トランスクリプション演習

演習に入る前に
「映像字幕翻訳スタンダードコース」へようこそ!
TEXTBOOK1∼3では、
イギリス映画『ヘンダーソン夫人の贈り物』を使って
字幕翻訳の基礎を学びます。
イギリスで初めてヌードレビューを行ったウィンドミル劇場を舞台に、素人オー
ナーのヘンダーソン夫人とマネジャーのヴァンダムとの奇妙な友情、
そして、
その
周りの人々のドラマを描いた作品です。
第二次大戦直前から大戦中の実話を基にしていますので、
ある程度、歴史や
その頃の文化を知っておいた方がいいですね。少しずつ解説しながら、学習を進めて
いこうと思います。
主人公のローラ・ヘンダーソンは、夫を亡くして莫大な遺産を手に入れます。
彼女は、優雅で封建的なビクトリア王朝時代(1837∼1901年)に生まれ育った
トランスクリプション演習
女性で、
かつてイギリス領だったインドでも夫と共に暮らした経験があります。アレッ
クという息子がいましたが、第一次大戦で戦死。彼は北フランスのイギリス軍戦
没者墓地に眠っています。
さて、
そんなヘンダーソン夫人とヴァンダムの出会いは?
UNIT1では、字幕翻訳の演習に入る前段階として、英文の
書き起こしを行う「トランスクリプション演習」を行います。虫食
い状態の英文を、DVDの映像を見ながら穴埋めしていってく
ださい。すぐに聞き取れなくても、あきらめずに、
「トランスクリ
プションのポイント」も参考にしながら、何度も聞いてみましょう。
終わったら、UNIT2の英文スクリプト(解答部分に下線が引い
てあります)で答え合わせをし、字幕翻訳家として必要なヒア
リングのスキルを養ってください。
イギリスの話ですので、アメリカ英語とは発音やイントネー
すじ
のあら
ここまで
ションが違い、聞き取りにくいかもしれません。しかし、できるだけ
やってみようという気持ちが大切です。頑張ってみてください。
時代は1937年、第二次世界大戦が始まる2年前。亡き夫ロバートの莫大な遺産を相続した
ローラ・ヘンダーソン夫人は、遺産の使い道に悩んで困り果て、友人のレディ・コンウェイに
相談する。友人からの助言に従って、夫人は慣れない刺繍を始めたり、慈善事業に参加するが、
どれもいまひとつピンとこない。
ある日、
ロンドンの街中を車で走っていたヘンダーソン夫人は、
ソーホー地区で売りに出されて
いるウィンドミル劇場を見かけた。何かを考えるかのように、
じっと劇場を見つめて、最愛の息子が
ン夫
ヘンダーソ
人の贈り物
眠る北フランスの戦没者墓地へ向かう。
意を決したようにロンドンへ戻ったヘンダーソン夫人は、
ウィンドミル劇場を購入する。レディ・
コンウェイは、夫人が突然劇場を買ったことに驚きを隠せないが、ヘンダーソン夫人は「アメ
リカ流のボードヴィルを上演する」と意気揚々でいた。
しかし、彼女は劇場経営については全くの素人。そこで、支配人を雇うべく、管財人のレズリー
に相談をすると、支配人として最適な人物を紹介してもらえることになった。
2
劇場経営者として定評があるヴィヴィアン・ヴァンダムを、管財人のレズリー
から紹介してもらうことになったヘンダーソン夫人。
しかし、夫人は約束の時間に遅刻しても、少しも悪びれた様子はない。
そのうえ初対面のヴァンダムに対して、
ユダヤ人であることを無遠慮に言い放つ。
当然、
ヴァンダムにとってヘンダーソン夫人の第一印象は最悪で、彼はさっさと
部屋を出て帰ろうとする。
3
演習に入る前に
ドキュメンタリー編では「チェイシング・タイム:クアラルンプール」を使い、
ドキュメン
タリー翻訳の基礎を学びます。
ドキュメンタリーの翻訳といっても、通常のドラマの翻訳と基本的には変わりません。
1枚のハコは6秒以内であり
(例外的にもっと長く取る場合もあります)1秒4文字で訳
さなければなりません。
しかし、
ドキュメンタリー独特の約束事はあります。フィクションではなく事実を映像
化したものですから、
ドラマに比べると事実確認のリサーチの量が多く、非常に重要に
なります。例えば、地名や人名などの日本語での呼称を信頼できる出典に当たって確認
したり、歴史的事実や地理、科学技術や政治経済など専門的な内容を調べたりしな
ければならないこともあります。さらに、音楽や美術などの芸術、
スポーツなど、幅広い
分野に渡ってドキュメンタリー番組は制作されています。さまざまな知識が必要になる
のが、
ドキュメンタリーです。翻訳家として、
日頃から多種多様な話題に触れておく心
掛けが大切になります。皆さんのこれまでの経験がすべて生きてくるでしょう。
また、
ドキュメンタリーに出演するのは俳優ではない一般の人であることもあり、必ず
しもわかりやすい話し方をするとは限りません。聞き取りにくい場合もあります。台本の
存在しない普通の会話は、文法が正しく使われていない場合もあります。そのため
スクリプトも完全ではなく、常に正確とは限りません。
では、
ドラマと“ちょっと”違う、知的好奇心をくすぐるドキュメンタリーの世界に触れ
て、字幕翻訳の手法を学びながら、一緒にクアラルンプールの街を探検しましょう。
トランスクリプション演習
UNIT1では「トランスクリプション演習」を行います。虫食い
状態の英文を、レッスンDVDの映像を見ながら穴埋めしてい
ってください。すぐに聞き取れなくてもあきらめずに、
「トラン
スクリプションのポイント」も参考にしながら、何度も聞いてみ
ましょう。終わったら、UNIT2の英文スクリプト(解答部分に
下線が引いてあります)で答え合わせをし、字幕翻訳家として
必要なヒアリングのスキルを養ってください。
ドキュメンタリーはきちんとしたセリフをしゃべっているわ
すじ
のあら
ここまで
けではないので、聞きづらいと思います。それだけに元のスク
リプトが間違っていることもしばしばあります。翻訳家のヒアリ
ング力が高くて悪いことはありません。頑張ってください!
“チェイシング・タイム”は世界各地を旅するリアリティー番組。
旅をする一般参加者の2人組が、次々に指示されるチャレンジをこなしていく、ゲーム感覚の紀行
シリーズ。挑戦者たちに手渡されるものは、地図・会話辞典・現地通貨・携帯電話のみ。チャレンジ
する指示が携帯に届くたびに、
その土地の有名な歴史的建物や、風景、文化イベントなどを次から
次へと見つけ出していく。それも12時間以内に、
8つの挑戦をクリアしなければならない。成功すれば、
賞品としてペナン島の豪華ホテルでの休暇が待っているが、失敗すればその日のうちに本国へ送り
返されてしまう。
今回の挑戦者は、
ロンドンからやってきたニックと、
アレックス。舞台はマレーシアの首都クアラルン
プール(略名KL)。マレーシア、中国、
インド、
そしてヨーロッパの文化が融合し、ユニークかつ近代的な
急成長を続ける都市である。
クアラルンプールへやって来た2人に最初に指示されたのは、
「2人で30秒間セパタクローを
続ける」こと。耳慣れない言葉、
「セパタクロー」とは? 携帯電話のメールには詳しい内容までは、
指示されていないので、
まずは調べることから始めた2人。何人かの地元の人に訊ねると、セパタ
クローとはバレーボールと同様のルールで、手を使わずにサッカーのように竹のボールを蹴り続ける
球技だと分かる。
そこで、いざ挑戦をするものの、高度な技術が必要なため30秒も続けることが出来ない2人は、
ム
ング・タイ
チェイシ
第1の挑戦「2人で30秒間セパタクローを続ける」を時間節約のため、
あきら
めたニックとアレックスに、第2の挑戦の内容が届く。それは、
「自由が四辺を
持っている場所で、巨大なポールの下に行き、
ケラパを飲め」というもの。
“飲め”という指示から“ケラパ”は飲み物、
“自由”はマレーシアの独立と
関係があるのではないか、
と推量した後、地元の人たちに“ケラパ”はどんな
飲み物なのか、巨大なポールはどこにあるかを訊ね歩く。
そして、
“ケラパ”はココナツミルクであることを突き止め、巨大なポールも
発見した2人だが……。
時間の節約のため、
この挑戦はあきらめて次に進むことにした。
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