが、 TDK(当時の東京電気化学工業株式会社)を始めとする、日本の 企業であり、その後のエレクトロニクス時代を担う磁石材料として、 フェライト磁石は、現在でも世界で最も数多く生産・利用されている 世界における永久磁石の生産量と生産額の比較 『フェライト磁石』が、生産量94%(45万トン),生産額50.11%(22億5千万円)で共に世界第1位 高性能磁石特性を有する『ネオジム磁石』の生産額と生産値は共に第二位であるが、その 生産量は4.27%しかない。 現在、資源の少ない、希土類元素を使用しない(レアアース・ フリー)安価な高性能酸化物系セラミックス・フェライト磁石の開発が世界中で期待されている 永久磁石材料の年産量の比較: 2000年 年生産量(トン) 百分率(%) アルニコ フエライト サマコバルト ネオジ焼結 ネオジプラマ グ 7300 450000 1000 16400 4000 3.43 0.84 1.52 94.0 0.21 4.27 永久磁石の年産総生産額の比較: 2000年 アルニコ フエライト サマコバルト ネオジ焼結 ネオジプラマ グ 年生産値(百万ドル) 160 2250 120 1480 480 32.96 10.69 百分率(%) 3.56 50.11 2.67 43.65 2012年 磁性材料国内生産実績月別推移(金額/億円) 180 ソフトフェライト 160 一般社団法人 電子情報技術産業協会 (JEITA: Japan Electronics and Information Technology 100~200億円 Industries Association) 出典 http://home.jeita.or.jp/ecb /information/stati_mat.html より フェライト磁石 140 希土類磁石 120 100 80 60 40 10~20億円 20 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 300% 9月 10月 11月 12月 2012年度 磁性材料国内 生産実績月別推移(前年同月比) ソフトフェライト 250% フェライト磁石 ソフトフェライト(酸化鉄:M2+O・Fe2O3を 主原料とする軟磁性材料) 200% 希土類磁石 フェライト磁石(Baフェライト,Srフェライト)150% 希土類磁石(Sm-Co系,Nd-Fe-B系) ↑ 100% 硬磁性材料=永久磁石材料 50% 0% 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2012年 誘電体セラミックス世界生産量合計推移(2002年を100とした指数) 300 誘電体セラミックス原料 誘電体セラミックス電極材料 250 誘電体セラミックス原料1)と電極材料2) ・・・世界生産量の合計数値(重量指数) 200 150 1) 誘電体セラミックス原料 チタン酸バリウムBaTiO3原料 (酸化チタンTiO2,炭酸バリウム BaCO3)の合計重量の数値, 100 50 2002年の月平均値を100とした指数 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 2)誘電体セラミックス電極材料 Ag,Pd,Ag-Pd合金3),Ni の 合計重量の数値 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2012年度 誘電体セラミックス世界生産量合計推移(前年同期比) 140% 120% 2002年の月平均値を100とした指数 3)Ag-Pd合金 携帯電話等の小型電子機器に 実装される電子部品に適合する 回路形成用導電性ペースト材料 100% 80% 60% 誘電体セラミックス原料 40% 誘電体セラミックス電極材料 Ag-Pdナノ粒子ペースト 5nm程度のナノ粒子を使用して 20% 20μm程度の超微細電子(導電性) 0% 回路パターン形成を実現 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 ← Nd-Fe-B焼結磁石 :(BH)max=~60MGOe JEITA 社団法人電子情報技術産業協会 JABM 日本ボンド磁性材料協会 より引用 ← フェライト磁石:(BH)max=~5MGOe 図 日本における永久磁石材料の 左上:磁石特性の推移 右下:生産総額の推移 フェライトボンド磁石 → フェライト焼結磁石 ○+フェライトボンド磁石 ○ : 生産額:~250億円 (希土類焼結磁石に次、第2位) フェライト磁石 ← J E I TA 社 団 法 人 電 子 情 報 技 術 産 業 協 会 JABM 日本ボンド磁性材料協会 より引用 ← フェライト焼結磁石生産量 : 40 kton(40万トン) 第1位 ← フェライトボンド磁石 :=10 kton(10万トン)第3位 図 日本における永久磁石材料の 左上:生産量(重量)の推移 右下:生産コストの推移 フェライト焼結磁石 ○,フェライトボンド磁石 ○ :共に、全ての磁石中、最も製造コストは低い → フェライトボンド磁石○ ↓ 図 永久磁石材料の種類と強さの比較 フェライトの応用分野 TDK(株)HPより 『 フェライトコア 』 :携帯電話,各種通信機器, パソコン等のケーブル端部に 取り付けられている円筒状の 部品が「フェライトコア」であり、 高周波ノイズ吸収用フィルター として使用される ケーブル内にノイズ電流(高周波)が流れ ると、ケーブルから磁場が発生するため、 それを「フェライトコア」に吸収させ、熱に 変えることでノイズを低減させ、音質向上 やPC,情報端末等の誤動作を防止する 1.磁性体セラミックス(フェライト,酸化鉄セラミックス [:図1,表1 参照]) 軟磁性材料(ソフト) (ex.磁気ヘッド材料, トランス用材料) 半硬磁性材料 (セミハード) (ex.磁気記録 用材料) 硬磁性材料(ハード) (ex.永久磁石材料) 図1 磁性体セラミックス (フェライト,酸化鉄 セラミックス)の用途 表1 代表的な鉄酸化物系化合物 物 質 結晶系 系 性 色 相 α -Fe2O3 γ -Fe2O3 α -FeOOH (α -Fe2O3・H2O) Fe3O4 Fe(Fe2O4) MnFe2O4 CoFe2O4 NiFe2O4 ZnFe2O4 六方晶 立方晶 直方晶 非磁性 強磁性 非磁性 赤褐色 茶 色 黄 色 X線密度 [g/cm3] 5.29 5.07 4.28 立方晶 立方晶 立方晶 立方晶 立方晶 強磁性 強磁性 強磁性 強磁性 非磁性 黒 色 黒 色 黒 色 黒 色 赤褐色 5.24 5.00 5.29 5.38 5.33 六方晶 六方晶 強磁性 強磁性 黒 色 黒 色 5.28 5.15 永久磁石 BaFe12O19 SrFe12O19 鉱物名 α-Hematite Heamatite γ-Hematite Maghemite Goethite Magnetite (Jacobisite) (Trevorite) (Flanklinite) 備 考 赤鉄鉱,ベンガラ ガンマ 針鉄鉱,黄鉄 磁鉄鉱,黒鉄 磁鉄鉱,鉄黒 マンガンフェライト コバルトフェライト ニッケルフェライト 亜鉛フェライト,タン (顔料) バリウムフェライト ストロンチウムフェライト フェライトの一般式:M・Fe2O4 ・・・ M:2価の金属 (MO・Fe2O3 ) (M = Mn, Ni, Zn, Ba,Sr,・・・) **酸化鉄(磁性体酸化鉄)・・・Fe3O4 : マグネタイト 「主な用途」: ①ビデオテープ,カセットテープ用磁性体 磁気記録用 磁性体粉末 BaO・6Fe2O3 ②フロッピーディスク用磁気記録媒体 ③モータ回転用マグネット(ex. PC用ハードディスクHDD SrO・6Fe2O3 ④スピーカー(ex.携帯電話,音楽プレーヤー)用 注)現在:CD, MO, MD(光磁気記録用各種メディア材料) マグネットドライブモータ) (※ ビデオテープ、フロッピーディスク等の記録用媒体は全て γ-Fe2O3 粉末を使用) 『磁性材料(強磁性体材料)の実用的分類』[:図2 参照] ①軟磁性材料(ソフト磁性材料) ・・・保磁力Hcが小さく、磁化率χrが大きい(⇒ M/Hが大きい)材料 例)磁気ヘッド,トランス用磁芯材料 ②硬磁性材料(ハ-ド磁性材料) ・・・保磁力Hcが大きく、かつ飽和磁化MS,残留磁化Mrが 共に大きい材料, 例)永久磁石材料 ③半硬磁性材料(セミ・ハ-ド磁性材料) ・・・①と②の中間的性質を示す磁性材料 例)磁気記録用材料:磁気テ-プ材料,磁気ディスク材料, 垂直磁気記録材料,光磁気記録材料 B:磁束密度[単位:Gauss] (強磁性体中の磁化の大きさMと 外部磁場Hの両者を合せた物理量) 図2 磁性材料とB-Hヒステリシス曲線 ①軟磁性材料,②永久磁石材料,③半硬質磁性材料 保磁力Hcによる磁性体の分類 ③ ①Hc小:軟質磁性体 ① :磁気ヘッド、変圧器鉄心、 磁気シールド ②Hc中:半硬質磁性体 :磁気記録媒体 ③Hc大:硬質磁性体 :永久磁石 ② 1Oe=80A/m 1T=8x105A/m →105A/m=1.3kG 『強磁性体の特徴』 外部からの磁場印加によって、強磁性体特有の磁化挙動を示す ( ⇒ 強磁性体の特徴となる、外部磁場Hに対する磁化Mの変化) ↓ “磁化曲線=ヒステリシス(M-H)曲線”[:図3 参照] ・・・強磁性体が有する単位体積当りの磁化(磁気モーメント)の 大きさMが、外部磁場Hの増大と減少に伴い、連続的に変化 する時の物質の磁性状態(過程)を示す曲線 『磁化M』 :原子が有する孤立電子(不対電子,スピン)によって 発生する磁気モ-メントの総和 ( ⇒ 結晶を構成する全ての原子が有する不対電子の総和) 『磁場H』 :物質に対し、外部から連続的に印加する磁場力(磁場の強さ) 『強磁性体の磁化過程』 ①:最初の状態(H=0,M=0) ②:初磁化過程 (χr:磁化率,Ms:飽和磁化) ③:外部磁場を取りさった状態 (Mr:残留磁化(H=0) ④:-Hcの磁場で強磁性体中の 磁化Mは完全にゼロになる (Hc:保磁力) ⑤:②とは反対方向に飽和磁化 した状態(-Ms) ⑥:③とは反対方向に生じた残留磁化(-Mr) 図3 ヒステリシスM-H曲線 ⑦:④とは反対方向の保磁力Hc [M-H曲線は閉じる] ⑧:②と同一方向の飽和磁化状態Ms 注)χr:強磁性体に磁場印加した時の最初の傾き[磁化率χr=M/H] Ms:強磁性体内の全ての磁気モ-メントが印加磁場(外部磁場) 方向に配列した時に生じる磁化M[飽和磁化] Mr:飽和磁化状態Msにある強磁性体に逆方向の磁場を印加し、 外部磁場がH=0の時に強磁性中に残存する磁化M[残留磁化] Hc:強磁性体中に残った磁化を全てゼロにするために必要な磁場 強磁性体の磁化過程 -磁化Mと磁場Hの関係(ヒステリシス曲線)- 磁化M 残留磁化Mr DB E 保磁力Hc O F 飽和磁化Ms C 磁化率 χ=M/H A 磁場H G 図 ヒステリシス曲線(M-H曲線) Magnetization(磁化) 強磁性体の温度:Tと磁化:Mの関係 (強磁性体から常磁性体への変化:キュリー温度,Tc) 強磁性 常磁性 キュリー温度: Tc 鉄のキュリー温度: 770℃ Temperature(温度): ℃ 強磁性体の磁化曲線(ヒステリシス) O→B→C:初磁化曲線 C→D: 残留磁化 D→E: 保磁力 C→D→E→F→G→C :ヒステリシスループ 残留磁化 飽和磁化 保磁力 初磁化曲線 Hcによる磁性体の分類 Hc小:軟質磁性体 Hc中:半硬質磁性体 Hc大:硬質磁性体 初磁化状態 マイナーループ 世界最強の永久磁石材料 Nd2Fe14B相の結晶構造 ナノレベルで原子配列が制御された 9層・稠密・積層・正方晶構造 結晶構造:正方晶(a=8.81Å,c=12.21Å) 単位胞 :4×Nd2Fe14B=68個の原子 Fe:56個,Nd:8個,B:4個 特異構造:下に示す積層構造を呈する (9層稠密構造) Nd4Fe2B2(C面) | Fe11(Fe-Cr 2元系で表れるσ相と同一, | かつC面に平行でない) Fe4 | Fe11 | Nd4Fe2B2(C面/2) | Fe11 なお | 1)C軸にはFe原子のみ Fe4 2)Nd, B原子は、C面 | および1/2C面のみ Fe 11 | Nd4Fe2B2(C面) Nd1, 4f Nd2, 4g Fe1, 4e Fe2, 4c Fe3, 8j1 Fe4, 8j2 Fe5, 16k1 Fe6, 16k2 B , 4f 『Nd-Fe-B永久磁石材料(ネオジム磁石)』 ・・・エレクトロニクスの高性能化・小型軽量化に大きく貢献 (※ 1982年に住友特殊金属の佐川眞人らによって発明 された世界最強の高性能永久磁石材料) 【応用例】 ① ハードディスクHDDのヘッドを駆動するリニアモータ およびディスクを回転させるスピンドルモータに使用 ② 携帯電話の振動用モータ(・・・マナモード時)に使用 ③ CD,DVDなどの光ピックアップなどの各種小型モータ ④ 風力発電用・永久磁石式発電機 ⑤ MRI-CT(強い磁場を利用した身体の断層映像医療・ 観察・診断用)用マグネット(核磁気共鳴NMRを利用) ⑥ ハイブリッドカーや電気自動車の発電・動力用モータ (・・・永久磁石式自動車用同期モータ)に大量に使用 (MRI:Magnetic Resonance Imaging, 磁気共鳴画像装置) (Voice Coil Motor) (Anti-lock Braking System, VCM: HDDの磁気ヘッド, 自動車ブレーキ用センサ) デジタルカメラ・オートフォーカス用 位置決めセンサ 微小精密モーター 出典: 日経ものづくり (2011年1月号,pp.52-57より) 用永久磁石型 同期PMモーター 医療機器関連 :永久磁石式MRI(Magnetic Resonance Imaging)*) *) MRI:核磁気共鳴(NMR-CT)を利用して身体の断層映像を得る装置 [特徴]:超伝導磁石によるMRIよりも発生磁場は小さいが、 コンパクトかつコストが安い[:図1,図2 参照] 図2 永久磁石式MRIを搭載したMRI検診車 図1 Nd-Fe-B系焼結磁石を使った永久磁石式MRI Nd-Fe-B製 PMモーター トヨタ・プリウス(ハイブリッドカー) ウィキペディア (Wikipedia) http://ja.wikipedia.org/ より Nd-Fe-B永久磁石:1982年に住友特殊金属の佐川眞人らによって、 Nd-Fe-B磁石(ネオジム磁石)が発明された。ネオジム磁石を使った 永久磁石式同期モーターは、新型ハイブリッドカーや 電気自動車の発電・動力用モーターに大量に使用される ハイブリッドカーの駆動モーターには、車1台当たり、 1.2kgのNd-Fe-B焼結磁石が使用される 注)永久磁石型同期モーター:Permanent Magnet Synchronous Motor Nd-Fe-B製 PMモーター用磁石 ※ 駆動モーターの中で、最も普及しているのが『永久磁石型同期(PM)モーター注)』 であり、現在、実用化されている電気自動車や、トヨタのハイブリッドカーなどに搭載 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems) :センサー,アクチュエータ(電子回路を構成する 素子),電子回路を一つのSi基板,ガラス 基板,有機薄膜上に集積化したデバイス 補足:【磁性の基礎】 『磁性の分類』[:表1,図1,図2,表2 参照] :原子が有する固有の不対電子*) (電子,スピンの自転)による 磁気モ-メントの配列の仕方(スピンの秩序性)で、磁性状態は 以下の ① ~ ④ に分類される *) 不対電子を有する原子(⇒室温以上で強磁性状態を示す元素) ⇒ Fe族3d遷移金属[26Fe,27Co,28Ni]+4f 希土類金属64Gd ① 常磁性 :不対電子による磁気モ-メントが外部磁場方向 に配列せず、バラバラの方向をとる磁性状態 ② 反強磁性 :2つの磁気モ-メント↑と↓の大きさが同じで、 完全に正・負の磁気モーメントを打ち消す磁性状態 ③ フェリ磁性 :外部磁場によって、反強磁性と同じスピン配列を とるが、2つの磁気モ-メントの大きさに差があり、 ある方向に強い磁性を示す(⇒「磁気記録材料」) ④ 強磁性 :全ての磁気モ-メントが一方向(外部磁場方向) に完全に揃い、強い磁性を示す (⇒ 「実用磁性」 ・・・トランス,磁気ヘッド,永久磁石材料 など) 表1 磁性体の種類 ⇒スピン(不対電子)に依存しない磁性 ラーモアの反磁性:1905年 1.原子が電子による磁気モーメントを持つ場合 ⇨ 強磁性、反強磁性 ⇨ 常磁性、反磁性 2.原子が電子による 磁気モーメントを持たない場合 (互いに打ち消し合う・・・常磁性) 注)反磁性 (diamagnetism): 磁場印加により、負の磁化率を有する磁性 ⇒ 磁場に対し逆方向に磁化を示し,反発する磁性) 外部磁場印加により,物質中に電磁誘導に依存した円電流(永久電流)が流れ、 磁場印加方向と逆向きにローレンツ力(=円電流による磁場=反発力)を生じる 図1 常磁性,強磁性,反強磁性体の 磁気モーメント(スピン)配列 『常磁性(Paramagnetism)』 :磁気モーメント(スピン)を有するが、外部磁場が無い時は スピンがばらばらで磁化を示さず、外部磁場を印加すると 磁場方向に弱く磁化する磁性( ⇒ M=χH:線形変化) 『強磁性(Ferromagnetism)』 :全てのスピンが磁場方向を向き、強い磁化を示す磁性 『反強磁性』 :片方のスピンは磁場方向に向き(強磁性→)、もう1つの スピンは反対方向に向き(←)、磁化を完全に打ち消す磁性 図2 フェライトのフェリ磁性および 各種磁性の磁気モーメント配列モデル 表2 磁性の分類 常磁性 強磁性 常磁性 反強磁性 フェリ磁性 負(磁場よりは 磁場にかられる 常磁性の一種 常磁性の一種 強く磁場にひ 特 強磁性に似る きつけられる じき出される) 温度係数負 性 温度係数負 温度変化なし 物質のもつ電子不対電子のもつ 磁気モーメント 磁気モーメント 物質の中に磁 の軌道運動の 磁気モーメント が相互に打ち消 が反平行に配向気モーメントを 外部磁場による の磁場による配 し合う形で配向 しているがその そろえた磁区が 起 歳差運動 向および自由電 している モーメントに差 あり、それが磁 因 子の磁気モーメ があり強い常磁 場で一方向に ントの配向 性を示す 配向する (Pauli 常磁性) 分類 モ デ ル 反磁性 振動試料型磁力計 (VSM) 小さな試料片を印加磁場H により磁化させ一定の大きさ の振幅と周波数で正弦波的 に振動させたとき、近接させ ておいたコイルに誘導される 起電力の大きさから磁化の 強さMを求める方法 (←永山研究室・所有装置 豊洲校舎1F-D-30実験室) 強磁性体の原理・機構 強磁性体(ex.永久磁石)になるために は、原子が磁気モーメントを持つだけで は不十分で、その向きが揃っていなけ ればならない 原子 磁気モーメント 強磁性 常磁性 鉄 コバルト アルミニウム サーミスタ,バリスタ、誘電体(電気・電子的特性) (1)サ-ミスタ(thermistor)*) [:図1 参照]特性 [定義]:温度により材料の電気抵抗値が変化する性質 (・・・温度調整、測定用の温度センサー用素子) ①CTRサ-ミスタ(Critical Temperature Resistor:臨界温度サ-ミスタ ②NTCサ-ミスタ(Negative Temperature Coefficient thermistor) ③PTCサ-ミスタ(Positive Temperature Coefficient thermistor) ③ ① ② サーミスタ(thermistor) Thermally Sensitive Resistor 電気抵抗の特異な温度依存性 を利用して、材料の電気抵抗を 測定することにより温度を検出 するセンサー素子 *) 図1 3種類の代表的サ-ミスタ の電気抵抗の温度依存性 ① 『CTRサ-ミスタ』:結晶の構造変化が生じる相転移点で 電気抵抗が急激に低下する材料 V2O5:80℃以下(単斜晶系)では抵抗が負の温度係数を持った半導体 80℃以上(ルチル構造:正方晶系)では電気伝導度が2ケタ以上増加 (抵抗が急激に減少)し、金属的挙動[温度の増加につれ抵抗は増加する ・・・抵抗:正の温度係数]を示す [応用]:温度スイッチなどの各種センサ材料 ② 『NTCサ-ミスタ』:抵抗が温度上昇に伴って単調(指数関数的)に減少する材料 (CTRサ-ミスタとは異なり、相転移には無関係) 不純物注入型遷移金属酸化物(Fe2O3-Ti系,NiO-Li系), ZrO2-Y2O3系,SiCなど [応用]:ダイオ-ド,ヒュ-ズ,各種温度スイッチ類など ③ 『PTCサ-ミスタ』:相転移点で抵抗が急激に上昇する材料 (⇒ 「CTR及びNTCサ-ミスタ」とは逆に、抵抗は温度上昇に伴って増加し、 かつCTRサ-ミスタ同様,結晶の相変化に起因する) ・・・「正方晶-立方晶変態」に伴う抵抗変化 (ex.代表材料:BaTiO3 ・・・セラミックスコンデンサ材料) [応用]:電圧異常と回路の短絡保護材料・・・大電流が流れると、サ-ミスタの 温度が上昇し,抵抗値が増加し電流量を低下させる サーミスタ(代表的3種類)の特徴 (Thermistor, Thermally Sensitive Resistor) (1)NTCサーミスタ(Negative Temperature Coefficient) : 温度が上昇すると抵抗値が連続的に減少する (2)PTCサーミスタ(Positive Temperature Coefficient) : 温度が上昇すると特定の温度以上で抵抗値が 急激に増加するサーミスタ (3)CTRサーミスタ(Critical Temperature Thermistor) : 温度が上昇すると抵抗値が急激に減少する ※ NTCサーミスタ(温度制御用センター素子として多用)の 温度と抵抗値の関係式 1 1 B( ) T T0 0 R R exp R : 温度Tにおける抵抗値 ⇒ 材料の抵抗Rを測定し T : 温度(K) 温度Tを求める R0: 基準温度T0における抵抗値 T0 : 基準温度(K) (一般に25℃(=298K)を使用) B : 定数 [身近な用途・応用例] : 電子体温計、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンの制御用温度センサー (その他:OA機器、カーエアコン、自動車エンジン用温度計測センサー) (2)バリスタ(variable resister)特性 [定義]:電流-電圧特性が非直線的なセラミックス半導体材料 (電圧Vが増加すると抵抗Rが急減し、非オ-ム則を示す材料) ※ V=IR に従わない [:図2,図3 参照] ⇒ 低電圧域では温度依存性が小さいが、 臨界降伏電圧VBで、突然電気抵抗値が 消失し、電流が急激に増加(流れる) 図2 ZnOバリスタの典型的なI-V特性 (電流はVBで急激に増加) 図3 ZnOとSiCのバリスタ特性 用途: ① 整流器で発生する異常電圧から、回路素子を保護 ② 落雷,高電圧の流入による電気回路の破壊防止用 (3)誘電体特性[:図4 参照] :絶縁体と同様、電界を印加した場合に 定常電流は流れないが、 電荷を蓄積できる特性(コンデンサー特性)を有する材料 [:図5, 図6 参照] ① 常誘電体:誘電率の低い物質 [:BaTiO3の高温相(立方晶型)] ② 強誘電体:外部電界によって双極子モ-メントが整列することに よって自発分極が発生し、かつ自発分極の方向が変化できる物質 [:BaTiO3の低温相(正方晶型)] ③反強誘電体:自発的な双極子の配列が結晶内で平行になるよりも、 反平行になる方が安定な物質 [:ジルコン酸鉛(PbZrO3)] 図4 電界を印加した時の 誘電体の分極モデル A C F t :誘電率 A:電極面積 t :電極間距離(誘電体の厚さ) 図5 BaTiO3の結晶構造 図6 BaTiO3の誘電率の温度依存性 (a) BaTiO3の高温相(常誘電体) (εa :a軸方向の誘電率, (b) BaTiO3の低温相(強誘電体) εc :c軸方向の誘電率) 『固体電解質(安定化ジルコニアセラミックス)』 ZrO2:1100℃で結晶変態(・・・低温:単斜晶→高温:正方晶) ↓ 数%の容積変化の発生(・・・亀裂発生に伴う自己破壊の誘発) ↓ ∴ 安定化剤の添加(CaO,MgO,Y2O3を数%~数十%添加) ・・・室温で立方晶を呈し、高温での結晶変化がない (※ 室温以上で立方晶構造を安定化させ、 高温での結晶構造変態を完全に抑制させる) 『安定化ジルコニア(Stabilized Zirconia)』 ・・・Zr4+ と Ca2+,Mg2+,Y3+ の置換によって 結晶格子中に酸素イオンO2-が不足し、 酸素イオンの伝導体(=『固体電解質』) として応用[:図1 参照] → 各種酸素センサ素子 [:図2, 図3, 図4 参照] PSZ:セラミックス高温・高強度構造材料 『部分安定化ジルコニア(PSZ:Partially Stabilized Zirconia)』 :正方晶ZrO2(高温安定相) または 正方晶ZrO2+ 立方晶ZrO2(安定化ZrO2)の混在構造 ⇒ 『強靱,高強度セラミックス材料』の代表 [機構]:PSZセラミックスに外力が加えられた場合、正方晶構造が 単斜晶構造に相転移して、外力を相変態時の駆動エネルギ- として吸収する ⇒ 『結晶(構造,相)転移による強化機構』 ・・・ TTZ (Transformation Toughened Zirconia) 特徴 :①高強度,高靭性 ②熱伝導率は小さく(断熱性良好),熱膨張係数は金属に近い ↓ Y3+:結合手が3つ O2-のホールを介した イオン伝導 (・・・結晶中を移動) Zr4+:結合手が4つ O2- : 〃 が2つ 図1 Y2O3添加による ZrO2の安定化 (単斜晶から 立方晶型 への相転移) 図2 安定化ZrO2固体電解質を用いた 酸素センサの酸素濃度と起電力の関係 図3 自動車用排気ガス用 酸素センサ素子の構造 E=55.7log10PR/PM (E:起電力,PR:大気中の酸素濃度,PM:被測定ガスの酸素濃度 ex) 自動車排気ガス中のCOまたはCO2濃度を測定) E(O2-のイオン伝導によって生じた起電力) PR(大気中のO2量) = 55.7log10 PM(測定ガス中のO2量) (SOFC) 図4 ZrO2セラミックス用途 光学的機能 - 代表材料 - 光通信用ガラスファイバー[:SiO2(石英ガラス)製ファイバー] ※ 単結晶石英ガラス(SiO2):可視光(人間が目で見ることが できる波長を有する光)を最も良く伝える固体材料 [光ファイバ(Optical fiber)の概要および要求特性] ① 直径50~125μm ② 屈折率が高い:1.5(cf.空気:1.0,水:1.3,ダイヤモンド:2.4) ③ 1本のファイバーで、1Tbps(1012ビット/秒)以上の光デジタル 信号(電話回線1万本以上)かつ100kmを無中継で伝送可能 ④ 1秒間に地球を5周程度回る速度(秒速約20万km)で、 光デジタル信号を高速伝送する ⑤ 光ファイバー中での損失量は、1kmで数%程度(約0.3dB*) ) と非常のロスが少ない *) 光が1km伝送することによって、1/1に減衰する時、1デシベル (dB) とする = “1㎞での減衰率がゼロ(損失が全くない)” コア径:約50μm,クラッド径:約125μmのファイバーの外周部を シリコーン樹脂で被服 屈折率の高い,中央部のコア(Si+Ge)と外周部の クラッド(Si)の境界部で光信号を全反射させ、 Si 長距離伝送を可能とする Si(+Ge) 図 光ファイバー中の光デジタル信号の伝送機構 [製造法の一例] :原料ガス(SiCl4:四塩化ケイ素)+GeCl4:四塩化ゲルマニウム)+O2+H2)を 石英ガラスチューブ内で燃焼・分解 原料ガス中から Si(+Ge)O2 が石英チューブの内側に析出 石英ガラスチューブごと加熱して引き伸ばし、ファイバー状に加工する 企業が求める大学生の要素・人材 企業が求める大学生の6大要素(NEC 遠藤社長) 1.基礎学力・・・大学1,2年生の教養・基礎学力 (工学リベラルアーツ:工学を基盤とする倫理感ある大学教養教育) 2.専門力・・・大学で何を学んだが 自分の大学,学部,学科,専攻を熟知 自分の興味や強み(専門性)が明確化 3.自己力・・・問題意識,解決力・自己分析力が高い 4.プレゼンテーション能力・・・自分の考えを伝達 5.コミュニケーション能力・・・社会,他人との関わり 6.国際力・・・国際感覚に優れ、語学力の高い人材 大学人(教育・研究者)にとって必要な5P 国際基督教大学ICU 鈴木典比古 学長 現在,国際教養大学 理事長, 学長 ・・・①価値観,②創造力,③決断力,④説得力, ⑤実行力 等が総合された全人格を有する人間 1.Passion(情熱)・・・自ら考え情熱をもって取り組む 2.Persuation(説得)・・・自分の考えを丁寧に伝える 3.Patience(忍耐)・・・辛抱強く自分の考えを貫き 答え(結果)を導く 4.Perspective(見通す力)・・・洞察力,先見性 5.Planning(計画力)・・・事前準備,意義ある計画 ↓ P(Plan)・D(Do)・C(Chek)・A(Act)を確実に遂行
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