カットオフ周波数の設定について 2007/04/24 鳴海 智博 フィルタの説明で、カットオフ周波数(fc)をどれくらいに設定すればいいのかを書いていな かったので補足。 制御の講義か何かで「サンプリング定理」というものを習ったと思います。サンプリング 周波数の 1/2 の周波数未満の信号しか再現できないというものです。 白丸の間隔がサンプリング周期で、黒線がアナログの信号になります。図を見ればわかり ますが、信号の周波数の 2 倍よりサンプリング周波数が遅いと、サンプリング後の見かけ の信号が元の信号とまったく異なったものになっていることがわかります(白丸がまっす ぐ並んでいる) 。 また、サンプリングよりも信号の周波数が高いと、以下のような問題も起きます。 図では元の信号は 3/4 fs なのに、サンプリング後の見かけの周期は 1/4 fs になっています。 このように周波数が異なって見える現象を「エイリアシング」と言います。テレビで車輪 が高速で回転しているのを見たときに、止まって見えたり逆回転してるように見えたりす るのがこれです。 こういったことが起きないようにローパスフィルタ(LPF)を入れてやらないといけませ ん。 「アンチエイリアシングフィルタ」とも言います。 QSAT ではセンサの A/D 変換をする周期は 1[sec]に設定しています(変更の可能性あり)。 これは被測定現象の最高周波数や、マイクロコンピュータの計算速度、データを蓄えるメ モリ容量などの制約から決まってきます。つまりサンプリング周波数は 1[Hz]なので、ナイ キスト周波数は 0.5[Hz]。LPF のカットオフ周波数は 0.5[Hz]未満にする必要があります。 被測定現象の最高周波数を fp、LPF のカットオフ周波数を fc、サンプリング周波数を fs と すると、 𝑓𝑝 ≪ 𝑓𝑐 ≪ 𝑓𝑠 カットオフ周波数はナイキスト周波数ギリギリを狙うのはあまりよくなくて、目安として はナイキスト周波数の 1/5 程度(サンプリング周波数の 1/10 程度)をカットオフ周波数に するのが普通です。なので QSAT の場合だと 0.1[Hz]程度になります(このあたりが現在の 回路では考慮されていないので問題です) 。このカットオフ周波数が衛星の運動周期や被測 定現象の周期(回転運動、重力傾斜振動、太陽ベクトルや地磁気ベクトルの変化)などよ りも大きくなければなりません。 一番簡単な RC(抵抗とコンデンサ)の LPF を使用すると考えると、 𝑓𝑐 = 1 = 0.1[𝐻𝑧] 2𝜋𝑅𝐶 となるので、𝑅𝐶 = 1.463 にする必要があります。一般に販売されているコンデンサは数 pF ~数F で、抵抗は数から数 Mのものがあるので適当に両方の値を合わせることになり ますが、ここで気をつけなければいけないのがインピーダンスの問題です。 「入力インピー ダンスは大きく、出力インピーダンスは小さく」が基本です。低周波数のフィルタは RC で は作りにくいので、オペアンプを使った 2 次のフィルタを作るのが、周波数的にもインピ ーダンス的にも良いと考えられます。さらに高性能なものだと SCF になりますが、これは 回路が複雑になるので、サイズ重量や電力の制限とのトレードオフになります。また、コ ンデンサなら何でもいいかというとそうでもなく、同じ静電容量でもタンタル電解だとノ イズが小さいのにアルミ電解だと大きくなるだとか、理論だけだとわからない経験的なも のもあります。こういうことはいろいろ手と足を動かして試してみたり人に聞いたりして みないとわかりません。
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