May 14, 2003 東島 清 自習ノート 2 電磁場の古典論 電磁場のローレンツ不変な定式化の復習。問 1、問 2、問 4 は必修。 Field Strength 相対性理論では電場 E = (E 1 , E 2 , E 3 ) と磁場 B = (B 1 , B 2 , B 3 ) は2階の反対称テンソル で表される。 0 −E 1 −E 2 −E 3 0 −B 1 −B 2 −B 3 E1 B1 1 µνρσ 0 −B 3 B 2 0 E 3 −E 2 ∗µν F F µν = 2 = F = ρσ 3 1 2 3 1 2 E B −E B 0 −B 0 E 3 2 1 3 2 1 E −B B 0 B E −E 0 但し、0123 = −1023 = 1 は完全反対称テンソル。添え字を下げると符号が変わることに 注意:0123 = −1023 = −1 Maxwell Equation と Bianchi Identity ∂µ F ∗µν = 0 1 ∂µ F µν = j ν 0 (∇ · B = 0; (∇ · E = 1 ρ; 0 ∇ × E = − ∂∂tB ) ∇×B = 1 j 0 + (1) E) ∂ ∂t (2) 但し j µ = (ρ, j). (1) をビアンキ恒等式、(2) をマクスウェル方程式という。式 (2) に ∂ν を作用させ F µν が反対称であることを用いると、電荷の保存則 ∂µ j µ = ∂ρ +∇·j = 0 ∂t (3) が出てくる。従って、マクスウェル方程式は電荷が保存するときにのみ成り立つ。 Vector Potential: ビアンキ恒等式 (1) は ∂µ Fνλ + ∂ν Fλµ + ∂λ Fµν = 0 (4) と同等である。この式は Fµν がベクトルポテンシャル Aµ = (φ, A) を用いて次のように 表されることを保証する(ただし局所的) Fµν = ∂µ Aν − ∂ν Aµ Gauge Invariance (E = −∇φ − Ȧ, B = ∇ × B) (5) Field Strength Fµν はゲージ変換 Aµ (x) −→ Aµ (x) = Aµ (x) + ∂µ Λ(x) (6) に不変なので Maxwell 方程式も不変である。Aµ (x) が Maxwell 方程式の解ならば、Aµ (x) もまた解となり、Maxwell 方程式からはベクトルポテンシャルを一意的に定めることは 出来ない。 ローレンツゲージ (5) を (2) に代入すると Aν − ∂ ν ∂µ Aµ = 1 ν j . 0 (7) ベクトルポテンシャルを一意的に定めるには、ゲージを固定してゲージ不変性をこわす 必要がある。例えば全ての時刻においてローレンツゲージ ∂µ Aµ (x) = 0 (8) を採ることができるならば、マクスウェル方程式 (2) は次のダランベール方程式と同等に なる Aν = 1 ν j . 0 (9) マクスウェル方程式の解の一つを Aµ (x) とするとき、これがローレンツゲージの条件 (8) を満たしていなければ Λ(x) = −∂µ Aµ (x) (10) を満たす Λ(x) を用いてゲージ変換 (6) を行うと A µ (x) はローレンツゲージの条件 (8) を 満たす ∂µ A µ (x) = 0. ∂µ Aµ (x) が与えられているとき、(10) の解は時刻 t = 0 において、Λ(0, r) と Λ̇(0, r) を与 えると一意に定まる。 逆に、ダランベール方程式の解 Aµ (x) は、電流が保存する場合には (9) より ∂µ Aµ = 1 ∂µ j µ = 0 0 (11) を満たすので、時刻 t = 0 に ∂µ Aµ (0, r) = 0 , ∂µ Ȧµ (0, r) = 0 に選んでおけば、あらゆる 時刻でローレンツゲージの条件 (8) を満たす。 電磁場の Lagrange 形式 マクスウェル方程式 (2) は次のラグランジアン密度より求められる 0 0 2 E − B 2 − (ρφ − j · A). L(x) = − F µν Fµν − j µ Aµ = 4 2 [ 問 1 ] 上のラグランジアンよりラグランジュの方程式を求めよ。 (12) [ 問 2 ] ダランベール方程式を満たす場に対する Lagrange 形式 ダランベール方程式 (9) は次のラグランジアン密度より求められることを示せ 0 L (x) = − ∂µ Aν ∂ µ Aν − j µ Aµ . 2 (13) さらに、このラグランジアンは次のラグランジアンと同等であることを示せ。 1 1 µν µ 2 LF (x) = 0 − F Fµν − (∂µ A ) − j µ Aµ . 4 2 (14) ヒント:ラグランジアンに全微分項を加えても運動方程式が変わらないことに留意して LF − L = 0 ∂µ (Aν ∂ ν Aµ − Aµ ∂ν Aν ) 2 を示せ。 電磁場のエネルギー運動量テンソル T µν 1 µν ρσ µρ σν = 0 gρσ F F + g F Fρσ 4 (15) で電磁場のエネルギー運動量テンソルを定義すると 0 2 E + B2 2 = 0 (E × B)i T 00 = (16) T 0i (17) はそれぞれエネルギー密度、運動量密度(ポインティングベクトル)をあらわす。 [ 問 3 ] ∂µ T µν = jλ F λν (ビアンキ恒等式を使う), T µν = T νµ , gµν T µν = 0 を示せ。 [ 問 4 ] ダランベール方程式の初期値問題 φ(t, x) = 0, φ(0, x) = f (x), φ̇(0, x) = g(x) (18) の解は不変 D 関数 D(x) = D(t, x) を用いて次のようにあらわされることを示せ。 3 φ(x) = − d y Ḋ(t, x − y)f (y) + D(t, x − y)g(y) (19) ただし、不変 D 関数は次の式で定義され −i D(x) = d4 kε(k 0 )δ(k 2 )e−ik·x (2π)3 (ε(k 0 ) = 1 if k 0 > 0, −1 if k 0 < 0) 次の性質を持っている 1. ダランベール方程式を満たす: D(x) = 0 (20) 2. 同時刻では:D(0, x) = 0, Ḋ(0, x) = −δ 3 (x) 3. 時間反転を含まない狭義のローレンツ変換に不変:D(x) = D(x ) for x = Λx 4. 奇関数:D(−x) = −D(x) 5. x が空間的ベクトル (x2 = t2 − x2 < 0) なら零 6. D(t, x) = − 4π|1x| (δ(|x| − t) − δ(|x| + t)) (ヒント:∂yµ [D(x − y)∂µy φ(y) − ∂µy D(x − y)φ(y)] = D(x − y) φ(y) − y D(x − y)φ(y) = 0 を示し、これを y 0 = 0 から y 0 = x0 = t まで4次元積分すると良い。) [ 問 5 ] source がある場合の初期値問題 φ(t, x) = j(x), φ(0, x) = f (x), φ̇(0, x) = g(x) (21) の解は不変デルタ関数 D(x) = D(t, x) を用いて次のようにあらわされることを示せ φ(x) = φ0 (x) − d4 yD(x − y)j(y) (x0 > 0) 0 0 x >y >0 = φ0 (x) + d4 yD(x − y)j(y) (x0 < 0) 0>y0 >x0 ここに、φ0 (x) は斉次ダランベール方程式の解で、t = 0 における初期値を定めれば一意 的に決まる φ0 (x) = − d3 y Ḋ(t, x − y)f (y) + D(t, x − y)g(y) . 遅延グリーン関数 Dret と先進グリーン関数 Dadv を (θ(x0 ) = 1 if x0 > 0, 0 if x0 < 0) Dret (x) = −θ(x0 )D(x), Dadv (x) = θ(−x0 )D(x) (22) で定義すれば、非斉次ダランベール方程式の解は次のように書くことができる φ(x) = φ0 (x) + d4 yDret(x − y)j(y) (x0 > 0) 0 0 x >y >0 d4 yDadv (x − y)j(y) (x0 < 0) = φ0 (x) + 0>y0 >x0 [問 2] から分かるように 1 δ(x0 − y 0 − |x − y|), 4π|x − y| 1 δ(x0 − y 0 + |x − y|) Dadv (x − y) = 4π|x − y| Dret (x − y) = 点 y を出た光が、時刻 x0 に点 x に到着するためには、時刻 y 0 = x0 − |x − y|/c に光が発 射されなければならない。遅延グリーン関数の δ 関数は、この時間の遅れをあらわす。 θ̇(t) = δ(t) および Ḋ(0, x) = −δ 3 (x) に注意すれば、グリーン関数が次の式を満たすこ とが分かる。 Dret (x) = δ 4 (x), Dret (x) = 0 if x0 < 0 Dadv (x) = δ 4 (x), Dadv (x) = 0 if x0 > 0 (23)
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