Ⅳ各学年の取組

Ⅳ各学年の取組
1年生の実践
1
主題名
みんなが使う 物(4-(1)公徳心・規則 の尊重)
(資料名「きい ろいベンチ」文溪堂)
2 主題設定の理由
(1)価値観
本 主 題 は , 低 学 年 に お け る 内 容 項 目 4 - ( 1 )「 み ん な が 使 う も の を 大 切 に し , 約 束 や
き ま り を 守 る 。」 の 価 値 を ね ら う も の で あ る 。 こ れ は , 社 会 人 と し て 生 活 す る 上 で 必 要 と
される公徳心や社会規範を守る ことのできる児童の育成を 目指している。低 学年 の児童は,
学校での 集団生 活を通 して社 会の基 本的なル ールを 学ぶ。 公共物 を大切 にし,人に迷惑を
かけない で互い が気持 ちよく 生活で きるよう に心掛 けるこ とは, 社会の 一員として守るべ
き公徳で ある。 さらに ,みん なと約 束したこ とや決 められ ている ことは しっかり守ろうと
する中で ルール の大切 さを理 解させ たい。そ のため には, 公共物 や公共 施設の使い方や利
用の仕方 に目を 向けさ せ,な ぜ大切 に扱わな ければ ならな いのか を十分 に考えさせること
が必要である。
低学年 の児童 は,ま だ自己 中心的 な面が強 く,自 分本位 な行動 をとる ことが多い。この
ことを考 慮し, 日常生 活にお ける身 近な出来 事を取 り上げ た資料 「きい ろいベンチ」を用
いて,公 共物の 正しい 使い方 に気付 いた男の 子の気 持ちや 行動を 考えさ せることにより,
みんなで使う物を大切に使おう とする気持ちを養いたいと 考え,本主題を設定した。
(2)児童観(男子12名 女 子13名 計25名)
本 学 級 の 児 童 は , 1 学 期 か ら 「 廊 下 を 走 ら な い 」「 チ ャ イ ム 着 席 を す る 」 な ど の 学 校 の
きまりを 守らな ければ ならな いこと を理解し ,実行 しよう として いる。 算数の「じこくと
じかん」 の学習 を通し て時間 の観念 も育ち, チャイ ム着席 も意識 してで きるようになって
きている 。体育 「鬼遊 び」や 「ボー ルゲーム 」の学 習では ,友達 と楽し く遊ぶ中でルール
を守る大 切さを 理解し ている 。国語 の「本は ともだ ち」の 学習な どで図 書室を利用すると
きには,場に応じたマナーがあ ることが分かり,実践でき ている。
しかし ,分か っては いても 自分の 興味のあ ること や楽し いこと がある とそれを優先して
しまい, ルール やマナ ーが守 れない こともし ばしば ある。 そのた びに反 省をし,改めよう
とするが なかな か改善 できな い児童 もいる。 また, 他者の 目があ るとで きるが,誰も見て
いないとできないこともある。
この ような 実態か ら児童 は,毎日 の生活 や学習 の中で 理解は していて も実際にできない
ことがたくさんあり,自己中心 的な考えの中で生活してい る。
そこ で本時 では, 生活す る中で自 分のこ とだけ でなく ,周り の人たち のことも考えて行
動するこ との大 切さに 気付か せなが ら,みん なが使 うもの を大切 にする 態度を養い,価値
理解を図っていく。
(3)資料観
「紙飛 行機を うまく 飛ばそ うとし て,泥だ らけの 靴のま まベン チに乗 ったり,ブランコ
に立ち乗 りした りして いるた かしと てつおの 二人。 泥だら けのベ ンチに 気付かず座ってし
まってス カート を汚し てしま った女 の子。そ のスカ ートの 泥を落 とすお ばあさんの姿を見
て 二 人 は は っ と す る。」 と い う , 日 常 的 に 起 こ り が ち な 事 実 を 内 容 と し て い る 。 本 資 料 の
ように自 分の遊 びに夢 中にな り,周 りの人に まで考 えが及 ばない という 場面は,児童の普
段の生活 の中で 往々に して見 られる ことであ り,女 の子の スカー トの汚 れに気付かなけれ
ば,自分 たちの 行動を 振り返 ること もなくす ぎてし まう日 常生活 のひと こまである。日頃
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よくある 自分本 位の欲 望や衝 動から ,他の人 のこと が考え られな くなり がちな児童の心理
や行動がよく表現されている資 料である。
そこで ,ベン チに泥 靴のま まあが ってしま ったた かしと てつお に焦点 を当てて,その行
動がいか に周り の人に 迷惑を かけて いるのか を考え させる ととも に,自 分自身の行為を思
い起こさ せ,公 共物を 使うと きの注 意や公共 物を大 切にし ようと する気 持ちを育てていき
たい。
3 指導方針
<本時>
【課題をつかむ】
○公共物 に対す る概念 がまだ 不十分 であると 思われ るので ,身の 回りに ある公共物から考
えさせる。
○「みんなが使うもの」の具体 例がすぐに思いつかない場 合は,こちらから例示する 。
○パネル シアタ ー風に 登場人 物の切 り抜き絵 や場面 絵,ベ ンチな どを提 示し,場面理解を
助ける。
【価値を追求する】
○話を場面ごとに区切り,場面 ごとに登場人物の気持ちを 考えさせていくようにする 。
○役割演 技を取 り入れ たり, マイク などの小 道具を 使った りして 登場人 物になりきり,登
場人物に共感でき るようにする。
○中心発 問では ,自分 本位の 行動が ,他人に 迷惑を かけて しまう ことが あることに一人一
人が気付けるよう にワークシートを活用する 。
○中心発 問では ,自分 の思い をすべ て出せる よう, 考える 時間を 十分に とり,机間指導で
声掛けをしていく 。
【価値の内面化】
○振り返 りの場 面では ,公共 物を大 切に扱え たよい 感情を 思い起 こさせ ,価値理解と実践
への意欲化につな がるようにする。
○身近に いる人 からの 手紙で 感謝の 言葉をも らうこ とによ り,み んなが 使うものを大切に
しようとする意識 を高められるようにする。
<事後>
○帰りの 会の「 今日の ありが とう」 などを使 って, みんな で使う ものを 大切にできた例を
教師が紹介し,児 童も意識できるようにする 。
4 本時の学習
(1)ねらい
(2)準 備
(3)展
みんなが使 う物を大切に使おうとする 態度を養う。
教師:切り 抜き絵,ワークシート,紙 飛行機
児童:筆記 用具
開
過程
学習活動(主な発問)
課
題
を
つ
か
む
1.みんなが使う物には
どんなものがあるかを
発表 する 。
(みんなが使う物って,
何が あり ま すか。)
予想される児童の反応
時間
指導上 の留 意点
・水 道
・ト イレ
・遊 具
・図 書室 の本
5
分
○身の回りには,み
んなで使う物がた
くさんあることを
意識 させ る 。
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価
値
を
追
求
す
る
2.資料「きいろいベン
チ」 を読 ん で話 し合 う。
①ベンチの上から紙飛行
機を飛ばして遊んでい
るときの二人の気持ち
を考 える 。
(ベンチの上から紙飛行
機を飛ばして遊んでい
るとき,たかし君とて
つお君はどんな気持ち
だっ たで し ょう。)
②服を汚してしまった女
の子 の気 持 ちを 考え る。
(服が汚れてしまった女
の子はどう思ったでし
ょう 。)
③そばにいたおばあさん
の気 持ち を 考え る。
(服が汚れてしまった女
の子を見て,どう思っ
たで しょ う。)
④女の子の服を汚してし
まったことに気付いた
ときの二人の気持ちを
考え る。
女の子の服をよごして
しまったことに気付い
たとき,二人はどんな
こ とを 考え たで し ょう。
( 中心 発問 )
価
値
を
内
面
的
に
自
覚
す
る
3.これまでの自分を振
り返 る。
(みんなが使う物を大切
に使うことができたこ
とは あり ま すか 。)
・高いところからだ
とよ く 飛ぶ なあ 。
・ベンチの上から飛
ばすのはおもしろ
いな 。
30
分
・汚れちゃっていや
だな 。
・お母さんにおこら
れる 。
・みんながつかうも
のなのに,めいわ
くだ な 。
・だれがベンチを汚
した の かし ら。
・か わい そう に 。
・し から れる か な。
・悪いことをしちゃ
った な 。
・ベンチの上から紙
飛行機を飛ばさな
けれ ば よか った な。
・ぼくたちが汚しち
ゃったからふいて
あげ よ う。
・汚してごめんなさ
い。
・トイレのスリッパ
をそ ろ えた 。
・ほうきが出しっぱ
なしになっていた
から , 片付 けた 。
10
分
○数名の児童に役割
演技させることで,
紙飛行機を飛ばす
ことに夢中でベン
チを汚しているこ
とに気付かない二
人の気持ちを引き
出す 。
○黒板に場面絵や切
り抜き絵を貼り付
けながら資料を提
示し,興味・関心
をも たせ る 。
○数名の児童に役割
演技させることで,
悲しい思いをして
いる女の子やおば
あさんの気持ちを
考え させ る 。
○ 自 分 本 位 の 行 動が ,
思いがけず他者に
迷惑をかけてしま
うことがあること
に,一人一人が気
付けるよう,ワー
クシートに記入さ
せる 。
○具体的な体験を発
表し合い,生活を
振り返ることがで
きる よう に する 。
○図書室がきちんと
使えていたことの
感謝の気持ちを知
らせ,みんなが使
う物を大切にしよ
うとする意識を高
められるようにす
る。
4.図書室の先生からの
手紙 を聞 く 。
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5
資料分析図
ね ら い:みんなが使うも のを大切に使おうとする態 度を養う。
授業の 意図:み んなが 使うも のに思 いが及 ばず,自 分本 位に考え て行動 してしまうこ
と (人 間理解 )が ,思い かけず 他人に迷 惑を かけてし まうこ とに気 付き,
みんなが使うも のを大切に使おうとする(価値理解)態度を養う。
中心 発問 :女 の子 の服 を汚し てしま ったこと に気 付いたと
き,二人はどん なことを考えたでしょう。
意
図 :自 分本 位の 行動が ,思い かけず他 人に 迷惑をか
け てし まう こと があ るこ と に気付 き, 自分の言
葉で考え表現す る。
(人間理解 )(価値理解 )
発問:服が汚れてしまった 女の子はどう思ったでしょ う。
意図 :み んな が使 うベ ンチが 汚れて いたこと で, 服が汚れ
てし ま った 女の 子の 気持 ちを 考えるこ とで ,公共物
の使い方が考えられ るようにする。
(他者 理解)(価値理解)
発問:みんなで使
う物を大切
に使えたこ
とがありま
すか。
意図:具体的な体
験を通して
生活を振り
返る。
(自己理解)
発問 :ベ ンチ の上 から 紙飛行 機を飛 ばして遊 んで いるとき
のたかし君たちはど んな気持ちだったでしょう 。
意図 :自 己中 心的 な行 動をし ている ときの気 持ち を引き出
す。
(人間理解)
6
授業記録(T:教師
C: 児童)
T:女 の子の服 をよご してし まった ことに 気付いた とき ,二人は どんな ことを考えた
でしょう。(中心 発問)
自分 本位 の 行動 が思 いが け ず他 者に 迷惑 をか けて し まっ たこ とに 気付き ,反省す る気 持
ちを考えさせる場面。
T:実は 二人と も,遠 くから 女の子 とおばあ さんを 見てい たんだ って。 服がよごれてやだ
なと思っている女の子を見て,二人はなんて考えたのかな。どんなこと思ったかな。
今から紙に書いてもらい ます。
スカートがよごれちゃった女の子はど
んな気持ちかな。
ベンチの上から飛ばすと紙飛行機が
遠くまで飛んだぞ。楽しいなあ。
あ~あ,スカートにどろがついちゃ
った。新しいスカートなのに。
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(以下,ワークシートを基に伝 え合い)
C:ぼく たちの せいで ,女の 子のス カートが よごれ ちゃっ た。だ からこ んどからベンチで
あ そばないようにしよ。
C:かわいそうだなー。あやま りたいけど,おこられるの
や だからなあ。
C:くつのまんまのらなきゃよ かった。あやまろう。
C:あーやんなければよかった。こんどからぜったいやらな
いぞー。
も うぜったいあんなことはしない ぞー。
C:てつだおうかな。かわいそ う。しなきゃよかった。
7
板
書
8 成果と課題(○成果 ●課 題)
○パネル シアタ ー風に 資料を 読み聞 かせるこ とで, 内容を よく理 解し, 登場人物の気持ち
が考えやすくなった。
○ベンチ や紙飛 行機な どの具 体物を 使って役 割演技 をさせ ること で,自 分の気持ちを素直
に表現する助けとなった。
○資料を 区切っ て読み 聞かせ ,その 後に考え させる ことは 1年生 の実態 に合っていて,内
容をよく理解させることがで きた。
○黒板に イラス トを貼 り付け たり, 動かした りしな がらパ ネルシ アター の舞台として使い
つつ, 子どもの 意見を 吹き出 しの形 で板書 すること で, 自分以外 の考え に触れふれ,考
えを広げることにつながった 。
●中心発 問の部 分で, 価値理 解と人 間理解ど ちらに 重点を 置くの かがあ いまいだった。そ
れによって役割演技で誰の気 持ちを考えさせるかが変わ った。
● 終 末 の 言 葉 が け が 「 ~ し ま し ょ う 」 と 価 値 の 押 し 付 け な っ て し ま い が ち な の で ,「 今 日
の 勉 強 を い か し て い け る と い い ね 。」「 い ろ ん な 考 え 方 が あ る ん だ ね 。」 な ど , 最 後 の 一
言に注意していきたい。
●「公共 物」を 正しく 捉える ことが まだ難し かった 。今回 は導入 で身近 な「物」から「公
共 物 」 の 話 題 に も っ て い っ た が ,「 場 所 」 か ら 入 る な ど , 実 態 に 応 じ て 例 示 す る も の を
選んでいけるとよい。
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