映画 300 のはなし 「旅人よ、ラケダイモーン人に伝えよ、ここに 彼らの法に従い、吾ら横たわると」 (墓碑銘) これを書いたのは古代ギリシアの国民的詩人シーモニデース(前 556-468)である。映画 の中でも Dilios が最後のところで Go tell the Spartans, passerby, that here, by Spartan law, we lie. と言っている。また、ヘーロドトスの『歴史』VII, 226 に クセルクセス王がギリシアへ向けて進軍していた時、ラケダイモーン人 (スパルタ人)はテルモピュライの隘路を守っていた。そして戦いの前、 友軍の一人が言った、「夷狄(ペルシア人)が矢を射かける時は、無数の 矢で太陽が蔽われる。それほど矢数が多いのだ」と。すると、ディエー ゲネースという名のスパルタ人が言った、「客人よ、そなたは良い事ば かり教えてくれる。メーディアー人(ペルシア)人が太陽を蔽ってくれ たら、戦いは日向ではなく、日陰で行われるだろうから」と。 映画が描いているのは、実際にあったこのテルモピュライの戦いである。ここで300 名のスパルタの精鋭部隊が玉砕する。その原因を作ったのは、映画では、テルモピュライ に通じる間道の所在をクセルクセース王に教えたエピアルテースというせむしのスパルタ 人であるが、これもヘーロドトスの記述に基づいている。この男の裏切りの故に、ギリシ アの隣保同盟の代議員会はその首に賞金を賭けたと言う。 ヘロドトス( ヘロドトス(c. 484 -420 B.C.) B.C.)の『歴史』 歴史』 ギリシアの歴史はペルシアの歴史を抜きにしては語れない。 ヘロドトスの『歴史』はクセルクセス王の治世の途中で終わっているが、その後のギリ シアの歴史をもペルシア王朝史の枠の中で眺めていた。 主役はキューロス以下の4代のペルシア大王 キューロス ―― カンビュセス ―― ダレイオス ―― クセルクセス 「父」 「主人」 「商人」 キューロス大王(アカイメネス家) スキタイ人にも似た遊牧民の要素を残した原始的な諸部族の連合体を基盤として建国 パサルガダイなどの支配的な3部族に、メディア人から離反するよう説得 小アジアのリュディア王国を滅ぼす (『歴史』はこの王国の叙述から始まる) 父 ―― 素朴なる家父長制の時代 カンビュセス キューロスのやり残したエジプト征服に成功 主人 ―― ペルシア人の伝統的な体制の上に出る専制君主。権力政治の時代 ダレイオス カンビュセス王の死の直後に君臨した偽王スメルディスを倒し、王位に就いた 帝国を 20 の属州に区分し、貢税額を厳格に割り当てた 商人 ―― 自分の名に因んだ「ダレイコス」なる標準金貨を発行 クセルクセス アイスキュロスの悲劇『ペルシア人』では傲慢な暗君 (父のダレイオスは非常に理想 化されている) 容姿の美しさ、体格の大きさにおいて傑出(7巻 187) 女性関係をめぐる前代未聞の乱れ アルタクセルクセス 父のクセルクセスを暗殺して即位(前 465 - 424、40 年間の治世) ヘロドトスと同世代 前331年、ペルシア帝国はマケドニアの王アレクサンドロスによって滅ぼされる。
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