ます。そのために、黒髪のメラニンは一 様に黒くなっていて、模様が見えないの です。 人の毛髪では、メラニンは主に紫外線 吸収の働きをしています。太陽光線を吸 収・中和することで、角質の光化学変性を 防いでいるのです。その目的にはユーメ ラニンが最適であり、それに対して、フェ オメラニンは大気中の酸素を介した紫外 線照射で簡単に変性してしまいます。 フェオメラニンにはこのように防御作用 がないことから、赤毛の髪の人の皮膚は 太陽光線に敏感なのです。ユーメラニン とフェオメラニンは同じく DOPA 分子か ら産生されるのに、その化学組成が異 なっていることは、疑いの余地がありま 図 5.7 a) ブリーチした毛髪 に見られる溶解した メラニン顆粒。 b) 明るい色の自然の 毛髪には、メラニン 顆粒がわずかしか含 まれていない。 c) 白髪(グレイヘア) にはメラニン顆粒が ほぼ完全に含まれて いない。 せん。 42 え、難溶性であるおかげで水で洗い流さ 溶解性の違いに基づいて判別する方法が この分子および当然メラニンも、フェ れることがありません。これがユーメラ 開発されました。ユーメラニンはフェオ ノール環を持つアミノ酸のチロシンから ニンの構造であると現在では一般的に受 メラニンよりも溶解性が小さいのです。 生合成されます。最終段階の分子は、黒 け入れられています。 それによると、黒色の毛髪にはユーメラ 鉛様の構造を持ち、無数のインドール残 フェオメラニンは、システイン存在下 ニンが毛髪の最大 2%含まれ、フェオメ 基で構成される巨大分子(ポリマー)に で産生されます。硫黄含量が高いこと ラニンはほんのわずかしか含まれていな なります(図 5.8 参照) 。このモデルのよ が、この色素顆粒の主な相違点のひとつ いのに対し、ブロンドの毛髪ではフェオ うに高度にポリマー化した色素は、きわ です。近年、毛髪のフェオメラニンと メラニンのほうが優性で、ユーメラニン めて強い光吸収体であるために黒色に見 ユーメラニンとを、アルカリ性物質への は 0.1%以下しかありません。
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