WP7 No.115J 「イスラム国」と有志連合の武力対決の中で 日本が目指すべき道 2015 年 3 月 21 日 世界平和アピール七人委員会 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 イラク・シリア領内に支配地域を持つ「イスラム国」 (IS、ISIS, ISIL)と、米国を 中心にした有志連合との武力対決が深まっている。2014 年 6 月の「イスラム国」樹立宣 言は、イラク第 2 の都市モスルの制圧に続くものだった。これに対して米国は 8 月から イラク領内の「イスラム国」支配地域を空爆、9 月には「イスラム国」の壊滅を目指す 有志連合を組織し、シリア領内の支配地域に空爆を拡大し、今や地上での攻勢も開始さ せている。有志連合メンバーは、直接の戦闘には参加しない日本なども含む約 60 か国・ 地域に達している。 一方 「イスラム国」による拘束者の殺害が相次いでいる。私たちは「イスラム国」 による拘束者の殺害とその場面の映像公開をとうてい受け入れることはできない。それ とともに私たちは 有志連合による空爆拡大は、一般市民の安全を犠牲にし、破壊する ものであって、国際人道法に反しているので支持できない。しかも空爆では相手を壊滅 させることはできず、力によって拠点都市の奪還を目指す計画は、市民の安全を根本的 に破壊し、社会の不安定性と危険性を拡散させるものだと考える。 振り返ってみれば、「イスラム国」も有志連合も、自らが是とする秩序を力によっ て他に押し広げようとしており、対立の裏で、相手に武器補給がおこなわれるといった 醜い行動も見え始めている。さらに、アルカイダの原点は、アフガニスタンの親ソ連政 府に対してパキスタンと米国が生み出したものであったし、「イスラム国」の原点は、 シリアの現政権に反対する米欧が育成してきた勢力と対イラク戦争から出現したもの だったことも忘れてはいけない。 今年 1 月 20 日には、 「イスラム国」によって日本人 2 人の拘束と身代金要求、殺害 予告が公開されたが、これは、日本が軍事協力を強めてきたイスラエルとその周辺国を 訪問中の安倍首相が、カイロで「ISIL がもたらす脅威を少しでも食い止めるため・・・ ISIL と闘う周辺各国に」人道支援を行うとスピーチを行った 3 日後のことだった。対 1 立する一方のみの支援は、他方から見れば敵対行為であり、人道的支援ではない。首相 は、中東諸国と激しく対立し、ガザで非人道的破壊をくりかえしているイスラエルの国 旗を背にして「テロには屈しない」と繰り返したが、2 人を救出するために何をしたの だろうか。日本政府は 2 人が拘束されていることを前年から把握していたのだし、2004 年以来人質を次々に拘束・殺害して映像を公開してきたアルカイダが、2004 年に拘束中 の日本人の殺害予告と共にイラクからの自衛隊撤退を要求した時に、小泉首相が要求を 拒否した後で、殺害される動画が公開されたことを政府が忘れていたはずはない。 首相は第 2 の人質殺害の報を受けて 2 月 1 日に開催した関係閣僚会議において「テ ロリストたちを決して許さない。その罪を償わせるために国際社会と連携していく」と の決意を表明したが、具体的に何をしたいのかが全く見えない。 今月末に開催を予定されている政府対応についての検証委員会と有識者の合同会 議が、あいまいさなく徹底的に検証を進め、国民に理解できる形で結果を発表すること を期待する。 この一連の事態から学ぶべき最大の課題は、今後このような不幸な事件がおこらず、 この地域の市民も含めて、安全で安心して生きていける世界をつくるために行動し、貢 献することであろう。第 2 次世界大戦後の世界は、「国際関係において、武力による威 嚇又は武力の行使を、 ・・・慎まなければならない」と決意して出発したのであったし、 日本も、世界に敵をつくらず、武力行使をしない日本国憲法の下で歩んできたはずだっ た。日本は、有志連合に組みするのではなく、距離を置いた上で、武力対決の連鎖を断 ち切らせるためのあらゆる手段の外交に積極的に貢献し、尽力すべきなのである。 まして日本の政府が日本国憲法を無視し、軽視して、自衛隊の邦人保護拡大や人質 の武力奪還を口実にした機能拡大への動きや情報開示の抑制、軍事力増強を狙うのは本 末転倒である。私たちは、外交軽視、武力強化の日本と世界を望まない。 連絡先:世界平和アピール七人委員会事務局長 小沼通二 e メール: [email protected] ファクス: 045-891-8386 URL: http://worldpeace7.jp 2
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