LGBT等性的マイノリティに関する 意識調査 企画・運営:公益財団法人京都市男女共同参画推進協会 監修:特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ 調査の概要 目次 調査結果 まとめ <背景と目的> 国内外で性の多様性を認める動きが広がっ ている。学生の街である京都の地域社会に 調査概要 おいて、LGBT等性的マイノリティ当事者 背景と目的 の支援者を増やすために、若い世代の LGBTに対する理解度やカミングアウトに 対する意識を調査し、支援の輪を広げるた めの課題やニーズを把握する。 <調査概要> (1)調査対象 市内大学に在籍する学生、青少年活 動センター利用者 調査概要 対象・方法 (2)調査方法 大学の講義やセンターの講座内で LGBT等性的マイノリティに関する アンケートを配布・回収 (3)アンケート実施期間及び開催校数 期間:平成27年10月~12月 開催数:7大学及び1センター 回収数:640 調査概要 <アンケート項目 全10問> ・LBGT等の基礎用語について ・当事者に対する認識と差別的言動の有無 ・カミングアウトに対する意識について ・LBGTに関する社会の理解について ・性自認 アンケート内容 <アンケート実施の注意点> ・回収者を限定し、アンケート用紙の慎重 な取り扱いを徹底した。 ・性自認(自分の自覚する性別)を問う項目に は『答えたくない場合は無記入でかまい ません。』と記載した。 アンケート調査結果と解析 Q1.聞いたことのある言葉にチェックをつけてください。 (複数回答可) (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 88.9 94.4 94.4 98.4 96.4 94.4 96.4 94.4 94.4 94.4 85.8 73.5 64.5 60.0 LGBTなどの性的マイノリ ティ当事者 『 L G B T 』 『 『テ 『性 性 ィ セ 性的 的 ク、 的少 少 セ シ マ数 数 ク ュ イ者 者 シ ア ノ、 テ 』 ュ ル リ性 ィ ア マ テ的 イル ィマ ノマ 』イ リイ ノ テノ リ ィリ 』 『 レ ズ ビ ア ン 』 『 ゲ イ 』 『 バ イ セ ク シ ュ ア ル 』 『 ト ラ ン ス ジ ェ ン ダ ー 』 『 性 同 一 性 障 害 』 LGBTなどの性的マイノリ ティ当事者以外 「レズビアン」「ゲイ」「性同一性障害」は90%を超える認知度。「LGBT」「トランス ジェンダー」が60%台であるのは比較的新しい用語であるため認知が低いと思われる。 当事者の方が理解度が高いが、それでも100%ではなく、当事者であっても情報を得る のが難しい状況が伺える。 Q2.LGBT(※)の言葉の意味はわかりますか? ※同性愛や性同一性障がいを含む性のあり方が少数派の人たちのこと わかる 53.0% わからない 46.7% 無回答 0.3% LGBTの意味がわかると回答した人は過半数の53.0%であった。Q1では、聞いたことがあ る人が60.9%であったので、聞いたことがある人はほぼ意味まで理解している。最近の 新聞・テレビ等のメディアで用語解説されているのが浸透していると思われる。 Q3. LGBTなどの性的マイノリティ(※)は人口の何パーセントぐらいだと思いますか? ※同性愛や性同一性障がいを含む性のあり方が少数派の人たちのこと 約0.1%(1,000人に一人) 45.0% 38.3% 約1%(100人に1人) 約5%(20人に1人) 正答 15.3% 無回答 1.4% 約1%と回答した人が45.0%で最多、正答の約5%(20人に1人)を選んだのは38.5%で あった。全年代を対象とした「淀川区区民意識調査(2015 虹色ダイバーシティ) 」では正 答が21.3%だったので、今回の調査対象者である若年層の方が理解度が高いと言える。 LGBTなどの性的マイノリティが人口の5パーセント(20人に1人) であると正しく答えられた人はどのような人か? LGBTの言葉の意味がわかると答えた人 正答 LGBTの言葉の意味がわからないと答えた人 52.5 約5%(20人に1人) 22.4 38.9 約1%(100人に1人) 51.8 8.6 約0.1%(1,000人に一人) 23.1 0 10 20 30 40 50 60 (%) 質問3でLGBTの言葉の意味を知っていると答えた人の 半数以上が人口の割合について正答して おり、大学等の授業や新聞・テレビのニュースでしっかり解説されている影響ではないかと思 (%) われる。より詳細に解析すると、当事者であると回答している人の約3割が誤答であった。 自分以外の当事者に安全に出会う機会が少なく、孤立感があるのではないかと懸念する。 Q4.今までに体験したり、見聞きしたりしたもの 誰かを同性愛者でないかと噂する 0 10 しばしばある 20 30 40 50 22.2 8.4 60(%) 61.1% 42.6% LGBTなどの性的マイノリティ当事者 38.9 たまにある 34.2 22.2 25.1 ほとんどない 11.1 まったくない LGBTなどの性的マイノリティ当事者以外 24.2 5.6 7.6 わからない テレビの話題として「同性愛者は気持ち悪い」などと言う 0 しばしばある 10 20 38.9 17.3 22.2 5.6 31.5 22.2 まったくない わからない 40 3.8 たまにある ほとんどない 30 11.1 13.3 34.2 50(%) 同性愛者ではないのかという 噂については当事者が 61.1%、非当事者で42.6%が 「しばしば」「たまに」と回 答しており、当事者の方がよ り敏感である。差別的発言に ついても同様に当事者の方が より多くを経験している。 Q4.今までに体験したり、見聞きしたりしたもの 「女らしくない」「男らしくない」というような否定的な言動 0 10 20 しばしばある 30 40 50 60(%) 55.6 23.1 LGBTなどの性的マイノリティ当事者 38.9 42.0 たまにある 5.6 ほとんどない まったくない LGBTなどの性的マイノリティ当事者以外 15.5 9.6 わからない 9.6 宴会芸として女装やオネエタレントの真似をする 0 10 20 40 27.8 しばしばある 8.9 たまにある ほとんどない 30 25.3 5.6 33.3 16.5 まったくない 16.7 わからない 16.7 13.8 35.3 50(%) 性に関する差別的言動につい ての質問4項目全てにおいて、 当事者の方が非当事者より敏 感である。これは虹色ダイ バーシティの職場における調 査の傾向とも合致している。 非当事者が差別的意図なく、 何気なく言っている言葉に当 事者が傷ついている状況が浮 かび上がる。 Q5.あなたの身近な人(家族、友人、知人)などから、 LGBTなどの性的マイノリティであると打ち明けられた場合、 あなたの気持ちに近いものにチェックをしてください(複数回答可) (%) 100 80 78.2 71.6 60 60.5 67.4 43.7 40 38.6 20 お ど ろ く が 、 話 を 聞 く お ど ろ い て 、 話 を 聞 か な い 56.1 38.3 信 頼 し て く れ て う れ し い と 思 う 距 離 を お き た い と 思 う 理 解 し た い と 思 う 理 解 で き な い と 思 う 51.3 男性 24.1 6.3 3.4 2.2 1.9 0.8 3.6 女性 66.3 46.8 49.6 28.6 0.6 0.6 0.4 0 全体 75.4 9.2 7.8 0.9 0.3 2.2 応 援 し た い と 思 う 応 援 し た い と 思 わ な い い ま ま で 通 り 接 す る 10.7 わ か ら な い 過半数が「おどろくが、話を聞く」「理解したいと思う」「今まで通り接する」であった。 「理解できない」「距離をおきたい」等の否定的な反応を選択する人は10%未満であり、受け身な がら受容の姿勢が多数派である。 ポジティブな反応は性自認・女性の方が総じて多く、これは他の調査でも同様である。性的マイノ リティに理解ある男性のロールモデルが少ないことが影響しているのではないかと考えられる。 「信頼してくれてうれしいと思う」「応援したいと思う」という、より積極的な受容の姿勢を見せ たのは約4割である。こうした声を「見える化」することで当事者の生きづらさを緩和することが できるのではないだろうか。 Q6. LGBTなどの性的マイノリティの人たちにとって 日本社会は暮らしやすい社会だと思いますか? 0 過ごしやすいと思う やや過ごしやすい思う 20 40 60 80 (%) 11.1 2.0 LGBTなどの性的マイノリティ 当事者 0.0 6.7 88.9% 27.8 あまり過ごしやすいと思わない 43.1 80.7% 61.1 過ごしやすいと思わない わからない LGBTなどの性的マイノリティ 当事者以外 37.6 0.0 10.2 日本は性的マイノリティにとって過ごしやすい社会だと「思わない」「あまり〜と思わない」が 当事者・非当事者で8割を超えており、当事者が困難な状況におかれていることは多くの人が感じ ている。「わからない」と回答している非当事者が無関心層とならないために啓発を進める必要 を感じる。 Q7. LGBTなどの性的マイノリティの人たちが暮らしやすい社会を つくるための取組は必要だと思いますか? やや必要だと思う 30% 必要だと思う 53% わからない 11% あまり必要だとは思わない 4% 必要ではない 1% 無回答 1% 性的マイノリティが暮らしやすい社会づくりのための取り組みは「必要」「やや必要」 を合わせて83%であり、「必要」を選択した人も53%になった。 Q8.どのような取組が必要だと思いますか? % 10% 20% 30% 40% 50% 教育現場での啓発活動 教育現場での啓発活動(LGBTに関する講演会や授業など) (LGBTに関する講演会や授業など) 70% 80% 61% 50% 社会制度の見直し 社会制度の見直し(パートナーシップ証明書、性別移行への配慮など) (パートナーシップ証明書、 性別移行への配慮など) 72% 64% 行政による啓発活動 (広報誌やポスターによる発信、 LGBT支援宣言など) 28% 行政による啓発活動(広報誌やポスターによる発信、LGBT支援宣言など) LGBTについての専門の相談機関 LGBTについての専門の相談機関(電話相談や面接相談など) (電話相談や面接相談など) 60% 21% 17% LGBTの人が安心して集まれる LGBTの人が安心して集まれるコミュニティスペース コミュニティスペース LGBTなどの性的マイノリティ当事者 40% 44% 43% LGBTなどの性的マイノリティ当事者以外 多くの人が必要だと感じている施策は、「社会制度の見直し」63%「教育現場での啓発」50%、 「コミュニティスペース」42%「相談機関」40%である。 当事者と非当事者を比較すると、「相談機関」は非当事者の40%が必要と考えているのに対して、 当事者は17%である。これは、虹色ダイバーシティの職場における調査でも同じ傾向であり、相談 機関があっても使えないのではないかという懸念の現れだと考えられる。相談機関を作るのであれ ば、安心して利用できることをしっかり広報する必要があるだろう。 Q9. 10. 回答者の属性及び性自認 Q9.あなたの属性にチェックを入れてください。 答えたくない場合は無記入でかまいません。 無回答 11.3% LGBTなどの性的マイノリティ 当事者ではない 85.9% LGBTなどの性的マイノ リティ当事者である 2.8% 性的マイノリティ当事者ではないと回答した人は85.9%、当事者は2.8%(18人)、無回答が11.3%で あった。電通総研の2015年調査では7.6%が当事者であり、海外の調査でも3〜10%であることか ら、自覚的な当事者は人口の数%で、これは本調査の数字とも合致すると思われる。 Q10.あなたの性自認(自分の自覚する性別)に チェックを入れてください。 答えたくない場合は無記入でかまいません。 男性 35.0% Xジェンダー・中性・どちらとも言えない 3.1% その他 1.3% 女性 55.8% 無回答 4.8% 女性55.8%、男性35.0%であり、本調査は女性自認の回答者が多い。Xジェンダーが3.1%(20人)と 多めであるが、20代でXジェンダー・中性・どちらとも言えないに回答する人が多いのは、虹色ダ イバーシティのアンケート調査でも同様である。 まとめ(1) LBGT等の基礎用語・知識からわかること― 若者世代を対象とした本調査の結果を全年代対象の「淀川区区民意識調査(2015 虹色ダイバー シティ) 」と比べると、若者世代は性的マイノリティに関する知識も理解度も高いと思われ る。メディアや大学等の授業で知識を習得していることに加えて、身近にカミングアウトして いる友人がいることで関心が高まっているのかもしれない。但し、当事者であっても言葉の理 解度が100%ではなく、比較的新しい言葉が多い状況を踏まえると、正しい言葉と意味につい て社会全体で認知度を高める必要があると言える。 例えば、『レズ』という言葉には侮蔑的な意味が含まれるので『レズビアン』という言葉が 推奨される。言葉は時代とともに進化していく。ジェンダーの問題でも、DV(ドメスティッ ス・バイオレンス)という言葉が使われるようになったことで、配偶者からの暴力が個人的な 問題ではなく、社会的な問題・犯罪であるという認識が広まった。 家庭内、地域、学校等の教育機関など全ての場所で性的マイノリティに関する正しい言葉と意 味を理解し、使用することが当事者と当事者以外の相互理解の壁を乗り越える手掛かりとな る。 誰かを同性愛者でないかと噂する等の差別的言動の経験の有無について― 4項目全てにおいて当事者の方が非当事者より多く経験している。これは虹色ダイバーシティ の職場における調査の傾向とも合致しており、非当事者が差別的意図なく、何気なく言ってい る言葉に当事者が傷ついている状況が浮かび上がる。 また、男らしさ、女らしさに関する否定的言動は、性自認が女性の方がやや敏感であり、それ よりさらにXジェンダーの方が敏感である。社会的により弱い立場に置かれる側の視点を重視 して施策を考える必要があるだろう。 まとめ(2) カミングアウトに対する意識― 身近な人(家族、友人、知人)などからLGBTなどの性的マイノリティであると打ち明けられた場 合を想定した質問では、「理解できない」「距離をおきたい」等の否定的な反応を選択する人 は少数であり、約4割が「信頼してくれてうれしいと思う」「応援したいと思う」という積極 的な受容の姿勢を見せた。英語で「LGBTの理解者、支援者」を意味するアライ(ally)につな がるこうした声を「見える化」することで当事者の生きづらさを緩和することができる。 受容に関するポジティブな反応は性自認・女性の方が総じて多く、これは他の調査でも同様で あることから、今後は性的マイノリティに理解ある男性のロールモデルが増えることも重要で ある。 一方で、「性的マイノリティについての全国調査(2015 河口他※)」では、自分の子どもが同 性愛者だったら「嫌だ」「どちらかといえば嫌だ」との回答が20代で55.3%であった。身近な 人がそうだったら、という戸惑いは、市井の当事者の姿が見えにくいことと、当事者の家族が どのように受容したらよいかという情報も不足していることが要因として考えられる。 取り組みの必要性と誰もができるアクションついて― アンケートでは大多数の人が何等かの取り組みが必要だと答えている。前述の全国調査では、 同性婚の法制化に「賛成」「やや賛成」は20~30代で70%を超えている。若い世代は非常にポ ジティブだとも言えるが、社会制度が変われば自然に解決するのではないかと、どこか他人事 にしている気分はないだろうか。社会制度が変わっても身近な差別的言動は無くならないかも しれないし、逆に社会制度が変わらなくても自分の周囲から差別的言動を減らすよう働きかけ ることはできる。身近でできるアクションを提示する必要を感じる。家庭や地域、学校で LGBT等性的マイノリティの理解者・支援者であるアライの輪を広げることが重要である。 ※釜野さおり・石田仁・風間孝・吉仲崇・河口和也2016『性的マイノリティについての意識―2015年全国調査報告書』科学研究費助成事業 「日本におけるクィア・スタディーズの構築」研究グループ(研究代表者広島修道大学 河口和也)編
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