ビデオ用バッファ・アンプの 機能と3V 動作 IC

特集*ディジタル時代のビデオ信号操作術
第4章
機器間のアナログ・ビデオ信号
伝送を確実に行うために
ビデオ用バッファ・アンプの
機能と3V 動作 IC
武渕 賢次/阿部 仁美
Kenji Takebuchi/Hitomi Abe
カラー・テレビが発売されて 40 年以上が経過し,
各家庭にはさまざまな映像機器が普及しています.ビ
カメラの出力段から同軸ケーブルを通してテレビに送
られています.
図 4 − 2 は実際にディジタル・スチル・カメラで使
デオ・テープ・レコーダ,ディジタル・ビデオ・カメ
ラ,DVD,ディジタル・スチル・カメラなど,映像
をテレビに映して楽しむ家電製品はたくさんあります.
用されているビデオ・アンプ NJM2561 のブロック図
です.アナログ・ビデオ信号を処理する NJM2561 は
近年,映像機器はディジタル技術を駆使して製品化
されていますが,テレビとの接続部においては依然と
LPF,6 dB アンプおよび 75 Ωドライバで構成されて
います.本章では,映像機器出力部でアナログ・ビデ
してアナログ・ビデオ信号が使われていることが多い
です.テレビと映像機器間に信号の伝送ケーブルを接
オ信号をどのように処理し,テレビに送出しているの
かを説明します.
続し,アナログ・ビデオ信号を伝えて映像を映し出し
ているのです.
ディジタル・スチル・カメラ
● 映像機器の出力からテレビ入力までのアナログ・
ビデオ信号の流れ
では,アナログ・ビデオ信号は実際,どのように処
D-A
コンバータ
理され伝送されているのでしょうか.図 4 − 1 に近年
急激に普及しているディジタル・スチル・カメラとテ
同軸
ケーブル
75Ω
抵抗
75Ω
抵抗
ビデオ・
アンプIC
レビの接続概略図を示します.D − A コンバータによ
ってアナログ・ビデオ信号が送出されます.このアナ
テレビ
ログ・ビデオ信号を処理するのがビデオ・アンプ IC
図 4 − 1 ディジタル・スチル・カメラとテレビの接続概略図
で,IC から出力された信号はディジタル・スチル・
接続にはアナログ・ビデオ信号が使われていることが多い
3V
10μ
0.1μ
6
NJM2561
V+
0.1μ
D-A コンバータや
DSP からの入力
(新日本無線)
6dB アンプ 75Ωドライバ
4 Vin
Vout 2
LPF
75Ω
33μ
75Ω
3
Vsag
GND
5
テレビへの
出力
33μ
Power Save
1
3V
図 4 − 2 ディジタル・スチル・カメラで使用されているビデオ・アンプ IC の応用回路例
2004 年 7 月号
165
アナログ・ビデオ信号をバッファ出力
するときに必要になる回路
るため,ビデオ・アンプの出力は 2 V P − P の信号レベ
ルで出力しています.2 V P − P の信号が出力され,テ
ビデオ信号を伝送する NJM2561 には LPF,6 dB ア
レビ側で 1 VP − P に終端されているわけです.
以上のように,ビデオ・アンプの出力は 2 V P − P と
ンプおよびドライバの機能回路がありますが,なぜこ
する必要があります.図 4 − 2 で NJM2561 に 6 dB の
のような機能が必要なのか考えてみましょう.
ゲインがある理由は,ビデオ・アンプへの入力信号が
1 V P − P であることを考慮しているためです.ほかに
● ロー・パス・フィルタの必要性
通常,ビデオ・アンプの前段にはシステム制御を行
もビデオ・アンプに入力される信号によって 9 dB,
12 dB,16 dB といったバリエーションを備えたビデ
う DSP などがあります.図 4 − 3 に DSP 出力の周波数
オ・アンプもあります.表 4 − 1 は電源電圧 3 V で動
スペクトルを示します.
DSP の駆動クロックは 27 MHz や 54 MHz で,映像
作するビデオ・アンプを例示しますが,種々のゲイ
ン・アンプがあることがわかります.
帯域の側波帯として± 10 MHz 程度の折り返しノイズ
が発生します.このためビデオ信号の信号帯域(DC
● ドライバの必要性
〜 4.5 MHz 程度)は通して,高域のノイズは除去する
ビデオ・アンプの出力には,75 Ωの送出抵抗と特
ロー・パス・フィルタが必要となります.ビデオ・ア
ンプの後段にはテレビが接続されますからロー・パ
性インピーダンス 75 Ω系の同軸ケーブル,テレビに
内蔵された 75 Ωの終端抵抗が接続され,負荷は計 150
ス・フィルタがない,またはロー・パス・フィルタの
性能が悪いと,ノイズが除去されずテレビの映像がち
Ωと非常に小さくなります.この負荷を駆動するため
のドライバ(バッファ)
がビデオ・アンプの機能として
らついてしまいます.
はどうしても必要になります.
ロー・パス・フィルタや 6 dB アンプおよびドライ
● 6 dB アンプの必要性
バが必要とされる理由がおわかりいただけたでしょう
同軸ケーブルに重畳しているビデオ信号を考えまし
ょう.ビデオ信号とは,テレビなどで使用されている
か.
映像信号のことをいいます.映像信号にはコンポジッ
ト・ビデオ信号という輝度
(明るさ)信号とカラー
(色)
表 4 − 1 電源電圧 3 V で動作するビデオ・アンプのいろいろ
信号をミックスした信号があり,75 Ω抵抗で終端し
たとき図 4 − 4 のように 100 %白からシンク・チップ
までの 140 IRE を 1 VP − P にすると決められています.
このような信号が映像機器から出力され,テレビに
映し出されています.図 4 − 1 のディジタル・スチ
型 名
ゲイン 入力信号振幅
NJM2560
NJM2561
NJM2575
NJM2571A
6,
12,
16 dB
―
6 dB
1.0 VP − P
9 dB
0.7 VP − P
NJM2562
ル・カメラの最終出力段でのビデオ信号は,75 Ωの
NJM2573
送出抵抗と終端抵抗により抵抗分割され,テレビに入
力される信号振幅がビデオ・アンプの出力振幅の半分
NJM2574
になります.
テレビではちょうど 1 V P − P の入力信号を必要とす
NJM2563
6 次 LPF
2 次 LPF
6 次 LPF
6 次 LPF
12 dB
0.5 VP − P
NJM2578
NJM2576
備 考
6 次 LPF,ゲイン選択ス
イッチ内蔵
3 次 LPF,3 回路入り
3 次 LPF
3 次 LPF,入力容量レス
16 dB
0.3 VP − P
6 次 LPF
3 次 LPF
100IRE
DSPクロック
ゲイン
折り返しノイズ
1VP-P
ペデス
タル・
レベル
714mVP-P
0IRE
4.5MHz 17MHz
信号帯域
27MHz
周波数
37MHz
ノイズ帯域
図 4 − 3 DSP 出力の周波数スペクトルのイメージ
166
286mVP-P
−40IRE
カラー・バースト
シンク・チップ
図 4 − 4 コンポジット・ビデオ信号の波形例
2004 年 7 月号