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建築認証事業本部
改正建築基準法(平成26年6月4日公布)~公布された主な内容
建築基準法の一部を改正する法律が平成26年6月4日に公布され、一部の規定は7月1日より施行されました。
背景として、より合理的かつ実効性の高い建築基準制度を構築するため、構造計算判定制度の見直しや容積
率制限の合理化等の所要の措置を講ずるものです。以下、公布された主な内容をお知らせします。
1.構造計算適合性判定の申請手続き及び対象の見直し≪法第6条の3等≫
【内容】構造計算適合性判定を建築主事等の審査から独立させ、建築主が構造計算適合性判定を直接申請で
きる仕組みに改め、建築主が審査者や申請時期を選択できるようにする。また、比較的簡易な構造計算である
許容応力度等計算(ルート2)について、構造計算に関する高度の専門的知識及び技術を有する者として国土交
通省令で定める者である建築主事等が確認審査を行う場合には、構造計算適合性判定の対象外とする。
現在
改正
2.指定確認検査機関等による仮使用認定事務の創設≪法第7条の6≫
【内容】仮使用部分と工事部分とが防火上有効に区画されていること等の一定の安全上・防火上の基準を定め、
指定確認検査機関・建築主事が当該基準に適合すると認めたときは仮使用できることとする。これにより、確認
を受けた機関へ申請することが可能となるため、仮使用認定がスムーズに処理される効果がある。
3.構造耐力に関する規定の整備≪法第20条≫
【内容】構造耐力に関する基準の適用上一の建築物であっても別の建築物とみなすことができる部分は、構造
耐力上の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなすものとすること。
4.木造建築関連基準の見直し≪法第21条、法第27条≫
【内容】以下の場合に、大断面木材などを活用して耐火性の高い材料で被覆する等の措置によらずに準耐火構
造等にできることとする。
① 延べ面積が3,000㎡を超える大規模な建築物について、火災の拡大を3,000㎡以内に抑える防火壁等を設
けた場合
② 3階建ての学校等について、天井の不燃化又は庇・バルコニーの設置など、区画を超えた早期の延焼を防
止する措置を講じた場合。
5.容積率制限の合理化≪法第52条≫
【内容】容積率の算定に当たり、エレベーターの昇降路の部分の床面積を延べ床面積に算入しないこととする
(平成26年7月1日施行)。これはバリアフリー促進の観点からと、使用される床面積ははかご数分に限られ、エレ
ベーターの昇降路の部分を容積率不算入としても、インフラに与える影響は軽微と考えられるからである。
また、住宅の容積率の算定に当たり地下室の床面積を延べ面積に算入しない特例を、老人ホーム等についても
適用する。
その他、「移転」の規定の見直し、構造計算適合判定資格者検定制度の創設、定期調査・検査報告制度の強化
や建築物の事故等に対する調査体制の強化、新技術の円滑な導入に向けた仕組み(38条)も公布されました。
建築認証事業本部 建築確認技術部 大野敏資
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ビューローベリタスジャパン㈱ 建築認証事業本部 最寄りの事務所まで
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建築認証事業本部
改正建築基準法(平成26年6月27日公布)~7月1日より施行された規定
建築基準法は公布の日から起算して6カ月、1年、2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行され
ます。本稿では、施行令、施行規則、告示の一部が6月27日に公布され、7月1日より施行された規定をお知らせ
します。
1.階段に係る規制の合理化≪令第23条 H26年国交告第709号≫
【内容】利用者が安全に昇降できるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる階段については、階段
の寸法に係る規定等を適用しないこととする。
これにより、例として少子化の進展による学校統廃合により、空いた中学校を小中一貫の校舎として活用するこ
とができる。
国土交通大臣が定めた構造方法 H26年国交告第709号
階段及び
けあげの寸法
階段の種別
踏面の寸法
その踊場の幅
小学校における
140cm 以上
現行
告示
16cm 以下
①両側に手すりを設け、②階段の表面を粗面とし、
児童用の階段
26cm 以上
又は滑りにくい材料で仕上げた場合、18cm 以下
2.防火上主要な間仕切壁に係る規制の合理化≪令第112条 令第114条 規則1条の3≫
【内容】スプリンクラー設置を設置した部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分にあ
る防火上主要な間仕切壁については、準耐火構造としなくてもよいこととする。
グループホームは建築基準法令上「寄宿舎」に該当するが、住宅からの転用を容易にするため、防火規制の緩
和を行ったものである。
規定内容
規定
寄宿舎等(現行)
寄宿舎等(見直し後)
防火上主要な
居室と廊下の間や一定
以下のいずれかの場合は、間仕切壁の防火対策を適用除外とする。
間仕切壁
規模毎の居室間の壁等
・床面積 200 ㎡以下の階又は床面積 200 ㎡以内毎に準耐火構造の壁等で区
(令第 112 条第
をもの( 準耐火構 造)と
画した部分に、スプリンクラー設備を設けた場合
2 項、令第 114
し、小屋裏又は天井裏
条第 2 項)
に達せしめること
その他告示で定める基準に適合する場合(未施行)
3.エレベーターに係る容積率制限の合理化≪令第135条の16 別記第2号様式≫
【内容】建築基準法第52条第6項の改正に伴い、容積率の算定に当たり延べ面積に昇降路の部分の床面積を
算入しない昇降機として、エレベーターを定めることとする。これに伴い、別記第2号様式(確認申請書)等を改め
る。
施行前
施行後
確認申請書と同様に建築計画概要書も変更となるほか、文言補正(建ぺい率→建蔽率)もありました。その他、
圧縮ガス等を貯蔵等する建築物に係る用途規制の合理化も施行されました。≪令第130条の9≫
建築認証事業本部 建築確認技術部 大野敏資
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システム認証事業本部
ウシオ電機の ISO 事例
統合 ISO を活用した組織運営の改善ポイント
ウシオ電機株式会社 CSR 部 部長
ウシオ電機株式会社(東京都千代田区)
http://www.ushio.co.jp/
氏家 啓一 様
「BV サーティフィケーション お客様感謝 DAY 2014」
(2014 年 5 月 20 日/東京・秋葉原)でのご講演より
はじめに
ウシオ電機 CSR 部では、グループ全体の環境の取り組みを推進し
たり、最近では紛争鉱物の課題を社会的に解決したり、といったこと
を行う一方、ISO の事務局としての役割も担っております。QMS(品
質マネジメントシステム)及び EMS(環境マネジメントシステム)導入か
らの長い紆余屈曲、挫折を振り返り、問題点を打ち明けるのも何か
のご参考になればと思い、本日は登壇した次第でございます。
統合 ISO のねらい(必要性)
当社では 2010 年より QMS と EMS の統合推進を開始しましたが、そのきっかけ、統合のねらいは 3 つございます。
それまで独立採算制で 2 つのカンパニーが存在していましたが、多様な事業をフラット化した事業部制に移行す
ることになりました。それに伴いマネジメントが経営組織に沿ったものでなければならない、ということで、カンパ
ニー毎に運用していたマネジメントシステム(以下 MS)を統合せざるを得なくなりました。
2 つ目は中国をはじめとするアジア地域への生産移管などにより、グローバルレベルでは一体となったマネジメ
ントユニットの必要性が既に発生していました。グループレベルでの品質管理、法規制対応などの必然性が既に
あったということです。
3 つ目は ISO 認証維持に関わるコストダウンです。
ここでウシオ電機の概要をご紹介します。
1964 年に設立、今年 50 周年を迎えました。国内外のグループ会社数は 50 社あまり、従業員数は 5,000 名強
です。①エレクトロニクス、②画像映像、③ライフサイエンスの 3 つの分野において、「光を発する光源・ランプ」そ
のものを開発し、それを応用した装置、さらにその他の技術を集積したソリューションを販売しています。
本社機能は東京に、営業拠点は東京と大阪に。そして工場は①播磨事業所(兵庫県姫路市)、②御殿場事業所
(静岡県御殿場市)、③横浜事業所(神奈川県横浜市)にございます。
その中でも、①大量生産・低コスト追求型のランプ光源部品を中心に製造する播磨事業所と、②1 台 1 台受注ベ
ースでカスタマイズされた機能を備える大型の装置製品を製造する御殿場事業所では、製品群、工程、品質管
理面において多くの違いがあります。
当社の統合 ISO と称しているのは、これらの各サイトで別々に取得した ISO 認証を 1 つにまとめるということです。
統合 ISO 認証の経緯
1993 年に播磨事業所で ISO9001、続いて 1997 年に ISO14001、1999 年に御殿場事業所で ISO9001、そし
て 2004 年に本社及び営業拠点で ISO14001 という流れで、全サイト、全事業部での認証取得を完了しました。
が、それぞれが異なる認証機関による審査を受け、個別に運用している状態でした。
転機は 2009 年に訪れます。カンパニー制から事業部制への移行に伴い、別々の ISO 認証を統合することが必
然となった訳です。翌年 2010 年のキックオフから 1 年間かけて統合審査を受け、統合化を完了しました。
この一連の流れを 3 段階に分けてご説明します。
まず初期ということで、2004 年までの状態です。事業所の
中に EMS 事務局、QMS 事務局がありました。事業所長が
ISO における経営層にあたり、EMS 事務局は施設部に、
QMS 事 務局 は品 質保 証 部に ありまし た 。そ れ ぞれ の
ISO(MS)が目的とするものは事業所のニーズ。とてもスト
レートでした。
次、第 2 期と呼んでいますが、2009 年までにカンパニーと
して構造化され、工場と営業拠点において認証を受けまし
た。この時期になると ISO 事務局は工場(現場)から離れ、
カンパニーの統括部門に位置します。QMS と EMS の事務
局を 1 つにまとめ、業務を標準化する部門として ISO 推進
部門ができました。
こうなりますと、それまで現場のニーズを実現していた ISO
ですが、営業部を通じてお客様のニーズを実現する ISO へ
と変革を遂げていきました。例えば EMS では、お客様のニーズである製品環境施策への対応として、部品のグ
リーン調達が資材部の業務の一部となりました。それを実現するために、製造段階における QMS の中で EMS
を考慮しなければならない。その結果、製品化学物質の管理、欧州ローズ指令への対応体制が、QMS の中に
整い、QMS と EMS のミキシングが行われました。
第 3 期と称するのが現在の状況です。私が所属する CSR 部
は本社に属し、統合 ISO 事務局としての機能を担っています。
ここに至ってやっと全社の経営をそのまま ISO が受け止める
ことができるようになった、という形です。経営の事業方針・
計画を下手に翻訳することなく、ISO(MS)の PDCA にそのま
ま活用できるようになりました。
ここまで来ますと、もう 1 つ見えてくるものがありました。ISO
UGN*:環境情報、製品情報、ISO 情報を
交換する社内ネットワークシステム
がようやく 1 つになったことで、グループ全体に向けて同じ言
葉を発せられるようになったということです。そして QMS と
EMS の ISO 統合ですが、実は当社には他にも様々な MS が存在します。それらを取り混ぜる余力が出てきた、
ということです。ISO の目的とするものも全社環境行動計画の策定であったり、製品移管に関する事業計画であ
ったり、そういった部分にまで手が届くという形になります。
ISO 統合化のポイント
さて本日の講題が「ISO 統合化のポイント」ですので、私が思うポイントを 3 点ばかり整理してきました。
(1)管理責任者の体制
まず管理責任者の体制ですが、ISO を統合したことにより、
ようやく環境の担当役員から品質の担当役員までを ISO で
つなぐことができました。各事業部門長が各サイト及び事業
の ISO 責任を持ち、現実の組織に沿った形になった訳です。
事業所における環境分野の取り組みは、事業所の生産性
向上会議に動機付けされ、製品の環境取り組みは、開発から生産までの品質マターとして管理されます。例え
ば、省エネ、不良品撲滅、これら個々のテーマを、コスト削減と品質改善が一体となった取り組みとして自覚する
ためです。また、海外における製品の環境規制への対応についても、品質管理の中に取り込んでいます。「環境
は品質の一部」は我々の標語となりました。
(2)内部監査の再編
内部監査員の数について、2004 年には品質と環境で約 50 人程度の規模でしたが、2013 年には 140 名、QMS
が約 2 倍、EMS が約 4 倍にまで膨れ上がりました。
内部監査では PDCA の C(チェック)が機能しないとスパイラルアップは期待できません。そこで内部監査の改善
が急務となってきました。全社で内部監査を行うとなると、監査対象が広くなるため、全社の業務を診断する目
(力量)が失われてしまいました。また、各部門の業務に関わる高度な専門性を理解しづらくなってきました。そし
て、内部監査そのものが一大イベント、大きな行事になりすぎた、という課題もございます。
この現状をなんとか解決したい、経営資源を有効に使わなければ、ということで、現在、次のような取り組みを検
討、または開始したところです。
まず書面監査を充実。現場に赴かなくとも、例えば業務監査や 5S 巡回を通じて社内では様々な聞き取りが実施
されています。その結果をフィルターにして現地監査に活用しようということです。そして、ピンポイント監査の活
用、つまり目的を定めて現地監査を行うことを考えています。
(3)マルチマネジメントの一体化
今後、品質・環境以外のマネジメントシステムも一体化していく予定です。当社では、ライフサイエンス事業にお
いて医療との関わりがございますが、医療には医療マネジメントシステムがあります。これとの融合性。それから
多くの組織で導入されている BCP などのリスクマネジメント。それら多様なマネジメントシステムの融合が必要だ
と考えています。
QMS と EMS の一体化を通じて見えてきたもの、それは
QMS と EMS の相乗効果です。
ある年の統合 ISO 審査において、ビューローベリタスから
色んな所見、指摘事項をいただきました。それらの中には、
QMS 及び EMS 両方の要求事項に重なる部分があります。
そのクロスを数え上げた一覧表を作成しました。
その一覧表をよくよく分析してみるとこんなことが言えるの
ではと思いました。
まず、「委託業者」評価に対する指摘を通じて、QMS(価格
や納期)に、EMS(グリーン調達やエコ運転)を加えることで、サプライチェーンとして QMS・EMS を両軸に取り込
むことができるのでは、と気付かされた訳でございます。
そして EMS の「実施計画書」については、QMS(ロス削減・低減)と EMS(省エネ、省資源などの材料削減)の目
標をそのまま兼ねているということで、現在、QMS と EMS の委員会が一緒になって、現場で生産性向上委員会
として動いています。そこからコストゼロエミッションの取り組みにも発展しています。工場廃棄物を全てリサイク
ル化することがゼロエミッションですが、それにとどまらず、廃棄物をよりシェイプアップさせて有価物化しようと。
廃棄物処理費用よりも有価で得られる益の方が高くなることで、コストゼロエミッションとなります。
また別の指摘事項を通じて、様々な「事業部会議」が実施されていますが、その事業部会議がマネジメントレビュ
ーそのものではないのか、ということに気付かされました。取って付けたような ISO のための ISO による ISO の
会議ではなく、現存するものを利用し経営サイクル(PDCA)に連動させる、ということを改めて認識した、というこ
とでございます。
当社の EMS と QMS の重なり度合いを説明します。マニュ
アルを含む手順書類の大部分は、1 つに統合されていませ
ん。ISO の PDCA サイクルから融合を図りました。売上と利
益目標である事業計画の中に、QMS と EMS の目標を組
み込みます(P)。内部監査とマネジメントレビューでは両者
を同時に実施しました(C・A)。そうすると残る D については、
必然的に重なるところは重なる、という手法ととりました。
一方、最近話題の国際統合報告書フレームワークでは、企
業が扱う資本財は 6 つと定義されています。単純化すると「ヒト・モノ・カネ」という経営資本の広義の定義です。
EMS は地球環境の自然資本と、生産効率性として製造資本に、QMS は有用な製品・サービスで社会に資する
ということで社会資本と、そのための技術として知的資本に関わり、これらのアウトカムを得るためにそれぞれの
MS を導入していると考えることもできるのではないでしょうか。
当社では、残る財務資本と人的資本は QMS・EMS 両方に共通の資本として含めました。
工場の実務レベルのリスクをマネジメントするため、リスクマネジメントを ISO14001 に組み込んでいます。簡単
に言いますと、環境側面(インパクト)評価で環境リスクも評価してしまおう、そして経営への影響が大きいリスクを
「著しい環境側面」として同時に登録し、対策を計画していくという取り組みです。
余談になります。2013 年 4 月に日本工業標
準調査会(JISC)が、「事業競争力ワーキン
ググループ・中間取りまとめ」を発表しまし
た。「組織が MS をどのように事業力強化に
利用している、また、どのように利用するべ
きか」という調査報告書で、事業力強化に
資するためには「5 項目」の観点において活
用が図られることが望ましい、あります。本
日の講演をまとめるにあたり、1 番から 4 番
経済産業省ウェブサイトより
を念頭に置きました。
この報告書には面白い質問が書いてありました。「MS は企業にとって本来どのようなものであるべきですか」、
というアンケート調査で、MS を「変わるためのもの(変革のトリガー)」と捉えている組織では MS の満足度が総じ
て低く、「変わらないもの(行動の保障)」と捉えている組織では MS の満足度が総じて高いそうです。
私はまあ前者の方かな、という風に思っています。皆さんはいかがでしょうか。
最後になりますが、先ほどの MS 活用の観点の 5 番目「グループ単位での取り組み推進」として、ウシオグルー
プの環境活動を紹介します。2003 年にグループとして環境の取り組みを開始しました。3 年単位で行動計画を
策定し、グループ企業に展開。グループ企業の MS はこの連帯感の受け皿として生かされています。「連結ベー
スで環境経営」という利用をしているということでございます。
ウシオ電機ウェブサイト「環境方針・ウシオ環境ビジョン」より
最後に
MS は経営に寄り添うものでなければならない、という思いで思い切ったことも導入して進めてきたつもりです。そ
れでもまだ完成形ではございません。
今日の話が何らかの役に立てば、と願うと共に、逆に皆さんからご意見やご指導を頂ければ、私もお話しした分
救われます。ご清聴ありがとうございました。
ウシオ電機株式会社 CSR / 社会・環境
ビューローベリタスのサービス グローバル認証プログラム(統一認証/統合認証)
システム認証事業本部
Case Study:九州ペットフード株式会社
健康食品メーカーとしての責任感と、
九州ペットフード株式会社(福岡県粕屋郡)
http://www.kyushupet.co.jp/
近未来の海外進出も視野にいれて
FSSC22000 認証を取得。
もの言えぬペットに対する責任
「私たちはペットフードという名前の健康食品を作っていると自負
しています」。九州ペットフード株式会社の岩田澄博社長は、開口
一番にこう言った。
同社は、ジャーキーをはじめとするペット用のおやつを作っている
メーカーだ。手に入る限りは国産材料を使い、自社工場のみで、
さまざまなペットの間食商品を製造している。
驚くのはその工場内の様子。人のための食品工場に勝るとも劣ら
ないレベルで厳重に管理されている。この厳しい管理体制の根底
にあるのが、2012 年に認証を取得した FSSC(*1)22000 規格に
準じたルール構築と環境改善だ。
博多から電車で 30 分ほどの郊外にある工場
(福岡県粕屋郡)
「認証は取ってからがスタート。名前だけの取得企業になるようなことがあっ
ては意味がない」と言う岩田社長。その言葉は、現実となって工場内の隅々
にまで行きわたっている。
完全防護の作業服と入場時のエアシャワーまではよくあるところだが、工場
内の主要な部屋への立ち入りは IC カードで管理され、開口部で不審な出入
りがあるとたちまちアラームが作動し
各室への入退室は IC カードで厳重管理
て知らせる。
工場内の重要な設備や管理ポイントには「CCP(*2)」と大きく赤字で書か
れた札が取り付けられていて、取り扱いのリスクを改めて意識できるよう
になっている。さらに備品はボールペンの 1 本まで員数管理されて、その
置き場所も決められている。もし新規に必要に備品が出た場合は、勝手
に持ち込むことはできず申請をして許可を得る必要がある。
ガラスは飛散防止ガラスに入れ替えられ、バインダーもプラスチック製か
重要管理ポイントには CCP の札が
ら割れないステンレス製のものに変えられた。また鶏肉ペーストを練る釜には
蓋が取り付けられ、作業中の衛生確保や異物混入のリスクを排除するといっ
た工夫が施された。これらは FSSC22000 導入後に改善された点の一部であ
る。
食品を扱う企業として、あらゆるリスクを徹底的に排除する責任がある。何か
不都合があっても言葉で訴えることができないペット用の食品を扱うのであれ
ば、なおさら厳しくリスク管理をしなくてはいけない。同社の工場からは、そんな
製造釜には釜蓋が
思いがひしひしと伝わってくる。
(*1)FSSC:Food Safety Systems Certification(食品安全システム認証)
(*2)CCP:Critical Control Point(重要管理点)
大手流通の OEM と輸出を見据えた FSSC22000 認証取得
こんな同社と ISO 規格との歴史は、2003 年の ISO9001 認証取得に始まる。その後、2009 年に食品安全のた
めのマネジメントシステム規格 ISO22000 の認証を取得。2 年後の 2011 年に産地から食卓までの安全を包括的
に確保するトレーサビリティのマネジメントシステム規格 ISO22005 の認証を取得。そして 2012 年に、ISO22000
と食品製造に関する一般的衛生管理の基準である英国規格協会の PAS220「食品製造における食品安全のた
めの前提条件プログラム」を組み合わせたスキームである FSSC22000 の認証(以下 FSSC 認証)を取得した。
同社がこのように次々と上位の規格取得に取り組んだ最大の理由は、最初に紹介した岩田社長の言葉にもある
ように、「わが社はエサのメーカーではない、家族の一員であるペットのための健康食品を作っている食品会社
だ」という企業思想を裏付けるためだ。
なかでも厳しい FSSC 認証の取得を決めたきっかけとなったのは、岩田社長が、
さる大手流通企業の社長が、「今後うちのプライベートブランドを作る会社は、
FSSC 認証を取得していることが条件だ」と言ったのを聞いたことだった。この
時、大手流通企業の社長が言った「プライベートブランド」とは人間用の食品の
ことだったが、日ごろ自社製品の品質を「人間用の食品と同じ」とうたっていた
岩田社長は、「この要求はペットフードにも適用されてしかるべきだ」と思ったと
いう。「それで帰社してすぐに FSSC 認証を取れ!と社内に言明しました」と言
う。この読みは当たり、実際に FSSC 認証取得後に、それを高く評価した大手
企業の OEM の商談が成立した。いま工場ではその商品を日々順調に製造、
出荷している。
この話の先にはもうひとつ見据えられているものがある。それは輸出対策だ。国
ジャーキーを主流とする同社のバラ
エティ豊かな商品。入手できる限り国
産原料を使用することと添加物の軽
減にこだわる
内市場は少子高齢化で頭打ちになることが見込まれることから、今後は海外進出
することが必要だと考えているのだ。「そのときに国際規格である FSSC の認証は、きっと頼もしい武器になるはず
なのです」と岩田社長は言う。認証機関にビューローベリタスを選んだのも、グローバル展開を予測してのことだ。
改善提案には 100%即 OK を出す
もう一つの大きな取得理由は、「信頼できる企業と認められたかったから」だと岩田社長は言う。というのも、当初
5 人でスタートした同社は、最初なかなか家業のイメージから脱却できなかった。そこで岩田社長は ISO 認証を
取得することで、「家業から企業へ」のイメージチェンジと、企業としての信頼性を証明したいと考えた。「もちろん
取得するだけではダメだと思っていたので、取得にかなう中身にすべしと、従業員たちに檄を飛ばしました」。
檄を飛ばすだけでなく、岩田社長は、現場からあがってくる改善要求に対し
ては 100%すぐに OK の決済をすることを自分に課している。
その結果、工場内の環境は速やかに着実に改善され、リスクが排除される
と同時に、スタッフの働きやすさも増している。
たとえば、各自に 5 枚ずつ与えられている作業服は、それまでは各自が持ち
帰って洗濯していたが、FSSC 認証取得後はそれを就業後に毎日クリーニン
グ業者に出すシステムに変えた。こうすることで「毎日洗い立ての清潔な作業
備品の勝手な持ち込みは禁止!
服で作業をする」というルールが確実に実行されるよう
になるというわけだ。
工場内の照度や温度もルールに従って一定に管理され、見落としなどのミスを防ぎ、快適
に作業ができる環境を整えた。
また私物の持ち込みも厳しく制限・管理しているが、水筒の持ち込みを禁止したときには、
代わりに給水器を備え付けて不便がないようにしている。
待機する原料に水や埃
がかかりにくいように、
ステンレスの囲いを設置
「ただ厳しく締め付けて禁止事項ばかりを増やしても効果も効率も上がりません。大きな
投資が要ることは少し時間がかかるにしても、少しの金額と工夫でできることは速やかに
改善して、従業員を物心両面でサポートするようにしています」と岩田社長は言う。
認証機関のクオリティを追究
実際、この方針でシステムを運用するようになってから、従業員が自発的に片づけや掃除、整理整頓をするよう
に変化してきたという。さらに従業員から出される改善点の提案についても、質量ともに向上している。会社側の
要求や対応に応えて、従業員の意識やモチベーションが高まってきているということだろう。
「まだまだこれからではあるけれど、成果は確実にあがってきていると思います。今のところ 70 点ぐらいまでは来
ているんじゃないかな」と岩田社長は言う。
その感触が正しいことは現実が示している。FSSC 認証を取得してから新規の引き合いが増え、検討材料にす
るための工場見学者も増えた。そして FSSC 要求事項に準じて稼動する工場を見た商談相手から「この工場な
ら大丈夫」と信頼を得て、見学をきっかけに一気に商談が進むケースが出てきている。
「こうした現象を見ても、認証機関は厳しくやってくれるところで
ないとダメだと思う」と岩田社長は言う。「ただ認証を出すため
の審査ではこうはならない。厳しいながらも的確で分かりやす
い指摘をしてくれる認証機関とお付き合いしているから、こうい
う結果がもたらされていると思います」と。
実は同社は、審査のクオリティを追究して、認証機関を他社か
らビューローベリタスに移行した経緯がある。
「認証機関を変えてでも、名実ともに恥ずかしくない認証取得組
織になる」という選択をあえてした同社。その意味と選ばれた認
証機関の責任は大きい。
(2014 年 5 月 22 日取材)
ビューローベリタスのサービス
食品安全システム認証(FSSC22000)
食品安全マネジメントシステム認証(ISO22000)
食品トレーサビリティ認証(ISO22005)
品質マネジメントシステム認証(ISO9001)
[写真左]機械設計の技術者から転身し、20 年前に創業
した岩田澄博社長
[写真右]岩田社長の号令を実現・実践していく現場リー
ダーたち。左から熊本秀雄品質保証部課長、松原誠生
産本部長、黒川靖典生産本部生産課長。
システム認証事業本部
欧米と日本:環境・労働安全衛生遵法監査の異なるアプローチ
2012年よりビューローベリタスとパートナーシップを結ぶEnhesa(エンヘサ)社が執筆する、「海外における
法規制」に関する記事を連載しています。
読者企業の多くが、国内外の拠点においてISO14001やOHSAS18001の認証を取得されていると思います。で
は、そのうち、環境・労働安全衛生 (EHS) 遵法監査を実施している企業はどのくらいでしょうか?2013年11月
にEnhesa社とビューローベリタスジャパン株式会社との共催により東京で実施されたセミナーでは、セミナー後
のアンケート回答者67名 (日本企業のEHSやコンプライアンス・法務担当者) のうち半数が、ISOとは別に、外
部コンサルタントや自社社員によるEHS遵法監査を実施していると回答しました。残り半数の企業では、ISO認
証審査や内部監査において遵法を確認しているとの回答でした。本号では、環境・労働安全衛生遵法監査のア
プローチについて、特に日本と欧米との違いに着目して解説します。
企業の環境・労働安全衛生管理において、現地法令への遵法は基礎をなします。本来であれば、自社拠点や製
品に適用される法令及び法的要求事項を特定し、実際の遵法状況を評価・検証し、その結果を継続的に記録管
理することで、マネジメントシステムにフィードバックしていくサイクルが確立されてあるべきです。遵法監査は、
遵法状況を客観的に評価する手段であり、EHSに限らずあらゆる分野で採用されています。
しかし、特に海外拠点における遵法状況を真に効果的に評価するのは、容易いことではありません。先のセミナ
ー参加者によるアンケート回答では、その主な理由として、最新の現地法令情報の取得や法令・要求事項の正
しい理解が難しいことに加え、現地実務の効果的な評価、現地従業員の啓蒙・教育、育成の際の困難が挙げら
れました。EHS監査が法的に求められることは少なく、多くの国では営業の許認可等と関連して、また環境影響
評価として特に環境負荷が高い業種・操業内容に限定的に要求されています。また、自主的な監査を実施する
場合の指針等 (法的な拘束力をもたない)の提供などに留まっている場合もあります。そのような環境で、現地
拠点に遵法監査を受け入れ協力してもらうことは、特に日系企業にとってやや敷居の高いことであるようです。
監査員は、通常、書類レビュー、現地目視、関係者へのインタビューにより、評価に必要な客観的データを収集
し、事実に基づく評価を行います。最も避けるべきは、推測、風聞・うわさ、印象により、評価結果にバイアスがか
かることです。このため、米国の The Institute of Internal Auditors (https://na.theiia.org) は、監査員の倫理規
定として Integrity (誠実さ), Objectivity (客観性), Confidentiality (守秘), Competency (適正な能力) を挙げて
います。また、監査員と被監査者 (拠点や関係者)との間の利害関係を禁じ、監査員の倫理規定に
Independence ( 独 立 性) を 追加 する 機 関も あ りま す 。 米国 で 実 施さ れた 企業 内EHS担 当 者ア ン ケート
(Bloomberg
BNA
&
Enhesa
Global
Auditing
Benchmark
Survey
2013:
http://www.bna.com/global-auditing-benchmark-p17179875493/) によると、EHS遵法監査を実施する企業
の実に80%以上が、グループ本社を発注主として、外部コンサルタント (監査員) に世界各地における監査を
依頼しています。監査報告書は、依頼主である本社担当者やEHS担当役員、企業によってはCEO・上級役員に
直接提出されます。Enhesaも顧客から依頼を受け、世界各地で多くの第三者監査を実施していますが、監査結
果報告書を被監査拠点に直接提出することはまずありません。もちろん、現地滞在中に問題点を発見した場合
はその都度指摘し、監査最終日のクロージャー会議の場で結果の速報を拠点の責任者等と共有します。しかし、
正式な監査結果報告書は依頼主である本社に向けてのみ作成・提出され、そこには、拠点と直接の利害関係が
ない第三者による公平で客観的な評価結果のみが記載されているのです。
欧米流の遵法監査は上述のように「評価」が主眼であり、往々にしてEHS管理部署から分離された監査部署や
監査事務局が、監査結果を管理部署と拠点につきつけ、自助努力による改善を促し、是正活動の進捗と結果の
みを報告させます。Global Auditing Benchmark Survey では、72%の回答者が「甚大な指摘 (法令違反) 事
項の数」「指摘事項の数」「違反のリピート数」のいずれかまたは全ての掛け合せにより、監査結果をスコア (数
値) 化しています。この結果が、拠点のEHS担当者のみならず現地法人社長や工場長の評価に、直接的また
は間接的に影響を及ぼし得るのです。したがって、EHS遵法監査の結果は関係者に非常に深刻に受け止めら
れており、監査員による現地訪問前や訪問期間中は、現地の経営層始め全ての関係者がぴりぴりとしたムード
で準備に取り組みます (監査員との想定問答集が準備されることもあります)。また、訪問後の是正活動には、
現地経営層のコミットメントとリーダーシップが強く発揮されます。是正活動には組織や業務プロセスの構造的な
改革や、大規模な予算を必要とする設備更新など、EHS担当者の責任権限を超えた経営判断が必要なことが
あり、さらに、違法状態を許容し続けることは、場合によっては大きな経営リスクとなり得るからです。
一方で、日系企業は監査員に対して、遵法状況の評価と共に、「なぜ違反事態が生じてしまったのか」「構造的
原因があるのではないか」といった原因分析や根本問題の特定、「問題点の具体的な解決手段は」「今後、同様
の問題を未然に防ぐために現地担当者はどうしたらよいか」といった「改善指導」を期待する傾向があるように見
受けられます。もちろん全ての日系企業がそうではないでしょうが、一般的には、拠点に監査を“受け入れて頂
く”姿勢であり、拠点の受け止め方としても、本社の評価機能よりサポート機能への期待の方が高いように思え
ます。監査前に十分な余裕をもってチェック項目を送付し、主な項目については現地担当者に事前ブリーフィン
グをする (それにより監査当日までに対応してもらう) という企業もあります。監査結果を本社役員に提出した際、
なぜ現地を指導して違反事項をゼロにしてから持ってこないのか、と注意を受けたという別の企業の例は、経営
層自らが本社担当者のサポート機能を強く期待していることを顕著に示しています。
この日本式アプローチには複数の良い側面があります。まず、本社と拠点とのオープンなコミュニケーションが促
進され、拠点によって問題が意図的に隠蔽されるリスクが下がると考えられます。また、本社が当事者として是
正活動に関ることで実務レベルの相互理解が深まり、改善活動に全社として取り組む可能性が広がります。加
えて、日系企業は一般的に、現地従業員の教育研修を重視する傾向がありますが、この「監査兼改善指導」と
組み合わせることで、現地従業員の知識・ノウハウレベルの全体的な底上げを図ることができます (この点、現
地におけるEHS管理に問題があると見るや外部から専門家をマネージャークラスに採用し、上からの管理を強
めることが多い欧米企業とは対照的です)。
一方で、ネガティブな側面があることも否めません。本来、ある期間の遵法状況を厳密に評価するべき監査結果
に、一定のバイアスがかかってしまう可能性が生じてしまうからです。拠点としては事前に準備をしその場での対
応はできたかもしれませんが、監査員にその情報が見えない以上、根本的な問題の種が見過ごされ将来再び違
反が生じてしまうこともあり得ます。また、問題点として指摘された事項について、本社がどこまで強く是正を求め
ていけるか、難しい舵取りを求められることもあるでしょう。労働流動性の高い国では、せっかく教育訓練した現地
従業員がそのノウハウをもって他社に移ってしまう可能性もあります。さらに、拠点から第三者監査に強いアレル
ギー反応を示された結果、外部専門家ではなく本社社員が自ら監査員として現地訪問するケースもよく見聞しま
す。このような場合、特に日本と全く異なる法体系・法規制を基準とする海外拠点の遵法監査については、単なる
現地表敬訪問では終わらせない実効性の高い監査を実現させるためにも、かなりの工夫が必要です。
私は、欧米式と日本式のどちらかが優れているかというものではなく、同じ目標に到達するためにそれぞれ異な
るルートを登っていると考えています。これまで米系企業を中心にあらゆる遵法監査手法が開発され標準化され
てきていますが、世界にはその手法が必ずしも通用しないことを示唆する事例が見受けられます。たとえば、先
日来ニュースで騒がれている食品の偽装で摘発された中国の食品加工工場には、外資系親会社や取引先から、
過去に数度の監査 (外部専門家による監査) が入っていましたが、いずれもその偽装を見抜くことはできません
でした。監査時期と偽装時期に重複がなかったのか、監査中に何らかの隠蔽が施されたかは、今後の報道を待
つしかありませんが、作業員に偽装を指示する管理職クラスの従業員の意識の低さは既に明らかです。外資系
親会社が偽装を指示したとは考えづらく、厳しい社内ルールや手順の導入と定期的な監査実施によって、海外
拠点を十分コントロールしていたつもりだったのでしょう。しかし、現地管理者や作業員の意識はそれらに全く追
いついておらず、むしろ監査のウラをかかれてしまったことになりました。スポット的な監査とその結果のみに依
拠する弱点が明らかにされたと思います。
遵法監査は企業リスク管理の決して安くない一手法であり、結果として社会からの信頼を損なうような問題や、
将来重大な問題に発展しそうな“気配”・ニアミスを察知するために、周到に設計され効果的に使われるべき手
段です。Enhesaでは過去20年間にわたり、あらゆる業種・業態の企業における遵法監査プログラムの設計から
実行の支援、第三者監査実施、国毎の監査ツール (遵法チェックリスト) の作成を手がけています。過去10年
間に250件以上のEHS遵法監査を率いており、2013年以降、アジア・環太平洋地域、ヨーロッパ、北南米、北ア
フリカ・中近東の27カ国において、60以上の拠点のEHS遵法監査を実施しています。遵法監査に関するお問合
せについては、下記窓口までお寄せください。
Enhesa 事業開発&プロジェクトマネジャー 宮田祐子
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Enhesa (日本語対応窓口) TEL:050-5534-9789
[email protected] もご利用下さい
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Enhesaは、ベルギーのブリュッセル及びアメリカのワシントンDCに本社を置くグローバルコンサルティング会社であり、企業のEHS (環境、
労働安全衛生) 法令遵守を支援しています。日本にもサテライトオフィスを開設しており、日本時間に日本語での対応が可能です。Enhesa
は世界200カ国・地域における現地EHS法令の改正動向月次配信、EHS遵法監査ツールの提供と第三者監査、製品規制調査等を提供し、
日本企業の国内及びグローバル市場における事業展開・事業運営、輸出に関する法令遵守を支援しています。
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ISO14001:2015の改訂動向
1. ISO改訂の流れ
国際標準化機構(ISO)では、国際規格が所定の段階を踏んで策定・改訂されています。表1は、2015年に大幅
な改訂が予定されているISO14001の改訂スケジュールです。
表1:ISO14001の規格改訂スケジュール
名称(英)
名称(日)
予定
CD (Committee Draft)
委員会原案
2013年3月発行
DIS(Draft International Standard)
国際規格原案
2014年6月28日発行
FDIS(Final Draft International Standard
最終国際規格原案
2015年4月発行予定
IS(International Standard)
国際規格
2015年6月発行予定
2014年8月現在、国際規格原案(DIS)の段階にあります。このDISに対して、8月28日から11月28日まで、コメン
トの募集及び投票が実施されます。その結果をもとに2015年2月に開催が予定されている東京会合で、最終国
際規格原案(FDIS)への移行が検討される予定です。現時点では、最終国際規格原案(FDIS)発行は2015年4月、
国際規格(IS)は2015年6月の発行が計画されています。
2. DISの特徴
現在のDISの特徴は次の通りです。
(1)Annex SL対応
並行して改訂が進められているISO9001と同様、基本的にAnnex SLに準拠した形で開発が進められています。
これにより、以下の内容が、ISO14001にも反映されています。
a) 組織及びその状況の理解(4章)
組織にとって、マネジメントシステムの意図した成果を達成する組織の能力に影響を及ぼす外部及び内部の課
題を決定することを要求しています(4.1項)。また、利害関係者等のニーズや期待も決定することを要求していま
す(4.2項)。
b) リスク及び機会に対処する活動(6章)
上記a)にて決定した課題を考慮して、リスク及び機会を決定し、その計画の作成、有効性の評価を要求していま
す(6.1項)。従来からある「目的、目標及び実施計画」については、この条項の中で要求されています。
c) 運用の計画及び管理(8章)
8章の運用の計画及び管理では、6章で決定した活動を実施するために必要とされるプロセスの計画、実施、お
よび管理が要求されています。ここでは、QMSでも要求されていた、外部委託したプロセスの決定及び管理も要
求されています(8.1項)。また、「緊急事態への準備及び対応」が、この章に含まれています(8.2項)。
d) 監視、測定、分析及び評価(9章)
DISの内容では、6章、8章の活動について、監視、測定、分析、及び評価が要求されています。この章には、遵
守評価および環境パフォーマンス評価が含まれています(9.1項)。また、マネジメントシステムの有効性の評価
(DISでは、マネジメントレビューへのインプットが要求されている)も含まれています(9.3項)。
e) 予防処置の発展的解消
4章の「組織の状況の理解」、6.1章の「脅威及び機会に関連したリスクに対処する活動」により、予防処置の概
念を網羅していると、説明されています。その活動は、8.1章にて、必要とされるプロセスの計画、実施、および管
理に繋げて、運用することになります。
(2)CDからの変更点
委員会原案(CD)からDISへの主な変更点は、以下の項目となります。
a) 「リスク及び機会」の表現、「リスク」の定義
Annex SLの表現であった「リスク及び機会」という表現が、DISでは「脅威及び機会に関連したリスク」に変更さ
れました。また、「リスク」の定義については、ISO31000との整合性がとられました。
b) 「バリューチェーンの管理」を「運用の計画及び管理」に統合
CDの8.2章には「バリューチェーンの管理」がありましたが、組織の事業プロセスに含まれるとの判断から、「バリ
ューチェーンの管理」そのものの表現はなくなりました。 DISでは、8.1章の「運用の計画及び管理」に統合され
ました。
c) 手順の要求
8.2章の「緊急事態への準備及び対応」のみの、手順の要求となりました。
d) 附属書Aについて
組織に適用するための補足情報を含んだ、「附属書A」が、規格の利用の手引として、記載されています。
表2に2004年版とDISの関連性を示します。
表2:ISO14001:2015 DIS とISO14001:2004の対比表
ISO14001:2015 DIS
ISO 14001: 2004
1.適用範囲
1.適用範囲
2.引用規格
2.引用規格
3.用語及び定義
3.用語及び定義
4.組織の状況
4.1 一般要求事項
4.2 環境方針
5.リーダーシップ
6.計画
4.4.1 資源、役割、責任及び権限
4.3 計画
4.4 実施及び運用
7.支援
4.5.4 記録の管理
4.4.6 運用管理
8.運用
4.4.7 緊急事態への準備及び対応
4.5.1 監視及び測定
4.5.2 遵守評価
9.パフォーマンス評価
4.5.5 内部監査
4.6 マネジメントレビュー
10.改善
4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置
3. まとめ
ISO14001:2015の改訂作業は、ようやくDISとなりましたが、今後も、まだ注意する必要があります。それは、他
のマネジメントシステムとの整合性を考慮した変更が生じる可能性があると思われる、ということです。例えば、
用語や整合性に伴う変更及び追加としては、ISO9001や他のマネジメントシステムでは「リスク及び機会」ですが、
ISO14001は「脅威及び機会に関連するリスク」です。表現が違うことで良いか否か等、DISにおけるコメントが募
集・投票されますので、まだ検討される可能性もあると思われます。
DISが発行された時点では、次のような点で現行規格との差異があると思われます。
・Annex SLの要求する内容(予防処置の発展的解消、リスクマネジメントの導入等)が構築され、運用されている
ことが求められています。
-ISO9001と同様に、外部委託したプロセスについて、明確な管理が要求されている。
-環境パフォーマンスの監視及び測定や、評価だけでなく、「分析」も要求されている。
-マネジメントシステム自体の有効性の評価が要求されている。等
・CDの8.2章にあった「バリューチェーンの管理」は、簡素化した表現となり、8.1章の「運用の計画及び管理」に
統合されました。
ビューローベリタスでは、今後も、当ニュースレター、ウェブサイト、セミナー等を通して、移行について最新情報
の発信に努めてまいります。
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ISO10002:2014が発行
2014年7月15日にISO10002の2014年版が発行されました。今回の発行は従来の2004年版に変更が加えられ
ることなく、引き継いだ内容となっています。本稿では改めて概略を解説致します。
1. ISO10002規格の発行
2004年、ISO10002「Quality management - Customer satisfaction - Guidelines for complaints handling in
organizations」が発行され、その技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成された、国際規格に一
致した日本工業規格「品質マネジメント-顧客満足-組織における苦情対応のための指針」として、JISQ10002
が2005年に制定されました。
本規格は、「組織、顧客、苦情申出者及びその他の利害関係者に資するよう意図されており、苦情対応プロセス
を通じて得られた情報は、製品及びプロセスの改善につながり、適切に対応した場合には組織の評価が高まる
ことになる。グローバル市場において矛盾のない苦情対応を行うことによって信頼を与える。」ことを目的として
います。
2. 国内外における議論
日本国内においては1990年代後半から議論が重ねられ、「日本工業規格(案)」として2000年10月20日、
「JISZ9920:2000 - 苦情対応マネジメントシステムの指針」が発行されています。
翌2001年1月、「苦情対応(Complaints handling)」のISO化が動き出すことになり、日本は全てのワーキンググ
ループに代表を派遣し、積極的な活動をしています
(*1)
。「JISZ9920:2000」の内容を提案したことは標準化にお
ける日本の存在感を示すことになりました。その後にISO10002が発行されたことにより、JISZ9920は廃止され
ることとなりました。
(*1)ビューローベリタス審査員は、2000年TC-176京都会議に出席、SC3において苦情対応の国際規格作成を提
案、また規格作成のメンバーとして、オランダ、2001年にドイツに派遣されるなど中心的な役割を担いました。
苦情対応マネジメントシステム規格の流れ
1995 年
世界初の苦情処理マネジメントシステム「AS4269:1995」発行
1997 年
オーストラリアが COPOLCO 総会(ロンドン)で提案
1999 年
イギリスで「BS8600:1999」が発行
COPOLCO 総会(ワシントン)で苦情処理の国際規格化を勧告
工業技術院、日本の国家規格作成に着手
2000 年
日本の国家規格「JISZ9920:2000」が発行
2001 年
ISO 規格化の作業部会(ワーキンググループ始動)
2003 年
日本で第三回作業部会開催(東京)
2004 年
「ISO10002:2004」発行
2005 年
ISO 規格を翻訳した「JISQ10002:2005」発行
同規格の発行に伴い、「JISZ9920:2000」が廃止
3. 規格の概要
JISQ10002(ISO10002)では、効果的な苦情対応のためには、組織が、(1)公開性、(2)アクセスの容易性、(3)応
答性、(4)客観性、(5)料金、(6)秘密保持、(7)顧客重視のアプローチ、(8)説明責任、(9)継続的改善の9つの基本
原則に則った苦情対応プロセスを持つことが必要であると定めています。また、これらの基本原則にそったマネ
ジメントを実行するための苦情対応の要素とプロセスが具体的に記述されています。これは「苦情対応プロセス
の実施」の項に苦情の受付から対応完了までの必須要素として規定されていることが特徴と言えるでしょう。
また、システム全体としては、トップマネジメントのコミットメントのもとに体制が整備され、苦情の受付から対応の
終了に至るまでの適切な苦情対応プロセスの実施と、実施状況や成果を監視、監査、マネジメントレビューなど
により適切に評価し、フィードバックしていく、継続的改善の仕組み作りが求められています。以下に、ISO10002
の構成を図に示します。
図:ISO10002の構造
4. 国内における認証の制度
ISO10002へのアプローチには下記の3つのケースがあげられます。
(1)自己適合宣言
組織にISO10002を導入し、かつISO10002に適合したことを自ら宣言することをいいます。これは組織が
ISO10002をツールとして採用していることを外部にアピールすることが目的です。自己適合宣言は有効ではあ
るものの、第三者が適合性を確認したものではないため、信頼性が高いとは言えないでしょう。
(2)第三者意見書
自己適合宣言に加え、信頼性補完のために第三者の意見書を同時に取得することをいいます。
第三者意見書の作成は、管理責任者へのインタビューで方針や手順、運用状況の確認を通して行われます。自
己宣言より一歩進んだ状態です。
(3)認証
第三者機関(審査機関)が「~した方が望ましい(should)」と記述されている部分を「~しなければならない
(shall)」と読み換え、要求項目に対する適合審査を実施することをいいます。審査機関が公平中立な立場で、
ISO 9001やISO 140001など他のマネジメントシステム認証と同等の審査・認証を実施するため、消費者から見
て信頼性の高いものとなります。
ISO10002導入の外部へのアピール
自己適合宣言
第三者意見書
認証
長所
手軽に社内で対応できる
短所
信頼性に劣る
長所
自己適合宣言の補完となる
短所
信頼性に劣る
長所
信頼性が高く、独自の解釈をさけ中立・公平な解釈ができる
短所
認証機関へのコストが掛かる
それぞれの区分における企業数は不明ですが、自己宣言は100社を超え、第三者認証は国内20件を超えてい
るものと推察されます。
5. 2014年版の発行に際して
苦情マネジメントの重要性は顧客満足を実現するための手段として、その重要性の認識は高まっているものと
考えられますが、組織の品質マネジメントの中で、ISO10002の要求を満たした形で実現しているケースは少な
いように見受けられます。顧客の関心事が組織の製品のみならず、その活動、広告、サービスに至るまで範囲
が拡大してきていることに鑑み、CSRとしての考え方の一部に近づきつつあると言えるでしょう。規格発行を契機
に組織の苦情マネジメントのレベルアップを期待したいところです。
システム認証事業本部 戦略事業部 水城学
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産業事業本部
鋼板検査~代表的な検査や立会項目
昨今、原油・ガス開発や発電所・プラント建設プロジェクト等において、日本メーカー勢がプロジェクトそのものを
受注することはできなかったが、鋼板に関しては発注を受けるというケースがみられます。また、船級材の需要
が落ち込む中で、一部メーカーはパイプ原板受注にも乗り出しています。これらを背景に、ビューローベリタスの
ような第三者検査機関(TPI:Third Party Inspection Body)への3.2 Certificationに関するご相談・お問い合わせ
が増加傾向にあります。
そこで、本稿では鋼板検査の代表的な検査及び立会項目を紹介します。
1.オフラインで実施される代表的な検査及び立会項目
(1)
Visual & Dimensional Inspection
a) 両表面の材料疵や当り疵等を目視で検査します。
Visual Inspection ‐ Surface (表面 目視検査)
Visual Inspection - Opposite.- Surface (半対面 目視検査)
b) 各寸法要素が注文サイズや規格を充足しているか、測定機器を使用して検査します。
Measuring - Width (幅の測定)
Measuring - Wall Thickness (板厚の測定)
Measuring - Length (長さの測定)
(2)
Witness : Non Distractive Test - Manual Ultrasonic Test (NDT - MUT)
Auto Ultrasonic Test (AUT)のIndicated Portion(指示箇所)について、MUTで最終判定を行います。
また、各Side(側面)のMUTを実施します。検査員はスクリーンの波形を見ながら判断します。
Indicated Portion (指摘箇所)
(3)
Side MUT (側面の主導超音波試験)
Witness : Mechanical Test
各規格に則って厚板の性能評価を実施します。下記は、引張試験・衝撃試験の一例です。
Confirmed Specimens (引張試験片の確認)
Temperature of Charpy Test (衝撃試験の実施温度の確認)
After tested-Tensile Test (引張試験の破断面の確認)
After tested-Charpy Test (衝撃試験片の破断面の確認)
上記以外に、お客様のご要望や各種規格等に基づき、Corrosion Test, PMI(Positive Material
Inspection), Hardness Test, DWTT(Drop Weight Tear Test), CTOD(Crack Tip Opening
Displacement)等を実施します。
(4)
Residual Magnetism Check
主に溶接性を良くするために残留磁気の測定を行います。
(5)
Marking Check
顧客の要望に沿ったマーキング(Shipping Mark)や各規格に則ったマーキングがされているかを確認しま
す。トレーサビリティの観点からも大変重要なものとなります。
マーキングにはステンシルと刻印があります。
2.オンライン立会検査
お客様のご要望により、QCP(Quality Control Plan)やITP(Inspection Test Plan)に沿って、オンラインで指定さ
れた各ステージのWitness/Monitorを実施します。パイプ原板を対象とするケースが多数です。
全工程は15以上にも及びます。当然、検査員には高度の知識が要求されます。
主な流れは下記のようになります。
(1) Steel Making/製鋼
(5) Marking
(2) Plate Rolling/圧延
(6) VDI/表面・寸法検査
(3) Heat Treatment/熱処理
(7) NDE/超音波検査を含む非破壊検査
(4) Sampling/試験材採取
(8) Mechanical Test/機械試験
産業事業本部 松田収平
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ビューローベリタスのサービス:製品認証
政府指定検査・国際貿易部門
コンゴ民主共和国向け政府指定検査サービス
2014 年 7 月現在、コンゴ民主共和国向け貨物については、同国の政府指定検査(以下 GIS : Government
Inspection Service)制度に基づく船積前検査の実施が必要となっています。ビューローベリタスは、コンゴ民主共
和国当局(DGDA : Direction Générale des Douanes et Accises [税関総局] / OCC : Office Congolais de
Contrôle [管理室] / Ministère du Commerce [商務部])より認可を受け、船積前検査サービスを実施しています。
コンゴ当局が指定する製品についてコンゴ GIS に基づく船積前検査実施、及び認証書取得というプロセスを経
ずに出荷した場合、同国における円滑な通関の妨げとなりますのでご注意下さい。
1.主な対象製品
コンゴ民主共和国へ出荷する製品全て
2.申請に必要な書類
・ビューローベリタス所定の申請書(Request for Inspection
※1
)
・Proforma Invoice
・Packing List 他
・製品のカタログ
・一部製品については、化学分析データや車輌安全証明書及び登録書等
※1 Request for Inspection の詳細については、ビューローベリタスにお問い合わせ下さい。
検査終了後、認証書発行のため、Bill of Lading, Final Invoice, Packing List のご提出をお願いします。ご不明
点がありましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
ビューローベリタスは各国当局より認可を受けた船積前検査機関として、長年にわたり実績を積み重ねてきまし
た。その経験をベースに質の高い検査サービスを提供し、現地での円滑な通関手続きをサポートします。
ビューローベリタスの検査サービスをぜひご活用下さい。
政府指定検査・国際貿易検査部門 細谷知孝
【お問い合わせ】
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国際貿易検査担当 TEL:06-6205-5540/045-641-4202
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ビューローベリタスのサービス:政府指定検査・国際貿易検査
消費財検査部門(日本認証サービス株式会社 認証事業部)
日本農林規格とは~JAS法の概要
ビューローベリタスグループは、食品業界の「フードセーフティ」をトータルにサポートする体制を整えています。
ISO など国際規格への適合性を確認する認証サービス、サプライチェーンの信頼性を確認する監査サービ
スに加え、グループ企業の日本認証サービスでは、食品微生物検査、残留農薬検査、有機 JAS 認定など、
様々な品質安全検査・認証サービスをお届けします。
1.日本農林規格とは~JAS 法の概要
JAS 法の正式名称は「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」といい、飲食料品等が一定の
品質や特別な生産方法で作られていることを保証する「JAS 規格制度(任意の制度)」と、原材料、原産地など品
質に関する一定の表示を義務付ける「品質表示基準制度」から成っています。
この法律で定められたルールに従い、食品等に JAS マークや原産地等が表示されています。
2.定義等
「農林物資」とは、①飲食料品及び油脂、②農産物、林産物、畜産物及び水産物並びにこれらを原料又は材料と
して製造し、又は加工した物資をいいます。ただし、酒類並びに薬事法に規定する医薬品、医薬部外品及び化
粧品を除きます。(法第 2 条第 1 項)
「規格」とは、農林物資の品質についての基準及びその品質に関する表示の基準をいいます。
「日本農林規格」とは、JAS 法の目的を達成するため必要があると認められた時に、農林水産大臣が農林物資
の種類を特定して制定する規格のことです。
この規格は大きく分けて、①品位、成分、性能等の品質についての基準を定めるいわゆる一般の JAS 規格、②
生産の方法についての基準を内容とする特定の JAS 規格、③流通の方法についての基準を内容とする定温管
理流通加工品の JAS 規格の 3 種類があります。
JAS 規格の種類
JAS マークの種類
説明
規格制定品目
品質に関する
色、香りといった品位、原材料、食品添加物とい
即席めん、しょうゆ、果
JAS 規格
った成分等、品質についての JAS 規格を満たす
実飲料、集成剤等計
食品や林産物などに付される。
51 品目
生産方法に関す
一定期間以上の熟成や一定期間以上の平飼い
熟成ハム類
る JAS 規格
等、特別な生産や製造方法、特色ある原材料に
熟成ソーセージ類
ついての JAS 規格を満たす食品に付される。
熟成ベーコン類
地鶏肉
手延べ干しめん
有機農法により栽培された農産物等、有機 JAS
有機農産物
規格を満たす食品に付される。この JAS マーク
有機加工食品
を付してある食品には「有機○○」などと表示で
有機畜産物
きる。
有機飼料
生産情報公表 JAS 規格により定められた方法
生産情報公表牛肉
により生産情報が公開されている牛肉、豚肉、
生産情報公表豚肉
農産物、養殖魚に付される。
生産情報公表農産物
生産情報公表養殖魚
流通方法に関す
製造から販売はでの流通行程を一貫して一定
米飯を用いた弁当類
る JAS 規格
の温度を保って流通させるという、流通の方法
(寿司、チャーハン等)
に特色がある加工食品に付される。
3.JAS 規格による格付
格付とは、JAS 規格が定められている農林物資が JAS 規格に適合しているか否かを、試験、分析、調査その他
の方法により検査し、その結果により JAS 規格に適合していると判定することです。
4.JAS 規格の呼称の禁止
法第 12 条にて「何人も、JAS 規格でない農林物資の規格について JAS 規格又はこれに紛らわしい名称を用い
てはならない」こととされています。これは、JAS 規格以外の農林物資の規格(事業者の自主規格や地方公共団
体の定める規格等)は JAS 規格又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない事を規定しています。
また、法第 18 条においては、JAS 格付を受けていない農林物資については JAS マークを付してならないとされ
ています。
引用・参考文献
農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律、同法施行令及び同法施行規則(平成 25 年 4 月 1 日)
有機農産物 検査認証制度ハンドブック(改訂第 5 版)(農林水産省/平成 24 年 6 月)
日本認証サービス株式会社 認証事業部 宮井あき
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