ニュースフラッシュ

2007年3月16日(金)
C
○Medical
Tribune Inc. 2007
第71回日本循環器学会総会・学術集会公認
編集・発行:株式会社 メディカルトリビューン
〒102-0084 東京都千代田区二番町2-1二番町TSビル
TEL 03-3239-7210(代表)
第71回日本循環器学会
総会・学術集会
ニュースフラッシュ
国際化時代の循環器学の新たな展開
New Directions in the Understanding and Management of Cardiovascular Diseases in the Globalization Era
JCS-ITC設立記念特別講演
神戸の学術祭典,クライマックスへ
本日
■18:20〜19:40 ■第 9 会場 ■同時通訳あり
心肺蘇生の最先端へ迫る
2 日目の本日は,朝 7 時30分から夜 8 時前まで,多数のプログラムが断続的に繰り広
げられる。第 4 会場では,栄えある真下記念講演(11:10〜)に続き,会長講演(11:55
−日本から世界へ,そして2005年から2010年へ−
〜)が開催される。さらに第1会場で総会(13:50〜)
,第 9 会場ではJCS-ITC設立記念
特別講演(18:20〜)が行われるなど,メインイベントが相次ぐ。参加者の往来が激し
日本循環器学会では2002年より心肺蘇
ではアジア蘇生協議会,日本蘇生協議会
さを増し,多くの会場が熱気に包まれるなか,神戸の学術祭典はいよいよ佳境へと向
生法普及委員会(2006年心肺蘇生法委員
会長である岡田和夫氏が国内での心肺蘇
かう。
会に改称,初代委員長:横山光宏氏/神
生法普及への取り組みとILCOR加入への
戸大学循環呼吸器病態学,現委員長:笠
道のりについて講演する。また,AHA
貫宏氏/東京女子医科大学循環器内科)
心肺蘇生法ガイドライン2005策定委員で
を立ち上げ,各種ガイドライン策定や会
あり,ILCORアメリカ代表を務める
員向けの心肺蘇生法普及を進めてきた。
Mary Fran Hazinski氏は,次回2010年の
シンポジウム2
本日
■13:50〜15:20 ■第 2 会場 ■英語
動脈硬化安定化への治療戦略
本年 3 月,同学会は米国心臓協会
CoSTR改訂を含めた心肺蘇生法の世界的
(AHA)と心肺蘇生法トレーニングセン
展望に関する講演を行う。同氏はクリニ
動脈硬化が一連の炎症性反応による疾
治療に結び付く有望な分子機序をめぐ
ター(ITC)の契約を締結,これまで外部
カルナーススペシャリストであり,1999
患と認識されてから,炎症過程の各段階
っては,次の 3 つの演題が用意されてい
団体に委託されていたAHA-ACLSプロバ
年からAHAの救急心血管治療委員会の
における関連因子の研究が精力的に行わ
る。アンジオテンシン II(AII)は動脈硬
イダーコースが,本学術集会よりJCS-
委員として,循環器専門医向けの緊急心
れている。座長を務める斎藤能彦氏は,
化促進因子として研究が進められている
ITCとして初めて実施されることになっ
血管治療ガイドライン編纂に携わってい
分子医学的研究の成果を研究者のみなら
が,それらは血管に焦点を当てたもので
た。笠貫氏によると,今後,全会員が循
る。
ず臨床家にも受け取ってほしいと, 悪
あった。山田浩之氏は骨髄のレニン・ア
環器救急医療の中心的役割を担うことを
笠貫氏は「本セッションが,心肺蘇生
化してゆく機序 ではなく, 治療ターゲ
ンジオテンシン系(RAS)に着目。AIIタ
目標に,同コースを専門医認定の必須項
法の普及のみならず日本でのエビデンス
ットとなりうるメカニズム の観点から,
イプ 1 受容体(AT1)欠損マウスの骨髄を
目としていく方針だという。
作成に関して,すべての循環器専門医が
動脈硬化の安定化を考える本シンポジウ
用いた検討で明らかにした,動脈硬化形
一方,世界に目を向けると,AHA心
積極的かつ指導的な役割を果たすことの
ムを企画した。
成における骨髄RASの意義と治療ターゲ
肺蘇生法ガイドラインの発表を皮切り
きっかけとなれば」
「看護師であり,緊急
ットとしての可能性を解説する。
に,エビデンス集積の国際的機運が高ま
心血管治療の専門家としても第一線で活
り,各地域の学術団体からなる国際蘇生
躍されているHazinski氏のお話を聞ける
最初に,共同で座長を務めるPeter
Libby氏より,動脈硬化の安定化に関す
一方,末期の大動脈瘤では,薬物治療
る最新知見と治療戦略について,基調講
は非現実的とみなされてきた。青木浩樹
連絡委員会
(ILCOR)
が結成された。以降,
貴重な機会」と多くの会員,コメディカ
演が行われる。
氏は,細胞内情報伝達因子であるc-Jun
ILCORは科学的な国際コンセンサス
ルの参加を呼びかけている。
続く 2 題のテーマは,治療の評価や予
N-terminal kinase(JNK)の活性亢進を薬物
(CoSTR)を作成し,加盟
後予測にきわめて有用な,動脈硬化病変
で抑制することによって,マウス大動脈
団体が有する心肺蘇生法
の非侵襲的かつ可視的な評価法である。
瘤の退縮に成功した。ここでは研究結果
指針の統一と研究成果の
動脈壁の病理組織像を類推すること
を踏まえ,JNKの大動脈瘤における意義
報告・討議を行ってき
(virtual histology)が可能な血管内超音波
と治療戦略を探る。さらに近年,特に高
た。そして,それらに基
検査(IVUS)は,冠動脈疾患における画
齢者において,大動脈に生じた動脈硬化
づいてCoSTRを改訂して
像診断法として定着した。杉山正悟氏は
が大動脈弁に及び,大動脈弁狭窄に至る
いくという,世界規模の
IVUSにintegrated backscatter(IBS)解析を
症例が増えている。福田恵一氏は,血管
基盤が完成しつつある。
組み合わせ,動脈硬化巣の安定性をより
新生抑制因子chondromodulin-1(ChM-1)
定量的に評価する方法の有用性を報告す
が心臓弁の機能維持に関与することを示
つわる内外の最新動向を
る。財田滋穂氏が紹介する光干渉断層計
し,心臓弁膜症治療の新たな戦略になる
示すべく,本セッション
(OCT)は,超音波より波長の短い近赤外
線を利用した血管内イメージング法。
こうした心肺蘇生にま
可能性を解説する。
斎藤氏は本シンポジウムについて「研
IVUSの10倍高い画像分解能により,プ
究者には刺激的なトピックを提供し,臨
ラークの性状,内容,線維性皮膜の厚さ
床家には診療の基盤となる研究成果を確
まで測定できるとして注目されている。
認する場としたい」と語っている。
市民公開講座
明日
第6回心肺蘇生法市民公開講座
第6回禁煙推進市民公開講座
―あなたの勇気が命を救う―
―きれいな空気を吸って,若々しく
美しくおいしく,健康に―
●日時:17日13:30〜16:00
●会場:神戸国際展示場 2 号館 3 階
3A会議室
●日時:17日15:00〜17:00
●会場:神戸ポートピアホテル本館
地下 1 階偕楽 1
①特別講演「新しい心肺蘇生法:AEDは
『命の教育』
」
①喫煙による血管の老化と心臓被害
青木 浩樹(山口大学分子脈管病態学)
②心肺蘇生法実習:胸骨圧迫とAEDによる
簡単な心肺蘇生法の実際
③知って得する禁煙治療
福田 恵一(慶應義塾大学再生医学)
③まとめ
座長:斎藤 能彦(奈良県立医科大学第一内科)
Peter Libby(Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School, USA)
演者:Peter Libby(Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School, USA)
杉山 正悟(熊本大学循環器病態学)
財田 滋穂(和歌山県立医科大学循環器内科学)
山田 浩之(京都府立医科大学循環器病態制御学)
②肌の健康−喫煙はしわの原因?
④香りと味を楽しむ
〜コーヒーソムリエの禁煙〜
第71回日本循環器学会 総会・学術集会 ニュースフラッシュ No.2
美甘レクチャー
急性冠症候群の分子機序
学
このMMPsは細胞外マトリックスの分解
ーゲン蓄積が有意に多いことが明らかに
を亢進するので,これもプラークの脆弱
なった。なお,おもに日本人研究者らの
化につながるという。
検討から,MMPsのなかでも特にMMP13に特異的な抵抗性を付与したマウスで
MMPsによるコラーゲン分解亢進が
プラークの脆弱化を招く
は,動脈硬化巣でのコラーゲン蓄積が多
く,MMP-13の活性化がプラーク脆弱化
15日の美甘レクチャー(座長=神戸大
栓により惹起され
この平滑筋細胞やマクロファージの産
に強く関与することが示唆された。また,
横山光宏氏)では,Peter Libby氏が
る。プラークの脆
生するMMPsが動脈硬化巣におけるコラ
MMP-14はMMP-2の活性化因子であり,
急性冠症候群(ACS)の分子機序に関す
弱化には,種々の
ーゲン分解に関与しているという仮説に
これも動脈硬化巣におけるコラーゲン分
る最新の知見を報告した。同氏は特に炎
炎症細胞の放出す
ついて,in vivoで直接的証左を得るため,
解に強くかかわると見られている。
症の役割に焦点を当て,炎症により活性
るサイトカイン類が関与すると考えられ
Libby氏らは以下のような実験を行った。
化されたmatrix metalloproteinases(MMPs)
る。例えば,動脈硬化巣における脂質含
対象は,遺伝子操作によりMMPsのよう
コラーゲン分解の亢進が,動脈硬化巣に
が,プラークの脆弱化に深く関与するこ
有量の多いプラークでは,活性化したT
なコラーゲン分解酵素に特異的な抵抗性
おけるプラーク脆弱化の大きな要因とな
とを明らかにした。
炎症細胞の放出する
サイトカイン類が引き金に
致命的なACSの多くは,冠動脈の狭窄
より,脆弱化プラークの破裂で生じた血
Peter Libby氏
以上のような結果から,MMPsによる
リンパ球からIFNが放出され,それが
を付与した動脈硬化易発症マウス。催動
っていることは疑いを入れない。では,
平滑筋細胞による間質コラーゲンの合成
脈硬化食を一定期間給餌し,動脈硬化巣
臨床的にMMPsの活性をモニターするこ
を抑制する。これは,プラークの線維性
におけるコラーゲン蓄積を野生型の動脈
とは可能なのか。Libby氏は最後にこの
被膜を薄くし,プラークの脆弱化を招く。
硬化易発症マウスと比較した。
点に触れ,最近開発された近赤外線蛍光
一方で,IFNは平滑筋細胞やマクロフ
ァージによるMMPsの産生を刺激する。
プレナリーセッション8
その結果,野生型マウスに比べてコラ
法(NIRF)が有望だと述べた。
ーゲン分解酵素抵抗性マウスでは,コラ
こで柴信行氏らはより現実的な方法とし
本邦における臨床試験の現状と課題
調した。
て,コホート研究とRCTを組み合わせた
最先端医療機器や新薬の開発では,国
試みを進めている。CHART-2研究では
際共同研究が重要なステップとなる。齋
東北地区の慢性心不全患者 1 万例を登
藤滋氏は,新しい薬剤溶出性ステント
録。予後や危険因子を検討すると同時に,
(DES)の臨床試験を,日米共同で進めて
医師主導による治験の広がり,国際共
めには,公的ファンドの拡大,試験の登
一部の患者をピックアップし,ARBの有
いるが,それぞれの国の事情,規制の違
同試験への参加など,最近,日本の臨床
録・結果公表の徹底,実施態勢の整備な
用性を調べるRCTを実施するというも
いなどから困難も多い。齋藤氏はこれを
試験に新しい動きが見られる。これをど
どが今後の課題」と語った。
の。柴氏は,「このアプローチによって
克服し,研究課題を発展させるには「互
臨床試験の隘路を切り開きたい」と抱負
いの協調関係を明確にし,意思疎通を図
を語った。
り,すべてのプロセスで研究者同士が協
う推進し,迅速な新薬開発や新しい治療
臨床試験を実施するためには,その根
法の導入に結び付けていくのか。15日に
拠となる循環器データベースの構築が欠
開催されたプレナリーセッション 8 では,
かせない。それに大きな役割を果たして
国立循環器病センターでは,臨床試験
循環器領域の臨床試験にかかわる大学,
きたのがJapan Multicenter Investigation
を円滑に遂行するため2004年に臨床研究
最後に西川泰弘氏が,米国との比較か
公的病院,民間病院,製薬企業の関係者
for Cardiovascular Disease(JMIC)だ。1986
センターを設けた。おもな役割は,臨床
ら日本の臨床試験の課題を指摘。最大の
が,それぞれの立場から現状と直面する
年にスタートし,急性心筋梗塞に対する
試験に必要な各種の態勢整備・運用,被
問題点は,症例数の少なさとスピードの
問題,将来展望について意見を述べた。
t-PAの有効性,冠動脈疾患合併高血圧を
験者の保護,研究の科学的な質の確保,
遅さであり,これを改善するには,①臨
対象としたACE阻害薬とCa拮抗薬の比
臨床研究にかかわる教育・啓発活動など
床試験に対する医師の認識を改める,②
較など多くの試験を通して,日本発のエ
だ。朝倉正紀氏は,この臨床研究センタ
臨床試験を業績として評価する,③産・
結果公表の徹底,
実施態勢の整備が課題
力できる基盤づくりが大事」と述べた。
ビデンスを生み出してきた。由井芳樹氏
ーがコーディネートした多施設共同試験
官・学の連携がポイントであるとした。
まず上嶋健治氏が,最近日本で実施さ
はこれらの成果を簡単に紹介したうえ
J-WIND-1の運営状況などを報告。それ
こうした発表を受けて,座長の堀正二
れた臨床試験をレビューし,その傾向や
で,臨床試験で最も大事なのは「参加医
を踏まえて,質の高いエビデンス構築
氏は「臨床試験の態勢は以前に比べ整備
課題を明らかにした。それによると,
師が興味を持ちうる未解決テーマの選
のためには「治験実施のインフラ整備,
されたが,まだ問題も山積している。エ
1989年以降に行われた循環器領域の臨床
択」とし,「確立した臨床試験システム
臨床研究に携わるスタッフの認識の向
ビデンス構築にはさらなる力の結集が必
試験は117件で,うち無作為化比較試験
でそのようなテーマを検討すれば,循環
上,国民の啓発などが欠かせない」と強
要」と述べ,セッションを締めくくった。
(RCT)は83件。対象患者が300例以上の
器医療の進歩につながる多くのデータが
大規模試験は90年代には 3 件だったが,
2000年に入って 7 件と増加した。ただ,
その多くは企業の資金によるものだっ
得られるだろう」と指摘した。
新しいアプローチで隘路を開く
た。また,117試験を精査すると,結果
臨床試験で最も信頼性が高いのはRCT
の公表がなされない試験が少なからず存
である。しかし,患者の理解が得られに
在した。上嶋氏は,こうした分析を踏ま
くい,資金が限られているなどの理由に
えて「より質の高いエビデンスを得るた
よって,RCTの実施は容易ではない。そ
座長:堀
小川
演者:上嶋
由井
柴
朝倉
齋藤
西川
正二(大阪大学循環器内科学)
聡(慶應義塾大学呼吸循環器内科)
健治(京都大学疫学研究情報管理学)
芳樹(京都大学循環器内科学)
信行(東北大学循環器病態学分野)
正紀(国立循環器病センター心臓血管内科)
滋(湘南鎌倉総合病院心臓センター)
泰弘(三共株式会社研究開発統轄本部)
1 日本循環器学会(JCS:1935年 4 月設立)と米国心臓協会(AHA:1925年 5 月設立)の会員数の差は? A. JCSのほうが約1,000人多い B. AHAのほうが約2,500人多い C. AHAのほうが約 3 倍多い
2007年3月16日(金)
循環器疾患管理をチーム医療から考える
職種を超えた連携が不可欠
近年,循環器疾患に対するチーム医療
の重要性が強調されている。15日に行わ
パスを他の循環器疾患や,生活習慣病の
管理まで拡大させたい」と述べている。
れた「循環器疾患管理をチーム医療から
看護師の三浦稚郁子氏は,入退院を繰
考える」では,具体的な事例検討を通し
り返す原因として,体重管理,食事療法,
て,看護師や薬剤師,管理栄養士などさ
飲水制限,適正な運動量などについての
まざまな職種の取り組みが紹介された。
理解の不足や,家族や社会の協力の乏し
継続的管理を必要とする患者が増加
冒頭,松田晋哉氏が基調講演を行った。
の場合,夫の協力が得られにくい例が多
い。再入院の防止には,疾患教育を徹底
し,リハビリや運動療法を確実に実施す
により冠動脈疾患が増加しており,一方,
ることが大事だとした。
急性期医療の進歩によりその救命率も高
薬剤師の室井延之氏は,在宅での服薬
まっている。すなわち,継続的管理を要
コンプライアンス低下が最大の問題では
する患者が増えているわけだ。この点を
ないかと推測。また,加齢による肝・腎
踏まえ同氏は,虚血性心疾患の予防から
機能低下なども入退院の繰り返しに関与
リハビリまで,ケアの全過程をチームで
すると述べた。管理栄養士の鳥井隆志氏
入退院を繰り返す高齢の
慢性心不全患者のケアをどう考えるか
新神戸から三宮,神戸新港を結ぶのがフラワーロード。
東遊園地のあたりは街路樹が美しい(写真右)
。この公園
の西側,南京町に至る一帯が旧居留地である。東遊園地
という奇妙な名前も,米国人の開いた居留地時代の運動
場に由来する。石造りの洋館が散在するこの界隈,かつ
てのモダン神戸を探す散歩ができるはずだ(写真下)
。
さを挙げる。特に症例のような高齢女性
日本では高齢化や生活習慣の欧米化など
行う態勢を作る必要があると述べた。
フラワーロードから
旧居留地へ
は,栄養サポートチーム(NST)の一員と
して行っている指導のポイントを紹介。
高齢者では一部のサプリメントや健康食
でき,さらには地域連携によって患者主
強いられている状況で,それでも各職種
品の弊害も見られるため,これについて
体の医療を提供できる」とした。以上を
の専門家が循環器疾患のケアに懸命に取
事例検討では,石田達郎氏が入退院を
も聴取する必要があるとした。理学療法
踏まえ石川雄一氏は「在院日数の短縮が
り組んでいることを実感した」と語った。
繰り返す高齢の慢性心不全例を提示(症
士の齋木しゅう子氏は,慢性心不全患者
例)。そのケアについて,さまざまな職
の運動療法について発表。加齢に伴う脊
種の専門家に見解を求めた。
柱変形が胸郭ポンプ作用や筋ポンプ作用
心不全患者を対象とした病診連携の実
績を持つ医師の西上和宏氏は,本症例の
症例.慢性心不全の73歳女性(神戸市在住,主婦)
病
2. 糖尿病,高脂血症
3. 腹部大動脈瘤
一方,医療ソーシャルワーカーの根岸
が多い点を重視。クリニカルパスを用い
留美氏は,医療・看護・介護などの側面
て専門医・かかりつけ医・患者を結ぶ,
からの退院支援の重要性を強調。「適切
地域連携の重要性を説いた。「この連携
な退院支援によって再入院の予防が期待
4. 慢性腎不全(保存期)
Voice
竹中 千恵氏
私は現在,重症集中ケア認定看護師とし
て急性期循環器病棟で働いています。15日
は,コメディカルセッションのポスター演
題で,座長を務めさせていただきました。
そのなかで急性,重症の循環器疾患の患者
さんに対しては救命にとどまらず,その後
も見据えた多角的なケアが重要であると再
認識させられました。例えば,栄養管理も
急性期から積極的に進める必要がありま
す。本学術集会で得たものを,自施設の取
り組みにも生かしたいと思います。
1. 慢性心不全(虚血性心筋症)
に影響を及ぼすことを紹介した。
ような高齢患者では入退院を繰り返す例
(京都府立医科大学
病院看護部)
名
の低下,後負荷の増大など,呼吸循環系
家 族 歴
父:脳出血,母:慢性関節リウマチ,兄:脳梗塞
家族構成
夫と二人暮らし,子供3人は独立
日常生活
近所での買い物,家事(炊事など)は可能
最近 3 年で 9 回の入院歴。いずれの入院時も酸素吸入と,利尿薬,強心薬
などの静脈内投与により軽快し退院している
Muhammad Husni氏
(神戸大学大学院感染病理学
教育研究分野)
2005年10月,Hasanuddin大学(インドネ
シア)から神戸大学に留学中です。博士課
程で病理学を専攻していますが,特に循環
器疾患の病態生理に関心を持っています。
そこで今回初めて,この学術集会に参加し
ました。私にぴったりのセッション
(Featured Research Session 02)があり,
ぜひ聴いてみようと思っています。16日は
実験で参加できませんが,17日の日本・イ
ンドネシアジョイントシンポジウムをとて
も楽しみにしています。
座
長:大内 尉義(東京大学加齢医学)
石川 雄一(神戸大学保健学科)
基調講演:松田 晋哉(産業医科大学公衆衛生学)
プレゼンテーター:石田 達郎(神戸大学循環器内科)
ディスカスタント:西上 和宏(済生会熊本病院心臓血管センター循環器科)
三浦 稚郁子(榊原記念病院看護部)
室井 延之(赤穂市民病院薬剤部)
鳥井 隆志(県立西宮病院栄養指導課)
齋木 しゅう子(国立病院機構豊橋医療センター)
根岸 留美(東京大学医学部附属病院地域医療連携部)
2 3 人の小説家のうち神戸市で生まれたのは? A. 田辺聖子(『感傷旅行』『ジョゼと虎と魚たち』など) B. 筒井康隆(『時をかける少女』『文学部唯野教授』など) C. 宮本輝(『道頓堀川』『錦繍』など)
※答えは次ページ下をご覧下さい。
第71回日本循環器学会 総会・学術集会 ニュースフラッシュ No.2
プレナリーセッション3
トピック3
本日
本日
■8:30〜10:00 ■第 3 会場 ■同時通訳あり
■16:30〜18:00 ■第 3 会場 ■英語
心房細動の集学的治療戦略
CRT-Dの適応をどう考えるか?
心房細動(Af)に関しては,最近10年
とレートコントロールによる予後を比較
間で新たな知見が集積され,治療の方向
した結果を紹介する。続いて小板橋俊美
性も大きく変わってきた。まず,発生機
序の解明が進み,Afが持続すると心房
医療機器を用いた循環器疾患治療が,
に対して栗田隆志氏は,CRT-Dの有効利
大きな転機を迎えている。1980年代に登
用のためにはリスクの層別化が必要と考
氏が,Af 合併心不全患者における血漿
場した植え込み型除細動器(ICD)は,欧
える。この観点から,心不全患者を心室
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の最
米などで行われた臨床試験から,心臓突
性頻脈性不整脈の種類によって分類し,
にリモデリングが生じ,ますますAfが発
適レベルについて,Af のタイプ(慢性,
然死予防における高い有効性を証明して
CRTまたはCRT-D植え込み後の予後を比
生しやすくなる Af begets Af の概念が
発作性)別に検討した成績を提示する。
きた。また,心不全に対する新治療法と
較。有効なCRT-D治療が期待できる例を
定着した。また,リズムコントロール
アブレーションの話題を取り上げるの
して導入された両室ペースメーカー
検討する。清水昭彦氏は,日本不整脈学
(抗不整脈薬を用いた洞調律維持治療)と
が,熊谷浩一郎氏と桑原大志氏。熊谷氏
(CRT)については,心室内伝導障害を有
会によるICD植え込み症例のインターネ
レートコントロール(ジギタリスなどに
は,アブレーション時の食道へのダメー
する重症心不全患者の心機能やQOLを有
ット登録(ICD-WEB)データから,これ
よる心拍数調節治療)を比較した臨床試
ジを回避するため,全肺静脈を含む左房
意に改善することが示されている。そし
まで登録されたCRT-D症例の実態を報告
験が行われ,両者に差がないことが示さ
後方を完全に隔離する新しい手法(Box
て,心不全患者では心室細動による突然
する。最後に青沼和隆氏が,CRTが必要
れた。非薬物療法については,アブレー
Isolation)を考案,その臨床成績を披露す
死が多いという特徴から,CRTにICD機
なうっ血性心不全患者におけるCRT-Dの
ションによる治療成績が向上し,発作性
る。桑原氏もまた,食道関連の合併症を
能を付加したCRT-Dが開発され,昨年 8˜
適応に関して,現時点での見解を述べる
Afの 7 割前後が治療可能になったと言わ
防ぐ観点から,食道温度計測下での肺静
月に日本でも利用可能となった。しかし
ことになっている。
れる。塞栓症の予防に関しても,抗凝固
脈隔離術の意義を検討,その結果を紹介
日本では,心不全患者におけるICDの適
本セッションの座長を務める相澤義房
療法の重要性,リスクの層別化などに関
する。最後に能澤孝氏が,非弁膜症性
応が定まっていないうえ,CRTの長期予
氏は,「CRT-D治療はまだ端緒についた
するデータがもたらされてきた。本セッ
Af患者の塞栓症リスクについて,凝血マ
後改善効果に関しても,十分なデータが
ばかりだが,これまでの使用経験から,
ションは,Af治療に関するこうした知見
ーカーと臨床的リスクファクターを組み
得られていないのが実情である。では,
その有効性,問題点などについて活発な
を集約・整理し,今後目指すべき方向性
合わせて評価する新しい指標CHADS2の
こうした状況下で,CRT-Dをどのように
議論を行いたい」との抱負を語り,でき
を見出すことを目的に企画された。
有用性を,5 大学共同研究の成績から説
使っていけばいいのか。本セッションは
るだけ多くの心不全,不整脈の専門医に
明する。
この点を明らかにすべく企画された。
出席してもらいたいとしている。また,
冒頭のState-of-the-Artでは,Rodney
H. Falk氏がこれまで明らかになったAf治
座長を務める井上博氏は,「現時点で
まず,David B. De Lurgio氏が,大規模
ICD,CRTと同様,CRT-Dを必要とする
療をめぐるエビデンスをレビューし,今
の標準的なAf治療の整理,そして新し
臨床試験成績を紹介しながら,海外での
のは,循環器疾患の終末像を呈する患者
後を展望する予定である。次に山下武志
い知識の吸収に本セッションを役立てて
CRT-D適応の現状を説明する予定であ
であることを指摘。「そこに至る事態を
氏が,心血管疾患患者の予後を調べるた
ほしい」と述べ,不整脈の専門医はもち
る。
防ぐ重要性を認識していただく意味で
めに自施設で構築したデータベース
ろん,循環器の勉強を始めた若い医師,
(Shinken Database 2004)を用いて,日本
人Af患者におけるリズムコントロール
続いて,日本での状況について 4 氏が
も,循環器疾患進展のあらゆる過程で治
広く循環器全般を専門とする医師に聴講
発表を行う。池主雅臣氏は,自施設での
療にかかわっている方々に足を運んでも
を呼びかけている。
ICD,CRT治療例を対象に,どのような
らいたい」と述べている。
患者でCRT-Dが必要かを評価する。これ
座長:井上 博(富山大学第二内科)
Rodney H. Falk(Harvard Vanguard Medical Associates, USA)
座長:相澤 義房(新潟大学器官制御医学講座)
演者:Rodney H. Falk(Harvard Vanguard Medical Associates, USA)
新田
山下 武志(心臓血管研究所付属病院循環器科)
隆(日本医科大学心臓血管外科)
演者:David B. De Lurgio(Emory University, USA)
小板橋 俊美(北里大学循環器内科学)
池主 雅臣(新潟大学保健学科)
熊谷 浩一郎(福岡大学循環器内科)
栗田 隆志(国立循環器病センター心臓血管内科)
桑原 大志(横須賀共済病院循環器センター内科)
清水 昭彦(山口大学保健系学域)
能澤 孝(富山大学第二内科)
青沼 和隆(筑波大学循環器病態医学)
ト
ア
ロ
ー
ド
元町駅
コム・シノワ
観音屋
阪神元
グレゴリー・コレ
きな
の好
私
駅
三ノ宮
三宮
元町
街
町
岸線
ア・ラ・カンパーニュ
阪急三宮駅
商店
鉄海
地下鉄
西神・山手線
三宮駅
町駅
南京
地下
フーケ
ボックサン
旧居留地
・ 大丸前
大丸4F
ダニエル
センタ
ー街
フ
ラ
ワ
ー
ロ
ー
ド
駅
ケーニヒスクローネ
美侑(みう)
三宮駅
そごうB1(高杉)
FACTORY Shin
三宮
・
花時計
前駅
ポ
ー
ト
ラ
イ
ナ
ー
独断的三宮スイーツ地図
神戸は今も昔も,外国人の多い街である。彼
らが明治時代に洋菓子作りの技術を伝え,その
おいしさを日本人に教えた。例えばモロゾフや
ゴンチャロフは神戸に来たロシア人が戦前に創
業したし,ユーハイムはドイツ人の菓子職人が
興した。戦後に日本人が始めたアンリ・シャル
パンティエやアンテノールも,阪神間生まれで
ある。在留外国人が神戸の味覚を育て,そこか
ら独自の洋菓子文化が花開いたと言えるだろう。
そのなかで,私のお薦め店はケーニヒスクロ
1 B…JCSは約 2 万1,500人,AHAは約 2 万4,000人であり,大差ありません。 2 C…あとの 2 人は大阪生まれです。
ーネ,ダニエル,高杉。ケーニヒスのクローネ
はいまや神戸の名物。1 本84円という値段も嬉
しい。ダニエルは美しいムース類が有名だが,
個人的にはウナギの寝床!(チョコレートケー
キです)。高杉は本店が御影と少々遠いが,そ
ごうで買うことができる。はしたなく店名を列
挙してしまったが, 神戸はケーキの水準が高
く,無名の店でも失望することは少ない。ぜひ
覗いてみてください。
(山下 智也/神戸大学循環呼吸器病態学)