平成 18 年度廃棄物処理対策研究推進事業 平成 18 年度 廃棄物対策研究発表会 抄 録 集 平成 18 年 10 月 財団法人 廃棄物研究財団 大量生産、大量消費、大量廃棄を見直し、循環型社会の構築を目指し、平成 12 年に循環 型社会形成推進基本法が制定されました。そして同法に基づく循環型社会形成推進基本計 画では、循環型社会の具体的イメージ、数値目標、国、地方公共団体、民間団体、国民が果 たすべき役割が定められています。 また、平成 17 年には廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく、廃棄物の減量等に係 わる国の基本的な方針の改正が行われ、一般廃棄物の排出抑制や再生利用の推進、適正か つ最適な循環利用及び処分システムの構築が求められていることが明記されました。 このような状況の変化の中で、環境省は、循環型社会形成の推進や廃棄物に係る諸問題 の解決に資する研究事業、技術開発事業等を推進するため、廃棄物処理等科学研究費とし て「廃棄物処理対策研究事業」、「廃棄物処理対策研究推進事業」、「次世代廃棄物処理技 術基盤整備事業」の 3 事業に助成を行っています。 当財団では、平成 18 年度廃棄物処理対策研究推進事業の交付を受け、平成 17 年度廃棄 物処理等科学研究費補助金により実施された「廃棄物処理対策研究事業」、「次世代廃棄物 処理技術基盤整備事業」の研究成果を幅広く一般に公開し、多くの方が日本における最先端 の研究テーマに関する情報を得て、さらなる廃棄物処理に係る研究や技術開発推進に資する ことを目的に、この度研究発表会を開催ことといたしました。 本冊子は、同研究発表会の開催にあたり、平成 17 年度廃棄物処理等科学研究費補助金 により実施された廃棄物処理対策研究事業 50 テーマ、次世代廃棄物処理技術基盤整備事 業 6 テーマについて、研究等の概要を取りまとめたものです。関係各位のご参考に供され、広 くご活用いただければ幸いです。 平成 18 年 10 月 財団法人 廃棄物研究財団 理 事 長 杉 戸 大 作 発 表 内 容 平成 18 年度廃棄物対策研究発表会(平成 18 年 10 月 30 日開催)において、研究成果 の発表を行った 15 テーマについて取りまとめたものです。 目 次 1.嫌気性アンモニア酸化型メンブレンバイオリアクターを核とした新規浸出水処理 システムの開発と DNA チップを用いた処理水の安全性評価手法の確立 代表研究者:渡辺 義公(北海道大学大学院) 1 2.ダイオキシン類汚染水質・土壌の浄化バイオリアクター構築のための研究 代表研究者:高橋 惇(高砂熱学工業(株)) 5 3.下水処理場をモデルケースとした太陽光利用水素生産システムの構築 代表研究者:田路 和幸(東北大学大学院) 9 4.無電解ニッケルめっきにおけるミニマムエミッション化の研究 代表研究者:田中 幹也((独)産業技術総合研究所) 16 5.医療廃棄物の戦略的マネジメントに関する研究 代表研究者:田中 勝(岡山大学大学院) 20 6.水蒸気吸引式流出油回収機構の研究開発 代表研究者:藤田 勇((独)港湾空港技術研究所) 7.使用済み発泡スチロール(EPS)油化装置の実用化開発 24 * 事業所名:(株)ティラド 27 8.生ごみ処理機の微生物活動評価を通しての再検討 代表研究者:西野 徳三(東北生活文化大学) 31 9.素材構成と地域性を活かしたポリエステル廃棄物からの BTX 転換処理技術の開発 代表研究者:吉岡 敏明(東北大学大学院) 38 10.アスベスト廃棄物の無害化条件に係る緊急研究 代表研究者:酒井 伸一(京都大学) 43 11.研磨スラッジ産業廃棄物の再資源化及び利用技術に関する研究 代表研究者:松崎 邦男((独)産業技術総合研究所) 12.高塩素含有廃棄物処理拡大のための脱塩ダスト除塩システムの開発 47 * 事業所名:住友大阪セメント(株) 51 13.残留性化学物質の物質循環モデルの構築とリサイクル・廃棄物政策評価への応用 代表研究者:酒井 伸一(京都大学) 56 14.乾式メタン発酵法による高効率原燃料回収技術の開発 * 事業所名:(株)タクマ 60 15.生ごみと他の廃棄物系バイオマスの混合処理による高効率メタン回収技術の開 発* 事業所名:鹿島建設(株) 64 *印は 「次世代廃棄物処理技術基盤整備事業」で実施されたものとなっており、それ以外 は「廃棄物処理対策研究事業」で実施されたものとなっている。 嫌気性アンモニア酸化型メンブレンバイオリアクターを核とした 新規浸出水処理システムの開発と DNA チップを用いた処理水の 安全性評価手法の確立 研究期間(西暦)=2003−2005 研究年度(西暦)=2005 研究代表者=渡辺 義公(北海道大学) 共同研究者=岡部 聡(北海道大学)、木村 克輝(北海道大学) 1. 研究目的 廃棄物管理型処分場から発生する浸出水のより一層の高度処理が求められている。特に近年、 廃 棄 物 管 理 型 処 分 場 か ら 発 生 す る 浸 出 水 は 、 内 乱分 泌 撹 乱 化 学 物 質 ( endocrine disrupting compounds, EDCs)や医薬品由来化合物(pharmaceutically active compounds, PhACs)など、微量有 機汚染物質の主要発生源の一つとなっている可能性があり、浸出水よる水環境の汚染が懸念され ている。そこで本研究は、廃棄物管理型処分場からの浸出水中の内乱分泌攪乱物質(EDCs)や医 薬品化合物(PhACs)およびアンモニア性窒素の高度処理を、メンブレンバイオリアクター(MBR) と NF/RO 膜処理を併用することで達成しようとするものである。さらに、処理水の安全性(毒性) 評価を行うために、DNA チップを用いた新規多指標型バイオアッセイ手法の開発を行うことを目 的とする。 本年度は、実都市下水処理場に設置した MBR プラントにより処理された都市下水をろ過原水 として NF/RO 膜による医薬品の除去試験を行い、NF/RO 膜による医薬品除去性および除去性に 影響する因子について検討を行った。アンモニア性窒素除去に関しては、昨年度までに回分培養 及び連続培養において ANAMMOX 細菌の効率的な集積に成功したが、運転を継続する中で急激 な ANAMMOX 活性の低下が観察された。この急激な活性低下の原因を解明することが必要不可 欠であるため、本年度は、反応槽内で生成される ANAMMOX 細菌由来の溶存性有機物(SMP)が ANAMMOX 活性に及ぼす影響について検討を行った。DNA チップを用いた新規多指標型バイオ アッセイ手法の開発に関しては、昨年度から継続して化学物質のタンパク質変性作用及び酸化ス トレスについて特徴的な遺伝子発現プロファイルの解析を行い、マーカー遺伝子の選定を行った。 さらに、DNA チップを用いた発癌性評価法確立のための基礎的データとして、発癌性物質曝露ヒ ト由来細胞の遺伝子発現解析を行い、発癌性評価における有用性を検討した。 2. 研究方法 メンブレンバイオリアクター:標準活性汚泥法を採用している実下水処理場の最終沈殿池流出 水および MBR 処理水を採取し、医薬品濃度を測定した。処理場の最初沈殿池流出水の一部は場 内併設の MBR プラントに原水として供給されている。本研究では、先行研究例において水環境 中で存在が報告されており、誘導体化-GC/MS 法により測定が可能である 6 種の酸性医薬品 (clofibric acid, ibuprofen, naproxen, ketoprofen, mefenamic acid, diclofenac)を検討対象とした。ポリ -1- アミド製 NF 膜(UTC-60)および RO 膜(UTC-70HB, UTC-70UB)を用い、MBR 処理水 10Lを ろ過原水として 48 時間のクロスフローろ過実験を行った。1種類の膜について、採取時期の異な る試料水を用いた3回のクロスフロー実験を行った。 ANAMMOX リアクター:次に、ANAMMOX 細菌の回分培養における突発的な活性低下の原因 を検証するために、本研究室で馴養しているカラム型連続リアクター内のバイオマスを約 20 mg 植種し、回分活性試験を行った。実験に用いた系列には、乳酸を添加した系(6 系列)及び活性の低 下が確認された回分培養時の上澄水(DOC 濃度 15 mg/L)を添加した系(6 系列)を用意した。また、 それぞれ 3 系列には従属栄養細菌の増殖を阻害するために抗生物質であるペニシリン G を最終濃 度が 0.5 g/L になるように添加した。なお活性試験には 100 mL のバイアル瓶を用い、NH4+-N 及び NO2--N をそれぞれ 60 mg-N/L になるように添加した無機培地を作成し 37℃で静置培養を行った。 カラム型リアクターを用いた連続培養実験では不織布を生物膜担体として充填した容積 0.8 L の リアクターを用いて NH4+-N 及び NO2--N を添加した人工無機培地を 37℃で連続通水した。植種 汚泥には都市下水処理場脱窒槽汚泥を用い、水理学的滞留時間(HRT)を 8-0.3 h に段階的に短縮し た。 バイオアッセイのための使用細胞と曝露物質:ヒト肝癌由来細胞株 HepG2 を MEM 培地を用い て、飽和水蒸気、5% CO2 存在下、37℃で培養した。培地は 48 時間毎に交換し、細胞密度が 80% 飽和に達した時点で継代を行った。本研究では発癌イニシエータのマイトマイシン C(MMC)を 使用した。細胞を 24 時間培養後、各物質の濃度を段階的に調整した培地で培養を行った。曝露後 の細胞生存率をニュートラルレッド法を用いて算出し、細胞生存率が 70∼80%となる物質濃度を 曝露濃度とした。さらに、上記物質と毒性を比較するため、フェノール、過酸化水素を使用した。 DNA チップ解析:前述の方法で決定した条件で上記物質を曝露した細胞群および非曝露細胞群 から、RNeasy Mini Kit (Qiagen)を用いて、total RNA を抽出した。DNA チップ解析には Human Genome Focus Array (Affymetrix、搭載遺伝子数 8793)を用い、添付の操作手順に従って、cRNA 合 成、標識化、プローブとのハイブリダイズを行った。得られたデータは解析ソフトウェア Avadis (Strand Life Science)を用いて、遺伝子発現量の数値化および統計学的処理を行った。 3. 結果と考察 NF/RO 膜による医薬品の除去特性 昨年度までに検討した通り、MBR を用いても除去が十分になされない医薬品類が下水中には含 まれている。本年度の分析では、検討対象とした医薬品の内、特に ketoprofen と diclofenac の除 去が十分ではなく、MBR 処理水中からそれぞれ 100 ng/L 程度の濃度で検出された。MBR 処理水 をさらに NF/RO 膜処理することで、これらの医薬品濃度は検出限界付近まで減少させることが可 能であった。MBR 処理水中に残存する ketoprofen と diclofenac 以外の医薬品についても、NF/RO 膜処理によって濃度を大幅に低減させることが可能であった。 今回クロスフローろ過実験に用いた NF/RO 膜は、公称脱塩率の異なるものである。本実験で得 られた各医薬品の除去率と公称脱塩率の間には、直接的な関連性が認められなかった。すなわち、 clofibric acid の場合を除いて、最も脱塩率の低い NF 膜(UTC-60)を用いた場合に医薬品の除去 率は最も高くなった。NF/RO 膜を用いて MBR 処理水をろ過する際の医薬品除去率は、一般に除 -2- 去性能の指標とされている脱塩率のみによって予測することが困難であることが分かる。このよ うな結果が得られた原因の一つとして、MBR 処理水中に mg/L のオーダーで残存する有機物の影 響が考えられる。MBR 処理水ろ過実験直後にろ過原水を変更(純水に低濃度医薬品をスパイク) した実験、新膜を用いて低濃度医薬品をスパイクした純水のろ過実験を行った結果、MBR 処理水 中に残存する有機物が医薬品と共存する結果、また有機物が膜表面に付着して膜の表面特性を改 変した結果、NF/RO 膜処理における医薬品除去性が影響されることが示された。 細胞由来有機物の ANAMMOX 細菌活性におよぼす影響 これまでの研究で、回分及び連続培養において、活性が低下した系では共通して乳酸が 0.3-1 mM 生成していることが確認された。したがって、乳酸を 1 mM 添加し ANAMMOX 活性に与える影 響を調べた。その結果、ペニシリン G を添加していない系では、硝酸性窒素の著しい減少及び ANAMMOX 活性の低下が確認された。しかし、ペニシリン G を添加した系では ANAMMOX 活 性の低下は確認されなかった。このことより、集積培養時に確認された ANAMMOX 活性の低下 は乳酸が直接的な原因物質ではなく、乳酸の存在によって NO2--N を競合する脱窒細菌の増殖が 間接的に ANAMMOX 活性を阻害することが確認された。 次に、カラム型バイオリアクターの連続運転実験を行った。その結果、窒素除去速度が 120 日 目には 1.5 kg-N/m3/day に達したが、その後ほぼ一定に推移した。また、ANAMMOX 細菌は不織 布下部のみに高濃度で存在していた。回分活性試験により SMP が ANAMMOX 活性を阻害するこ とが示唆されたため、連続培養において HRT を短縮し、系内の SMP 濃度を希釈した。その結果、 順調に窒素除去速度が上昇し、247 日目(HRT 0.3 h)には 26.0 kg-N/m3/day に達し、ANAMMOX 細 菌は不織布全域に増殖した。さらに系内の DOC 濃度を比較すると 2.1 mg/L (8 h)、1.4 mg/L (4 h)、 0.6 mg/L (1 h)と HRT を短縮した結果、系内の DOC 濃度が減少する傾向にあった。系内の DOC 濃 度を低く保つことで窒素除去速度が上昇し ANAMMOX 細菌を高濃度に集積培養することに成功 した。 DNA マイクロアレイによる発癌作用の評価 各発癌性物質曝露細胞から得られた遺伝子発現プロファイルのうち、対照系と比較して 2 倍以 上の有意な発現変動(p<0.05)を示した遺伝子は合計 961 遺伝子であった。この中から下記の目的に 従い遺伝子を選択し、階層型クラスター解析を実施した。発癌作用を他の毒性作用から区別する 目的で、マイトマイシン C(MMC)において有意に変動し、かつ上昇・低下変動の挙動の一致する 遺伝子(85 遺伝子)を選択した。これらの遺伝子の中には腫瘍形成もしくは抑制に関わる遺伝子 である DUSP5、FHL2、AKAP12、CDKN1A 等が含まれており、本物質の発癌性を反映していると 考えられる。これらの遺伝子を用いた階層型クラスター解析の結果、本物質はフェノール、過酸 化水素と明らかに異なるクラスターを形成した。これにより、本解析において発癌性物質を他の 物質から区別することが可能であることが示唆された。今後、他の毒性作用(DNA 障害性等)や 物質(有機溶媒、界面活性剤等)について同様の検討を行うことにより、総合的な多指標型バイ オアッセイの開発が可能になると考えられる。本研究により DNA チップを用いた遺伝子発現解 析が物質の発癌性評価において有用であることが示唆された。また発癌機構の推定、および発癌 -3- プロモータの検出にも有効であり、バイオアッセイとして強力な手法となり得る可能性が示され た。 4. 結論 本年度は、実下水処理場内に設置した MBR 処理水をろ過原水とした際の NF/RO 膜処理による 医薬品除去性について検討した。NF/RO 膜処理を導入することにより、MBR 処理水中に残存す る医薬品濃度を大幅に低減させることが可能であることを確認した。また、一般に NF/RO 膜性能 の指標として多用される脱塩率は、医薬品の除去性とは必ずしも連関しないことが示された。 MBR 処理水中には医薬品以外にも主に微生物代謝産物により構成される高分子量有機物が mg/L のオーダーで存在しているが、これらの有機物により医薬品が収着される結果、また高分子量有 機物が NF/RO 膜表面に蓄積することで NF/RO 膜表面特性が改変される結果、医薬品の NF/RO 膜 処理における除去性が影響される可能性が示された。窒素除去に関する研究では、SMP が ANAMMOX 活性に及ぼす影響について検討を行った。その結果、ANAMMOX 細菌により生成さ れる SMP により脱窒細菌との競合が生じること及び SMP 成分には ANAMMOX 活性を直接阻害 する物質が含まれている可能性が示唆された。しかしながら、連続培養系において HRT を短縮す ることで SMP による ANAMMOX 活性の阻害を軽減し、窒素除去速度が世界最高速である 26.0 kg-N/m3/day に達した。今後は SMP 成分の特定を行う。最後に、DNA チップを用いた遺伝子発 現解析が物質の発癌性評価において有用であることが示唆された。また発癌機構の推定、および 発癌プロモータの検出にも有効であり、バイオアッセイとして強力な手法となり得る可能性が示 された。 -4- ダイオキシン類汚染水質・土壌の浄化 バイオリアクター構築のための研究 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=高橋 惇 (高砂熱学工業株式会社 総合研究所) 共同研究者=大塚祐一郎(独立行政法人 森林総合研究所) 片山 義博(東京農工大学 亀山 敏治(環テックス株式会社) 中村 雅哉(独立行政法人 保科 定頼(東京慈恵会医科大学 峯木 茂 (東京理科大学 大学院 生物システム応用科学教育部) 森林総合研究所 きのこ微生物研究領域) 臨床検査医学講座) 理工学部 応用生物科学科) 1.研究目的 本研究成果の事業化に向けて,16 年度までに獲得したデータを統合して,試験規模の前処理装 置と培養槽から構成されるダイオキシン類汚染水質・土壌(河川底質を含む)浄化システムを設 計すること,本浄化システムの適用限界を考慮したビジネスモデルを特定し,精緻に事業採算性 を検証することを目的とした. 2.研究の方法 ①SH2B-J2 菌株の病理的安全性を確証する. ②ダイオキシン類汚染水質・土壌浄化システムに供給する SH2B-J2 菌株の菌体または菌抹の添加 量依存性,ダイオキシン濃度依存性を実用規模で検証する.システムを構成する装置をスケー ルアップ・設計するための関係式を特定する.浄化ビジネスモデルを精緻化した上で,浄化処 理単価を試算して事業採算性を検証する. ③SH2B-J2 菌株によるダイオキシン類の代謝中間体物質を同定してその代謝経路を特定すること で,この菌株を用いた微生物処理の適用限界を特定する. ④ダイオキシン類汚染水質・土壌を提供できる現地で浄化システムを構築し,前処理装置と気泡 塔型培養槽とを連動し,ダイオキシン類汚染水質やスラリー状の汚染土壌・底質の浄化機能と 設計性能および装置の連続運転性を検証する. 3.結果と考察 ・SH2B-J2 菌株についてマウスを用いた単回投与毒性試験(急性毒性試験)と反復投与毒性試験 を行った.65℃での培養ではミドウスジ菌以外の菌はほとんど発育しない.マウスに経口投与 した SH2B-J2 菌株は,殆どが消化されているがごく少量の菌体は腸内で生存していた. ・急性毒性試験のマウス群と反復投与毒性試験のマウス群の体重変化,一般状態変化の差異は認 められなかった.マウスの腸内に残存した菌の回収試験でも両群に有意差は認められなかった -5- ことから,SH2B-J2 菌株には急性毒性が認められないことが検証された.なお千葉大学真菌医 学研究センターからは「好熱菌のヒトへの病原性は測定不能であり,病原性があるとは考えが たい.」との参考意見を得ている. ・SH2B-J2 菌株は生菌および粗酵素の状態でダイオキシン様蛍光アッセイ基質の分子内エーテル 結合を開裂して分解産物を生成した. ・SH2B-J2 菌株はダイオキシン様蛍光アッセイ基質である MCDDES,DCDDES,TCDDES のいず れも分子内エーテル結合を切断して分解産物を生成した.SH2B-J2 菌株の分解酵素は蛍光基質 の分子内エーテル結合にアタックして分解産物として,4MU を生成する還元的分解能力を有す ることが示唆された. ・活性誘導物質が存在せずとも検出感度が最大になる条件として共存培養時間は 2 時間,ダイオ キシン様蛍光アッセイ基質の添加量は 0.0025∼0.005%,インキュベート時間は 48 時間である ことを特定した. ・SH2B-J2 菌株のダイオキシン分解酵素は,基質との親和性(酵素と基質の接触効率)の問題で あり,基質を一旦両親媒性の DMSO に超音波と熱をかけて溶解させ,同じく熱をかけて活性化 状態にした粗酵素と混合させることで基質との親和性を改善できた. ・今後に酵素と基質の親和性を高めるような条件の検討は必要である. ・界面活性剤で SH2B-J2 菌株の分解活性が上昇すること,膜/細胞質画分に分離すると細胞質画 分では分解活性が得られないことから,細胞膜に分解酵素が局在している可能性が高い. ・分離した膜画分と細胞質画分を再度混合させると分解活性が戻ることから,第二・第三の分解 反応を引き起こす酵素は,細胞質内に局在している可能性が高い. ・対照系では 14C 指標の基質に係わるスポットしか認められなかったこと,試験系では分解産物 と考えられるスメア状のスポットが複数認められたこと,スメア状のスポットは 4C 指標の基 質の濃度を上げても基質のみでは認められないこと,ならびに酵素のみの展開ではスポットが 認められないことから,SH2B-J2 菌株は 14C 指標 2,3,7,8-TCDD を分解し分解産物を生成する能 力を有することが検証された. ・SH2B-J2 菌株が飛灰共存下で生育した時に特異的に発現するタンパク質スポットを見出した. 今後にアミノ酸シークエンサーでこれらのタンパク質スポットにおける N 末端付近のアミノ酸 配列を決定し,あるいは Trypsin 消化後の MS 分析によって相同タンパク質を検索することで, SH2B-J2 菌株のどのようなタンパク質がダイオキシン分解に関与しているかの推定が可能にな った. ・従来方式に対して技術優位性を担保できる浄化処理単価の上限を 10 万円/トンとした.浄化所 要日数を 49 日間と定めた時,汚染土壌 1,000 トンの浄化処理単価は 4 万円/トン,10,000 トン 以上の浄化処理単価は 3 万円/トンに漸近したことから.従来方式と比較すると十分に安価であ り,事業として成立する可能性が極めて高いと判断する. ・1人のシステム管理者が 6 人のチームを率いて運転管理する場合の管理可能な培養槽の槽数を 20 槽(初期設備投資金額:約 2.6 億円)としたとき,浄化所要日数 49 日間の場合,事業採算 の範囲は,汚染土壌重量で 100 トン以上 4,000 トン未満であった. ・同一条件で,1,000 トンの汚染土壌の浄化処理費用内訳を分析した.浄化所要日数は機材のレ -6- ンタルの都合上,端数を日切り上げている.反応時間の変化が浄化所要日数に及ぼす効果が緩 慢であることから,初期ダイオキシン濃度の影響は離散的であり,その感度は鈍い. ・1,000 トンの汚染土壌を浄化対象として,ダイオキシン濃度 2,000 pg-TEQ/g を規制値の 1,000 pg-TEQ/g まで浄化する場合,一般的な 40%∼60%のシルト比率範囲では浄化処理単価に 及ぼす感度は高くないことを検証した. ・菌抹で分解する模擬汚染土壌のダイオキシン濃度や培地濃度の均一性を担保するために,模擬 汚染土壌を一定時間馴染ませることが必要不可欠である. ・分解温度はこれまでの研究で得られた 65℃が適している. ・模擬汚染土壌の pH はなるべく中性域であることが望ましい. ・模擬汚染土壌 1,000 kg に対して,SH2B-J2 菌株の超音波破砕物または低温乾燥や凍結乾 燥した菌抹を 10 k g の割合で添加した場合,培養槽温度 65℃で,約 50%のダイオキシ ン類の分解が期待できる. ・焼却飛灰と赤真砂土(購入土)の混合で 3 種類の模擬汚染土壌を作成し.①白色飛灰(焼却炉 中にアミン系触媒を添加したものでアルカリ性飛灰)→WA 土,②赤色飛灰(焼却炉中に鉄触 媒を添加したものでアルカリ性飛灰)→RA 土.③EP 灰(電気集塵機で集められたもので中性 飛灰)→EP 土 ・汚染模擬土壌における摩砕処理の有効性は,摩砕処理前土壌と300μm以上の砂礫分画と300μ mふるい下のシルトを多量含む分画のダイオキシン類の濃度およびダイオキシン毒性等量の分 析の結果から,ダイオキシン毒性等量基準で95%以上がシルトを多量含む分画に濃縮されてい ることを確認した. ・重金属イオンを多量に含むEP土の浄化試験では,SH2B-J2菌株の増殖がまったく認められなか った. ・硝酸を用いて中和した後に,重金属イオン等を洗浄・除去した3種類の模擬汚染土壌のうち, WA土でのみSH2B-J2菌株のコロニーが認められた. ・前処理と培養槽の連動による模擬汚染土壌の浄化処理実験では,複数の好熱菌による競合的増 殖による生育阻害が顕在化し,SH2B-J2 菌株の寡占的増殖が認められなかった.今後に前処理 条件の再検討が必要である. 4.結論 (1)SH2B-J2 菌株の病理学的安全性を検証し,ダイオキシン類の微生物浄化に適用できる微生 物であることを検証した. (2)SH2B-J2 菌株によるダイオキシン様蛍光アッセイ基質の分解活性能を確認し,酵素活性の 初発が細胞膜に,続く分解活性は細胞質にあることを検証した. (3)SH2B-J2 菌株による 14C 標識 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin の分解生成物を見出したこ とから,自然系のダイオキシン類にも分解活性があることを検証した. (4)二次元電気泳動法によるタンパク質の網羅的解析により,PCDD 分解時に特異的に増える スポットを見出し,アミノ酸配列解析,Data Base を使用した similarity search から,ダイオキ シン類の分解に関わる膜タンパクや GST を取得する技法を確立した. -7- (5)ダイオキシン類汚染土壌・底質の浄化処理に関する事業採算性の範囲を浄化処理単価 10 万円/トン以下とすると,汚染土壌 100 トン∼4,000 トンの市場に適用可能であることを明ら かにした. (6)SH2B-J2 菌株が焼却飛灰中では生育できないこと,汚染土壌の pH を中性に近づけ 65℃の 環境条件下で,理想的には 50%程度のダイオキシン毒性等量の減少が期待できることを明ら かにした. (7)現地処理型浄化システムの構築を目指した前処理装置と気泡塔型培養槽の連動でダイオキ シン類汚染土壌に含まれる重金属イオン濃度の測定を含む生育条件の事前確認の重要性が 確認された. (8)摩砕処理で汚染土壌から砂礫とシルトリッチ成分に分級することが,処理対象の汚染土壌 の減容に役立つことが確認された.なお,前処理装置および気泡塔型培養槽の連続運転性を 検証した. -8- 下水処理場をモデルケースとした太陽光利用水素生産システムの構築 研究期間(西暦)=2005−2007 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=田路 和幸(東北大学大学院環境科学研究科) 共同研究者=山崎 仲道(東北大学)、浅賀 喜代志(帝京科学大学) 、西岡 守 (阿南高専) 、 土屋 範芳(東北大学)、井上 千弘(東北大学)、井奥 洪二 (東北大学) 、 山崎 友紀、(大阪府立高専)、花田 智(産総研) 、岸本 伊藤 信幸、(JSR 株式会社)、府高 三千夫(武蔵野環境整備株式会社) 章(日鉄鉱業㈱) 、 1.研究目的 我々は、下水処理場を舞台に硫化水素から水素を取り出す研究を進めている。この研究は、太 陽光という無限に存在する自然エネルギーを活用して水素を製造することに加え、有害物質であ る硫化水素を水素の製造過程で分解し無害化してしまうこと、さらに副生成物として得られる硫 黄クラスターは、重金属イオンの回収、さらに汚泥に含有するイオウ濃度を増加させれば、硫化 水素の発生の増加に伴い、汚泥の減少につながるなど、新たな有価資源の生成と環境問題となっ ている汚泥の減少をもたらす可能を秘めているという点である。つまり、本研究は、環境の修復 や資源の獲得など、大きな付加価値を併せ持つ水素製造システムの基盤構築を最終目的としてい る。すなわち、下水汚泥が、水素製造の重要な役割を担える可能性について報告する。 2.研究方法 本研究組織は素材工学、材料化学、無機化学、生物工学、プロセス工学、環境工学の各部門の 研究者、技術者を結集した構成からなり、以下 3 項目の実施を通じて太陽光利用水素生産システ ムの構築をめざしたものである。図 2-1-1 に研究実施体制の概略を示す。また、各研究者が分担 した内容は以下の通りである。 高効率水素生産プロセスの確立:液相反応により Pt 担持ストラティファイド CdS 光触媒粒子の 大量合成を行い、安定した品質の触媒粒子製造技術を確立する[岸本担当] 。この触媒粒子を透明 樹脂中に固定化した薄膜を作成し[伊藤担当]、硫化物イオンを含む弱アルカリ溶液中で太陽光照 射により水素生産を行い[田路担当]、その結果を触媒粒子と薄膜の製造にフィードバックして、 高効率水素生産プロセスの確立を行う。 硫化物イオン再生:水素生産の過程で副産物として生成するポリ硫化物を、水熱反応[山崎・ 井奥担当]ないし微生物反応[井上担当]により硫化水素(硫化物イオン)に還元させて、水素 原料として循環利用する。低コストで水熱反応を実現させるため、地熱を利用するジオリアクタ ープロセス適用の検討を行う[土屋担当]。微生物反応に用いる高能力硫酸還元菌の系統学的分類 と機能評価を行う[花田担当]。硫酸還元菌の飼料となる有機酸類を下水汚泥の水熱処理により作 成する[山下担当]とともに、硫酸還元菌用担体を原料の一部として下水汚泥を用いて製造する [西岡担当]。 -9- システムの最適化:複数の下水処理場において硫黄物量バランスを調査解析する[府高担当]。 各要素試験の結果に基づいて、システムから発生が想定される廃棄物の固定化処理技術を検討す る[浅賀担当]。また、各要素試験の結果をベースとして、連続運転を想定したシステムの最適化 を行う[田路担当]。 高効率水素生産プロセスの確立 光触媒粒子の大量合成 (日鉄鉱業・岸本) 硫化物イオン(水素原料)再生 硫酸還元菌による再生 (東北大・井上) 光触媒粒子の薄膜化 (JCR・伊藤) 系統学的分類と機能評 価(産総研・花田) 光触媒による水素の生産 (東北大・田路) 下水汚泥からの微生物担体 の製造(阿南高専・西岡) 水熱反応による再生 (東北大・山崎) ジオリアクタープロセス の設計(東北大・土屋) 下水汚泥からの微生物飼料の 生産(大阪府立高専・山下) 廃棄物の固定化処理 (帝京科学大・浅賀) 連続運転想定時のシステム設計 (日立エンジニアリング・渋谷) 下水処理場における硫黄物量バランス の作成(武蔵野環境整備・府高) システムの最適化 図 2-1-1 研究実施体制の概略 3.研究結果 3.1 高効率水素生産プロセスの確立 粒径5nm 程度のナノサイズの CdS 超微粒子がカプセル状に配列した構造を取っている Pt 担持 ストラティファイド CdS 光触媒(波長520nm 以下の可視光を利用可能)を図 3-1-1 に示す製造 過程により作成した。この過程は液相反応であり、目的の光触媒を大量合成できることを確認し た。合成した光触媒の透過型電子顕微鏡写真を図 3-1-2 に示す。この光触媒は SH-イオンを含む アルカリ溶液中で太陽光を照射すると、図 3-1-3 に示すように4時間の反応時間で 220ml の水素 を発生させ、1時間、照射面積1㎡あたりに換算すると約7リットルの水素を発生させる能力を 有していた。 -10- また、反応副生成物としてはポリ硫化物イオン(Sn2-)の生成していることを確認した。さらに水 素発生効率を上昇させるために、反応溶液の条件を検討した結果、チオ硫酸イオンを添加するこ 図 3-1-1 Pt 担持ストラティファイド CdS 光触媒粒子の製造 図 3-1-2 光触媒粒子の電子顕微鏡写真 とにより水素の発生量が 15%程度向上することが明らかになった。また、最適 SH-イオン濃度を 検討したところ、0.1M付近の比較的高濃度のところでもっとも効率のよい水素発生が得られた。 さらに、実験データの解析に計算化学の手法を利用し、詳細な反応経路の解明を行った。 一方、この光触媒作成の際に助触媒として担持させる白金のコストが高いことが問題となった ため、白金担持を必要としない 光触媒の検討を行った。白金の 代わりに電子伝導特性に優れた カーボンナノチューブを担持す る方法、水酸化物を前駆物質と して Zn と Cd の混合比を変えた ZnS、CdS 固溶体微粒子を用いる 方法をそれぞれ検討し、水素発 生量はまだ十分でないものの CdS 超微粒子と同様の水素発生 機能を示すことを明らかにした。 高い水素発生活性を示す CdS 光 触媒微粒子を走査型透過電子顕 微鏡で分析したところ、内壁部 分に Cd 元素と酸素元素の濃度 が高いことが判明した。このこ 図 3-1-3 各種光触媒粒子による水素生成量の比較 とから、光触媒を調製する際に 用いた酸化物が内側に残存し、 -11- それによりストラティファイド壁の内部に酸素の濃度勾配が生じ、それが電場勾配となって内側 に電子を引き付けるために、水素の発生効率が向上したものと結論した。 大量合成した CdS 光触媒粒子を透明樹脂中に固定化した薄膜を作成した。この薄膜を用い、模 擬反応液中で太陽光を照射し水素発生を調べたとこ ろ、最大値としては 1 ㎡、1 時間あたり 7 リットル の水素発生量が得られた。また、この薄膜を組み込 んだ照射面積1m2 規模の水素発生装置(図 3-1-4) を作成して、太陽光照射実験を繰り返し実施した。 純粋な硫化水素溶液を用いた実験は東北大学環境科 学研究科屋上で、また実際の下水処理場から発生す る硫化水素を吸収させた溶液を用いた実験は仙台市 の南蒲生下水処理場内で実施した。その結果、時間、 m2 あたり最大7リットルの水素発生量が得られるこ とを実証した。ただし反応サイクルを重ねるにつれ 徐々に触媒活性が劣化することが明らかとなった。 この理由を考察したところ、触媒粒子中に担持させ た Pt ナノ粒子が硫化物イオンないしポリ硫化物イ オンを含アルカリ溶液に接触していることが原因と 図 3-1-4 照射面積1m2 規模の水素発生装 考えられた。触媒活性劣化の問題を根本的に解決す る方策として、2 槽式反応セルの開発を行った。こ れは、陽イオン交換膜で隔てた2つの溶液槽にいれたストラティファイド CdS 光触媒粒子薄膜と 白金板を電極で結び、太陽光の照射面にストラティフ ァイド CdS 光触媒粒子薄膜を配置するものである。 CdS 光触媒粒子側には硫化水素イオンを含むアルカリ溶液 を満たし、白金板側には希硫酸溶液を満たして、反応 を行わせるもので、電子の入口としてのストラティフ ァイド光触媒と電子の出口としての Pt を完全分離す るものである。この 2 槽式反応セルを用い、水素発生 実験を行った結果、これまで検討してきた単一槽内で 太陽光照射実験を行った場合とほぼ同等の水素発生速 度が得られ、かつ反応サイクルを重ねてもほとんど触 媒活性が劣化しないことが明らかとなった。 3.2 硫化物イオン再生 水熱反応 を利用 した 硫化物イオ ン再生 では 、図 図 3-2-1 流通式水熱反応装置 3-2-1 に示す流通式水熱反応装置を設計・製作し、単体硫黄と水を出発物質として基礎的な反応 条件とメカニズムを追跡した。図 3-2-2 は強アルカリ条件下で反応温度を90℃から250℃ま で変化させ、単体硫黄を 0.1g 加えて水熱反応を行わせた場合の結果で、縦軸は硫化水素の生成量 -12- を示している。170℃以上の強アルカリ条件下では、硫化水素がよく生成し、最大の生成率は約6 0%となった。また主要反応生成物が硫化物イオン(S2-)とチオ硫酸イオン(S2O32-)であること、 中間生成物として亜硫酸イオン (SO32-)が生成し、亜硫酸イオ ンと元素硫黄が反応してチオ硫 酸イオンが生成することを明ら かにした。一方酸性側の条件下 では、硫化物イオンと硫酸イオ ン(SO42-)がほぼ3:1のモル 比で生成した。170℃程度の比較 的低温でも反応が進行するため、 地熱地帯の使用済みの地熱井を 利用して硫黄やポリ硫化物イオ ンの還元が可能であると考えら れる。また、ポリ硫化物の試薬 を出発物質として実験を行った 図 3-2-2 水熱反応による硫黄の還元(硫黄量 0.1g) 場合、強アルカリ条件下では硫黄の場合と同様の反応経路を経由して硫化物イオンとチオ硫酸イ オンが生成し、硫黄を用いた場合より硫化物イオンの生成比が高くなることを明らかにした。さ らに光触媒を用いて水素を発生させた後の反応液を用いて、同様の水熱反応条件で硫化物イオン の再生を試みたところ、水素発生で生成したポリ硫化物のほぼ全量が反応して、硫化物イオンと チオ硫酸イオンに変換した。すなわち、水熱反応により光触媒反応後の廃液の再生が可能である ことが示された。 硫黄酸化物の生成を抑制するために反応系にアルコ ール類と尿素を添加して硫黄の還元促進を検討した。 容量 40ml のハステロイ C22 オートクレーブにメタノー ル、エタノールないしプロパノール 30%水溶液 15ml、 尿素 9.4mg、硫黄 5mg を入れ、気相を窒素ガスで満た し反応温度 200℃で所定時間反応させた。その結果、 アルコールとしてプロパノールを用いた場合、プロパ ノール+尿素添加により弱アルカリ条件で、反応時間 6時間後には硫黄をほぼ 100%水熱還元することがで きた。この結果、有機物添加により水熱反応による光 触媒反応後の廃液の再生 が可能であることが示さ れ、今後反応系の還元剤 図 3-2-4 硫酸還元菌培養装置 として下水汚泥を利用す ることが期待できる。 図 3-2-3 -13- T2 株の電子顕微鏡 微生物反応を利用した硫化物イオン再生では、まず自然界からポリ硫化物還元能力を有する硫 酸還元菌のスクリーニングと単離を行った。すでに単離されている T2 株以外にもポリ硫化物還 元能力を有する硫酸還元菌を単離することができたが、硫化物イオン生成速度は T2 株がもっと も高かった。図 3-2-3 に T2 株の電子顕微鏡顕微鏡写真を示す。16SrRNA 遺伝子配列に基づく T2 株の同定を行ったところ、Clostridium 近縁種の新種であることが特定された。この菌株を用いそ の生育条件の検討を行ったところ、ポリ硫化物イオンの他に、硫酸イオン(SO42-)、亜硫酸イオ ン ( SO32- )、 チ オ 硫 酸 イ オ ン (S2O32- )を還元して生育する 12 こと、有機物として乳酸以外に 10 酢酸やエタノール等の多種のも なった。このことは、T2 株が有 8 S2-[mmol] のを利用できることが明らかと 6 機物を水熱処理して得られる有 4 機酸類を利用して生育できるこ 2 とを示しており、余剰の下水汚 泥を T2 株の飼料原料として利 用可能であることを示唆してい る。また、図 3-2-4 に示す硫酸 0 0 50 100 図 3-2-5 150 200 250 time[h] 300 350 400 450 硫酸還元細菌による硫化水素生成実験 還元菌培養装置を使用し、T2 株の硫化物イオン生成速度向上を図るため、ポリ硫化物と硫酸還元 菌が必要とする栄養分を含む模擬液からの硫化物イオン生成を検討したところ、最大で細胞、時 間あたり 2×10-15 mol の硫化物イオン生成量を得ることができた。しかしながら、反応初期に誘 導期が見られること、生成物である硫化物イオン濃度が上昇するにつれ反応が阻害される傾向が 見られるなどの問題点があり、さらに効率改善を行う必要がある。そこで、より硫化物耐性の強 い細菌を探索するため、仙台市南蒲生浄化センターから採取した活性汚泥をもとに硫酸還元細菌 の集積培養を行ったところ、高い硫化水素生成能を持つ培養系が得られた。この集積培養を用い、 図 3-2-4 の反応装置を用いて、温度30℃、pH7.4 に制御し、経時的に硫化水素濃度の測定を行っ た。その結果、図 3-2-5 に示すように反応初期を除いて 0.01mmol/l・h 程度の硫化物イオン生成速 度となり、かつ硫化物イオンの濃度が高くなっても反下水道終末処理場応の阻害は認められなか った。この場合、硫酸還元細菌のエネ ルギー源、炭素源としては活性汚泥が 図-8施設別硫化水素発生割合 平成16年2月測定 使用されており、新たな有機物を添加 しなくても硫酸還元細菌が培養できる 3% 30% ことが示された。 3.3 システムの最適化 7% 9% 合計 88.0kg/日 0% 実際の下水道終末処理場において利 用可能な硫化水素量を把握するため、 51% 埼玉県の2カ所の下水道終末処理場に 図 3-3-1 -14- 沈砂池関係 最初沈殿池脱臭 反応タンク・最終沈殿池 初沈汚泥関係 余剰汚泥関係 濃縮汚泥関係 A 処理場における硫黄の物量バランス おいて場内における硫黄の物量バランスの調査解析を行った。そのうち A 処理場の結果の概要を 図 3-3-1 に示す。硫化水素の発生を促進させる適切な箇所は初沈汚泥調整槽であり、冬期でも、 100kg/日以上の硫化水素が生成可能である。また、初沈汚泥調整槽で硫化水素の発生を促進させ る事により、これ以降の汚泥処理施設の硫化水素腐食を防止出来る可能性がある。 活性汚泥法を採用している下水道終末処理場をモデルケースに、そこで発生する硫化水素を出 発物質として、光触媒による水素発生と水熱反応あるいは微生物反応による硫化水素再生を組み 合わせたシステムを検討した。図 3-3-2 はそのうちの微生物反応による硫化水素再生を組み入れ たシステムの概念図である。実験で得られた硫化水素生成速度をもとに硫化水素再生のための反 応装置の概略的な設計を行うと、太陽光の照射面積1m2 で消費する硫化水素を再生するのに必要 な反応装置の大きさが 0.5 m3 となった 図 3-3-2 下水処理場をモデルケースとした太陽光利用水素生産システムの構築 (微生物を利用した硫化水素再生プロセス) 4.結論 硫化水素を含むアルカリ溶液中のストラティファイド CdS 光触媒粒子を固定した薄膜に太陽光 を照射することにより、時間、m2 あたり最大7リットルの水素発生量が得られることを照射面積 1m2 規模の装置で実証した。硫黄を出発物質として水熱反応を行う際に、プロパノールと尿素を 添加するにより弱アルカリ条件で硫黄をほぼ 100%硫化水素まで水熱還元することができた。下 水処理場の活性汚泥を出発として集積培養を行った結果、0.01mmol/l・h 程度の硫化物イオン生成 速度が得られた。以上の結果より、太陽光を用いた光触媒による硫化物イオンからの水素生産プ ロセスにおいて、反応副生成物であるポリ硫化物イオンを硫化物イオンに再生する反応が成立す ることが明らかになり、下水処理場に流入する硫黄成分を循環利用しながら光触媒により水素を 生産することが可能となった。 -15- 無電解ニッケルめっきにおけるミニマムエミッション化の研究 研究期間(西暦)=2003−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=田中幹也(産業技術総合研究所) 共同研究者=成田弘一(産業技術総合研究所)、大矢仁史(産業技術総合研究所) 、 齋木幸則(日本カニゼン株式会社) 、萩沢一宏(日本カニゼン株式会社) 1.研究目的 無電解ニッケルめっきのミニマムエミッション化を達成するため、使用済みめっき液中のニッ ケルの分離回収技術、めっき液の繰り返し使用にともなってめっき液中に蓄積する不純物金属イ オンや亜リン酸の選択除去によるめっき液の長寿命化技術を確立する。また微量不純物の新しい 除去方法として溶媒含浸繊維法を開発する。 2.研究方法 (1) ニッケルの分離回収技術 (a)バッチ実験 実際の使用済みめっき液の組成に近似するように各種試薬を用いて調製した水溶 液をモデル液とした(Ni 4.7 kg/m3、pH 4.8)。供試有機相は、20 体積%の LIX84I および添加剤をそ のままシェルゾール D70 に希釈することにより調製した。 (b)連続実験 モデル液に水酸化ナトリウム溶液を加え pH を 6.8 とすることにより抽出実験のため の供試水相とした。用いた連続抽出装置は、東京理化製 MX-4G ミキサーセトラであり、280 cm3 のミキサ部と 530 cm3 のセトラ部から構成された各ユニットを向流に接続し、有機相と水相を所 定条件で長時間流し定常状態を得た。 (c) 生成錯体の構造解析 Ni-LIX84I、Ni-D2EHPA および Ni-LIX84I-D2EHPA 溶液錯体の XAFS 測 定を高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーにて透過法により行い、その結果を WinXAS Ver. 3.0 を用いて解析した。 (d) めっき試験 使用済みめっき液から溶媒抽出法により不純物である亜鉛および鉄を除去した 後、LIX84I と少量の PC88A を溶解した Shellsol D70 溶液を用いてニッケルを抽出し、硫酸によっ て逆抽出を行って硫酸ニッケル溶液を得た。これをニッケル源として、リサイクルめっき液を調 製し、バージンめっき液と所定割合で混合してめっき試験を行った。 (e) 環境評価 同等の素材供給に対する、製造プロセスとリサイクルプロセスに関し、それぞれの インベントリデータを用い、使用エネルギーや排出された物質等からそれぞれの環境負荷を算出 する手法により両者の比較検討を行った。 (2) 長寿命化技術 (a)亜鉛除去による長寿命化 10 dm3 のミキサおよび 30 dm3 のセトラを持つミキサーセトラを連続 試験に用いた。抽出は向流3段、逆抽出は向流2段とした。めっき操作は、ダブルジンケート処 理を施したアルミニウム合金上に行った。 -16- (b) 亜リン酸除去による長寿命化 まず希釈剤に溶解した高分子量アミンを次亜リン酸と接触さ せ、アミン次亜リン酸塩とした後、めっき液と接触させめっき液中の亜リン酸イオンを抽出する と同時に次亜リン酸イオンを水相中に放出し、亜リン酸イオンの抽出と次亜リン酸イオンの補充 を同時に行い、有機相は水酸化ナトリウムで逆抽出することにより再生するプロセスを念頭にお いてその成立可能性を実験的に調べた。実験では、モデル液を水相、ジイソオクチルアミン(DIOA) を酢酸ブチルに溶解し所定濃度としたものを有機相として用いた。抽出はバッチ法により行った。 (3)含浸繊維法による金属イオン除去 カポック繊維から成るシート状の油吸着材を小片に切断し、10 体積%の PC88A エタノール溶液 と相比 50 cm3 /g の割合にて軽く攪拌混合し、一晩静置後ろ過し、水でよく洗浄し 353 K で一晩乾 燥したものを溶媒含浸材として用いた。吸着実験はバッチ法およびカラム法によって行った。 3.結果と考察 (1) ニッケルの分離回収技術 (a)バッチ実験 酸性有機リン化合物である D2EHPA、PC88A、Cyanex272 を添加することにより 正および逆抽出が大きく加速されることがわかった(Figs. 1、2)。たとえば 2 体積%の D2EHPA に よって、正抽出は 6.5 倍、1 kmol/m3 硫酸による逆抽出は 30 倍以上に加速されることが明らかとな った。 (b) 連続実験 LIX84I に PC88A を少量添加するとミキサーセトラによるニッケルの抽出効率が大 きく向上することを確認した。向流3段でニッケル抽出率 99.9%を得た(Fig. 3)。また、向流2段、 1 kmol/m3 硫酸によりニッケル逆抽出率 98.4%、 ニッケル濃度 29 kg/m3 の硫酸ニッケル溶液を得た。 (c) 生成錯体の構造解析 Ni-LIX84I 錯体は、XANES スペクトルおよび EXAFS スペクトルより、 Ni(II)が平面四配位でありモル比 1:2 であることがわかった。LIX84I への D2EHPA の添加によって、 Ni(II)は平面四配位から八面体六配位に変化した。0.5 kmol/m3 LIX84I−0.05 kmol/m3 D2EHPA 系に おけるモデル液からの Ni(II)抽出速度は D2EHPA を含有しない 0.5 kmol/m3 LIX84I 抽出系における それより極めて大きいが、その際の有機相中の Ni(II)錯体のほとんど全てが平面四配位 Ni-LIX84I 錯体であった。このことより D2EHPA は相間移動触媒として機能していることが示唆された。 (d) めっき試験 リサイクルめっき液の割合を 0∼100%に変化させてめっき試験を行った結果、 めっき速度はいずれも約 19 m/h 一定であり、リサイクルめっき液を用いても通常のめっき液と 同様のめっき速度が得られることがわかった。 (e)環境評価 使用済みめっき液から硫酸ニッケル溶液を回収する際の二酸化炭素排出源としては、 pH 調節に用いる水酸化ナトリウムが最も高く 64%であった。次いで、水酸化ナトリウム投入量、 ニッケル回収率、リサイクルによる二酸化炭素削減量の間の関係を解析したところ、めっき液中 の硫酸ニッケル六水和物 1kg あたりの水酸化ナトリウム投入量が 0.3kg(ニッケル回収率 80%)の とき二酸化炭素削減量が最大となることがわかった。 (2) 長寿命化技術 (a)亜鉛除去による長寿命化 アルミニウムへのめっきラインにおいて、予備めっき液中に 100 -17- g/m3 程度存在する亜鉛を選択的に除去するためのミキサーセトラ抽出装置を、めっき工場内に設 置した。その結果、酸性有機リン化合物を抽出剤にすることにより、めっき液の寿命を従来の5 ∼7倍の延ばすことができた。1年間に渡る稼働状況も安定していた(Fig. 4)。 (b) 亜リン酸除去による長寿命化 DIOA 濃度 2 kmol/m3 のとき、初期次亜リン酸濃度 2 kmol/m3 以上にて亜リン酸イオン抽出率 53%以上が得られた。抽出後は水相中の次亜リン酸濃度が大きく 増加しており、有機相から水相に次亜リン酸イオンが放出されていることがわかった。さらに水 酸化ナトリウム溶液によって亜リン酸は完全に逆抽出できることもわかった。これらより、Fig. 5 に示す長寿命化プロセスを提案した。 (3)溶媒含浸繊維法による金属イオン除去 溶媒含浸繊維法に関し下記のことがらがわかった。(i)溶媒含浸樹脂法よりも迅速に金属イオン を除去できる。(ii)使用済み無電解ニッケルめっき液中の不純物である亜鉛および鉄を、pH 調節 を行うことなくニッケルから選択的に除去できる。(iii)カラム操作では、7回程度までは、吸着− 溶離を繰り返しても除去能力に大きな影響は現れない。 4.結論 溶媒抽出法を利用した使用済み無電解ニッケルめっき液中のニッケルの分離回収において、キ レート抽出剤 LIX84I に、触媒として酸性有機リン化合物である D2EHPA や PC88A を少量添加す ることによって、正・逆抽出速度を大きく向上させることを見出した。この結果に基づき、PC88A を添加剤として連続実験を行ったところ、ミキサーセトラ連続抽出装置によって、使用済み液か らのニッケルの抽出および硫酸による逆抽出とも 98%以上の効率を得た。回収された硫酸ニッケ ル溶液を用いて調製しためっき液は、通常のめっき液と同等のめっき速度を示した。硫酸ニッケ ルのインベントリー分析によりこの回収プロセスの環境影響を評価したところ、 回収ニッケル 1kg あたり二酸化炭素排出量を 2kg 以上削減できることを示した。これらの結果をもとに Fig. 6 に示 すニッケル回収フローシートを提案し、現在、めっき工場内に回収プラントを敷設中である。 酸性有機リン化合物を用いた溶媒抽出法による亜鉛除去プロセスを実用化し、アルミニウムめ っきラインの予備めっき液の寿命を5∼7倍の延ばすことに成功し、めっき工場からの排出削減 に貢献した。また、アミンを用いた溶媒抽出法による亜リン酸除去プロセスを提案した。このプ ロセスでは、めっき液からの亜リン酸イオン除去と次亜リン酸イオン補充を同時に行うことを特 徴としている。 水溶液中の金属イオン除去方法として、新たに溶媒含浸繊維法を提案し、PC88A を含浸させた カポック繊維の各種金属除去特性を明らかにし、金属イオンを迅速に高い効率で除去できること を示した。 -18- 100 80 80 60 Ni stripping/% Ni extraction/% 100 Additive None 2vol%D2EHPA 2vol%PC88A 2vol%Cyanex272 40 -3 20 60 Additive (2vol%) None 40 D2EHPA PC88A 20 20vol%VA10+10mol m DNNSA 2vol%LIX63 Cyanex272 0 0 0 0.5 1 1.5 2 0 2.5 0.5 1 1.5 t/ks 2 2.5 t/ks Fig. 1 Time variation of the nickel extraction in the presence and absence of additives. Fig. 2 Time variation of the stripping of nickel with 1 kmol m-3 sulfuric acid in the presence and absence of additives. Initial nickel concentrations in the organic phases were 8.3, 8.6, 8.3, and 8.6 kg m-3 for no additive, D2EHPA, PC88A, and Cyanex272, respectively. 25 10 100 Changed PC88A to Cyanex272 3 2 E(%) N=1 85 Faq = 12 cm3/min Temp.: 299-303 K 80 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 15 6 4 1.1 0 5 0 50 100 150 200 250 300 350 0 Day Fig. 3 Effect of the organic flow rate, Forg, on the nickel extraction, E, under the constant aqueous flow rate, Faq. Organic phase (amine+diluent) Fig. 4 The bath life and plating rate during the strike plating since the initiation of the practical operation. Spent Bath H2SO4 Waste PC88A or Cyanex272 Stripping Stripping Plating process 10 Bath life 2 Forg/Faq Plating bath 20 Plating rate ( m/hr) Bath life (MTO) 90 75 0.3 Plating rate 8 95 Extraction Without pH Adjustment H2SO4 NaOH Extraction of phosphonate ion ZnSO4-Fe2(SO4)3 Solution Extraction at pH 6-7 Stripping Acid treatment Aq. Raffinate LIX84I + PC88A H3PO2 Aqueous Phase Fig. 5 Flow sheet for the bath life extension using phosphonate removal. Pure NiSO4 Solution Organic Phase Reuse in Electroless Plating Fig. 6 Flow sheet for the nickel recycling. -19- 医療廃棄物の戦略的マネジメントに関する研究 研究期間(西暦)=2003−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=田中勝(岡山大学) 共同研究者=シェクダール・アショク(岡山大学)、青山勲(岡山大学) 、吉良尚平→山本秀樹 (岡山大学) 、保科定頼(東京慈恵会医科大学) 、高原成明(株式会社コシダテック) 1.研究目的 ダイオキシン類対策特別措置法の厳格適用により医療廃棄物の院内焼却処理がほとんど無くな った。その結果、外部委託処理に頼らざるをえなくなってきており、廃棄物処理費用が増大傾向 となっている。また、医療廃棄物の中の感染性廃棄物は、その定義・分別・処理基準が色々と解 釈され、各病院で多様な分類、処理が行われている。このような医療廃棄物を合理的かつ適切に 処理する為、科学的根拠に基づき医療機関ごとの事情に応じた医療廃棄物処理マニュアルが必要 である。本研究ではそのようなマニュアル作成の為のガイドラインを作成する。また、医療廃棄 物のその特殊性を鑑み、自治体の焼却施設への受入れ、医療関連メーカーの拡大生産者責任、海 外での取組み等を踏まえ、日本における医療廃棄物の戦略的マネジメントの施策を提言する。 2.研究方法 2-1.国内外の医療廃棄物に関する現状調査 国内外の文献調査。医療機関・自治体・医師会へのアンケート調査。医療機関へのヒアリ ング。海外現地調査。国際ワークショップの開催。 2-2.院内マニュアルのためのガイドラインの作成 2-1の結果を踏まえてガイドラインの作成。 2-3.ガイドラインによるモデル試験 ガイドラインに則り、廃棄物の重量測定を含む現状チェックをした後、改善案の提案を行 った。病院経営方針も考慮し既存の院内マニュアル改訂後、講習会を開催、マニュアルの内 容と廃棄物処理法の排出者責任の強化について解説し、関係者の意識向上とマニュアルの内 容の周知徹底を図った。 2-4.医療廃棄物に係る拡大生産者責任(以下 EPR)に関する研究 生産者である医療関連メーカーが、どの程度、製品等の設計段階で、製品や容器包装等の 長期使用や再使用又は再生利用、適正処理が出来るように工夫や資材の選択をすること等に 取組んでいるかをヒアリングとアンケート調査をした。また、医療機関に EPR に関するアン ケート調査を行った。 2-5.医療廃棄物の生体影響評価と医療廃棄物処理への HACCP(危害分析重要管理点)導入に ついて (1)医療廃棄物による生体影響を評価する手法として、活性酸素酸化的ストレスに着目しカ タラーゼ変異株大腸菌を使ったスクリーニング法の開発を行った。カタラーゼ活性の低い -20- 大腸菌への増殖抑制評価の度合いを評価することにより、酸化的ストレスを評価した。 (2)医療廃棄物処理への HACCP を廃棄物管理に応用することを検討した。 2-6.医療廃棄物中間処理の安全性評価に関する研究 中間処理残渣とモデル医療廃棄物に、2 種のモデル病原菌(枯草菌および酵母菌)を散布、 実験室での中間処理を施して、その処理残渣の安全性評価を行った。医療廃棄物焼却後の底 灰および飛灰の粒径分布、重金属の物理化学的存在形態、粒径別の重金属濃度の化学的分析 を行った。 2-7.新たな廃棄物(DNA 廃棄物)への対応 DNA 廃棄物処理の現状と課題の整理を行った後、DNA 廃棄物の細胞増殖への影響試験、 DNA 廃棄物の不活性化試験を行った。 3.結果と考察 3-1.国内外の医療廃棄物に関する現状調査 医療機関のアンケートより、感染性廃棄物処理は、外部委託処理 98.9%、院内焼却処理 4.2%、自治体施設処理 2 件。全国の感染性廃棄物処理費用の平均は 160 円/kg。20 病院の ヒアリングより感染性廃棄物排出量 0.01∼1.14kg/day/床、全廃棄物排出量中の感染性廃棄 物の割合 11.3∼75%、感染性廃棄物の処理費用 65.76∼283.33 円/kg。処理費用の契約内容 としては、重量 3 件、容量 10 件、定額 3 件となっており、定額制・容量制では感染性廃棄物 の割合が 35%前後と高い。自治体アンケートより、感染性廃棄物を受入れている自治体は 4%、 受入れていない自治体 92%。受入れない理由としては、「感染の恐れがある」、「処理できる 施設がない」といった理由で 5 割強を占めている。医師会アンケート調査によれば、36%(14 件)の医師会に医療廃棄物の検討部会が存在し、2 件の医師会でガイドラインを作成している。 また医療廃棄物の講習会を開催している医師会は 7 件存在。海外調査より、ドイツは感染症 患者の血液等が付着したもののみを感染性廃棄物と定義しており、感染性廃棄物の割合が 3% 以下と非常に少ない。逆にイタリアでは、医療機関以外から排出される血液等が付着したも のまでも感染性廃棄物とする定義の拡大傾向があった。この定義についての医療機関への意 識調査では、ドイツ式 12%、イタリア式 43%、現状のまま 42%となっている。処理に関し ては、フランスでは発生源で滅菌しその後埋立処分であるが、スイス・ドイツ・イタリアで は自治体処理施設にて焼却されている。医療機関への意識調査でも自治体処理を期待するが 41%と最も高い。また、フランスのリヨンやスイスのジュネーブでは、放射性廃棄物のクリ アランスレベルを導入していた。 3-2,3.院内マニュアルのためのガイドラインの作成及びガイドラインによるモデル試験 ガイドラインを作成、岡山労災病院でモデル事業を実施し、岡山市および周辺の総合病院 の廃棄物の重量を比較した。感染性廃棄物の比重は、一般に考えられている値(0.2kg/L)よ りも比重が小さく(0.14kg/L)、感染性廃棄物の適切な分別を行うことにより、感染性廃棄物 の減量化、廃棄物処理のコストの低減が行えることが示唆された。モデル事業を通して得ら れて知見をガイドラインにフィードバックし、ガイドラインの改善に繋いた。 3-4.医療廃棄物に係る EPR に関する研究 -21- 医療メーカーでは、医療製品は安全性、経済性が重視されており、環境配慮の取組みは遅 れている。しかし、企業は社会的責任により、自主的に目標を持ちそれに向け取組んでいる 姿勢が窺える。医療業界における EPR の普及について、 「普及すべき」82%、「わからない」 15%、 「必要ない」2%。普及で期待する事項として「メーカーによる引取り」273 件、 「収集 運搬の容易化」174 件、 「リサイクル素材の利用」209 件、「分別しやすい表示」140 件。EPR に関して医療機器メーカーに求めることは、「医療機関のニーズを聞くこと」294 件で最大。 3-5.医療廃棄物の生体影響評価と医療廃棄物処理への HACCP 導入について (1) 電磁波滅菌処理を行った後の医療廃棄物の処分残渣の安全性を評価した。水・エタノ ール抽出を行った残渣の場合にはカタラーゼ活性による差がみられた。一方、アセトン、ヘ キサン抽出の場合には差がみられなかった。 (2) 某自治体病院の内視鏡室において廃棄物の危害分析を行い、危害に応じて分別の方法 を変更したところ、感染性廃棄物の減少(22%)がみられた。 3-6.医療廃棄物中間処理の安全性評価に関する研究 医療(感染性)廃棄物中間処理残渣の安全性について、バイオアッセイによって毒性評価 を、中間処理後の微生物の残存性については、バイオハザードの評価を行った。微生物の残 存性の面では焼却処理が最も優れていたが、処理残渣の水抽出および有機溶媒による抽出液 をバイオアッセイに供したところ、有害性についてポジティブの結果が得られた。非焼却処 理ではこれと逆の結果が得られた。焼却処理では減容性と滅菌性では高い評価が得られたが、 有害化学物質の存在が検出されることになった。非焼却処理では、十分な時間をかけた滅菌 を行わないと、細菌類が残存する可能性があることが分かった。 3-7.新たな廃棄物(DNA 廃棄物)への対応 ヒト、ラット、大腸菌に共通する塩基配列から合成したオリゴ DNA はたんぱく質翻訳を強 力に推し進め、細菌特有の塩基配列からのオリゴ DNA はたんぱく質翻訳を阻害する結果が得 られた。オートクレーブ処理は、DNA が熱安定性のため無効であり、次亜塩素酸による薬液 処理は一時的に不活性化させるが、可逆的反応のため DNA 分子は元に戻ってしまう。触媒反 応を利用した不活性化処理は不可逆的反応であった。 4.結論 3-1,2,3の結果より廃棄物処理に関しては、安全性、環境負荷、費用負担はトレードオフの 関係にあり、そのバランスを取ることが非常に重要である。当ガイドラインの現状チェック及び 組織方針に則り院内マニュアルを作成することが、このバランスを確保するのに寄与することが できる。コストに関しては、重量契約と厳密な重量測定よりコストカットが可能であることが示 唆された。EU の多くの国では感染性廃棄物の自治体への受入は一般的であり、例えば日本におい ても県内に民間の処理施設がないような場合は、自治体への受入を検討する必要がある。 3-4の結果より医療機関の EPR への期待は大きいが、それぞれの製品や企業で、取組み方やそ の背景、問題点等は様々である。企業の取組みを推進させるためには、それらの製品にあった安 全性や経済性、法律・制度の問題の解決が望まれており、関係各社のコミュニケーションが重要 である。 -22- 3-5の結果より(1)カタラーゼ変異株大腸菌を使ったスクリーニング法の詳細なメカニズム等 が未解明であることもあり、引き続き生態影響評価のスクリーニング法の検討が必要である。(2) 内視鏡室で発生した廃棄物のみの検討であったが、廃棄物の減少が明らかに見られた。今後は、 他の病棟等での検討とガイドライン、院内マニュアルへどのように組み入れるかが課題である。 3-6より感染性廃棄物の処理は、滅菌、減容率の観点から焼却が最も優れている。焼却残渣中 に有害化学物質も存在するので、最終処分場の負荷を考慮した処理方法の選択も考えられる。 3-7より今後、組み換え動植物の廃棄遺体、組み換え核酸、遺伝子増幅物、合成核酸などの増 加が考えられるが、on site 処理としては触媒反応を利用した不活性化処理が必要である。また、 分別管理した後に感染性廃棄物と共に処理を行うことも考えられる。 -23- 水蒸気吸引式流出油回収機構の研究開発 研究期間(西暦)=2003−2005 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=藤田勇(独立行政法人港湾空港技術研究所) 共同研究者=吉江宗生(独立行政法人港湾空港技術研究所) 1.研究目的 流出油による汚染から海洋ならびに沿岸の自然環境を守るためには,流出事故の発生を未然に 防ぐことが第一である。しかしながら平成9年に発生したロシア船籍のタンカー「ナホトカ号」 による油流出事故や平成14年度にスペイン沖で発生した「プレステージ号」による油流出事故な ど大規模なものに加えて、国内においても小規模の流出事故は毎年発生しており、事故発生件数 をゼロにすることは不可能である。従って万が一事故が発生した際に、環境に対する負荷を最小 限に留める効果的且つ効率的な流出油除去並びに環境修復手法を持つことが環境維持並びに危機 管理上重要である。 流出油への対処法としては、大きく分けて回収処理、分散剤等化学薬品による拡散処理、およ び現場焼却などの手法がある。これらの内、分散剤による処理は比較的軽質油に対しては効果が あるが、環境温度が低い場合や、重質成分が多くエマルジョンを形成した流出油に対する効果は 制限される。現場焼却は安全性や大気汚染といった二次的な問題が懸念される。そのため回収に よる汚染除去は流出油対策として重要な地位を占めるものである。 流出油汚染の回収除去の効率はいろいろな要素に影響されるが、その中で最も重要なパラメータ が流出油の粘度である。 海上に流出した油は海水との混合により W/O 型エマルジョンを形成し、非常に高い粘度を示 すようになり、現場回収作業は困難を極める。ナホトカ号事故の場合には粘度が 100 万 mPa.s を超えたという報告もある。このように超高粘度になると、一般の流体のようには扱えなくなる。 従って高粘度流出油を安全かつ効率的に回収除去するためには、回収作業の際、流出油の物理性 状を能動的に制御する必要がある。 本研究では作動流体に水蒸気を用いて海上流出油を吸引除去あるいは回収油の改質する方法に ついて研究する。水蒸気吸引式油回収装置では、蒸気噴流による吸引仕事と蒸気凝縮による加熱 を同時に行うことができるため、流出油の低粘度化が可能となり、従来不可能であった超高粘度 の海上流出油の吸引除去に有効である。 また重質分を含む流出油は通常内部に油量の倍近くの水を内包することで(体積増加を起こし ている。油回収現場では常に貯油タンクの容量に制約があり、エマルジョンを解消して正味の油 のみを回収できれば、同一規模の資機材で 2 倍程度の流出油を回収できる。エマルジョンを解消 するには、ある種の界面活性剤が効果を持つことが知られているが、温度が低い場合には、反応 に長時間を要するため、実用化されていない。本研究の蒸気吸引式では、上述の様にほぼ瞬時に 加熱することが可能であり、界面活性剤の反応時間を格段に短くすることが可能となる。このよ うに回収現場においてエマルジョンブレ-キング等の流出油の改質が可能となることで、回収効率 -24- の飛躍的な向上が期待できる。また蒸気吸引式の装置は吸引物を選ばないため、流出油汚染を受 けた海岸の砂からの油除去にも活用することができるなど、本研究によってもたらされる効果は 大きい。 本研究ではそのような蒸気吸引式油回収機あるいは改質装置の設計に必要となる基盤要素技術 に関する研究開発を行う。更にそれらの知見を基に実際の油回収装置のプロトタイプを設計製作 し性能試験を行い、その有効性を検証する。流出油除去及び回収油の有効的な再利用に関する効 果的且つ効率的な技術の開発が重要である. 2.研究方法 水蒸気駆動のエジェクタを海上流出油による油濁被害の対応に用いることの優位性を確認する ために下記に示す項目について研究を実施した。 (1) 蒸気エジェクタによる流体吸引の基本特性の把握 (2) 蒸気エジェクタ吸引による重油エマルジョンの性状変化 (3) 界面活性剤によるエマルジョン分解における支配因子に関する検討 (4) 蒸気エジェクタによる油汚染砂の洗浄に関する基礎実験 (5) 蒸気エジェクタ吸引を用いた海上漂流油回収装置の模型実験 (1)は蒸気吸引式流出油回収改質装置を実現する上で必要となる基盤要素技術について研究で あり、蒸気吸引式で期待される性能あるいは効果が実際に得られるかどうかを確認するためのも のである。蒸気吸引式実験装置を構成し、実際のエマルジョン化 C 重油を吸引及び管内輸送する ことで、吸引並びに管内流動特性を計測した。蒸気圧力、蒸気流量、吸引圧力、吸引油量、管内 圧力損失、管内液ホールドアップ及び温度等の物理量を計測し、蒸気吸引機構の特性把握に努め た。(2)においては水蒸気混合による熱処理によって起きるエマルジョンブレーキング効果の確認 を行った。試験油内に取り込まれている水の量の変化を測定するとともに顕微鏡観察を行った。 その際、界面活性剤添加の効果も合わせて検証した。(3)においては界面活性剤を添加することに よって起きるエマルジョンブレーク過程における影響因子を調べた。実験は円筒型スピンドルを 持つ回転式粘度計を用いて反応の進行速度を測定した。界面活性剤には PEG-10 laurate、Sorbitan laurate, Diethylhexyl Sodium Sulfosuccinate、DRIMAX1235、NEOS、SC-1000 及び灯油を用いた。更 に、基礎実験において得られた結果をもとに、ロータリー型エマルジョン分解装置を試作し、効 果の程を検証した。(4)においては、エジェクタが液体のみならず、スラリー等も吸引できること を利用して、汚染砂からの油の分離を試みた。(5)では近い将来の実用化を念頭にプロトタイプ的 な模型を試作し大型実験水槽において高粘度浮遊油の回収実験を行うことで、蒸気吸引式油回収 装置の実際の海での性能予測を試みた。 3.結果と考察 得られた結果と考察を以下に列記する。 (1) 蒸気エジェクタによる流体吸引の基本特性の把握 ―蒸気エジェクタによる水、空気、油、砂スラリー等の吸引特性を測定し、基本的な特性を 把握した。水蒸気吸引により、エマルジョン化 C 重油の流動性は向上する。このため高粘度 -25- 性といった従来の回収作業の際の障害因子の克服ができることが分かった。 (2) 蒸気エジェクタ吸引による重油エマルジョンの性状変化 ―初年度並びに次年度に行った蒸気エジェクタによる重油エマルジョンの吸引実験におい てエマルジョンの分解が観察された。界面活性剤を添加した場合および界面活性剤を添加し ない場合でも含水率の低下が認められた。しかしながら最終年度に行った(5)の実験ではエマ ルジョンの分解は見られなかった。両者の違いに関する検証は今後の課題である。 (3) 界面活性剤によるエマルジョン分解における支配因子に関する検討 ―界面活性剤によって起きるエマルジョンブレーク過程における環境影響因子としては、温 度やずり速度が考えられるが、特にずり速度の影響が顕著である。 ―エマルジョンの分解を一次反応と仮定して、その速度を特性時間により評価すると、特性 時間はずり速度の逆自乗に比例する。これはエマルジョンの分解の程度がずりにおける散 逸エネルギーの量に比例することを示唆していると考えられる。 ―ずり速度を制御できるロータリー式の試作装置においてエマルジョンの分解が確認され た。 (4) 蒸気エジェクタによる油汚染砂の洗浄に関する基礎実験 ―蒸気エジェクタは油汚染砂の洗浄にも有効であることがわかった。実験では C 重油で汚染 された砂(油/砂比=20%)を蒸気エジェクタ処理することで、残留油分を 1%前後まで低 減することができた。 (5) 蒸気エジェクタ吸引を用いた海上漂流油回収装置の模型実験 ―エマルジョン化高粘度油を用いた油水回収実験において、蒸気圧 0.35MPa で 6m3/hr 程度 の回収量が得られた。模型縮尺を 1/4 程度と想定しているので、実機では 24m3/hr の油水 回収量が予想される。 ―浮遊油を放水銃等により吸引口近くに寄せることで、50%程度の油水比で漂流油回収が可 能である。 4.結論 本研究では、流出油回収あるいは処理における水蒸気の利用という新しい着想の有効性につい て調査研究を行った。特にポンプ仕事と熱供給を同時に行うことができるという蒸気エジェクタ の特質を利用して、高粘度エマルジョン化油の吸引除去、エマルジョンの分解について検討した。 さらには、被吸引物体を選ばないことを利用して、油汚染砂の洗浄を試みた。一連の検討を終え た現段階で全てが明らかになった訳ではないが、本研究を通して、幾つかのものについては実用 化の目処が得られると同時に、流出油事故の際、種々の場面で遭遇する、高粘度、エマルジョン、 海岸汚染等の困難を克服するための技術の鍵として水蒸気を使用することの可能性ならびに優位 性を示すことができたと考える。 -26- 使用済み発泡スチロール(EPS)油化装置の実用化開発 事業者名:株式会社ティラド 1.技術開発担当・照会先 株式会社ティラド 環境・エネルギー研究センター 〒257-0031 神奈川県秦野市曽屋 937 TEL:0463-81-1551 FAX:0463-85-1150 2.技術開発の目的と開発内容 2−1)目的 本事業は廃発泡スチロール(EPS)のリサイクル率向上のために、これまで培った油化技術 に改良を加え、更に生成油の有効活用技術と組合せることで、実用化に適したオンサイト型 リサイクルシステムを確立することを目的とする。そのために、主にスーパーマーケットを 対象とし、従来技術では困難な高い耐久性を持つ油化装置と、生成油を燃料として食品冷蔵 等に使用可能な小型吸収冷凍機の組合せシステムを製作し、その実用性を証明する。 2−2)開発内容 目的を達成するために、以下の技術開発を実施した。 ① 実証機の設計・製作(設置基数:油化装置・吸収冷凍機 組合せシステム 1基) ② 実証試験 試験条件:スーパーからの入手した実際の廃 EPS 類を選別・洗浄等 せずそのまま投入、各実証機を 1 日あたり 4∼10 時間運転 試験期間:平成 17 年 10 月∼平成 18 年 3 月 ③ 実証内容 油化装置:熱分解釜内部の炭化物付着・堆積に関する技術改良による 長期耐久性の実証、酸性生成油の中性化の実証 吸収冷凍機:生成油を駆動源とした吸収サイクルの実証、ノンフロン 新冷媒を用いた零度以下の低温冷蔵運転の実証 図 3-1-1 に示す油化装置の構成 部品を設計・製作し、それをパッ ケージングした油化実証機を完成 した(図 3-1-2)。また、生成油直 排気 気ガ ガス ス 排 3−1 実証機の設計・製作 外 外気 気 使用済み 3.成果 発泡スチロール 使用済み発泡 スチロール 再生器 再生器 圧縮 減容 機 破砕圧縮機 バ バーナ ーナ 発泡スチロール 発泡スチ ロール 破砕圧縮物 破砕圧縮物 熱分解 釜 熱分解釜 残渣 残抜き 渣抜き 自 動バル ブ 自 動バルブ 破砕機 破砕機 凝縮器 凝縮器 残 渣 残渣 タンク タンク 生生成油タンク 成油タン ク 溶解 槽 溶解槽 図 3-1-1 油化装置フロー図 焚+単効用+2 段精留の冷凍サイクル 冷却風 P 凝縮器 精留器 吸収器 P 過冷却器 コールドソリューション 機の実証機の設計・製作を行った 表的な技術要素を以下に述べる。 ブラインポンプ 溶液熱交換器 再生器 蒸発器 (図 3-1-4)。これらに採用した代 図 3-1-2 油化装置外観 ラジエータ (クーリングタワー) ブライン 溶液ポンプ (図 3-1-3)で構成される吸収冷凍 バルブ ブリード 冷水(例:-5℃) OUT P ブリードポンプ バーナ入熱 図 3-1-3 吸収冷凍機フロー図 -27- 図 3-1-4 吸収冷凍機外観 1) 油化装置の技術改良 軸受部 ① 攪拌装置付きの熱分解釜 汚れやラベル等の付いた EPS をそのまま熱分解す M る場合、局部過熱による伝熱面の炭化物付着・成長が 問題となるため、攪拌装置(図 3-1-5)を開発した。 攪拌翼 その結果、釜内液温が均一化され、局部過熱を抑制で 図 3-1-5 熱分解釜の攪拌装置 きることがわかった(図 3-1-6) 。 450 450 400 350 300 C点 250 D点 200 E点 150 F点 100 G点 B点 300 C点 250 D点 200 E点 150 F点 100 G点 H点 50 A点 350 B点 釜内溶液温度(℃) 釜内溶液温度(℃) 400 A点 H点 50 0 0 攪拌無し 攪拌有り 図 3-1-6 攪拌の効果(熱分解釜内の液温分布) ② 二段燃焼式スチレンバーナ 生成油のさらなる完全燃焼と単純な構造、高い耐久性を両立するため、二段燃焼を形成 する旋回流ヘッド部と、稀釈空気による燃焼筒冷却が可能な二重管構造を新採用した専用 スチレンバーナを開発した(図 3-1-7) 。その結果、従来品を上回る完全燃焼と、火炎部周 囲の燃焼筒材料の温度低減が可能となった(表 3-1-1)。 表 3-1-1 スチレンバーナ燃焼性 項目 単位 改良後 改良前 酸素濃度 % 17.5∼17.6 17.9∼18.0 煤塵 濃度 g/m N 0.0002 0.0015 0.25以下(焼却炉200kg以下) 硫黄酸化物 濃度 ppm <1 <1 5以下(二酸化硫黄にて) 濃度 ppm 18 40 窒素酸化物 図 3-1-7 スチレンバーナ 3 規制基準等<参考> m3N/h 0.0057 0.0089 30以下(焼却炉神奈川規制) 塩化水素濃度 mg/m3N 3.6 3.0 8以下(焼却炉神奈川規制) 一酸化炭素濃度 ppm <10 98 100以下 ダイオキシン類濃度 TEQ 0.0011 0.013 5以下(新規焼却炉導入時) 量 臭気指数(発生源) - 29 24 31以下 スチレン濃度 ppm <0.2 0.9 敷地境界にて0.4以下 2) 吸収冷凍機の採用技術 ① 作動媒体 オゾン層破壊係数 0、地球温暖化係数 0.072(CO2 の約 1/14)のノンフロン有機系の新 媒体(冷媒 TFE/吸収剤 DMI)を採用した。その結果、水/臭化リチウムなどの在来媒体に対 し、主要部材のアルミ化による画期的な軽量低コスト化、零度以下の冷蔵運転、高い安全 性の確保が可能となった。 ② アルミ製熱交換器 自動車用ラジエータなどの量産技術を生かし、 また膜状吸収などの熱交換形態に適した伝熱表面 をプレス一体成型した新型アルミ製プレート熱交 換器を採用した(図 3-1-8)。その結果、従来型の -28- 図 3-1-8 アルミ製プレート式熱交換器 熱交換器に対し、約 1/5 の容積のコンパクト化と、約 1/2 の軽量化が可能となった。 3−2 実証試験結果 1) 油化装置の実証結果 ① メンテ頻度と耐久性 前述の熱分解釜の攪拌効果の実証のために長期間耐久運転を実施した結果、従来品と比 較して処理能力の劣化速度が約 1/3 となり、3 ヶ月以上の耐久性が得られることが実証で きた(図 3-2-1)。また攪拌装置に独立式の軸受と支持構造を採用したことで、最大 450℃ の高温スチレン蒸気に曝された過酷環境でも 3 ヶ月以上完全ノーメンテ化を実現した。 14 14 攪拌無し 攪拌有り 12 10 EPS処理量(Hr) EPS処理量(kg/Hr) 12 8 6 4 10 8 6 4 2 2 0 0 0 100 200 300 400 500 600 700 0 100 200 300 400 500 600 700 800 累計運転時間(Hr) 累計運転時間(Hr) 図 3-2-1 長期連続運転時の処理量変化比較 ② 生成液の中和 9 これまでの研究で、油化生成液は pH4 程度 への影響が懸念されるため、消石灰等を用いた 7 2% 2% 目標範囲 1% 1% 6 生成液pH の酸性を示すことがわかった。関連装置材料 3% 8 2% 1% 0.1 % 5 4 無添加 3 2 中和試験を実施した。その結果、図 3-2-2 の 1 0 ように中和剤添加による中和効果が明らかと 1% 未添加 なり、また添加量と自動供給方法を決定した。 3% 1% 消石灰 2% 炭酸ソーダ 炭酸ソーダ (水溶液) 図 3-2-2 中和剤の効果 2) 吸収冷凍機の実証結果 吸収冷凍機にて生成油を用いた実証運転 表 3-2-1 吸収冷凍機の実証結果まとめ を実施した。その結果を表 3-2-1 に示す。 下記のように、生成油から零度以下の冷熱 項目 単位 目標 達成値 取出し運転が可能で、生成油がスーパーの 冷蔵能力 kW 20 17 低温冷蔵用途等で有効活用できることを実 COP(成績係数) - 0.34 0.29 証できた。ただし精留器の性能不足等の問 取出し温度 ℃ -5 -5 題があり、当初の目標性能には若干未達で 精留純度 wt%(TFE) 98 94.5 あり、一部改良による対策を実施中である。 3) 油化装置と吸収冷凍機の組合せシステムの成立性検証 現状のスーパーマーケットにおける EPS 処分費と、本 システムでのイニシャルおよびランニングコストを比較 し、ユーザコストメリットを試算した。その結果、図 3-2-3 に示すように、例えばラベル剥し不要による省人化 やアルミ部品の採用等によって低コスト化が可能となり、 -29- 油化装置導入コスト=1,000万円の時 処理量 100Kg / 日 5,000 累 積 4,000 処 理 費 3,000 用 万 円 2,000 産廃処理時 処理費 320円/Kg 年間 797万円 の節約 償却期間 1.3年 油化装置導入時 処理費 47円/Kg 1,000 0 0 1 2 3 4 5 稼動年数 図 3-2-3 コストメリット 油化装置単体で 2 年以内、吸収冷凍機との組合せでは更に短い初期投資回収が可能である ことが明らかとなった。今回、過去の類似提案が果たせなかった生成油の具体的な活用技 術と、システム全体で明確なユーザコスト効果を示したことで、商用化が可能であること を明らかに出来た。 4.まとめ 4−1 目標達成度の評価 本技術開発により以下の結果が得られ、当初の目標はほぼ達成できたと考える。 1) 熱分解釜に液対流を促す機構を付加することで、従来技術では不可能だった 3 ヶ月以上 のメンテ頻度が実現可能であることを実証した。 2) 消石灰を用いた、簡易な生成油の中和技術を確立した。 3) ノンフロン冷媒を用いた吸収冷凍機を生成油燃料で運転し、冷蔵用途に使用可能な−5℃ 以下の冷熱出力を安定して取出せることを明らかにした。 4) 油化装置と吸収冷凍機を組合せたオンサイト型リサイクルシステムとしての成立性を、 技術・採算性の両面から立証した。 4−2 生じた課題・残項目 本技術の実用化と普及に向けては、以下項目の推進が必要かつ重要と考える。 ① 電気使用量削減、省人化推進、収率向上およびメンテ頻度長期化等、技術改良等に よるランニングコストの一層の低減 ② 各部構造の簡略化、汎用部品採用等によるイニシャルコストの一層の低減 ③ ユーザニーズの汲み上げとスーパー以外への用途応用技術の拡大 ④ 実物件での長期間実証等による安全性・耐久性の実証と各方面への PR 4−3 国内の廃棄物処理全般に与える影響(メリット) 小型の EPS 油化装置は、過去に数社が商品化を試みているがいずれも失敗し、この分野で のリサイクルは進んでいない。これは、従来の装置には、①ラベル剥がしなどの苦渋作業が 必要、②頻繁なメンテが必要など耐久性の問題、③生成油用途が無い、④初期投資が回収で きない、といった諸問題が要因と考えられる。 本技術開発によりこれらの点に改善が図られ、スーパーマーケットなどの EPS 排出場所で リサイクルまで可能なシステムとしての実用性を立証できたと言える。今後、本システムの 実用化を図ることで、EPS 運搬・廃棄に消費されているエネルギー削減と、生成油の活用に よる化石燃料削減の両面から省エネに貢献できる。 -30- 生ごみ処理機の微生物活動評価を通しての再検討 研究期間(西暦)=2003−2005 研究年度(西暦)=2005 研究代表者=西野徳三(東北生活文化大学) 共同研究者=中山 亨(東北大学大学院工学研究科) 1. 研究目的 生ごみは,廃棄物としては特異な性格を持っている.すなわちその重量のほとんど(60 80%)は水分 であり,また水分を除いた残りの有機物は堆肥としてリサイクルすることができる.食品製造業で排出さ れる年間 340 万トンの生ごみのリサイクル率は 48%となっている一方,一般家庭および食品流通・外食業 から排出される生ごみおよび食品廃棄物は年間 1600 万トンにものぼり,そのうちリサイクルされる割合は わずか 0.3%にすぎない.ほとんどが水分である生ごみなどの有機性廃棄物を焼却することはエネルギーの 無駄であり,また焼却炉内の不完全燃焼をもたらし,ダイオキシンの発生の可能性がある.平成 13 年には, 食品に関しても食品循環資源再利用促進法,いわゆる食品リサイクル法が整備された.リサイクル型社会 構築の一環として,排出される生ごみの資源化を促進することは,地球環境保全に極めて有効であると考 える. 高温高速コンポスト化は,加熱により好熱性細菌の生育を促してコンポスト化を加速するもので,従来 長時間を要したコンポスト化を短時間(1 2 日間)で達成する優れた方法である.コンポスト化は,通常 「に 中性から弱アルカリ性(pH 7 9)で進行すると考えられており,実際,pH が酸性にシフトした段階で, おい」が強くなって基材を交換するなどの処置を施すのが通例となっている. 高速コンポスト化は生ごみ処理を加速化し,リサイクル型社会の実現に向け,身近なところからリサイ クル活動を実践できる有効な方法であると期待されながら,実際にはそれほど普及していない.生ごみ処 理がこれほど問題になる以前から,家電メーカーは,今後普及する製品のひとつと見て生ごみ処理機の開 発に力を入れてきたが普及率は低いままである. 生ごみ処理に関しては多くの報告があるが,微生物の役割も含めた統一した評価方法がなく混乱してい る.また,最近は家庭用から業務用までの処理はその処理廃棄物の利用も含めて伸び悩んでいるのが現状 である.処理に及ぼす水分,pH,および C/N 比などに関しては詳細な研究がなされているにもかかわらず, 実機との乖離が大きく,それぞれの機器に反映されていないのが実情である. われわれはこれまでに,コンポスト化作用が弱酸性条件下で長期間にわたり持続し,微生物基剤(種菌) を交換する必要がないユニークな生ごみ処理を見いだし, 「アシドロコンポスト化」と命名した.本プロセ スは生ごみ処理機に関する上述の諸問題を解決しうる潜在性を持っているものの,本技術の学問的裏づけ は手薄であり,微生物の評価に着手して,機器との相互関係を総合的に評価する必要があった.昨年度ま では,本プロセスの経過観察を行い,上に述べた本プロセスの特徴が長期間にわたり持続することをさら に確認するとともに,本プロセスの微生物叢において乳酸菌が主要な微生物として存在するという手がか りを得た.さらに複数の方法を用いて,本プロセスの微生物叢における乳酸菌の存在をより定量的に把握 した. -31- 今回はこのユニークなコンポスト化プロセスの微生物学的基盤を総合的に評価した.またプロセスのス ケールの拡大や生産物の用途開発を通じて,アシドロコンポスト化をさらに発展させる研究も行った. 2. 研究方法 2−1 アシドロコンポスト化の初期遷移相の解析 (1)コンポスト微生物のゲノム抽出 サンプリングしたコンポストサンプル 1 g(湿重量)に,0.1 M リン酸緩衝液(pH 8.0)3 ml 及び glass beads (150-212 microns, SIGMA)1 g を加え,3 分間激しく攪拌した.次に遠心分離し,上清を回収した.回収し た上清 400 l から,ゲノム DNA 抽出キット Mag Extractor -Genome-(TOYOBO)を用いて DNA を精製し た.得られた DNA 抽出液をエタノール沈殿により濃縮し,これを定量 PCR のテンプレートとした. (2)DGGE 上で得られた DNA 抽出液を用いて,コンポスト内に生息する微生物の 16S または 18S rDNA の一部を PCR により増幅した.PCR プライマーには,リボソーム小サブユニット DNA 中の全生物に保存された配列を用い た.また,DGGE で泳動する際,1400R プライマーに GC に富んだ領域を付加した.このプライマーを GC1400R ,dNTP(2.0 l) ,520F プライマー(1.25 l) ,1400R(GC1400R)プラ とした.10×PCR buffer(2.5 l) イマー(1.25 l) ,DNA 抽出液(1 l) ,polymerase (ExTaq TaKaRa,0.125 l),滅菌水を加えて 25 l と した.96℃で 120 秒インキュベートした後,96℃で 30 秒,51-55℃の温度勾配を 30 秒,72℃で 60 秒の熱 処理サイクルを 1 サイクルとしてこれを 35 回繰り返すことにより PCR を行った.サーマルサイクラーには TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice(Model TP600)を使用した. DGGE における DNA の変性剤として尿素とホルムアミドを用い,7 M 尿素, 40%(v/v)ホルムアミドを 100% 濃度の変性剤と定義した.尿素はナカライテスクから,脱イオン化ホルムアミドは和光純薬から購入した. 尿素は 7 M 水溶液を調製し,ゲル作成時に必要量使用した. 異なる変性剤濃度およびアクリルアミド濃度をもつ二種類の溶液を調製し,30 分間脱気した後,グラデ ィエントゲル作製装置を用いて両液を混合することにより,15%から 55%の変性剤濃度勾配をもつポリア クリルアミドゲルを作成した.泳動にはレゾルマックス・二連スラブ電気泳動装置を用いた.増幅 16S/18S rDNA(10 l)に泳動用色素を加え,200 V,58-58.5℃で,240 分間泳動させた.泳動終了後,ゲルをエチ ジウムブロミド水溶液に浸し,DNA バンドを染色した後,UV で DNA を可視化し写真撮影を行った. DNA バンドをカミソリで切り出し,ポリアクリルアミドゲルからの DNA 抽出キット(QIAEX Ⅱ Gel Extraction Kit,QIAGEN)を用いて DNA を抽出した.抽出した DNA 溶液を PCR で再増幅し,TOPO TA Cloning Kit(Invitrogen)を用いてクローニングした.形質転換した大腸菌からプラスミドを回収し,プラスミド を鋳型に PCR を行い,DGGE で目的 DNA バンドがクローニングされていることを確認した後,塩基配列の決 定を行った.シークエンサーには BECKMAN COULTER CEQ2000XL を用いた.得られた塩基配列に基づいて, 最も近縁な微生物をデータベース検索した. 2−2 アシドロコンポスト化における外来微生物の消長解析 (1) 微生物の培養とコンポストサンプルへの添加 添加微生物には Bacillus subtilis と Pseudomonas putida を用いた.B. subtilis を LB 液体培地(tryptone 1%, 酵 母エキス 0.5%,塩化ナトリウム 0.5%)2 l に接種し,30℃で培養した.培養液の光学濁度が 0.6 となるまで 培養後,遠心分離により集めた菌体を新鮮無菌 LB 液体培地 500 ml に 1.2×1010 cell/ml となるように懸濁し -32- た.P. putida の培養は LB 液体培地を用いて 26℃で行い,同様に 1.0×109 cell/ml の菌体懸濁液 500 ml を得 た. 東北大学生協工学部中央食堂で良好に運転している生ごみ処理機 BC-05(5 kg タイプ)によって製造 されたアシドロコンポスト(6 kg)をトレイにひろげ,培養B. subtilis 菌体を添加し,均一に混合した.この コンポストを空の生ごみ処理機BC-01 に投入した.滅菌 LB 液体培地500 ml を毎日定刻に添加した.菌体添加 前後に,コンポスト品温測定とサンプリングを行った. P. putida 菌体添加系についても同様の操作を行っ た. (2) 定量 PCR の検量線の作成 添加微生物とアシドロコンポスト内に存在すると考えられる乳酸菌の細胞数を測定するため,定量 PCR の検量線を作成した.まず以下の手順で B. subtilis,P. putida,Lactobacillus delbrueckii のゲノムを抽出した. LB 液体培地に生育した菌体を遠心分離により回収し,菌体に 9.5 ml の TE,0.5 ml の 10%SDS,50 µl の proteinase K (50 mg/ml)を加え,37℃で 1 時間インキュベートした.得られた混液に 1.8 ml の 5 M NaCl,1.5 ml の 10% hexadecyltrimethylammonium bromide 水溶液を加え,さらに 65℃で 20 分間インキュベートした. この混液に等量のクロロホルム/イソアミルアルコールを加え,二相分配を行い,水相を回収した.この 水相に等量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを加え,二相分配を行い,水相を回収し た.回収した水相にその5倍容の 2−プロパノールを加え,−20℃で2時間放置し,沈殿を回収した.沈殿 を 2 ml の TE に溶解した.得られた DNA 溶液の DNA 濃度 C(g/ l)を UV-VIS 分光光度計 Gene SpecⅢ を用いて測定した.次いで,ゲノム DNA が1細胞あたりに1分子含まれることを利用して,DNA の濃度 からテンプレート溶液(5 l)中に含まれる細胞数 n を求めた. (3) 定量 PCR 定量 PCR は LightCycler1.0 (Roche Diagnostics) を用いて行った. PCR 反応試薬には LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green Ⅰ(Roche Diagnostics)を使用した.この試薬には蛍光プローブとして SYBR Green Ⅰが含まれている.B. subtilis の遺伝子(ypkP の一部) ,P. putida の遺伝子(algP の一部) ,および Lactococcus 属以外の乳酸菌(Lactobacillus 属,Pediococcus 属,Leuconostoc 属,Weisella 属)の遺伝子(16S rDNA)をそ れぞれ増幅するプライマーの塩基配列を用いた. 3. 結果と考察 3-1 アシドロコンポスト化の初期遷移相の解析 解析を行った期間のアシドロコンポストのpH はpH 5∼7 の間にあり, 大きな変動を示さなかった. また, コンポストの品温も 50℃前後で安定していた. コンポスト中の微生物叢を PCR-DGGE 法により分析し,また塩基配列を決定できた DNA バンドを与え た微生物について,それと最も近縁な微生物種の帰属を行った.コンポスト化を開始してから 10 日間は, コンポスト中に Bacillus 属や Acinetobacter 属などの乳酸菌以外の DNA バンドが多数出現していたが,11 日 目から乳酸菌の DNA バンドが出現し始め,26 日目以降になると DNA バンドは全て乳酸菌となり,時間経 過とともに乳酸菌の種類も増加した.このことから,コンポスト中の微生物叢が乳酸菌を優占種とするも のに変遷するまでには,最初に乳酸菌が検出されてから 2 週間程度を必要とすると考えられた. アシドロコンポスト化を開始し,1 日目に出現した Bacillus 属はタンパク質分解細菌やデンプン分解細 菌としても知られ,アシドロコンポスト化以外の様々なコンポスト化過程においても一般的に見られる細 -33- 菌である.その後,4 日目に出現した Geobacillus toebii は最適生育温度が 65℃という好熱性の細菌で, アシドロコンポスト化の環境条件に合致したものであると考えられる.10 日目に出現した Acinetobacter 属は多数の有機化合物の資化に関与するとされている.これら非乳酸菌微生物群はコンポスト化開始後 11 日目以降,乳酸菌と競合状態を経て,やがてコンポスト中には検出されなくなった.アシドロコンポスト 化を開始してから 11 日目以降に最もよく観察された乳酸菌は Pediococcus acidilactici であった.その 他にも多種類の乳酸菌が検出されており,これら乳酸菌の生産する乳酸や他の有機酸がコンポストの pH 維 持に寄与しているものと考える. アシドロコンポスト化において検出された微生物種は本コンポスト化を開始するために添加した菌種 (種菌,Alicyclobacillus sendaiensis などの好熱好酸性微生物群)とは異なるため,偶発的に生ごみや 大気中から混入したと考える.DGGE ゲル上には,塩基配列を分析できなかったバンドが多数存在し,種菌 のひとつである Alicyclobacillus sendaiensis のバンドもその中に含まれていると考えられる.多くの微 生物種がコンポスト中に混入したと考えられるが,微生物叢は最終的に乳酸菌に落ち着いたことから,本 コンポスト化においては,乳酸菌がコンポスト中で自らに適した環境をつくりだしているのではないかと 考えた.乳酸菌がバクテリオシンを生産する可能性も報告されており,この生産物が他の微生物の生育を 阻害している可能性も考えられた.また,コンポスト中の優占種が乳酸菌となるまでの遷移期間を短縮す ることで,いち早く安定で安全なコンポスト化過程を確立できると考える. 3-2 アシドロコンポスト化における外来微生物の消長解析 アシドロコンポスト化生ごみ処理機に外部から大量の微生物を意図的に添加し,添加した微生物の消長 を定量 PCR で追跡した.添加する微生物はグラム陽性菌の代表例として B. subtilis を,またグラム陰性菌の 代表例として P. putida を選び,コンポスト 1 g あたりそれぞれおよそ 107 程度となるように添加した.実験 期間中,生ごみの代わりに LB 培地を追加し,アシドロコンポスト化装置を運転した.B. subtilis 添加系と P. putida 添加系いずれの場合にも,コンポストの品温は 40∼50℃,pH は 6.1 6.3 前後で安定に推移した. これらの結果から,外来微生物の添加にも関わらず安定で良好なアシドロコンポスト化が行われたといえ る. 乳酸菌に対する B. subtilis や P. putida の存在比の経時変化をそれぞれ 図 1, 菌の細胞数の 260 倍存在した B. subtilis は添加 3 2 に示す.添加時に乳酸 4 日後に乳酸菌と同程度になり,7 日後には乳酸菌の 10 分の 1 以下まで減少した.一方,添加時に乳酸菌の細胞数の 46 倍存在した P. putida は 3 5 日後に乳 酸菌と同程度になり,7 10 日後には乳酸菌の 10 分の 1 以下にまで減少した. B. subtilis,P. putida の消長を別のアプローチから確認することを目的として DEEG 解析も併せて行っ た. B. subtilis 添加系では,B. subtilis と考えられるバンドはアシドロコンポスト化の経過とともに 薄くなりやがて消滅した.また P. putida 添加系でも,P. putida と考えられるバンドは時間経過ととも に薄くなった.いずれの場合にも,時間経過とともに乳酸菌のバンドが主なものとなった.こうした PCR-DGGE 解析の結果は,上に述べた定量 PCR の結果と一致していた. 以上のように,栄養豊富と考えられるアシドロコンポスト中で外来微生物が増殖せず,その細胞数が減 少していく理由として, 1)コンポストの弱酸性の中 高温条件に外来微生物が適応できなかった 2)コンポストに常在する菌との競合 (コンポスト中の生息の場および栄養物の奪い合い) により淘汰さ -34- れ,除去された 3)乳酸菌が生産する乳酸などの有機酸や抗菌性ペプチドであるバクテリオシンにより外来微生物の生育 が阻害されたなどの点が上げられる. 時間経過とともに乳酸菌のような常在菌のバンドが出現してメインバンドとなったという事実は,乳酸 菌(常在菌)が添加微生物との競合にうちかった結果であり,上に述べた 2)を裏づけている.また B. subtilis の生育阻害実験によれば,B. subtilis は塩酸酸性では pH 4.5 でも生育阻害は起こらないが,乳 酸酸性では同じ pH で生育阻害が観察されている.このことは 3)の理由の裏づけとなるものと考えられる. 図 1 図 2 -35- 3-3 アシドロコンポストの飼料特性評価 (財)日本食品分析センターに依頼し,アシドロコンポストの飼料としての特性を評価した.品質(栄養 成分:水分,粗たんぱく質,粗脂肪,粗繊維,粗灰分,リン,カルシウム)および有害物質(ヒ素,鉛, カドミウム,総水銀,総クロム)という二つの観点から評価を行った.二つの異なる家庭に設置したアシ ドロコンポスト化装置にて生産されたコンポストを評価試料とした.分析の結果,アシドロコンポストは 飼料として適したものであることがわかった. 3-4 アシドロコンポスト化のスケールアップ 神奈川県の神奈川漬物工業組合が運営する神漬グリーンリサイクルセンターの密閉型のセミプラントを 使用して実験を行った.漬物材料の加工残滓を粉砕器により搾汁して得られる残滓を,日平均で 3.1 から 4.2 t(湿重量)を 200 日間(日曜日以外の毎日)投入した.合計 702 t(湿重量)の残滓をアシドロコンポ スト化で処理して 30 t のコンポ ストを得た.湿重量からの生成物の歩留まりは約 4%であるが,野菜くず を絞っているので 702 t の 20%を固形物と仮定すると実際には 140 t を処理したことになり,約 30 t はその 約 20%となる.この間,コンポストの pH は 3.9-4.3 で推移し,菌やおがくずは一度も交換しなかった.得 られたコンポ ストは非常に良好な堆肥であり,乾物あたりの窒素は 3.61%,リン酸全量は 1.43%,カリ全 量は 4.04%,石灰全量は 1.36%,苦土全量は 0.37%,有機炭素 37.65%,C/N 比 10.4 であった.従って, 密閉式の処理機を使う場合には1日 4 トン程度の残滓の投入は問題ないことが明らかになった. 完全オープン型処理試験が今後の課題として残った. 4. 結論 アシドロコンポスト中の微生物叢が非乳酸菌から乳酸菌を優占種とするものに変遷するまでには,本コ ンポスト中で乳酸菌と非乳酸菌が競合した状態から 2 週間程度を要すると考えられる.また,本コンポス ト中に乳酸菌を優占種とする微生物叢が 1 度形成されると,非乳酸菌の微生物種が検出されにくくなる. しかしながら,生ごみの分解は良好に進行することから,アシドロコンポスト化方式では乳酸菌がコンポ スト内の環境維持を行うだけでなく,生ごみの分解にも関与しているのではないかと考える.コンポスト 中の優占種が乳酸菌となるまでの遷移期間を短縮することで,いち早く安定で安全なコンポスト化過程を 確立できると考えられる. アシドロコンポスト化に外来微生物(B. subtilis と P. putida)を添加し,その消長を定量 PCR と DGGE で 追跡し,生ごみ処理機の微生物学的な安全性評価を行った.その結果,これらの外来微生物はアシドロコ ンポスト中で増殖できず,その細胞数がコンポスト化の進行とともに減少していくことが明らかになった. このことから食中毒菌のような有害な微生物種が生ごみ処理機内に混入しても,それらの微生物が生ごみ 処理機内で定着し増殖することはまずあり得ないことが示唆され,アシドロコンポスト化の微生物学的な 安全性が強く示唆された. アシドロコンポストの飼料としての特性を,品質(栄養成分:水分,粗たんぱく質,粗脂肪,粗繊維, 粗灰分,リン,カルシウム)および有害物質(ヒ素,鉛,カドミウム,総水銀,総クロム)という二つの 観点から評価を行った.その結果,アシドロコンポストは栄養成分の点で飼料として適したものであり, 有害物質の点から飼料として安全であることがわかった. 密閉型のセミプラントを使用してアシドロコンポスト化のスケールアップ実験を行った.約 200 日間に わたって,合計 702 t(湿重量)の残滓をアシドロコンポスト化で処理して 30 t のコンポ ストを得た.こ -36- の間,コンポストの pH は 3.9-4.3 で推移し,菌やおがくずは一度も交換しなかった.得られたコンポ ス トは非常に良好な堆肥であった.従って,密閉式の処理機を使う場合には1日 4 トン程度の残滓の投入は 問題ないことが明らかになった. -37- 素材構成と地域性を活かしたポリエステル廃棄物からの BTX 転換処理技術の開発 研究期間(西暦)=2003−2005 研究年度(西暦)=2005 研究代表者=吉岡敏明(東北大学) 共同研究者=青木秀之(東北大学) 1. 研究目的 地球規模の環境問題が顕在化してきた現在,持続可能な循環型社会形成への社会的要求が高ま り,資源の有効利用技術の確立が求められている。それに伴い,リサイクルへの関心も高まって おり,PET ボトル回収量も増加の一途をたどっている。現在は主にマテリアルリサイクルによる 再利用が主流であるが,市場の飽和が懸念される。またボトル to ボトルも稼動し始めたが,原料 である廃 PET ボトルの回収が大きな問題となっている。また,これらのリサイクル方法では,対 象が PET ボトル等高純度製品のみに限られる。 そこで本研究では,混合廃プラスチックのリサイクル技術として実用化されている熱分解油化 に着目した。熱分解油化では,ボトルはもちろんのこと,繊維やフィルム,シートなど多様な PET 製品のリサイクルが期待できる。しかし,PET の熱分解では,TPA 等の昇華性物質の生成による 装置の腐食や閉塞等の問題が生じるため,これらの生成の抑制が必要となる。 これまで, FeOOH を触媒として用いることにより,500℃での油化を実現しているが,アセト フェノンやベンゼン,フェノールなどが生じ,生成物の選択性が低い。PET と消石灰を混合し, 600℃以上で分解することにより,昇華性物質の生成を抑制し,ベンゼンを高選択的に生成させる ことが可能となった 1−4)。しかし,現在実用化されている油化プラントの熱分解温度は 400~500℃ であり,この温度域で分解を進ませる必要がある。また熱分解温度域では消石灰は脱水するため, 生石灰の利用可能性を検討する必要がある。 そこで本研究では,PET の熱分解油化における生石灰の利用可能性,低温度域での油化及び連 続処理を目的として,二段反応器による PET 加水分解の効果,生石灰固定層を用いた低温度域で の油化,スクリューフィーダーによる連続供給および PET 熱分解反応速度定数の算出および反応 モデルの提案を行った。 2. 二段反応器を用いた PET の油化 2.1 研究方法 図 2.1 に,二段反応器の概略図を示す。PET の加水分解過程と熱分解過程を分けてプロセスを 実現するために、反応器(石英製,直径 20mm 長さ 730mm)には,2 つの目皿を設置し,上部(一 段目)及び下部(二段目)温度は,二台の電気炉を用いてそれぞれ調整した。また,水蒸気を供 給するため,水蒸気発生管の下部から所定量の水をポンプにより供給し,水蒸気を発生させ,ヘ リウムと混合状態とした後,反応管に流通した。ヘリウム流量は,流量計により調節した。なお, -38- 反応管と水蒸気発生管の間は,フレキシブルヒータで加熱することにより水蒸気の凝結を防いだ。 サンプルホルダー 水蒸気割合,一段目・二段目温度及び生石灰充填量を一定 He とし,生石灰の充填箇所を変えた。実験1では生石灰は充 試料 反応器 グラスウール 電気炉 填せず,実験 2 では一段目に,実験 3 では二段目に充填した。 T T 熱電対 2.2 結果と考察 図 2.1 に,各条件における生成物収率を示す。対象とし He て,PET/CaO,700℃における結果を示す。また表 3.1 に T 水 ポンプ その詳細を示す。 生石灰を充填せずに PET のみを分解した場合,昇華性 物質収率は 29.2C%,油分収率は 11.8C%であり,加水分解 ガス バッグ 氷冷 が進行するものの,TPA の分解は進まなかった。特にベン ゼンの収率は 0.2C%と極めて小さかった。 図 2.1 二段反応器概略図 生石灰を一段目に充填した実験 2 では,油分収率は 9.0C%,ベンゼン収率は 5.6C%で,昇華性物質 100 は 20.3C%生成した。これは,TPA は生成後直 ちに生石灰と接触するものの,450℃では TPA 80 収率[C%] の分解反応が進まず,そのまま析出したためと 考えられる。 一方,生石灰を二段目に充填した実験 3 では 60 昇華性物質 40 油 分 収 率 が 36.6C% で , 昇 華 性 物 質 収 率 は 20 1.6C%となった。 一段反応器の場合と比べると油分収率は減少 残渣 気体分 その他 油分 ベンゼン 0 1 するものの,昇華性物質の生成が減少し,また 2 3 対象 図 2.1 生成物収率に及ぼす二段反応器 の影響 アセトフェノンをはじめとするベンゼン以外の 油分収率が減少した。また,ベンゼン選択性が 81.2%と大きく向上した(図 2.2)。これは,一段目の加水分解により TPA が選択的に生成された ベンゼン回収率及び選択性[%] ため,ベンゼン生成量が増大し,また,熱分 解による副生成物の生成が抑制されたためと 考えられる。このように,450℃で予め PET を加水分解し,生成した TPA を 700℃の生石 灰と接触させることにより,ベンゼン選択性 が大きく向上することが分かった。 二段反応器を用いた場合,いずれの場合も 残渣割合が増大している。これは,反応器長 100 ベンゼン選択性 80 ベンゼン回収率 60 40 20 0 1 さが約 2 倍に長くなり,生成物の滞留時間も 2 3 対象 図 2.2 ベンゼン回収率及び選択性に及ぼ す二段反応器の影響 約 2 倍に長くなったため,高温度域において 生成物のチャー化が進んだためと考えられる。 -39- 3. 生石灰固定層を用いた PET の油化 3.1 研究方法 装置は前述のものと同様のものに,連続供給のためのスクリューフィーダーを反応管上部に設 置し,可変式モーターにより供給量を調節した。 3.2 結果と考察 表 3.1 に,連続供給時の生成物収率を示す。対象は,微粉砕 PET0.50g を同条件で分解した場合 である。連続供給では,油分収率が若干減少した。また,アセトフェノン収率が大きく増大して いた。アセトフェノンは PET の熱分解反応時に生成し,特に供給速度の大きい 2 において副生成 物の収率が大きかったことより,連続供給では加水分解が阻害され,熱分解が進んだことがわか る。このように連続供給では加水分解が阻害され,TPA の生成量が減少するため,ベンゼン回収 率及び選択性も減少したと考えられ 表 3.1 生成物収率に及ぼす連続供給の影響 る。また,熱分解が進むことより, チャー化も進み,残渣割合が大きく 番号 油分 Benzene なった。 Toluene 実験 3 において 6.8C%の昇華性物 Styrene 質が生成した。目視での観察では, Acetophenone Biphenyl 約 20 分,投入量約 6.7g 時に反応器 Others 気体分 下部への昇華性物質の析出が認めら Hydrogen れ,供給終了まで生成量が増大した。 Methane Ethylene これは,PET の分解により生じた残 Ethane Carbon monoxide 渣及び炭酸カルシウムによって,生 Carbon dioxide 石灰表面が覆われ,TPA と生石灰と 昇華性物質 Terephthalic acid の接触効率が低下し,TPA の分解が Benzoic acid CaCO3中のCO2 進まずに析出したためと考えられる。 残渣 4.3.4.において, スクリューフィーダ 合計 ーを用いて PET の連続油化を行っ wt% 1 2 27.7 32.0 20.8 20.2 0.7 0.6 0.2 0.2 4.2 6.6 1.2 1.1 0.6 3.3 4.1 4.9 0.2 0.0 1.8 2.7 0.5 1.0 0.0 0.0 1.3 0.6 0.3 0.6 0.0 7.0 0.0 5.1 0.0 1.9 57.0 52.2 − − − − 対象 31.8 26.4 1.0 0.2 0.0 2.5 1.7 9.1 0.9 3.1 0.5 0.0 0.7 3.9 0.0 0.0 0.0 65.7 − − ベンゼン回収率[%] ベンゼン選択性[%] 対象 46.9 39.1 1.4 0.3 0.0 3.6 2.5 6.3 0.0 3.8 0.3 0.0 0.5 1.7 0.0 0.0 0.0 28.7 18.1 100.0 C% 1 40.2 30.6 1.0 0.3 4.2 1.8 2.3 3.9 0.0 2.2 0.7 0.0 0.9 0.1 0.0 0.0 0.0 24.9 31.0 100.0 2 43.1 29.8 1.0 0.3 6.3 1.5 4.2 3.1 0.0 1.5 0.6 0.0 0.8 0.2 6.8 4.7 2.1 22.8 24.2 100.0 65.2 83.0 51.0 75.1 49.7 63.1 たが,油分収率及び選択性が減少し た。そこで,連続供給よる付加価値の大きな油 100 分の回収を目的に,PET 供給方法及び温度の影 残渣 80 PET 供給時は 400℃とし,供給後 500℃に昇 温した。また実験 3 では生石灰層温度を 550℃ として連続供給した。500℃で連続供給した場 収率[C%] 響について検討した。 60 気体分 40 20 合を対象とする。 図 3.1 に各条件での生成物収率を示す。生石 灰と混合しても,生成物収率に大きな変化は認 められず,影響は小さいと考える。400℃で加 -40- CaCO3中の CO2 その他 油分 ベンゼン 0 対象 1 2 3 図 3.1 生成物収率に及ぼす生石 灰混合及び温度の影響 で分解する手法では,油分収率が減少するもの の,ベンゼン選択性が 82.1%で最大であった(図 3.2)。このように連続供給をする場合でも,低 温で PET を加水分解して TPA を生成し,その 後中間体である TP-Ca を分解するような二つ の温度域を設けることにより,付加価値の大き ベンゼン回収率及び選択性[%] 水分解反応を促進し,生成した TP-Ca を 500℃ な油分の回収が可能である。一方 550℃で分解 した場合,ベンゼン選択性は低下したものの, 100 ベンゼン回収率 80 ベンゼン選択性 60 40 20 0 対象 1 2 3 図 3.2 ベンゼン回収率・選択性に 及ぼす生石灰混合及び温度の影響 油分収率は 50.2C%と大きかった。 4. PET 熱分解反応速度定数の算出および反応モデル 落下型熱分解炉での反応を想定し,N2 ガスおよび壁面温度は設定温度にあわせた。また,初期 粒子温度は 298K, 時間刻みは 1.0×10−5,反応時間は 60s とした。反応速度定数は TG 実験よ り算出した値を用い,それぞれの反応速度式を以下のように求めた。 ・PET 分解速度 R1 dm p1 dt E a1 m p1 RTp k 01 exp 0.27 m p 0 (1) ・TPA 生成速度(=TP-Ca 生成速度) R2 dm p2 (2) R1 dt ・TP-Ca 減少速度(CaCO3 生成速度) R3 dmp3 dt k 03 exp E a3 m p4 RTp 0.56m p 2 (3) ・TP-Ca 総括速度 R4 dm p4 dt R2 (4) R3 ・CaCO3 分解速度 R5 dmp4 dt k 04 exp E a4 mp5 RTp 0.55m p 3 (5) ・CaCO3 総括速度 R6 dm p5 dt R4 (6) R5 ここで,mp0 は PET の初期質量, mpi は時刻 t における粒子質量である。密度は一定とし,熱分 -41- 解による粒子の重量変化は粒子径の減少として取り扱った。また, k0i, Eai はそれぞれの物質の頻度 因子および活性化エネルギーである。TG による反応速度解析を行い,PET,TP-Ca および CaCO3 の反応速度定数を決定した。 落下型熱分解炉により水蒸気雰囲気下 PET/CaO の熱分解を行い, 各反応時間における生成物を測定した。この実験結果と提案した反応モデルを用いた解析結果 PET から生成した TPA がすべて CaO と反応し TP-Ca になるとすると,反応温度が高いほどオイル, ベンゼンおよびガスの収率が高くなることが明らかとなった。 5. 環境配慮の立場から地域性を考慮した PET 油化プロセスの立地の可能性 プラスチックを石炭等の化石資源 代替として利用することにより,基 幹産業から排出される炭酸ガスを抑 制することができる。現在未利用の プラスチックを利用したたけでも電 力産業では 4.7%,鉄鋼では 2.2%, セメントでは 27.3%に達する。しか し,これを実効性の高いものにする に は , 遠 距 離 輸 送 で はな く , 半 径 100km 圏内で実施することが有効で ある。図 4.1 は各地域に点在する基 幹産業の工場立地分布を示しており, 半径 100km 圏内を想定するとほぼ国 内全域を網羅できることが分かる。 これは,新たにプラスチック処理施 設を建設しなくても,既存の設備に 本研究で行った PET 等の油化プロセ スを組み合わせることにより,有効 図 5.1 基幹産業を利用する地域性を活かしたリサイクルシステムの概念 なリサイクルシステムの構築ができ ることを示唆している。 参考文献 1) T. Yoshioka, E. Kitagawa, T. Mizoguchi and A. Okuwaki, Chemistry Letters, 33, 282-283 (2004) 2) Toshiaki Yoshioka, Guido Grause, Christian Eger, Walter Kaminsky and Akitsugu Okuwaki, Polymer Degradation and Stability, 86, 499-504 (2004). 3) Toshiaki Yoshioka, Tomohiko Handa, Guido Grause, Zhigang Lei, Hiroshi Inomata, Tadaaki Mizoguchi, Journal of Analytical and Applied Pyrolysis, 73 (2005) 139-144 4) Toshiaki Yoshioka, Guido Grause, Shoichi Otani and Akitsugu Okuwaki , Polymer Degradation and Stability, 91, 1002-1009 (2006). 5) T. Yoshioka, and A. Okuwaki, Trans. Mat. Res. Soc. Japan, 29[5], 1807-1811 (2004) -42- アスベスト廃棄物の無害化条件に係る緊急研究 研究期間(西暦)=2005 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=酒井 伸一(独立行政法人国立環境研究所客員研究官・京都大学教授) 共同研究者名=貴田 晶子、山本 貴士、寺園 淳、野馬 幸生(国立環境研究所)、 藤吉 秀昭(日本環境衛生センター)、長田 守弘(新日本製鐵㈱)、 山本 高郁(住友金属工業㈱)、片岡 義雄(㈱カムテックス)、 大和田 彰(㈱エーアンドエーマテリアル)、安田 俊彦(日立造船㈱) 1.研究目的 アスベスト廃棄物の分解条件・除去条件の探索と分解実証に焦点を絞った緊急研究として、つ ぎの 4 課題について検討することを目的とした。第 1 には、既存の都市ごみ処理システムとして、 粗大ごみの破砕処理、焼却、灰溶融のプロセスシステムにおけるアスベストの挙動を把握するた めの実測定を行う。廃棄物の破砕過程にアスベスト廃棄物が存在した場合、大きな飛散要因とな る。そのため、アスベストセメント製品等の破砕過程の挙動と廃ガス除去性能に関する実証的検 討の実施を第 2 の目的とする。第 3 には、アスベスト廃棄物の高温溶融分解技術を取り上げる。 本技術は、喫緊に技術確立が求められる実証的課題であるため、実用規模のシャフト炉、表面溶 融炉を用いた実証的検討を行い、温度等の分解条件との比較検討を行う。そして、こうした廃棄 物分解過程におけるアスベスト分析方法の開発が第 4 の目的である。 2.研究方法 上記の目的を達成するため、以下の方法で研究を進めた。 (1) 現状の都市ごみ処理システムにおけるアスベストの挙動 一般廃棄物処理施設である粗大ごみ処理施設及びごみ焼却施設において、アスベストが混入し ていないときの通常運転時とアスベストを混入したときの処理時において、発じん状況を調査し、 破砕ガス、焼却排ガス中等のアスベストを測定・分析して処理実態を把握するとともに、その結 果を受けて適切な対策を検討する。 (2) 廃棄物破砕過程の挙動と廃ガス除去性能に関する実証的検討 低速回転の二軸せん断式破砕機と高速回転のハンマーミルにより、アスベスト含有建材および 非アスベスト建材を破砕した場合の排ガス等に含まれるアスベストを、廃ガス処理過程と周辺環 境で把握する。廃ガス処理としてはバグフィルタおよび HEPA フィルタを用いる。 (3) アスベスト廃棄物の高温溶融分解の実証的検討 実用規模のシャフト炉と表面溶融炉を用いた高温溶融分解の実証実験を行い、実用機に向けた 無害化確認と技術的留意事項の確認を行う。この際、飛散性アスベスト廃棄物の溶融温度として 概ね 1500℃以上と規定されているが、この温度の低減可能性を模索することはエネルギー保全の 側面からは望ましい。その一方、十分な分解がなされていることは必須条件である。そのため、 -43- セメント焼成キルン条件や他の温度条件での分解特性を比較検討する。 (4) 廃棄物分解過程を中心としたアスベスト分析方法開発 無害化処理に係る試料群の試験方法の確立をめざして、アスベスト繊維の形状・繊維数・濃度 を高感度で分析する方法と実機処理におけるモニタリングに必要な日常分析法の確立に向けた取 り組みを行う。 3.結果と考察 3-1 廃棄物分解過程を中心としたアスベスト分析方法開発 一般大気、作業環境大気、建材等のアスベスト分析には公定法が用意されているが、廃ガスや 処理後の固体についての分析法は開発されていない。そこで、(1)廃ガス中で粉塵量が多い場合の 採取法及び分析前処理法、(2)溶融スラグ等の固体試料の分析法を中心に検討した。(1)については、 多量に粉塵が存在するとマトリックス粒子によって繊維数が過小に計数されることから、通常の ろ紙法に加え、インピンジャー+ ろ紙法による採取、ろ紙の溶媒分 水砕スラグ 徐冷スラグ 粉砕 散(水及びギ酸)法を採用し、比較 ・めのう乳鉢 0.5mm以下 した。溶媒分散法によれば通常の 溶出 位相差顕微鏡(分散染色法)による ・スラグ 5gに対して無じん水 50ml加える ・振とう(200rpm、6時間) JLT46準拠 繊維数よりも 1∼2 桁高い値を示 した。マトリックスの影響が除去 (L/S=10) 固液分離 される方法であるが、アスベスト 繊維束をより微小な繊維に解体 する可能性もあり、現状ではこれ 溶出液 残渣(粒子) らの分析を平行して行うのが適 ・一部(1mL)を取り、50mLに分散させる ・孔径0.2µmのポリカーボネートフィルターでろ過 当と判断した。(2)については、1% 吸引ろ過 を定量限界とする建材のアスベ ・できるだけ均一にフィルター上に分散させる ・TEM観察可能な量に、数段階希釈液とする スト分析法(蛍光 X 線分析及び分 散染色法)では溶融スラグをアス PCフィルター ベスト廃棄物の無害化処理物と ・フィルターを1/4の扇形に切る ・スライドガラス上に両面テープで貼付 ・カーボン蒸着(20∼30nmの厚さ) して評価するには不十分であり、 溶融スラグ等に含まれるアスベ TEMグリッド スト繊維計数法として、固体の水 ・3mm角に切り取り、TEM用グリット200メッシュに載せる ・クロロホルム蒸気でろ紙を溶解 溶出液の繊維計数、走査型電子顕 微鏡による固体表面の繊維観 察・計数を提案した。更に水抽出 SEM観察 ・2000∼3000倍で観察 ・50粒子の表面 液のアスベスト鉱物繊維を区別 し定量するために、透過型電子顕 微鏡による定量法を確立した(図 TEM観察 ・形態観察、ED、EDSにてアスベスト繊維・繊維束計数 ・10000倍 ・4目開き又は100本まで計数 ・分析感度(繊維数/g)は およそ1Mf/gとなる 分析感度:S=Af÷(Ag×w×k)、ここで、Af:フィルタの有効面積、Ag:目開き の面 積、w:ス ラグ重 量(g)、S:分析感度(構造体/L)。仮に、 Af=1200mm2 、 Ag=0.0064mm2、w=0.05g、k=4目開とする と、S=1×106構造体/g、 1)。 図1 無害化処理物(溶融スラグ)中アスベストの分析フロー -44- 3-2 現状のごみ処理システムにおけるアスベストの挙動 アスベスト含有家庭用品が廃棄物となったものを模擬する試料として、アスベストを含むシー トパッキンを選択し、粗大ごみ、不燃ごみの投入ごみ量に対して約 1.3%(アスベスト混入率約 0.84%)混入させたときの実態を調査した。破砕ガスについては、バグフィルタ入口で 53f/L 及び 34f/L である一方、出口で定量下限値(0.44/L)未満及び 0.30f/L と一般大気環境レベルの濃度となっ ていた。焼却施設・溶融施設の、投入ホッパで発じん測定を行ったところ、20f/L と屋外ガイドラ インの管理濃度である 0.15 本/ (150 本/L)を下回り、排ガスについては、バグフィルタ出口で定 量下限値(0.31f/L)未満と一般大気環境レベルの濃度であった。 3-3 廃棄物破砕過程の挙動と廃ガス除去性能に関する実証的検討 産業廃棄物破砕施設テストプラントでアスベスト含有スレート材のみを二軸破砕機及びハン マーミルで処理したときのバグフィルタ入口のアスベスト濃度はそれぞれ 12f/L、330f/L であり、 出口でいずれも定量下限値未満(<1.1f/L)であった。これから、バグフィルタはアスベストに対し ても十分な捕集性能(除去率 90%以上)を期待できることが分かった。低速回転式の破砕機ではバ グフィルタのろ過風速の影響も調査したが、1m/min および 3m/min で大きな差はなかった。なお、 敷地境界ではいずれの試験においても定量下限値(0.13f/L)未満となり、アスベスト含有物を処理し ていない場合と変わらない結果であった。ただし、破砕によるアスベストの室内飛散は、特に細 破砕に用いる高速回転式破砕機で屋外ガイドラインの管理基準を大きく上回っており、破砕機の 密閉構造化もしくは破砕機室の設置が必要となることが確認された。 3-4 アスベスト廃棄物の高温溶融分解の実証的検討 溶融スラグのアスベスト分析法について、考えられる前処理及び測定方法を表1に示す。 表1 溶融スラグの分析方法 固体分析 固体前処理 直接法 水分散 間接法 溶出 1) 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) XRD PCM-C3) PCM-DS4) SEM5) TEM6) ○7) x ○ ○ 溶媒分散 (ギ酸) 1) 2) % 8) x ○ x Mf/g 8) ○ 繊維の確認 ○ Mf/g 8) ○ 繊維の確認 f/g 8) f/3000 粒子 8) ○ ○ Mf/g 8) 水分散法は、固体を水分散させ残渣をろ紙に捕捉し分析試料とする。溶出法は、内部に存在する繊維を、試 料粉砕−溶出操作によって水に分散させることを目的とした方法である。従って、表面及び内部のアスベス ト繊維としては、両方法の分析値を加算すればよい。 XRD:X 線回折法、 PCM-C:位相差顕微鏡法(計数) PCM-DS:位相差顕微鏡法(分散染色) SEM:走査型電子顕微鏡法 TEM:透過型電子顕微鏡法 ○:可能な方法、x:ほぼ不可能である方法 本研究で採用した方法については単位を記載している。Mf/g:Million fiber per gramme, f/g:fiber per gramme, f/3000 粒子:3000 粒子カウントしたときの繊維数 -45- 実用規模の溶融方式による分解実証試験を、シャフト炉式 2 型式(いずれも熱源にコークスを用 いており、空気酸化方式と高濃度酸素利用方式)と酸素を用いたバーナ溶融による表面溶融方式に ついて行った。アスベストの溶融処理に伴うアスベストの排ガスや水砕水等への移行については、 現時点で得られている分析結果によれば、アスベスト濃度は低く、溶融処理によるアスベストの 無害化の効果があったと考えられる。溶融処理に伴い生ずるスラグや飛灰については、分散染色 法による結果ではアスベストは検出されなかった。 最上部にサイクロンの付いた垂直直筒型流動焼成炉を任意の温度に調整し、その炉内に飛散の 可能性のある粒度に粉砕したアスベスト含有建材廃棄物を投入し、その排ガス中のアスベスト繊 維濃度を測定し、アスベストの無害化に有効な温度と時間条件を調査した。アスベスト含有建材 廃棄物(クリソタイル 10%、アモサイト 2%含有波板廃材粉砕品)を一定の割合で炉内に投入した結 果、炉内温度 900℃で炉内滞留時間が約 0.8 秒での排ガス中のアスベスト濃度は 10∼15f/L となっ た。滞留時間を同じくし炉内温度を 950℃とした場合は 3∼5f/L と減少し、1000℃以上でほぼ定量 下限レベルとなった。950℃以上での焼成であれば、短時間でアスベストを低濃度まで改質できる 可能性は確認できたが、今後は実機での実証実験が必要である。 4.結論 アスベスト廃棄物の破砕処理においては、飛散管理は必要であるが、適正に管理されたバグフ ィルタではアスベストの捕集を期待できる結果となった。シャフト炉型ガス化溶融炉、および表 面溶融炉によるアスベスト廃棄物の高温溶融分解技術を実証した。現時点で分析確認していると ころによれば、一般廃棄物及び産業廃棄物をベースにアスベスト含有廃棄物を混合溶融処理した 結果、処理生成物中のアスベストが十分に分解できていることを確認するとともに周辺環境にも 影響がないことを確認している。アスベスト廃棄物の無害化処理に係る試料群のサンプリング法 及び定量法における課題を検討し、また溶融スラグ等処理物のアスベスト分析法として水溶出法 を提案した。 -46- 研磨スラッジ産業廃棄物の再資源化及び利用技術に関する研究 研究期間(西暦)=2005-2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=松崎邦男(産業技術総合研究所) 共同研究者名=花田幸太郎(産業技術総合研究所) 、初鹿野寛一(産業技術総合研究所)、 清水透(産業技術総合研究所) 、鳥阪泰憲(産業技術総合研究所) 、 加藤正仁(産業技術総合研究所) 1. 研究目的 省資源化、循環型社会の構築等が切望されている中、産業廃棄物最終処分場の不足による処理 コストの高騰により、ゼロエミッションへの取り組みが重要な課題となっている。金属系産業廃 棄物の中でも、特に、金属部品の研磨加工工程で排出される研磨スラッジは、金属加工を行って いるすべての工場から排出され、極めて微細な砥粒(研磨材)や研削液等の不純物を多く含んで いる。そのため、これまで有効な再資源化技術も確立されておらず、産業廃棄物として約 720 ト ン/年以上も廃棄処分されているのが現状である。本研究開発は、ステンレス系研磨スラッジに ついて、プレスレス精製処理技術、プラズマ溶射法による粉体化技術、再溶解技術の開発を行い、 有効な再資源化技術の確立を図るものである。また、粉末成形法及び粉末射出成形法による研磨 スラッジの成形技術の開発を行うとともに、金型部品等の試作・試験を行い、研磨スラッジの利 用技術の確立を図る。本年度は、リサイクル処理の最適条件について検討し、リサイクル材の不 純物(砥粒、研削液)含有量 1%以下を目指すとともに、成形した研磨スラッジの機械的強度が実 用材の 95%以上を目指す。また、研磨スラッジから打ち抜き金型を試作し、その性能を評価する とともに、リサイクル粉末を用いて粉末製品の試作を試みる。最後に LCA 解析を行い、プラズマ 溶射を利用した開発手法の環境負荷について評価した。 2. 研究方法 浮選によって工具鋼など不純物の各種鋼種が混じったステンレス系研磨スラッジのステンレス 鋼成分を濃縮することを試みた。実験には、研削に G/CG ビルトファイン研削砥石(ノリタケ製)、 FW70V 水溶性研削液(新日本石油製)を使用して得られたステンレス系研磨スラッジを使用した。 まず、研磨スラッジはエタノール洗浄により脱脂・乾燥した後、水で腐食させ、界面活性剤(ヤ シ油原料の液体石けん)を添加してエアストーンを通じて気泡を送り込んで浮選し、ステンレス 鋼品位について検討した。 ステンレス系研磨スラッジを水素粉砕して微細粉末にし、それをプラズマ溶射することによっ てナノ粉末の作製を試みた。まず、洗浄・乾燥したステンレス系研磨スラッジをアルミナボール(φ 10mm)と一緒にアルミナ製耐圧粉砕容器(100ml)に封入し、真空脱気後、粉砕容器の内圧が約 0.2MPa まで水素ガスを導入し密閉した。これを遊星ボールミルにより 200rpm で粉砕処理した。 なお、粉砕時間は 10∼30 時間とした。粉砕スラッジはプラズマ溶射(350A、6g/min)による球状 化処理(図 2-1)を行い、粒度測定を行った。また、LCA 解析を行い、プラズマ溶射法により研磨 -47- スラッジを粉末へリサイクルする有効性につい て環境負荷、コストの面から検討した。 熱間圧延によるステンレス系研磨スラッジの 固化成形を行い、圧延材の機械的特性、内部組 織に及ぼす添加元素(Cr、Ni)の影響について 検討した。また、簡易金型として再利用する目 的で、高速ボールミルによる強加工(400rpm× 72 時間)を加えてアモルファス化した粉末、ス テンレス系研磨スラッジ、及びこれを球状化処 理(350A、245g/min) 、磁力選別したリサイクル 図 2-1 研磨スラッジ球状化処理装置 粉末を放電プラズマ焼結により焼結温度 800℃、 焼結時間 3min、加圧力 2000kN の条件で固化成形し、穴径 10mm の打抜き金型をそれぞれ作製し た。そして、毎分ストローク数 100spm で純アルミニウムを打抜き、簡易金型の性能評価を行った (図 2-2) 。 浮選、プラズマ処理による球状化、磁力選鉱というプロセスによって得られた球状リサイクル 粉末、及びこの粉末を酸洗することにより表面酸化物を除去した粉末を準備し、金属粉末射出成 形(MIM)を試みた。実験には、中性洗剤で洗浄し 120℃で真空乾燥(1Torr)したステンレス系 研磨スラッジを浮選、球状化処理(350A、245g/min)し、それを磁力選別して砥粒を除去したリ サイクル粉末を使用した。コンパウンドは、粉末:バインダー=1:1(体積比)の割合で配合し、 120℃で1時間混練して作製した。射出成形は射出温度 110℃、射出圧力 30MPa の条件で行った。 成形体の脱脂は超臨界 CO2 による脱脂法を試み、55℃、20MPa、2.5 時間の条件で行った。脱脂し た全ての成形体は温度 1400℃、保持時間1時間の条件で真空焼結を行い、密度、機械的特性等に ついて評価し、前年度の結果と比較した。 図 2-2 研磨スラッジ製打ち抜き金型及びプレス機械 3.結果と考察 3-1 研磨スラッジの再資源化技術 (1)研磨スラッジの精製処理技術 供給されているステンレス系研磨スラッジは排出時に工具鋼など不純物の各種鋼種が混ざ ることにより組成が異なり、それに伴い機械的特性にも差異があることを明らかにした。そ こで、供給されたステンレス系研磨スラッジに浮選を施し、ステンレス鋼品位を約 50%から -48- 75%に向上させることに成功した。浮選前と浮選後の試料をアーク溶解して比較してみると、 浮選後の試料の方が、明らかに清浄なメタルボタンが得られた(図 3-1-1) 。 未処理 浮選処理 図 3-1-1 アーク溶解後の試料概観 (2)プラズマ溶射法による粉体化技術 得られた微細球状粉末の平均粒径は粉砕時間とともに減少し、粉砕 30 時間で 2.6μm に達 した。さらに、500nm 以下のナノ粉末が含まれる割合は粉砕 30 時間が約 9 体積%と最も高か った(図 3-1-2) 。粉砕 30 時間の条件で作製した球状粉末について走査電子顕微鏡観察を行 った結果、粒度分布測定では検出されなかった 100nm 以下の粉末が多く含まれていた(図 3-1-3) 。以上の結果から、研削スラッジからナノ粉末の作製は可能であり、より付加価値の 高い粉末製品としてリサイクルが期待できる。また、LCA 解析の結果、研磨スラッジを粉末 へリサイクルするには、従来技術に比べ環境負荷、コストの面で本開発手法が優れているこ とが明らかとなった。 図 3-1-3 作製した球状ナノ粉末 図 3-1-2 粉砕・プラズマ溶射した粉末の粒度 3-2 研磨スラッジの利用技術の開発 (1)粉末成形及び金型利用 XRD の結果、研磨スラッジは bcc 相と fcc 相の混相であり、固化成形した試料も同様に bcc 相と fcc 相の混相であるが、fcc 相を主相としていた。研磨スラッジに Cr と Ni を適量添加し 固化成形することで、ほぼ fcc 相単相が得られることを明らかにするとともに、機械的特性を 制御することができた(図 3-2-1、図 3-2-2) 。これによって研磨スラッジリサイクル材の組織、 機械的特性の安定化を実現できる可能性を見出した。次に、アモルファス化した粉末、ステ -49- ンレス系研磨スラッジ、及びこれを球状化処理(350A、245g/min) 、磁力選別したリサイクル 粉末を固化成形して作製した穴径 10mm の打抜き金型を使って、純アルミニウム板の打抜きを 行った。その結果、これら金型は良好なブランク性能、金型寿命を示し、簡易金型として十分 利用できるものであった(図 3-2-3) 。これを受けて、研磨スラッジを簡易金型材としてリサイ クルすることは十分可能であるとの結論に至った。 図 3-2-1 Cr を添加した研磨スラッジの硬さ 図 3-2-2 Ni を添加した研磨スラッジの硬さ 未使用のダイエッジ 500回打ち抜き後の ダイエッジ 図 3-2-3 打ち抜き前後のダイエッジ概観 (2)金属粉末射出成形 浮選によりステンレス鋼成分を 5-60%から 80%程度に向上させ、これにプラズマ処理、磁 力選鉱した球状粉末を前年度明らかにした条件で MIM 成形し、機械的特性を調べた結果、極 めて小さかった伸びは改善し 5-10%程度の値を示した。また、酸洗浄により MIM 成形前の粉 末表面の酸化物を取り除くことによって焼結後の MIM 製品表面品位は向上し、酸化の度合い も低くなったが、強度、伸びともに著しく向上することはなかった。 4.結論 ステンレス系研磨スラッジについて、再資源化を目的としたプレスレス精製技術、 粉体化技術、 再溶解技術の開発、及び粉末製品、金型等への利用を目的とした粉末成形技術の開発を行った。 その結果、研磨スラッジのナノ粒子化に成功するとともに、浮選、粉末成形等の条件、成形体の 械的特性等を明らかにし、年度目標を達成することができた。これにより研磨スラッジを原料粉 末や簡易金型等の粉末製品としてリサイクルできる可能性を見出した。 -50- 高塩素含有廃棄物処理拡大のための脱塩ダスト除塩システムの開発 事業者名:住友大阪セメント株式会社 1.技術開発担当・照会先 住友大阪セメント株式会社 セメント・コンクリート研究所 環境・資源リサイクル技術 グループ 〒274-8601 千葉県船橋市豊富町 585 番地 Tel. 047-457-0197 Fax. 047-457-7871 2.技術開発の目的と開発内容 2−1技術開発の目的 本事業はセメント製造用キルンの窯尻より脱塩バイパスを経由して排出される脱塩ダス トに対し水洗処理、水処理、晶析処理等の一連の処理を行い、脱塩ダストより塩素成分の大 部分を除去し、かつカリウムを高い比率で含有するカリウム塩を回収するシステムを開発す るものである。 (1)脱塩ダストに対し水洗処理を行い、脱塩ダストより塩素成分を除去する。水洗処理後の 脱水ケーキは再びセメント製造用原料として使用される。 (2)水洗処理後の洗浄ろ液中には、塩素のほかにカリウムを主とするカチオン、および各種 重金属イオン等が含まれている。この洗浄ろ液に対して水処理を行い、重金属イオンの 大部分を除去する。水処理後の洗浄ろ液に対し晶析処理を行い、カリウムを高い比率で 含有するカリウム塩を回収する。 2−2技術開発の内容 脱塩ダストは水洗処理のためダスト溶解槽にて水と攪拌混合され十分に溶解させる。そ の後、フィルタープレスに導かれ、固液分離を行う。単にフィルタープレスで固液分離し ただけであれば、脱水ケーキ中の含水率が60∼70%と高く、そのため塩素が非常に多 く残っており、セメント原料として利用できる塩素含有量 0.5%以下(目標値)という基 準を満たすことができない。そこで、本開発で使用するフィルタープレスでは、水圧によ り圧搾を行い、かつその後新水により貫通洗浄を行うことで、脱水ケーキ中の塩素量を基 準値以下にすることを検証する。またこの方法により、スラリー液固比を低くすることが 可能となり、後段の水処理、晶析において水量が少なくなり有利となる。 水処理の基本は、還元剤とpH 調整剤によるpH 調整である。pH を大よそ9.5近傍 に調整することで、含まれる重金属の大半は水酸化物となり除去できる。カルシウムにつ いてはカルシウム除去剤を用いて、炭酸カルシウムとして除去する。しかしここでの固液 分離に通常の凝集沈降のみとした場合、沈殿物が SS として流出することで後段で回収す る回収塩の純度の低下を招くことから、精密ろ過装置を導入することで、解決できること を検証する。 -51- カリウム塩の回収は、蒸発乾固の手法では純度が得られないことから、晶析手法を採用 する。真空蒸発とすることで低温での(60℃)操作とする。析出したカリウム塩は遠心 分離装置で回収され新水洗浄を行い純度を高める。固結する事を防止するため、振動乾燥 機で十分に乾燥を行い有効利用先へ搬送できる形態とする。蒸発した水蒸気はコンデンサ ーで復水され、塩素を含まない新水であることから、ダスト洗浄の水として再利用するこ とで、水の使用量を極力減らす。カリウム塩の品位としては K2O 濃度として55%以上を 確保し、肥料原料として有効利用できることを検証する。 2−3開発設備の内容 2−3−1設備フロー 本開発で実施したシステムフローを図2−3−1に示す。 図2−3−1 システムフロー 2−3−2設備主仕様 (1)処理対象:脱塩ダスト (2)処理能力:100kg/h (3)設置基数:水洗設備(フィルタープレス1機) 水処理設備(フィルタープレス 1 機/精密ろ過膜分離装置1機) 晶析設備(加熱濃縮結晶装置1機/遠心分離装置1機/振動乾燥装置1機) -52- 図2−3−2 フィルタープレス 図2−3−3 遠心分離機 図2−3−4 晶析設備 2−4開発日程実績 (1)日程 表2−4−1 開発日程実績 H17 7 8 9 10 11 12 1 H18 2 3 設備製作 設備建設 実証試験 72時間連続試験 (2)試験項目 ①脱水ケーキの含水率、塩素含有量 ②水処理後(晶析前の水質確認)不純物濃度 ③回収塩の K2O 濃度と不純物濃度 ④72 時間連続運転試験 水処理後不純物濃度(Hg,Cd,Pb,Cr6+,As,Se,Ca―72 サンプル) 回収塩の K2O 濃度と不純物濃度(Hg,Cd,Pb,Cr6+,As,Se,Ca―72 サンプル) ⑤回収塩の植害試験(2 サンプル) 3.成果 72 時間連続運転試験結果を以下に示した。 3−1水洗性能 フィルタープレスはバッチ動作となるが、72 時間の期間中に、76 バッチの運転を行った。 含水率およびケーキ中塩素濃度に関しては、期間中全てのバッチで目標を満足することがで きた。 ダスト溶解の条件は、ダスト1に対し溶解水を3の割合で行った。これをフィルタープレス A に 打込み固液分離を行い、圧搾を行った後、新水でケーキ洗浄を行うが、可能な限り少ない 水量で洗浄を行った方が、後段の工程で有利となるため、脱水ケーキ中の塩素量が 5,000mg/kg を越えることが無いような、できるだけ少ない洗浄水量を設定し行った。 -53- 計画時の全洗浄水量は 1:4 と設定したが、72 時間連続運転試験での実績としては、平均 1:4.06 となり、ほぼ満足することができた。 脱水ケーキの塩素濃度には、若干の余裕があるので、あと少し洗浄水量を低くすることが可 能である。またダスト溶解時の溶解水の量を3以下に設定することもダスト溶解スラリー の状況から十分可能であり、さらに少ない洗浄水量での洗浄の可能性も示された。 3−2水処理性能 表3−2−1 処理水の水処理目標値 水処理の条件は、次工程の晶析工程で回収 塩の純度を低下させることがないよう、表3 −2−1に示したように条件を設定した。 1 時間毎にサンプリングを行い、測定を行っ た。 結果は、全てにおいて満足した。重金属に 関しては、定量下限以下であった。Ca につい Hg またはその化合物 Cd またはその化合物 Pb またはその化合物 Cr6+化合物 As またはその化合物 Ca またはその化合物 SS 水処理条件 0.005mg/L 以下 0.1mg/L 以下 0.1mg/L 以下 0.5mg/L 以下 0.1mg/L 以下 50mg/L 以下 1mg/L 以下 ては2∼12mg/L と安定した値であった。 SS については、想定したとおり 1mg/L 以下となり定量下限以下となった。期間中の膜差 圧については変化が見られず、目詰まりがひどくなるような現象は見られなかった。目詰 まりを起こした場合の洗浄回復性、長期安定性に関しては、今後の課題である。 3−3晶析性能 回収塩を 1 時間毎にサンプリングを行い、K2O 濃度および不純物濃度を測定した。 K2O 濃度については平均すると 58%と目標である 55%を上回った。 不純物濃度に関しては、表2の項目(Ca,SS 以外)に関して、定量下限値以下であった。 3−4有効利用 回収塩の有効利用に関しては、肥料原料を主用途として考えている。そのためには回収 塩を肥料登録しなければならないが、その条件として植害試験において問題が無いことを 確認しなければならない。 晶析試験開始当初のサンプルおよび 72 時間連続運転試験時にサンプリングした回収塩を等量ず つ混合した2サンプルについて植害試験を実施した。 試験は、試薬の KClを対照肥料として行ったが、結果は生育上の異常は認められず、肥 料原料への有効利用の可能性が示された。 4.まとめ 脱塩ダストから塩素成分を取除き、セメント原料として再利用し、かつカリウムを高い 比率で含有する回収塩を得ることができた。またこれを肥料原料として有効利用できる可 能性も示された。 -54- 表4−1 目標達成評価 脱水ケーキのセメント原料利用 達成度 理由 100% 含水率 40%以下,塩素含有量 5,000mg/kg 以下達 成 精密ろ過装置による不 100% 処理水 SS 1mg/L 以下達成 純物の低減 回収カリ塩の肥料原料 100% K2O 55%以上達成。植害試験以上無し としての有効利用 本開発の設備により、塩ビ混じりの廃プラスチック(例えば塩素濃度 0.6%)で考えると、 あらたに 2 万t/年処理することが可能になる。 また焼却灰(主灰、塩素濃度 1%)であれば 1.2 万t/年の処理量に相当する。 実証設備に対し 5 倍スケールアップしたシステム導入を考えると(脱塩ダスト水洗能力 500kg/h) 、上記塩ビ混じり廃プラスチックで 10 万t/年、10 倍スケールアップ(脱塩ダス ト水洗能力 1000kg/h)では 20 万t/年となる。 現在未利用の廃プラスチック量は 450 万t/年であることを考慮すると、未利用の廃プラ スチックの平均塩素濃度が仮に 0.6%より高いとしても、多量の廃プラスチックのあらたな 有効利用が可能になるといえる。 -55- 残留性化学物質の物質循環モデルの構築と リサイクル・廃棄物政策評価への応用 研究期間(西暦)=2003−2005 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=酒井伸一(京都大学 共同研究者名=高月 環境保全センター) 紘(石川県立大学)、平井康宏(国立環境研究所、現京都大学) 田辺信介、高橋 真(愛媛大学)、竹内憲司(神戸大学) 1.研究目的 各種リサイクル法の見直しが近づく中で、次の一手として、一定のリサイクル率確保や 最終処分量削減のみならず、重金属類や臭素系難燃剤などの残留性化学物質の制御を視野 に入れた政策展開が望まれる。化学物質の影響としてはヒトへの曝露のみならず、生態系 への影響も重視されつつある。本研究は、社会および自然システム循環における残留性化 学物質の挙動を記述するモデル群を開発し、家電リサイクル法などの政策評価に応用する ことを目的とする。モデル開発はフィールド調査と連携し、1)自動車シュレッダーダス ト(ASR)や廃家電、廃木材リサイクル施設でのプロセス物質収支の調査、2)中古輸出 された家電製品の終着場であるアジア途上国ダンピングサイト周辺環境の調査と野生高等 動物を対象とした残留性化学物質汚染の調査、も目的とする。また、将来の経済モデルと の統合を視野に入れ、デポジット制などの環境経済学的評価にも取り組む。 2.研究方法 自然システム循環における残留性化学物質の動態把握として、カツオ、アジア-太平洋海 域の海棲哺乳類や様々な鳥類を指標生物としたポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs) の地球汚染モニタリングを行った。過去の変化の把握を目的に、1972∼1998 年に北太平 洋で捕獲したキタオットセイなどの時系列分析も行った。また、インドやベトナム、カン ボジアなどのアジア途上国における都市ゴミ集積場や電子廃棄物集積場に注目し、PBDEs および重金属類による土壌汚染について調査研究を行った。 残留性化学物質の物質循環モデルの開発として、残留性化学物質の社会システムにおけ る循環をマテリアルフローモデルと個別プロセスの物質収支モデルによって、自然システ ムでの循環を、環境動態モデルによって記述した。日本での PBDEs の排出インベントリ を推定し、この推定結果と発生源近傍の周辺環境濃度測定値との比較により、その妥当性 を検討した。排出インベントリでは、10臭素化物(DBDE)、1∼10臭素化物の同族 体別の推定を行った。 リサイクルに係るプロセスの物質収支に関するフィールド研究として、家庭製品の循環 廃棄過程における残留性化学物質の挙動・リスク解析に向け、自治体(京都市)を対象に、 自治体大型ごみへの家電製品排出実態調査、家庭系有害・危険廃棄物及び家電製品に関す -56- る市民アンケート調査を実施した。主要な家庭系有害廃棄物の一つである廃蛍光管を取り 上げ、蛍光管リサイクルの現状と課題について整理すると同時に、想定されるリサイクル システムについて、比較・検討を行った。複雑組成廃棄物である自動車破砕残渣(ASR) を対象に、重金属やダイオキシン類縁化合物、有機スズ化合物等の微量有害物質の測定を 目的とした試料調整法を開発し、ASR のサンプリングから測定用試料の調整、機器測定ま での過程で生じる試験値のばらつきを検証した。 リサイクル制度の環境経済学的評価として、自動車の解体・破砕作業によって得られる 利潤を表す理論モデルを作成した。また、自動車部品の1つである鉛電池について検討し、 経済的インセンティブを重視した各種政策手段(税,デポジット・リファンド,補助金) を用いた場合の費用効率性について比較検討した。 3.結果と考察 3-1 自然システム循環における有機臭素化合物の動態研究 世界各地の外洋域からカツオを採取し PBDEs の化学分析に供した。分析したほぼ全て のカツオから PBDEs が検出され、その汚染は地球規模で広がっていることが明らかとな っ た 。 興 味 深 い こ と に 、 東 シ ナ 海 周 辺 海 域 で 採 取 し たカ ツ オ か ら 比 較 的 高 い 残 留 濃 度の PBDEs が検出され、本海域周辺の途上国に PBDEs 汚染源の存在することが示唆された。 また、アジア-太平洋海域の海棲哺乳類を対象とした調査でも、香港沿岸に座礁したスナメ リから、最高濃度の PBDEs が検出された。 120 1972∼1998 年に北太平洋で捕獲したキタ PBDEs オットセイの冷凍保存試料を用いて汚染の経 80 年的推移を調査した結果、既存 POPs の濃度 は 1980 年代初頭で最高値を示し、その後明 40 瞭に低減したのに対し、PBDEs の濃度には 0 1970 40000 汚染は今後しばらく継続することが予察され た(図1)。さらに、日本沿岸に集団座礁した クジラや中国で混獲されたイルカでも同様に 近年の濃度上昇が認められた。 日本や太平洋外洋域の鳥類を対象とした調 査結果では、陸性・沿岸性鳥類から外洋性鳥 濃度 (ng/g lipid weight) 1990 年代後半まで上昇傾向が認められ、その された濃度は、欧米の鳥類における報告値よ 1980 1985 1990 1995 2000 1980 1985 1990 1995 2000 1985 1990 1995 2000 PCBs 30000 20000 10000 0 1970 15 1975 HCB 類よりも高いレベルの PBDEs が検出され、 とくに猛禽類のオオタカやオオワシから検出 1975 10 5 り も 高 値 を 示 し た 。 本 研 究 に よ り 、 PBDEs の陸域環境への流出が継続している、もしく は PBDEs は PCBs に比べ移動拡散しにくい 0 1970 1975 1980 調査年 図1 三陸沖のキタオットセイから検出さ れた有機ハロゲン化合物濃度の経年変動 物質であることが示唆された。 -57- 3-2 アジア地域の廃棄物埋立地におけるPBDEs検出 アジア途上国の都市ゴミ集積場等におけるPBDEsの汚染について調査した結果、分析に 供した全ての土壌試料からPBDEsが検出され、この種の物質による汚染が途上国にも存在 することが明らかとなった。最高濃度(500 ng/g 乾重当り)はベトナム(カントー)の都 市ゴミ集積場から検出され、インドやベトナムのゴミ集積場内の土壌から検出された PBDEs濃度は概して場外の対照地域よりも高値を示した。土壌中PBDEsの異性体組成に 着目するとBDE209の寄与率が最も高く、高臭素化異性体が卓越していたが、カンボジア やインドの一部集積場では4∼5臭素化体が比較的高い割合を示した。 3-3 残留性化学物質の物質循環モデルの開発と家電リサイクル・臭素系難燃剤への応用 大気へのPBDEs排出インベントリ量は、630∼1,650 kg/yearと推定された。うち、野外 焼却過程が9割程度を占める可能性があり、これを除くと90 kg/year∼157 kg/yearと推定 された。また野外焼却過程の同族体分布を見てみると、OcBDEsが支配的な分布であり一 般環境中でみられるDeBDEが支配的な同族体分布とは異なっていた。他のライフサイクル における排出係数の同族体分布は全てDeBDEが支配的な分布であり、大気へのDeBDE排 出量が多かったライフサイクルは、難燃剤の製造過程、次いでDeBDE含有製品の使用過程 であった。PBDEsのサブスタンスフロー解析モデルを構築し、大気・水系・土壌への分配 を環境動態モデルにより記述した。環境濃度から推計した排出量に比べ1∼2オーダー低 く、未把握の発生源の重要性が示唆された(図2)。 1000 100 10 1 0.1 0.01 0.001 0.0001 Obs. case3a case6a case3b case6b case3c case6c case3d case6d 図2 土壌中の DeBDE の実測濃度分布とモデル計算値の比較[ng/g]. ‘x’ は幾何平均値 3-4 リサイクルに係るプロセスの物質収支に関するフィールド研究 自治体大型ごみへの排出実態調査の結果より、多種多様な家電製品が市収集大型ごみや 持込ごみとして搬入されていることがわかった。中には、小型家電製品や電池を内蔵した まま排出されている製品も確認された。水銀含有製品の国内フローの解析により、日本に おいて製品由来の水銀は、ライフサイクルを通して年間10∼20 t流通しており、そのうち 約5 tが蛍光管由来であること、回収される水銀は約0.6 tのみで大半が最終処理・処分され -58- ていることがわかった。蛍光管リサイクルの現状は、一部の自治体等で回収・リサイクル が行われているが、全国でのリサイクル率は10%程度と考えられた。回収を行っている自 治体でも、回収率は30%程度であり、回収率の向上が重要な課題の一つである。 複雑組成廃棄物 である 自動車破砕残渣 (ASR)には、臭素系 難燃剤 (PBDEs,TBBPA) や有機スズ化合物が数10∼数100ppmのレベルで含まれていたが、シャフト炉式ガス化溶 融炉を用いたASRの溶融処理により、その99.99%以上が分解され、排ガスや飛灰、溶融 物中の濃度は極めて低値であった。ASRのガス化溶融処理は、臭素系難燃剤や有機スズ化 合物の分解制御技術として有効であることが示された。 3-5 鉛電池リサイクルの経済評価 鉛電池リサイクルの政策デザインを経済学的な観点から評価するための基礎的研究を行 った。理論モデルにより,シュレッダーダストの処理費が上昇するとその発生量は抑制さ れるものの,有用物価値の低下によっては発生量が増大することを確認した。また、鉛電 池リサイクルの政策デザインを経済学的な観点から評価するための実証研究を行い、経済 的インセンティブを重視した各種政策手段(税,デポジット・リファンド,補助金)を用 いた場合の費用効率性を明らかにした。 4.結論 社会および自然システム循環における残留性化学物質の挙動を記述するモデル群開発、 家 電 リ サ イ ク ル 法 や 自 動 車 リ サ イ ク ル 法 な ど の 政 策評 価 へ の 応 用 を 主 た る 目 的 と し た研 究を行った。家電リサイクルや自動車リサイクルに深く関連してくる可能性の高いPBDEs について、アジア途上国の都市ゴミ集積場等を調査した結果、分析に供した全ての土壌試 料からPBDEsが検出され、この種の物質による汚染が途上国にも存在することが明らかと なった。残留性化学物質の発生源に関する知見を得ることを目的として、PBDEsのサブス タンスフロー解析モデルを構築し、大気・水系・土壌への分配を環境動態モデルにより記 述した。難燃樹脂製造工程や家電リサイクル施設、焼却炉での排ガス濃度測定に基づく排 出量推定結果は、これらのモデルを用いて環境濃度から推計した排出量に比べ1∼2オー ダー低く、未把握の発生源の重要性が示唆された。 -59- 乾式メタン発酵法による高効率原燃料回収技術の開発 事業者名 : 株式会社タクマ 1.技術開発担当・照会先 株式会社タクマ 水処理技術部 〒564-0004 入江直樹 兵庫県尼崎市金楽寺町 2 丁目 2 番 33 号 TEL:06-6483-2715 FAX:06-6483-2766 E-mail:[email protected] 〔共同技術開発先〕 Hitz 日立造船株式会社 〒559-8559 エンジニアリング本部 環境計画部 松本 智樹 大阪市住之江区南港北 1 丁目 7 番 89 号 TEL:06-6569-0234 FAX:06-6569-0235 E-mail:[email protected] 川崎重工業株式会社 〒650-8670 環境ビジネスセンター 水処理プラント総括部 諸岡 隆良 神戸市中央区東川崎町 3 丁目 1 番 1 号 TEL:078-682-5087 FAX:078-682-5434 E-mail:[email protected] 2.技術開発の目的と開発内容 2−1.目的 ごみ処理において、水分の多い生ごみなど有機性廃棄物についてはメタン発酵し、水分の少 ないプラスチック等は焼却する手法が、系全体のエネルギー効率を上げる方法として推奨され る。その実行にあってはごみの分別が必要となる。しかし、家庭分別は収集コストの増加や行 政手続き上の問題から困難な場合が多い。このような場合、収集体制はそのままで、施設側で 機械選別することが求められる。機械選別ではメタン発酵へ入る原料を複雑な分別で限定した り、可溶化に多大なエネルギーを投じていてはエネルギー効率向上の目的は達成できない。 乾式メタン発酵は原料を固形物形状のままメタン発酵槽に入れバイオガス化することができ るが、この特徴を生かせるよう、都市ごみそのものを対象に簡易な機械選別を行い、得られた 原料についてバイオガス化するシステムの構築を行う。 2−2.開発内容 都市型の主に家庭系一般廃棄物を処理対象とする乾式メタン発酵の前処理設備として簡易型 機械選別技術を開発する。機械選別により回収したメタン発酵原料1t 当たりのバイオガス発 生量が 150m3N/t 以上となる選別条件を確認する。 (1)全体システム 簡易型機械選別設備に搬入された家庭系一般廃棄物を、選別ごみ(メタン発酵原料)と選 -60- 別残さ(軽量物)に分別後、選別ごみは既設メタン発酵設備、選別残さ及び発酵残さは焼却 設備で処理を行うシステムとする。 (2)簡易型機械選別実験 図 2-2-1 に簡易型機械選別設備フローを示す。原料として京都市収集家庭ごみが 1 日 3∼ 4t 搬入され、収集ごみは搬入された状態のままニ軸破砕機にて 50mm 程度に破砕された後、 破砕分別機に投入される。機械選別設備の処理能力は約 0.5∼1t/h である。 破砕分別機の主要部は、スイングハンマー方式のブレード,スクリーンによって構成され、 投入されたごみは高速回転するブレードにより破砕され、スクリーン径以下のものが選別ご みとして回収される。スクリーン径以上のもの、比重の軽いプラスチックや紙の一部は、選 別残さとして除去される。破砕分別機には、ごみ供給側からスクリーンが前段、後段に設置 されており、選別ごみ中のメタン発酵不適物含有量(湿重量)が 20%以下となる最適なスク リーン径の組み合わせを確認した。 図 2-2-2.分別機スクリーン 図 2-2-1.簡易型機械選別設備フロー (3)メタン発酵実験 図 2-2-3 に既設メタン発 酵設備のフローを示す。本 設備の設計処理能力は 3t/d、発酵槽容量は 100 m3 である。簡易型機械選別設 備 に よ り回 収 され た 選別 ご み は メタ ン 発酵 原 料と し て 既 設の 乾 式メ タ ン発 酵実証設備に搬入する。原 料 は ミ キサ ー で調 整 水と 混合し発酵槽へ投入、55℃ で約 20∼30 日間滞留する。 図 2-2-3.メタン発酵設備フロー -61- 発生したバイオガスは脱硫後、ガスエンジンなどの燃料として利用される。 メタン発酵設備では選別ごみ1t 当たりのバイオガス発生量、メタン濃度などを確認した。 3.成果 3−1.簡易機械選別結果 表 3-1-1.原料ごみ組成分析結果(平均値) (1)原料ごみ組成 剪定枝や草木類が生ごみ全体の 3%程度、紙 生ごみ類 紙類 プラスチック類 布・革類 その他(金属・ガラス類) 類の中には、紙おむつが紙類全体の 20%程 ※草木類は生ごみ類に含む 実験原料は京都市殿が収集した家庭系ご み(可燃ごみ)を用いた。原料ごみ組成(平 均値)を表 3-1-1 に示す。生ごみの中には、 湿重量比(%) 35.5 37.8 17.3 4.1 5.3 度含まれていた。 (2)選別結果 破砕分別機のスクリーン径を変化させ、選別の状況を確認した。スクリーン径毎の選別ご みの回収率を図 3-1-1 に示す。使用したスクリーン径が前段 50mmφ,後段 30mmφの組み合わ せの場合、50−30 と表している。 スクリーンφ100-φ0 を設置し た場合、紙類,プラ類の回収率が 50%以上となり、メタン発酵不適物 が多く含まれた。 スクリーンφ50-φ0 では、紙類、 100 90 80 回 70 60 収 率 50 プラ類の回収率が 20%程度となり、 [%] 40 30 生ごみ中心の回収が可能であるが、 20 紙類の回収率も低くなった。 10 スクリーンφ50-φ50 または φ70-φ0 では、紙類が 30%以上回 生ごみ 紙類 プラ類 全体 0 100-0 70-0 50-50 50-30 50-0 スクリーン径 収となり、プラ類は紙類より回収 図 3-1-1.選別ごみ回収率 率が低くなった。 生ごみ類については、本実験範囲内ではスクリーン径に関係なく 98%以上回収できた。 表 3-1-2 は、φ50-φ50 の場合の選別ごみ、選別残さのそれぞれの回収状況を示す。 表 3-1-2. 回収状況(φ50-φ50) 生ごみ類 紙類 プラ類 布・革類 その他(金属・ガラス類) 計 原料ごみ 組成 35.5 37.8 17.3 4.1 5.3 100 単位:湿重量% 選別ごみ (メタン原料) 35 (56) 17.2 (27) 5.1 0.3 (17) 4.9 62.5 (100) -62- 選別残さ (軽量物) 0.5> 20.6 12.2 3.8 0.4 37.5 * カッコ内は選別 ごみ中の組成比率 を示す。 原料ごみ中には、生ごみ,紙類のメタン発酵対象物を 70%程度含んでいたが、選別ごみで は、このメタン発酵対象物の割合を 80∼85%程度まで上げることができた。 表 3-1-3 は、φ50-φ50 の場合の選別ごみ 表 3-1-3.選別ごみ分析例(φ50-φ50) (メタン発酵原料)の分析例を示す。紙の一 項目 単位 分析値 部も回収されたことにより TS が 40.7%、VS TS % 40.7 が 80.4%と高有機物濃度となっており、高温 VS %/TS 80.4 発酵で制限を受け易い T-N も 5,200 mg/kg- T-N mg/kg- wet 5,200 wet と低く、生ごみ単独原料と比べるとメタ CODcr mg/kg- wet 504,000 ン発酵に適した原料性状とすることができた。 3−2.メタン発酵実験 原料 1t あたりのバイオガス回収量の確認は、安定運転時である、2006 年 1 月 13 日∼26 日 の間の 2 週間連続してメタン発酵設備へ投入したときの、投入ごみ量とバイオガス発生量から 行った。この期間の投入原料はスクリーンφ50-φ50 で選別した選別ごみである。 この間の原料投入総量 15.92t に対しバイオガス発生量は 2,665m3N であった。投入原料 1t あ たりのバイオガス発生量は 167m3N/t となり、150m3N/t 以上発生することが確認できた。また、 この期間のメタンガス濃度は約 56%と安定していた。 4.まとめ 実験項目 簡易機械選別の性能評価 実験結果 スイングハンマー方式でスクリーン径 50∼70mmφを用いた 破砕分別機により生ごみ回収率は 98%以上、プラの除去率は 約 70%と簡易な機械分別方法が確立できた。また紙類の混入 により T-N 濃度の低い原料となり、高温乾式メタン発酵に適 した原料とすることができた。 原 料 ごみ 投入 重量 あたり 機械選別により回収したメタン発酵原料 1t 当たりのバイオ のバイオガス発生量 ガス発生量 167 m3N /t であり、当初目標であった 150 m3N /t 以上を達成できた。紙類も原料として投入できるコンポガス 方式のメタン発酵は、簡易型機械選別との組み合わせにより エネルギー回収効率向上に特に有効である。 本実験により、従来のごみ収集形態のままメタン発酵処理が導入できる選別技術を確立した。 焼却とメタン発酵を複合することにより、ごみ焼却量の削減、焼却ごみ発熱量の増加、エネルギ ー回収の増加といった効果が期待でき、地球温暖化に寄与する二酸化炭素の排出量削減、循環型 社会の構築に貢献できると考える。 本実験にあたっては、京都市環境局殿、財団法人 京都市環境事業協会殿に多大なる御協力を頂 き、ここに謝意を表します。 -63- 生ごみと他の廃棄物系バイオマスの混合処理による 高効率メタン回収技術の開発 事業者名:鹿島建設株式会社 1.技術開発担当・照会先 鹿島建設㈱技術研究所 次長 / 地球環境・バイオグループ長 東京都調布市飛田給2−19−1 後藤雅史 Tel. 0424-89-7422 Fax. 0424-89-2896 E-mail. [email protected] 2.目 的 循環型社会の形成に向け,廃棄物系バイオマスを再生可能な資源として有効再利用する技術の開発 が必要とされている。しかし,例えば,再生可能なエネルギー資源を製造する廃食用油リサイクル施 設では,原料の一部が有機性廃棄物(廃グリセリンなど)として排出される。あるいは,現在焼却処 理されている、店舗や魚市場などで発生する魚アラ、リサイクル対象とならない廃紙などは、生ごみ と合わせて処理することでバイオガス回収量を増大させる効果も期待されるバイオマスと考える事 もできる。 そこで,これらの有機性残渣をさらに有効再利用可能なエネルギー資源として再生できるシステム を確立することが,再生可能な資源利活用システムのゼロエミッション化の観点からも必要である。 また,回収したエネルギー資源(たとえば,バイオガス)を処理施設などで有効利活用することで, システム全体の LCCO2 を低減することも可能であり,そのためのシステム構築も重要である。 生ごみの高温メタン発酵については,技術的にもすでに確立されており,各地で実施設が稼動して いるが,メタン発酵を阻害する要因を含む可能性のある廃棄物系バイオマスのメタン発酵特性は不明 である。そこで,想定される再処理施設残渣のメタン発酵アッセイ,性状分析を実施し,これらのデ ータを元に,それぞれの廃棄物系バイオマス,再処理残渣のメタン発酵性を評価する。 さらに,生ごみに対するその他廃棄物系バイオマスの許容混入率ならびにシステムの安定性確保に 必要な条件を試験的に検証し,実施設において期待されるバイオガス回収量原単位の算出,実施設の 設計・稼動時における課題の抽出,解決策の確立を行う。 3.開発内容 高温メタン発酵施設を中心とし,生ごみに他の廃棄物系バイオマスを加えて、高効率にメタン回収 するエネルギー資源化システムを構築する。回収したエネルギー資源(バイオガス)は廃棄物系バイ オマスの再処理施設に還元供給するとともに,熱源あるいは発電燃料として有効再利用することを想 定する。対象とする具体的なバイオマスとは,生ごみ(事業系または家庭系の分別生ごみ),生ごみ に加えるその他の廃棄物として、廃食用油リサイクル施設残渣(不純物を含む廃グリセリン) ,魚ア ラ(魚介類加工残渣)、廃紙類(ちり紙等)などを想定し,生ごみに対する処理施設残渣の許容混入 率を試験的に検証する。さらに,想定される処理施設残渣発生量を基にした実施設の設計検討を行い, -64- 回収可能なエネルギー資源量の推定,システム全体の LCCO2 評価を実施する。 4.試験内容 バイアル試験:300mL 容のバイアルに生ごみで馴養した種汚泥を充填し,窒素ガスでガス相の置換 を行った後,各混合割合で調整した原料を添加し,55℃に制御した恒温槽内でバッチ培養する。バ イアルの内容物は,マグネティックスターラにて常時攪拌した。生成バイオガスはテフロンバッグに 回収し,メタン発生量を計測する。試験は,各原料毎に 3 バイアル同時に,2 反復(合計 6 バイアル) の試験を行い,結果を平均化した。廃グリセリンの割合は 0%から 33.5%とし,投入 COD(硫酸酸 性重クロム酸法 COD)量(初期濃度)を 3kg/m3 から 4kg/m3,魚アラの割合は,0%から 33.3%と し,投入 COD 量(初期濃度)を約 3kg/m3 とした。 連続処理試験:バイアル試験はバッチ試験であるため,リアクタの長期安定性,バイオガス回収量を 正確に把握することは困難である。そこで,連続式リアクタを用いた運転を行い,処理特性の把握を 行った。試験に用いた連続試験装置は,バイオリアクタ部有効容積 3L,10L,30L の 3 種であるが, 基本的な構成は同じである。 試験に供した廃棄物は,生ごみ及び混合廃棄物として,シュレッダー廃紙,廃グリセリン(BDF 製造廃棄物),魚アラを使用した。 5.試験結果および考察 廃グリセリン(バイアル) :供試廃グリセリンの COD,BOD(5 日間 BOD)は,共に非常に高濃度 であり,n-Hex 抽出物量も高い。また,BDF 製造過程で水酸化カリウムをエステル化触媒として使 用しているため,カリウムイオン濃度も高い。その反面,窒素,リン濃度は低いため,窒素,リン濃 度の高い生ごみとの混合はバイオガス生成量の増大につながる可能性を持っている。 バイアル試験における積算バイオガス生成量の経日変化を図 5-1 に示す。廃グリセリンの混合率が 増加するに従い,バイオガス生成が停止するまでの期間が長くなっていることから,廃グリセリンは 生ごみに比べ難生分解性と考えられる。また,積算バイオガス量も廃グリセリン混合率が高くなるに 従い低下しているため,高混合率での処理はメタン発酵の不安定化を引き起こす可能性があり,今回 のバイアル試験の結果から,廃グリセリン混合率は最大で 10%程度であると考えられる。 魚アラ(バイアル) :供試した魚アラの全窒素(T-N)濃度,タンパク質濃度および n-Hex 抽出物量, 脂質濃度が高いことから,高混合率とした場合,アンモニア態窒素および脂肪酸による阻害が顕在化 する可能性があると考えられる。図 5-2 に示すとおり魚アラの混合率が 10%を超えると積算バイオ ガス量が急激に低下する。このことと,上記分析結果から,魚アラ中のアンモニア或いは脂肪分が発 酵を阻害している可能性が高い。また,積算バイオガス量が生ごみのみの場合と同程度である混合率 9.1%の場合でも,バイオガス生成が停止するまでに 13 日程度を要していることから,魚アラは,生 ごみに比べ難生分解性であると考えられる。したがって,高混合率の魚アラとの混合処理は,メタン 発酵の不安定化を引き起こす可能性があると考えられる。今回のバイアル試験の結果から,魚アラの 混合率は最大で 10%程度であると考えられる。 -65- 1,200 1,200 0.0% 1.1% 4.8% 9.0% 16.7% 23.0% 28.7% 0.0% 33.2% 16.6% 23.2% 28.7% 33.3% 1,000 800 積算バイオガス量 [mL] 積算バイオガス量 [mL] 1,000 9.1% 600 400 200 800 600 400 200 0 0 5 10 15 20 25 30 35 0 0 5 10 経過日数 [day] 15 20 25 30 35 経過日数 [day] 図 5-1 廃グリセリンのバイアル試験結果 図 5-2 魚アラのバイアル試験結果 廃紙と生ごみの混合連続処理:廃紙(混合率 10.8%)との混合処理試験では,COD 容積負荷を増大 しても,高い除去率で安定運転が可能であった。試験期間を通し,全 BOD 除去率は 90%,全 COD, SS 除去率は 80%をおおむね超えていた。投入廃棄物1トンあたりのバイオガス発生量は,水理学的 滞留時間(HRT)10 日での定常運転において約 260m3 であった。これは,廃紙を混合することで投 入廃棄物 1 トンあたり生ごみのみの場合の約 1.6 倍のバイオガスが回収可能であることを意味する。 ただし,スラリの流動性を維持するために 8 倍量の加水が必要であった。 廃グリセリンと生ごみの混合連続処理:廃グリセリン混合率 5%のバイオリアクタを COD 容積負荷 20kg/m3/day,HRT 約 10 日で連続運転したが,試験期間を通じて有機酸の蓄積は観察されず,メタ ン発酵は安定していたと考えられる。定常運転中の投入廃棄物1トンあたりのバイオガス発生量の平 均値は約 190m3 であり,生ごみのみを処理した場合より約 1.2 倍のバイオガスが回収可能であるこ とが確認された。混合率を 10%に増大した試験では,COD 容積負荷 27kg/m3/day,HRT15 日まで, 安定した定常運転が可能であった。容積負荷 20 kg/m3/day までは,全 COD,全 B0D,SS,n-Hex のすべての除去率が 90%以上と極めて高い値であった。特に n-Hex 除去率は 98%以上であり,グリ セリン成分も高効率に分解していることが確認できた。定常運転時における投入廃棄物 1 トン当た りのバイオガス発生量は約 300m3 であり,生ごみのみを処理する場合に比べ約 1.9 倍のバイオガス が回収可能であることが確認できた。生ごみ/廃グリセリンスラリを用いた連続処理試験より,廃グ リセリンは生ごみとの混合処理に適しており,混合処理することで投入廃棄物当たりのバイオガス回 収量を大幅に増加させることができることが確認できた。 魚アラと生ごみの混合処理:魚アラ混合率 10%の場合,COD 容積負荷 15kg/m3/day,HRT10 日で 定常運転に移行したが,VFA 濃度が上昇傾向を示したため COD 容積負荷 10kg/m3/day,HRT15 日 に負荷を軽減した。しかし,一旦,低下傾向を示した VFA 濃度が急激に上昇し,不安定な運転状況 となった。この時のアンモニア濃度は 3,000mg-N/L を超えており,アンモニアによるメタン発酵阻 害を生じたと考えられる。元来,魚アラにはタンパク由来の窒素が高濃度に含まれており,アンモニ ア態窒素濃度低減策を採用しない場合,混合率 10%で安定運転を維持することは困難であると考え られる。そこで,魚アラ混合生ごみスラリに等量加水したスラリによる連続試験を行ったところ, COD 容積負荷 7kg/m3/day,HRT10 日で安定した連続運転を維持することが可能であった。この時 の全 COD,全 BOD,SS 除去率の関係を示す。定常運転時の除去率は 80%以上であった。定常運転 時の投入廃棄物 1 トン当たりのバイオガス発生量は約 190m3 であり,生ごみのみの場合と比べ,約 1.2 倍のバイオガスが回収可能であった。 -66- 魚アラを生ごみに混合することでバイオガスの回収量を増加させることが可能であることが示さ れた。しかし,希釈倍率によってはアンモニア阻害の可能性があるため,10%魚アラを混合した場合 には,生ごみのみのスラリにさらに加水してアンモニア濃度を調整する必要があると考えられる。 LCCO2 の検討:廃棄物混合比を変えた 6 種のシナリオを設定し,それぞれの施設の温暖化負荷を検 討した。その結果,建設時に発生する温暖化負荷はリアクタの容量に大きく依存することが示された。 また,運用時に発生する温暖化負荷は,全てのシナリオでマイナスとなり,今回試料とした廃棄物を バイオガス化施設で処理することにより,温暖化負荷を削減可能であることが示された。生ごみのみ を処理するシナリオ 1 では,建設・解体時の発生温暖化負荷を約 7.7 年で回収可能であった。また, 今回の試験に使用した魚アラ,廃紙,廃グリセリンをそれぞれ 4%程度生ごみに混合した条件(シナ リオ 6)では,6.1 年程度で建設・解体時の発生温暖化負荷を回収可能であった。 6.まとめ バイアル試験より,廃グリセリン,魚アラは生ごみに高濃度で混合するとメタン発酵を阻害する可 能性が示された。廃グリセリン,魚アラともに,生ごみへの混合率は 10%が限界であると考えられ る。魚アラについては,有機物負荷のみではなく,タンパク由来のアンモニア態窒素濃度にも留意す る必要がある。また,これらの廃棄物は生ごみよりも分解速度が遅く,高濃度に混合した場合,処理 時間を長く設定する必要があると考えられる。 連続処理試験により,廃紙,廃グリセリン,魚アラともに,生ごみに混合することで投入廃棄物 1 トン当たりのバイオガス発生量が増加することが確認された(表 6-1)。特に廃グリセリンは窒素含 有量が少なくバイオガス回収量の増加が顕著であるため,窒素成分の多い生ごみへの混合処理は有効 であると考えられる。廃紙に関しても原料中の COD/N 比の調整に有効であり,生ごみへの混合に適 していると考えられる。しかし,廃紙を混合処理する場合には流動性維持に留意する必要がある。 インベントリ解析の結果(表 6-2)と併せて考えた場合,混合することで物理的要因(流動性等) , 生物的要因(阻害等)緩和のために多量の加水が必要となる場合,生ごみとの混合処理が必ずしも有 利とは言えないと考えられる。 今回検討した廃棄物以外にも,生ごみへの混合によりバイオガス回収量の増加を見込める他の廃棄 物は存在すると考えられる。今後,バイオガス化施設の導入には,導入地域の特性を生かした原料の 配合を検討する必要があると考える。 表 6-1 連続処理試験総括表 混合対象廃棄物 [%] 混合比 最大COD容積負荷 [kg/m3/day] [day] HRT [%] バイオガス回収量比 廃グリセリン 5 5 20.0 27.0 10 15 119 188 廃紙 10.8 4.5 10 163 魚アラ 10 7.0 10 119 (対生ごみ比) 表 6-2 二酸化炭素発生/削減量(処理規模,日処理量トンあたりの CO2 炭素) シナリオ 建設・解体時 運用時 1 2 3 4 5 6 (t-C) 60.0 120.0 60.0 69.6 76.8 64.8 (kg-C/day) -21.2 -19.0 -26.8 -45.0 -14.4 -29.1 1: 生ごみのみ,2: 廃紙 11%,3: 廃グリセリン 5%,4: 廃グリセリン 10%,5: 魚アラ 10%,6: 廃紙・廃グリセリン・魚アラ各 4% -67- 誌 上 発 表 目 次 【廃棄物処理対策研究事業】 1.コンクリート産業における環境負荷評価マテリアルフローシミュレーターの開発 および最適化支援システムの構築に関する研究 代表研究者:野口 貴文(東京大学大学院) 68 2.廃棄物対策が家計のごみ排出削減に及ぼす影響に関する計量経済学的研究 代表研究者:日引 聡((独)国立環境研究所) 72 3.アジア地域における資源循環システムの解析と指標化 代表研究者:寺園 淳((独)国立環境研究所) 80 4.産 業 拠 点 地 区 で の 地 域 循 環 ビ ジ ネ ス を 中 核 と する 都 市 再 生 施 策 の 設 計 と そ の 環 境・経済評価システムの構築 代表研究者:藤田 壮(東洋大学) 84 5.バイオマスの高機能化とめっき廃液の最適な資源循環システムの構築 代表研究者:馬場 由成(宮崎大学) 89 6.廃棄物処理施設の爆発火災事故事例解析に基づく安全管理手法の構築 代表研究者:武田 信生(京都大学大学院) 93 7.水素生成プロセスの導入による地域未利用バイオマスの適正循環システムの構築 に関する研究 代表研究者:石垣 智基(龍谷大学) 97 8.廃棄物最終処分場内部の微生物コンソーシアに着目した安定化指標の構築 代表研究者:藤田 昌史(山梨大学大学院) 101 9.製紙スラッジ産業廃棄物からハイドロキシアパタイト複合体の創製に関する研究 代表研究者:逸見 彰男(愛媛大学) 105 10.バイオマスの循環型システム活用(CO 2 のサイクル化)における超音波による無 水エタノールの精製およびバイオディーゼル燃料の製造に関する研究 代表研究者:坂東 博(大阪府立大学大学院) 107 11.廃棄物最終処分場跡地の形質変更のための施工方法と環境リスクの相関に関す る研究 代表研究者:嘉門 雅史(京都大学大学院) 111 12.廃棄物を利用した鉄-水素コプロダクションシステムに関する研究 代表研究者:清水 正賢(九州大学大学院) 114 13.長期間使用製品の仕様・保守情報の表示及び利用方法に関する研究 代表研究者:野城智也(東京大学) 118 14.循環廃棄過程を含めた水銀の排出インベントリーと排出削減に関する研究 代表研究者:貴田 晶子((独)国立環境研究所) 123 15.消化ガス再生利用を可能にする新規燃料電池電極材料の開発 代表研究者:佐々木 一成(九州大学) 127 16.再生製品に対する環境安全評価手法のシステム規格化に基づく安全品質レベル の合理的設定手法に関する研究 代表研究者:大迫 政浩((独)国立環境研究所) 131 17.容器包装の分別収集・処理に係る拡大生産者責任の制度化に関する研究 代表研究者:安田 八十五(関東学院大学) 135 18.有害重金属を含む海産物廃棄物の包括的再資源化 代表研究者:東 順一(京都大学大学院) 138 19.地域資源循環に係る環境会計表の作成とその適用 代表研究者:井村 秀文(名古屋大学大学院) 142 20.実団地における資源循環型ライフスタイル普及のための環境コミュニケーショ ンとその効果に関する実証的研究 代表研究者:早瀬 光司(広島大学) 145 21.バイオマス廃棄物を有効使用した重金属含有魚介類廃棄物の適正処理技術の開 発 代表研究者:井上 勝利(佐賀大学) 149 22.マイクロ波照射を用いたフライアッシュゼオライトの工業化プロセスの開発 代表研究者:北條 純一(九州大学大学院) 153 23.Si−0 系燃焼灰の高付加価値・再資源化技術の開発に関する研究 代表研究者:近藤 勝義(大阪大学) 157 24.循環資源・廃棄物中の有機臭素化合物およびその代謝物管理のためのバイオアッ セイ/モニタリング手法の開発 代表研究者:滝上 英孝((独)国立環境研究所) 161 25.バイオ技術を中心とした不法投棄現場及び不適正最終処分場の修復・再生システ ムの開発 代表研究者:古市 徹(北海道大学大学院) 165 26.海底における有害廃棄物に汚染された底質の安全な処理に関する研究 代表研究者:神野 健二(九州大学) 169 27.廃石膏ボードの安全・安心リサイクル推進を可能とする石膏中フッ素の簡易分 析・除去技術の開発 代表研究者:袋布 昌幹(富山工業高等専門学校) 175 28.最終処分場の早期跡地利用を考慮した多機能型覆土の検討 代表研究者:遠藤 和人((独)国立環境研究所) 178 29.小規模処理場における高効率ガス発電を可能とする熱分解−ガス改質技術の開 発 代表研究者:姫野 修司(長岡技術科学大学) 182 30.焼却・溶融残渣の有効利用における鉱物学的・土壌生成学的安定化に関する研究 代表研究者:島岡 隆行(九州大学大学院) 186 31.使用済みニッケル水素 2 次電池をモデルケースとした環境に優しい資源循環プ ロセスの構築 代表研究者:三宅 通博(岡山大学) 190 32.減圧加熱/塩化揮発の組合わせによる固体残渣類の完全無害化と重金属の高効 率分離回収・再資源化 代表研究者:松田 仁樹(名古屋大学) 194 33.マイクロ波誘電加熱による PVC 脱塩素技術の超高効率化による環境リスク低減 代表研究者:丑田 公規((独)理化学研究所) 198 34.ゴム・プラスチック材料廃棄物のリサイクリング過程における化学構造変化の精 密解析と実用プロセスの構築 代表研究者:大谷 肇(名古屋工業大学大学院) 202 35.廃棄物処理施設から排出される廃液からの有害イオンの選択除去用無機イオン 交換体の開発 代表研究者:石原 達己(九州大学大学院) 205 36.金属スクラップ素材の高度循環利用のための新しい高速定量分析法の開発 代表研究者:我妻 和明(東北大学) 209 37.分子インプリント感温性ゲルを用いた土壌洗浄排水中の重金属類の新規な吸着 分離去に関する研究 代表研究者:迫原 修治(広島大学大学院) 211 38.水ラジカル反応を利用した廃油の再燃料化と低エミッション燃焼技術の研究開 発 代表研究者:木戸口 善行(徳島大学大学院) 215 39.ビジネススタイルの相違による廃棄物排出抑制及び再生利用促進効果の検証と 変革のための成立要件に関する研究 代表研究者:乙間 末廣(北九州市立大学大学院) 219 【次世代廃棄物処理技術基盤整備事業】 40.UHF帯ICタグを利用した廃棄物トレーサビリティシステムの開発 事業者名:(株)コシダテック 223 41.マイクロ波による土壌無害化技術の開発 事業者名:日本スピンドル製造(株) 227 コンクリート産業における環境負荷評価マテリアルフローシミュ レーターの開発および最適化支援システムの構築に関する研究 研究期間(西暦)= 2005−2006 研究年度(西暦)= 2005 代表研究者名 = 野口貴文(東京大学) 共同研究者名 = 兼松学(東京理科大学)、田村雅紀(首都大学東京) 、柳橋邦生((株)竹中工務 店)、橋田弘(清水建設(株)) 1.研究目的 本研究課題では,地域ごとに異なるコンクリー ト関連産業や廃棄物処理産業,地理的条件,都市 におけるコンクリート塊廃出予測など,実態に沿 った情報を元に,コンクリート産業を中心とした プラントレベルのマテリアルフロー最適化手法の 開発を目的とする.このとき,廃棄物処理の観点 のみならず,二酸化炭素や有害物質の排出,生産 物の性能など,複数の基準従い総合的に評価する 合理的な方法論の提示は必須で,さらに,建築物 図−1 対象とする関東エリアの俯瞰図 の長寿命化による建設廃棄物の抑制や,LCC の低 減,コンクリートの再利用による排出量の抑制の可能性など,時間軸を考慮した環境負荷低減効 果の適切な評価手法の構築を目的とする. また,具体的な国内都市圏および実建設現場におけるケーススタディを通じて,都市毎のコン クリート産業のマテリアルフロー最適化のためのシナリオの提案を行い,地域性を考慮した循環 型社会形成に資することを目標とする. 2.研究方法 本研究の目的の達成に向けて,平成 17 年度においては,以下に示す研究項目を遂行する. (1)マルチエージェントシステムによる環境負荷評価シミュレーターのプロトタイプの構築 本研究項目では,各プラントをエージェントと見立て,各生産段階だけでなくコンクリート 関連産業全体における需要と供給のマテリアルバランスを,廃棄物の抑制、輸送エネルギーの 削減、経済性などを考慮した上で成立させ,時間軸に沿ってシミュレートするための理論を構 築し,マルチエージェントシステムを用いた環境負荷評価シミュレーターのプロトタイプの開 発を行う.特に,EcoMA 解析エンジン部分に対してグラフ理論の適用を行うことで,サプライ チェーンの数学的理論的検討を加え,各種統計情報の理論的整合の検討など,マテリアルフロ ー解析としての基礎理論について大略の道筋をつける. また,対象とする地域の固定資産課税台帳,除却統計など統計情報の調査から残存確率を導 -68- き,系内の街区ごとの構造種別床面積などの情報から位置情報を含むコンクリート塊排出予測 を行い,排出からリサイクルまで含めたマテリアルフローの最適化を指向する. また,地域の 交通システムおよび地理条件の入力には GIS の導入を検討し,シミュレーターとの連携システ ムの構築と精度の向上を目指す. ①GIS との連携の確立 ②除却統計などの調査に基づく構造種別ごとの寿命予測手法の検討 ③街区の構造種別床面積の統計情報調査 ④環境負荷原単位の調査・導出および 6 価クロムなどの有害物質の実態調査 (2)システムに関する基礎理論研究 本研究項目としては,最終的な目的である,マテリアルフロー多基準最適化システム構築の ための基礎的理論研究をおこなう. また,多基準評価手法の構築を目的として,特に建築物の長寿命化の影響,再再生の評価な ど時間軸の概念を取り入れた評価手法の検討を行う. (3)都市圏における環境負荷最適化ケーススタディのための事前調査 本研究課題においては,環境負荷最小化シミュレーターとマテリアルフロー最適化支援シス テムの連携により,具体的な都市圏および実建設現場で実データを用いたケーススタディを行 い,都市レベルでの循環型社会のシナリオを提案する. 候補となる都市の事前調査を目的として,関東首都圏,関西圏,福岡都市圏,札幌都市圏に おけるコンクリート生産に関わる産業状況や,リサイクルの動向,最終処分場の状況,各種統 計量の入手など関連情報の調査を行う. 3.結果と考察 (1)マルチエージェントシステムによる環境負荷評価シミュレーターのプロトタイプの構築 マルチエージェントシステムによる環境評価シミュレータのプロトタイプの構築を行い, EcoMA のプロトタイプを 17 年 12 月にリリースした. 具体的なプロトタイプの開発にあたっては,解析エンジン部分(マルチエージェントシステ ム解析に関わる全関数系)に関しては野口貴文,兼松学により独自に開発を行い,①GIS との 連携の確立,②ユーザーインターフェースの作成,③SQL サーバの導入によるデータ管理の合 理性向上など,既存技術との連携部分に限って外部委託した.このことにより,プロトタイプ の構築を大幅に早期に完成することができただけでなく,当初の目的である GIS との連携に加 え,SQL サーバの導入やユーザーインターフェースの開発による,解析実行に関わる多くの作 業の効率化を図ることが可能となった. まず,理論面においては,グラフ理論を用いてサプライチェーンの数学的取り扱い方を定め た上で、イベント駆動モデルを用いて、マテリアルフローの時間的な変動を取り扱う枠組みを 構築した.このモデル化によって提案したマルチエージェントシステムで生成される資源循環 の時間的変動を考慮することが可能となった.このことは,一般的な環境評価ツールでは、価 格、エネルギー効率、製品の寿命などの時間的変動は考慮されないが,イベント駆動モデルの 導入によって、現実社会に即した形で時間的変動を考慮することが可能となったことを示す. -69- 一方で,課題であった,②除却統計などの調査に基づく構造種別ごとの寿命予測手法の検討, ③街区の構造種別床面積の統計情報調査を行った.②に関しては RC 構造物の寿命予測手法の 実装を終えたが,③に関しては当初の予定通り引続き来年度も調査を継続することとなった. 加えて関東圏,福岡都市圏,北海道における実態調査から,特に生コン販売に関してはいわ ゆる協販型の販売形態がとられており,マテリアルフローに少なからず影響を与えていること が明らかとなったことから,各エージェントの商取引形態および企業戦略を反映できるようモ デルの改善を行った.④環境負荷原単位の調査・導出および 6 価クロムなどの有害物質の実態 調査については,橋田浩らによる実態調査が行われるとともに,野口貴文による 6 価クロム溶 出に関する実験的研究を進めており,来年度以降,これらの実情報を元に,コンクリート塊排 出に伴う重金属リスク評価などの研究を進めることとなった.本実験的研究については,本年 度も引続き継続実験を行う予定である. 以上のプロトタイプの開発・解析を通じて,以下の知見を得た. 構築した資源循環モデルは、各エージェントの集合によって生成されるボトムアップな系で ある.従って、マクロ経済モデルによる時間因子のモデル化に比べて以下の利点がある.また 個別のエージェントごとに離散化された経済モデルや意思決定戦略が定義可能なため、生コン 協同組合による地域分割型の不連続な経済的集合のモデル化に適している点、次に、それら個 別の不連続な集合によって生成される不均衡な系を表現可能な点についても大きな利点を有す ることを確認した. また,本システムを用いて建設分野で利用される材料の質量が高く輸送環境負荷が都市レベ ルでも無視できないことを指摘し,さらに既存の環境評価ツールではこれらを適切に評価でき ていない点を指摘した.さらに,この問題点を解決すべく、輸送に関わる工場の立地、需要発 生の地理的分布を適切に評価するための基盤として、空間のグリッド分割によるモデル化を提 案した. 最終的には,開発したプロトタイプシステムを用いて,建設分野で重要となる長期スパンで の廃棄物需給バランス評価の例として、再生骨材と長寿命化テーマを取り上げ、提言を行った. (2)多基準最適化システム構築のための基礎的理論研究 多基準評価手法の構築を目的として,特に建築物の長寿命化の影響,再再生の評価など時間 軸の概念を取り入れた評価手法の検討を行った.本研究テーマについては,次年度以降も引続 き検討を行うこととする. (3)都市圏における環境負荷最適化ケーススタディのための事前調査 候補となる都市の事前調査を目的として,関東首都圏,関西圏,福岡都市圏,札幌都市圏に おけるコンクリート生産に関わる産業状況や,リサイクルの動向,最終処分場の状況,各種統 計量の入手など関連情報の調査を行う. 候補地を吟味・検討した結果,関東首都圏,福岡都市圏,札幌都市圏について実際の調査研 究を行った.関東都市圏については,さらなるモデルの精度向上のため引続き必要な調査を薦 めることとなった.特に,生コン業者の協販システムや企業戦略の実装を目的とした場合,特 に豊富な戦略と多数の企業・プラントが存在する関東首都圏は調査対象として最適であると判 断し,関東首都圏の生コン協組を中心とした調査とデータの整備を行った.福岡都市圏では, -70- 北九州市におけるリサイクル事業の試みが,追随する他圏のリサイクル事業を含めた資源循環 問題の考察に役に立つと考えたからであり,福岡市に加え,北九州市周辺における情報収集を 行った.また,札幌都市圏については,北海道特有の事情を考慮する必要があるとの事前検討 結果を受け,北海道全道におけるが調査を行うことと成った.北海道は,廃棄物の減容化の圧 力が小さい,開発投資の圧縮,需要の大幅な減少などの背景から,リサイクル事業が困難な場 合のテストケースとして調査が必要であると判断したためである.北海道については,札幌, 網走,美幌,釧路について実態調査を行い,具体的な実データベースの整備を行った.さらに, 平成 18 年度において北海道全域のコンクリート産業全体の実態調査を行い,EcoMA 実装のた めの詳細データの収集を行った. 4.結論 本研究により,資源循環シミュレーションシステム EcoMA のプロトタイプの開発を行った. 本研究で開発した資源循環シミュレーションシステム EcoMA により、意思決定によって動的に 変化するマテリアルフローとその生産・廃棄活動によって生じる環境負荷を、個別の企業、産業 団体に対する統計的集合として評価することが可能であることが示されたものと考える. また,本システムの今後の可能性を提示し,廃棄物のリサイクル・リユースにおける需給バラ ンス、特にリサイクル材料同士の需給バランスは、本システムの有用性を発揮できる分野である. 商習慣を契機として材料の調達経路が変わる、あるいは調達材料が変わるといった状況であれば、 EcoMA は有効な評価ツールとなり得ることを示した.新材料が地域社会に与える環境・経済イン パクト評価においては、マルチエージェントシステムによる個別の工場についても需給バランス 分析が重要となる.EcoMA では任意の地理的分布を持つ需要発生モデルを導入可能でありサプラ イチェーンのアンバランスさや建設ストックの分布を評価できる.コンパクトシティーや職住分 離といったコンセプトの政策的試行の観点からも本システムは有用である. -71- 廃棄物対策が家計のごみ排出削減に及ぼす影響に関する 計量経済学的研究 研究期間(西暦)=2005−2007 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=日引聡(独立行政法人国立環境研究所) 共同研究者=島根哲哉(東京工業大学) 、馬奈木俊介(横浜国立大学) 1.研究目的 循環型社会システムを構築し、ごみ排出量の削減、リサイクル、再利用を促進することが重要 な政策課題であり、中環審廃棄物・リサイクル意見具申では、循環型社会に向けた取組として、 経済的手法(有料化)の推進、一般廃棄物処理コスト分析や効率化の推進の必要性をあげ、十分 な減量効果発揮のために必要な料金設定の必要性を述べている。しかし、有料制の政策効果につ いては、多くの自治体がすでに導入しているこの政策も、効果の評価にはばらつきがあり、導入後5年で 一割以上の削減を実現した自治体もある一方で、導入数年後にはごみの排出量が導入以前の水準にま で戻ってしまった自治体もある。このため、住民の中には、有料制の実施はごみ排出量の減量化につ ながらず、住民の負担を増やすだけであるとして、反対の立場を取る人も多い。このような中、ご み処理手数料有料化のごみ削減効果を疑問視する声も多い。また、廃棄物処理コストについては、費用 分析が十分に行われていないため、どの程度非効率が発生しているのか、非効率の要因は何なのか、ま た、その費用に基づいてどのようなレベルにごみ処理手数料を設定すべきかという知見が十分明らかに されていない。 本研究は、有料化の有効性を評価し、廃棄物処理費用を分析し、望ましい廃棄物政策のあり方(望ま しい料金設定)に関して明らかにすることを最終目的としている。 上記の目的を達成するために、2005 年度は、分析のために必要なデータを収集すること、分析 のフレームワークを検討することを目的としている。また、予備的な分析として、市町村レベル の集計データを用いて、ごみ処理手数料有料制の有効性に関する研究についての分析を行う。 2.研究方法 有料化の有効性を評価する研究を実施するために、2005 年度は、ごみ処理手数料有料制が家計 のごみ排出・リサイクル行動へ及ぼす影響を分析するために必要なデータを家計調査によって収 集する。家計調査では、同じ家計を、12ヶ月間毎月繰り返し調査する。このために、本年は、 既存研究をサーベイし、既存研究で扱われている変数を明らかにし、さらに分析に必要な変数を 追加した上で、家計調査票を設計する。次に、プレテストを実施し、調査票の問題点等について 検討し、家計調査票を修正した上で、本調査を実施する。第二に、全国の自治体の廃棄物事業の 非効率性を分析するために必要なデータを収集する。本データは、全国のすべての自治体を対象 にして、廃棄物処理費用と費用決定に影響を及ぼす変数(雇用量、回収頻度、その他)などにつ いて、過去 10 年間のデータを収集し、パネルデータを構築する。また、既存研究をレビューし、 -72- 分析のフレームワーク(モデルの構造、推計手法など)を構築する。 また、予備的分析として、市町村レベルのデータを用いて、ごみ処理手数料が、自治体レベル のごみ排出量やリサイクル行動にどのような影響を及ぼしたかを分析する。本予備的分析におい て、市町村レベルのごみ排出、リサイクル行動、各自治体の政策変数(ごみ処理手数料が有料か どうか、有料の場合、手数料はいくか、ごみなどの回収頻度など)のデータを収集し、パネルデ ータを構築する。構築したデータをもちいて、ごみ排出関数、リサイクル関数を推計し、政策の 有効性について分析する。特に、各自治体の政策変数については、自治体を対象とした電話によ る聞き取り調査によってデータを収集する。なお、本分析で用いた、研究のフレームワーク(モ デルの構造、推計手法など)を、家計レベルの分析に用いることを予定している。 ごみ処理事業の非効率性の分析については、自治体別にごみ処理事業にかかわる費用に関する データやごみ処理事業の詳細についてのデータを収集し、分析のためのデータベースを構築する。 また、分析手法について検討し、データ解析のための理論的フレームワークを明らかにする。 3.結果と考察 3−1 ごみ排出・リサイクル行動に関する家計サーベイ調査 既存研究のサーベイ調査の結果を踏まえて、家計調査のための調査票を作成し、東京都(23 区 を除く)と千葉県の市を分析対象に 250 家計をランダムに選び、プレテストを行った。プレテス トでは、燃えるごみ・燃えないごみの発生量(袋の大きさごとに分類)、ごみの収集方法、ごみ有 料袋の制度などを調査した。また、回答者の環境意識や行動に関する質問も行った。さらに、年 齢構成、最終学歴、職業(自営業かも含めて) 、住居の形態、収入、家族数、ディスポーザーやコ ンポストあるいは生ごみ処理機の有無、住居の広さなどである。同様に居住地域で、資源回収に 関して、自治体、町内会や子ども会、スーパーマーケットなどでの実施有無についても調査した。 今回の調査の簡単な分析から次のことが分かった。①ごみの有料化制度がある地域に住んでい る家庭はそうでない家庭に比べて、一概にゴミ排出量が少ないとは言えない。しかし地域で資源 回収が多いほど一人当たりゴミ排出量は少なくなる。②環境意識が高い家庭はそうでない家庭に 比べて、意識だけでなく行動の上でも差(平均で 6∼15%)がある可能性がある。ただ、環境保 全活動の団体活動(NPO など)や環境保全の講習会やセミナーに自主的参加していると答えた家 庭は、参加していない家庭よりも排出量が6パーセントごみ排出量が多かった。このことから、 同じ環境意識が高くても、知識蓄積を主においた家庭の場合、必ずしもごみの排出抑制に結びつ いていない可能性がある。③リサイクルに関しては、牛乳パック、プラスチックトレイ、空き瓶、 空き缶、ペットボトル、発泡スチロール、新聞紙、段ボールなど紙類、衣類に関するリサイクル への取組について調査したところ、発泡スチロールのリサイクルの取組が低いという以外は大き な差は生まれなかった。 3−2 市町村レベルのデータを用いた予備的分析 本分析では、家計のごみ排出やリサイクル行動を分析するためのモデルのフレームワークを検 討し、それに基づいて、予備的分析として、収集したデータを用いて、家計当たりのごみ排出関 数及びリサイクル関数を推計した。 -73- 本稿では、可燃・不燃ごみ(以下では、資源ごみと区別するために、可燃・不燃ごみを「日常 ごみ」と略称する。 )排出と資源ごみ排出の決定要因について分析し、日常ごみに対する従量制に よるごみ処理手数料(以下では、日常ごみ処理手数料と略称する。 )有料化がごみ排出量やリサイ クル(資源ごみの排出)に及ぼす影響について明らかにする。したがって、以下では、日常ごみ 排出関数と資源ごみ排出関数を自治体レベルのパネルデータを用いて推計する。 推計式は、(1)および(2)式のとおりである。 ln GWi,t 0 4 Freqi ,t 8D _ 14 1 ln Pr ice _ ei,t NC 11i ,t ln NH i ,t ln HHI i,t ln RWi ,t 0 4 Freq i ,t 8D _ 1 9D _ ln NH i ,t ln HHI i ,t 18 (ln Officei ,t ) 2 r i 2 3 ln Pr ice _ ei,t 10 Freqi ,t 6 ln HHI i ,t ln Pr ice _ ei,t ln Officei,t ln Pr ice _ ei ,t 11 ln NH i ,t ln POPDENSi ,t 12 (ln NH i ,t ) 16 (ln POPDENSi ,t ) 2 13 2 17 7 ln NCS i,t ln HHI i ,t (1) ln Officei ,t g i ,t ln Pr ice _ ei ,t ln Pr ice _ ei ,t NC 11i ,t 15 g i 2 2 (ln Pr ice _ ei ,t ) 5 D _ SBi ,t 9 D _ SBi ,t 18 (ln Officei ,t ) 14 ln Pr ice _ ei ,t 5D _ SBi ,t 15 2 (ln Pr ice _ ei ,t ) SBi ,t ln Pr ice _ ei ,t 10 Freq i ,t ln POPDENS i ,t 11 2 3 6 ln HHI i ,t ln Pr ice _ ei ,t ln Officei ,t ln Pr ice _ ei ,t ln NH i ,t 12 (ln NH i ,t ) 16 (ln POPDENS i ,t ) 2 13 2 17 7 ln NCS i ,t ln HHI i ,t (2) ln Officei ,t r i ,t ただし、変数の定義は、表1に示すとおりである。また、 gi, ri, gi,t、 ri,t はそれぞれ、日常ご み排出関数に関する個別効果、資源ごみ排出関数に関する個別効果、日常ごみ排出関数に関する 誤差項および資源ごみ排出関数に関する誤差項を表している。なお、i および t は自治体および変 数の年次を意味している。 被説明変数には、1家計あたりの日常ごみ(可燃ごみ及び不燃ごみの合計)および資源ごみ排 出量を重量で測ったものを用いている。これらは、自治体別の排出量を世帯数で割って求めてい る。ここで、日常ごみと資源ごみには、事業系のごみが含まれていることに注意する必要がある。 自治体では、多量の場合を除き、事業所から排出される事業系の日常ごみ(あるいは、資源ごみ) も収集しているため、自治体レベルに集計されたデータでは、家計から排出される日常ごみ(あ るいは、資源ごみ)と事業所から排出される日常ごみ(あるいは、資源ごみ))を分離することは できない。したがって、本研究で被説明変数として用いている日常ごみ排出量(あるいは、資源 ごみ排出量)には、事業系のごみが含まれていることに注意する必要がある。このため、事業活 動によるごみ排出量への影響を考慮するために、地域における1家計あたりの事業所数をモデル 式に入れている。なお、平成 14 年度の排出量の 66.8%が家計から排出されるごみであると推定 されており、ごみの多くの部分が家計に由来するものであることがわかる。 本稿では、説明変数として、政策変数と治体の属性変数の2種類の変数を用いている。表 3-21に示すように、政策変数には、日常ごみ処理手数料の実質価格、ごみの分別数、日常ごみの収 集頻度、小容量の日常ごみ用袋(あるいは、ステッカー)の利用可能性を使用し、自治体属性変 -74- 数としては、人口密度、世帯人員、世帯所得、事業所数などの変数を使っている。 表 3-2-1 変数の定義 変数 単位 定義 従属変数 GW トン RW トン 1家計あたりの年間日常ごみ(可燃ごみおよび不燃ごみ合計)排 出量(重量ベース) 1家計あたりの年間資源ごみ排出量(重量ベース) 政策変数 Price_e 円/リットル NCS 1リットルあたりの、可燃ごみ用のごみ袋あるいはステッカーの 実質価格 ごみの分別数。ただし、分別数が 11 以上の場合には、11 とする。 分別数が 11 以上の自治体のダミー変数。11 以上の分別数の自治 D_NC11 体を1とし、それ以外は0とする。 Freq 日常ごみの月あたりの収集頻度 小容量日常ごみ用袋・ステッカーダミー。 D_SB 10 リットル以下の容量のごみ袋あるいはステッカーが利用可能 な場合は、1をとる。 自治体属性変数 POPDENS 人 /km2 NH 人 HHI 百万円 年間世帯所得 Office 事業所 1 世帯あたりの事業所数 人口密度 1世帯あたりの人数 本節では、単位日常ごみ排出量あたりの価格として、可燃ごみのごみ袋1リットルあたりの価 格を用いている。本来ならば、可燃ごみのごみ袋の価格だけでなく不燃ごみのごみ袋の価格も考 慮すべきであるが、本稿では、説明変数から除去した。なぜなら、可燃ごみと不燃ごみの両方を 有料化している自治体では、多くの場合一袋あたりの価格を同額に設定しているケースが多いた め、二つの変数の相関が高いからである。本分析では、さまざまな資源ごみ排出量の総計を被説 明変数としている。 ごみの分別数の変数として、NCS と D_NC11 を用いている。分別数が多いほど、日常ごみへ の資源ごみの混入が減少する一方で、資源ごみ排出量が増加するものと考えられる。このように、 分別数が 11 を超えるものについてはダミー変数を使わざるを得なかったのは、環境省「一般廃 棄物処理実態調査」における分別数の調査結果がこのような形でまとめられているからである。 この他、日常ごみ・資源ごみ排出量に影響を及ぼす変数として、収集頻度が考えられる。本研 究では、一月あたりに換算した日常ごみの収集回数を用いた。日常ごみの収集頻度の増加は、日 常ごみの排出が便利になることを意味し、相対的に収集回数の少ない資源ごみの混入を増やす結 -75- 果、日常ごみの排出量を増やし、資源ごみの排出量を減らす可能性がある。資源ごみの収集回数 を使わなかったのは、その情報が利用可能でなかったからである。ただし、環境省「一般廃棄物 処理実態調査」において資源ごみの収集頻度の項目を見ると、 「不定期」と回答している自治体が 多く、一月あたりの頻度はそれほど多くないことが伺われ、その意味において、自治体間の頻度 の格差はそれほど多くないものと思われる。 本研究では、10 リットル以下の小容量のごみ袋(あるいは、ステッカー)が日常ごみ排出にお いて利用可能かどうかを説明変数として用いている。ごみ袋制(あるいは、ステッカー制)によ る有料制を実施する場合、何種類の異なる容量のごみ袋(あるいは、ステッカー)を利用可能に するか、また、その容量をどれくらいにするかは、自治体の判断に任せられている。袋(あるい は、ステッカー)の容量が小さいほど、排出における分割可能性が高まるため、ごみの排出量を 減らすインセンティブはより強くなるものと考えられる。 人口密度は、自治体の人口を自治体面積で割って求めている。人口密度が高いほど、居住面積 は小さくなるため、そのような地域に住んでいる人々はごみを発生しないような消費スタイルを とるかもしれない。 世帯人員数は、自治体の人口を世帯数で割って求めている。世帯人員数が多いほど、世帯あた りの日常ごみ・資源ごみの排出量は増加するものと考えられる。 世帯所得は、自治体の課税対象所得総額を世帯数で割って求めている。所得が高くなるほど、 消費が増加する結果、日常ごみ・資源ごみの排出量は増加するかもしれない。 世帯あたりの事業所数は、自治体の事業所数を世帯数で割って求めている。事業所数が増加す るほど、事業系の日常ごみ・資源ごみの排出量が増加するものと考えられる。 (データ) 本研究では、関東地方の 441 自治体を対象として、自治体レベルのパネルデータを用いて、日 常ごみと資源ごみ排出の決定要因を分析する。ただし、分析対象となるすべての各年について、 各自治体の日常ごみ処理手数料(1リットルあたりに換算したごみ袋あるいはステッカーの価格) についての利用可能なデータが存在しなかった。そこで、環境省の調査によって、平成 14 年度 の段階で従量制を導入している自治体に対して、分析期間における各年の手数料、ごみあるいは ステッカーの種類、それぞれぞれの容量と価格について、電話による聞き取り調査を行い、デー タを収集した。分析に用いるパネルデータは、平成7∼14 年の8年間、441 自治体のデータから なる。三宅島、大島など島嶼部の自治体については、分析の対象からはずした。その理由は、こ れらの自治体は空間的に孤立しており、生活スタイルの違いなどにより異質性があると判断した からである。この結果、分析対象となる全サンプル数は、3,519 となった。 (推計結果) (1)および(2)式を個別に推計した。まず、F 検定の結果、個別効果が存在しないという帰無 仮説は1%の有意水準で棄却された。また、ハウスマン検定の結果、1%の有意水準で固定効果 モデルが採用された。したがって、固定効果モデルによる推計結果は、表 3−2−2 および 3−2 −3 の通りである。 -76- 表 3−2−2 日常ごみ排出関数の主要な推計結果(固定効果モデル) 推計値 P-値 標準誤差 ln (Price_e) -0.00616 0.02901 0.832 {ln (Price_e)}^2 -0.00068 0.00354 0.847 ln (HHI)ln (Price_e) -0.04005 0.01036 *** 0.000 Freq ln (Price_e) 0.00092 0.00050 * 0.064 D_SB ln (Price_e) -0.06557 0.04959 ln (Office)ln (Price_e) -0.01501 0.00729 ** 0.040 ln (NCS) -0.08322 0.00959 *** 0.000 D_NC11 -0.00241 0.00967 0.803 D_SB -0.04151 0.05038 0.410 Freq 0.01304 0.00327 0.186 *** 0.000 R-sq: within =0.1603; between =0.0720; overall = 0.0755 F(18,3072)=32.57, Prob > F =0.000 F 検定(帰無仮説;all gi = 0): F(447, 3072) = 28.46 , Prob > F = 0.0000 サンプル数= 3,538 *、 **および ***はそれぞれ 10%、5%、1%で有意な変数を表している。 表 3−2−3 資源ごみ排出関数の主要な推計結果(固定効果モデル) 推計値 P-値 標準誤差 ln (Price_e) -0.34545 0.15756 ** 0.028 {ln (Price_e)}^2 0.03082 0.02105 ln (HHI)ln (Price_e) 0.18452 0.06168 Freq ln (Price_e) -0.00321 0.00289 0.267 D_SB ln (Price_e) -0.13104 0.25438 0.606 ln (Office) ln (Price_e) -0.20664 0.04142 *** 0.000 ln (NCS) 0.50830 0.05896 *** 0.000 D_NC11 -0.05013 0.05142 D_SB -1.08136 0.26503 *** 0.000 Freq -0.04082 0.01897 ** 0.031 0.143 *** 0.003 0.330 R-sq: within =0.2141; between =0.0009; overall = 0.0022 F(18,2497) = 37.80, Prob > F =0.000 F 検定(帰無仮説;all ri = 0): F(440, 2497) =11.18, Prob > F = 0.0000 サンプル数 = 2,956 *、 **および ***はそれぞれ 10%、5%、1%で有意な変数を表している。 価格(対数)と他の変数との交差項の推計結果から、所得や政策変数などが、日常ごみ排出に -77- 対する価格弾力性や資源ごみ排出に対する交差価格弾力性に及ぼす影響について分析しよう。 最初に、価格(対数)と家計所得(対数)の交差項(ln(HHI)*ln(Price_e))についてみてみよう。 推計値は、日常ごみ排出関数において、1%の有意水準で負であった。このことは、所得が低い 家計ほど、日常ごみ排出の価格弾力性は低く、有料制の実施は、逆進的な性格を有することを意 味している。 一方、資源ごみ排出関数においては、1%の有意水準で正であった。これは、所得が低い家計 ほど、日常ごみ処理手数料の上昇が資源ごみの排出を増加させる効果が小さくなる、すなわち、 日常ごみ処理手数料の資源ごみ排出に対する交差価格弾力性が小さくなることを意味している。 つぎに、価格(対数)と日常ごみ収集頻度の交差項(Freq*ln(Price_e))についてみてみよう。日 常ごみ排出関数における推計値は、10%の有意水準で正であった。このことは、日常ごみの収集 頻度の増加は、日常ごみの価格弾力性を小さくし、ごみ処理手数料のごみ削減効果を小さくする 効果があることを意味している。これは、より収集頻度が多いほど日常ごみを排出することが便 利になるため、日常ごみ排出のインセンティブが増加するからである。一方で、資源ごみ排出関 数における推計値は有意ではなかった。すなわち、日常ごみの収集頻度は、資源ごみ排出に対す る交差価格弾力性は影響を及ぼさないといえる。 日常ごみ排出および資源ごみ排出関数の両方に関して、価格(対数)と小容量ごみ袋(あるい は、ステッカー)ダミー(D_SB)の交差項(D_SB*ln(Price_e))のパラメータは 10%の有意水準 でも有意ではなかった。 価格(対数)と1家計あたりの事業所数(対数)の交差項(ln(Office)*ln(Price_e))についてみて みよう。日常ごみ排出関数における推計値は5%の有意水準で負となっている。このことは、事 業所数が多い地域ほど、日常ごみ排出に関する価格弾力性が大きいことを意味している。 一方、資源ごみ排出関数において、推計値は1%の有意水準で負となっている。このことは、 事業所数が多いほど、資源ごみ排出に関する交差価格弾力性が小さくなることを意味している。 この結果から、事業所は主に、ごみ処理手数料が引き上げられた場合、リサイクルを促進するよ りもごみの発生量事態を減らすインセンティブが強められることを意味しているのではないかと 推察される。 小容量のごみ袋が価格効果を通したごみ排出量削減効果に与える影響は、現在のところ有意に 推計されていないという問題は残るが、推計結果から、サンプル平均を用いてごみ排出量の価格 弾力性を評価したところ、小容量のごみ袋が利用可能ではない場合、−0.024 であり、利用可能 な場合には、−0.09 となり大きな値となった。このように、従量制によるごみ処理手数料の有料 化はごみ削減効果を有するが、弾力性は大きくないことがわかる。 他の政策の効果として、日常ごみ回収の頻度(Freq)の効果を見てみよう。推計結果から、Freq の推計値は、ごみ排出関数については、正で有意(1%の有意水準)であり、資源ごみ排出関数 については、負で有意(5%の有意水準)となっている。このことから、ごみ回収の頻度の増加 は、相対的に便利になったごみの排出量を増加させ、資源ごみの排出量を減少させる効果を持つ ことがわかる。このことは、ごみ回収の頻度の増加は、資源ごみから日常ごみへのごみの混入を 促進する可能性があることを示唆している。 分別数の効果(ln(NCS))についてみてみよう。推計結果から、ln(NCS)の推計値は、ごみ排 -78- 出関数については、負で有意(1%の有意水準)であり、資源ごみ排出関数については、正で有 意(1%の有意水準)となっている。このことから、分別項目の増加は、分別の促進を通して、 ごみの排出量を減少させ、資源ごみの排出量を増加させる効果を持つことがわかる。 3−3 ごみ処理非効率性に関する分析 平成 15 年度の廃棄物処理事業経費(市町村及び事務組合の合計)歳出(単位は千円)とごみ 総排出量 (計画収集量+直接搬入量)(単位は t)のデータを用いて、ゴミ処理の効率性の指標とし て, 「廃棄物処理事業経費/ごみ総排出量(千円/t)」を都道府県別に計算して、効率性について 簡単な比較を行った。その結果、ごみ処理の効率性の都道府県平均は 46.3(標準偏差σ=11.6) であり、最も費用効率の良い都道府県は、青森県(31.8)、最も処理効率の悪い都道府県は、長崎 県(82.4)であった。興味深いのは、多くの都道府県は全国平均以下の効率的なごみ処理を行っ ているが、非常に処理効率の悪い都道府県(長崎県,徳島,佐賀,山口など)がいくつか存在し ていることである。このような非効率性の都道府県間の「偏り」が生まれるひとつの仮説として、 自治体の持つ特性によって、処理費用に関する範囲の経済や規模の経済がうまく作用していない ケースが考えられる.今後は、これらの要因を考慮したモデルを構築し非効率を推計する。 4.結論 本研究によって得られた結論は以下のとおりである。 (1)家計調査については、本年度1月に本調査を実施することを予定していたが、プレテスト の結果、いくつかの問題点が明らかとなった。このため、質問項目を再検討し、調査票を修正し た上で、調査対象地域を再検討し、新年度から本調査を実施することにした。ごみの有料化制度 は今回の簡単な分析では効果的でないように見えるが、 今回の単純な分析では、家族の属性など、 ごみ排出量やリサイクル行動などを決定するさまざまな要因に分解した上で、ごみ処理手数料有 料制の効果を抽出できていない。このため、来年度は、適切な計量経済学の手法を用いることで どの属性がどの程度影響を与えるか分析を行う。 (2)市町村レベルのデータを使って、ごみ処理手数料有料制に関する予備的分析を行った。そ の結果、①ごみ処理手数料の有料制は、重量で測ったごみ排出量に対して削減効果をもつが、そ の効果(1年程度の短期的な効果として)はそれほど大きくなく、価格弾力性で-0.006∼-0.01 で あることがわかった。このように、価格弾力性が大きくない理由として、アメリカの先行研究も 明らかにしているように、ごみの容積(ごみ袋の枚数)に応じた有料制を実施すると、ごみ袋の 排出量は減少するが、1枚当たりのごみ袋により多くのごみを詰め込もうとする結果、ごみ袋1 枚当たりの、ごみ重量が増加する結果、ごみ排出量削減効果が弱められるのではないかと推察さ れる。②リサイクルに関しては、ごみ処理手数料有料制は、リサイクルを促進する効果があると は必ずしもいえないことがわかった。 (3)非効率性に関する分析について 今後は、構築したパネルデータを用い、市町村別の廃棄物処理に対する取組や地理的属性など 各自治体の特性を考慮したモデルを使って、ごみ処理費用関数を推計することにより、非効率性 について詳細に分析する予定である。 -79- アジア地域における資源循環システムの解析と指標化 研究期間(西暦)=2005-2007 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=寺園淳(国立環境研究所) 共同研究者=森口祐一、イナンチブレント、村上進亮、阿部直也(以上、国立環境研究所)、 酒井伸一(京都大学)、花木啓祐(東京大学大学院) 、小島道一(日本貿易振興機構 アジア経済研究所)、織朱實(関東学院大学) 、柳下正治(上智大学) 、外川健一(九 州大学、2005 年 10 月より熊本大学) 1.研究目的 近年、アジアの近隣諸国に対して、循環資源(副産物、使用済み物品・材料)が輸出されるこ とが多くなっている。これまでの調査研究により、越境移動する循環資源のリサイクルについて 現状理解や課題把握は概ね進んできた。しかしながら、各国の制度変化が激しい上、経済動向な どが予測困難であるため、現状理解と対応は定性的・後追いとならざるを得なかった。また、 E-waste をはじめ越境移動に関連するマテリアルフローや環境負荷に関する情報もまだ十分では ない。 そこで本研究では、主要な材料のマテリアルフローについて可能な限り定量的な情報を収集し、 将来の変動要因にも対応したモデル構築とシナリオ解析を含むマテリアルフロー分析と指標化を 行う。また、各国のリサイクル制度や背景を分析し、輸出入の要因を明らかにする。これによっ て、日本とアジア諸国の資源循環のあり方の検討に向けた、わかりやすい情報を提供することを 目的とする。 2.研究方法 (1) アジア諸国の循環資源の輸出入などにかかる情報整備 アジア諸国の循環資源にかかる既存貿易統計システムのレビューを行う。各国で輸出入が行 われる循環資源について貿易統計品目を精査し、現地のリサイクルシステムとの関係づけを行 う。貿易統計における中古品の抽出方法も検討し、アジア地域版の循環資源の輸出入統計のデ ータベース化を試みる。これらを下記分析の基礎情報として提供する。 (2) 主要な循環資源に関するフロー調査とモデル分析 国際的な関心の高い E-waste(電気電子廃棄物)およびプラスチックなどを対象とする。ま ず、国内外の現地調査や海外専門家との研究協力によって、輸出入両国のフロー・環境負荷と ともに、技術・コストなどのフロー決定要因に関する情報を可能な限り定量的に調査する。次 に、各国のリサイクルシステムを考慮した発生・リサイクル・輸出入に関するモデルを構築し、 前記の取得情報を入力する。さらに、複数のシナリオに対してマテリアルフローを作成し、環 境負荷と経済性などの視点から分析する。本課題を効率的に実施するために、海外専門家を招 -80- いた国際ワークショップを開催する。 (3) アジア地域版資源循環システムの指標化と制度分析 上記で得られた情報を用いて、資源循環が成立する空間規模に着目しながら、シナリオ別の アジア地域版資源循環システムをわかりやすく表現するための指標化を行う。 また、各国のリサイクル制度について、輸出入との関係、費用負担動向、拡大生産者責任の 導入状況などを調査・分析する。とりわけ日本のリサイクル法が循環資源の輸出を生じさせて いる要因を分析する。 これらを通じて、日本とアジアにおいて適切な資源循環システムを構築するために、短期 的・中長期的な視点から課題整理と対策を検討し、政策提言につなげる。 3.結果と考察 (1) アジア諸国の循環資源の輸出入などにかかる情報整備 アジアにおける循環資源貿易は顕著な増加傾向を見せている。例えば、日本からの輸出につ いては、2005 年においては鉄くず、銅くず、アルミニウムくず、古紙、廃プラスチックの合計 で約 1,290 万 t となっており、10 年前の 11 倍以上に達している。これらの既存貿易統計シス テムのレビューを行うとともに、循環資源のマテリアルフローの把握が可能な可視化を試みた。 また、輸出入両国での既存の貿易統計が十分に機能しているかについては疑問も持たれてい る。このため、貿易統計、事前通知・承認の統計について輸出国側、輸入国側の統計を比較し、 また、これまで行ってきたヒアリング結果を貿易統計等と比較した。貿易統計や事前通知・承 認統計では把握できていない部分があると考えられる。例えば、各種の貿易規制を免れるため に、規制対象外の品目名が利用されていると考えられた。 循環資源の輸出入については、貿易統計やバーゼル条約で定められている有害廃棄物の事前 通知・承認に関する統計から把握できると考えられている。しかし、様々な業者へのヒアリン グからは、再生資源であっても、中古品や原材料として他の貿易統計分類で取引されているケ ースや、有害廃棄物であっても事前通知・承認を経ずに貿易が行われているケースが存在して いることが明らかとなった。 (2) 主要な循環資源に関するフロー調査とモデル分析 国際的な関心の高い E-waste(電気電子廃棄物)および廃プラスチックなどを対象として、 輸出入両国のフロー・環境負荷とともに、フロー決定要因に関する情報を調査した。 E-waste に関しては、2005 年 11 月に第 2 回 NIES E-waste ワークショップ(単独主催)な らびにバーゼル条約 E-waste ワークショップ(バーゼル条約事務局、環境省と共催)を開催し、 排出量などのインベントリー、リサイクルシステム、国際貿易、環境影響などに関する情報を 収集した。排出量については各国の消費量統計や廃棄モデルなどを用いて、近年の増加傾向が 確認されている。リサイクルシステムについては、物質と金銭のフローに注目して制度比較を 行った。日本以外の韓国・台湾・中国や欧州では先払いなどによって使用済製品の引取り制度 を整備されつつあるが、有価物の場合が多いことから、回収が十分行われない事例も紹介され -81- た。また、国際貿易については、貿易統計を用いた概略把握に加え、香港を中継地点とした日 本からアジア諸国への輸出の実態把握も試みた。さらに環境影響については、中国広東省汕頭 市の貴嶼鎮などにおける不適正リサイクルと環境汚染の事例がよく知られている。現地では研 究協力者の調査によって、従来のダイオキシン類・重金属類に加え、電気電子機器に添加され ている臭素系難燃剤による河川底泥などへの環境負荷が指摘された。加えて、代表・分担研究 者の現地調査によって、中国・ベトナムでの不適正リサイクルや残渣の取扱いの実態、環境汚 染状況を把握した。 廃プラスチックについては、従来調査による中国沿岸部における輸入・リサイクル実態に加 え、東北部や華北部においてリサイクル状況の把握を行った。中国では廃プラスチックの需要 が大きいが、輸入廃プラスチックと国内発生廃プラスチックが競合関係にある。また、中国で は廃プラスチックによる環境汚染は白色汚染と呼ばれており、循環経済や 3R の構築が課題に なっている。このような状況において、中国における国内発生分を含む廃プラスチックのマテ リアルフローの概略を把握するとともに、コストなどの情報も入手した。 このような E-waste と廃プラスチックに対して、分析用モデル開発の準備として、まず国内 からの循環資源の発生状況を整理、マテリアルフローの構造化を行うと同時に関連のコスト情 報を収集した。その上で各国のリサイクルシステムを考慮しながら、発生・リサイクル・輸出 入に関するモデルを検討した。また、環境負荷と経済性などの視点から分析するためのシナリ オの考え方を整理した。 (3) アジア地域版資源循環システムの指標化と制度分析 資源循環が成立する空間規模に着目しながら、アジア地域版資源循環システムをわかりやす く表現するための指標化を試みた。各国のリサイクル率などの定義や貿易統計品目分類などと の整合の必要性が提示された。さらに、循環資源に含まれると思われる物質について、主とし て資源性、特に枯渇性、希少性などに起因する天然資源の供給不安定性などの外部性などに関 する検討を行った。その結果、E-waste には多くのこうした物質が含まれることを確認し、有 害性のみではなく、資源性から見てもその管理の必要性を明らかにすると同時にこうした側面 をも含んだ指標化の必要性を確認した。 また、各国のリサイクル制度について、輸出入との関係、費用負担動向、拡大生産者責任の 導入状況などを調査・分析した。その結果、拡大生産者責任としては回収・リサイクルに伴う 金銭的責任が課せられる場合が多く、リサイクルしやすい設計や輸出入への対応が十分でない 国が多いとみられた。廃プラスチックについては、中国上海市における使い捨てプラスチック 弁当箱規制などの先進事例を調査するとともに、これらの規制の有効性の検証を行った。 中国の循環経済政策に関しては、制定が進みつつある個別リサイクル法制や制定予定の循環 経済促進法などによって、整備されつつある。これらの整備状況と地方での実態が必ずしも一 致しない場合がみられることから、青島市などを取り上げ、実態と課題の把握を試みた。 これらを通じて、日本とアジアにおいて国内・国際的に 3R を促進し、適正な資源循環シス テムを構築するために、短期的・中長期的な視点から課題整理と対策をとりまとめた。 -82- 4.結論 国際ワークショップの開催、貿易統計の分析、文献調査、国内外の現地調査などを通じて、ア ジア地域における資源循環システムの把握と解析を行った。まず、アジア諸国の循環資源の輸出 入などにかかる情報整備を進めるとともに、貿易統計やバーゼル条約で定める事前通知・承認に 関する統計を実態面から検証した。また、国際的な関心の高い E-waste 及び廃プラスチックなど を対象として、輸出入両国のフロー・環境負荷やフロー決定要因に関する情報を調査した。さら に、アジア地域版資源循環システムの指標化を試みるとともに、既存の制度を分析した。これら を通じて、日本とアジアにおいて国内・国際的に 3R を促進し、適正な資源循環システムを構築 するために、課題整理と対策をとりまとめた。 -83- 産業拠点地区での地域循環ビジネスを中核とする都市再生施策の設計と その環境・経済評価システムの構築 研究期間(西暦)=2005−2007 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=藤田 壮(東洋大学・国立環境研究所) 共同研究者=花木啓祐(東京大学),森口祐一(国立環境研究所) 1.研究目的 循環型社会形成にむけて,動脈側と静脈側の産業システムが連携する地域システムにより,環 境と経済が両立する地域循環システムを形成することが,持続可能な社会に向けての喫緊の課題 となる. 本研究では,国内における先進的な取り組みである川崎エコタウン事業を対象として,その循 環形成水準を定量的に評価するシステムを構築することによって,現状のエコタウン事業の環境・ 経済効果をあきらかにするとともに,国内外での循環型都市産業拠点により都市を再生する施策 の設計と評価をおこなうガイドラインを提供することをめざす. 具体的には,地域の製造業を中核として循環型のシステムを形成が進む川崎エコタウンおいて, 川崎市の行政部局,企業 NPO 法人「産業・環境創造リエゾンセンター」との共同研究を通じて, ①地理情報システムと WebGIS を活用した地域の循環代謝の空間情報データベースシステムを 構築するとともに,②産業特性を考慮した将来的な循環形成の拡大の政策選択肢を合理的に設定 して,その改善効果を定量的に評価するシステムの開発にとりくんでいる. さらに,産業と都市生活系の循環の統合的な空間情報データベースにむけてそのシステムを拡 大するとともに,立地条件や産業特性を考慮した将来的な循環形成の拡大の選択肢について評価 する指標体系システムを構築することを予定している. 2.研究方法 (1)エコタウン地区および周辺地域の統合的物質循環データベースの構築 ①「エコ・インダストリアルパーク・レポート」調査による企業間物質連関構築 産官学の連携体制で,企業の物質代謝情報を調査する「エコ・インダストリアルパーク・レポ ート」のフォーマットを作成し,研究者が主体となる調査体制によって,各企業のインタビュー 調査を行った. ②エコタウンにおける地域循環 GIS データベースの構築 川崎臨海工業地域(エコタウン指定,都市再生事業緊急整備地域)について行政主体や企業の 既存の調査研究を包括する空間データベースを構築した.加えて,東京湾流域圏における統計情報 をもとに1kmメッシュの分布型の地域物質情報データベースを構築した既存研究を統合して, 地域循環地理情報データベースを構築した(図―1). -84- 図―1 地域の循環代謝の空間情報データベースの構造 (2)都市産業共生技術システムの評価 ①都市産業共生技術の技術インベントリの調査 都市と産業セクター間での副産物の循環利用,環境効率の改善に資する基幹的な「都市産業共 生技術」のインベントリを共通フォーマットで作成した.企業の技術情報については環境報告書 や企業出版情報などの一般情報をベースにして,各企業に対する複数回のインタビュー調査と打 合せを通じて,生産工程に投入する廃棄物・副産物の質と量に応じた工業製品の生産効率を含む 「循環生産関数」を構築する. ②産業連携および循環形成の代替オプションの設計と評価システム 周辺地域の立地企業および近接する都市活動セクター(住居地区や商業施設) ,特に特区の緊急 整備地区や移転予定工場などの都市再生の拠点地区における機能転換政策との連携も視野に入れ て,新たな循環形成の選択肢を設計して,パフォーマンスを定量化できる評価システムを開発す る. ③産官学連携によるシステムのプロトタイプの運用実験と機能改善 地理情報システムを共有する WebGIS「地域循環支援システム」を構築して,ネットワーク上で 廃棄物発生,受入情報を入力,更新,共有できるプロトタイプシステム(図―2)を構築し試行的運 用を予定している.システム運用実験を通じて,データ収集と企業の環境マネジメント支援機能 を両立できる機能改善を行う. -85- ⑫ ⑨ ⑪ ⑩ ⑬ 図―2 地理情報を共有する WebGIS「地域循環支援システム」 (3)海外エコ産業開発地区における運用実験を通じての国際的情報発信 川崎市との共催で都市産業共生国際専門家ワークショップを平成 18 年 1 月 23 日から 24 日に かけて開催して,米国 Yale 大学 Marian Chertow 教授,フィリッピン Delasaal 大学 Anthony Chiu 教授,中国大連理工大学 YongGeng 副教授,豪州 Curtin 大学 Rene 教授研究室研究員と, 研究者が集中的な協議を行い,アジア太平洋地域における産業共生地区のガイドラインの有用性 とそのスキームを議論した. 3.結果と考察 以下の項目について 17 年度に研究 成果を達成し,考察を行った. (1) 川崎市における行政情報・統計 情報の GIS 空間情報データベ ース構築 川崎エコタウンは,1997 年のエコタ ウン事業認証以降,多くの循環拠点技 術が建設されたほか,既存の工場群に おいても循環拠点技術の整備が進むな ど,高度な集積が見られる.地理情報 システム(GIS)を活用した空間情報 データベースを構築したことによって, 川崎エコタウンに集積するこれらの循 図ー3 GIS 空間情報データベースの出力例 -86- 環拠点施設について,立地条件を考慮した物質エネルギーフローの解析を可能とするプラットフ ォームを構築することができた. とくに, GIS の持つオーバレイ機能及び空間検索機能を活かして構築する,様々な物質循環マネジ メントの環境負荷発生量を比較評価できる機能をインターネット上提供する地域循環支援システムにより, 企業行動を支援できることが明らかになった. また,これまでデータの入手が困難なことから,エコタウンにおける新たな循環モデルの計画 およびそれに伴う環境改善効果を定量的に算定する実証研究はほとんど行われていなかったが, 本研究では,エコタウンにおける循環型事業の計画手法を提案するとともに,廃棄物の処理フロ ーも含めたライフサイクル CO2 排出量を算定するための枠組みを構築できた. (2)中核的循環形成の技術インベントリと循環型事業の評価システムの構築 循環セメント, b) 循環型事業の計画 a)地域循環情報データ c)環境改善 効果の算定 プラスチックの高 炉還元の循環技術 モデルを構築し, その効果を算定し 従来型製造工程と 従来型の廃棄物処理 エコタウン内循環拠点施 設データ (立地情報/廃棄物の受入情 報および受入可能性/製造工 程のマテリアルフロー) 川崎エコタウンの 現状での廃棄物受入状況 た.循環技術の体 系的インベントリ と試行的生産モデ ライフサイク ル二酸化炭素 排出量 川崎市内の産業廃棄物 の受入量拡大 エコタウン内および川崎 市内の廃棄物データ (発生量/発生位置) 川崎市内の産廃+一廃 の受入量拡大 ルの構築と産廃, 建廃,一廃の循環 図―4 形成技術調査を通 循環型事業の計画・評価システム 川崎市境界 じて,分散型有機 循環基盤の試行的 CO2 b-1) CO2 a) CO2 c) な生産モデル関数 新規資源の投入 を構築して,その セメント工場 前処理工程 CO2 b-2) 効果算定を行った. CO2 b-2) 空間情報データベ CO2 d-1) ースを活用して技 術のインベントリ の地域における効 工場(川崎外) CO2 d-1) 中間処理 埋立 埋立 工場(川崎市) CO2 e) 中間処理 CO2 b-3) CO2 e) CO2 d-2) CO2 d-2) 果を算定するとと 埋立 もに,その環境改 都市活動(川崎市) 善効果を算定する プロセスを構築し た(図―4). 焼却 CO2 e) a)原料調達 b)原料の輸送 c)製造 d)廃棄物の収集 e)廃棄物処理 セメント工場を 核とする4ケースの 図−5 評価システム設定 -87- 循環型事業について,ライフサイクルCO2排出量を算定し,川崎エコタウンにおける循環型事業の 環境改善効果の評価を例にあげる.セメント製造工程に着目した原料および廃棄物原料の調達→ 輸送→製造のプロセスとともに,廃棄物の収集→輸送→処理→最終処分のプロセスを評価の対象 としている(図−5). 循環型セメント事業について,現状で約3.7万t- CO2/yの削減効果があることが示された.また, 川崎市内から排出される産業廃棄物,さらに川崎市内から排出される産業廃棄物および一般廃棄 物を利用した地域循環の推進によって,それぞれ約3.9万t- CO2/y,15.8万t- CO2/yの削減効果が あることを明らかにした. 4.結論 川崎エコタウンについて,地域循環支援の地理情報システムのプロトタイプの構築,産業共生 拠点地区における地域循環を推進することによる環境改善効果の定量化,国際的な標準システム となりうるガイドラインシステムのスキームについて明らかにすることができ,当初の研究計画 の目的を達成することができた. 主な発表論文 ・ 大西悟,藤田壮,長澤恵美里,村野昭人 循環型産業システムの計画とその環境改善効果の算 定‐川崎エコタウンにおける循環型セメント事業のケーススタディ‐環境システム研究論文 集,Vol.33,pp.367-pp376,2005 ・ Looi-Fang WONG,Tsuyoshi FUJITA,Kazuaki SYUTSUBO,Evaluation of CO2 Emission Reduction in Food Manufacturing Industry by Implementing Methane Fermentation Processes as Organic Waste Matter Circulation Systems −Case Study of a Major Food Manufacturing Company Located in Kawasaki City,第 1 回 LCA 学会,pp212-213,2005 ・ Wong Looi-Fang,藤田壮,鈴木陽太,岡寺智大;Evaluation System of CO2 Emission Reduction by Implementing Integrated Methane Fermentation System as a Municipal Organic Waste Recycling Scheme in Tokyo Bay Region,環境システム研究論文集,Vol.33, pp.355-pp366,2005 ・ 大西悟,藤田壮,長澤恵美里,村野昭人;循環型産業システムの計画とその環境改善効果の 算定 川崎エコタウンにおける循環型セメント事業のケーススタディ 環境システム研究論 文集,Vol.33,pp.367-pp376,2005 ・ 藤田壮,大西悟;圏域の環境容量に応じた持続可能な産業共生都市の計画と評価システムの 提案,第 33 回環境システム研究論文発表会講演集,pp375-378,2005 ・ 栗原圭充,藤田壮,村野昭人,大西悟;川崎市臨海部における物質循環評価データベースシ ステムの構築,第 33 回環境システム研究論文発表会講演集,pp7-14,2005 ・ 大西悟,藤田壮,長澤恵美里,村野昭人;川崎エコタウンにおける地域内物質循環フローの 調査,第 33 回環境システム研究論文発表会講演集,pp179-184,2005 ・ 村野昭人,栗原圭充,長澤恵美里,塚原諭,藤田壮,大西悟;川崎エコタウンにおける地域 循環システムの計画と評価,第 16 回廃棄物学会研究発表会講演論文集,pp344-346,2005 ・ Tsuyoshi FUJITA, Looi-Fang WONG , Reserch and Decision Support System of Environmental Evaluation of Industrial Symbiotic Collaboration in Asian Eco-Industrial Estates,The 3rd International Coference of The International Society for Industrial Ecology ABSTRACT BOOK ORAL SESSIONS,pp58-59,2005 ・ Akito Murano, Tsuyoshi Fujita, Wong Looi-Fang ; Environmental Evaluation of Industrial Symbiotic Collaboration in Kawasaki Eco-town , The 3rd International Coference of The International Society for Industrial Ecology ABSTRACT BOOK POSTER SESSIONS,pp129-130,2005 -88- バイオマスの高機能化とめっき廃液の最適な資源循環システムの構築 研究期間(西暦)=2005−2007 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=馬場由成(宮崎大学工学部) 共同研究者=大島達也(宮崎大学工学部) 、大栄薫(宮崎大学工学部) 、中島暉(宮崎大学医学 部)、岩熊美奈子(都城高専)、貝掛勝也(宮崎大学工学部)、吉玉和生(吉玉精 鍍(株)) 1.研究目的 現在、めっき廃液は亜鉛やニッケル等の有価金属を大量に含んでいるにも関わらず、微量のク ロム、鉛、錫等の有害重金属を含んでいるため有害難処理廃棄物となっており、スラッジとして 埋め立て廃棄処分されている。しかしながら、産業廃棄物の埋め立て地の容量は 4-5 年と言われ ており、めっきスラッジの中間処理による減容化とリサイクル技術の開発が急務となっている。 一方、金やパラジウム等の貴金属めっき廃液は微量な貴金属の回収技術が遅れているため、極微 量の貴金属廃液については、そのまま排水されている状況である。平成 16 年の経済産業省の調 査では、九州地区のめっき企業から排出されるスラッジの発生量は、約3千トン/年であり、そ の処理費用として約1億円/年の産廃処理コストが発生している。特に、九州地区のめっき企業 は、東京・大阪のような小規模事業所は少なく、全国平均より約2倍の処理費用が発生している。 本研究の目的は、このように大量に発生している金属含有めっき廃液から有害重金属や有価金 属を選択的に除去・回収することにより、スラッジの減量化と廃棄物の資源化技術の開発を行う と共に、農業、漁業や食品加工業から大量に発生しているバイオマス廃棄物の重金属や貴金属に 対する吸着機能を最大限に発現することにより、ppb から ppm オーダーの有害物質及び貴金属の 簡便かつ高度な除去・回収技術を開発し、バイオマス廃棄物の資源化・資源循環システムを同時 に達成することである。 2.研究方法 2−1 めっき廃液資源化のためのバイオマス吸着材の分子設計と合成 高選択性の吸着材を開発するためには、目的金属イオンと強く結合する配位原子を選ぶこ とが第一のポイントであるが、それに加えて二つ目の配位原子を、いかに安定なキレート環 を形成しやすい位置に配置できるかが極めて重要である。また、このキレート配位子がもっ ている一般的性質に加えて、担体の構造特性や表面特性も重要である。 筆者らは新しいキレート樹脂の開発のために、本来キレート形成能を有している蟹や海老 の殻から得られるキトサン、あるいは渋柿タンニンを吸着材の担体として利用した。これら は、生体起源の材料で化学修飾が容易な一級アミノ基、水酸基を大量に有している親水性基 体であり、担体としての条件を十分に満たしているものと考えられる。 (1)キチン・キトサンを利用した新規吸着材の開発 一般に、めっき廃液や貴金属含有廃液は鉱酸などに溶解されており、キトサンやキト -89- サン誘導体をこれらの吸着材として使用する場合には、これらを酸に不溶化するために架 橋しなければならない。しかし、一方では架橋反応は吸着サイトのアミノ基を潰してしま い、吸着能力の急激な低下を招く。そこで、本研究ではこのような吸着能力の低下を伴わ ない架橋法を開発するために、①シッフ塩基でアミノ基を保護して架橋する方法、②キチ ンを出発原料にして架橋する方法の二つの方法を検討した。さらに、架橋キトサンに新た な配位子を導入することによって、めっき廃液中の目的金属に高い吸着選択性を持った吸 着材の開発を行った。その分子設計上もっとも重要なことは、キトサン由来の窒素原子を 一つの配位原子として利用することである。 (2)パラジウムインプリント(鋳型)キトサン誘導体の調製 従来の分子インプリント樹脂の問題点である、① 飽和吸着量が非常に小さい、② 疎 水性が高く吸着速度が遅い、等の問題点を解決するために生体高分子であるキトサンを 利用し、極微量貴金属のためのパラジウム鋳型吸着材を合成した。 (3)柿渋タンニン樹脂およびタンニン/シリカ樹脂の合成 柿渋タンニン樹脂は、酸触媒でホルムアルデヒドと反応させることによって合成した。 さらに、ゾル・ゲル法により多孔性のシリカ微粒子にタンニンを担持させ、物理化学的 に安定なタンニン/シリカ樹脂の合成法の確立を行った。 以上述べた新規吸着材の開発は、本プロジェクトの核心部分であり、本プロジェクト の成否を左右する重要な検討課題である。 2−2 各種吸着材による金属の吸着選択性及びめっき廃液への応用−吸着材の評価− 金属イオンの吸着選択性および吸着速度の測定は、主にバッチ法で行った。新たに合成 された各吸着材を用いて、めっき廃液中に混在している塩(硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウ ム等)や塩酸溶液から、重金属から貴金属まで一連の金属に対する吸着選択性、飽和吸着量お よび吸着速度について検討した。さらに、極微量含有したパラジウムめっき実廃液を用い、バ ッチ法による処理法を検討した。さらに、クロム(VI)を含有した亜鉛めっき模擬廃液を使用し て、バッチ法およびカラム法による連続吸着処理を行った。 3.結果と考察 3−1 めっき廃液資源化のためのバイオマス吸着材の分子設計と合成 (1)キチン・キトサンを利用した新規吸着材の開発 本研究で提案した架橋キトサンの二つの合成法は、両者とも金属吸着性能を減少させる ことなく、架橋することに成功した。さらに、ピリジル基、チエニル基、チオエーテル基、 ホスホン酸基、カルボン酸等の配位基を導入したキトサン誘導体の合成プロセスの最適化、 簡略化を行うことに成功した。 (2)パラジウム鋳型ピリジルメチルキトサン(PIPMC)の調製 今年度は、 パラジウムを鋳型として、 パラジウムに対する高い選択性の発現を目指した。 配位子であるピリジン環を 95%以上導入した PIPMC を調製することに成功した。PIPMC の調製で最も重要なことは、鋳型にしたパラジウムを完全に溶離することであり、ここで は塩酸を含むチオ尿素溶液で完全に溶離することができた。 -90- (3)柿渋タンニン樹脂およびタンニン/シリカ樹脂の合成 ゾル・ゲル法により合成したタンニン/シリカ樹脂は、有機物と無機物のハイブリッド材 料となっており、化学的安定性に優れた吸着材を合成することに成功した。 3−2 各種吸着材による金属イオンの吸着選択性およびめっき廃液への応用 (1)極微量含有貴金属めっき廃液からの貴金属の選択的吸着・回収 ア 各種キトサン誘導体による金属イオンの選択的吸着 ピリジン環、チオフェン環およびチオエーテル基を導入したキトサン誘導体は、配位 原子の特性を示して塩酸溶液から金(III)、パラジウム(II)、白金(IV)に対して高い選択性 を示した。しかも、これらの吸着材のパラジウムの飽和吸着量は、市販のキレート樹脂 の4−5倍の高い吸着量を示し、その実用化を目指す。 イ パラジウム鋳型ピリジルメチルキトサン(PIPMC)による貴金属の選択的吸着 パラジウム(II)を鋳型分子に用いた PIPMC は、鋳型の無い PMC よりもパラジウムに 対する吸着速度が増加したが、同じく平面四配位構造をとる Au(Ⅲ)、Cu(Ⅱ)、Ni(Ⅱ)に も高い選択性を示した。これらの結果は、熱力学的な考察により、PMC の静電的な親 和性だけでなく、ピリジン環による配位結合も関与していることが明らかとなった。 めっき実廃液からの PIPMC によるパラジウム(Ⅱ)の選択的回収 ウ 1 ppm 以下のパラジウム(Ⅱ)を含む実際のめっき工場廃水から、パラジウム(Ⅱ)の鋳型 のない PMC は 85 %の回収率であり、PIPMC は 100 %の回収率を達成した。PIPMC の実用化が期待される。 エ 柿渋タンニン樹脂およびタンニン/シリカによる貴金属の選択的還元吸着 タンニン樹脂は、塩酸濃度が高くなると金の吸着量は激減したが、タンニン/シリカ樹 脂は全塩酸領域から 100%の吸着率を示しており、金の選択的吸着材として利用できる。 また、金とパラジウムは、これらの吸着材に還元吸着されており、金属金および金属パ ラジウムとして回収できることがわかった。 3−3 クロム含有めっき廃液からの亜鉛の高選択的吸着・回収 (1)架橋キトサンおよび架橋ピリジルメチルキトサンによる亜鉛(II)の吸着 キチンを原料にして合成した架橋キトサン(CLAC)および架橋ピリジルメチルキトサ ン(PMAC)による亜鉛(II)の吸着は、CLAC は pH=6 から吸着され始めるが、PMAC は pH 3 で吸着が始まり、pH 6 では 100%の吸着率を示した。このことは、めっき廃液 が pH 6‐7 であることから、PMAC は亜鉛の吸着材として利用できることを示してい る。 (2)架橋キトサンおよび架橋ピリジルメチルキトサンによるクロム(VI)の吸着 ピリジル基の導入によって、六価クロムの吸着率が大きく増加することがわかった。 CLAC は六価クロムを吸着せず、酸化還元が起こりにくいが、PMAC は低 pH 領域で酸 化還元が起こっており、 吸着化学種は全て HCrO4−であった。 還元された三価クロムは、 吸着材から溶液中に溶離されていることがわかった。 市販樹脂のピリジン環のみをもつ KEX-250 と二級アミンのみをもつ CR20 を選択し、 二級アミンとピリジン環をもつキトサン誘導体 PMAC との比較を行った。低 pH 領域で -91- いずれの樹脂でも酸化還元は起こるが、六価クロムの最大吸着率は KEX250 が 70%、 CR20 が 50%で、PMAC は 100%を示した。このことは、六価クロムの吸着には、キト サン由来のアミノ基が重要な役割を果たしていることを示している。 (3)バッチ法による混合溶液からの亜鉛と六価クロムの分離 PMAC によって、pH 7 で亜鉛(II)と六価クロムの混合溶液から亜鉛のみを高選択的 に回収でき、PMAC からの亜鉛の溶離は、0.1 N 塩酸でほぼ 100%であった。 (4)吸着カラムによる混合溶液からの亜鉛と六価クロムの分離 PMAC 微粒子充填カラムを用いて、pH 7 付近では六価のクロムと亜鉛は完全に分離 され、pH の違いだけで分離できることが明らかとなった。吸着後の PMAC からの亜鉛 の溶離については、塩酸溶液でほぼ 100%を示し、20 倍に濃縮することができた。現在 その実用化を目指してカラム設計の最適化を行っている。 4.結論 ・ 新規なキトサン誘導体を数種類合成し、貴金属を含め目的金属に対して高い選択性を示 すことを明らかにした。現在、基礎研究も続行中であり、特許申請の準備中である。 ・ キチンから架橋キトサンを合成し、各種の架橋キトサン誘導体の合成法を確立した。こ のことにより、合成ステップ数を減らすことができ、工業化へ一歩前進したことになる。 ・ 貴金属の回収は、PMC を用いてパラジウム鋳型樹脂を合成し、これを用いて極微量(1 ppm)の金、白金、パラジウムの高い吸着選択性および高い吸着速度を発現することに成功 した。 完全脱離はアンモニアにより達成され、鋳型樹脂の再利用を可能にし、実用化への 展開を行っている。 ・ 架橋キトサンにピリジン環を導入した架橋キトサン誘導体(PMC)を合成し、クロム(IV) を含む亜鉛めっき廃液から、亜鉛を高選択的に除去・回収する技術(バッチ法およびカラ ム法)開発に成功した。現在、クロムと亜鉛を含むめっき実廃液を用いて亜鉛の回収を行 っている。 ・ 柿渋タンニン樹脂による貴金属の回収を行い、吸着と還元が同時に起こっていることを 見出し、溶液中の金イオンを金の粉末として回収することができた。 これらの結果は、以下の特許出願 4 件、論文(2 件発表済み、1 件投稿中) 、国際学会(1 件 発表済み、11 月 5 件発表予定)および国内学会発表(13 件発表済み)として報告している。 ① 出願番号 発明の名称 ② 出願番号 発明の名称 ③ 出願番号 発明の名称 ④ 出願番号 発明の名称 特願 2005-236490 「吸着剤及びその製造方法」 特願 2006-44314 「架橋キトサンの製造方法」 特願 2006-44323 「架橋キトサンを用いる金属の選択的回収方法」 特願 2006-251209 「貴金属イオン捕集剤としての有用なポリマー」 -92- 廃棄物処理施設の爆発火災事故事例解析に基づく安全管理手法の構築 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=武田信生(京都大学) 共同研究者名=大下和徹(京都大学)、若倉正英(神奈川県産業技術センター)、 三宅淳巳(横浜国立大学) 1.研究目的 廃棄物処理に関しては一般産業に比較して、労働災害事故の発生率が多いが、これは組成が複 雑で不均一な廃棄物を取り扱うため、安全対策を標準化することが難しいこと、焼却やエネルギ ー回収は可燃性物質に多大なエネルギーを加えるケースが多いため、潜在的な危険性が大きいこ となどが理由として考えられる。 一方、労働災害以外においても、2003 年 8 月に三重ごみ固形燃料(RDF)発電所の貯蔵施設で起 こった RDF の発熱・発火事故や、汚泥消化ガスエンジンの爆発など、廃棄物処理施設やそれに関 連する施設では、様々な火災や爆発が発生し大きな問題となってきている。このように大きな事 故が起こった際には、事故対策委員会が緊急設置され、事故原因の究明や事故後の対策が徹底的 になされ、一定の成果が得られるが、得られた知見や教訓は、再び類似の事故が起こった場合や、 同種の廃棄物処理施設における安全対策に十分に生かされているとは言い難い現状にある。 以上のような背景の下で、廃棄物処理施設で多発する事故を効率的に防止していくためには、 実証実験に基づいて事故メカニズムを明らかして、事故要因を解析するだけではなく、それらの 結果を、様々な場で活用できる形の安全知識としてデータベース化し情報提供することが必要で ある。 そこで、本研究では、環境化学、廃棄物工学、安全工学の各分野における知見を連携させて、 それに基づく事故の実証的な解析に加え、フィジカルリスク(事故の起こりやすさと被害の大き さ)の概念に基づいた評価を行い、それらの結果を知識化し、事故を未然防止するための安全管 理手法を構築することを目的とした。 2005 年度は、まず、国内における廃棄物処理施設における様々な事故を調査し、事故発生時期 や対象施設毎による事故の種々の傾向を明らかにするとともに、数種の重大な事故について詳細 な調査を行った。次に、これらの結果から事故データベースのワークフレームを構築した。また、 典型的な事故事例を数種選択し、環境化学、廃棄物工学、安全工学の視点から、実験をともなう 実証的解析を行ってそれぞれの事故発生メカニズムを明らかにするとともに、類似施設での事故 発生の可能性について言及した。 2.研究方法 2005 年度の研究は主に 3 つに分けることができ、それぞれについて研究方法を示した。 (1) 廃棄物処理施設における爆発・火災を中心とした事故に対する現状把握 -93- まず、日本廃棄物処理施設技術管理者協議会が全国の一般廃棄物処理施設を対象に実施した、 平成 12 年から 15 年までの事故事象に関するアンケート結果をまとめて、現状把握を行うととも に、解析を試みた。次に、13 件の特徴的・かつ重大な事故に関して、現地調査・ヒアリングもし くは事故報告書を中心とした文献調査を行って、それぞれの事故に対して、キーワード、発生時 期、事故概要、事故原因、教訓などに関してその詳細をまとめた。 (2) 事故事例調査結果に基づく、データベースの構築 データベースは事故事象データ、物質の危険物性データ、危険性評価手法データなどを効果的 に組み合わせ、環境工学、安全工学、廃棄物の専門家の知恵を加えて、共通要因や再発防止のた めの方策を出力するものであり。2005 年度は基本的なシステム構成について検討した。 (3) 代表的な事故事例に基づいた基礎実験による事故メカニズムの把握 (1)の調査結果のうち、いくつかの事故に関して基礎試験、基礎調査を行って、事故メカニズム の把握および、他の類似のサイトでの事故防止に活用できる知見の蓄積を試みた。 対象としたのは以下の 4 事故であり、その調査方法をそれぞれ示した。 ・生ごみ堆肥化装置爆発事故 生ごみ堆肥化施設での爆発原因を明らかにするために、対象物質の発火危険性、蓄熱危険性評 価を高圧示差熱天秤、自然発火試験装置、熱流束熱量計などにより行った。これらの実験結果か ら、事故前の運転状況の調査に基づいて事故に至るシナリオを推定した。 ・消化ガスエンジン爆発事故 大阪市中浜下水処理場における消化ガスエンジン爆発事故を例に、その原因物質となったシロ キサンに着目して。同機種の消化ガスエンジンを有する A 下水処理場において、消化ガス中シロ キサン濃度の測定およびガスエンジン中付着物の分析を実施し、中浜下水処理場におけるケース と比較し、事故の発生可能性に言及した。 ・廃油タンク爆発事故 有機過酸化物と各種薬品類の混合反応危険性試験を行い、混合危険性を安全、迅速、簡易に評 価できる試験フローを作成した。有機過酸化物の典型的な構造を有する 7 種類の物質に、濃度の 異なる硫酸、水酸化ナトリウム水溶液、酸化第二鉄、アクリロニトリルを混合した際の発熱危険 性を調査するため、試験管試験、デュワー瓶試験、熱分析試験からなる段階的試験フローを提案、 実施した。 ・ごみ固形化燃料(RDF)の蓄熱危険性に関する検討 堆積された廃棄物の発火危険性評価では、初期発熱の発生源を特定すること、また、発生した 熱が蓄熱する条件、発火に至る熱的シナリオを知ることが重要となる。そこで、示差走査熱量計 や熱流束型熱量計等を用いて RDF の初期発熱の検討を行った。 3.結果と考察 以下に 2005 年度の研究について結果及び考察を示した。 (1) 廃棄物処理施設における爆発・火災を中心とした事故に対する現状把握 一般廃棄物処理施設の事故では労働災害(行動災害)が最も多く、化学物質由来の事故はほぼ 30%で、約 200 件であった。工程別の事故数は焼却処理工程で多いが、火災・爆発は発生比率、 -94- 発生数ともに粗大ごみの処理工程で最も多く、依然として(ヘア)スプレー缶やガスボンベなど 危険物の混入が止まっていない現状に対応しているものと考えられた。 細かくみていくと、焼却処理工程で最も火災・爆発が多いのは破砕工程であり、これに関して も、スプレー缶やガスボンベの混入が関与しているものと考えられ、危険物の混入防止の呼びか けだけではなく、設備安全対策も重要であることが明らかになった。 焼却処理施設での薬品による中毒や薬症は消石灰によるものが最も多く、酸、アルカリがそれ に続いていた。装置や原因物質の分類、コード化が危険要素抽出に有効であることが示唆された。 次に、13 件の代表的な事故については、統一したフォーマットで整理することができた。 13 件の代表的な事故のうち、RDF 貯蔵施設爆発事故や生ごみ堆肥化装置での爆発事故、焼却灰 処理中の爆発の調査から、経済性の前に安全があること忘れてはならないこと、RDF、生ごみの乾 燥物、焼却灰のようなものでも、条件がそろえば容易に爆発・火災原因になることという教訓を 得た。また、溶融炉コンベア爆発事故や汚泥焼却炉の爆発事故の調査結果から、近年の廃棄物処 理では周辺住民への配慮などから密閉系が増えているが、この場合には可燃性ガスの滞留に注意 が必要であることがわかった。一般廃棄物処理施設での誤混合事故、廃油タンク爆発事故やガス エンジン爆発事故の調査から、複雑な組成の廃棄物に対しては処理対象を十分に把握すること及 びそれが有する各種危険性(混合危険性、自然発火危険性等)を認識することが重要であること がわかった。 (2) 事故事例調査結果に基づく、データベースの構築 まず、調査等に基づいて、本研究の最終目的である安全管理システムの基幹となる、事故情報 入力フォームのプロトタイプの設計を試みた。 入力フォームに関しては、集積される情報を効果的に活用するために、項目のコード化が重要 である。そこで、事故事象や起因事象、設備・機器などのコード化案を廃棄物処理、リサイクル固 有の条件を加味して作成した。 特に、機器や工程の分類は重要であり、文献調査、廃棄物の専 門家に対する聞き取り調査などから分類した。 作成したコード化案を用いて、本研究で調査対象とした事例のコード化を試みた結果、ほとん どの事例でコードが適用可能であった。 (3) 代表的な事故事例に基づいた基礎実験による事故メカニズムの把握 ・生ごみ堆肥化装置爆発事故 堆肥化装置内のサンプルについて、高圧示差熱天秤による測定結果、発生ガスの分析結果、自 然発火試験、メタン菌の菌相解析の結果より、事故の原因シナリオとしては、乾燥が進んだ生ご みの一部について、攪拌が不十分となって温度が上昇、135 度付近で発火、燃焼や熱分解により 可燃性ガスが発生し、この可燃性混合ガスが生ごみ処理槽の空間部で爆発下限界濃度以上となり、 着火して爆発したものと考えられた。なお、菌相解析から、メタン発酵により爆発に寄与する可 燃性ガスは発生しにくいと考えられた。 ・消化ガスエンジン爆発事故 A 処理場での消化ガス中シロキサンの分析結果より、中浜処理場のケースと比較して濃度に関 しては、平均値・中央値ともに 2 倍以上中浜処理場が高いことが明らかになった、これは、主に 消化温度の違いが原因であろうと推測され、高温消化でガスエンジンによる発電を実施している -95- サイトではシロキサン対策が必要であろうと考えられる。また、消化ガス中シロキサンの濃度は A 処理場のみを考慮した場合に気温と非常に相関が高いことが明らかになった。 エンジン内付着物の解析では、中浜処理場の場合は元素成分分析から、A 下水処理場の場合は 元素成分分析に加え、付着物 X 線回折の結果から、双方の処理場とも主成分は SiO2 であると判定 した。 最後に双方の処理場でのエンジンメンテナンス頻度、およびエンジンへの流入シロキサン濃度 から、A 処理場での事故を防止していくためには、少なくとも 1 年に 1 度の割合でガスエンジン を停止し、メンテナンスを実施していく必要があると考えられた。 ・廃油タンク爆発事故 各種試験結果より、ハザードランクをⅠ∼Ⅳに分類するための各試験における評価基準値を決 定した。さらに、有機過酸化物 Di(2-ethylhexyl)- peroxydicarbonate (DEPD)とアクリロニトリ ルの混合に関しては、混合組成比および混合時の攪拌速度が混合危険性に大きく影響することを 明らかにした。 ・ごみ固形化燃料(RDF)の蓄熱危険性に関する検討 HP-TG/DTA での測定により、RDF の発火温度は概ね 180℃前後であり、ARC を用いた断熱下での 測定により、RDF の温度が 80℃付近まで上昇すれば、酸化分解による自己発熱で熱暴走を引き起 こす危険性があることが判った。また、SIT-2 を用いた自然発火性試験では 120℃に保持された RDF が発熱及び発火することが確認された。 初期発熱要因を検討する目的で RDF と水分の混合熱を C80 を用いて測定した結果、最大で 20J/g の発熱があり、熱量全てが蓄熱に寄与した場合には 10 数℃程度の温度上昇が起こることが示され た。 4.結論および今後の予定 2005 年度は事故調査、発生原因に関する実験的検証、文献や専門家に対する聞き取り調査に基 づいて、安全管理システムの各構成要素に関する基礎的検証を実施した。2006 年度はこれらのデ ータベースを実装化し、設備や工程、廃棄物の種類ごとの事故の共通要因の抽出や効果的な検索 に基づく、安全情報提供システムを構築する予定である。 -96- 水素生成プロセスの導入による 地域未利用バイオマスの適正循環システムの構築に関する研究 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=石垣智基(龍谷大学) 共同研究者=山田正人( (独)国立環境研究所)、池道彦(大阪大学)、成岡朋弘(九州大学) 1. 研究目的 バイオマス系廃棄物の資源化利用の核となる技術のうち、堆肥化や飼料化については、需要と 供給間との量・質的なアンバランスから、利活用を進めるのが困難なケースが報告されている。 また、メタン生産については、エネルギーとしての利用価値が低くシステムが経済的に持続しな いことおよび発生する消化液の利用・処理など、多くの問題点が挙げられている。こうした状況 下で発生する未利用バイオマス系廃棄物の利活用を進めるために、特に堆肥化物や飼料化物の受 入容量の低い都市近郊においては、エネルギー利用および製品原料化等の資源化技術を導入して いくことが必要不可欠である。本研究では、未利用バイオマスのエネルギー生産システムの構築 を目指し、廃棄物中間処理および処分場再生等の廃棄物処理・処分の現場で観測される、有機物 と廃棄物焼却灰の混合による水素発生現象に着目し、新規の水素生成システムとしての実用化に 向けた技術的検討を行う。 2. 研究方法 都市近郊の市町村レベルの地域を対象とした、地域内未利用バイオマスおよび当該地域で発生 する廃棄物焼却灰との混合による水素生産システムの構築を目的として以下の検討を行う。(1)未 利用バイオマスの二次的な資源化技術として水素化技術の適用性について検討する。各種バイオ マスと一般廃棄物焼却灰の混合による水素生産システムを対象として、各地域において調達可能 な原料の組合せによる水素生成特性を評価する。また、複合的な水素生成反応について、化学的 および生物学的な観点からの複合的反応メカニズムの解明を試みる。(2) 資源化原料としてのバイ オマス系廃棄物および焼却灰について、循環利用時における原料の物理化学的および生物学的な 要求品質を明らかにするとともに、資源化時における要求品質レベルの設定を試みる。また、各 地域における循環資源の品質条件の提案に向けた基盤情報整備を行う。各資源化プロセスにおい て要求される品質範囲を踏まえ、原料改質の必要性や各種成分の添加が水素生成に与える影響に ついて明らかにする。(3)水素生成反応における、原料の組合せ特性(地域性)を検討するととも に、固形物濃度、温度、各種添加物の影響など、最適反応制御因子を明らかにし、実用化に向け た知見を収得する。また、実証実験により得られた、反応効率性、経済性および制御性に関する 各種パラメータを元に、その他の資源化・エネルギー生産システムとの比較・検討を行い、地域 レベルでの本システムの適用可能性について評価する。 3. 結果と考察 -97- バイオマス系廃棄物および廃棄物焼却灰の混合による水素生成反応について生物学的および物 理化学的な複合反応メカニズムに関する知見を集積するとともに、都市近郊において発生する未 利用バイオマスおよび廃棄物焼却灰の資源化原料としての物性評価を実施した。資源化プロセス における原料に関する要求品質レベルの設定について検討した。要求される品質範囲を踏まえ、 原料改質および各種添加成分の必要性など原料性状の面からの反応因子最適化について考察した。 3-1 未利用バイオマス系廃棄物および廃棄物焼却灰を利用した水素発生機構の評価 バイオマス系廃棄物として、畜産系廃棄物(牛糞および鶏糞)、厨芥類、堆肥化物(原料は、厨 芥系、畜産系、汚泥系)などを対象に焼却灰との組合せによる水素の生成反応を調査した。その 結果、厨芥系原料の堆肥化物および鶏糞と焼却灰の組合せにおいて、著しい水素の生成が確認さ れた。うち、厨芥系原料の堆肥化物と五種類の一般廃棄物焼却灰についてそれぞれ混合試験を行 った結果、焼却灰の種類により水素発生特性は大きく異なることが明らかにされた(図 3-1)。水 素発生は KS 焼却灰を用いたときに最大で 50 ml-H2/g-VS に達した。その他の焼却灰を用いた場合 cumulative H2 produnction (ml) は、その 1000-10000 分の 1 程度の水素生成にとどまった。KS 焼却灰を用いた場合の水素生成の 250 200 150 100 50 0 0 60 120 180 240 hours 0.014 H2 production 0.012 0.01 0.008 0.006 0.004 0.002 0 0 100 200 300 400 500 600 700 hours 図 3-1 各種焼却灰とコンポストの混合による水素生成特性 :KS, :HN, ◆:UR, -98- : OE, : OK 促進の要因について検討した結果、焼却灰単独および非生物系におけるコンポスト・KS 焼却灰混 合時の水素生成は、コンポストのみおよび水素のみを用いた場合の水素生成とほとんど同程度で あった。すなわち本現象は化学的な水素生成ではなく、焼却灰の混合により微生物による水素生 成反応が促進されることが推測された。この際、液相中に酪酸が高濃度で蓄積することが特徴的 な現象として明らかにされた。また、水素が生成する期間は乳酸が蓄積しており、その後乳酸の 減少とともに酪酸および酢酸が増加することが確認された。 3-2 水素発生メカニズムの微生物学的解析 著しい水素の生成が確認された反応系における微生物群集の評価を行った。その結果、水素の 生成活性が高い培養開始後 50 時間までの間、水素細菌である Clostridium 属が 16SrDNA コピー数 で 108-109 コピー/ml で存在していることが明らかとなった(図 3-2)。Clostridium 属の 1 細胞あた りの rDNA コピー数に関する情報は少なく 6-15(平均 11)コピーと報告されている。平均値であ る 11 コピーとして細菌数に換算すると 107-108 個/ml 程度で存在していることになり、 反応初期に おける Clostridium 属の優占が水素生成に大きく影響していることが示唆された。Clostridium 属細 菌の増殖が遅れるとそれに伴って水素生成のピークも遅れること、およびその際の有機酸の構成 も乳酸の蓄積から酪酸への移行が遅れることが確認された。一方、水素の生成量が少ない反応系 においては Clostridium 属の細菌数は 5.3x106 個/ml 以上には増殖せず、細菌数が抑制される条件 下では水素生成が活発とならないことが示された。 3-3 水素生成原料としての廃棄物焼却灰の品質管理に関する研究 一般廃棄物の焼却灰を 94 試料収集し、発生源による焼却灰の分類を行うとともに、焼却灰中に 含まれる無機分組成調査を実施するとともに、水素生成特性との関連づけを試みた。分類項目は 焼却施設の処理方式、炉形式、処理残さと粗大ごみの受け入れ、また、可燃物におけるプラスチ ック類、アルミ、使い捨てカイロの受け入れ可否とした。処理対象物の分類項目では焼却灰の組 成、特に水素発生に関与すると考えられる金属類の含有に着目した。処理方式や炉型式の違いは、 焼却時の温度や滞留時間の違いにより、焼却灰の結晶構造への影響するものと考えられる。水素 生成が確認された KS 焼却灰の処理対象物は可燃ごみと直接搬入ごみで、対象試料全体の 15.6% が同じ分類に属していた。処理方式はストーカ式、炉型式は固定化バッチ運転であり、それぞれ 82.8%、3.1%が属した。その自治体が回収する可燃ごみ中のプラスチック類は PET を含まず、ア ルミ、使い捨てカイロも含まれないことになっており、それぞれ全体の 39.1%、83.3%、76.7%で un固 形物 op水分 un水分 op2固形物 1.0E+11 1.0E+10 1.0E+10 1.0E+09 1.0E+09 1.0E+08 1.0E+08 MPN-copies/ml slurry MPN-copies/ml slurry op固形物 1.0E+11 1.0E+07 1.0E+06 1.0E+05 1.0E+04 op2水分 un2-1固形物 un2-1水分 un2-2固形物 un2-2水分 1.0E+07 1.0E+06 1.0E+05 1.0E+04 1.0E+03 1.0E+03 1.0E+02 1.0E+02 1.0E+01 1.0E+01 1.0E+00 1.0E+00 1 2 3 5 1 7 Time (day) 2 3 Time (day) 図 3-2 Clostridium 属細菌群集の定量結果 -99- 5 7 あった。アルミニウム含有量は水素生成量に関連がなく、化学成分が直接的な水素生成の及ぼす 影響が少ないことが示された。いくつかの灰の分類結果から、焼却灰混合が水素生成を促進する 灰、阻害する灰、および影響を及ぼさない灰の三種類があることが明らかとなり、原料の特性が 水素生成に大きく影響することが示された。 3-4 水素生成原料としてのバイオマス系廃棄物の品質管理に関する研究 バイオマス系廃棄物について、食品産業系廃棄物および農業系廃棄物を対象として、水素発酵 の基質としての情報を評価した。総務省産業分類の大分類 3 業種(農業、製造業、卸売・小売業)、 中分類 4 業種(農業、食料品製造業、飲料・たばこ・飼料製造業、飲食料品小売業) 、小分類 11 業種、細分類 15 業種に応じた 78 種類の食品産業系廃棄物および農業系廃棄物の組成情報を評価 した。バイオマス系廃棄物は水分が 50%以上のものが全体の 83.3%を占めており、80%以上とな る試料は全体の 41.0%にのぼる。腐敗を引き起こす要素の 1 つである水分がバイオマス系廃棄物 の循環利用を妨げている。腐敗を防止するためには、脱水、乾燥による水分の低減、あるいは、 温度管理、冷蔵や冷凍保存が必要となるが、その費用に見合う付加価値がもたらされる資源に求 められる。水素発酵の主な基質は炭水化物であり、タンパク質は利用されにくいことが知られて いる。米作農業、米業、パン製造業、生菓子製造業、および惣菜類製造業系の廃棄物が炭水化物 を 50%以上含まれており、水素発酵の基質として優れていると考えられた。また、これらの廃棄 物は水分が 50%未満で、精米業および米作農業に関しては 10%未満と非常に少ないのが特徴であ り、収集、運搬、保管上扱いやすいという特性も明らかにされた。脂質が加水分解されて水素発 酵に寄与するとの報告もあるが、今回の調査では肉製品製造業、冷凍水産食品製造業、惣菜類製 造業および精米業系の廃棄物は脂質を 10%以上含んでいることが示された。精米業と惣菜類製造 業系の廃棄物は、炭水化物および脂質の含有量の観点から、水素生成の基質として有望視される 原料であることが示唆された。 4. 結論 都市近郊の市町村レベルの地域を対象とした、地域内未利用バイオマスおよび当該地域で発生 する廃棄物焼却灰との混合による水素生産システムの構築を目的とした検討の結果、各種バイオ マスと一般廃棄物焼却灰の混合による水素生産システムを対象として、各地域において調達可能 な原料の組合せによる水素生成特性を評価した。その中で特に優れた水素生成が確認された組合 せをとりあげ、反応メカニズムの解析を行った結果、微生物による水素生成が焼却灰の添加によ って促進されること、および水素生成は Clostridium 属を中心とした微生物群によることが明らか にされた。すなわち、焼却灰添加による環境条件の変化によって、Clostridium 属の増殖および優 占に大きく貢献し、水素生成の活性化に繋がることが推測された。また、資源化原料としてのバ イオマス系廃棄物および焼却灰について、原料の由来となる施設や業種によって分類するととも に、物理化学的および生物学的な性状を評価し資源化原料特性として情報を蓄積した。これまで に得られた水素生成実験の結果、ならびにバイオマス系廃棄物および焼却灰の特性を踏まえて、 効率的な水素生成について地域性も含めた組合せの可能性について検討するとともに、原料改質 の必要性や各種成分の添加による水素生成に与える影響について明らかにすることが可能である。 -100- -101- -102- -103- -104- 製紙スラッジ産業廃棄物からハイドロキシアパタイト複合体の 創製に関する研究 研究期間(西暦)=2005-2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=逸見彰男(愛媛大学) 共同研究者名=松枝直人(愛媛大学)、安藤生大(千葉科学大学) 、福垣内暁(愛媛県紙産業研究 センター) 、市浦英明(愛媛県紙産業研究センター) 、浦元明(愛媛県紙産業研究 センター) 1.研究目的 現在の地球環境の悪化を招いた原因の大半は、大量生産・大量消費型の経済活動によるところ が大きく、このような大量廃棄社会から環境への負荷が低減される循環型社会への転換が求めら れている。製紙スラッジは全国で年間約 470 万トン、愛媛県で年間約 100 万トン排出され、日本 の紙パルプ業界は、製紙スラッジの多くを 1 トン当たり 6,000∼7,000 円かけて焼却・埋立処分し ており埋立場所のスペース不足等様々な問題を抱えている。こうした状況から製紙スラッジも大 量廃棄する時代ではなく、新たなごみを生まないゼロエミッション再資源化方法の確立が急務と なっている。本研究では、製紙スラッジをハイドロキシアパタイト(HAP)複合体として回収することで、 新素材の創製という業界の活性化と同時に廃棄物の再資源化を通した循環型社会構築技術の確立 を目指すものである。 2.研究方法 製紙工場から排出された製紙スラッジ(PS)の化学・鉱物組成分析を行った。製紙スラッジを 焼却した製紙スラッジ焼却灰(PS ash)から HAP とゼオライトを同時に結晶化し HAP-ゼオライト 複合体の創製を試みた。HAP-ゼオライト複合体の複合化メカニズムを電子顕微鏡観察(SEM)及び 分子軌道法にて解析した。酸化チタンが含まれる PS ash から光触媒活性を示す HAP-ゼオライト酸化チタン複合体の創製を試みた。この酸化チタンの光触媒活性化メカニズムをアセトアルデヒ ドガスの分解試験を行うことで検証した。 また、製紙スラッジから高純度な HAP の合成を試みた。 これら HAP 複合体の環境浄化材料への適用試験として、ゼオライトの陽イオンと HAP の陽イオン を様々なイオンに交換することで、悪臭除去を目的とした環境浄化材料としての可能性を検討し た。 3.結果と考察 四国中央市内の製紙工場から排出された PS を電気炉で焼成することで PS ash を得た。得られ た PS ash について、蛍光 X 線分析装置を用いて化学組成分析を、X 線回折法を用いた鉱物組成分 析を行った。化学組成分析結果から PS ash には、約 10∼40wt%のカルシウム成分が含まれていた。 また鉱物組成結果からアナターゼ型酸化チタンを含有する PS ash も存在した。PS ash には大量 -105- のカルシウム成分を含むことから HAP の合成に適していることが判明した。 カルシウム成分を約 30wt%含有する PS ash を原料(試料 1)とし、リン酸水溶液を加えアルカ リ処理することで HAP 複合体の合成を行った。得られた反応物について X 線回折法で分析した結 果、HAP と A 型ゼオライトのピークが確認され HAP とゼオライトを同時に合成することができた。 また、合成時にシリカ源を添加することで結晶構造の異なるフォージャサイトタイプのゼオライ トの造りわけも行うことができた。電子顕微鏡にて HAP-ゼオライト複合体を観察したところゼオ ライト上に微結晶 HAP が生成しておりナノレベルでの複合化が示された。得られた HAP-ゼオライ ト複合体の複合化メカニズムについて分子軌道法を用いて解析を行った結果、HAP とゼオライト を分子レベルで近づけた場合でも双方が安定に存在できることが示唆された。この結果からも HAP とゼオライトがナノレベルで接近しナノ複合体を形成する可能性が示唆された。試料 1 に硝 酸水溶液を加えた後ろ過し、得られたろ液にリン酸二水素アンモニウムを加えアルカリ処理する ことで高純度な HAP を得ることができた。得られた HAP について電子顕微鏡による観察を行った ところ、微結晶の HAP のみが確認でき高純度 HAP のみを生成することができた。試料 1 と酸化チ タンを含有する PS ash を混合した PS ash を原料(試料 2)とし、試料 1 と同様にリン酸を加え アルカリ処理することで HAP-ゼオライト-酸化チタン複合体を得ることができた。試料 2 から得 られた HAP 複合体に含まれる酸化チタンの光触媒活性を評価するためアセトアルデヒドガスの分 解試験を実施した結果、UV 照射後にアセトアルデヒド濃度の減少が確認され光触媒活性を有して いることが示唆された。ブランクとして試料 2 のアセトアルデヒド分解試験を行ったが、UV を照 射しても濃度減少は確認されなかった。この光触媒活性メカニズムを検証したところ、PS ash 中 に HAP とゼオライトが存在することにより酸化チタンの光触媒活性が現れたと考えられる。これ はゼオライトと HAP が酸化チタンに接近して生成したため分解効率が高くなったためと考えられ るがさらに詳細な検証が必要である。 試料 1 から得られた HAP-ゼオライト複合体(HA-Z)を Ca、Fe 水溶液で洗浄した(Ca-HA-Z、 Fe-HA-Z) 。これらの試料についてアセトアルデヒドガスを用い消臭試験を行ったところ、Ca-HA-Z が最も吸着力が強い結果を得た。 4.結論 カルシウム成分を含有する PS ash から HAP-ゼオライト複合体を得ることができ、電子顕微鏡 観察及び分子軌道法解析により HAP とゼオライトがナノレベルで接近し複合体を形成している可 能性が示された。酸化チタンを含有する PS ash から光触媒活性能を有する HAP-ゼオライト-酸化 チタン複合体を得ることがでた。また PS ash から高純度 HAP を得ることができた。HAP-ゼオライ ト複合体を Ca 水溶液で洗浄することで消臭能が大きくなる結果を得た。以上の結果から、PS ash から得られた HAP 複合体は消臭剤などの環境浄化材として十分な機能を有していることが示され た。 -106- バイオマスの循環型システム活用(CO2 のリサイクル化)における 超音波による無水エタノールの精製およびバイオディーゼル燃料の 製造に関する研究 研究期間(西暦)=2005−2007 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=坂東 博(大阪府立大学) 共同研究者名=竹中規訓(大阪府立大学) 、興津健二(大阪府立大学) 、Carmen E. Stavarache(大 阪府立大学)、Maricela Toma(大阪府立大学)、辻野喜夫(大阪府環境情報セン ター)、服部幸和(大阪府環境情報センター)、西川三彦(株式会社マイクロア クア) 、守屋力(株式会社マイクロアクア) 1.研究目的 世界経済の持続的な発展を維持するためには、地球温暖化原因物質の CO2 の放出を削減し、限 りある化石燃料の使用から再生可能な代替エネルギーへの実質的転換が不可欠である。そのため に、超音波を使った新しい技術を活用して、莫大な未利用バイオマスからエタノールを効率的に 生産・無水化し燃料(バイオエタノール燃料、BEF)用に、またこのエタノールをパーム油や廃 食油とのエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料(BDF)化する技術を確立する。最終的 には、地域分散型の BEF および BDF 製造事業の展開により、地域における未利用および廃棄バ イオマス活用に関する循環システム(CO2 サイクル)の構築に資することを目指す。 2.研究方法 本研究は、以下に示す 3 つのサブテーマに分けて実施する。 サブテーマ1:超音波による無水エタノールの精製に関する研究 ① 超音波によるセルロース(ヘミセルロース)およびリグニンの高純度分離 ② 超音波によるセルロースの加水分解の促進 ③ 超音波によるアルコールへの発酵の促進 ④ 超音波霧化技術による無水エタノールの精製 サブテーマ2:超音波による BDF の製造に関する研究 ① 超音波による液体の混合(20∼40kHz) ・反応(200kHz)・分離(1.5MHz)作用を組み合わ せた高純度低価格の BDF 製造技術の実用化 サブテーマ3:BEF および BDF の燃費、品質の向上、排ガス中の汚染物質の削減に関する研究 ① BEF および BDF 燃焼排ガス中の汚染物質の性状分析・事前評価とその低減法の検討 ② BDF の連続製造プラントの設置と実走行試験による BDF フィージビリティ調査 3.結果と考察 1)サブテーマ1では、低周波の超音波照射系により薬品添加なしで木質バイオマスからセルロ -107- ースおよびリグニンが分離できることを明らかにし、この技術についての基本特許を出願し た。この技術はパルプやセルロース産業に環境負荷の少ない新たな技術革新をもたらすとと もに、高純度リグニンをベースとする新しい産業分野を拓く可能性をもたすものである。 2)サブテーマ2では、プッシュ・プル型超音波振動子を使った連続反応装置で96%以上の高 い転換率で日生産量 1000L 程度の BDF 製造能力を得られることが確認できた。平成 18 年度 はこれを受けて、同規模の製造能力をもつ実用化 BDF 製造ベンチプラントの設計・製作を行 う。 3)サブテーマ3では、当研究で製造したキャノーラ油を原料とする BDF に関して、実ディーゼ ルエンジンによる燃焼実験を行い、排ガス中の粒子状物質(DEP)に含まれる主要変異原物 質である多環芳香族炭化水素類(PAHs)分析し、BDF では軽油に比べ変異原性が1/5以下ま で大幅に低減できることを明らかにした。 課題別のより詳細な研究結果について、サブテーマごとに以下に記述する。 サブテーマ1: ① 超音波によるセルロース(ヘミセルロース)およびリグニンの高純度分離 おがくず程度に細粒化したヒノキ、杉、竹を対象として、20 あるいは 40kHz の超音波を 100-200W 程度の強度で照射することにより、薬品類を使用せずに常温・蒸圧条件下、短時 間でバイオマス組織をほぐし、水溶性のリグニンを非水溶性セルロース(ヘミセルロース) から分離できることを見出した。この方法は従来の分離法、即ち木質チップを高濃度アル カリ蒸解する方法、に比べ必要とする投入エネルギーも小さく、また産業廃棄物となる高 アルカリ性分解リグニン(いわゆるヘドロ)も発生しない環境にやさしい方法を提供する。 この技術は、新規で工業的にも利用価値の高い技術であると認められることから、特許を 出願した(出願番号:特願 2005-310741、提出日:平成 17 年 10 月 26 日)。 現在、各分離分画中の成分の組成・純度を GC−MS による化学分析で確認作業中である。 これにより、分離の純度を更に向上できると期待される。 ② 超音波によるセルロースの加水分解の促進(高速糖化) セルロースから前処理により糖(グルコース)への加水分解を効率的に促進することは、 エタノール発酵の効率を高める上で重要である。機械攪拌および周波数の異なる超音波、 直接・間接の超音波照射法を種々テストした結果、ホーン型振動子による 20kHz 周波数の 直接照射の系が最も加水分解の効率が高く、攪拌も超音波照射もしない前処理無しでの発 酵系に比べ 50%以上の糖化効率の向上が得られることが明らかとなった。 ③ 超音波によるアルコールへの発酵の促進 セルロースからエタノールを製造するには酵母による発酵を利用する方法が従来から用 いられている。この過程では微生物である酵母の働きが重要であり、超音波による活性促 進の効果が期待できる。本課題では、効率的に技術開発を進めるために、先ず超音波によ る微生物活性の促進・抑制効果を定量的に計測する方法の確立を目指した。微生物活性を 検討するモデル系として、有機塩素化合物分解性生物が微生物に与える代謝活性阻害を代 謝熱量測定することから求め、そこから微生物活性を推定する解析法を検討した。今後は、 -108- この手法を酵母によるアルコール発酵反応系に適用し、その効率化条件を定量的に解析す る。 ④ 超音波霧化器による無水エタノールの精製 超音波霧化は液体を超音波によって微粒子化し、気体中に霧状に分散する方法である。 本年度はエタノール水溶液の超音波霧化特性を調べること、および発生する霧の捕集方法 の開発を目指した。所定濃度(5,10,20 wt.%)のエタノール水溶液に超音波(2.4MHz,13.5W) を照射し、発生する霧を種々の方法により捕集し、そのエタノール濃度を測定した。また 種々の霧捕集法を試みた結果、霧を加熱することによって気化させた後、冷却により凝縮 する方法で最も高い捕集率(平均 75%)が得られる事を明らかにした。しかし、最終的に目的 としている 99%以上の濃度のエタノールの精製回収には到達していない。今後は極微小孔 径のメッシュによる捕集など、霧の捕集方法についてさらに検討する必要がある。 サブテーマ2: 連続流通系においてキャノーラ油、パーム油などの植物油とメタノールを混合、反応さ せ、BDF を日生産量で 500∼1000L で連続製造するための反応条件の最適化を検討した。超 音波照射反応容積 2.6 および 6.4L でプッシュ・プル型超音波発信子(周波数:20kHz、出力: 200W)を使って実験を行った。BDF を高収率で得ることが出来る条件はメタノール/キャ ノーラ油の化学量論比が2/1の場合、反応槽内での反応混合物の平均滞留時間(即ち= 平均反応時間)が 20∼30 分で、ほぼ 96%程度の転換率が得られることが分かった。10 分 の平均滞留時間でも 94-95%の転換率が得られることから、超音波照射系の反応が従来の機 械攪拌法に比べ 5 倍以上効率的に BDF を生成することが実証された。また、エステル交換 の条件をより精度よく決定する目的で基本的な反応実験も平行して実施した。 さらに、超音波振動子に代わるキャビテーション作用発現の新しい手法として、高速噴 出ノズルによるメカニカルキャビテーション法の可能性について検討を行った。メカニカ ルキャビテーション技術を有する企業に委託し、ノズルの設計を行うとともに、BDF生 成実験のための反応装置を設計・試作した。試作機ではポンプの送油流量が不足(最大 20L /分)であったためにキャビテーションが得られなかった。ポンプの送液能力をアップし、 今後より高い製造能力条件下で製造実験を行う予定である。 サブテーマ3: ① BDF の燃焼排ガスの化学的特性に関する研究 ディーゼルエンジン車輌を使ってサブテーマ2で製造した BDF を燃料としたときの排気 ガスのを分析し、軽油 100%および BDF/軽油の混合燃料燃焼の場合と比較した。BDF では 軽油 100%に比べ排ガス中の CO は 65%程度に低下。 これに対して NOx は 10%程度増加し、 過去の文献と一致する結果を得た。一方、DEP に含まれ遺伝子損傷を引き起こす(変異原 性)PAHs の BDF 燃焼からの排出に関する研究例はほとんどなく、今回初めて BDF 燃焼由 来の DEP 中の PAHs を分析した。その結果、軽油に比べて1/2∼1/10 程度に低減して いることが分かった。実際、BDF および軽油由来の DEP の変異原性の高さを Ames 試験に より比較したところ、BDF では軽油の1/5以下に低下していることが分かった。このよ うに、BDF は環境負荷や人への健康影響の面からも軽油に比べて優れていることが明らか -109- となった。 ② BDF の実走行試験 平成18年度の BDF 実用化ベンチプラントの設計・製造を待って、堺市との共同で BDF 使用車輌の定常運行による実証試験を行う予定である。 4.結論 超音波利用による BDF 製造に関しては、実験室レベルでの検討課題はほぼ終了しており、当初 2005 年度中に設計、場合によっては設置、に取り掛かる予定にしていた実証試験製造装置の設 計・設置に取りかかることが出来なかった。現在、製造装置のシステム全体の製造規模・構成を 検討しており、2006 年度末までに設計を完了し、2007 年度前半には定常的な BDF 製造と BDF 使 用車輌の定常運行による実証試験を行う予定である。 BEF に関しては、木質バイオマスの分離からエタノールの濃縮に至る各過程に関して実験室実 験系ではあるが上述のような成果を得ることが出来た。 -110- 廃棄物最終処分場跡地の形質変更のための施工方法と 環境リスクの相関に関する研究 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=嘉門雅史(京都大学) 共同研究者名=勝見 武(京都大学),乾 徹(京都大学),稲積真哉(京都大学) 1.研究目的 廃棄物最終処分場の跡地利用に際して発生しうる,土地の掘削・構造物の建設に伴う処分場遮 水工の損傷,処分場内部の生化学的雰囲気の変化に伴う重金属等の溶出や浸出水質の悪化,メタ ンガス・臭気等の発生,といった環境リスクとその機構に関する学術的知見を早急に蓄積し,こ れらの環境リスクを適正に制御しうる工法や技術的手法の細目を確立することを目的とする。具 体的には,① 跡地利用に伴う掘削,構造物の設置に対応可能な構造安定性に優れた遮水工構造の 検討,および遮水層として機能している堆積粘土地盤に支持杭を打設した際の遮水性能への影響 の評価,② 跡地利用に際して掘削・切土等が行われる場合の酸素・水分供給量の変化が処分場内 部の微生物活動や化学的雰囲気に与える影響,および安定化した汚染物質の形態・挙動に与える 影響の解明,③ 跡地利用形態と廃棄物の種別毎に形質変更に伴って生じる環境リスクの推定,お よびその結果に基づいた適正な施工方法と環境リスクの制御のスキームの確立,を実施するもの である。① については,跡地利用に伴う上載荷重の増加や基礎杭の打設は遮水工の損傷や遮水機 能の低下をもたらす可能性が指摘される。この予防的措置として構造安定性に優れた遮水工構造 を明らかにするとともに,遮水層として機能している堆積粘土地盤に支持杭を打設した際,およ びその供用中における遮水性能への影響を実験的に明らかにする。また,跡地利用に際して遮水 工の損傷が生じない許容荷重を明らかにする。② については,近年その事例が増加している焼却 灰埋立海面処分場に着目して,実際に埋め立てられる廃棄物をサンプリングし,重金属,有機物 等の環境汚染物質の安定化機構を検証する。次に,跡地利用に伴う掘削等による酸素や水分供給 量の変化が廃棄物層内の微生物活動や化学的雰囲気に与える影響,および汚染物質の動態に与え る影響を実験的に明らかにし, 跡地利用による廃棄物の有害性の変化を評価する。 ③ については, 埋立廃棄物の種類,埋立地の分類,跡地利用の形態などに応じた環境リスク,および環境リスク の高い曝露経路,利用形態を明らかにする。その結果に基づいて,跡地利用における施工上の制 限事項の明確にするとともに,予想しうる環境リスクに対するリスク低減対策,調査・モニタリ ングプログラムを体系的に示す。 2.研究方法 本研究は 2 年計画で実施するが,初年度の平成 17 年度は以下の 2 つのテーマについて以下の方 法で実験的研究を実施した。第 1 のテーマとしては,廃棄物処分場の遮水工について,跡地利用 段階を含めた長期渡って構造的に安定な断面構造ならびに設計手法の提案を試みた。廃棄物処分 -111- 場の遮水工(底部遮水工,覆土層)を構成する,締固め粘土ライナー,不織布,遮水シート,ジ オシンセティッククレイライナー,保護土層といった各層の境界面のせん断特性を,大型せん断 試験装置を用いて評価した。次に,実験的に得られた各境界面の粘着力,内部摩擦角に基づいて, 廃棄物処分場の構造安定解析を実施した。解析においては,一般的な内陸埋立処分場を想定し, 締固め粘土層,遮水シート,不織布からなる底部遮水工,遮水シート,不織布,保護土層からな る覆土工について,材料の境界面ですべり破壊が発生する場合の構造安定性を平時,地震時にお いて評価した。 第 2 のテーマとして,力学的にも安定性が高く,立地的にも跡地利用が期待される焼却灰埋立 海面処分場を対象として,廃棄物層内における各種汚染物質の動態,安定化機構について実験的 評価を実施した。具体的には,一般廃棄物焼却灰を埋め立てた海面処分場の焼却灰層,および底 部粘土層周辺における生化学的条件と重金属(亜鉛)の存在形態,移動性を,柔壁型透水試験, 大型カラム透水試験において計測し,および結果の分析を行った。特に,廃棄物層内部の有機物 濃度,微生物活性,pH,酸化還元電位の変化と重金属の溶出濃度の変化から,廃棄物層内におけ る重金属の安定化機構を推定した。現在も実験は継続しており,掘削等によって好気性条件へ変 化した場合の微生物活動に伴う化学的条件(pH,酸化還元電位,有機物濃度)の変動と廃棄物か ら発生・溶出する重金属,有機物量の変化に基づいて,跡地利用時の埋立廃棄物の有害性の変化 を検討している。 3.結果と考察 廃棄物処分場遮水工の構造安定性の評価に関しては,廃棄物処分場遮水工を構成する材料の境 界面のせん断抵抗特性を評価するために,改良型の大型せん断試験装置を開発した。基盤層,締 固め粘土層,遮水シート,不織布,ジオシンセティッククレイライナーといった異なる材料に対 応できる各種アタッチメント,高さ調整機能を製作,付加させ,一定の接触面積を保った状態で のせん断を可能とした。次に,その試験装置を用いて遮水工を構成する材料の境界面のせん断抵 抗特性を評価するために,異なる上載圧下でせん断試験を実施し,粘着力,内部摩擦角を求めた。 境界面のせん断抵抗は,遮水工材料自体のせん断強度と比較して大幅に小さいことから,遮水工 材料の境界面が構造上の弱面となることが明らかになった。特に,通常の HDPE シートとジオテ キスタイル材(不織布)の境界ではせん断抵抗が非常に小さく,適用にあたっては留意が必要で ある。さらに,大型せん断試験で得られたせん断抵抗パラメータを用いて,廃棄物処分場の構造 安定性評価を実施したところ,底部遮水工,および覆土層の HDPE シート−不織布境界面,覆土 層の保護土−不織布境界面が構造上の弱面であることが明らかになった。それ以外の境界面につ いては,水平震度が 0.25 程度であれば,十分に安定であることが分かった。 焼却灰埋立海面処分場の廃棄物層−底部粘土層における生化学的条件の変化と重金属の動態に ついては,小規模の柔壁型透水試験によって評価した場合には,実験開始直後より,微生物活動 によって Eh の低下が生じ,還元性雰囲気へ数日程度で移行することが確認された。一方,pH に ついては,粘土層によるアルカリ緩衝作用によって透水開始直後の pH は低いものの,その後は pH が急激に上昇し,最後に測定した時点では pH = 11.5 程度を示した。重金属(亜鉛)の顕著な 溶出は確認されなかったが,そのメカニズムは時間の経過によって異なると考えられる。透水開 -112- 始直後の pH が低く,Eh が高い段階では, 粘土層による吸着機能が寄与していると考えられるが, 時間の経過とともに水酸化物塩や炭酸塩といった難溶性の形態を示すためであると推測される。 一方,より現場に近いと考えられる大型カラム透水試験においては,実験開始時から高いアルカ リ性と非常に強い還元性を示し,重金属に関してはどの深度においても有意な溶出は確認されな かった。重金属は焼却灰層上部に固定化されていると考えられ,その機構としては,海水と焼却 灰層からのアルカリ分が混ざり合って焼却灰層の上部に pH が 8 ∼ 11 の領域が存在するため, は ZnCO3 や Zn(OH)2 といった沈殿を形成すること,さらにその下部層においては Eh 低く,不溶 性の沈殿を形成しうることが,pH や Eh の測定結果から推測された。 4.結論 廃棄物最終処分場の遮水工を構成する遮水シート,粘土ライナー,不織布,ジオシンセティッ ククレイライナーといった材料の境界面におけるせん断抵抗特性を大型せん断試験により評価し, 構造設計時において重要となる基礎的なデータを蓄積した。さらにその結果を用いて構造安定解 析手法を提案するとともに,平時,地震時において構造的に不安定な遮水工構造を明らかにする ことができた。これらの研究結果より,跡地利用に伴う構造物の設置等に対しても,対応可能な 構造安定性に優れた遮水工構造を設計するための基礎的データと評価手法が示されたと考えられ る。さらに,土地の規模,廃棄物層の力学安定性の面から跡地利用の適用性が高いと考えられる 焼却灰埋立海面処分場内部における生化学的条件の変化と重金属の存在形態を実験的に明らかに することができた。具体的には,焼却灰層で観測される pH,酸化還元電位条件下では,重金属は 難溶性,不溶性の化合物を形成することから,ほとんど浸出水中への溶解はみられなかった。こ のことは,跡地利用において,pH や酸化還元電位が変化すると重金属の溶解性が上昇する可能性 を示唆していることから,今後も長期にわたって実験を続けるとともに,廃棄物層内を好気的な 条件に変化させ,その際の生化学的条件の変化,および重金属の存在形態への評価を調査する。 -113- 廃棄物を利用した鉄-水素コプロダクションシステムに関する研究 研究期間(西暦)=2005-2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=清水正賢(九州大学) 共同研究者名=岩瀬正則(京都大学) 、葛西栄輝(東北大学) 、内藤誠章(新日本製鉄㈱) 、 武田幹治(JFE スチール㈱) 1.研究目的 有機系一般廃棄物はその主体が炭素と水素から成り立っていることから、その適正な処理によ り水素、炭化水素、CO ガスとしてエネルギー回収が可能である。本研究では、水素成分に富む廃 プラスチック、RDF、廃木材、古紙等の有機系廃棄物を対象に、製鉄の高温熱処理技術によって「製 鉄用燃料への転換」、「廃棄物を還元材とする鉄鉱石の還元」および「製錬反応を利用した廃棄物 からの水素ガスの製造」の可能性について検討し、 「環境保護」 、 「廃棄物利用新エネルギーの創生」 、 「廃棄物処理の負荷低減」 、さらに「製鉄分野での CO2 排出量の削減」を目指した廃棄物の有効利 用技術を開発する。 2.研究方法 H17 年度は廃プラスチック、RDF、木材、古紙を対象に、還元材内装法(廃棄物/鉄鉱石混合成 形体の加熱還元法)により鉄-水素コプロダクションの可能性について検討した。具体的には、廃 プラスチックの主体をなすポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)の粉末、1mm 以下に微粉 砕した木材、古紙を平均粒度 75μm の鉄鉱石粉に単独もしくは種々の割合で混合してプレス成形 し、不活性ガス雰囲気で 1000∼1400℃に加熱した際の生成ガス量、ガス組成、還元率を測定し、 廃棄物の熱分解挙動、H2 および CO ガスへの転換率、鉱石の還元挙動を熱力学的および速度論的に 検討した。 また、廃棄物に含まれる重金属類の無害化・固定化法を目的に、CaO−FeO−SiO2−Al2O3 系スラ グに ZnO、CaCl2、Fe、Fe2O3、C 等を添加し、種々の塩基度、FeO 濃度(還元ポテンシァル)にお ける Zn 成分の揮発挙動を高温クヌーセンセル法による飽和蒸気圧測定およびガス流動法によっ て検討した。さらに、ポリ塩化ビニール(PVC)を制御雰囲気下で加熱分解し、排ガス中の塩素量 の測定から塩素のガス化条件を求めた。 3.結果と考察 3-1 廃棄物を利用した鉄-水素コプロダクションの熱力学的検討 酸化鉄と廃プラスチック(PE、PP) 、RDF、廃木材、古紙等との混合物中の炭素と酸素の原子比( C/O 比)および温度を初期条件として、下記の熱力学平衡式ならびに物質収支式を同時に解析した。図 3-1-1 に廃プラスチック(PE)と鉄鉱石混合体の排ガス組成を示す。1400℃以上の温度条件では 廃棄物は総て H2 ガスと CO ガスに変換されることが推算された。この計算結果は実験値とも良い 一致を示し、鉄鉱石を前記廃棄物によって還元した場合の生成ガスの組成および鉄の酸化度(還 -114- 元率)は以下の 6 式で推定可能であることが分かった。 2{C}Fe + (O2) = 2(CO) {C}Fe + (O2) = (CO2) {C}Fe + 2(H2) = (CH4) 2 2 K(1) = PCO / aC PO2 K(2) = PCO2 / aC PO2 K(3) = PCH4 / aC PH2 2 2 2 [1] [2] [3] 2{Fe} + (O2) = 2{FeO} K(4) = PH2O / PH2 PO2 2 K(5) = 1/ aFe PO2 [5] (1/2) (O2) = {O}Fe K(6) = aO / PO2 [6] 2 (H2) + (O2) = 2 (H2O) 1/2 [4] 図 3-1-1 廃プラスチック(PE)と鉄鉱石混合体の高温還元における排ガス組成 3-2 鉄鉱石の還元および水素製造の速度論的検討 粉鉱石中に廃プラスチック(PE、PP)、木材、RDF 粉末を内装させた高密度プレス成型体を N2 雰囲気中で 800℃以上に加熱すると炭化水素系成分の熱分解と鉱石の還元反応が同時に進行する。 熱分解率および還元率は大きな温度依存性を示し、1000℃ではプラスチックからの H2回収率およ び鉱石の還元率はともに約 30%程度であるが、1300℃では5分以内で H2回収率が 100%、還元率が 80%に達した。RDF に対しては、図 3-2-1、図 3-2-2 に示すように 1200℃の条件で 5 分以内に 100% の還元率が得られるとともに、ガス回収率も 80%に達しており、還元とガス転換に適しているこ とが判明した。さらに、還元材として木材粉および古紙を用いた場合には還元反応が廃プラ以上 に高速化されることが判明した。この理由は、乾留された炭素組織が繊維状で非常に大きな反応 界面積を有すること、 また、固定炭素として高温域まで残留し反応に寄与するためと解析された。 RDF が優れた還元とガス転換率を示したのは、RDF 中に含まれる紙類の効果によると推察された。 -115- 1.00 0.8 0.80 ガス回収率(-) Fractional reduction (-) 1 0.6 0.4 1000℃ 1100℃ 1200℃ 0.2 CO H2+CO H2 0.60 0.40 0.20 0.00 0 0 1 2 3 Time (min) 4 5 1000 図 3-2-1 RDF 内装試料の還元速度 1100 1200 実験温度(℃) 図 3-2-2 1300 RDF 内装試料のガス回収率 3-3 スラグ中重金属類の揮発挙動および共存塩素の影響 塩素が共存しないスラグ系では、亜鉛は主に金属 Zn の形態で揮発し、塩基度(CaO/SiO2)およ び FeO 濃度の増加により、飽和蒸気圧が上昇し、亜鉛の揮発除去率が向上する。一方、塩素共存 スラグ系において上記の場合と同程度の飽和蒸気圧を与える温度は 300∼600℃低下することを 確認した。これは、有機系廃棄物に含まれる塩素を Zn 成分の除去に有効に利用できる可能性を示 唆している。この場合の Zn の揮発形態は、高 FeO 濃度条件でおいて低温では ZnCl2 であり、温度 上昇と共に金属 Zn としての揮発率が増加する。低 FeO 濃度のスラグにおいては、1300℃程度まで 温度が上昇しても ZnCl2 が主たる揮発種であり、温度の影響は顕著ではない。また、塩素共存ス ラグでは、FeCl2 の形態による鉄の揮発も進行する。これは、高い還元ポテンシァルの条件で 1100℃以上に温度が上昇した場合に顕著となり、過剰の炭素還元材が存在する場合には 2 次飛灰 中の鉄濃度が増加することを意味する。 各蒸気種の生成割合 (%) 100 CaO‐FeO‐SiO2‐Al2O3‐ZnO‐CaCl2系スラグ 80 ZnCl2 Zn 60 40 20 0 1000 FeCl 2 1050 1100 1150 1200 Temperature (℃) 1250 1300 図 3-3-1 CaO-FeO-SiO2-Al2O3=CaCl2 系スラグの高温域での各種蒸気の生成割合 -116- 4.結論 鉱石中に廃プラスチック、木材、古紙等の有機系廃棄物を内装させた高密度圧密成型体の高温 反応挙動を熱力学計算および小型電気炉実験によって検討し、鉄―水素コプロダクションの可能 性を基礎的に確認した。また、廃棄物中の Zn 成分は塩素の存在によって効果的に除去できること が判明した。今後、各種反応の定量化、最適化を進め、この結果に基づく工業的なプロセスイメ ージを構築していく。 -117- -118- -119- -120- -121- -122- 循環廃棄過程を含めた水銀の排出インベントリーと 排出削減に関する研究 研究期間(西暦)=2005−2007 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=貴田晶子(独立行政法人国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター) 共同研究者=酒井伸一(京都大学) 、高岡昌輝(京都大学)、安田憲二(岡山大学) 、 守冨寛(岐阜大学) 、平井康宏(国立環境研究所) 1.研究目的 水銀の世界的削減に向けた動きが緊急の課題であり、世界の大気発生量 45%を占めると推定さ れているアジア圏では日本を含め発生量が不明であることから、主たる排出源とされる石炭燃 焼・廃棄物燃焼を中心とした排出インベントリーを作成することを目的とする。このために発生 源からの形態別排出量について実態把握及び連続モニタリングによりデータ集積し排出量推定値 の精度検証及び精緻化を図る。次にリサイクルの推進により、廃棄物・二次資源あるいは産業系 からの回収水銀がアジアへ流入することに対する環境影響に関して挙動の把握と予測を行うため、 水銀の物質フローモデル及び環境動態モデルを開発する。開発したモデルを用いて、削減方法に 応じた制御シナリオに対応する大気排出量を推定する。研究全体としては、世界的削減計画に対 応できるよう、アジア圏における水銀の排出量、環境動態に関する情報を提供する研究とする。 2.研究方法 2―1 水銀の大気排出源と排出係数及び排出インベントリー 人間活動由来と自然由来の排出源を網羅し、日本において重要と考えられる石炭燃焼及び廃棄 物燃焼を中心に文献情報を整理し、排出係数及び排出インベントリーを作成した。一次情報の不 足している排出源については海外の排出係数を採用し、海外におけるインベントリーと比較した。 2―2 排出源からの形態別水銀排出実態及び排出係数 未知発生源のなかでも日本特有の発生源の一つである火葬炉の水銀排出量と水銀排出挙動を調 査するため、合計 34 ランの火葬からの形態別の水銀濃度を実測した。また石炭燃焼施設における 形態別水銀排出について実測を行った。 2―3 水銀の物質フローモデルの開発 様々な国や地域におけるランプ使用に係る水銀負荷の現状や将来シナリオを評価するため、性 能等の異なる各種ランプ(蛍光管及び白熱灯)について、多様なパターンの石炭火力発電状況及 び使用済み製品の循環・廃棄状況を想定し、パラメータを設定し、ライフサイクルに渡る水銀の インベントリー(LCI:Life Cycle Inventory)の解析を行った。 2―4 水銀の連続モニタリング技術 米国 EPA の多くの報告書書を中心に検討を行った。また、連続モニタリングで問題となりやす い灰溶融施設について連続測定を行い、その結果も参考にして課題を整理した。機種別の特徴、 -123- 問題点を把握するととともに、対象施設における排ガス中の共存ガスによる干渉、サンプリング に伴う影響を把握し、改善に向けた課題を整理 表 1 日本の水銀排出インベントリー した。 排出量 [トン/年] 0.6-1.5 2―5 水銀の動態モデルの開発 焼却部門 石炭燃焼 火力発電 事業用ボイラー 石油燃焼 火力発電 事業用ボイラー 一般廃棄物燃焼 医療廃棄物燃焼 下水汚泥焼却・溶融 産業廃棄物燃焼 シュレッダーダスト 木くず 廃プラスチック類 その他 製造部門 鉄鋼・製鉄 非鉄金属 亜鉛 鉛一次 銅一次 金 ニッケル セメント製造 石灰石製造 カーボンブラック製造 コーク製造 パルプ・製紙 塩素アルカリ工業 バッテリー製造 電気スイッチ製造 その他の製造業 その他 火葬 蛍光灯 歯科(アマルガム) 埋立地ガス 運輸(燃料由来) 自然由来 火山 山火事 二次放出 土壌 農薬 水系 他地域からの流入 計 水銀の環境動態を扱う既往モデルをレビュー し、利用可能な環境中濃度・発生源情報を収集・ 整理した。これらを踏まえ、環境動態モデルの 大枠を規定する要素を抽出した。 3.結果と考察 3―1 水銀の大気排出源と排出係数及び排出 インベントリー PRTR を含め、日本における水銀の排出量デ ータは極めて少ない。そこで海外での排出係数 を参考にしながら、凡その排出量を初手として 推定した。石炭燃焼からの排出量推定値は 0.6 ∼1.5 トン/年であり、 諸外国、特にアメリカ(46.9 トン(1995))に比して少ない。これは水銀含有 量が少ない石炭の使用が主な原因である。廃棄 物燃焼のうち、一般廃棄物燃焼は 0.3∼1.8 トン/ 年、医療廃棄物燃焼は 0.14∼14 トン/年、下水 汚泥焼却は 1.4∼4.4 トン/年の排出量と推定さ れた。ただし医療廃棄物燃焼は海外の排出係数 を用いている。第1次の水銀排出インベントリ ー推定値を表1にまとめて示す。国内での測定 例が極めて少なく、実測定による排出係数の推 定が必要である。セメント製造、火葬、自然由 来として火山活動に伴う排出量も推定し、第1 次の推定排出量は 9∼29 トンと見積った。また、 0.3-1.8 0.14-14 1.4-4.4 0.95-1.9 0.03-0.16 3.8 0 0.14-0.29 >1.4 (2350) 9-29 廃ガス処理設備の種類別による代表的な排出低 0.30 精密な排出量推定に適切な排出係数 0.25 こで来年度では Input 側における水 図 1 セメント産業の排出係数 -124- 日本 EU 全体 EU 全体 ポーランド オラ ンダ ポーランド イタリア ポル トガル フラ ンス ギ リシ ア ドイツ スペイン 豪州 ベル ギ ー 米国 米国 米国 米国 米国 米国 米国 米国 0.00 米国 メント産業での排出係数を示す) 。そ 0.05 米国 判断するか極めて難しい(図 1 にセ 0.10 米国 も幅広い値を有し、どの値を妥当と 0.15 米国 が、海外で報告されている排出係数 0.20 米国 を把握・推定することが必須である 排出係数 (g-Hg/Mg-clinker) 減率を統計的手法により推定した。 銀含有量データベースを作成し、最大排出量(=排出ポテンシャル)を推定した上で、排ガス処 理における低減効率を考慮して排出量を推定していく。また、鉄鋼に代表される製造業部門の調 査も詳細に行っていく予定である。 3―2 排出源からの形態別水銀排出実態及び排出係数 火葬については、形態別水銀連続分析計およびバッチ型の湿式吸収法で測定し、続測定の結果、 燃焼時間中の平均水銀濃度はバグフィルタ出口で Hg0 及び Hg2+は共に同程度で、 総水銀濃度は 4.3 μg/m3 であった。湿式吸収法と連続分析計の総水銀濃度値は極めて高い相関関係にあり、測定デ ータの妥当性が確認された。燃焼開始およそ 10 分後に Hg0 のピークが観測され、その値は 1.5~573.9μg/m3 で、歯科用アマルガム由来であることが推測された。総水銀濃度に排出ガスの流 量を乗じた水銀排出量は年齢構成によって異なり(図 2)、平均で 51.8mg/人であった。これに年 300℃で 55%を、Hg2+が 35%を占めるが、温度の低下と 96- 91-95 61-65 -60 Hg2+ が 70%を占めること、通常の瀝青炭では、Hg0 が 86-90 布に差がみられた。高塩素含有の瀝青炭では水溶性の 81-85 置で形態変化がみられた。また石炭炭種の違いも形態分 76-80 ら、燃焼温度 1500℃から冷却後、300℃∼120℃の集塵装 160 140 120 100 80 60 40 20 0 71-75 平均水銀排出量(mg) 推定された。石炭燃焼における水銀の形態分析の結果か 66-70 間火葬数約 100 万人を乗ずると、年間排出量 51.8kg/年と 年齢階級(5歳刻み) 共に凝縮水(粒子状水銀)への移行がみられた。 図 2 火葬による水銀排出量(年齢別) 3―3 水銀の物質フローモデルの開発 図 3 に水銀の物質フローを示す。原料段階では 115∼228 t 程度で推移しているが、製品段階及 び廃製品段階では 12∼21 t と 1 オーダー低くなり、原材料段階での動きが大きいことがわかる。 循環・廃棄については、製品由来の水銀総排出量 12∼17 t のうち、リサイクルへ回るのは 3∼5 % となった。 照明器具での水銀ライフサイクルに着目したとき、 蛍光管からの水銀排出量に比べて、 製品そのものには水銀を含まないが、エネルギー効率の低い白熱灯からの水銀排出量が大きくな る可能性を示した(図 4) 。例えば石炭火力発電の負荷は小さいが、循環・廃棄における焼却処分 の負荷が大きい(日本のような)場合にお 6 いても、白熱灯では 0.52ng-Hg/lm・hr(= 5 既存研究※1 既存研究※2 ※1:H. P. Stormberg (1995) ※ 2:欧州電球工業 会HP(2006確認) energy lamp ng-Hg/lm・hr 4 3 2 1 欧 本研究の結果 (既存研究と類似の設定) 図 4 各種ランプからの水銀の大気放出量 図 3 日本での水銀物質フロー -125- L-40 M-40 H-40 蛍光管40W 高←低性能 I-40 白熱灯40W 蛍光管20W 高←低性能 I-20 白熱灯20W L-20 M-20 H-20 白熱灯 60W 電球型蛍光管 20W 蛍光管 40W 蛍光管 40W(高性能) 白熱灯 60W 蛍光管 40W 電球型蛍光管 20W 欧 電球型蛍光管 20W(長寿命) 米 白熱灯 60W 蛍光管 40W 電球型蛍光管 20W 0 光束1ルーメンおよび単位時間当たりの水銀排出量)であるが、高性能の蛍光管では 0.25ng-Hg/lm・hr と算出された。また、特に石炭火力発電の負荷が大きい国や地域においては、 性能のよい蛍光管の導入が水銀排出量削減に大きく寄与すると考えられる。さらに、水銀負荷を 低減するためには、循環・廃棄段階からの排出抑制を図ることが必要と言える。 3―4 水銀の連続モニタリング技術 現在12機種の水銀連続モニタリング装置があり、測定原理としては、冷原子吸光スペクトル 方式(CVAAS)、冷原子蛍光スペクトル方式(CVAFS)、原子放射スペクトル方式(AES)、紫外 線吸光スペクトル方式(DOAS)、ゼーマン効果吸光スペクトル方式(ZAAS)がある。排ガス中 の干渉物質(SO2 など)の影響が少ないのは AES 方式のみであるが、高コストのため普及してい ない。本研究では CVAAS 方式+湿式前処理の連続装置(定量範囲 0.1∼1000μg/m3)を用いて灰 溶融炉で実測したところ、ばいじん濃度が高い場合に連続分析の時間に制限があること、また高 濃度ガス分析後の採取管や装置内部の残留にも留意せねばならないことを確認した。 3―5 水銀の動態モデルの開発 既往研究事例や本研究の目的との整合性から、環境動態モデルの大枠としては以下を選ぶこと が適切であると考えた。対象空間領域=東アジア、空間解像度=緯度・経度が 0.5 度よりも詳細、 環境媒体=当面は大気のみ。また、取り扱う水銀形態の種類および水銀の反応過程については、 排出インベントリーの推定において得られる水銀形態の種類を踏まえて決定することが妥当と考 えられた。東アジアや全球を対象とした水銀の大気・沈着モデルについては先行研究があるが、 モデル入力となる水銀大気排出量の地理分布については、日本を含む東アジアで特に情報が不足 しており、地理分解能を持ったインベントリー構築の重要性が確認された。 4.結論 石炭燃焼及び廃棄物燃焼を中心にした日本における第一次の水銀の大気排出インベントリーを 作成し、推定年間排出量を 9∼29 トンと見積った。また排ガス処理装置での代表的な水銀除去率 を統計的手法から求めた。既報の排出係数は幅が大きく、また実データが極めて不足しているこ とから Input 側での水銀含有量データベースを整備して水銀の最大排出量(排出ポテンシャル) を考慮した排出量推定を行っていく。水銀のサブスタンスフローについては、既存情報及び統計 データから 2000∼2003 年の推定を行った。製品に使用される水銀は 12∼17 トンの需要であり、 その 28∼46%はバックライトを含む蛍光管が占めている。在庫量が 100 トン程度と非常に多く、 これらは回収された水銀として数年おきに輸出されている。未知の発生源として火葬を対象とし た実態調査を行い、形態別水銀排出量を 51.8kg/年と推定した。未知の発生源及び排出係数の精度 向上に向け使用する連続モニタリング装置について装置性能比較、留意事項の整理及び高濃度廃 ガスへの対応を検討した。水銀の環境動態モデルについて、対象空間領域、空間解像度、環境媒 体及び対象とする水銀の形態等について大枠設計を行った。モデル入力となる水銀大気排出量の 地理分布については、日本を含む東アジアで特に情報が不足しており、地理分解能を持ったイン ベントリー構築が必要であると考えられる。 -126- 消化ガス再生利用を可能にする新規燃料電池電極材料の開発 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=佐々木 一成(九州大学) 共同研究者=白鳥 祐介(九州大学) 1. 研究目的 下水処理場などで発生する消化ガスなどを、リサイクルエネルギー資源として高効率に利用し発電 を可能にするための基盤技術となる燃料電池リアクターの高性能電極材料を創製することを目的とす る。 具体的には、消化ガスの種類や処理環境によって大きく変わる燃料物質の種類や組成、改質に必要 な添加物の量、燃料電池作動温度、ガス流量、燃料利用率、外部改質の有無など、燃料電池の電気化 学特性や発電特性を決める主要なパラメーターを系統的に変えて、最も高効率にこのリサイクルエネ ルギー資源の利用を可能とする新規電極材料を開発する。 2. 研究方法 消化ガスは主にメタンと二酸化炭素、水蒸気などから構成され、硫化水素などの燃料不純物成分も 含んでいる。そのために、これらの燃料種を直接または触媒改質器・脱硫器を介して供給した場合の 発電特性を系統的に調べ、特に高濃度のCO2とH2Oが共存している条件下でCH4の改質反応を進行させ るとともに高い電極活性・発電特性を有する(既存のNiサーメットを超える)新しい電極材料が、消 化ガス再生利用燃料電池発電の実現には不可欠である。よって、平成17年度は3年間のプロジェクトの 初年度として下記の研究を推進した。 多様な消化ガスから得られる燃料について、熱力学平衡計算を行い、固体酸化物形燃料電池作動に最 適な平衡論的作動条件を明らかにした。次に、高性能発電を実現するために、最先端のセラミックプ ロセシング手法を最大限利用して、電極材料作製条件の最適化を行い、実用レベルの燃料電池を作製 した。出発電極材料としてまず金属Niとスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)のサーメットNi- ScSZ を用いた。発電特性の目標として、燃料電池作動温度1000℃、電流密度0.2A/cm2で0.8V以上の高いセ ル電圧を、メタンを主成分とした(燃料不純物を含まない)模擬消化ガスで実現することを目指した。 電界放出形走査電子顕微鏡(FESEM)用のエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を導入し、電極材 料の微細構造や局所的な化学組成を評価し制御した。 これらの知見をべースに、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を作製し、消化ガスを模擬する燃料ガスを 供給した際の発電特性を、 消化ガスの種類で変わるCH4, CO2, H2O, 不純物ガスの組成比に関して測定評価 した。 3. 結果と考察 消化ガスの SOFC への直接供給はアノード上への炭素析出を引き起こし、 大幅な性能低下を招くが、 熱力学平衡計算により平衡論的に炭素析出を抑制出来る作動条件を明らかにした。具体的には、 CH4:CO2 = 6:4 の消化ガスの場合、この燃料ガスを 20 %加湿することによって、作動温度 1000 oC にお -127- いて炭素析出を抑制できる。次に、高性能発電を実現する微細構造の制御された多孔質アノード電極 を得るために、最先端のプロセッシング法を利用すると共に、電極ペーストの作製条件および焼成温 度等の最適化を行った。具体的には、三本ロールミルを用いて極めて均一なアノードペーストを作製 し、十分な多孔度および機械的自由度が得られる焼結温度を適用した。以上の準備段階を踏まえて、 高性能アノードの創製を試みた結果を以下にまとめる。 NiO と MgO の固溶体 Ni1-xMgxO は、有望な改質触媒の一つとして知られている 1-3)。NiO を高温で 還元すると、生成した Ni が容易に凝集し粗大な粒子となる 4)。一方、固溶体中の Ni2+は安定化されて おり、Ni2+の還元が NiO 中に比べて著しく遅くなる。そのため、高分散 Ni 微粒子を生成させることが 出来るだけでなく、MgO が残存するため、Ni の拡散および Ni 微粒子同士の接触が阻害され高い耐焼 結性を示す。さらに、MgO は塩基性酸化物でありイオン性も強いため、水蒸気および二酸化炭素との 相互作用が強く、改質が促進される 5)。本研究では、高性能電極材料の開発を目指し、Ni0.9Mg0.1O お よび Ni0.9Mg0.095Al0.005O を YSZ の 3 倍のイオン導電率を持つスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)粉 末と混合して従来の Ni-YSZ に代わる新規サーメットアノードを作製した。この新規アノード材料の 改質活性およびアノード過電圧を実験的に評価した結果、消化ガス直接供給時の電極触媒として Ni1-x-yMgxAlyO-ScSZ サーメットに将来性を見い出すことができた。 表 3-1 に、 蒸発乾固法によって調製した NiO ベース酸化物の、 還元前後の表面積測定の結果を示す。 各 NiO ベース酸化物を 900 oC で還元すると、析出する Ni の平均結晶子径はほぼ等しい(40-50 nm) が、NiO の場合、表面積が還元前に比べて 1 桁小さくなることが分かる。一方、Ni0.9Mg0.1O および Ni0.9Mg0.095Al0.005O の表面積は高温で還元後も大きく減少せず、耐焼結性を有していることが明らかと なった。これは、触媒内にそれぞれ (Ni,Mg)O および MgO が残留し、Ni 同士のコネクションおよび Ni の拡散を阻害しているためであると考えられる。 表 3-1: Summary of surface area measurements for the NiO-based oxides before and after reduction procedure*. before reduction Composition after reduction Mean size of BET area Mean size of BET area crystallite** / nm 2 /m g crystallite*** / nm / m2 g-1 100 1.2 47 0.2 NiO 51 1.8 50 0.1 Ni0.9Mg0.1O 36 3.6 42 3.1 Ni0.9Mg0.095Al0.005O 34 5.7 41 NiO (provided by Kanto Chem.) -1 4.8 o * The samples were exposed in the reducing atmosphere (100 % hydrogen) at 900 C for 2 h. ** Measured by XRD (200) peak broadening of NiO-based oxide *** Measured by XRD (111) peak broadening of Ni Ni0.9Mg0.1O および Ni0.9Mg0.095Al0.005O を蒸発乾固法によって調製した後、ScSZ 電解質粉末および溶 媒を加え、アノードペーストとした。これらのペーストを、厚さが 200 m の ScSZ 板上にスクリーン プリント法により塗布し、1250 oC で 3 時間焼成した。その後、高温で還元したサンプルのアノード断 面を FESEM で観察し、Ni ベース触媒と電解質が均一に分散した多孔質サーメットアノードが得られ -128- ていることを確認した。図 3-1 に FESEM により撮影したアノードの断面写真(反射電子像)を示す が、NiO を用いた場合((a))には、Ni が 1 m 程度の粗大な粒子として析出するのに対して、 Ni1-x-yMgxAlyO (写真は Ni0.9Mg0.095Al0.005O)の場合((b))は、Ni がコントラストの暗いマトリックス上 に、50 nm 程度の微粒子として高分散していることが分かる。EDX 分析によれば、この暗い部分は塩 基性およびイオン性の強い Mg を含んだ酸化物相であり、CO2 や H2O との相互作用が強く、改質反応 の促進に寄与すると考えられる。 ScSZ (a) NiO-ScSZ (b) Ni0.9Mg0.095Al0.005O-ScSZ ScSZ Ni Ni Ni 1 m ScSZ ScSZ 500 nm 図3-1: Ni particles observed in (a) NiO-ScSZ and (b) Ni0.9Mg0.095Al0.005O-ScSZ after exposing in the reducing atmosphere (100 % hydrogen) at 900 oC for 2 h. 60 Temp.: 1000 oC Fuel: humidified hydrogen (3 % H2O) 50 40 (a) 30 20 NiO-ScSZ Ni0.9Mg0.1O-ScSZ Ni0.9Mg0.095Al0.005O-ScSZ 10 0 0 100 200 300 400 500 Anodic overvoltage / mV Anodic overvoltage / mV 60 Temp.: 1000 oC Fuel: simulated digester gas (S/C = 0.25) 50 40 (b) 30 20 10 0 0 Current density / mA cm-2 NiO-ScSZ Ni0.9Mg0.1O-ScSZ Ni0.9Mg0.095Al0.005O-ScSZ 100 200 300 400 Current density / mA cm-2 500 図3-2: Anodic overvoltages of the different types of cermet anode measured at 1000 oC in supplying (a) humidified hydrogen (3% H2O) and (b) simulated digester gas (S/C = 0.25) as fuel gases. 図 3-2 に、(a)水素および(b)模擬消化ガス(48 % CH4, 32 % CO2, 20 % H2O)供給時の 1000 oC におけ るアノード過電圧の値を示す。水素供給時は、Mg あるいは Al の添加効果は現れず、すべてのアノー ドに対して 400 mA cm-2 において約 40 mV の過電圧が発生した。ところが、消化ガス供給時は添加効 果が現れ、 400 mA cm-2 において NiO-ScSZ、 Ni0.9Mg0.1O-ScSZ および Ni0.9Mg0.095Al0.005O-ScSZ 使用時に、 それぞれ 49、25 および 29 mV の過電圧が生じた。このことは、図 3-1-(b)に示した微細構造をとるこ とによって、内部改質が促進されて過電圧が低下したことを示している。実際に、改質活性の程度を 示す開回路電圧(OCV)も、NiO-ScSZ を用いた場合は 914 mV であったのに対して、Ni0.9Mg0.1O-ScSZ および Ni0.9Mg0.095Al0.005O-ScSZ 適用時には、約 20 mV 程度高い OCV を示した。 以上の試みの結果、1000 oC、電流密度 200 mA cm-2 において 0.8 V 以上の高いセル電圧を、メタン -129- を主成分とした模擬消化ガス(48 % CH4, 32 % CO2, 20 % H2O)で達成することができた。 4. 結論 リサイクルエネルギー資源の利用を可能とする新規電極材料の開発を目的として、複合酸化物 Ni0.9Mg0.1O および Ni0.9Mg0.095Al0.005O を調製し、これらを ScSZ と混合後サーメットアノードとして SOFC に適用した。 水素および模擬消化ガス (48 % CH4, 32 % CO2, 20 % H2O) をモデルガスとしてSOFC に供給し、これらのサーメットアノードの電気化学特性を評価したところ、水素供給時には NiO-ScSZ 使用時とほぼ等しいアノード過電圧を示したが、模擬消化ガス供給時には NiO-ScSZ 使用時に比べて 低い過電圧を示した。この過電圧の減少は、MgO を添加することによる Ni 触媒の耐焼結性の向上お よび塩基性酸化物が共存することによる改質活性の向上に起因すると考えられ、模擬消化ガス直接供 給時にも 1000 oC、電流密度 200 mA cm-2 において 0.8 V を大幅に越える高いセル電圧(885 mV)を達 成することができた。 参考文献 1) K. Tomishige, Y.-G. Chen, K. Fujimoto, J. Catal. 181 (1999) 91-103. 2) E. Ruckenstein, Y.H. Hu, Appl. Catal. A: General 183 (1999) 85-92. 3) V.R. Choudhary, A.M. Rajput, A.S. Mamman, J. Catal. 178 (1998) 576-585. 4) D. Simwonis, F. Tietz, D. Stöver, Solid State Ionics 132 (2000) 241-251. 5) T. Horiuchi, K. Sakuma, T. Fukui, Y. Kubo, T. Osaki, T. Mori, Appl. Catal. A: General 144 (1996) 111-120. -130- 再生製品に対する環境安全評価手法のシステム規格化に基づく 安全品質レベルの合理的設定手法に関する研究 研究期間(西暦)=2005−2007 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=大迫 政浩 (独立行政法人国立環境研究所) 共同研究者名=貴田 晶子 (独立行政法人国立環境研究所)、 遠藤 和人 (独立、行政法人国立 環境研究所)、酒井 伸一 (京都大学)、東條 安匡 (北海道大学大学院)、宮脇 健太郎 (明星大学)、肴倉 宏史 (秋田工業高等専門学校)、坂本 広美 (神奈 川県環境科学センター)、田野崎 隆雄 (太平洋セメント株式会社) 1.研究目的 再生製品の利用拡大が進まない大きな原因は安全性に対する不安感であり、安全性について科 学合理性をもって説明できる評価手法が確立、体系化されていないことによる。また、社会が要求す る安全品質レベルを設定するには、国際的にボーダレス化する循環フローの社会への様々な影響 を勘案しなければならない。そこで、量的に多い建設資材系の再生製品を対象とした土壌・地下水 への溶出リスクに焦点をあて、その性状や多様な利用形態による影響の違いを適切に評価でき、か つ長期的外部環境変化に伴う影響など、目的に応じた複数の試験方法を設計し、実試料を用いた 実験的検討等を行って妥当性を検証し、一連の試験群を体系的なシステム規格として提案する。ま た、一連の試験群から得られるデータを用いた土壌・地下水への影響予測手法を確立し、科学的な 不確実性と社会的影響を勘案した合理的な安全品質レベルの決定手法を構築する。 2.研究方法 2.1 土壌・地下水へのリスクに係る環境安全評価手法のシステム規格化 欧州における建設資材指令の考え方や欧州規格(CEN)等を参考にしながら、pH 依存性試験、タン クリーチング(拡散)試験等、適用の目的や役割に応じた試験群で構成される再生製品の土壌・地下水 への影響を評価する一連の試験システム規格の枠組みを設計する。さらに、内外のこれまでの知見を踏 まえて、それぞれの試験の条件等の基本設計を行う。 建設資材等に利用される再生製品(コンクリート製品、アスファルト製品、路盤材、再生プラスチック等) を例に、提案した試験群を実験的に適用し、試験条件の詳細設計を行う。確定した条件で試行的に 様々な試料に適用し、適宜改良する。また、複数の試験機関で照合試験を行い、精度確認及び一層の 精度向上の改良を行う。 さらに、様々な試料に適用を拡大し、データ蓄積を図り、内外の文献データを含めて収集整理し、デ ータベース化を図る。 2.2 利用形態に応じた土壌・地下水リスクのシミュレーション手法及び予測支援ツールの構築 再生製品毎に利用場を想定し、再生製品からの溶出現象を再現する発生源モデルと、土壌地下水中 での化学物質の移動現象を再現する移流分散モデルを構築する。また、実際のシミュレーションにおい -131- ては、両モデルを融合させた理論的アプローチと、実際の溶出試験結果を発生源からのインプットデー タとする経験的アプローチを適用可能にする。両モデル、アプローチの精度を高めるために、適宜必要 な実験的検討は行う。最終的に、モデルとデータベースとのリンケージを図り、主要な再生製品及び利用 場での長期的な安全性の情報提供及び新たな製品に対する環境安全予測の支援ツールを構築する。 2.3 他の環境負荷や経済性を考慮した安全品質要求レベルの合理的決定手法の検討 リスクベースの安全品質レベルの設定を中心にしながら、安全品質の要求レベルに基づく国内外循環 フローの変化、経済的影響、他の環境負荷への影響などを総合的に勘案し、政策決定過程での合理的 な安全品質レベルの設定を支援する枠組みを示す。 3.結果と考察 3−1 土壌・地下水へのリスクに係る環境安全評価手法のシステム規格化 欧州における CPD(建設資材指令:Construction Product Directive)の考え方や欧州規格(CEN) 等を参考に、試験群のコンセプトと基本的枠組みを設計した。溶出試験としては、pH 依存性試験、アル カリ側を考慮したアベイラビリティ試験、拡散溶出試験および連続バッチ試験を提案した。また、これまで にない新規の対象として、プラスチック中の有機化合物に対する溶出特性を把握する試験システム、酸 化雰囲気下での酸化反応の溶出に与える影響を確認するための試験システムに関する基礎的な検討を 行い、今後のシステム規格化戦略として図3−1−1を提案した。 再生材料の評価 長期溶出量 短期溶出濃度 例) JIS K 0058-1 (6) 粗砕振とう試験 水系溶出可能量試験 NEN 7371 を修正 酸性・アルカリ性の両条件で実施 汚染可能性は 土壌レベルと同等以下 Yes 試薬濃度決定用予備試験 利用制限無し No 中和容量試験 再生製品 (利用有姿や利用時配合) の評価 化学種を特定し理論モデルへ 0.25∼1 mm 粗砕試料 pH 依存性試験 CEN/TS 14429 (初期添加) prEN 14997 (連続調整) 既存ソフトウェア (Leach XS) を利用 または オリジナルモデル 汚染物質発生モデル 環境曝露影響 溶出フラックスから挙動予測 粒状物 (・成型体) 粒状物・成型体 上向流カラム試験 CEN/TS 14405 連続バッチ試験 (低液固比) ※一方を選択 (特に粒状物) 粒状物・成型体 連続バッチ試験 (低液固比) 比較評価 特定条件での曝露と 浸潤の繰り返し 評価対象汚染物質の溶出機構を判定 移動モデルへのパラメータ 促進係数 汚染物質移動モデル 利用有姿による安全品質管理試験 No 汚染可能性は極めて低く 制御可能 Yes 例) JIS K 0058-1 (5) 有姿撹拌試験 試料の同一性を保証 (有害項目に加え、pH・EC 他指標項目も測定) 利用不可 図3−1−1 再生製品の溶出試験に関するシステム規格の全体フレーム -132- アバイラビリティ試験 酸系列 アルカリ系列 ( N E N 7341ベ ー ス ) (図3−1−2参照)につ 試料 試料 いては、複数の分析機 関で照合試験を実施し て精度確認および試験 における課題を整理し 7以 下 のために異なった条件 蒸留水 液 固 比 50 液 固 比 50 10 分 後 pH ? 7以 上 10 分 後 pH ? 7以 下 7以 上 pH 調 整 せ ず pH 7 に 調 整 pH 7 に 調 整 pH 調 整 せ ず 3 時間撹拌 3 時間撹拌 3 時間撹拌 3 時間撹拌 た。また、その他の試験 については、条件設定 蒸留水 ろ過 ろ過 (残 渣 ) 検液 1 (残 渣 ) 検液 1 蒸留水 液 固 比 50 蒸留水 液 固 比 50 pH 4 に 調 整 pH 12 に 調 整 3 時間撹拌 3 時間撹拌 ろ過 ろ過 検液 2 検液 2 での試験を実施し、そ の影響の要因等の検討 とそれを踏まえた条件 の絞り込みを行った。プ 図3−1−2 規格化のために提案したアベイラビリティ試験の手順 ラスチックからの有機化 16 14 ンを対象に各種溶出試験を適用し、その結果を 12 Cr(VI) (mg/L) 合物溶出特性の検討においては、1,4-ジオキサ ビスフェノールAなどの化合物の溶出特性に関 する研究結果と比較検討して基礎的な知見を得 10 8 6 た。酸化雰囲気下での溶出試験では、昨今問 4 純水 雨水 2 題となった「フェロシルト」を試料として用い、乾 0 湿繰り返しの操作により酸化反応を促進させる 0 5 10 15 20 乾湿繰り返し回数 ための環境曝露促進試験を適用し、初期には観 察されなかった六価クロムの溶出の上昇を確認 図3−1−3 フェロシルトからの六価クロムの溶出濃度変化 した(図3−1−3参照)。この結果は、初期時点 の溶出能の確認判断だけでは、環境影響の評価としては不十分であることを表している。 3.2 利用形態に応じた土壌・地下水リスクのシミュレーション手法及び予測支援ツールの構築 ュレーションモデルについては、再生製品 の利用場の環境、考慮すべき現象および パラメータの整理を行い、より理論的なアプ ローチに基づく発生源からのフラックスの推 定の可能とするモデル(発生源モデル)と、 溶出試験により得られるデータを入力情報 Concentration at POC1 (mg/L) 土壌・地下水環境への影響に関するシミ 0.005 POC1 0.004 0.003 Slug MMM Ash 0.002 0.001 0 として用い、発生源からのフラックスを経験 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 days 的に土壌・地下水中移流分散モデルに与 えたプロトタイプ影響予測手法を設計した。 図3−2−1 シミュレーションモデルに基づく地下 特に経験的アプローチに基づくモデル検 水濃度の予測結果の一例 討においては、先の標準化のために開発し -133- た溶出試験をスラグや焼却灰試料について適用したデータを基に、比較的単純な環境場を想定したシミ ュレーションを行い、下流地点での有害物質濃度を推定した(図3−2−1参照)。 3.3 他の環境負荷や経済性を考慮した安全品質要求レベルの合理的決定手法の検討 合理的な安全品質レベルの設定手法の検討においては、焼却残渣、溶融スラグを対象として、利用 形態、生産・需要動向等を基にした技術シナリオ設定と、安全品質の要求レベルに応じたシナリオ分析 を行い、循環フローの変化を基にした LCA/LCC 分析を行った。土木材料1トンとして、天然材料とこれら のスラグ、焼却灰の再生材料を比較した場合、天然材料に比較してスラグ材料はエネルギー消費、二酸 化炭素排出、コスト共に相当程度高いことがわかった(図3−3−1参照)。この結果と、上述の溶出試験 や環境影響評価手法による知見等を総合的に勘案して、合理的な安全品質レベルを設定していく必要 がある。 800 焼却処理処分(20t分) 焼却灰生産 スラグ生産 天然砂利生産 ごみ質1600kcal/kg 600 400 200 0 1,000 二酸化炭素排出量 ( kg-C/t) 二酸化炭素排出量 ( kg-C/t) 1,000 800 焼却 灰利 用 ス ラグ 利 用 ( 灰溶 融 ) ス ラグ利 用 (ガ ス化 溶 融) 焼却灰生産 スラグ生産 天然砂利生産 ごみ質2200kcal/kg 600 400 200 0 天然 砂 利 用 (+焼 却 灰処 理) 焼却処理処分(20t分) 天然砂利用 (+焼却灰処理) 焼却灰利用 スラグ利用 (灰溶融) スラグ利用 (ガス化溶融) 図3−3−1 土木資材1トン当たりの二酸化炭素排出量の推定結果 4.結論 本研究では、再生製品の土壌・地下水への影響を予測するための溶出試験方法のシステム規格化、 溶出試験データ等を用いた環境影響のシミュレーションモデルの構築、及びそれらを踏まえた再生製品 の合理的な環境安全品質レベルの設定手法に提案を目的に検討を行った。本年度は、3年間の研究期 間の初年度として、以下のような結論を得た。 (1)欧州における建設資材令の考え方や欧州規格(CEN)等を参考に、試験群のコンセプトと基本的枠 組みを設計し、いくつかの試験方法、条件を提案し、一部照合試験を行い十分な精度があることを確認 した。また、新規にプラスチック中の有機化合物に対する溶出特性を把握する試験システム、酸化雰囲 気下での酸化反応の溶出に与える影響を確認するための試験システムに関する基礎的な知見を得た。 (2)再生製品の利用場の環境、考慮すべき現象およびパラメータの整理を行い、より理論的なアプロー チに基づく発生源からのフラックスの推定を可能とするモデル(発生源モデル)と、溶出試験により得られ るデータを入力情報として用い、発生源からのフラックスを経験的に土壌・地下水中移流分散モデルに 与えるモデルについて、プロトタイプ影響予測手法を設計、提案し、先の溶出試験データを用いた試算 結果を示した。 (3)焼却残渣、溶融スラグを対象として、利用形態、生産・需要動向等を基にした技術シナリオ設定と、 安全品質の要求レベルに応じたシナリオ分析を行い、2)の環境影響予測結果と共に、循環フローの変 化を基にした LCA/LCC 分析結果を示した。 -134- 容器包装の分別収集・処理に係る拡大生産者責任の制度化に関する研究 研究期間(西暦)=2004-2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=安田 八十五(関東学院大学) 共同研究者=田中信壽(北海道大学)、松藤敏彦(北海道大学)、劉庭秀(東北大学)、 福田哲也(関東学院大学) 、栗山浩一(早稲田大学) 1.研究目的 容器包装廃棄物のリサイクルを取り巻く環境が大きく変化しているなか、容器包装のリサイク ルに関する研究もいくつかなされている。しかしながら、自治体の分別収集・処理費用は算出方 法が自治体毎に異なっており、容器包装リサイクル研究会(代表=安田八十五)および全国都市 清掃会議・びん再使用ネットワーク等では自治体の分別収集・処理費用の調査を実施してきたが、 標準偏差が大きいことやその他プラスチックの費用が未調査などの課題を抱えている。本研究で は、平成 16 年度は横浜市等の6自治体の分別収集・処理費用を綿密に調査し、分別収集・処理費 用積算マニュアルを作成する。平成 17 年度にはこの積算マニュアルを使用して横須賀市等さらに 7 自治体に調査を追加・実施し、類型別費用実態の標準を算出する。さらに、平成 16 年度に行っ たフランス・ドイツの拡大生産者責任制度(Extended Producer Responsibility、以下 EPR とい う)に加えて、平成 17 年度は、韓国における EPR の普及割合や効果等を調べる。以上から日本型 EPR の制度化に関する政策提言を行う。 2.研究方法 (1)自治体における容器包装の分別収集・処理費用の実態調査とその分析: 多くの自治体では収集費用の総額は把握されているが、ごみと資源物の按分、さらには容器・ 包装の品目別の按分ができていない。容器包装品目別『かさ比重』(または、『逆かさ密度』= 単位重量あたりの容積)を実測し、容器包装の収集費用を容積ベースで算出できるようにする。 『かさ比重』に関しては、平成 16 年度は冬季の調査を 6 自治体で行ったが、平成 17 年度は横 浜市で夏期調査を実施した。平成 16 年度は6自治体(大都市4、中都市2)を対象としてリサ イクル費用積算マニュアルを作成したが、平成 17 年度は横須賀市等さらに 7 自治体で調査を追 加・実施し、類型別費用実態の標準モデルを確立した。 (2)拡大生産者責任の制度化に関する研究(仏独および韓国の先行事例の現地調査): 日本の容器包装リサイクル法のモデルとなった欧米諸国、ことにフランスとドイツにおける 拡大生産者責任制度(EPR)さらに韓国の現地実態調査を行い、容器包装リサイクルに関する最 新の情報やデータを収集・分析し、EPR の日本への適用可能性を検討する。 (3)拡大生産者責任(EPR)を導入した場合における容器包装リサイクル費用配分の政策シミュ レーションと政策提言: -135- 3.結果と考察 (1)容器包装の分別収集・処理費用の実態調査とその分析結果: 横浜市および横須賀市等の 13 自治体に対する分別収集・処理費用の実態に関するアンケート 調査・ヒヤリング調査および冬季および夏期における『かさ比重』 (逆かさ密度)測定調査など を実施し、以下の結果を得た。 ① 13 自治体に対する分別収集・処理費用の実態に関する詳細なアンケート調査を実施し、 分別収集費用および中間処理費用の詳細かつ正確なデータを重量ベースで測定した。 ② 詳細な『かさ比重』 (逆かさ密度)測定調査を行い、容器包装の素材タイプごとの『かさ 比重』 (逆かさ密度)を6自治体で冬季に実測出来た。さらに横浜市では、夏期の『かさ 比重』 (逆かさ密度)測定調査を実施した。冬夏の相違が観測できた。 ③ 『逆かさ密度』を用いて、分別収集費用および中間処理費用の詳細かつ正確なデータを 容積ベースに換算することに成功し、各自治体における容器包装の素材タイプごとのリ サイクル費用(容積ベース)を測定した。飲料容器 500ml に換算した 1 本あたりのリサ イクル費用を素材別・自治体別に測定した。これは、日本で始めての研究成果である。 13 自治体における容器包装リサイクル費用の測定結果を本報告書の表に示す。測定結果 から見ると、容器包装リサイクル費用は、自治体間でかなりばらつきがある。 ことに、重量ベースでは、素材別・自治体別にかなりのばらつきがあるが、容積ベース では、アルミ缶を除いて、500ml 換算でほぼ 5 円前後のリサイクル費用を自治体は負担 していることが解明された。 (2)独仏および韓国における海外現地調査によるリサイクル費用の負担構造の解明: 日本では、ドイツDSD方式に関しては良く知られているが、フランスのEE方式は、その 詳細が不明なことが多かった。そこで、今回は特にフランスEE方式の詳細を明らかにした。 ことに、日本では、資源物の収集費用を 100%EE社が負担しているとの誤解があり、今回の 調査でフランスにおける資源物の収集費用の正確な配分構造について実態が解明された。フラ ンス全体では、自治体が負担する収集費用を 100 とすると、そのうち 50%を EE 社が補助してい る。つまり、企業と自治体で半分半分の負担になっているということになる。自治体レベルに おけるその詳細も明らかにされた。独仏および日本における容器包装リサイクルの仕組みと費 用負担の国際比較を行った表が、本報告書の表である。ドイツは、自治体の責任が無く費用負 担もほぼゼロで、製造業者が基本的責任を有し、費用負担もほぼ 100%企業が負担しており、 EPR がほぼ実現されているといえる。これに対して、フランスは基本的に自治体の責任だが、 費用負担は、収集費用は50%を製造業者が負担しており、総費用の約65%を製造業者が負 担しているということになる。フランスは、EPR が半分以上実現されているといえる。この独 仏に比べると、日本では、収集費用は100%自治体負担であり、総費用で見ると、自治体が 70%から80%負担しており、製造業者の負担は20%から30%であり、製造業者の負担 割合が極めて小さいことが特徴である。韓国は、独仏を参考に EPR を導入し、大きな成果を上 げていることが明らかになった。これに対して日本では、EPR はほとんど実現されてないとい える。 (3)拡大生産者責任(EPR)を導入した場合における容器包装リサイクル費用配分の政策シミュ -136- レーションと政策提言: 日本での容器包装廃棄物に係わる費用負担割合を今後検討していくにあたり、2003 年度に要 した費用を元にシミュレーションしてみた結果が本報告書の表である。現状と様々な代替的ケ ースの政策シミュレーション結果が、金額表示で明らかにされた。現状は、自治体負担が約 3000 億円、事業者負担が約 400 億円の合計約 3400 億円と推定されているが、拡大生産者責任(EPR) を導入した場合における容器包装リサイクル費用配分の政策シミュレーションを行った結果、 各ケースによって、費用負担割合が大幅に変わることが明らかになった。 4.結論 ①容器包装に対する自治体のリサイクル費用を「逆かさ密度」を用いて容積ベースで測定する ことに日本で初めて成功した。これまで用いられていた重量ベースの測定法では、正確な費用が 評価できないことが明らかにされた。②仏独及び韓国における容器包装リサイクル政策に関する 現地実態調査により、各国における EPR 導入の実態が明らかになった。ドイツは、EPR がほぼ1 00%実現されており、製造者責任と費用負担が実行されているが、フランスは、収集費用の約 50%を製造者が負担しており、全体では約65%程度、EPR が実行されていることが明らかに された。これに対して、日本では、約20%以下しか EPR が実現されていないことが明らかにな った。③拡大生産者責任(EPR)を導入した場合における容器包装リサイクル費用配分の政策シミ ュレーションを行った結果、環境省等政府審議会の答申案は、事業者負担が減少し、消費者・住 民負担および自治体負担が増大するので、EPR の実現とは程遠いことが明らかにされた。 -137- 有害重金属を含む海産物廃棄物の包括的再資源化 研究期間(西暦)=2004−2006 研究年度(西暦)=2005 研究代表者=東 順一(京都大学農学研究科) 共同研究者=金山 裕亮(㈱サンアクティス・本社研究室) 坂本 正弘(京都大学農学研究科) 三津原久志(㈱サンアクティス・芳養研究所) 1.研究目的 カドミウム、亜鉛、ヒ素等の有害重金属を多量に含むホタテ中腸腺(ウロ) 、イカ内臓(ゴロ) 、 アコヤ貝、ヒトデ、褐藻等の多様な海産物廃棄物を出所・起源を問わずウメエキスやレモン果汁 等の天然物やその成分との加熱による重金属の脱着(天然物による有害天然物の浄化)と新規に 見出した樹脂を用いた選択的重金属除去の組合せで再資源化する包括的な環境配慮型・低コスト な海産物産業廃棄物の再資源化システムを構築する。樹脂はリサイクル利用し、有害重金属を除 去した海産物は食品、調味液等の食品添加物、釣り餌、飼料、肥料等としての再資源化を実現す る。前年度はホタテウロ、アコヤ貝等の脂溶成分の少ない海産物廃棄物を対象とした。本年度は イカゴロや魚の内蔵等脂溶成分の多い海産物廃棄物に対して有害無機重金属の脱着法(天然物に よる有害天然物の浄化法)を完成させるとともに、有害無機重金属を除去したエキスと残渣の再 資源化をはかる。 2.研究方法 ホタテ貝のウロ、イカゴロ、アコヤ貝、褐藻等で代表される有害無機金属元素を含む海産物産 業廃棄物の包括的な脱有害無機金属化と再資源化を環境配慮型・低コストで実現する研究を行う。 その鍵は、①腐敗・変性を防いだ迅速な処理、②脂溶性成分の分離、③有害重金属の除去と回収、 ④海産物特有に存在する食塩等の塩分の調整、⑤脱有害無機金属海産物の用途開発にある。前年 度では、ホタテ貝のウロ、アコヤ貝の軟体部等についてウメエキス、濃縮レモン果汁等の天然物 やその成分を含む液中でボイル後有害無機金属を脱着する方法(天然物による有害天然物の浄化 法)(特許出願中)を開発し、有害重金属の除去と再資源化を実施した。本年度では、イカゴロ、 魚の内臓等の腐敗・変性が迅速に進行し、脂溶成分含有量の高い海産物産業廃棄物を対象として、 まず油脂成分の分離・濃縮を行った後、前年度に開発したウメエキス、濃縮レモン果汁等の天然 物やその成分を用いる天然物による有害天然物の浄化法を発展させて有害無機金属を脱着する。 同時に、水でボイルすることにより有害無機金属の一部を含むエキス成分を抽出し、有害無機金 属のみを吸着する樹脂により除去するシステムを研究する。研究の過程で脱有害重金属化した海 産物とボイル液の再資源化の鍵は海産物特有の良質な香りの利用と臭気の除去問題が重要である ことが判明したので、 匂いかぎ GC システムを導入し、香りを残し臭気を除去する条件を検討する。 カラムを通過した有害重金属を含まない液を濃縮し、調味液等の食品添加物としての用途や、脱 有害無機金属化したボイル残渣の食品への再資源化を検討する。油性成分中から DHA や EPH 等の -138- 有用脂質の分離と利用も検討する。塩分調整研究は電気透析により行う。 3.結果と考察 有害重金属を多量に含む動物性海産物廃棄物の再資源化は脂溶性成分の少ないホタテ貝やアコ ヤ貝の軟体部と脂溶性成分の多いイカのゴロや魚の内臓に分けて検討する必要がある。それは、 後者を取扱う際にオイル成分が中から染み出してきてベタベタの状態になり、均一な脱重金属処 理が不可能となるからである。従って、分析に用いるために必要な乾燥物を得るためには、あら かじめ脱脂が必要不可欠であると結論した。この観点から、種々のイカのゴロと魚の内臓につい て脱脂後脱有害重金属化をはかった。調査の結果、 イカの漁獲高は北海道では函館地区が中心で、 函館市の魚がイカとなっており、平成 14∼16 年度においては年間 27,915∼5,617 トンであること がわかった。そのなかでもスルメイカの占める割合が高く約 80%となっている。本年度の研究で は、スルメイカ、ケンサキイカ、ヤリイカ及びアオリイカのゴロ、アジの内臓及びアンコウの肝 について、慎重に他の組織から分離し、有害重金属の含量を測定するとともに(表3−1)、脱脂 と有害重金属の可溶化・除去による無害化を実施した。イカの種類によりゴロの含量に大きな差 が認められ、スルメイカではイカ全重量の 10%以上を占めていたが、ケンサキイカやヤリイカで は 2%前後であった。脂溶性の成分はヘキサンとアセトンを連続して用いることにより可溶化す ることができ、その濃縮にはクーリングアスピレータとロータリーエバポレーターが有効であっ た。アジの内臓を除いてアセトンに可溶な成分含量の方がヘキサン可溶成分含量よりも高かった。 また、抽出物中に DHA や EPH が含まれていることを HPLC により確認でき、分取の可能性が示唆さ れた。こうして粉末化したイカゴロは亜鉛含量が 113∼416ppm と最も高く、次いでカドミウム含 量が高く(73∼155ppm) 、ヒ素含量はこれらの重金属に比較すると低かった(表3−2)。これら のイカゴロ粉末をウメエキスやレモン果汁等の天然物やその成分等との加熱による重金属の脱着 から回収実験を行った結果、クエン酸を含む有機酸の重金属脱着効果が高く、1%相当のクエン 酸を含むウメエキス、レモン果汁中で 80℃、10 分の加熱を3回繰返すことにより、残渣中のカド ミウムの含有量をいずれも基準値(0.1mg/kg)以下、亜鉛の場合においても基準値(5.0mg/kg) 以下とすることができた(表3−3)。イカゴロを 80℃でボイルし、水可溶性のエキス溶液を調 製・除去した場合においても、残渣イカゴロから重金属の脱着を同様に達成することができた。 可溶化した重金属を含むボイルエキス及びクエン酸溶液からの重金属の除去は中和をすることな く樹脂吸着・回収により通過液中の濃度を上記の基準値以下とすることができた(表4) 。また、 脱着したカドミウムを含む酸性の液を中和すると大部分のカドミウムや亜鉛を沈殿として回収す ることができ、残存液中の濃度を 1.0mg/L 以下にすることができるので、使用する樹脂の負荷を 低減することが可能となり、再生・処理コストの軽減が期待できた。重金属を除去した液の塩分 の調整は電気透析により同伴水の原理を利用した濃縮とあわせて実施することが可能であった。 イカゴロのみならず、魚の内臓やキモについても同様に天然物による有害天然物の浄化法が適用 できることがわかった。さらに、マイクロ波加熱により海産物特有の香りを分取し、匂いかぎ GC システムで分析することが可能となり(図3−1) 、製品化の基礎的評価に利用できることを見出 した。現在、浄化物の魚醤油等への利用を検討している。 -139- 表3−1. イカゴロ、内臓、キモの重量と脂溶性成分の含量(ICP による分析:3個平均値) イカの種類 ゴロの重量 (g)/匹 ゴロの重 量% (対生 イカ) ヘキサン抽 出物量% (対生ゴロ) スルメイカ 35.57 10.41 7.39 ケンサキイカ 2.43 1.95 ヤリイカ 4.13 アオリイカ 内臓・キモ の種類 脂溶性分量 % (対生ゴロ) 脱脂ゴロの 重量% (対生ゴロ) 脱脂ゴロの 重量% (対生ゴロ) 14.41 21.80 7.00 19.02 0.78 5.92 6.70 9.53 15.59 2.09 3.91 9.06 12.97 9.04 16.63 55.59 - - - 43.25 5.30 22.61 内臓・キモ の重量 (g)/匹 内臓・キモ の重量% (対生魚) ヘキサン抽 出物量% (対生内臓・ キモ) アセトン抽 出物量% (対生内 臓・キモ) 脂溶性成分 の重量% (対生内 臓・キモ) 脱脂物の重 量% (対生 内臓・キモ) 脱脂物の重 量% (対生 内臓・キモ) アジ内臓 19.22 4.0 7.55 4.15 11.70 15.53 9.54 アンコウキモ 75.34 - 9.24 28.58 37.82 4.36 14.07 表3−2. アセトン抽 出物量% (対生ゴロ) 脱脂イカゴロ・内臓・キ酸の亜鉛、ヒ素、カドミウム含量(ppm) イカの種類 亜鉛含量(ppm) カドミウム含量(ppm) スルメイカ 4.83 225.39 155.44 ケンサキイカ 34.05 113.59 73.28 ヤリイカ 19.84 160.69 98.69 アオリイカ 4.70 416.14 126.37 亜鉛含量(ppm) カドミウム含量(ppm) 内臓・キモの種類 ヒ素含量(ppm) ヒ素含量(ppm) アジ内臓 0.01 178.96 1.22 アンコウキモ 3.93 132.52 0.33 表 3−3.脱脂イカゴロ・内臓・キモの1%クエン酸を含むレモン果汁処理(80℃、10 分)を 3 回行った残渣の亜鉛、ヒ素、カドミウム含量(ppm) イカの種類 ヒ素含量(ppm) 亜鉛含量(ppm) カドミウム含量(ppm) スルメイカ <0.01 0.92 <0.01 ケンサキイカ <0.01 1.52 <0.01 ヤリイカ <0.01 0.62 <0.01 アオリイカ <0.01 1.32 <0.01 内臓・キモの種類 ヒ素含量(ppm) 亜鉛含量(ppm) カドミウム含量(ppm) アジ <0.01 3.45 <0.01 アンコウ <0.01 1.11 <0.01 -140- 表3−4.スルメイカゴロボイル液及び1%クエン酸相当レモンエキスで溶脱した重金属 の樹脂カラム(ピュロライトS930)による除去 スルメイカゴロよりレモンエキスで 溶脱した液の浄化 スルメイカゴロボイル液の浄化 イカの種類 ヒ素含量 (ppm) 亜鉛含量 (ppm) カドミウム 含量(ppm) スルメイカ <0.01 1.02 <0.01 ケンサキイカ <0.01 1.63 ヤリイカ <0.01 アオリイカ 内臓・キモの 種類 ヒ素含量 (ppm) 亜鉛含量 (ppm) カドミウム含 量(ppm) <0.01 2.01 <0.01 <0.01 <0.01 2.11 <0.01 0.81 <0.01 <0.01 1.25 <0.01 <0.01 1.01 <0.01 <0.01 1.52 <0.01 ヒ素含量 (ppm) 亜鉛含量 (ppm) カドミウム 含量(ppm) ヒ素含量 (ppm) 亜鉛含量 (ppm) カドミウム含 量(ppm) アジ <0.01 2.85 <0.01 <0.01 2.46 <0.01 アンコウ <0.01 0.52 <0.01 <0.01 0.32 <0.01 2.00 μV (x100,000) 1.75 1.50 1.25 1.00 0.75 0.50 0.25 0.00 2.5 8.0 μV 5.0 7.5 10.0 12.5 15.0 17.5 min (x100,000) 7.0 やや美味しい香り 6.0 5.0 生臭い香り 4.0 3.0 魚の香り 2.0 1.0 0.0 2.5 5.0 7.5 10.0 12.5 15.0 17.5 min 図3−1. アジ内臓ボイル液から回収した香気成分の匂い嗅ぎガスクロマトグラフィー分析 (上 はFIDによる全成分のガスクロマトグラム;下はSunifferによるアロマクロマトグラム) 4.結論 本研究により、脂溶性の物質に富むイカゴロ、魚の内臓やキモについて、脱脂による有用脂質 の分取、天然物を利用した脱脂試料からの重金属の溶脱と樹脂による除去・回収に成功した。こ のことにより、前年度成功した脂溶性成分の少ないホタテ貝軟体部・ウロ及びアコヤ貝軟体部の 浄化を考慮すると、本研究によって有害重金属を含む多様な海産物廃棄物の包括的再資源化が現 実のものとなりつつあることが言える。本研究で用いている天然物は人体に無害で食品添加物と して認定されている有機酸や有機酸を含む植物性の果汁、エキスやその成分であるので、処理液 を食品素材エキスとして再資源化が可能である利点があり、環境にやさしい。今後、回収した有 害重金属の最終処理についても検討する必要があろう。 -141- 地域資源循環に係る環境会計表の作成とその適用 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=井村秀文(名古屋大学大学院) 共同研究者名=奥田隆明・白川博章・田畑智博(名古屋大学大学院)、森口祐一・田崎智宏・ 橋本征二(独立行政法人国立環境研究所)、松藤敏彦(北海道大学大学院)、 二渡了・松本亨(北九州市立大学大学院)、中山裕文(九州大学大学院) 1.研究目的 循環型社会形成を目指した取り組みが活発になるにつれ、自治体の一般廃棄物処理事業やその 関連施策の効果や効率に対する関心が高まっている。最初の単純、明快な質問は、ごみ1トンの 処理に要する費用はいくらか、それは果たして合理的かというものである。市町村の予算資料を 基にこの質問に一応答えることはできるが、そこにはさまざまな問題がある。第一の問題は、現 行の自治体会計システムに起因する情報の不備である。たとえば、人件費、施設の運転費・維持 管理費、材料費等の細目が不明なことが多く、予算と実際の使途が異なることもある。また、現 在の単年度会計システムでは、過去から整備された施設・備品等のストックの量、機能等がただ ちには把握できない。第二の問題は、より総合的な費用と便益に関するデータの不備と分析評価 手法の未確立である。予算データは、処理事業に要する直接的な経費を示すだけであり、事業の 波及効果、たとえば、環境保全効果、不法投棄や汚染リスクの回避効果、最終処分場跡地利用の 便益、環境負債等は不明である。また、事業者の処理責任と自治体業務の分担が費用面から見て 適切かといった問題もある。第三の問題は、マテリアルフローの終端での廃棄物処理事業を循環 型社会形成という大きな枠組みの中で位置づけた場合の評価視点・手法の未確立である。現在、 多くの市町村において品目別の収集・処分量、資源化量等のデータが発表はされているものの、 循環型社会形成という政策目的に照らして見た場合に、それらの値がどのような意味を持つのか の分析はほとんど行われていない。 こうした状況の下、最近いくつかの自治体で一般廃棄物処理事業に関連した物質フローの把握、 CO2 排出量の算定、環境負荷の LCA 等が試みられているが、環境会計としての体系的な分析枠組み が完成しておらず、費用データ等の未整備、データの算出根拠の不明確、データ相互間の整合性 不足といった問題がある。また、資源循環の上流から下流までの全体を分析・評価するためのシ ステム化が不備で、循環型社会構築という政策目標に応じた事業評価を体系的に行うには不完全 である。そこで、本研究では、地域の資源循環と自治体の一般廃棄物処理事業に焦点を当てた環 境会計の確立というコンセプトによって、整備すべきデータ項目を整理し、地域の物質フローと それに付随した金銭フローを体系的に表現できるような環境会計表の体系を開発するとともに、 具体的な市を対象に実際にデータを整備し、その実行可能性と有効性を評価する。 -142- 2.研究方法 研究は大きく次の分野に分けて実施した。 ① 地域資源循環に係る環境会計表の運用上の問題点評価と改善(名古屋大学) ② マクロ・メゾ・ミクロ(国、地域、事業体の各レベル)の環境会計の構築((独)国立環境研 究所) ③ 名古屋市、北九州市、北九州エコタウンのケーススタディ(名古屋大学、北九州市立大学) ④ 自治体における廃棄物処理コスト推定(北海道大学) ⑤ 一般廃棄物最終処分場の環境会計の基本的な枠組みの構築(九州大学) ⑥ 一般廃棄物処理事業が創出する非市場価値のサービスの仮想価値評価(名古屋大学) いずれの研究も、国、自治体等の様々な統計データの収集と解析、自治体を対象としたケース スタディが中心であるが、研究メンバー全員が集まる研究会において相互の密接な情報交換を行 い、統一的、体系的な概念の整理、整合的な分析枠組みの構築を目指した。 3.結果と考察 地域資源循環に係る環境会計表の運用上の問題点評価と改善では、昨年度から引き続き環境会 計表の枠組みづくり、概念整理を行った。特に、マクロ・メゾ・ミクロの各レベルでの環境会計 の枠組みを整合的に取り纏めることが可能な、環境会計の概念を提示した。また、自治体で本環 境会計を運用する際の問題点を提示すると共に、その改善方法を論じた。 マクロ・メゾ環境会計の構築では、会計表の一般的な枠組みを試作するとともに、事例として 容器包装のリサイクルに適用した。会計表の枠組みは、国連の環境経済統合勘定と物量産業連関 表をふまえ、廃棄物処理・リサイクルに関連する関係主体間の物質フローと金銭フローの記述で きるようにした。これにより、費用負担上の課題や自治体の内外の区別、リサイクルの適用によ る資源消費、環境負荷の削減効果を包括的に表現できた。容器包装のリサイクルへの適用では、 容器包装のライフサイクルに沿った物質フローの追跡、関係主体間での物質・金銭フローの表現 が可能なように会計表を試作した。ミクロ環境会計の構築では、企業環境会計や廃棄物会計での 議論をレビューし、自治体の廃棄物処理事業を対象とした環境会計の枠組み設計に当たって重要 と考えられる点を整理した。また、これをベースに、自治体の廃棄物処理事業の費用効果や効率 性を検討できる環境会計の枠組みを設計し、報告のフォーマットを提案した。フォーマットは環 境ストック計算書、環境フロー計算書、環境財務計算書の 3 種類より構成され、自治体ごとの実 施可能性の違いを考慮し、更に 3 種類のフォーマットを示した。加えて、これまで適切に勘定さ れていなかった廃棄物処理施設の全ライフサイクルに渡るコスト情報整理のため、関連情報を収 集・整理した。 名古屋市のケーススタディでは、16 年度に引き続き一般廃棄物処理事業の分析を行った。2004 年度における工程全体の処理原価のうち、約 77%が処理費、約 23%が減価償却費に関する費用で あった。また、収集工程では処理費の割合が約 95%、焼却工程では減価償却費の割合が約 60%で あった。北九州市のケーススタディでは、焼却工場等を対象として廃棄物環境会計(環境ストック 計算書、環境フロー計算書)を作成した。ここでは、複式簿記で使用されるような仕訳帳の作成を 試みた。これにより、取引内容が明確に理解できるようになり、廃棄物事業の財政状況、事業成 -143- 績を把握できた。北九州エコタウンのケーススタディでは、16 年度に引き続き立地企業にアンケ ート及びヒアリング調査を行い、物質フローを把握した。これにより、各部門の熱回収を含む再 資源化率は、北九州市内・市外全域で金属系 99.5%、バイオマス系 91.0%、無機物系 96.2%、化石 燃料系 84.2%であることがわかった。また、物質・エネルギー・環境負荷等の関係を、企業単位 から国際資源循環の単位まで表現するマテリアルフロー会計にまとめ、エコタウンの存在が北九 州市の資源循環に及ぼした効果を分析した。 自治体における廃棄物処理コストの推定では、札幌市を対象として処理と収集におけるマテリ アルフローとコストを調査し、ごみ種ごとのコスト推定方法を検討した。処理については耐用年 数の設定、残渣処理の計算方法により数値が異なるが、その影響は小さい。しかし収集に関して は、ごみ種別のデータ整備がなされていないため、収集作業ごとのデータをもとに収集車内かさ 密度を推定し、のべ収集回数、必要車両台数等を計算した。札幌市では収集業務全体のコストを 重量配分しているため、ごみ種によらず重量あたり収集コストは一定としているが、資源ごみ、 プラスチックは可燃ごみの 5 倍のコストがかかっていることを示した。更にごみごとに収集事務 所が異なる岡山市のデータを用いて推定精度を確認し、複数自治体に対象を広げて自治体間の比 較を行った。 最終処分場の環境会計では、一般廃棄物最終処分場の環境会計の基本的な枠組みを構築した。 最終処分事業を、①廃棄物の適正な埋立処分のための事業、②浸出水の適正処理のための事業、 ③埋立ガスの削減のための事業、④廃棄物の安全な貯留のための事業の4つに分類し、それぞれ の内容に応じて事業のコストと効果を整理した。F市におけるケーススタディの結果、事業①は 2,000∼7,000 千円/t、事業②は 600∼1,200 円/m3、事業③は約 1,500 円/ kg-CO2 と算出された。 また、事業④においては、貯留ごみ量が少ない埋立開始直後には、1,600 円/t 程度のコストかか るが、貯留ごみ量が多くなる埋立完了直前には、200 円/t 程度までコストが下がることを示した。 一般廃棄物処理事業が創出する非市場価値のサービスの仮想価値評価(名古屋大学)では、名古 屋市一般廃棄物処理事業が創出する非市場価値のサービスの支払い意志額を、市民へのアンケー ト調査により評価した。アンケートの調査項目は、埋立地延命化、健康リスク、地球温暖化、分 別数とし、これらを属性としてコンジョイント分析を行った。その結果、分別数の増加による効 用の低下がみられたが、他の属性は 1 単位当たりの効用の増加がみられた。また、以上を加味し た支払い意思額は、約 20,760 円/年/人と試算された。 4.結論 マクロ、メゾ、ミクロの各レベルでの整合性を考慮した、環境会計の枠組みについてその概念 を提示した。また、各レベルでの環境会計の枠組みを改善するとともに、具体的な事例を通して、 環境会計の利用法について論じた。今後は事業のライフサイクルにおける詳細なコスト分析、追 加情報の環境会計への記述を通じて、自治体で運用可能な環境会計の体系を構築していくことと したい。 -144- 実団地における資源循環型ライフスタイル普及のための 環境コミュニケーションとその効果に関する実証的研究 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=早瀬光司(広島大学) 共同研究者名=西尾チヅル(筑波大学)、小野 司(積水化学工業(株))、安井 至(国連大学) 1. 研究目的 生活者のごみ減量行動およびその他の環境配慮行動規定要因モデルを提示し、その構造を解明 すると共に、それを普及・浸透させるための環境コミュニケーション等社会技術の開発を行うこ とを目的とする。また、異なる生活者を対象に「情報提供型」 「生活者参加型」といった異なる環 境コミュニケーションをそれぞれ継続的に実施することによって、ごみ減量行動の時系列的変化 と生活者の環境意識の変容を捉えると共に、他の環境配慮行動との関係や、その限界やリバウン ドを克服するための具体的な環境コミュニケーションの方法や施策について提言を行う。 2. 研究方法 以下の手順で、性質の異なる環境コミュニケーションの効果を長期的に分析する。①∼③につ いては初年度実施し、本年度は④∼⑤の課題を行った。 ① 環境配慮行動の規定要因仮説モデルの構築 関連する先行研究を踏まえた上で、生活者のごみ減量行動やその他の環境配慮行動の規定要 因仮説モデルを構築する。 ② 対象世帯のアンケート調査と規定要因仮説モデルの検証 ①で構築した、生活者の環境配慮行動の規定要因仮説モデルを調査世帯より得たアンケート データに基づいて統計的な分析を行い、妥当性等を検討する。 ③ 対象世帯のインプット・アウトプット調査 調査世帯の廃棄物排出量、循環資源排出量を実測する。 ④ 環境コミュニケーション手段の検討および実施 ②と③の調査結果に基づき、ごみ減量行動を促進させる環境コミュニケーションの手段と方 法、実施計画を構築する。 ⑤ 環境コミュニケーションの一時的効果の検討 対象世帯に④で計画したコミュニケーションを実施し、その一時的効果を分析する。 ⑥ 環境コミュニケーションの持続的効果の検討 対象世帯に、④同様の環境コミュニケーションを継続的に行うことにより、生活者の環境意 識や行動の時系列的な変化を分析する。 ⑦ 有効な環境コミュニケーションについての提言 -145- 以上の研究成果に基づき、持続的効果のある環境コミュニケーションの方向性とその提示方 法についての提言を行う。 3. 結果と考察 3-1. 環境コミュニケーション手段の検討および実施 1年目に実施した環境配慮行動の構造分析では、環境配慮行動の促進には、有効性認知より も、やりがい感や健康・安全性といった生活者ベネフィットの認知を高めることが有効である ことが示された。そこで本年度はこれらの成果に基づき以下の環境コミュニケーション((1) と(2))の設計を行った。 (1) 「情報提供型」コミュニケーション 地球環境問題、特にリデュースに関する情報提供を行うパンフレットを作成し、それを読 んでもらう。その際、リデュース行動は、地球環境問題解決の為に有効であり、リデュース 行動を実行することが一地球市民としての責務であることを訴求した「A:社会的責任感訴 求型」、リデュース行動を実行することは、自分の生活の質的向上にもつながることを訴求し た「B:生活の質的ベネフィット訴求型」、リデュースを実行することは、経済的ベネフィッ トにつながることを訴求した「C:経済合理性ベネフィット訴求型」の3つのタイプのパン フレットを作成した。 (2) 「生活者参加型」コミュニケーション 生ごみ処理機を各家庭に設置し、生ごみを分別し家庭で処理する行動に実際に参加しても らい、 リデュースにつながる行動を実体験してもらう。家庭用生ごみ処理機には様々あるが、 リデュースの実現と生活者ベネフィット訴求という観点から、微生物による分解で超減容処 理するものを選んだ。 これらのコミュニケーションを実施するために、初年度調査を実施した同じ浜松市内で、 約 2000 世帯に募集を行い、約 500 世帯の調査協力世帯を得た。そしてこの約 500 世帯に対し て、(1)の3つの異なる情報型コミュニケーションのいずれかをランダムに配布して実施し、 パンフレットを読んだ後の生活者の意識と行動の変容を測定して、A、B、Cの訴求内容に よる改善効果を検討した。次に上記約 500 世帯の中から 130 世帯を抽出し、生ごみ処理機を 設置して(2)生活者参加型コミュニケーションを実施し、意識と行動変容を測定するとともに、 実際のごみ排出量の実測も行い、(1)情報型と(2)参加型の異なるコミュニケーションの改善 効果を検討した。調査時期は、(1)情報型が 2005 年 10 月∼11 月、(2)参加型が生ごみ処理機 設置前 2005 年 11 月下旬の 15 日間、設置後 2006 年 1 月下旬の 15 日間である。 3-2. 環境コミュニケーションの短期効果の検討 (1)「情報提供型」コミュニケーションの短期効果 リデュースに関する情報提供を行うパンフレットを調査対象者に読んでもらい、読む前 (b1)と読んだ後(a1)の2時点における、リデュース行動に対する興味・関心・態度などの項 目を7段階評定尺度を用いて測定した。その結果、ABCいずれのコミュニケーションにお いても、すべての項目について統計的に有意な改善効果(a1>b1)が確認された。 -146- なお、生活者全体では 3 つのコミュニケーションタイプ間で改善効果の大きさに有意な差 は見られなかったが、生活者をエコロジー関与、健康志向、経済合理的傾向という観点で層 別し、ABCのコミュニケーションタイプ間の効果差を分析したところ、以下のような傾向 が見られた。 エコロジー関与の主効果がみられ、エコロジー関与の低い層の改善効果が大きい。A BC間に改善効果差はみられない(図 1 参照)。 経済合理性とABCのコミュニケーション間に交互作用効果がみられ、経済合理性の 高い層で、Aに対してCの改善効果が大きい(図 2 参照)。 健康志向の主効果、および健康志向とABCのコミュニケーション間に交互作用効果 がみられ、 健康志向の高い層においてAに対してBCの改善効果が大きい(図 3 参照) 。 1.5 1.0 0.5 2.0 A B C 1.5 1.0 0.5 0.0 0.0 高 エコロジー関与 低 図 1 エコロジー関与別の平均値比較 2.0 態度の変化率 A B C 態度の変化率 態度の変化率 2.0 A B C 1.5 1.0 0.5 0.0 高 経済合理性 低 図 2 経済合理性別の平均値比較 高 健康志向 低 図 3 健康志向別の平均値比較値比較 (2)「生活者参加型」コミュニケーションの短期効果 生ごみ処理機を設置し、設置する前(b2)と、設置後約1ヶ月(a2)の2時点における、リデ ュース行動に対する興味・関心、リデュース行動への態度などの項目を7段階評定尺度で測 定した。その結果、すべての項目において統計的に有意な改善効果(a2>b2)が確認された。 しかしながら生ごみ処理機を利用するというリデュース行動への参加体験に対する満足感・ やりがい感は生活者間で異なり、必ずしもすべての生活者が生ごみ処理機の利用経験に満足 していないことが示された。 参加型コミュニケーションの効果について、生ごみ処理機設置前後のごみ排出量(生ごみ、 もえるごみ、プラスチックごみ、の各重量)を各 15 日間ずつ実測した結果は、生ごみについ て、設置前: 72.3 g/食、設置後: 54.5g/食、もえるごみについて、設置前:107.3 g/人・日、 設置後:107.9 g/人・日、プラスチックごみについて、設置前:34.6 g/人・日、設置後 34.9 g/ 人・日(数値はいずれも各 15 日間の平均値)となっており、もえるごみとプラスチックごみ に関しては、統計的に有意な差が確認できなかったが、生ごみに関しては有意水準1%でそ の差が確認され、コミュニケーション実施後には、生ごみ排出量 17.8g/食(28.0 g/人・日)の 削減効果があったことが示された(図 4-5 参照)。 次に、生ごみ処理機を設置する前(b2)と設置後約1ヶ月 (a2)の2時点における7段階評定 尺度値の差(d2=a2-b2)を参加型コミュニケーションの効果ととらえ、(1)の情報型コミュニケ ーションの効果(d1=a1-b1)と比較したところ、全体としては統計的に有意な効果差は見られな かった。そこで生活者を生ごみ処理機利用経験満足度で層別し、両者の改善効果の大きさと -147- 比較したところ、満足度の高い層は、参加型の方が情報型より大きい改善効果(d2>d1)が、 満足度の低い層は、情報型の方が参加型より大きい改善効果(d1>d2)がみられた(表 1 参 照)。 40 40 平均値 72.3 標準偏差 36.4 30 平均値 54.5 標準偏差 27.6 30 世帯数 世帯数 20 20 10 10 0 0 20 60 100 140 180 20 220 60 100 140 180 220 重量(g/食) 重量(g/食) 図 4 コミュニケーション前の生ごみ重量 図 5 コミュニケーション後の生ごみ重量 表 1 情報型と参加型の各コミュニケーション効果差の検定(満足感別) 満足度低 興味 関心 意図的態度 感情的態度 満足度高 興味 関心 意図的態度 感情的態度 d1:情報型コミュニケーション効果 平均値 標準偏差 (d1−d2) 0.396 2.323 0.583 3.714 0.479 2.484 0.500 2.724 -0.210 -1.120 -0.086 -0.579 -0.309 -1.787 -0.235 -1.734 d2:参加型コミュニケーション効果 自由度 有意確率 (両側) ** *** ** *** 47 47 47 47 80 80 80 * 80 * ***p<.01 **p<.05 *p<.10 4. 結論 資源循環型ライフスタイルの普及・拡大の為の有効な環境コミュニケーション手法の検討を目 的として、異なる環境コミュニケーションを設計・実施しその短期効果を測定した。その結果、 いずれのコミュニケーションにおいても統計的に有意な改善効果が確認されたが、例えば情報型 コミュニケーションを実施した場合、健康志向の強い人へは、ベネフィット訴求型コミュニケー ションの改善効果が高く、社会的責任感訴求型コミュニケーションの改善効果が低い傾向があり、 同じベネフィット訴求型でも、経済的ベネフィット訴求型のコミュニケーションは、経済合理性 傾向の低い人に対しては効果が低い、また、参加型コミュニケーションは参加体験に満足感があ る場合には効果は高いが、参加体験に不満感がある場合には逆にその効果が低いなど、受け手要 因によってコミュニケーションの効果が分かれ、受け手にとって好ましくないコミュニケーショ ンを実施した場合には、その効果が減じられることが確認された。 これらより、環境コミュニケーションを実施する場合には、受け手要因を考慮し適切なコミュ ニケーションを実施することが、重要であることが示された。 今後は今回示された受け手要因とコミュニケーション効果についての検討を深度化させるととも に、コミュニケーションを継続実施し、環境意識や行動変容への累積効果、慣れや飽き、限界感 による環境配慮行動の停止・リバウンド効果等の有無について検討を行いたい。 -148- バイオマス廃棄物を有効使用した重金属含有魚介類廃棄物の 適正処理技術の開発 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 研究代表者=井上勝利(佐賀大学理工学部) 共同研究者=大渡啓介(佐賀大学理工学部) 、原田浩幸(佐賀大学理工学部) 、 森田穣(ユニレックス株式会社)、鈴木眞夫(アイテク技術開発株式会社) 1.研究目的 島国であるわが国では古来より大量の魚介類を消費して来た。これに伴い大量の魚介類廃棄物 が発生している。かってはこれらの廃棄物は海洋投棄されていたが、ロンドン条約の批准に伴い 海洋投棄は禁止され、コストを要する陸上処理をする必要が生じた。これらの魚介類廃棄物は一 方では良質のタンパク質、アミノ酸、脂肪、EPAやDHA等の高機能の脂肪酸、燐やカルシウ ム等のミネラル分を豊富に含んでおり、処理方法次第で高い利用価値が期待できる。しかしなが らある種の魚介類は生物濃縮により海水由来の重金属を比較的高濃度で含んでおり、これがそれ らの魚介類廃棄物の有効利用を阻んでいる。具体的には帆立貝やスルメイカの内臓中に含まれる カドミウムである。 現在、帆立貝の養殖は北海道や青森県を代表する産業となっているが、加工工程で発生する貝 殻や中腸腺等の軟体部分(通称:ウロ)の処理が大きな課題となっている。特に比較的高濃度の カドミウムを含むウロの処理は地域の環境問題となっている。青森県や北海道のオホーツク海沿 岸では焼却処分されているが、この方法では焼却コストが嵩む他、カドミウムを含む焼却残渣の 処理等の新たな問題も発生している。 これに対して北海道では道立工業試験場を中心とした研究機関により平成 3 年より 8 年間の歳 月をかけて硫酸浸出―電解採取によるカドミウムの除去技術が開発された。この技術に基づく処 理施設が現在砂原町で稼動している。ここではボイルされたウロを 3%の硫酸中に浸漬させるこ とによりカドミウムを浸出させ、これを電解採取した後、5%の硫酸中に再度溶解させ、最終的 に水酸化ナトリウムの添加により水酸化カドミウムの沈殿として回収されている。このプロセス においては浸出液中のカドミウムの濃度が数 ppm と希薄なため、電解採取に多大な電力、それに 伴うコストを要するという問題がある。 低濃度のカドミウムをイオン交換樹脂やキレート樹脂を用いて吸着・溶離することにより電解 採取に適した濃度まで濃縮することが望ましい。しかしウロの浸漬液中には高濃度のタンパク質 や脂肪が溶解しており、そのような場合は樹脂の細孔が塞がれることにより被毒が起こり樹脂の 機能を著しく低下させる。このように本系は従来の重金属含有廃水の処理技術では対応が困難な 難処理廃棄物である。このような問題の解決のために本研究においては以下の点を明らかにする ことを目指した。 1)前年度の研究においては浸出液としてクエン酸を用いたが、クエン酸は浸出の後の吸着工程 -149- に悪影響を及ぼすことが判明したため、浸出液としては現プロセスで使用されている希硫酸 を用いることにした。この場合、カドミウムや亜鉛等の金属イオンの浸出に及ぼすpHと温 度の効果を調べることにより、浸出の最適条件と浸出のメカニズムを明らかにする。 2)浸出液中の重金属の濃度は希薄であるため、吸着による除去が最適である。安価な吸着剤と してリンゴのジュースカスが候補として挙げられるが、吸着機能の高い吸着剤の調製方法を 開発する。 3)浸出には低いpHが好ましく、吸着には高いpHが好ましい。浸出液のpHを吸着に先立ち 上昇させる必要があるが、苛性ソーダ等の添加は処理コストの上昇を招くため、極力避ける べきである。このための代わりの操作を検討する。 4)実際の浸漬液は多量のタンパク質等に汚染された非常に汚い液である。ここでタンパク質等 は重金属のマスキング剤として働き、吸着を妨害する。この妨害を排除する方法、すなわち 重金属を全て液に残し、タンパク質等の生体物質を全て除去する方法を見出す。 5)タンパク質等の生体物質を全て除去した液から重金属がリンゴジュースカスの吸着剤により 除去できることを実証する。 2.研究方法 上記の課題の解決のために以下の研究を行った。 1)数個のホタテ貝の内臓廃棄物(ウロ)の試料をネット上に載せ、これを所定のpHの希硫酸 中で相互に接触しないように攪拌して浸出を行った。液中に溶出した全ての金属の濃度をI CP発光分析装置により分析し、濃度の径時変化を測定することにより浸出速度を測定した。 このようにして測定した浸出速度に及ぼす温度とpHの効果を調べた。 2)リンゴのジュースカス中のペクチンをペクチン酸に変換することにより高い吸着能が発現さ れる。変換のためのケン化プロセスを改善した。 3)浸出液のpHの径時変化に及ぼす初期pHやウロと浸出液の固液比の影響を調べた。 4)清酒中の過剰のタンパク質の除去のために柿渋液が昭和 30 年代より広く使用されている。浸 出液中のタンパク質等の生体物質の完全除去のために柿渋液の添加を試みた。 5)リンゴジュースカスの吸着剤を充填したカラムに4)の処理の後の液を通液することにより 重金属の除去を試みた。 3.結果と考察 pH=1.5 での様々な温度におけるウロの試料中のカドミウムの濃度の径時変化を擬 1 次反応の プロットとしてプロットしたものを図 1 に示す。プロットは原点を通る直線に乗っており、濃度 の径時変化は 1 次過程で表すことができる。直線の勾配より各温度の速度定数を求め、Arrhenius プロットすることにより活性化エネルギーを求めたところ、17 kJ/mol と求まり、ウロ内部での 金属イオンの拡散が律速段階であることが明らかとなった。 -150- カドミウムの浸出の径時変化に及ぼす 0 pHと温度の効果に関しては、pHの増加 0 と共に浸出効率は低下するが温度を 30℃ -0.5 から 50℃にすることにより、pH=2.0 にお -1 5 10 15 20 25 30 20 ℃ 25 ℃ 30 ℃ 40 ℃ log (C t/C i) y = -0.0494x いても 24 時間の浸出でカドミウムが完全 に除去できることがわかった。 リンゴジュースカスの吸着剤の調製方 50 ℃ 60 ℃ y = -0.0627x 線形 (20 ℃) y = -0.0675x 線形 (25 ℃) -1.5 -2 線形 (30 ℃) y = -0.0815x 線形 (40 ℃) y = -0.1102x -2.5 線形 (50 ℃) 線形 (60 ℃) 法に関しては、これまでの研究においては y = -0.1168x -3 搾汁直後のジュースカスを数%の水酸化 Tim e /h 図 1 ウロからのカドミウムの浸出の径時変化 カルシウム粉末と混合・粉砕することによ り調製されていた。この方法では 15ppm の擬1次プロット のカドミウムの 100%の除去にはpHを 6 以上 5 にする必要があったが、微量の苛性ソーダの添 加によりpHを 12.5 以上にしてさらにケン化反 4 pH 応を進行させることによりpH=4においても 100%の除去が達成された。 3 図 2 に 100gのウロの試料を1Lの希硫酸水 pHi = 1.6 2 溶液に浸漬した場合の液のpHの径時変化を示 pHi = 1.9 す。初期pHと固液比を調整することにより、 1 苛性ソーダ等を添加すること無しに、自然にp 0 5 10 H<2の液をpH>4にできることが明らかと 図 3 に実際のウロの浸出液か らのリンゴジュースカスの吸着 A% 剤による様々な金属の吸着・除 ル液ではpH=4において 100%除去できたが、実液ではそ うではない。これは金属と共に大 量のタンパク質、アミノ酸が溶出 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 C u(II) Zn(II) As C d(II) F e(III) 0 2 て吸着を妨害しているためである。 4 6 8 pH e し、これらがマスキング剤となっ 浸出液中のタンパク質等の除去の 20 図 2 ウロの希硫酸浸出液のpHの径時変化 なった。 去%とpHとの関係を示す。モデ 15 Time [h] 図 3.リンゴジュースカスの吸着剤による実際のウロの 浸出液からの各種金属の除去%とpHの関係 ために清酒中のタンパク質の除去に使用されている柿渋液を用いた。図 4 に示すように柿渋液の 添加により、タンパク質等はほぼ完全に凝集・沈殿・除去でき、清澄な液が得られることが明ら かとなった。この場合カドミウム等の重金属はpHを4以下に保つことにより、100%液中に残す ことができる。 このようにして得られた清澄な液からのカドミウム等の重金属の除去のためにリンゴジュース -151- カスの吸着剤を充填 したカラムを用いた。 図 5 にこの場合の 破過曲線を示す。BV (液のカラム内での 滞留時間に相当)が 40 以下で問題となる カドミウムと亜鉛が ほぼ完全に除去でき 図 4 実際のウロの浸出液に対する柿渋液の添加効果(左:添加前、中 ることが分かる。 中:添加直後、右:数時間静置後) 4.結論 1 0.9 柿渋液の使用により、本系の最大の問題であ 0.8 った大量のタンパク質、アミノ酸から重金属を の沈殿物は重金属除去後のウロと同様に家畜 0.7 0.6 C t /Ci 分離することができた。タンパク質、アミノ酸 0.5 0.4 や魚の試料や肥料として利用できる。重金属を 0.3 吸着したリンゴジュースカスは重金属の溶離 0.2 0.1 後再度吸着に供することができる。このように 0 0 して廃棄物を発生させないゼロエミッション 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 B.V. 図 5 リンゴジュースカスの吸着剤を充填した 型のウロの処理プロセスが完成できた。 図 6 に本研究の結果に基づく処理プロセス カラムによる図 4 の清澄液からの重金属の破過 のフローシートを示す。 1 L of 0.05M H2SO4 (pH=1.5) Cd(II) Fe(III) Zn(II) 曲線 図 6 本研究の成果 100g of leached uro 100g of new uro, に基づくウロの処 理プロセスのフロ ーシート 33 mL of 10% kakishibu 3.2mg/L Cd pH=4 Cd free uro 12g AJR gel Leach liquor 166 mL of 0.1M H2SO4 Cd free AJR Cd elution from AJR Cd loaded AJR 100% Cd recovery 18.84 mg/L Cd Cd(OH)2 liquid Cd free liquid (discharge) Floc Floc containing containing no heavy no heavy metals metals Fertilizer , feeds for cattles -152- マイクロ波照射を用いたフライアッシュゼオライトの 工業化プロセスの開発 研究期間(西暦)=2004∼2007 研究年度(西暦)=2005 研究代表者名=北條 純一(九州大学) 共同研究者名=榎本 尚也(九州大学)、三木 里花(九州大学) 1.研究目的 高効率に石炭灰のゼオライト化を行い、その工業的スケールアップを達成するためには、マイ クロ波照射による石炭灰のゼオライト化メカニズムの解明が不可欠である。石炭灰のゼオライト 化は灰粒子表面での不均一系反応であり、マイクロ波照射効果は複雑となる。 メカニズム解明のために、固相生成物の結晶相、化学結合状態、液相の Si 及び Al 濃度を詳細に 解析することにより、ゼオライト化の各段階におけるマイクロ波照射効果を検証する。得られた 知見に基づいて、異なる石炭灰からでも孔径を制御したゼオライトを安定して効率的に大量合成 することによって、現在は廃資材である石炭灰を水質改善、土壌改質などの環境的応用の担い手 へと変貌させることを最終的な目的としている。 初年度は、種々の石炭灰を出発原料としてゼオライト生成条件を精査するとともにそのゼオラ イト化機構を解明し、市販の電子レンジを用いて基本的なマイクロ波照射条件の探索を行った。 この成果を受け、第2年度である本年度は、大型のマイクロ波装置を導入してマイクロ波照射条 件を精査するとともに、ゼオライトの機能を長寿命化させるための試みとして、光触媒チタニア との複合効果について検討した。 2.研究方法 <基本的合成手順> 所定量の石炭灰に所定濃度のアルカリ溶液を加え、テフロンフラスコ中、オイルバスを用い、 マグネチックスターラーで攪拌しながら還流した。反応後、遠心分離を行い、沈殿物に蒸留水を 加えて、超音波洗浄を行った。遠心分離と超音波洗浄を 3 回行った後、約 100℃で 5 時間乾燥し、 粉体を得た。 <マイクロ波照射方法> マイクロ波発生装置には家庭用電子レンジまたは大型マイクロ波合成装置 MARS-5X を用いた。 電子レンジを用いた場合、マイクロ波連続 2 時間照射と部分マイクロ波照射を行った。部分照射 ではマイクロ波照射時間を含む全反応時間を2時間とし、石炭灰とアルカリ溶液の混合直後ある いは還流 30、60、90min 後にマイクロ波照射を 15 分間行った。MARS-5X を用いた場合は、石 炭灰とアルカリ溶液をテフロン密閉反応容器に入れ、マイクロ波を照射した。反応後、遠心分離 と超音波洗浄を 3 回行った後、約 100℃で 5 時間乾燥し、粉体を得た。 <ゼオライト・チタニア複合体の作製> -153- 50ml サンプル管に蒸留水とエタノールと合成ゼオライトを混合し、マグネチックスターラー で 1 時間攪拌した。その後、チタンイソプロポキシドを加え、攪拌した。反応後、遠心分離とエ タノールによる洗浄を 3 回行った後、乾燥させ、生成物を得た。 <キャラクタリゼーション手法> 得られた粉体試料は X 線回折(XRD)による相同定、電子顕微鏡(SEM, TEM)による形態 観察、核磁気共鳴分光(NMR)および赤外分光(IR)による局所構造解析のほか、アンモニウ ムイオンおよびカルシウムイオンによる陽イオン交換能(CEC)測定を行った。また、反応溶液 の液相におけるケイ素およびアルミニウム濃度を ICP 分析により定量化した。チタニア担持試料 についてはメチレンブルー(MB)の脱色による光触媒特性評価も行った。 3.結果および考察 3 1.マイクロ波照射タイミングの影響(図1) マイクロ波連続 2 時間照射ではゼオライト生成物は得られず、マイクロ波が中間体ゲルのゼ オライト化を阻害することが示唆された。部分マイクロ波照射ではゼオライト Na-P1 が生成 し、ゼオライト生成量はマイクロ波照射タイミングに大きく影響を受けた。反応初期へのマイ クロ波導入によりゼオライト生成量が増加し、マイクロ波が溶質の溶解を促進したことが示唆 された。反応中期へのマイクロ波照射はゼオライト生成を阻害し、マイクロ波が中間体ゲルか らのゼオライト核生成を阻害したと考えられる。反応開始直後のマイクロ波 15 分間照射で CEC は約 200meq/100g(油浴 5h と同等)を示し、短時間で比較的高性能なゼオライトを得るこ とができた。 3 2.マイクロ波発生装置の影響 MARS-5X は電子レンジと異なり、マイクロ波の出力および ON-OFF が自動的に制御され、 溶液温度と圧力をコントロール可能である。電子レンジでマイクロ波連続2時間照射ではゼオ ライト生成物は得られなかったが、MARS-5X を用い、300W で 2 時間加熱したところ、ゼオ ライト Na-P1 が生成し、通常加熱2時間より生成量は多かった。マイクロ波の自動 ON-OFF 制御が溶解・再析出による中間体ゲルからのゼオライト生成に寄与したと考えられる。 -154- 250 0.8 :CEC INa-P1 /IMgO 0.6 200 油浴 2h 150 0.4 100 油浴 2h 0.2 0 CEC(meq/100g) :INa-P1/IMgO 50 0-30 30-60 60-90 90-120 0 照射タイミング(min) 図1 3 照射時期と評価結果 3.フライアッシュゼオライトに対する光触媒機能付与 ゼオライトに光触媒チタニア(TiO2)を複合することにより、吸着と分解を効率的に行うこ とが可能となった。図2にゼオライト表面に担持されたチタニアを示す。 1μm 1μm 14.0 14.1 7.4 14.9 13.0 図2.フライアッシュゼオライト−10wt%チ タニア複合体の熱処理後の SEM/EDS 分析結 ○内のTi濃度 果。 これに関して得られた知見は以下の通り。 -155- (ア) TiO2 は 200℃までは結晶化せず MB 分解量も低かったが、250℃以上で結晶化し MB の 分解能もあがった。 (イ) 石炭灰から合成したゼオライトは 200℃まではその構造を保っていたが、250℃以上で は結晶構造が崩れ始め、300℃以上では XRD で確認できなくなった。 (ウ) TiO2 担持ゼオライトは低濃度域で、MB 分解能の効率が上がった。 4.結論 石炭灰からのゼオライト生成におけるマイクロ波照射では連続照射よりも部分照射が有効であ り、このことは電力コスト削減にも貢献する非常に重要な知見である。チタニアとの複合化では ゼオライトの分解温度以下でチタニアの結晶性を高める必要があり、今後の課題となる。 -156- . . . . -157- -158- -159- -160- 循環資源・廃棄物中の有機臭素化合物及びその代謝物管理のための バイオアッセイ/モニタリング手法の開発 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=滝上英孝(国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター) 共同研究者=高橋 真(愛媛大学) 、森 千里、深田秀樹、小宮山政敏(千葉大学)、 酒井伸一(京都大学) 1.研究目的 臭素系難燃剤を使用してきた経緯と生体や環境への蓄積濃度増加傾向を考慮すると、その主た る曝露要因としては難燃剤の使用やリサイクル、廃棄プロセスが考えられる。廃棄物のリサイク ルや減容に関連する破砕圧縮工程や焼却等の廃棄物処理工程、室内使用過程での有機臭素化合物 の排出実態について重要なケースを抽出、調査を行い物質循環・廃棄物処理の面から事実確認を 進め、排出制御方策の提案を行うことを目的とする。また、臭素化合物の生体代謝物が多様な毒 性ポテンシャルを有する可能性があり、親化合物、代謝物の毒性を取りこぼしなく検出できる包 括的なバイオアッセイ/化学分析統合モニタリングツールの開発に取り組んで実態調査に適用す るほか、ヒトの有機臭素化合物への曝露状況を把握し、有機臭素化合物の化学毒性リスク評価/ 制御に資する知見獲得もねらいとする。 2.研究方法 上記の研究目的を達成するために平成 17 年度は以下の内容の研究に取り組んだ。 (1)有機臭素化合物及びその代謝物のバイオアッセイ/化学分析手法の開発・検討 臭素化ジフェニルエーテル類(PBDEs)を検出するイムノアッセイキットについて、標準品を 用いたバリデーションを実施した。また、PBDEs とヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)を同 一試料から抽出し、GC/MS 及び LC/MS/MS でそれぞれの異性体を測定する分析方法の開発を試 み、生物、環境試料への適用を行った。 (2)有機臭素化合物の相互分析検定研究 複数の分析機関を対象に、均質に調製した共通試料(廃テレビケーシングと動物脂肪)を配付 し、PBDEs や PBDD/DFs など有機臭素化合物の測定に係る相互検定を実施した。 (3)有機臭素化合物及びその代謝物の生体における曝露評価及びトキシコゲノミクスによる毒 性評価 有機臭素化合物のヒトへの曝露評価に資するべく、特に次世代影響を重視するという視点から、 胎児への化学物質移行(臍帯、臍帯血、母体血を対象)を調べた。PBDEs 及びその代謝物(水酸 化体)濃度を個別検体ごとに測定し、有機塩素化合物(PCBs)及びその水酸化物との相互比較を 行った。 また、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に PBDEs や臭素化ダイオキシン類(PBDD/DFs)を曝 -161- 露し、DNA マイクロアレイを用いて遺伝子発現に及ぼす影響を調べた。 (4)ハウスダストを介した曝露経路推定のための分析/アッセイ適用研究 有機臭素化合物の室内曝露源と考えられるハウスダスト試料を 30 検体以上、バイオアッセイに 供し、関連化学分析結果(PBDEs, PBDD/DFs)と比較、考察を行った。ダスト 1 試料を対象に太 陽光照射及び、ラット肝ミクロソーム(S9)による代謝活性化を行い、化学変換、毒性変化につ いて調べた。 (5)物質循環・廃棄過程における有機臭素化合物の排出実態調査とアッセイ/化学分析の適用 臭素系難燃剤を含有するテレビ等の解体、破砕を行う家電リサイクル施設を対象とした調査を 実施し、作業環境やプロセス排ガス中の有機臭素化合物濃度について、化学分析/バイオアッセ イによる統合評価を行った。テレビ内部ダストの除去や集塵機の利用といった防塵技術による作 業環境、環境排出濃度の低減効果の把握を試みて、その有効性を検証した。 3.結果と考察 (1)有機臭素化合物及びその代謝物のバイオアッセイ/化学分析手法の開発・検討 新規バイオアッセイとしてバリデーションを実施した PBDEs 用のイムノアッセイは 4 臭素化物 である BDE 47 に対して強い親和性を有し(IC50=0.15 ppb)、5 臭素化物である BDE 49, 99、5 臭 素化物を主体とする製剤である Bromkal 70-5、DE-71 についても同程度の親和性を持っているこ とが分かった。 化学分析については、ゲル浸透クロマトグラフィー及び活性化シリカゲルクロマトグラフィー を用いた PBDEs と HBCD の分離条件等を確立した。生物試料を用いて HBCD 各異性体の添加回 収率の良好性、底質試料を用いて LC/MS/MS と GC/MS による測定値の一致性を確認した。確立 した LC/MS/MS 分析法を生物、環境試料(堆積物、魚介類、高等野生動物の脂肪組織など)に適 用した結果、環境中に HBCD が遍在し、高等野生動物にも高濃縮されていることが異性体別の情 報と共に明らかになった。 (2)有機臭素化合物の相互分析検定研究 「廃テレビケーシング」の分析の結果、デカブロモジフェニルエーテル(DeBDE)が%オーダ ーで検出され、PBDD/DFs についても PBDFs を中心に ppm レベルで検出された。機関間のデー タのばらつき(相対標準偏差)は、PBDD/DFs が 14~33%、PBDEs が 10∼39%であり、風乾底質 等を用いた既報の研究結果とほぼ同程度であった。また、クロマトグラムの解析から、異性体ピ ークの Co-elution が測定値のばらつき要因となっていることが推察された。「動物脂肪」からは PBDEs、HBCD 及び Co-PCBs などが比較的高い濃度で検出された。 機関間のデータのばらつきは、 PBDEs が 11∼33%であったが、PCDFs や Co-PCBs の一部異性体では 50%を超えるばらつきがみ られた。クロマトグラムの解析の結果、これら塩素化ダイオキシン類の測定値のばらつき要因と して、PCB や塩素化ジフェニルエーテル類による干渉が示唆された。 (3)有機臭素化合物及びその代謝物の生体における曝露評価及びトキシコゲノミクスによる毒 性評価 臍帯 10 検体、臍帯血 6 検体、母体血 10 検体、さらに母乳 2 検体を個別測定した結果、PBDEs の濃度は、湿重量当たりでは臍帯、臍帯血、母体血、母乳の順に高くなり、組織別の平均濃度で -162- 6.0∼59 pg/g の範囲にあった。脂肪重量当たりでは臍帯血、母乳、母体血、臍帯の順(組織別平 均濃度で 1.5∼7.0 ng/g)で、臍帯が最も濃度が高かった。一方、PCB 濃度は湿重量当たりでは臍 帯、臍帯血、母体血、母乳の順に高かった(組織別平均濃度 61∼6,200 pg/g)。脂肪重量当たりで は臍帯血、臍帯、母体血、母乳の順(組織別平均濃度で 44∼160 ng/g)に濃度が高く、PBDEs と は分布が異なっていた。臍帯血は脂肪重量当たりでは、PBDEs と PCBs ともに臍帯より低い値を 示し、臍帯血を用いた胎児の化学曝露評価は実際の曝露を過小評価する可能性が示された。 2,3,7,8-TCDD、2,3,7,8-TBDD、2,3,7,8-TBDF 曝露による HUVEC 細胞における遺伝子発現への影 響は非常に類似していたが、臭素系難燃剤による影響とは異なっていた。難燃剤による遺伝子発 現変化は、ダイオキシン類と比較して小さかったが、対照群と比較して発現が増加または減少し た遺伝子が多数みられた。 (4)ハウスダストを介した曝露経路推定のための分析/アッセイ適用研究 ハウスダスト中の PBDEs、PBDD/DFs、Ah レセプター結合活性及び TTR 結合活性レベルを調 査した結果、ダストが底質など既報の媒体と比較して同等以上の高いレベルにあり、重要な曝露 媒体であることが示唆された。ダストを介して摂取・吸入の可能性があるダイオキシン類縁化合 物、甲状腺ホルモン様物質の摂取量推定を行い、幼児に対するリスクが高い可能性が示された。 ダスト 1 検体を対象にした実験において、太陽光を照射することで Ah レセプター結合活性が 増加し、PBDF 濃度の増加が活性増加の一因になっていると考えられた。また、TTR 結合活性は 太陽光照射により変化せず、ラット肝ミクロソームによる代謝によっても活性変化を受けなかっ た。活性物質の同定が今後の課題となった。 (5)物質循環・廃棄過程における有機臭素化合物の排出実態調査とアッセイ/化学分析の適用 テレビ手解体ラインにおける作業環境中の有機臭素化合物(PBDEs、PBDD/DFs)濃度はテレ ビ内部ダストの除去や集塵機の導入によって 1 桁低減し、バイオアッセイ(Ah レセプター結合活 性)によっても低減が裏付けられ、防塵対策の有効性が確認できた。実際に集塵機の吸排気ガス を分析すると、排気ガスにおける粒子態の有機臭素化合物の濃度低減が顕著であり、除塵効果が 反映されていた。また、テレビの内部ダストと集塵機で捕捉されたダストでは、有機臭素化合物 の濃度、組成が極めて類似しており、作業環境における有機臭素化合物の発生源はテレビの内部 ダストであることが示唆された。 4.結論 簡易迅速に PBDEs を検出できるバイオアッセイとしてイムノアッセイを導入し、また、これま で分析が困難であった HBCD の異性体別測定法を確立した。相互検定研究を通じて臭素系難燃剤 やダイオキシン類縁化合物の分析値に関する信頼性が明らかとなり、今後の分析法改善や信頼性 の向上にとって有用な知見が得られた。有機臭素化合物及びその代謝物の生体曝露評価を個々の 検体別に実施し、PCB 及びその代謝物との比較研究を行った。また、有機臭素化合物、ダイオキ シン類縁化合物に特異的な発現(抑制)遺伝子が明らかになり、新たなバイオマーカーの開発、 設定に結び付けられる可能性が出てきた。有機臭素化合物の曝露源としてハウスダストの重要性 が分析/バイオアッセイ評価により明らかになってきており、その起源としての家電製品や家庭 用品との関連性調査が課題と考えられた。家電リサイクル施設における調査において有機臭素化 -163- 合物は粒子態として作業環境中に存在し、集塵(ダストの除去)がその制御に有効であることが 確認できた。 -164- バイオ技術を中心とした不法投棄現場及び不適正最終処分場の 修復・再生システムの開発 研究期間(西暦)=2004−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=古市 徹(北海道大学) 共同研究者名=谷川 昇(北海道大学),石井一英(北海道大学),小松敏宏(北海道大学),稲 葉陸太(北海道大学),亀井克彦(千葉大学),矢口貴志(千葉大学),惣田昱 夫(静岡理工科大学),岡村和夫(清水建設(株)) ,峠 和男( (株)大林組) , 笹井 裕(東和科学(株) ),郷田浩志(東和科学(株)) 1.研究目的 循環型社会の構築に向け,廃棄物管理技術をより安全,安心なものとするために,特に,重要 課題である青森・岩手県境に代表される大規模不法投棄現場の原状回復と,不適正最終処分場の 適正化を図るための技術とシステムの開発が必要である. 不法投棄現場及び不適正最終処分場の環境再生を目指した修復・再生(適正化,資源化,延命 化)を行う際には,汚染拡散防止対策を行うと同時に,廃棄物の適正管理のために前処理−運搬 −処理(リサイクル)する必要がある.本研究で提案する前処理(リスク低減化プロセス)とは, 調査−掘削−分別の 3 段階のプロセスから成り,後段に続く廃棄物の運搬や処理の際に生ずるお それのある環境汚染拡大やコスト増大などのリスクを低減するための技術である.これにより, 修復・再生作業全体を安全,適正かつ効率化することが可能となる. そこで本研究では,特に,適正処理と資源化する技術として,物理化学的処理に比べて省エネ 型で,二次汚染の可能性が少ない微生物の機能を最大限に活用するバイオ技術を中心とした不法 投棄現場および不適正最終処分場の修復・再生システムの開発を行うことを目的としている.3 年間の研究の 2 年目である今年度は,以下の①∼⑤の 5 つの研究フレームに基づき,研究を行う こととした. ①廃棄物掘削作業時の安全性の確保,および廃棄物中の有害物質を低減するための,メタン・硫 化水素ガスの発生抑制と除去,および VOC(揮発性有機化合物)成分の分解除去方策として, ①-1 不法投棄現場でのオープンパス型計測器を用い,硫化水素などの嫌気的な廃棄物層内か ら発生する有害ガスの指標としてのメタンガスのモニタリング手法について検討する. ①-2 メタンガスや硫化水素ガスの発生抑制・除去,および VOC や油類の分解除去を目的と した廃棄物カラム空気注入試験を行い,その効果を確認する. ①-3 原位置でのベンゼン,テトラクロロエチレン(PCE)などの VOC の分解除去を目的とし たバイオレメディエーション技術の現場への適用可能性について検討する. ②埋立・不法投棄廃棄物中の有機物量削減,あるいは,それら廃棄物からのエネルギー回収を目 的としたバイオガス化処理の適用性を検討する. ③DXNs バイオリアクター設計条件を検討するための,DXNs 分解速度を表現する数学モデルを -165- 検討する. ④DXNs 分解菌である Pseudallescheria boydii 北大株(以下,P. boydii 北大株)のモニタリング 手法を検討する. ⑤上記①∼④及び既存の物理化学的技術との統合化により,現実に適用可能な修復・再生するた めの技術とシステムの構築を行う. 2.研究方法 ①-1 実際の不法投棄現場のバークなど比較的有機物が多く投棄されている区画(30m×50m) を対象に,廃棄物層内および大気中のメタン・硫化水素ガス濃度の計測を行った.また,掘 削試験を行い,ハンディタイプオープンパス型計測器による掘削時に発生するメタンガスの 連続モニタリングを試みた. ①-2 実際の不法投棄廃棄物サンプルを対象に空気注入カラム試験(直径 25mm×長さ 400m お よび直径 95mm×長さ 300mm)を行い,VOC および油類の除去効果を確認した. ①-3 上記廃棄物サンプル中に存在する微生物による,ベンゼン(好気性)および PCE(嫌気性) の分解速度を,バッチ試験により求めた.また,PCE については,分解生成物も含めた分 解過程を数値シミュレーションにより模擬し,パイロットスケールを想定した場合の浄化期 間の推定を行った. ② 上記廃棄物をサンプルとして,潜在的バイオガス発生量を確認するためのバッチ試験および, 容量 10L のバイオリアクターによる連続バイオガス化実験を行うことより,廃棄物投入負荷 などの運転条件の検討,およびバイオガス発生阻害因子について考察を行った. ③ P. boydii 北大株による 2,3,7,8-ジベンゾ-p-ダイオキシン(以下,TCDD)分解特性が共代謝 プロセスであることを確かめるためのバッチ試験を行った.また,分解速度式の適用を試み, 実験データの解析により,微生物増殖および TCDD 分解速度に関するパラメータの算出を行 った. ④ P. boydii 北大株の種内の,特に北大株を含む菌群を特異的に増幅するプライマーを設計し, さらに,土壌中に含まれる P. boydii 北大株の DNA を抽出し,増幅する条件を検討した. ⑤ 最後に,①∼④までの検討結果を基に,コスト的にリーズナブルな,安全かつ適正な,不法 投棄現場および不適正最終処分場の修復・再生のための技術とシステムについて検討するこ ととした. 3.結果と考察 ①-1 廃棄物層内中には,ほぼすべての地点(10m メッシュ)で,パーセントオーダーでメタン ガスが検出された(最高濃度 22.5%) .これより,廃棄物層内は嫌気性であることが確かめ られた.一部,嫌気状態で発生する有害な硫化水素ガスも検出されたことから,廃棄物を掘 削する際には,事前に廃棄物層内に滞留しているガスを除去する必要性のあることが分かっ た.また,オープンパス型計測器により,掘削に伴うメタンガスの発生状況を連続モニタリ ングしたところ,掘削作業中に数百 ppm 程度のメタンガスの発生が実際に確認できた.こ れより,リアルタイムかつ ppm オーダーで,嫌気的雰囲気にある廃棄物層内から発生する -166- 有害ガスの指標としてのメタンの計測が可能なモニタリング手法を提案することができた. ①-2 採取した廃棄物が充填されたカラムに空気を注入することにより,30 日間で廃棄物中の油 臭が無くなった.そこで,通気前後の炭素数別の油分濃度を比較すると,C10∼C15 の油分 が顕著に減少していることが確認された.つまり,揮発しやすいあるいは微生物分解しやす い低分子の油分が,通気と微生物分解の複合効果により低減されたものと推測された.また, 通気試験時の排気ガスの成分分析および解体後の溶出試験により,VOC などの有害物質が 除去されることが確認できた. ①-3 ベンゼンを対象とした好気性条件下におけるバッチ試験により,初期の 1 週間で著しい濃 度減少が見られ,30 日後に行った溶出試験では,初期濃度 0.3∼0.4mg/L から定量限界 (0.003mg/L)以下にまで廃棄物中のベンゼンが除去されることを示した.また同時に,基 準項目ではないが,廃棄物中のトルエンやキシレンも同様に除去されることを示した.一方, PCE を対象とした嫌気条件下のバッチ試験により,塩化ビニルまでの脱塩素反応を確認し, 一次の分解速度定数を算出した.また,廃棄物カラムを用いたトレーサ試験により,採取し た廃棄物への PCE の吸着による遅れ定数を求めることができた.以上のパラメータを用い て,パイロットスケールを想定した場合の PCE と分解生成物を含めた濃度変化を数値シミ ュレーションにより推定し,約 6 ヶ月間で修復することができると推定された. ② バッチ試験により,実際の不法投棄廃棄物(バーク混入物 2 サンプル,RDF 様物 2 サンプル) からの潜在的バイオガス発生量は,バーク混入物で 10∼15 mL/g,RDF 様物で 40 mL/g で あった.バーク混入物を対象とした連続試験では,10∼20 L/kg/day とガス発生量は当初予 想していたよりも少ない傾向であった.これらの原因としては,実験に用いた廃棄物のばら つきやメタン発酵菌の阻害(アンモニア,有機酸及び重金属)が考えられたが,実験データ の解析によりメタン発酵菌の阻害ではなかった. ③ P. boydii 北大株による TCDD の分解特性を把握するためのバッチ試験の結果,P. boydii 北 大株はその増殖期において炭素源であるグルコースと TCDD を同時に代謝(共代謝)する ことが明らかとなった.また,既存の菌体増殖式(Monod 式)と分解速度式の適用を試み たところ,P. boydii 北大株の TCDD 分解を表現することができた. ④ 昨年度見いだした P. boydii 北大株のβ−チューブリング遺伝子の塩基配列の解析より,北大 菌株を含む菌群のみ特異的に抽出することが可能なプライマーを構築することができた.さ らに,土壌から DNA の抽出条件の検討を行ったところ,胞子が 107 個/mL 程度であれば, 十分に検出することが可能であることが分かった. ⑤ 以上の検討を踏まえて,いわゆる廃棄物の撤去処理作業全体の安全性,そしてコストや時間 といった効率性,受入施設の有無などの実行可能性など,修復・再生方法を決定する際に考 慮されるべき因子を整理した.そして,特に大規模であり,かつ有害性が高い廃棄物撤去処 理を行う場合には,本研究で検討を行ってきた廃棄物層内ガスの処理やバイオレメディエー ションといった処理技術を,前処理(リスク低減化プロセス)として従来の撤去作業プロセ スに組み込むことが極めて重要であることを示した. -167- 4.結論 前記の①∼⑤の研究目的を踏まえて,今年度の結論は,次のように総括できる. ○修復・再生するための前処理(リスク低減化プロセス)技術の開発について (1)実際の汚染現場の廃棄物層内のガス調査より,メタンガスが最大 20%程度滞留しており, 廃棄物層内が嫌気性であることが分かった.同時に,嫌気性状態で発生する硫化水素も検出 されたことから,廃棄物を掘削する際には,事前に廃棄物層内に滞留しているガスを除去す る必要性のあることが分かった.これらの滞留していたガスの放出を,同地点の廃棄物の掘 削試験時に,メタンガスを指標として,オープンパス型計測器でリアルタイムに検知できる ことを示した. (2)高濃度でベンゼン,PCE,油分で汚染された廃棄物に対して,リスク低減化手法の検討を 行った.まず,カラム空気注入試験より,30 日間で C10∼C15 の油分を低減化することが 可能なこと,またバッチ試験より,好気性条件下でベンゼンが,嫌気性条件下で PCE が微 生物分解されることを確かめた.特に,PCE の分解については,分解生成物も含めた各物 質の濃度変化を,実験結果から得られた反応速度等のパラメータに基づいた数値シミュレー ションにより検証することができた.以上より,当該汚染現場のリスク低減策として,廃棄 物中のベンゼンや油類については空気注入法が,PCE について嫌気性条件下でのバイオレ メディエーション法が有効であることを示した. ○修復・再生するための難分解性有機化合物の処理技術の開発について (3)P. boydii 北大株の DXNs 分解は,その増殖期における炭素源であるグルコースとの共代謝 により生じることが分かった.また,既存の菌体増殖式(Monod 式)と分解速度式により P. boydii 北大株の TCDD 分解速度を表現することができた. (4)P. boydii 北大株を用いたバイオリアクター等の修復技術を汚染現場へ適用した際,周辺環 境へ菌の漏洩が無いことをモニタリングするための手法を確立するために,土壌中からの遺 伝子抽出手法,および特異的に P. boydii 北大株を含む菌群を検知できる遺伝子プライマー を構築することができた. ○修復・再生するためのシステムの構築について (5)廃棄物による不法投棄現場を安全,適正かつ効率的に修復するために,考慮すべき作業要 因を整理しシステム化した上で,前処理(リスク低減化プロセス)技術を組み込んだ修復・ 再生システムを提案した.特に大規模かつ高濃度で汚染された不法投棄現場の場合には,従 来単純に行われてきた撤去作業に,前処理技術を導入することが,その後段に続く運搬作業 や処理作業時のリスク低減やそれらの作業効率の向上に極めて重要であることを示した. -168- 海底における有害廃棄物に汚染された底質の安全な処理に関する研究 研究期間(西暦)=2004−2005 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=神野健二(九州大学大学院工学研究院環境システム科学研究センター) 共同研究者=本田克明(愛媛大学農学部環境産業科学科) 大嶋雄治(九州大学農学研究院海洋生命科学科) 1.研究目的 環境ホルモンの一つである有機スズ化合物は、1950 年代に開発されて以降、世界的に漁業や海 運業、繊維業界等で大いに利用された。1960 年代には我が国も、有用な物質として多用してきた。 有機スズ化合物は塩化ビニル樹脂の安定剤、船底塗料や漁網用の防汚剤、触媒など広く利用され てきた。特にトリブチルスズ (tributhyltin, TBT (C4H9)3SnX ) は船底や魚網への甲殻類などの付 着を防止するための防汚塗料として、1960 年代に英国で使用され始めたが、1975 年ごろからフラ ンスで牡蠣の異常生育・奇形が問題となった。その後、EU を始め各国で使用禁止、汚染状況の調 査が行われた。日本でも 1990 年に製造が禁止された。現在では新規塗料に含有される例はない。 しかし、アジア諸国ではまだ採用されている状況にある。 有機スズなどは難分解性であるため、海域底質中にいわゆるホットスポット的に長期間にわた って存在する。したがって、これら有害物質を早期に処理できれば、水産海域や造船所海域の環 境改善は速やかに進むと考えられる。食の安全を確保するためや水産資源の回復のため、また造 船所での環境改善のためにも本研究課題は重要且つ緊急問題である。 このような社会背景のもと、 (1)有機スズによる内分泌撹乱作用のために珪藻食生線虫が生息不能で、水生生物の激 減・再生産性が著しく低下しているホットスポット底質を最低必要量だけを除去 すること、 (2)複数物質によって汚染されている堆積土および懸濁状態の余水を同時無害化処理す ること、 (3)改善効果を評価する生態リスク評価手法を確立することにより、 信頼性の高い処理システムを構築することを目的としている。すなわち、限容化∼簡便な装置・ 容易な技術と処理の信頼性等を可能とする一連除去・処理工法を開発し、底質の改善、海域の自 然回生、水産資源の復活、食の安全確保に寄与する事を目的とする。更に、 「臨海型難・取扱性土 砂・廃棄物処分場」での地層処分・管理・監視技術確立に高い関心を持つ地域社会の期待にも応 えることも目標においている。 2.研究方法 2−1 研究のながれ 図-2.1 はこのような研究遂行の概念を示す。図の中の大文字の研究者名は環境省助成による本 研究遂行者(神野、本田、大嶋) 、小文字は文部科学省助成の研究費に参画した研究者であり、主 -169- として室内実験・基礎実験を担当した。神野、本田および大嶋はサブテーマの研究者とも緊密に 連携し実証実験の実施に有用となる知見を得て、本研究を遂行した。なお、 「トリブチルスズを含 む海底堆積汚泥中の地層処分に関する実用化研究(平成 16 年度∼平成 17 年度科学研究費補助金 (基盤研究 (B)(2)) 研究成果報告書) 」は本年度報告された。 具体的な処理システム:まず単純なシステムから始める。基本的要素を繋ぐことが先決 汚泥処理 多田・大本 汚染地域の調査 剥層浚渫 浚渫汚泥の搬入 水域環境 管理 大嶋・本城 神野・広城 本田・佐伯・広城 沈殿汚泥の無害化 処理及び焼却処理 水処理システム 一時貯留槽 ↓ 凝集沈殿 ↓ 膜シート ↓ 砂濾過 ↓ 活性炭 分解度の確認 処理土の埋め立て処分 処理土中のスズ及びダイ オキシン類の挙動追跡 処分地 管理 汚染地域の改善調査 処理水貯留槽 処理水水質の確認 (<2ng/L) 埋め立て処分 処理土のセメント固化 ・強度解析 ・溶出実験 善・神野 浸出防止工法の適用 ・漏水監視 ・処分地の安全確保 図-2.1 全体研究の構成と本研究を位置づけ(文部科学省助成金では主として室内 実験で基礎的事項を研究、環境省研究助成金では実証実験を行い、実用化を目指す) 2−2 具体的な研究方法 1) 神野の研究方法は「実証プラントにおける剥層浚渫による有機質土の揚泥と凝集沈殿および 水処理」のために、N 県 O 町泊地隣接の空地および F 市 H 湾東部未整備空地において、それぞ れ N 港、T 湾海底堆積土および H 湾東部水域堆積土を剥層浚渫し、これを揚泥→凝集沈殿→水 処理プラント妥当性の評価を行う。 2) 本田の研究方法は「実証実験で凝集沈殿により分離沈降した汚泥の分解処理実験」を行うた めに、分解剤散布処理とその効果評価を行う。 3) 大嶋の研究方法は、 「線虫等底生生物を使った毒性評価と海域改善効果の評価手法の提案」の ために、堆積土中での線虫などの毒性評価を行う。 -170- 3.結果と考察 3−1 剥層浚渫による有機質土の揚泥と凝集沈殿および水処理(神野健二) (1)室内において実施した凝集沈殿剤の選定の検討により、PSI-100((株)水道機工製)が他の 凝集剤より優れていた。 (2)平成 16 年 12 月に N 県において実施した TBT 含有海底汚泥については、凝集沈澱後の上澄水 中 TBT 濃度 1,200∼1,450ng/L が一連の処理により、 活性炭濾層通過後には 3ng/L まで除去できた。 (3)平成 17 年度 8 月 31 日、9 月 1 日の流入水と流出水に関して、濁度はほぼ除去されたが、溶 存態窒素および溶存態リンはほとんど除去されなかった。 (4) 平成 17 年 8 月 30 日に採取した流入水、流出水中の TBT 濃度は 2.6ng/L から 1.5ng/L に低下 しており、ポリエステルシート(「シート①型」錦城護謨製)5 枚と砂ろ過によって除去された。 図-3.1∼3.3 にはこれらの状況を示す。 7.83 7.88 8 7.77 6 7.58 7.13 7.07 6.75 7.18 0 0.01 4.47 6.83 7.63 2 300 4.98 6.41 5.71 6.07 6.39 0.1 TBT TPT 350 7.71 7.45 4 400 3.63 塩化第二鉄 PAC 濃度 [ng/L] 10 4.94 1 250 200 150 100 10 50 注入量(ml/L) 0 凝集沈殿前 図-3.1.1 凝集剤注入量と残留濁度 図-3.1 凝集剤注入量と残留濁度 凝集沈殿後 シート 3枚通過後 図-3.1.6 シート 3 枚時の TBT・TPT 図-3.2 膜シート3枚重ね時の TBT,濃度変化(①型) TPT の除去効果 10000 1000 TBT濃度(ng/L) 残留濁度(度) 12 濃度低下 PSI-050 PSI-100 14 100 10 1 凝集沈殿後 砂濾過通過後 活性炭吸着後 図4実験過程における水中TBT濃度の変化 図-3.1.9 実験における水中 TBT TBT 濃度の変化 濃度の減少 図-3.3 上澄水、濾過水中の -171- 3−2 トリブチルスズを含む海底堆積汚泥中の地層処分に関する実用化研究(本田克久) (1)実際の底質を用いた実証実験では、ダイオキシン類、有機スズ化合物ともに、分解剤の添加 量を上回る分解率が得られた。特に、N 県 N 港の底質では、基準値を下回ることができた。 (2)しかし、実際の底質を用いた実験結果は、標準物質を用いた基礎試験の結果に比較して分解 率が低かった。これより、いずれの有害物質も、分解剤と接触することが分解するための重要な 条件であると推察された。 (3)F 市 H 湾東部水域の底質の分解率が、N 港の底質の分解率に比べて低かったのは、ダイオキシ ン類と有機スズ化合物濃度が低かったために、分解剤の添加量も 5 重量%という少量で実施したこ とが、有害物質と分解剤との接触不良を引き起こしたと考えられる。 (4)以上の接触不良の改良する方法としては、すりつぶし効果のあるロッドミルや2軸混練機と いった混練機器を使用すれば、有害物質と分解剤の接触が良好になり、分解率が更に向上するこ とが期待できる。 (5)本処理技術により、分解剤の添加量以上にダイオキシン類を低減することは可能である。特 に、基準値を上回る N 港の底質については、基準値を下回ることができた。また、有機スズ化合 物については、基礎実験により、液相中の有機スズ化合物を効果的に除去することが明らかとな り、これを実際の底質に適用した場合においても、ダイオキシン類と同様に、分解剤の添加量以 上に有機スズ化合物を除去できた。 写真-3.1 A 底質の分解処理(左から、投入した底質、分解剤添加、分解処理) 表-3.1 有機スズ化合物濃度分析結果と分解率 MBT DBT TBT TPT ng/g 処理前 0.85 3.9 17 0.43 処理後 0.99 3.6 12 0.27 分解率 -16 8 29 37 -172- 3−3 海産自由生活性線虫を用いた現場底質と無害化処理を行った汚染底質の毒性評価 (大嶋雄治) (1)現場底質の毒性評価 ア) 線虫の TBT に対する 24 時間半数致死濃度(LC50)は 690 μg/L であり、全生涯暴露(8 日間) では最低作用濃度 3,260 ng/L で成長に有意な影響が認められた。 イ) 発光バクテリアを用いた試験法に比べて線虫を用いた試験法は TBT に対する感度が低い。 ウ)海産自由生活珪藻食性線虫を用いた試験法に発光バクテリアの試験法を組み合わせることに より、沿岸底質の毒性試験を行うことが可能である。 (2)無害化処理を行った汚染底質の毒性評価 エ)N 港から採取した汚染底質の凝集沈殿上澄水における TBT 濃度は、砂および活性炭濾過によ り 99.9%と減少した。 オ)線虫を用いて、凝集沈殿後の未処理上澄水、砂ろ過水および活性炭通過水の毒性を評価した 結果、未処理上澄水を暴露した区でのみ、線虫の体長が有意に小さくなったが、砂ろ過水および 活性炭通過水では影響が認められなかった。 カ)本研究により、海産自由生活珪藻食性線虫を用いた試験法に発光バクテリアの試験法を組み 合わせることで、汚染底質の分解処理による毒性の低下を評価できた。 表-3.2 N港A地点での採取底泥懸濁水、砂濾過水および活性炭濾過水の TBT濃度と線虫Prochromadorella sp.1への生育効果 線虫の体長 (µm) 線虫の世代 (日) TBT濃度 (ng/L) 4日 底泥なし 未処理の懸濁水 9日 508 ± 42 1,172 ± ** 62 ** 9,000 ± 743 430 ± 62 砂濾過水 4.5 ± 0.3 490 ± 67 1,133 ± 56 6 活性炭濾過水 2.3 ± 0.4 485 ± 42 1,117 ± 51 6 陽性対照 (銅Cu) 数値は平均値±標準偏差 349 ± 39 ** ** 1,027 ± 115 6 611 ± 169 ** 6 7.8 ± 1.0 p <0.01 3−4 一連の処理システムの構築(神野健二) (1)室内吸着実験によってポリエステルシート・砂・活性炭による TBT 吸着効果が確認された。ま た一連の実験結果を数値モデルと照合して処理材の阻止率λm、λs、λc を得た。 (2)各処理材の阻止率を用いて処理濃度と処理材にかかるコストを評価する自己組織化マップ手 法のプログラムにより、処理量 [m3]・処理時間 [hour]が与えられるとき、TBT 処理目標濃度 [ng/L]が達成可能で最適と考えられる処理システムのパラメータ(処理装置断面積、シート・砂・ 活性炭の必要量)、コストを算出できる。 -173- 3−5 考察のまとめ 以上のような検討結果から、海底に留まる TBT を固相で捕捉するということが本処理システム の基本的な方法は十分に実施可能である。すなわち、溶存中の TBT についての水処理については 膜シート、砂および活性炭濾過により TBT 濃度を目標値以下に下げる。毒性低減効果は、海産自 由生活珪藻食性線虫を用いた試験法に発光バクテリアの試験法を組み合わせる生物学的な評価指 標によっても確認できることが判った。凝集沈殿後の残留泥土については、分解剤などによる毒 性低減促進効果が認められることが確認できた。そのほか、有望な手法としては(ⅰ)セメント固 化による溶出低減、(ⅱ)埋め立て後の長期環元下における微生物による TBT→DBT→MBT 分解など の議論を深めていけば、より安価な処理方法とシステムの構築が可能と考えられる。 なお、N 県及び F 市で行った実証実験では、1回の剥層浚渫とそれに対する回分処理実験であ った。連続運転を行う場合については、稼働の連続性に関して確認する実証試験が望まれる。こ の点については、今後の検討課題としたい。 4.結論 本研究においては、2次汚染を起こす事なく必要な深度まで効果的に浚渫した堆積土に対して、 凝集沈殿、膜シート、砂および活性炭濾過による水処理を行うとともに、固液分離された泥土を 分解による無害化、あるいはセメント固化による溶出低減埋め立て処分、還元環境下における微 生物による分解などの処理を行うことによって、造船所や港湾・漁港のいわゆるホットスポット を浄化する技術について、一連のシステム構築という視点から検討したものである。 一連の処理システムの基本的な方法は、十分に実施可能であると考える。すなわち、本システ ムを具体化する場合の基本的な思想は、 1)溶存中の TBT についての水処理については膜シート、砂および活性炭濾過により TBT 濃度 を目標値以下に下げる、 2)毒性低減効果は、海産自由生活珪藻食性線虫を用いた試験法に発光バクテリアの試験法を組 み合わせる生物学的な評価指標によっても確認する、 3)凝集沈殿後の残留泥土については、分解剤などにより毒性分解・低減促進効果させる、 4)セメント固化による溶出低減、埋め立て後に遮水などの施工により長期環元下を確保し、微 生物による TBT→DBT→MBT 分解を行い無害化する、 ことである。しかも処分すべき量が在来工法に比べて少なくてすみ、安価な処理方法とシステム の構築が可能と考えられる。我が国においては、未だ海底汚染堆積土についての取り組みは陸上 での処分問題に比べて十分とは言えないと考えられる。本研究を通して、水産資源の保全・回復 あるいは港湾での環境改善と親水空間の創出など、早急に取り組まなければならない課題がある。 -174- 廃石膏ボードの安全・安心リサイクル推進を可能とする 石膏中フッ素の簡易分析・除去技術の開発 研究期間(西暦)=2004−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=袋布 昌幹(富山工業高等専門学校) 共同研究者名=丁子 哲治(富山工業高等専門学校),城石 昭弘(富山大学) , 加賀谷 重浩(富山大学) 1. 研究目的 近年,建設廃棄物として発生する石膏ボードの廃棄量の増加が問題化している。近年の埋め立 て処分場不足の状況を受けて, 平成 14 年 12 月にそのリサイクル率を平成 20 年までに 3%から 20% に向上させる数値目標が設定された。しかしながら,廃棄石膏ボード中には高濃度のフッ素が含 有しており潜在的なリサイクルの障害要因となっている。そこでセッコウ中のフッ素量を評価し, リサイクル先に適応した対策を講じることが求められるが,既存のセッコウ中フッ素量評価法で は問題がある。現在,セッコウ中のフッ素量は試料を過塩素酸共存下で水蒸気蒸留してフッ化物 を蒸留分離し,蒸留物中のフッ化物イオン濃度をランタン−アリザリンコンプレクソン(ALC)吸光 光度法あるいはイオン選択性電極(ISE)法により測定している。他の不純物についても過塩素酸で サンプルを加熱分解することが求められる。この方法では前処理の装置や条件が制限され,操作 に長時間を有する。さらに多くの試料を同時に分析するためには蒸留装置を複数用意する必要が あり,セッコウを取り扱う現場ではこれらの分析を外部の分析会社に委託している。そこで,中 性付近の溶液にセッコウを添加して溶解させることができれば,極めて短時間でセッコウ中のフ ッ化物をはじめとする不純物含有量を測定でき,その対策を講じることが可能となると考えられ る。この種の分析法は,種々の現場においてオンサイトで容易にセッコウ中のフッ化物含有量を 測定に適用することができると考えられるが,このような簡便なセッコウ中不純物分析法は現在 ない。本研究では, (1)廃石膏ボード中のフッ素量をオンサイトで簡便に分析できる手法・デバ イスの開発(2)廃石膏ボード中のフッ素の不溶・安定化技術開発および(3)ソフトケミカル プロセスによる廃石膏ボード中のフッ素の除去技術の開発を通して安心・安全な石膏リサイクル 技術の構築に貢献するものである。研究の2年目となる平成 17 年度は,セッコウ中フッ素量のオ ンサイト分析装置の開発,セッコウ中フッ素の存在状態および不溶・安定化方法に関する検討, 平成 16 年度に開発したセッコウ溶解液を用いたセッコウ粒子の溶解挙動の動的観察を行った。 また,平成 18 年度に行うセッコウ中フッ素除去に関する研究調査,および一般市民に対するア ウトリーチ活動を行った。 2. 研究方法 (1)セッコウ中フッ素量のオンサイト分析装置の開発:平成 16 年度に開発した,セッコウを中 性付近,室温で溶解することができる溶解液を用いて,セッコウを溶解して得られた溶液中のフ -175- ッ素濃度を測定できる装置を試作した。 (2)セッコウ中フッ素の存在状態:文献調査および実験的検討により,セッコウ中に含まれる フッ素の存在状態について検討を行った。その結果に基づいて,セッコウ中のフッ素を不溶化す る技術の検討を行った。 (3)セッコウ粒子の溶解挙動の動的観察:本研究で開発した新規溶解液を用いてセッコウ粒子 1粒を溶解させ,セッコウ粒子中に存在する不純物の状態を評価する手法を開発した。 (4)アウトリーチ活動:本研究課題は廃棄物量削減および循環利用が求められている建設廃棄 物に関するものである。そのため,得られた成果は速やかに社会に還元されることが求められる。 そこで,研究代表者が所属する NPO 法人エコテクノロジー研究会が富山県生活環境部環境政策課 から依託を受けている「平成 17 年度産業廃棄物排出事業者に対する技術相談・アドバイザー事業」 に加わって,県内の事業所における廃石膏ボードに関する現状を調査した。また,一般市民を対 象に本研究に関するアウトリーチ活動を行った。 3. 結果と考察 (1)セッコウ中フッ素量のオンサイト分析装置の開発 平成 16 年度の研究において,室温,中性付近で十分な量のセッコウを溶解させる水溶液組成 を開発した。具体的には,カルシウムイオンに対するキレート生成能の高いキレート剤である trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CyDTA)を 0.10moldm-3 程度含み,酢 酸−酢酸緩衝液を用いて pH5.5 程度という中性付近の水溶液を調製することにより,中性付近, 室温にて 30 分程度でセッコウを溶解できることがわかった。この溶液組成については共同研究 を進めているチヨダウーテ株式会社と研究代表者が所属している独立行政法人国立高等専門学 校機構との共同出願により,特許出願(特願 2005-109599)を行った。 廃棄物の発生,受入現場において,この水溶液を用いてセッコウを溶解させ,得られた水溶 液中のフッ化物イオン濃度を測定すれば,セッコウ中フッ素含有量をオンサイトで知ることが 可能となる。そのためには,分析のスキルを持たない現場の作業者が簡単に使用することがで きる測定装置が必須となる。そこで民間企業の協力を得て,フッ素イオンメーターを改造した 分析装置の試作機を製作した。平成 18 年度に実際に民間企業等に試用していただきながら,装 置の実用化を目指す予定である。 (2)セッコウ中フッ素の存在状態 廃石膏ボードのリサイクル先として,路盤材等の建設分野への活用が現在試みられているが, その際セッコウからのフッ素溶出がリサイクルの潜在的な障壁となる。そこで,セッコウ中の フッ素の溶出について種々検討を行った。結果,通常の分析法で評価されるセッコウ中のフッ 素含有量とフッ素溶出量との間には全く相関が見られず,セッコウ中のフッ素の存在状態の評 価を行わなければフッ素の溶出の制御が不可能であることが示された。これについては,フッ 素以外の不純物にも該当することであり,不純物の「量」だけでなく, 「質」の評価法の開発が 必須であるとの結論を得た。 -176- (3)セッコウ粒子の溶解挙動の動的観察 (1)で述べたセッコウ溶解液を用いれば,セッコウを温和な条件で溶解させることができ る。そこで,光学顕微鏡を用いて,セッコウ粒子一粒を上記溶解液で溶解させ,その挙動を動 的に観察することを試みた。結果セッコウ中の不純物は,セッコウ粒子内部に存在するもの, セッコウ粒子と独立して存在するもの,セッコウ粒子表面に付着しているものがあり,それら を目視により区別が可能であることが示された。これは, (2)で示した不純物の存在状態の評 価法開発につながる成果であり,今後の展開が期待できる。 (4)アウトリーチ活動 本研究では,一般市民および関連業界に対するアウトリーチ活動を併せて展開している。昨 年度に行ったアウトリーチ活動等を通して,富山県の依託を受けて NPO 法人エコテクノロジー 研究会が行っている「平成 17 年度産業廃棄物排出事業者に対する技術相談・アドバイザー事業」 において,石膏ボードの廃棄物の循環利用に関する具体的な技術相談が複数寄せられた。具体 的な内容は明らかにできないが,いずれもセッコウリサイクルの現場における課題であり,こ の相談内容で見いだされた問題点を本研究課題にリンクさせて,より実用的な石膏ボードリサ イクル技術の開発につなげるべく検討を進めているところである。 また,平成 18 年 3 月 6 日に富山市エコタウン交流推進センターにおいて, 「第2回廃棄物の 循環利用に関する研究ワークショップ」を開催し,県内の廃棄物処理,建設解体業者等から約 40 名の参加を得た。ワークショップでは外部講師によるレクチャーに加えて,本研究の紹介を 行い,本研究事業の社会への還元を目指した。 (5)その他 新規セッコウ溶解液に関する研究成果は,平成 17 年5月に北見工業大学で開催された第 66 回分析化学討論会で研究室の学生が発表し,それに対して「分析化学討論会新人賞」が授与さ れた。これらの成果は大きく新聞報道された。また,研究成果は中国,チュニジアで開催され た国際会議,国内のシンポジウム等でも発表し,それらについても新聞報道されている。 4. 結論 研究2年目の平成 17 年度は廃セッコウ中フッ素分析装置の試作,セッコ中の不純物の存在状態 の評価を中心に検討を行った。その中で,セッコウ中の不純物は,従来の「量」から「質」へと, 評価の概念の転換が必須であり,これなしにはセッコウのリサイクルは促進できないとの結論を 得た。現在これらの結論をもとにセッコウ中のフッ素化合物の存在状態評価,固定・不溶化に関 する研究を進めている。また,セッコウのリサイクル事例に適したフッ素制御技術の開発,セッ コウからのフッ素除去技術の検討を進めている。 いくつかの研究成果はすでに民間企業との共同研究として実用化に向けた作業を進めている。 また建設業界等,石膏ボードをリサイクルして活用している現場からの関心も高く,平成 18 年度 の研究ではこのようなネットワークを活用した実用的な成果を挙げることができると期待される。 平成 17 年 10 月に行われた研究成果に関する中間評価において,本研究は極めて高い評価を得 ている。本研究を通して,廃石膏ボードの安心・安全リサイクル技術に貢献できる成果が得られ るものと期待される。 -177- 最終処分場の早期跡地利用を考慮した多機能型覆土の検討 研究機関(西暦)=2004−2005 研究年度(西暦)=2005 研究代表者=遠藤和人(独立行政法人国立環境研究所) 共同研究者=石垣智基(龍谷大学)、小峯秀雄(茨城大学)、 呉 佳曄(株式会社セントラル技研) 1.研究目的 最終処分場の早期跡地利用のための安全性確保や不適正処分場の臭気対策を受動的に可能にし、 早期にリスクを削減する最終覆土構造を提案することが目的である。提案する最終覆土は、覆土 を通過する水分フラックスの収支、ガスフラックスの収支、下部廃棄物層からの塩類上昇防止、 処分場ガスのメタン酸化による温暖化防止、硫化水素ガス捕捉による臭気対策、過度の上昇熱拡 散防止、耐浸食性、降雨浸透に対する構造安定性に着目し、鉛直方向の多様性(積層)のみなら ず、平面的な多様性(不均一性)も有する、多機能な性能要求に応えることのできる覆土システ ムである。図 1-1 に多機能型覆土の概念図を示す。多数の薄層から構成される多層覆土構造の施 工を可能とする締固め管理手法も検討し、斜面安定性を確保しながら耐浸食性を考慮することで 維持管理コストの削減についても検討する。この多機能型覆土は、施工するだけで受動的に硫化 水素ガスやメタンガスを捕捉し、処分場の安定化に必要な降雨浸透を許す構造となっており、不 適正処分場への適用時には、最終処分場の水収支を変えることなく対策を講じることが可能とな る。 図 1-1 多機能型覆土の概念図 2.研究方法 多機能型覆土構造に求められる材料パラメーターの同定を行うため、シミュレーションコード NAPL:Simulator を用いて気液二相流による数値実験を実施した。不飽和特性曲線である van Genuchten パラメーターを操作すると同時に、残留水飽和度の影響も検討し、粒径区分や透気・ 透水性能との関係に着目した材料評価を行った。通気兼バイオフィルター層の検討には、一般廃 棄物の溶融物である水砕スラグと豊浦けい砂(対照)を用いてカラム試験を行い、透気係数の測 定には土壌通気性測定器(大起理化工業製)を用いた。カラム試験は直径 200mm×高さ 1000mm のアクリル円筒を使用し、マスフローコントローラーによって調整されたメタン:二酸 化炭素=60:40%の混合ガスをインピンジャーによって湿潤させた後に、カラム底部より通気さ -178- せた。覆土層下部に空隙を設けるとともに、差圧計を設置して大気圧との圧力差を計測した。硫 化水素ガスの通気吸着カラム試験では、リモナイト(黄土)を添加材としたスラグ層を想定し、 上方流として硫化水素 150ppm(窒素バランス)を通気させ、カラム内のガス濃度を経時的に測 定した。バリア層を対象とした保水性試験では、産業廃棄物の有効利用を想定した材料として石 炭灰 2 種類、水砕スラグ及び関東ロームを用いた。試験は、三軸室を用いた加圧板法にて水分保 持曲線を求めた。供試体寸法は、直径 60mm、高さ 20mm を目標寸法とした円柱形であり、実施 工を想定して動的締固めによって供試体を作成した。試験方法は地盤工学会基準「土の保水性試 験方法(JGS0151-2000)」に準拠して行った。実験より得られる各ポテンシャル段階における間 隙空気圧、間隙水圧、排水量及び乾燥密度を用いてマトリックポテンシャルと含水比を算出した。 一定相対湿度下における自然含水比の測定では、デシケーター内に試料と水またはシリカゲルを 入れ、相対湿度が一定になった時を、土中水と大気中の水蒸気との間の移動がなくなったと考え、 その時の含水比を自然含水比と考えた。得られた相対湿度を化学ポテンシャルに換算し、土の保 水性試験結果と併せて評価した。施工性と構造安定性を、それぞれ現場落球探査試験と数値解析 によって評価した。また、両方の強度特性に関わる要素試験として室内三軸圧縮試験(CU 試 験)を行った。バリア層と通気層を統合的に判断するため、中型土槽実験を実施した。土槽は排 水機能と蓄熱機能、降雨発生装置を装備し、ガスフラックス、ガス圧、間隙水圧、体積含水率、 表面ならびに各層の流出量をモニタリングした。また、小型土槽を作成し、通気層内に添加され た吸着材や反応材、粒度調整材の細流分流失度を評価した。 3.結果と考察 多機能型覆土は二つの積層からなる。上部の層はバリア層であり、バリア層の面積(部分的に バリア層に開口部を作る)によって処分場への雨水浸透量を制御する。下部の層は通気層であり、 メタン酸化と硫化水素の吸着を担っており、オフガス設備なしでも処分場上部の安全性を確保し、 最終覆土施工の後、早期の跡地利用を可能にする。これより、通気層では、降雨浸透と処分場ガ スの捕捉が同時に行われるため、気液の二相流れによって材料特性を評価する必要があり、バリ ア層の開口部へのガス流動特性ならびにパラメトリックスタディーによる不飽和浸透特性(van Genuchten パラメーター)の影響を数値解析によって評価した。 これより、バリア層と通気層の 透気係数の差が重要なパラメーターとなり、さらに、材料の粒度を調整する必要があることが求 められた。 通気兼バイオフィルター層におけるメタン酸化能を評価するため、メタン酸化細菌に必要な酸 素濃度の検討を行った。水砕スラグおよび豊浦けい砂の材料評価を実施した結果、間隙率はそれ ぞれ 42%および 37%、また乾燥時の透気係数はそれぞれ 11.5 cm/s、1.2 cm/s が得られた。また 両者を混合した場合、豊浦砂の添加率が 20%までは 10.4 cm/s と高い透気係数を維持したが、そ れ以上の添加率になると透気係数が著しく減少した。また、スラグの体積含水率が 10%(飽和 度 27%)までは、透気係数の大きな減少はなかった。スラグのみをカラムに充填して混合ガス の通過試験を行った結果、流量 50 SCCM において表層 20cm 下まで空気の侵入が確認された。 空気侵入深さは豊浦砂のみを充填した場合とほぼ同程度であった。しかし豊浦砂の場合は 20cm 下で酸素濃度が約 3%であったのに対して、スラグの場合は 20cm 下の酸素濃度が約 9%であり、 -179- 空気の浸入量が大きく異なることが示された。表層からの空気浸入量が多いことは、好気性であ るメタン酸化細菌の有効利用の観点からは、大きな利点となる。すなわちバイオフィルター層へ のスラグの適用可能性が示されたものといえる。覆土カラム実験におけるガスのマスバランスを 表 3-1 に示す。 表 3-1 覆土カラムにおけるガスのマスバランス 流入ガス量(mL/min) 充填材料 放出ガス量(mL/min) メタン酸化率 メタン 二酸化炭素 メタン 二酸化炭素 標準砂・含水率 5% 4.7 3.2 2.9 5.0 38.3 % 標準砂・含水率 10% 7.2 4.8 3.5 8.5 51.4 % 標準砂・含水率 15% 8.9 5.9 4.7 4.7 43.8 % 硫化水素ガスの吸着性能も同様のスラグ層を母材とし、黄土の精製粘土であるリモナイトを吸 着材とした通気層を想定してカラム通気試験を実施した。通気流量 2L/min にて 150ppm の硫化 水素をカラム下端から上方流によって通気させた結果、硫化水素濃度の上昇順位は最下(No.1)、 部から順に上方へと向かうと想像されたが、最下部の No.1 での濃度変化は破過せずに低い濃度 を保つ結果となり、二番目の No.2 の点が最も破過が早い結果となった。硫化水素の破過カラム 試験結果を図 3-1 に示す。No.1 の測点の濃度において、一次的に 110 分辺りで濃度が突出してい るが、その点を除けばほぼ 40∼60 ppm の範囲にあり、カラム上部の No.4 と No.5 では濃度が上 昇せず、約 5∼10 ppm の範囲となった。 120 H2S concentration (ppm) RUN1 100 No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 80 60 40 20 0 0 100 200 300 400 500 Elapsed time (min.) 図 3-1 硫化水素破過カラム実験における濃度変化 バリア層における保水性(不飽和における難透水性)を検討するため、水分保持試験を実施し た。シルトを主体とする石炭灰と DL クレイは、ほぼ同様の水分保持曲線を示した。水砕スラグ は、低い含水比状態を維持し、マトリックポテンシャルも比較的小さい値を示すことから、保水 性が低く、排水性に優れた材料であることがわかった。一方、関東ロームは高い保水性を有する ことが実験結果より確認された。松澤らは、生ごみを埋め立てている廃棄物処分場では含水率が 10∼30%の範囲においてメタン酸化細菌数にほとんど阻害を与えないと報告している。この値を 含水比に換算すると約 11∼43%となる。また、松澤らが調査を行った処分場覆土は、掘削した -180- 際の地山を用いているため、本研究で使用した石炭灰や DL クレイとほぼ同様の水分保持曲線で あると推測される。含水比が 11∼43%のときの石炭灰、DL クレイのマトリックポテンシャルは 15∼200 kPa の範囲にあり、この範囲ではメタン酸化細菌の育成阻害は小さいと考えられる。 多機能型覆土の強度特性と施工管理の観点から三軸圧縮試験と落球探査試験を実施し、材料特 性値を用いて構造安定解析を行い、提案した多機能覆土の安全性を確認した。覆土の基板層とな る廃棄物地盤を対象とした落球探査試験結果より得られた変形係数は、既往の研究成果に対応す る値となったが、有機系廃棄物と無機系廃棄物との変動係数(変形係数のばらつき)には差異が 生じた。水砕スラグについては、転圧層を重ねる毎に変形係数が向上する積層効果を評価するこ とが可能であった。試験粒度が同じであれば、現場試験である落球探査より得られる変形係数は、 三軸圧縮試験結果とほぼ同様の値となることが確認された。覆土の傾斜勾配と構造安定性を検討 するため、直線すべりおよび円弧すべりによる斜面安定解析を実施した。その結果、両者共に同 一の結果となり、限界勾配は 1:1.93(27.3 度)と算出された。バリア層ならびに通気層の統合的 検討を遂行するため、室内中型土槽実験を開始した。通気層は一般廃棄物溶融物である水砕スラ グにリモナイト(精製黄土)、関東ロームを加えた材料、バリア層には関東ロームに水砕スラグ を添加した材料を使用した。土槽内に積層構造を作り、最下部より、処分場ガス代替として硫化 水素、メタン、窒素の混合ガスを一定圧力で吹き込んだ。覆土層内にガス採取装置を設置し、ガ ス濃度の変化を一定時間で分析し、実験を継続的に実施している。 4.結論 多機能型覆土における水分・ガス移動制御には、バリア層、通気層ともに不飽和特性曲線であ る水分保持曲線の形状が重要であり、特に、粒径に起因するパラメーターの影響が大きいことが 明らかとなった。また、この気液浸透における不飽和特性曲線を求めるための室内試験装置を開 発し、要素試験として、いくつかの廃棄物有効利用材料を用いた保持曲線の描写を可能にした。 通気層のもう一つの機能であるバイオフィルター層として、好気性菌であるメタン酸化細菌の活 性を評価するためのカラム試験結果より、細砂等の細流分含有率が酸素の侵入量に影響を及ぼす ことを明らかにした。さらに、硫化水素ガスに関しては、黄土の精製粘土であるリモナイトを吸 着材として用いると、硫化水素ガスを多量に捕捉することができるが、その反応は時間依存であ ることが確認された。薄層かつ積層構造である多機能型覆土の施工管理に落球探査法を用いるこ との有意性を、測定手法の迅速性とコストの面から明らかにした。本研究で用いた水砕スラグや 関東ロームの強度特性による検討した多機能型覆土の構造安定計算では、限界勾配 1:1.93 と算出 され、実用上全く問題のない勾配を維持できることが確認され、斜面部においても積層構造の多 機能型覆土が施工可能であることがわかった。 -181- 小規模処理場における高効率ガス発電を可能とする熱分解 −ガス改質技術の開発 研究期間=2004−2005 研究年度=2005 代表研究者=姫野修司(長岡技術科学大学環境建設系) 共同研究者=藤田昌一(長岡技術科学大学環境建設系) 1.研究目的 日本で排出される一般廃棄物は年間約 5,000 万トンであり、廃棄物のエネルギー転換利用は、 処分場不足対策、循環型社会構築のいずれの観点からも喫緊の課題である。現在は、処理量 200 トン/日以上の大型処理施設で蒸気タービンによる発電が行われているものの、発電効率は 20%と 低く、9 割を占める中小規模処理施設においては経済性の確保が難しいことから殆ど発電が行わ れていないのが現状である。 このような中、先進型の廃棄物処理技術として、中小規模の処理施設でも高効率発電が可能な 熱分解−ガス改質技術が注目されている。本研究では、この熱分解−ガス改質型発電技術におい て最適運転条件の決定や安定処理を可能にするために、熱分解条件が回収ガス組成へ与える影響 を定量的に把握し、高い熱量を回収可能な条件の検討を行うこと、また、熱分解ガス改質の反応 過程をモデル化し、あらゆる熱分解条件での回収ガス組成の予測が可能な熱分解ガス改質モデル を構築することを目的とする。 原料投入口 2.研究方法 温度計 ① 熱分解−ガス改質基礎特性実験 流量コントローラ 熱分解ガス改質実験装置を図 2-1 に ガスパック リボンヒータ 流量計 酸素濃度計 示す。原料にはごみ質の違いの影響を 排気 避けるため組成が比較的均一な下水汚 O2 泥(表 2-1)を用いた。 N2 ガス洗浄 電気炉 実験方法は、炉内の温度および雰囲 水蒸気発生部 気が安定した後に乾燥させた下水汚泥 図 2-1 10g を投入し熱分解を行った。発生した熱分解ガスは、試料投入後、 熱分解実験装置 表 2-1 下水汚泥の組成 時間毎にガスパックで採取し、TCD 型ガスクロマトグラフで定量分 析を行った。 表 2-2 に実験条件を示す。熱分解条件の違いによる熱分解生成物 への影響について熱分解ガスの発生量および組成、そして単位汚泥 あたりの低位発熱量から把握を行った。熱分解ガスの低位発熱量 Hl は、式(1)および(2)により算出した。 Hh H hi x i i Hl H h 600 i 工業分析 [wt%] 22.3 灰分 [kcal/Nm3] 18 (VH 2 22.4 (1) m m 2VCH 4 m n (VCm H n )) [kcal/Nm3] 22 -182- (2) 77.7 可燃分 元素分析 [wt%] 炭素 41.2 水素 6.1 窒素 4.5 酸素 24.9 可燃性硫黄 可燃性塩素 総発熱量 [kcal/kg] 0.9 0.08 4515 表 2-2 実験条件 ここで,Hh は混合ガスの高位発熱量、Hhi、xi は成分 i 10 g 汚泥重量 熱分解温度 熱分解時間 の高位発熱量および体積分率を表わし、V は各ガスの体 積分率を表わす。 400,500,600,700 ℃ 30 min 1L/min 0.07 ∼ 0.20 キャリアガス流量 酸素供給量(O2/C) ② 熱分解ガス改質モデルによるシミュレーション 水蒸気供給量(H 2O/C) 0.14 ∼ 0.48 1 atm 炉内圧力 熱分解ガス改質モデルでは炉内にて逐次・並列に起こ ってる熱分解反応、部分燃焼・ガス化反応、ガス改質反応について、これらの反応式および反 応速度から各物質の消費・生成の速度式を導き,数値計算を行うことで各物質収支の時間変化 を表現可能なモデルの構築を行った。 3.結果と考察 3−1 熱分解−ガス改質実験結果 (1) 熱分解温度条件の影響 図 3-1-1 に 700℃窒素雰囲気での熱分解実験による生成ガス組成の経時変化を示す。また、 図 3-1-2 には各温度条件での熱分解ガスの 5 分間の累積ガス生成量および、単位汚泥重量当 たりの回収熱量の比較結果を示す。 熱分解ガスは、二酸化炭素、一酸化炭素、水 素、メタンの順に多く発生した。二酸化炭素や [vol%] 25 ている。これは、有機物中の水素は比較的結合 力が強く、熱分解開始直後は発生せずに分解が 熱分解ガス れる。また水素の発生が他のガスに対して遅れ 20 15 一酸化炭素が多く発生したのは、下水汚泥中に 含まれている酸素との反応によるものと考えら CO22 CO C2H6 C 2 H6 C2H4 C 2 H4 CH44 CH CO H H22 700℃,N2 10 5 0 0 5 10 15 20 時間[min] 進んだ際に発生するためだと考えられる。熱分 解温度条件の影響を挙げると、高温での熱分解 図 3-1-1 窒素雰囲気での熱分解ガス組成の時間変化 ではエチレンやエタンなど炭化水素類の増加が に低分子化されたものと考えられる。また、温 度が高くなるのに伴い、熱分解ガス発生のピー クが早くなっており、熱分解速度は温度に大き く影響されると言える。 図 3-1-2 からは高温での熱分解では生成ガス 発生量が多くなることが分かり、700℃で約 6.1mol/kg-sludge となった。また、単位重量当た りの回収熱量も高温になるほど高くなり、700℃ で熱分解ガスの単位重量当たりの回収熱量は約 700 kcal/kg-sludge となった。 -183- Pyrolysis gas yield [mol/kg-sludge] 熱分解ガス発生量[mol/kg-sludge] 成されるタール分等の比較的大きな分子が活発 CO CH CH44 2H4 C C2H4 2H6 C C2H6 CO CO22 Recovery heat quantity par unit weight 単位汚泥重量あたりの回収熱量 15 900 10 600 5 300 0 Temp. [℃] O2/C H2O/C 0 400 400℃ 400℃ 500 500℃ 500℃ 600 600℃ 600℃ 700 700℃ 700℃ - - - - Recovery heat quantity par unit weight 単位汚泥重量あたりの回収熱量 [kcal/kg-sludge] [kcal/kg-sludge] H H22 見られた。この原因として、熱分解した際に生 図 3-1-2 熱分解温度が熱分解ガス発生量と 単位重量あたりの回収熱量に与える影響 (2) 酸素供給の影響 図 3-1-3 に熱分解温度 600℃、酸素供給量 O2/C(供給酸素量 / 試料中の炭素量)を 0.11mol/mol として実験を行った際の熱分解生成ガスの経時変化を示す。また図 3-1-4 には各 酸素供給条件における熱分解ガスの 5 分間(酸素を供給した時間)の累積ガス量および単位 重量あたりの回収熱量を示す。 25 [vol%] 酸素を供給した場合の熱分解ガスの経時 変化を、窒素のみの熱分解の結果と比較す 20 (O2/C=0.11) 15 熱分解ガス ると、酸素の供給により可燃分の部分燃焼 が促進され二酸化炭素と一酸化炭素の生成 が増加した。また部分燃焼により、窒素の みの熱分解と比べ短時間で熱分解反応が進 10 5 0 行することが分かった。酸素供給を行うと 0 5 10 15 図 3-1-3 酸素供給雰囲気での熱分解ガス組成の経時変化 H22 H れた。酸素供給量 0.20 mol/mol では Recovery heat quantity par unit weight 単位汚泥重量あたりの回収熱量 と大幅に増加したものの、二酸化炭 素の割合が増加したことによって発 熱量が低下し、回収熱量が低下する 傾向を示した。酸素供給量が 0.11∼ 0.13mol/mol で効率的な酸素改質が Pyrolysis gas yield [mol/kg-sludge] 熱分解ガス発生量[mol/kg-sludge] 促進に大きく寄与していると考えら CO CH CH44 2H4 C C2H4 2H6 C C2H6 CO CO22 15 900 10 600 5 300 0 0 600 0 - Temp. [℃] O2/C H2O/C できると示唆された。熱分解原料の 600 100 600 150 600 175 600 200 600 300 0.07 - 0.10 - 0.11 - 0.13 - 0.20 - Recovery heat quantity par unit weight 単位汚泥重量あたりの回収熱量 [kcal/kg-sludge] [kcal/kg-sludge] 燃焼による熱分解温度上昇が熱分解反応の られ、ガス量は約 9.2 mol/kg-sludge 20 時間[min] 熱分解炉内温度は 100℃程度上昇し、部分 部分燃焼反応が過剰であったと考え CO22 CO C2H6 C 2 H6 C2H4 C2 H4 CH44 CH CO H H22 600℃,N2+O2 図 3-1-4 酸素供給量が熱分解ガス発生量と 単位重量あたりの回収熱量に与える影響 単位重量当たりの回収熱量は、窒素 のみ条件の場合の約 330kcal/kg-sludge から、 H H22 CO CH CH44 2H4 C C2H4 2H6 C C2H6 CO CO22 Recovery heat quantity par unit weight 単位汚泥重量あたりの回収熱量 Pyrolysis gas yield [mol/kg-sludge] 熱分解ガス発生量[mol/kg-sludge] (3) 水蒸気供給の影響 水蒸気の供給により二酸化炭素、一酸化 炭素および水素の発生量が増加する傾向と なった。これは部分燃焼に加え、水性ガス 化反応が促進され、固定炭素およびタール がガス化し水素および一酸化炭素の発生が 促進されたものと考えられる。目視により 熱分解ガス中のタール発生の抑制効果も確 認できた。 図 3-1-5 から水蒸気供給量の違いの影響 15 900 10 600 5 300 0 Temp. [ ℃] O2/C H2O/C 0 600 なし 0 - 600 O2 0.13 - 600 60℃ 600 70℃ 600 80℃ 0.13 0.14 0.13 0.26 0.13 0.48 図 3-1-5 水蒸気供給量が熱分解ガス発生量と 単位重量あたりの回収熱量に与える影響 -184- Recovery heat quantity par unit weight 単位汚泥重量あたりの回収熱量 [kcal/kg-sludge] [kcal/kg-sludge] 約 520kcal/kg-sludge と約 58 %増加した。 を見ると、水蒸気供給量の増加に伴い、単位重量当たりの回収熱量も増加していく結果とな った。600℃、窒素+酸素(0.13 mol/mol)雰囲気(約 340kcal/kg-sludge)に対し、水蒸気を 0.48 mol/mol 供給した条件では、約 450 kcal/kg-sludge と 32 %の増加を示し最大となった。 3−2熱分解−ガス改質モデルによるシミュレーション ある原料の 600℃での反応において物質収支のシミュレーションを行い改質剤(酸素、水 蒸気)の供給の有無で比較を行った。図 3-2-1 に改質剤を供給しない場合と改質剤を供給し た場合の結果を示す。 両図を比較すると、改質剤を供給することによって、反応開始 10 秒程で二酸化炭素と水 蒸気が、改質剤を供給しない場合の約 3 倍の生成が見られた。これは供給した酸素のチャー や熱分解ガスとの部分燃焼反応によるものである。その後、水素や一酸化炭素の割合が増加 した。これはメタンやエチレンが、供給および熱分解により発生した水蒸気や二酸化炭素と 改質反応を起こし、水素や一酸化炭素に低分子化されたことによるものである。またそのた めメタンやエチレンは消費され減少する結果となった。したがって部分燃焼では反応熱によ る温度上昇の効果だけでなく、水蒸気や二酸化炭素の生成による改質反応の促進があること が分かった。また供給した酸素は反応開始数秒ですべて消費され、その間は燃焼反応が支配 的に起こり、水素、一酸化炭素も燃焼し発生しないことが分かった。しかし改質反応で水蒸 気や二酸化炭素と反応する、メタンやエチレンその他の炭化水素が消費されると、それに伴 い水蒸気や二酸化炭素の消費も低下し、余分に残存する結果となった。したがって改質剤の 過剰な供給は発熱量に寄与しない水蒸気や二酸化炭素の余分な生成を招き、熱分解ガスの発 熱量低下に繋がることが分かった。 図 3-2-1 シミュレーション計算結果(左:改質剤なし,右:改質剤あり) 4.結論 熱分解−ガス改質実験の結果から改質剤供給条件について下記の点が明らかになった。 ・ 熱分解温度の影響を評価した結果、高温になるほど熱分解ガス発生量および原料の単位重 量当たりの回収熱量は増加し、その影響は大きい。 ・ 酸素改質では熱分解反応と部分燃焼反応の間にトレードオフの関係にあり、酸素供給量が 0.11∼0.13 mol/mol で効率的な酸素改質が示唆された。 ・ 水蒸気を供給することにより水性ガス化反応が起こり、水素および一酸化炭素の発生が有 利となり、またタールの分解効果も確認できた。 -185- 焼却・溶融残渣の有効利用における 鉱物学的土壌生成学的安定化に関する研究 研究期間(西暦)= 2005−2006 研究年度(西暦)= 2005 代表研究者名= 島岡 隆行(九州大学) 共同研究者名= 渡邊 公一郎(九州大学) 、大迫 政浩((独)国立環境研究所) 1.研究目的 循環型社会の実現へ向け,廃棄物最終処分量の削減が喫緊の課題として社会から要請されてお り,焼却・溶融処理残渣を有効利用する取り組みがなされつつある。しかし,有効利用先の環境 における長期的安全性の科学的確証が乏しいことから,焼却・溶融処理残渣の有効利用は,社会 の完全な合意を得るには至っていないのが現状である。 本研究では,焼却・溶融処理残渣も岩石と同様に徐々に風化,安定化すると考え,それらの環 境安全な有効利用を促進させる。様々な環境下における含有重金属の長期溶出挙動を鉱物学的・ 土壌生成学的視点から検討し,その安定化メカニズムを解明することを目的とする。 2.研究方法 焼却・溶融処理残渣に含有する重金属の化合形態が,環境条件によってどのように変化してい くかを鉱物学的・土壌生成学的視点から解明することを目的として,以下のように研究を遂行し た。 2−1 焼却・溶融処理残渣に含有する重金属の存在形態の解明 焼却・溶融処理残渣を用い,含有重金属の存在形態を鉱物学的に解明することに取り組んだ。 今年度は特に溶融残渣の鉱物学的検討を行なった。熱分解−燃焼溶融方式による溶融スラグの 岩石、鉱物および地球化学的検討を、偏光顕微鏡による組織観察、バルク試料のX線回折法に よる鉱物分析と蛍光 X 線法による化学分析、さらに X 線マイクロアナライザー(EPMA)による 微小領域の化学分析などにより実施した。 2−2 埋立焼却残渣の鉱物学的・土壌生成学的安定化メカニズムの解明 焼却残渣のみが埋立てられている処分場において,初年度に行った現地調査結果を考慮した 結果,残渣中には Ca が多く含まれることに着目し、その炭酸化現象を中心とした鉱物学的検討 を行なった。まず、炭酸化の傾向を把握するため各試料中における炭酸含有量測定を行った。 次に溶出試験を行い、溶出した金属の濃度を分析した。このうち鉛の濃度から鉛の溶出率を換 算し炭酸含有量との相関を検討した。炭酸化に伴う重金属の化合形態の変化を検討するため、 SPring-8 での X 線吸光微細構造(XAFS)分光法による含有鉛の化合形態の推定を行った。 さら に、炭酸塩が鉛を含む部分を覆うように生成されることによる物理的な溶出抑制作用を検討す るため、X 線回折装置(XRD)による鉱物の同定を行うとともに、偏光顕微鏡による観察や X 線分 -186- 析顕微鏡による各元素の残渣粒子中での存在部位の確認を行った。 2−3 低コスト,低エネルギーな新たな安定化処理技術の開発 水分や,清掃工場で発生する余剰熱,焼却炉排ガス等を有効利用した低コスト,低エネルギ ーな重金属安定化処理技術の開発を試みた。 (1)化学組成改変を伴う水熱処理 粘土鉱物が重金属イオンに対する強い親和力を持つことに注目し、焼却残渣から人工的に 粘土鉱物を生成させることで重金属の不溶化を促進させることを試みた。水熱合成による実 験により粘土鉱物等の生成条件と重金属の不溶化現象を鉱物学的な分野から検討した。水熱 合成実験にはモレー型反応容器を用いた。反応容器に粉砕した焼却灰、Si、Al、Mg 試薬、ま たは、これらの成分に富む廃棄物を混合したものを入れ、蒸留水また NaOH 溶液を加えて密封 し、200℃、自生圧で反応させた。蛍光 X 線分析により焼却灰中の化学組成を、X 線回折分析 により水熱処理前後の焼却灰中の構成鉱物の分析を行った。また、ICP 発光分析装置により 反応後の溶液中の重金属量の測定を行なった。 (2)有機物を混合した水熱処理 一般廃棄物焼却灰を対象に有機物である下水汚泥を5%混合し、未利用のボイラー蒸気を 想定した水熱処理を行い、有機物及び有害金属等の安定化効果について検討した。飽和蒸気 下の水熱処理実験は、2L容の高圧反応器を用い、約 200℃、20 気圧(約 1.5Mpa)、1時間 の条件下で行った。測定項目としては、反応メカニズムに関する知見を得るための容器内ガ ス組成の分析、処理物の CHNO 元素分析、示差熱重量分析、安定化効果の確認においては、含 有有機物の抽出試験、pH 依存性溶出試験による pH、TOC 及び有害金属類の分析を行った。 3.結果と考察 上記の研究により得られた結果を以下に示す。 3−1 焼却・溶融処理残渣に含有する重金属の存在形態の解明 今年度は、特に溶融残渣の鉱物学的検討を行なった。種々の溶融スラグが 2 種類の組成を有 するガラスの微細な縞状組織からなる。SiO2, CaO, Al2O3 についてはバイモーダルの組成分布 を示し、SiO2 含有量が 44∼59%の高シリカガラスと SiO2 含有量が 30∼37%の低シリカガラ スに分けることができる。 2 種類のガラスが生じる原因は溶融炉の稼動温度 (∼1300℃)で CaO/ SiO2 比の異なるメルトの不混和現象である。溶融スラグに含まれる非金属結晶相は、メリライ ト、スピネル、擬珪灰石などで、これらの鉱物学的性質を明らかにした。また、Cu, Pb, Fe, Ni などの金属結晶相について詳細な検討を行い、高温状態で珪酸塩メルトから分離した金属メル ト相が形成され、冷却とともに微細な金属相を晶出させることが分かった。Cu と Pb はほとん ど金属相に濃集し、Pb は単独の金属相として出現せず、通常は Cu 相と共存し、微細粒子とし て金属銅の中に散在する。 -187- 3−2 埋立焼却残渣の鉱物学的・土壌生成学的安定化メカニズムの解明 埋立地表層が露出した区画での炭酸含有量は、被覆された区画よりも多い傾向を示した。炭 酸塩としては Calcite(CaCO3)が多く生成されていることが確認された。次に溶出試験と X 線 蛍光分析から算出した鉛の溶出率を炭酸含有量と比較した結果、炭酸含有量が多い、表層が露 出した区画では、鉛溶出率が低い傾向となった。鉛の化合形態としては、Pb-Glass と PbO が 大部分を占めた。PbCO3 は埋立採取試料からは検出されなかった。Ca は焼却粒子外縁部に濃 集していることが確認された。この部位を鏡下で観察したところ、Calcite 様の微細な結晶が多 く存在していた(図3−2−1)。焼却残渣内部は Si や Al に富むガラス質の物質を基質とする ものが多数観察された。ガラス内部には Wollastonite や Melilite と推定される鉱物結晶が成長 しているものも見られた。これらの結晶は試料の冷却時に溶融したガラスから晶出したものと 推定される。埋立焼却残渣ではこれらのガラスや鉱物が風化作用により変質している様子が観 察された。 (a) (b) Wollastonite 空隙 有色ガラス Calcite Calcite Melilite 500μm 100μm 図3−2−1(a)有色ガラス質の物質を核とする焼却残渣粒子の周辺部。ガラス質物質 の周辺部には発泡が観察される。 (b) 鉱物結晶の発達した焼却灰粒子。ともに透過光、 直交ニコル。 3−3 低コスト,低エネルギーな新たな安定化処理技術の開発 (1)化学組成改変を伴う水熱処理 焼却残渣に、Silica gel と Mg(OH)2 を添加して水熱処理することによって、粘土鉱物であ る smectite や tobermorite が生成され、溶液中の重金属濃度も最も少ない結果となった。こ の 2 試料の溶液中の Pb 濃度は 0.01(mg/L)以下であった。それ以外の試料に関しては最大で 0.11(mg/L)を示した。焼却灰のみ、または soda glass を添加した試料では zeolite が生成さ れた。焼却残渣のみの試料では Ca-zeolite が主に生成、soda glass 添加試料では soda glass の Na や Ca により、Ca-zeolite や Na-zeolite が主に生成された。 また tobermorite などの C-S-H 鉱物が全試料において見られた。これらの試料において溶 液中の重金属濃度低下したことから、tobermorite の生成も重金属不溶化に大きな影響を与 えていることが示唆された。 -188- (2)有機物を混合した水熱処理 水熱処理の結果、メタンなどの可燃性ガスや水素が検出され、酸素の低下と二酸化炭素の 増加が観察された。また、C/H 比の増加や分解温度域の高温側へのシフトが観察された。こ の結果より、マイルドな炭化反応が進むと共に、発生した可燃性ガスと水蒸気の間で水性ガ ス化反応が生じている可能性などが示唆された。また、含有されている抽出性有機物につい ては、親水性画分が若干増加し、疎水性画分がかなり低下したことから、前者の現象からは 加水分解反応が、後者からは炭化による縮重合反応などが起こっていることが示唆された。 加水分解による親水性画分には、臭気質や pH 低下から有機酸などの生成が考えられ、有効 利用の際にはこれらの不安定な物質のさらなる安定化処理が追加的に必要と考えられた。一 方、有害金属については顕著な効果は認められなかったが、有機物との錯体形成の可能性が 示唆され、炭化分を核とした腐植等の形成のための養生過程を設ければ、有害金属類の安定 化も期待できることが示唆された。 4.結論 上記の研究結果より以下のような結論が得られた。 溶融残渣中の鉱物学的検討により重金属存在形態を明らかにした。 埋立焼却残渣の鉱物学的検討の結果、炭酸化に伴う鉛不溶化が自然環境下の埋立地において進 行することを確認した。鉛の溶出が抑制される要因として、Pb を含む焼却残渣粒子の表面に生成 した Calcite により、 焼却残渣からの鉛を含む金属の溶出が抑えられている可能性が示唆された。 化学組成改変を伴う水熱処理により粘土鉱物や zeolite、珪酸カルシウム系(C-S-H)鉱物が生成 された。これらの鉱物の形成により、焼却残渣を重金属の溶出しない、安定した状態とできるこ とが示唆された。また、有機物を混合した水熱処理により、マイルドな炭化反応が進むと共に、 発生した可燃性ガスと水蒸気の間で水性ガス化反応が生じている可能性などが示唆された。また、 有害金属については顕著な効果は認められなかったが、有機物との錯体形成による安定化も期待 できることが示唆された。 -189- 使用済みニッケル水素2次電池をモデルケースとした 環境に優しい資源循環プロセスの構築 研究機関(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 研究代表者=三宅 通博(岡山大学) 共同研究者=松田 元秀(岡山大学) 1.研究目的 環境に調和した持続可能な循環型社会を構築するためには、廃棄物の再資源化技術開発は重要 な課題、特に少資源国である我が国にとっては非常に重要な課題である。 携帯電話、デジタルカメラ、ハイブリッドカー等の急速な普及に伴い、電源として充放電可能 な2次電池の需要が飛躍的に拡大している。しかしその一方で、使用済みの2次電池量は増加の 一途を辿っている。そのため、2次電池の適正なリサイクル技術開発は危急の課題である。デジ タル機器のパルス放電など幅広い用途に対応でき、利用率の高いニッケル水素2次電池には、ニ ッケルをはじめ種々の有用な遷移元素や特定の地域でしか産出されない希土類元素の金属が使わ れている。従って、使用済みニッケル水素2次電池から遷移元素等を金属として回収し、それら を再びニッケル水素 2 次電池用材料として供給することができる適正な資源循環プロセスを構築、 特に環境に優しいプロセスを構築することは、必要かつ重要な課題である。 図 1-1 使用済みニッケル水素2次電池をモデルケースとした環境に優しい 資源循環プロセスの構築 -190- 本研究は、使用済みニッケル水素2次電池をモデルケースとして、図 1-1 に示すように、有用 かつ希少元素を循環できる環境調和型プロセスを構築し、その技術の実用化を図ることを目的と している。即ち、平成16年度∼18年度の3年間計画で、以下の3段階からなる環境調和型プ ロセスを開発する。 (1)使用済み電池からの有用かつ希少元素含有化合物の化学的分離プロセス の開発、(2)分離化合物のメタンドライリフォーミング触媒への転換プロセスの開発、(3)触 媒から分離されるニッケル水素2次電池用金属原料の回収プロセスの開発を行なう。2年目の本 年度は、第1段階である使用済み電池からの有用かつ希少元素含有化合物の化学的分離プロセス の最適化を検討すると共に、第2段階である分離化合物のメタンドライリフォーミング触媒への 転換プロセスの開発および触媒性能評価を主に行なった。 2.研究方法 実験には、使用済みニッケル水素2次電池負極材料およびニッケル水素2次電池負極材料製造 工程で排出される廃棄物を用いた。廃棄物に 2 M 塩酸を加え、24 時間撹拌後、水酸化ナトリウ ムを加えて pH12 とし、水酸化物を沈殿させた。次に、この沈殿物に 7.5 M アンモニア水を加え、 12 時間撹拌し、ニッケル成分を抽出した。固液分離後、ろ液を 60 ℃で加熱することで析出させ た粉末試料を 1000 ℃、1 時間焼成し、酸化ニッケル系試料を得た。 分離した酸化ニッケル系試料(1 g)のメタンドライリフォーミング触媒性能を常圧流通式固定 床反応器を用いて、780 ℃でメタンと二酸化炭素とに接触させることにより評価した。供給ガス の総流量を 50 ml/min とし、メタンと二酸化炭素の流量比を変化させ、出口ガス中のメタン、二 酸化炭素、水素、一酸化炭素濃度をガスクロマトグラフにより測定し、メタンリフォーミング率 を求めた。 分離試料およびメタンドライリフォーミング後の試料の同定を X 線回折(XRD)により、それ らの微構造を走査電子顕微鏡微(SEM)観察により評価した。分離試料の組成を ICP 発光分析 (ICP)により、メタンドライリフォーミングにより析出する炭素量を熱分析(TG)により検討 した。 3.結果および考察 両廃棄物から分離された試料は、XRD により酸化ニッケルと同定された。ICP による組成分析の 結果、使用済みニッケル水素2次電池負極材料およびニッケル水素2次電池負極材料製造工程で 排出される廃棄物から分離した試料の組成は、それぞれ Ni:85.7、Co:14.3、La:0.3 mass%、 Ni:97.4、Co:2.0、La:0.6 mass%であった。以後、分離試料を w-NiO と表記する。 メタン:3 %、二酸化炭素:3 % のアルゴンバランスで、メタンドライリフォーミング触媒性 能評価を行なった。比較として、試薬の酸化ニッケル (r-NiO と表記)を用いた。r-NiO のメタン 転化率が反応時間とともに減少したのに対し、w-NiO のそれは 1 週間以上 100 %を維持した。反 応後、どちらの試料もニッケルに還元されたが、r-NiO から得られたニッケルは金属光沢のある 焼結体であったのに対し、w-NiO から得られたそれは黒色の粉末であった。 r-NiO と w-NiO との相違の原因と考えられる w-NiO 中の不純物成分(コバルトおよびランタ ン成分)の影響を調べるために、それらを少量添加した r-NiO を調製し、メタン転化率を測定し -191- た。その結果、コバルト添加試料ではメタン転化率が反応時間と共に減少したのに対し、ランタ ン添加試料では長時間高メタン転化率を維持した。また、反応後コバルト添加試料は焼結してい たのに対し、ランタン添加試料は w-NiO と同様、黒色の粉末であった。以上のことから、w-NiO 中に含まれるランタン成分が試料の焼結を抑制する効果をもつため、高いメタン転化率を長時間 維持できたと考えられた。この結果より、以後の実験では、コバルト含有量が少なく、ランタン 含有量の多い分離試料、すなわちニッケル水素2次電池負極材料製造工程で排出される廃棄物か ら分離した w-NiO を用いた。 反応後の w-NiO およびランタン添加 r-NiO が黒色を呈したのは、メタンが水素と炭素に分解 する副反応により析出した炭素が原因と考え、炭素の析出が試料の焼結やメタンリフォーミング 率に及ぼす影響について検討を行なった。炭素が析出しやすいようにするため、実験にはメタン: 50 %、二酸化炭素:50 %の混合ガスを用いた。その結果、メタンおよび二酸化炭素転化率は約 4 時間反応後までは低下したが、その後上昇に転じた。しかし、水素および一酸化炭素選択率は減 少するのみであった。このことから、メタンが水素と炭素に分解する副反応に加え、水素と一酸 化炭素から炭素と水が生成する副反応も同時に起こっていると考えられた。また、SEM の2次 電子像観察より、24 時間反応後のニッケル粒子は 4 時間反応後のものと比べて小さく、析出した 炭素表面に分散していることがわかった。以上のことから、析出した炭素には試料の焼結を抑制 する効果があると考えられた。すなわち、図 3-1 に示すように、析出した炭素は焼結し始めたニ ッケル粒子を解離させ、微粒子となったニッケル粒子がその炭素上に高分散されるため、高い触 媒活性を維持したと考えられた。その際、不純物としてランタンが存在すると、炭素析出を助長 すると考えられた。 副反応による炭素と水の生成を抑えるため、二酸化炭素をメタンより過剰に供給した。これに より、炭素生成が抑えられ、炭素と二酸化炭素との反応により一酸化炭素が生成しやすくなると 期待された。そこで、メタン:50 %、二酸化炭素:50 %の混合ガスと 4 時間反応させ、その後ガ ス組成をメタン:40 %、二酸化炭素:60 %に変更した。その結果、メタンと二酸化炭素の転化率 および水素と一酸化炭素の選択率は改善され、ほぼ一定値となった(メタン転化率:約 97 %、二 酸化炭素転化率:80 %、水素選択率:92 %、一酸化炭素選択率:100 %) 。すなわち、炭素を生 図 3-1 w-NiO における金属ニッケルの焼結・解離とカーボンの析出機構 -192- 成する副反応が抑制されたことが示唆された。さらに、メタンドライリフォーミング後の試料の TG 測定を行なったところ、ガス流量を変更することにより、炭素含有量が 246 mass%から 61 mass%に減少していた。この結果より、メタンと二酸化炭素の流量比を変更することで、副生成 物である炭素の析出を抑えることが可能であることがわかった。 4.結論 本年度の研究により、以下のことを見いだした。 ・メタンドライリフォーミングにより、w-NiO はニッケルに還元された。 ・w-NiO は r-NiO に比べてメタン転化率が高く、持続性があった。 ・w-NiO は、炭素析出が起こる条件においても高いメタンリフォーミング率を示した。 ・メタンと二酸化炭素の流量比を変更することで、炭素析出を抑制できた。 これらの結果から、メタンドライリフォーミングを利用することで、使用済みニッケル水素2次 電池負極材料およびニッケル水素2次電池負極材料製造工程で排出された廃棄物から分離した w-NiO を再びニッケル水素2次電池用金属材料へと再資源化させることができる可能性が示唆 された。 最終年度である平成18年度は、昨年度および本年度の研究成果を基に、分離手法の最適化、 分離試料の最適材料化および最適メタンリフォーミング条件を明らかにし、第3段階である触媒 から分離されるニッケル水素2次電池用金属原料の回収プロセスの開発を行なう。さらに、本研 究課題を総括し、ニッケル資源が循環できる環境に優しいプロセスの構築を目指す。 -193- 減圧加熱/塩化揮発の組合わせによる固体残渣類の完全無害化と 重金属の高効率分離回収・再資源化 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者名=松田仁樹(名古屋大学エネルギー理工学専攻) 共同研究者名=小島義弘(名古屋大学エコトピア科学研究機構) 1.研究目的 我が国では、廃棄物の無害化および資源化を目的として溶融固化処理の普及が進み、重金 属を高濃度に含む溶融飛灰の発生量増加が見込まれている。溶融飛灰には可採年数が 40-50 年以下の資源有限性が極めて高い Cu、 Pb、 Zn、 Cd 等の重金属を天然鉱物の数∼10 倍の高 含有濃度に含んでいるものの、有害性と分離・資源回収の困難性によって、現在、そのほと んどが「ワン・スルー」で埋立て処分されている。 これに対して、溶融飛灰から重金属を再資源化する方法としては、湿式法では、酸抽出・ アルカリ沈殿処理および溶媒抽出、乾式法では、還元揮発および塩化揮発法などが提案、検 討されている。とくに塩化揮発法は、高沸点の金属を低沸点の塩化物として揮発除去するた め、比較的低温度かつ低エネルギー負荷で重金属分離が可能となること、ならびに微量成分 の揮発に適しているという利点がある。しかし、長時間処理が余儀ないことが効率的分離・ 回収を妨げていることが指摘されていた。 そこで本研究では、塩化揮発法に減圧加熱処理法を組み合わせた新たな減圧塩化揮発法を 提案する。重金属の揮発は、系の圧力と金属の蒸気圧の差を駆動力として進行するため、減 圧条件下ではより短期間での揮発が可能となる。このことから、溶融飛灰からの塩化揮発法 による重金属分離・回収に減圧加熱処理法を付加することにより重金属分離・回収操作をより 効率化できると考えられる。 本研究により、資源・環境の両面から焼却灰、シュレッダーダストのような多種の金属を 高濃度で含む固体廃棄物を「エネルギー・ミニマム」処理によって金属を効率的に分離回収・ 再資源化し、同時に固体残渣の無害化によって「埋立てゼロ」を可能とする資源循環型社会 の早期実現に不可欠なヘテロ系廃棄物の適正処理技術の確立を目指す。 2.研究方法 ヘテロ系固体廃棄物の「エネルギー・ミニマム」処理による重金属の効果的な分離回収を 達成するために、これまでに、減圧加熱/塩化揮発装置の設計に必要な Cl 種と重金属の塩化 反応特性の把握をおこなうとともに、試作の減圧加熱/塩化揮発装置を用いた溶融飛灰からの 重金属の減圧分離の予備試験を行ってきた。 2005 年度では、これまでの減圧分離の結果をうけて、実溶融飛灰中の金属塩化物の揮発促 進効果の発現範囲と減圧加熱条件との関係を詳細に検討した。また、重金属の塩化揮発に及 -194- ぼす未燃炭素分の影響についても検討をおこなった。 2−1 減圧条件下での溶融飛灰からの亜鉛、鉛、銅の塩化揮発促進の検討 減圧塩化揮発法を溶融飛灰に適応させることにより、含有多成分重金属塩化物の揮発 促進に及ぼす加熱温度ならびに減圧度の影響について加熱温度(873-1123 K:金属塩化物 融点以上)ならびに減圧度(1.3-101.3 kPa)を変化させた条件下での実験を行った。得ら れた結果に対して、便宜上、減圧下における塩化金属の飽和蒸気圧と気相中の塩化金属 分圧との差を指標に用いて考察を行った。 2−2 減圧加熱下における重金属塩化物の揮発速度の定量化 減圧条件下における重金属塩化物の揮発速度を定量化するために、PbCl2、ZnCl2、CuCl の重金属塩化物の特級試薬を用いて、単一粒子での重金属塩化物の揮発速度が濃度の一 次速度式に従うと仮定したときのみかけの一次揮発速度を求め、加熱温度ならびに減圧 度が重金属塩化物の揮発速度に及ぼす影響について定量的に検討した。 2−3 溶融飛灰に含まれる未燃炭素分の重金属揮発挙動に及ぼす影響 重金属の塩化揮発に及ぼす溶融飛灰中の未燃炭素分の影響を検討した。具体的には、 含有未燃炭素量の異なる計6種類の溶融飛灰を試料に選び、未燃炭素量と鉛、亜鉛およ び銅の揮発率との関係、および揮発回収物、固体反応残渣中に存在する金属化合物の X 線回折分析結果より、溶融飛灰中の重金属酸化物の塩化あるいは還元反応とこれに起因 する鉛、亜鉛、銅の揮発挙動を調べた。 3.結果と考察 3−1 減圧条件下での溶融飛灰からの亜鉛、鉛、銅の塩化揮発促進の検討 塩酸含浸処理した溶融飛灰中の塩化亜鉛、塩化鉛、塩化銅の減圧下における揮発促進 について実験的検討を行い、以下の結果を得た。 図 3-1-1 の結果より、温度 873 K、減圧加熱下(1.3 kPa)における塩化亜鉛、塩化鉛お よび塩化銅の揮発率は、常圧加熱下(101.3 kPa)で得られた結果と比較して約 1.5-3.0 倍 大きくなった。図 3-1-2 の結果より、各種重金属塩化物の揮発率は、加熱温度が 1123 K と高温になるほど、より短時間で増加す 100 ZnCl2 1.3 kPa Volatilization ratio [%] ることが分かった。温度 873 K、圧力 1.3 kPa での塩化亜鉛および塩化鉛の揮発率 は、約 120 分で 90%程度に達したのに対 し、温度 1123 K、圧力 1.3 kPa ではいず れの揮発率もほぼ 1 分で 100%となった。 また温度 1123 K、保持時間 120 分後にお 80 PbCl2 1.3 kPa ZnCl2 101.3 kPa 60 40 PbCl2 101.3 kPa CuCl 1.3 kPa 20 CuCl 101.3 kPa 0 ける塩化銅の揮発率は、常圧では 10%程 0 度となったが、減圧下 1.3 kPa では、約 80%まで増加することが分かった。 図 3-1-1 溶融飛灰中の各種重金属塩化物は、圧 30 60 θ [min] 90 120 ZnCl2, PbCl2, CuCl の揮発率と 保持時間との関係(温度 873K) 力の低下に伴って揮発率が増加した。塩化亜鉛、塩化銅は、飽和蒸気圧以下に減圧する -195- 100 Volatilization ratio [%] ことにより揮発率の増加が認められた。 しかしながら、塩化鉛は、圧力が塩化鉛 の飽和蒸気圧以上でも揮発率の増加が認 められ、減圧加熱中の残渣に KPb2Cl5 を生 成していることが認められた。 3−2 80 60 101.3 kPa △ ZnCl2 ◇ PbCl2 □ CuCl 40 1.3 kPa ▲ ZnCl2 ◆ PbCl2 ■ CuCl 20 0 減圧加熱下における重金属塩化物 0 30 60 90 120 θ [min] の揮発速度の定量化 PbCl2(温度:923 K)、ZnCl2(温度:798 図 3-1-2 K)、CuCl(温度:823 K)の単体における ZnCl2, PbCl2, CuCl の揮発率と 保持時間との関係(温度 1123 K) 揮発率と保持時間の関係を調べた結果、 保持時間 600 秒、圧力 0.1 kPa での PbCl 2 、ZnCl2、CuCl の揮発率は、それぞれ 100%、 60%、96%となった。この揮発率は、同一温度の圧力 10.0 kPa∼101.3 kPa(常圧)の範 囲で得られた PbCl2、ZnCl2、CuCl の揮発率(0∼9%)と比較して大きいことを認めた。 減圧下における PbCl2 、ZnCl2、CuCl の揮発速度は濃度に関する一次速度式で整理でき ることがわかった。PbCl 2、ZnCl2 、CuCl の見かけ一次揮発速度定数 K [m/s]を求め、アレ ニウスプロットを行った結果、得られた見かけの活性化エネルギーは、いずれも処理圧 力に関係なく、それぞれ PbCl2:125 kJ/mol、ZnCl2:95 kJ/mol、CuCl:103 kJ/mol となる ことがわかり、一次揮発速度定数 K に対する加熱温度の依存性は、PbCl 2>CuCl>ZnCl2 の順に大きくなることがわかった。 3−3 溶融飛灰に含まれる未燃炭素分の重金属揮発挙動に及ぼす影響 6種類の異なる溶融飛灰および未燃炭素を含まない模擬飛灰に対して、N2 ガス流通下、 温度 873-1173 K、保持時間 120 分の下で加熱実験を行った。 図 3-3-1 の結果より、未燃炭素を含む溶融飛灰中の鉛揮発率は、約 1073 K 付近より大 きく増加し、1123 K でほぼ 100%に達し 100 Volatilization ratio [%] た。これに対して未燃炭素を含まない模 擬飛灰中の鉛揮発率は、1173 K でも約 85%に留まった。溶融飛灰中の亜鉛は 973 K 付近から温度の上昇に伴って揮発率が 増大し、1173 K で約 95%に達するのに対 して、模擬飛灰のそれは、1173 K でも約 80 60 Pb Model ash Pb Molten fly Ash Zn Model ash Zn Molten fly Ash Cu Model ash Cu Molten fly Ash 40 20 0 25%に留まった。銅は、模擬飛灰に比べて 873 溶融飛灰の揮発率が小さく、1173 K での 923 973 1023 1073 Temperature[K] 1123 1173 溶融飛灰、模擬飛灰の揮発率はそれぞれ 図 3-3-1 溶融飛灰および模擬飛灰からの 10%、45%程度となった。 鉛、亜鉛、銅の揮発率と加熱温度との関係 -196- 溶融飛灰の加熱実験後に得られた反応 1min ZnO CuO Pb Cu 残渣ならびに揮発回収物中の金属化合物 の X 線回折分析結果を図 3-3-2 ならびに 10min Intensity [cps] 図 3-3-3 に示す。本図より、溶融飛灰中 の PbO は、溶融飛灰に含まれる無機塩素 化合物(おもに CaCl2 )との塩素化反応に 加えて未燃炭素による還元反応により、 Pb2OCl2 ならびに Pb が生成されることが 30min 60min 120min 分かった。溶融飛灰中の ZnO は、飛灰中 10 の未燃炭素による還元反応が塩素化反応 に比べて優先的に起こり、金属亜鉛(Zn) 20 30 40 50 60 70 80 図 3-3-2 溶融飛灰からの反応残渣の X 線回 として揮発が進行することが分かった。 折分析結果(温度 1173 K) 溶融飛灰中の CuO は、酸化銅の還元反応 が主体的に進行し、金属銅(Cu)として固 Pb Zn Pb2OCl2 NaCl KCl Intensity [cps] 体残渣中に残存することが分かった。 4.結論 2005 年度では、実溶融飛灰中の金属塩化物 の揮発促進効果の発現範囲と減圧加熱条件と 10 の関係を詳細に検討するとともに、重金属の 20 30 40 50 60 Diffraction Angle 2 [degree] 70 80 塩化揮発に及ぼす未燃炭素分の影響について 図 3-3-3 溶融飛灰からの揮発回収物の X 検討をおこなった。以下に得られた知見をま 線回折分析結果(温度 1173 K) とめる。 (1) 1.3 kPa における塩化亜鉛、塩化鉛および塩化銅の揮発率は、101.3 kPa で得られた 結果と比較して約 1.5∼3.0 倍大きくなった。減圧加熱下での各種金属塩化物の揮発率 は、加熱温度の増加に伴ってより短時間で増加し、1123 K、1.3 kPa では 1 分以内で ほぼ 100%の塩化亜鉛、塩化鉛が揮発した。 (2) 各種重金属塩化物は、圧力の低下に伴って揮発率が増加し、塩化亜鉛、塩化銅は、 飽和蒸気圧以下に減圧することにより揮発率の増加が認められた。しかしながら塩化 鉛は、圧力が塩化鉛の飽和蒸気圧以上でも揮発率の増加が認められ、減圧加熱中の残 渣に KPb2Cl5 を生成していることが確認された。 (3) 金属塩化物の減圧下における見かけの揮発速度定数 K[m/s]のアレニウスプロットか ら得られた見かけの活性化エネルギー ΔE は、いずれも処理圧力に関係なく PbCl2:125 kJ/mol、ZnCl2: 95kJ/mol、CuCl:103 kJ/mol となり、K に対する加熱温度の依存性は、 PbCl2>CuCl>ZnCl2 の順に大きくなることがわかった。 (4) 未燃炭素を含む溶融飛灰中の鉛は、無機塩素化合物との塩素化反応に加えて未燃炭 素による還元反応により、Pb2OCl2、Pb となることが分かった。一方、亜鉛および銅は、 炭素分により還元され、Zn、Cu となることを分かった。 -197- マイクロ波誘電加熱による PVC 脱塩素技術の超高効率化による 環境リスク低減 研究機関(西暦)=2004−2005 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=丑田 公規 (独立行政法人 理化学研究所) 共同研究者=野嵜 龍介 (北海道大学大学院 理学研究科) 姫野 龍太郎(独立行政法人 理化学研究所) 上垣内 修 (独立行政法人 理化学研究所) 1.研究目的 廃棄プラスティック(以下廃プラ)は炭化水素が主たる成分であることから、石炭の代用物 として製鉄所の高炉やコークス炉においてフィードストックリサイクルに供することが出来る。 しかし、現在市場に流通している主要プラスティック材料のうち、約20%を占めるポリ塩化 ビニル(PVC)が塩素を成分として含み、処理中に発生する塩化水素が設備を腐食損傷する。こ のため、あらかじめ廃プラに脱塩素処理を施さなければならないが、混合廃プラでは加熱によ る脱塩素効率が低くなるので、通常の加熱処理は分別され PVC を濃縮された廃プラでのみ有 効である。分別された廃プラばかりでなく、混合廃プラでも脱塩素処理を効果的に達成できる ように、マイクロ波照射による誘電加熱法で、PVC のみを選択的に加熱する方法を開発してき た。その結果、高い効率を有する処理装置を作らない限り、経済優位性が実現せず、普及にほ ど遠いことがわかった。本研究では、処理装置の設計を根本的に改めるために、誘電加熱プロ セスの精密なシミュレーションをスーパーコンピューターで実行する。そのため、誘電率、熱 物性などのプラスティック材料の物性値取得と解析プログラムシステムの開発を平行して行い、 最終年度には、高効率の処理装置を実現することを目標とする。 2.研究方法 市場に流通する主要プラスティックについて、厳密なマイクロ波領域の誘電率測定および熱 伝導度測定を行い、データを集積する手法を確立するため、本年度は引き続きデータの集積を 進めた。まず、ネットワークアナライザを用いた誘電率測定システムによる誘電率測定におい ては、電気オーブンを用いた恒温糟内での測定により 100℃以上の温度に対応した測定システ ムを製作した。測定部位の温度上昇があるため、ケーブルや測定セルの特性が変化してしまう ので、ケーブルなどの温度管理を行い、測定機器(ネットワークアナライザ)の冷却も行った。 また、熱伝導度、熱拡散測定のための物性測定装置について、半田を用いない高温用の測定 機材を追加導入し、測定温度範囲の拡充を行った。試料は厚さ 5mm 直径 5cm のディスクを1 00個程度作製し、これを2枚用いて規格化した測定を行った。これから構築したパラメータ を用いて、シミュレーションを行い、最適アプリケータを戦略的に設計する技術を確立するた めに、有限要素法を用いた電磁界のシミュレーションプログラムを作成し、熱伝導シミュレー -198- ションと完全に連携した解析を行なうようにプログラムを連結した。試料を回転させるターン テーブルの回転も導入できるようになった。引き続き、PVC を市販の電子レンジによるマイク ロ波照射で分解した時のメカニズムの実験的な解析については、引き続き温度上昇カーブを各 温度で精密に測定しながら、シミュレーションと対比できるデータを取得した。 3.結果と考察 3−1 マイクロ波領域の誘電率測定 マイクロ波領域の誘電率測定に関しては、フィルム試料を用いて広範囲の温度領域における 測定実験を行った。これは世界に例を見ない高度な測定である。測定用フィクスチャは APC7 ケーブルを改造して作成したものであるが、理研の精密加工技術を用いてさらに性能が向上し たフィクスチャを製作した。この時 APC7 ケーブルに使われているプラスティック材料を耐熱 性の高いものに交換するなどの改良を行った。これにより測定フィクスチャが量産化され、そ のうち良好なものをセレクトすることにより、安定的な測定ができると共に、完全に性能がそ ろった測定が北海道大学(40GHz システム)と理化学研究所(20GHz システム)において、 比較可能な測定ができるようになった。 各種プラスティックフィルム試料については室温から 100℃(昨年は 80℃)までの温度で誘 電率測定をすでに北海道大学の設備(20GHz まで測定可能)を用いて行った。これによると主要 プラスティックでは PVC のみが誘電正接にマイクロ波領域に明瞭な誘電緩和ピークを持って いる。PVC については純粋 PVC、炭酸カルシウム入り PVC、軟質 PVC ペレット、軟質 PVC シートの3種類を測定した。この結果を図3−1−1に示す。マイクロ波の吸収を示す誘電正 接はこの順序で大きくなるが、軟質 PVC シートのみが桁違いに大きな値を取り、しかもそれ が温度上昇につれて大きく増大することがわかった。これは従来の実験結果と定性的によく一 致する。この他に、テフロン系のプラスティック(PTEF,ETFE,2F-3FH)、ポリスチレン2種(ア タクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン)についての誘電率データを集積 した。 353 348 343 343 343 343 338 338 333 333 0.1 327 0.1 319 323 323 293 1.0 10.0 0.1 frequency [GHz] 純粋 1.0 10.0 frequency [GHz] 炭酸カルシウム入り 303 293 293 303 0.01 293 0.001 0.1 0.1 313 311 313 0.01 293 323 314 318 303 T [K] 1 333 tan d 328 tan tan d 0.1 328 313 0.001 T [K] 1 353 348 333 0.01 T [K] 1 353 348 tan d 0.1 T [K] 1 353 tan d T [K] 1 0.01 0.01 0.001 0.001 0.001 0.1 1.0 10.0 frequency [GHz] 軟質ペレット 0.1 1.0 10.0 frequency [GHz] 軟質シート 0.1 1.0 10.0 frequency [GHz] 焼却灰 温度依存性なし 図 3−1−1 各種 PVC の誘電吸収スペクトル -199- 3−2 熱物性測定の結果 一方室温における熱伝導度、熱拡散係数、比熱容量の精密測定を9種類のプラスティック(P VC、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、PMMA、PET、POM、 6−ナイロン)について定量的に測定することが出来た。添加剤の多いポリスチレンに関して は、測定が困難であった。さらに、これらの熱輸 った。これによると、ガラス転移点より低い温度 (50℃付近)で、熱拡散係数、比熱容量が大き く変化し、70℃付近で変化量が頭打ちになるこ とがわかった。また熱伝導度はほぼ一定であった。 ばらつきの多い測定値ではあったが、補間するこ とによりなめらかな曲線を得ることが出来たので、 これをそのままシミュレーションプログラムに用 Thermal Conductivity (W/mK) 送係数の温度変化を95℃まで PVC について行 0.3 0.2 0.1 ○:PVC △:PE 0 いることが可能になった。図3−2−1と図3− 20 40 60 80 100 120 Temperature (℃) 2−2に PVC とポリエチレン(PE)の熱測定結 果(を示す。これにより PVC だけが暖まりやす 図3−2−1 く熱をこもりやすいことがわかる。 PVC と PE の熱伝導度とその温度変 3−3 電磁界−熱伝導連成シミュレーション 化 2年度を通じて電磁界と、熱伝導および熱流の 計算を連結して行う、世界で初めての連成解析の 3.0 ョンでは、1)ある温度で各空間点の材料または 空気の誘電率を指定し、2)誘電加熱の際の電磁 界をシミュレーションし、3)誘電加熱による注 入エネルギーを計算し、4)各点における発熱、 熱伝導を計算し、5)各点の温度を求めるという ステップを取る。これは電磁界シミュレーション 3 センターに依頼して作成した。このシミュレーシ Specific Heat (MJ/m K) オリジナルプログラムを理化学研究所の情報基盤 2.0 1.0 ○:PVC △:PE 0.0 20 40 60 80 100 120 Temperature (℃) の時定数が、1周期 0.4 ns 程度(2.45GHz)であ るのに対し、温度変化による熱物性や誘電率の変 図3−2−2 化がミリ秒程度より遅いものと考え、1)-3)と 4)-5) PVC と PE の熱容量とその温度変化 が全くかけ離れた時定数になることを利用してデ カップルしたシミュレーションを行っていることが特徴である。また、格子点を回転させるこ とも出来るので、ターンテーブルを用いた時の過熱状況もシミュレーションできる。これはプ ラスティックのマイクロ波加熱の状況を把握し、なおかつ加熱装置を設計するのに有力なツー ルとなる。材料定数の非線形性を十分に考慮するために、数値解析法を改良し、誤差の発生す る要因や、時間刻み幅の影響などを十分に検討した。理化学研究所のスーパーコンピューター (RSCC)上で稼働することを前提とし、入力に際しては CAD データとの連携、可視化に関 -200- しては4D ビジュアライザ との連携が出来るように設 PVC turntable 計した。 T [ C] 250 テスト計算として285 125 ×285×155の寸法か らなるアプリケータ底部に 10cm 角厚さ0.1mm の PVC フィルムを置いて Ez z y x without turntable motion ( t = 1.0 s, 96th time step, 96.0 PVC s)turntable T[ ] C 250 = 40.0 kV/m かけた場合 の過熱状態を60秒までシ ミュレーションした。この 125 z y x とき約60秒でフィルム上 にマイクロ波の波形を反映 0 0 with turntable motion ( t = 0.0666 s, 1440th time step, 96.0 s) した温度分布が出来、中心 図3−3−1 温度が 150℃程度にまでな ターンテーブルのある場合とない場合での PVC 誘電加熱状況 ることが確認された。これ の違い。上(ターンテーブルなし) 、下(ターンテーブルあり) は、実際の試料の状況と定 性的に一致する。このときのアプリケータ内の電場モード、磁場モードも可視化できている。 さらに同じアプリケータ内に50×50×50のPVCブロックを置いた場合の過熱状況をシ ミュレーションした。マイクロ波の波束の腹の部分に当たる立方体試料内の限られた領域に加 熱が進行することがわかった。そこで、250℃以上の温度になったところは速やかに脱塩素 が完了したものと仮定して、脱塩素分布を求め、脱塩素された領域の体積から脱塩素率を決定 した。 また試料をターンテーブル上に置いて回転させるシミュレーションも行った。この解析には 格子点の取り方を工夫する必要がある。これにより、上記脱塩素領域の体積が拡大し、脱塩素 率が向上することがわかった。50×50×50の立方体型PVCブロック、ならびに160 ×60×20の直方体型ブロックのシミュレーションを行ったところ、直方体型の試料ではさ らにムラのない加熱が可能で、脱塩素領域が拡大することがわかった。このため試料全体の脱 塩素率は著しく向上した。これは従来のターンテーブルを用いた実験とよく一致している。図 3−3−1にターンテーブルのあった場合とない場合での電子レンジ内での PVC の誘電加熱 状況を図示する。 4.結論 本研究プロジェクトは3年間の研究の最初の2年間で、世界初のシミュレーションシステム を構築し、これを用いることにより高効率化装置を製作することが確実になり、副産物として 誘電加熱に関する広範な工業的応用も期待できるようになった。しかし、予算打ち切りにより、 3年目に予定していた高効率化装置の実機の製作は不可能になったことは残念である。 -201- ゴム・プラスチック材料廃棄物のリサイクリング過程における 化学構造変化の精密解析と実用プロセスの構築 研究期間(西暦)=2005−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=大谷 肇(名古屋工業大学) 共同研究者=石田康行(名古屋大学) 1.研究目的 廃棄されたゴム・プラスチック材料を、ポリマーの分子形態を保ったまま再利用するマテリア ルリサクリングは、他のリサイクリング法と比較して処理工程におけるエネルギー利用が格段に 小さく、環境保全に最もよく合致した手法と考えられている。本研究では、その実用化の大きな 阻害要因となっている、マテリアルリサイクリング工程で生成し、材料物性の低下を招くミクロ 架橋構造を、超臨界流体場などにおける試料の特異な反応分解と、生成物のクロマトグラフ分析 およびソフトレーザーイオン化質量分析により、分子レベルで詳細に解析し、その生成メカニズ ムを解明する画期的な手法を開発する。この手法により、各種ゴム・プラスチック材料の実際の マテリアルリサイクリング工程において生成するミクロ架橋構造を系統的に解析し、処理工程の 諸条件との相関を明らかにして、ゴム・プラスチック廃棄物の実用的なマテリアルリサイクリン グプロセスを構築することを目的としている。 2.研究方法 ① マテリアルリサイクリング工程でポリマー材料中に生成する、ミクロ架橋構造解明のための 新しい解析手法の開発に重点をおいて研究を進める。具体的には、ポリマー試料の特異な反応分 解を誘起して、架橋高分子のハードな架橋部とソフトな連鎖双方についての情報をそれぞれ保持 した分解生成物を得て、それらを高性能質量分析計や各種オンラインクロマトグラフィーなどに より精密に計測して、ミクロ架橋ネットワーク構造を解明する全く新しいアプローチによる方法 論の確立を行う。特に、強固な架橋構造を形成している試料については、化学反応試薬存在下で あっても単純な加熱だけでは効果的な反応が進行しないことが想定されることから、ここでは、 狙いとしている試料の特異な反応分解を高効率に実現するための超臨界流体分解法を新たに導入 する。さらに、こうして得られた分解生成物を精密に分析できるソフトレーザーイオン化質量分 析法を新規に導入し、解析手法の能力を飛躍的に高めた、全く新しい独創的なシステムの構築を 目指している。 ② 各種ゴム・プラスチック材料をモデル的なマテリアルリサイクリング工程に供し、その際に 生成するミクロゲルや架橋ネットワーク構造を、上記の開発した手法により詳細に解析し、リサ イクリング過程におけるそれらの生成メカニズムを、処理工程における諸パラメーターと相関さ せながら解明する。最終的には、これらの結果を総合して、ゴム・プラスチック廃棄物の実用的 なマテリアルリサイクリングプロセスの確立に結びつける。 -202- 3.結果と考察 ① 超臨界メタノール分解−ソフトレーザーイオン化質量分析による架橋高分子の構造解析法の 開発 紫外線硬化樹脂は、一旦硬化すると三次元網目構造を持つ不溶不融の架橋高分子となるため、 硬化後の物性と密接に関連した化学構造の解析は十分には行われていない。そこで、本研究で は、超臨界メタノール分解法を利用して、紫外線硬化樹脂中に存在すると予想される、重合反 応性の官能基が比較的長くつながった連鎖を含めた、元の架橋構造を反映した分解生成物を得 て、それらをソフトレーザーイオン化(マトリックス支援レーザー脱離イオン化)−質量分析 法(MALDI-MS)を用いてマススペクトル上に観測し、架橋ネットワーク構造の詳細な解析を試 みた。 まず、両末端に重合反応性のアクリレート基を有するネオペンチルグリコール(NPG)型二官 能モノマーを、開裂型光重合開始剤存在下で、紫外線照射することにより十分に硬化した樹脂 を調製した。この硬化樹脂を、密閉したステンレス管中において 300℃前後の超臨界状態のメ タノール中で化学分解し、得られた分解生成物を MALDI-MS 測定に供した。超臨界メタノー ル分解により、樹脂中のエステル結合において、エステル交換が進行する結果、架橋構造を反 映したポリアクリル酸メチル(PMA)成分と NPG 成分の分解生成物がそれぞれ得られる。それ らを解析することにより、架橋点における連鎖長を始めとしたネットワーク構造の様々な情報 を得ることが可能になる。実際に、NPG 型紫外線硬化樹脂の適正化した条件における超臨界 メタノール分解物の、典型的な MALDI マススペクトル上には、アクリル酸メチル(MA)モノマ ー単位に相当する m/z = 86 間隔で出現する一連のピークが、 MA の 60 量体程度に相当する m/z = 5,000 付近の領域まで観測されている。このように、当該試料では、少なくとも 60 連子 のアクリレート単位からなる架橋部を有するネットワーク構造の形成が確認された。 次に、やや複雑な系として、複数のモノマーを共重合して調製した樹脂を試料として検討を 行った。具体的には、三官能モノマーであるペンタエリトリトールトリアクリレートと単官能 モノマーの 1-ビニル-2-ピロリドンを混合して、開裂型光重合開始剤存在下で、紫外線照射する ことにより十分に硬化した共重合型樹脂を調製した。この硬化樹脂を、密閉したステンレス管 中において、実験的に最適化した 290℃の超臨界状態のメタノール中で 6 時間化学分解し、得 られた分解生成物を MALDI-MS 測定に供した。当該共重合型紫外線硬化樹脂の超臨界メタノ ール分解物の、典型的な MALDI マススペクトル上には、モノマー単位の組み合わせから考え 得るすべてのオリゴマー成分のピークが、35 量体程度に相当する m/z = 3,000 付近の領域まで 観測された。このように、当該試料では、少なくとも 30 連子以上のモノマー成分からなる架 橋部が、かなりランダムな共重合メカニズムにより形成されることが確認された。 ② ポリエステル樹脂の混練処理過程で生成する架橋構造の高感度解析 ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)に着目し、 そのリサイクリング工程を想定して混練処理を施したモデル試料を調製し、その課程で生ずる ミクロ化学構造変化の解析を行った。試料の混練には、東洋精機製のラボプラストミルμを用 い、樹脂ペレットの約 4 g を 270℃、100 rpm で 30 分間混練する操作を 2 回繰り返し行った。 -203- また、解析には主として、反応試薬に強い有機アルカリである水酸化テトラメチルアンモニウ ムを用いる、反応熱分解ガスクロマトグラフィー(GC)の手法を用いた。また、混練処理を行 ったモデル試料に加えて、長時間加熱処理して、意図的に異常構造を多く生成させたモデル試 料も調製し、比較測定に用いた。その結果、加熱処理した PET および PBT 試料のパイログラム 上には共通して、もとの試料のパイログラムには観測されない特性ピークがはっきり観測され、 同じピークが極微小ながら混練処理した試料のパイログラムにも観測された。このピーク成分 の化学構造を、当該成分のオンライン質量分析および赤外分光分析により詳細に解析した結果、 PET および PBT の両者とも全く同一の成分であり、熱処理や混練処理の過程で酸素の影響によ り生ずるフェニルラジカルが、別の高分子鎖の芳香環に結合して、ビフェニル型の架橋構造を 形成することが明らかになった。 4.結論 試料の超臨界メタノール分解と MALDI-MS 測定を組み合わせることにより、不溶性高分子中 の架橋ネットワーク構造をかなり詳細に解明することができる、全く新しい方法論を開発するこ とができた。一方、PET および PBT のリサイクリング工程をシミュレートして混練処理した試 料中の架橋ネットワーク構造について、反応 Py-GC 測定による解析を行った。その結果、いず れの場合も混練処理により、ビフェニル型の架橋構造が極わずかながら形成されることが実証さ れた。 -204- 廃棄物処理施設から排出される廃液からの有害イオンの選択除去用 無機イオン交換体の開発 研究期間(西暦)=2004∼2006 研究年度(西暦)=2005 研究代表者=石原達己(九州大学) 共同研究者=三角優子(九州大学) 1.研究目的 現在、廃棄物の最終処分方法は埋め立て処理であり、現状では廃棄物は次の 3 種類の処分場へ 最終的には埋め立て処理を行われる。つまり、雨水がはいったり浸み出したりしないようにしっ かり作られた遮断型処分場、雨水ははいるが浸み出す水は害がないように処分する設備をした管 理型処分場、ただ穴を掘って埋めるだけの安定型処分場の三種類である。当然のこととして環境 への影響がない安全な廃棄物しか埋め立てることはできないことになっている。ところで、これ らの中で、遮断型処理場および管理型処理場では、処理物から漏出する有害物で、環境を汚染す ることが無いように、高分子のシートなどで、環境から遮断されて埋設処理がおこなわれる。廃 棄物そのものに含まれる、有害成分は極めて微量であったとしても、これらの、廃棄物処理場で は廃棄物に含有された微量の有害元素が濃縮されて雨水とともに流出し、水資源の汚染などいず れの処理場においても深刻な影響を及ぼし始めており、これらの処理場から排出される排水中か らの有害成分の除去が望まれている。とくに、フッ素およびホウ素は重要な影響を及ぼしつつあ る。最終廃棄物処理場からの雨水は 2 次汚染の原因として、その処理の必要性が高まっている。 一方、ごみ焼却場においても、種々の有害物質を含む排煙が発生するので、その処理が要求され、 一般的には水への溶解により、有害物質は回収されている。そこで、ゴミ処理場の排ガス洗浄水 には有害物質が溶存しており、その処理技術の確立が必要となる。とくに、近年、フッ素の濃度 が増加する傾向にある。以上のような観点から現在、主流である凝集沈殿法に代えて、イオン交 換法が注目されているが、現在のイオン交換樹脂では選択的イオン交換ができない状況である。 共存イオンの中から、選択的に有害イオンのみを除去できるイオン交換体の開発が望まれている。 本研究ではメソポーラス構造を有する Ti(OH)4 について選択的にフッ素イオンや砒素イオンとイ オン交換が可能である新規な無機イオン交換体の開発を行うことを目的とした。 2.研究方法 本研究ではフッ素イオン交換体として、主に Ti(OH)4 に着目した。試料はおもに、NH3 を用い る沈殿法および有機テンプレート剤を鋳型としてアルコキシドを用いる分子鋳型法を用いて調製 した。フッ素濃度の測定にはフッ素電極およびイオンクロマトグラフィーを用いて行った。pH の 測定には pH メーターを用いて行った。調製した試料の同定には X 線回折装置を用いて X 線回折パ ターンの測定を行い結晶相の同定を行った。溶液中の Ti の定量は ICP を用いて行った。比表面積 の測定は 200℃で 5 時間前処理を行い N2-BET 法で行った。 -205- 3.研究結果と考察 3.1.メソポーラス Ti(OH)4 の合成とフッ素イオン交換特性 従来の研究から TiO(SO4)を NH3 を用いて、沈殿させて得た Ti(OH)4 は Ti の溶出も無く、50ppm のフッ素に対して、0.53mmol/g・L のイオン交換容量を有することを明らかにした。一方、図 1に示すようにこの Ti(OH)4 は優れたイオン交換の選択性を有しており、ほぼ、主要な無機ア ニオンの共存下でも選択的にフッ素をイオン交換できることを明らかにした。 フッ素イオン交換容量のフッ素濃度 フッ素イオン交換量 依存性を検討したところ、この - H2PO4 Ti(OH)4 の飽和フッ素イオン交換容量 硫酸イオン交換量 2- は 1.6mmol/g ・ L で あ り 、 こ れ は SO4 TG-DTA 分析して求めた Ti(OH)4 中の - Cl OH 量に比べると 25%程度の容量であ - った。そこで、沈殿法で合成した NO3 Ti(OH)4 では粒子サイズが大きく、バ none ルク中の OH はイオン交換に関与でき 細孔の導入を検討した。ドデシルアミ ンをテンプレートとしてチタンイソプ 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 イオン交換量 /mmol/g 図1 Ti(OH) 4のフッ素イオン交換量に及ぼす共存アニオンの影響 条件:フッ素初期濃度:50ppm(2.63mmol/L) 各共存アニオン濃度:2.63mmol/L,500ml,pH=5 ロポキシドを加水分解した。得られた 100 粉末を XRD 分析したところ、2 =3゜ d=3.82nm 程度の長周期の規則構造を 有する Ti(OH)4 が生成した。TEM に よる観察からメソ細孔の存在が確認で きたことから、細孔径 3.82nm のメソ ポーラス Ti(OH)4 が合成できた。得ら 1.2 フッ素吸着量 / mmol/g 付近に X 線回折ピークが認められ、 80 1.0 60 0.8 0.6 40 0.4 れたメソ孔を有する Ti(OH)4 のフッ素 0.2 イオン交換特性を検討したところ、図 0 メソポーラス Ti(OH)4 NH3沈殿法 Ti(OH)4 0 2に示すようにイオン交換量が向上し、 1 2 3 4 5 6 20 7 フッ素除去率 / % ないものと推定された。そこで、メソ リン酸イオン交換量 0 時間 / h 図2 合成 したメソポーラス Ti(OH) 4の フッ素イオン交換特性 50ppm の初濃度のフッ素に対して、 1.03mmol/g のフッ素イオン交換容量 を有することがわかった。 実際の廃棄物処理場からの排水には高濃度のフミン質と、ホウ素が共存し、開発したイオン 交換体のフッ素イオン交換を妨害すると懸念される。とくに、従来の無機イオン交換体では植 物や木製廃棄物から溶出して排出されるフミンの影響が大きく、フミン共存下で、安定にフッ 素をイオン交換可能なイオン交換体は存在していない。そこで、本研究ではフッ素イオン交換 特性に及ぼすフミンおよびホウ素の共存効果を検討した。ホウ素はフッ素吸着を行う酸性側で はカチオンであり、Ti(OH)4 への吸着量はほとんど無く、おもにアニオンの交換体である -206- Ti(OH)4 ではホウ素に対するイオン交 換特性はほとんど無いことがわかった。 100 1.2 気中の CO2 が溶存し、pH は約 5.5 付 近であるので、開発した Ti(OH)4 は比 較的、高濃度のホウ素が共存しても影 響を受けることなく、ほぼ目的のフッ 素をイオン交換により、回収すること ができることがわかった。一方、回収 80 1.0 0.8 60 0.6 40 0.4 フミン酸なし フミン酸 100mg/l 20 0.2 0.0 したフッ素の濃縮度は 50ppm での吸 0 1 2 3 4 5 フッ素除去率 / % フッ素吸着量 / mmol・g 種々のイオンが溶解するとともに、大 -1 一般的な廃棄物処理場からの排水は 0 6 時間 / h 図3 メソポーラス Ti(OH) 4のフッ素吸着量に及ぼす フミン酸の影響 着曲線から考えると、濃縮率約 600 で あり、排水中の低濃度のフッ素を高濃 5 . 1 度のフッ素へと濃縮することが可能な 検討した。図3には 100mg/l という実 0 1 . 0 9 0 . 0 非共存条件の約 80%となった。しかし、 8 0 . 0 フッ素初期濃度/イオン交換体量 / L 図4に明らかなように、フミンが共存 するとフッ素イオン交換量は減少し、 7 0 . 0 換特性を、非共存の結果と比較した。 6 0 . 0 5 0 . 0 酸が共存した条件でのフッ素イオン交 0 . 1 に比べ、約100倍の濃度のフミン 1 . 1 際の廃棄物処理水中に共存するフミン 2 . 1 市販のフミン酸を用いて、共存効果を 3 . 1 ミン質の影響について検討するために、 フッ素吸着量 / mmol・g-1 次に影響が大きいといわれているフ 4 . 1 ことがわかった。 -1 図4 イオン交換体量あたりのフッ素初 図25イオン交換体量当たりのフッ素初期濃度と フッ素吸着量の関係 期濃度とフッ素吸着量 明らかなように、実排水の100倍近 いフミン質が共存しても 0.8mmol/g という大きなフッ素吸着量を数回の繰り返しにおいても 維持できることがわかった。そこで、開発したメソポーラス Ti(OH)4 は廃棄物処理場からの実 排水においても十分な容量と選択性を有し、実用的なフッ素イオン交換体であることを明らか にした。 実際のイオン交換による排水処理では、少量のイオン交換体で、大量の排水を処理する必要 があり、排水量に対して、少ないイオン交換体での処理が望まれる。そこで、本研究では排水 処理量とイオン交換体量の関係を検討した。異なるイオン交換体量におけるフッ素イオン交換 特性を示した。当然、予想されるように、イオン交換体量が減少するに伴い、フッ素イオン交 換量も減少し、除去率も減少した。一方、図4には、単位重量当たりにおける吸着量を示した。 明らかなように単位重量当たりにすると、用いるメソポーラス Ti(OH)4 量が少なくなるほど、 フッ素吸着量は増加し、大変興味あることに 0.7g でイオン交換すると、単位重量当たりのイオ -207- ン交換量は 1.5mmol/g という非常に大きなフッ素イオン交換量を示した。これは本研究の目標 値である 1.3mmol/g を大きく凌駕する結果である。そこで、開発したメソポーラス Ti(OH)4 は実排水の処理に適した性能を有しており、少ない量で、非常に多くの排水を処理できる可能 性があることがわかった。 4.結論 本年度の研究において、メソポーラス Ti(OH)4 のフッ素イオン交換特性について検討を行い、 この材料が優れたイオン交換特性を有することを明らかにするとともに、本研究の目標値である 1)イオン交換容量 1.3mmol/g、2)繰り返しイオン交換における劣化率 5%以下を満足する優れたイ オン交換特性を発現することに成功した。 -208- 金属スクラップ素材の高度循環利用のための 新しい高速定量分析法の開発 研究期間(西暦):2005-2006 研究年度(西暦):2005 研究代表者:我妻 和明(東北大学) 共同研究者:松田 秀幸(東北大学)、Park Hyunkook(東北大学) 1.研究目的 本研究は、減圧レーザ誘起プラズマ発光分析法を測定原理とする元素分析装置を開発して、市 中の金属スクラップ素材の高度・迅速選別を可能とする、新たな分析・計測システムの実用化を 目的とする。金属スクラップ素材の循環構築に関しては、金属製品が極めて広範かつ大量に使用 されているため、その利用の高度化を図り、素材再生による資源の利用効率を向上させる研究が さらに重視されるべきである。とりわけ、鋼スクラップ材のリサイクルについては、現状におい ていくつかの問題点が指摘されており、またその技術においても未完部分があるため、今後の研 究開発が強く求められている。一般に、自動車用鋼板や高級鋼などでは、その特性を得るために 鋼中の微量不純物元素の組成管理が必須であり、再生素材の品質を維持するためには、有害金属 等の不純物の除去技術とそれを評価する分析・解析技術が不可欠である。本研究では、この分析 課題の解決に最も適した方法として、減圧レーザ誘起プラズマを励起源とする発光分析装置を開 発しその実用化を図る。 2.研究方法 平成17年度は3年間の研究計画における第2年度にあたる。研究初年度の平成16年には、金 属スクラップ素材の元素分析に最適な、減圧レーザ誘起プラズマ測定セルを設計製作し、そのプラ ズマにより励起される試料の発光スペクトルを解析して、その分光特性や最適測定条件を検討した。 本年度(平成17年)は、減圧レーザ誘起プラズマサンプリングとヘリウムグロー放電プラズマ との複合型プラズマセルを試作し、定量分析の精度向上をめざす研究開発を行った。 (1) 減圧レーザ誘起プラズマサンプリングとグロー放電プラズマ複合型プラズマセルの作製 減圧レーザ誘起プラズマ測定セルはオンサイト分析には最適の発光励起源であるが、レーザ誘 起プラズマが不連続であるため、高精度の定量分析には適用できないという問題点を残した。こ の欠点を克服するために、レーザアブレーションによる試料のサンプリングを利用し、新たに グロー放電プラズマを励起源とする複合型の測定セルを作製した。油回転ポンプを使用し真空 排気口によりセル内部を排気して、数Paの真空雰囲気保つことが可能であり、また、ガス導 入口より一定流量のヘリウムガスを導入することができる。試料のサンプリングのために Nd:YAGレーザを使用し、レンズ系によりセル内部に導かれ試料表面に照射される。発生した試 料原子は、測定セルに組み込まれたグロー放電管において励起され、その発光光はスペクトル -209- 測定用の光ファイバケーブルにより分光器へと導かれる。本研究課題により交付を受けた研究 費は、分光部に組み込んだイメージ分光器を購入するのに充当した。また、グロー放電用の電 源部の性能改善のため、高速高電圧アンプリファイアを購入するために使用した。 (2) 分析装置の組み立てと特性評価 上記の測定系における分析条件の最適化を検討した。発光強度が最大となる条件および発光 強度の変動が最小となる条件を調べるため、実験パラメータとしてプラズマガスの導入圧力、 レーザ出力、観測タイミング(時間分解測光)、観測部位(空間分解測光)等を検討した。 3.研究成果 本測定系による具体的な分析例として、鋼試料中の1000ppm-10%の合金添加元素を変動係数5% 程度で分析できることを示した。本法は試料の前処理を殆ど必要としないため、現場分析にも適 用できるものと考えられる。高精度分析用として実験室レベルでは使用できることを確認した。 その成果は、論文として、1) T.M. Naeem, K. Wagatsuma: Anal. Sci., (2004), 20, 1717. 2) T.M. Naeem, K. Wagatsuma : Fresenius J. Anal. Chem., (2004), 379, 115. 3) Y. Ushirozawa, K. Wagatsuma: Spectros. Lett., (2005), 28, 539. また、国際会議発表として、1) T.M. Naeem, K. Wagatsuma: ASIANALYSIS VII: Hong-Kong, China: 7/27, 2004. 2) K. Wagatsuma, Y. Ushirozawa: The 12th Symposium on Laser Spectroscopy: Daejeon, Korea: 11/4, 2004. 3) K. Wagatsuma, Y. Ushirozawa, H. Matsuta: European Winter Conference on Plasma Spectrochemistry: Budapest, Hungary: 1/30, 2005. 4) K. Wagatuma, Y. Ushirozawa: Asia-Pacific Winter Conference on Plasma Spectrochemistry: Chiang Mai, Thailand: April 25 - 30, 2005.を行った。 4.平成18年度の研究展開 本研究は3年間の研究計画により分析装置の実機運用をめざすものである。平成16-17年度 の研究成果に基づき、減圧レーザ誘起プラズマを応用した2種類の測定セルを用いて、実際スク ラップ試料の元素分析を行うための実証測定装置を組み立て、測定元素毎に検出限界など分析特 性に関するデータを得る。 -210- 分子インプリント感温性ゲルを用いた土壌洗浄排水中の 重金属類の新規な吸着分離法に関する研究 研究期間=2003−2005 研究年度=2005 代表研究者=迫原修治(広島大学) 共同研究者=後藤健彦(広島大学) 、徳山英昭(名古屋大学) 1.研究目的 近年、土壌汚染が判明する事例が多発しており、その浄化技術として、環境負荷の小さい分離 プロセスの開発が期待されている。本研究は、重金属の新規な吸着材である分子インプリント感 温性ゲルの合成と、これを用いた土壌洗浄液中の重金属の分離プロセスの開発を目的としたもの である。この吸着材は、温度変化によって可逆的に体積が膨潤・収縮する感温性ゲルに、重金属 との相互作用基を分子インプリント法(鋳型重合)で付加したものであり、温度スイングによっ て鋳型分子の吸着サイトが形成・破壊することで鋳型に用いた重金属を選択的に吸・脱着する。 本研究で提案する分離プロセスの構築には、分離の高速化、吸着材の高機能化およびモジュー ル化の検討が必要であり、これらを 3 年間で達成することを計画した。平成 15 年度は、高速分 離のための微粒子ゲル吸着材の合成手法の確立、重金属の吸・脱着平衡および速度の測定・解析 を行った。平成 16 年度は、吸着材の高機能化を目指し、キレート基の改良、リン酸配位子の導 入による新規な吸着材の開発、さらにモジュール化のためのプラズマ重合装置の作製を行った。 最終年度の平成 17 年度は、以下に示す項目について検討を行った。 (1) リン酸配位子を共重合した感温性ポリマーによる重金属の吸・脱着メカニズムの検討 平成 16 年度に、工業用抽出剤であるリン酸配位子の 2-メタクリロイルオキシエチルホスフ ェート(MEP)を感温性の N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)に共重合した NIPA-co-MEP ポリマーへの銅の吸・脱着特性について検討し、このポリマーへの重金属(銅)の吸着量の温 度依存性はゲルの場合とは異なり、 低温で吸着、高温で脱着することを見いだした。本年度は、 このポリマーの転移挙動および吸・脱着メカニズムを詳細に検討した。 (2) プラズマ開始重合法による分子インプリント感温性ゲルの支持体への複合化 微粒子吸着材は吸着速度の点では有利であるが、ハンドリングは困難である。そこで、ゲ ルを支持体に固定化するためのプラズマ開始重合装置を平成 16 年度に作製した。本年度は、 プラズマ照射条件等を明らかにし、これを基に支持体上に分子インプリント感温性ゲルをグ ラフトした複合化ゲルを作製し、これを用いて温度スイングによる銅(鋳型分子)の吸・脱 着特性を検討した。 2.研究方法 2−1 リン酸配位子を共重合した感温性ポリマーによる重金属の吸・脱着メカニズムの検討 NIPA-co-MEP ポリマーを昨年度と同様にラジカル重合によって合成した。本年度は、MEP -211- 共重合率および合成時の全モノマー濃度が異なる数種類の NIPA-co-MEP ポリマーを合成し た。これらのポリマーの水中での転移挙動を調べると共に、これらのポリマーへの銅の吸着 量の温度依存性を測定し、温度変化による吸・脱着のメカニズムを考察した。転移挙動は、 これまでと同様に、これらのポリマー水溶液の透過度の温度依存性を測定することによって 調べた。銅の吸着実験では、所定濃度のポリマー水溶液を所定量透析膜に入れ、これを 10℃ の銅水溶液中に浸し、溶液中の銅の平衡濃度をプラズマ発光分光分析によって測定した。そ の後、所定温度に昇温し、銅の平衡濃度を同様に測定した。この操作を温度 70℃まで繰返し た。吸着量は物質収支から求めた。 2−2 プラズマ開始重合法による分子インプリント感温性ゲルの支持体への複合化 支持体にポリプロピレン(PP)不織布(2×2 cm、厚さ 0.82 mm)を用い、これへの分子 インプリント感温性ゲルの合成条件(プラズマ照射条件および重合条件)を調べ、作製した 複合化ゲル吸着材の温度スイングによる銅の吸・脱着特性を調べた。図1に、プラズマ照射 実験装置を示す。反応器にはガラストラップ型反応器を用い、これに前述の PP 不織布を吊 るし、アルゴンを満たして真空ポンプで 10 Pa 程度まで減圧したのち、所定時間、所定の出 力でプラズマを照射した。その後、窒素を流しながら反応器内を大気圧に戻し、そこに予め 窒素置換しておいた所定濃度の反応溶液(NIPA、銅と相互作用させたキレートモノマー、架 橋剤(N,N´-メチレンビスアクリルアミド (MBAA))を入れ、容器を 25℃の恒温槽に移し、 所定時間反応させた。反応終了後、複合化されたゲルを取り出し、酸および蒸留水で十分洗 浄し、乾燥させたものを吸着材とした。吸着実験は、これまでと同様に、回分操作で行い、 10℃から 50℃まで昇温しながら各温度での吸着量を測定した。また、50℃まで昇温させて銅 を吸着させたゲル吸着材の温度を 10℃まで下げ、脱着させた。 図1 プラズマ照射実験装置 3.結果と考察 3−1 リン酸配位子を共重合した感温性ポリマーによる重金属の吸・脱着メカニズム NIPA に親水性の MEP を共重合すると転移温度の上昇が予想されたが、このポリマー水溶 -212- 液の透過度の温度依存性をみると、MEP の共重合率が増加しても透過度が減少し始める温度、 すなわち転移が始まる温度は NIPA ポリマーとほとんど変わらず、MEP 共重合率の増加に伴 って転移は高温まで続く傾向が見られた。このことは、NIPA と MEP とはブロック的に共重 合されることを示唆している。これは NIPA と MEP の反応性が異なるためと考えられる。 図2に示す銅の吸着量の温度依存性につ いても、このような共重合の状態を反映し て、MEP 共重合率が低い場合は温度上昇に 伴って脱着が見られたが、MEP 共重合率が 高い場合には温度依存性がほとんど見られ ず、高温にしても脱着がほとんど起こらな かった。また、ここには示していないが、 非常に興味ある現象として、溶液中の銅濃 度が高い場合には、吸着量も高くなるが、 温度依存性も顕著に現れ、高温にするとほ とんど脱着した。これは、溶液中のイオン 濃度が高くなるとポリマーが収縮しやすく なるためと考えられる。しかしながら、こ れらの実験はポリマーを透析膜に入れて吸 着実験を行なったものであり、膜への吸着 図2 NIPA/MEP 共重合ポリマーへの銅の 吸着量の温度依存性 の影響も考えられるので、この点について は今後さらに検討を要する。 3−2 プラズマ開始重合法による分子インプリント感温性ゲルの支持体への複合化 まず、プラズマ照射条件として、出力および照射時間と支持体への NIPA ポリマーのグラ フト量(架橋剤を含まない重合)の関係につ いて調べた。PP 支持体に熱変性を生じること なく比較的長時間プラズマを照射できる条件 として 40 W を選択した。次に、NIPA ゲルの グラフト量に及ぼす溶媒の影響について検討 した。結果を図3に示す。水溶媒中では架橋 剤濃度が高くなるとグラフト量は著しく減少 した。そこで、溶媒をエタノール水溶液に代 えて検討を行った結果、エタノール濃度が高 くなるとポリマーの重合は起こり難くなった が、架橋剤を含むゲルの合成の場合は、エタ ノール水溶液中の方がグラフト量が多く、架 橋剤濃度に応じて適切なエタノール濃度があ ることを見いだした。この理由については今 後さらに検討を要する。 -213- 図3 ゲルのグラフト量に及ぼすゲル 合成時の溶媒の影響 以上の検討の結果、支持体の PP 上に適切な量のゲルを生成できるプラズマ照射条件およ び重合条件が明らかになり、図4に示すように、PP 上に一様にグラフトされた分子インプリ ントゲルが得られた。なお、キレートに 4-ビニルベンジルエチレンジアミン(VBEDA)を用 いた場合にはこれまでと同様 に銅をインプリントしたゲル 支持体 乾燥ゲル 膨潤ゲル が生成したが、平成 16 年度に 検討した架橋型のジ-4-ビニ ルベンジルエチレンジアミン (DVBEDA)の場合にはゲルが 生成しなかった。この理由に ついては今後さらに検討が必 図4 支持体および複合化ゲルの写真 要である。 3−3 複合化ゲルへの銅の吸着特性 図5に、複合化ゲルへの銅の吸着量の温度依存性の実験結果の一例を示す。従来の微粒子 ゲルへの吸着量の温度依存性も比較と して示してある。複合化ゲルへの吸着 をみると、これまでの微粒子ゲルと同 様に低温ではほとんど吸着せず、温度 上昇に伴って吸着量が増加した。また、 吸着量は複合化してもほとんど変わら なかった。なお、微粒子ゲルへの吸着 量は温度上昇に伴って吸着量が再び減 少しているが、これは微粒子ゲルの場 合には 10℃で一旦吸着させた後それ ぞれの温度まで一度に昇温したためで ある。 また、 ここには示していないが、 吸着後温度を下げると脱着が起こった。 ただし、VBEDA をキレートに用いて 図5 複合化ゲルへの銅の吸着量の温度依存性 いるために完全には脱着しなかった。 4.結論 平成 17 年度は、新規な吸着材として昨年度提案した NIPA-co-MEP 共重合ポリマーへの吸着メ カニズム、および本研究で提案する重金属の新規な分離プロセスを構築するために必要な吸着材 の複合化について検討した。リン酸配位子を用いた感温性ポリマーは低温で吸着、高温で脱着し、 ゲルとは異なる吸・脱着特性を持つが、このような特性は MEP 共重合率および溶液の金属濃度 に大きく依存することが明らかになった。プラズマ開始重合法によって支持体にグラフトされた 分子インプリント感温性ゲル吸着材の合成が可能となり、このゲルについても温度スイングによ る重金属の吸・脱着が可能なことが確認された。 -214- 水ラジカル反応を利用した廃油の再燃料化と 低エミッション燃焼技術の研究開発 研究期間(西暦)=2003−2006 研究年度(西暦)=2005 代表研究者=木戸口善行(徳島大学) 共同研究者=三輪惠(徳島大学),岩田哲郎(徳島大学) ,佐竹弘(徳島大学), 田村勝弘(徳島大学),逢坂昭治(徳島大学) ,植田弘(㈱太陽) 1. 研究目的 本研究では、廃油の再燃料化処理を目的とする。これには、再燃料化技術、水エマルジョン燃 料の燃焼効率の向上、有害排気物質の抑制が検討課題である。再燃料化技術については、安定な 燃焼が可能で低公害な水エマルジョン燃料を製造することを目指す。このため、燃料製造に重要 な水と油の混合方法を検討するとともに、混合時に用いる界面活性剤を検討し、燃料構造と燃焼 との関連を明らかにする。燃焼効率の向上および有害排気物質の抑制については、拡散噴霧バー ナーによる燃焼解析をもとにして最適設計変数を求める。また、水エマルジョン燃料の燃焼によ る発熱量を調べて燃焼効率を評価する。 これらの課題では、水分子の挙動を調べることが重要と考えられる。したがって、水分子の存 在が燃料構造および燃焼機構に及ぼす影響を明らかにして、最適燃焼条件、設計要件を見出すこ とを目指す。研究は 2003 年度からの 3 年計画で行った。 2. 研究方法 2003 年度は、水エマルジョン燃料の燃料構造の解析および安定性評価の方法を確立し、基本的 な燃焼解析を行った。2004 年度は、再燃料化技術に関して、水と油の混合時の磁場印加と超音波 印加が燃料の微粒化、分子構造および安定化、燃焼に及ぼす影響を調べた。また、拡散噴霧バー ナーの最適設計変数を求めるため、まず数値計算によりバーナーの保炎器への空気導入が燃焼に 及ぼす影響について調べた。 2005 年度は、界面活性剤の一つとして、高分岐ポリマを用い、燃料安定性と燃焼への効果を調 べた。燃焼評価は拡散噴霧バーナーにより、排気測定や火炎内のガス成分分析を行った。また、 これまで、水エマルジョン燃料の基本的な特徴や燃焼特性などについて、軽油を基材燃料として 調べてきたが、重油および廃食油を用いた水エマルジョン燃料の特性についても調べた。さらに、 前年までに明らかとなった、水エマルジョン燃料の燃焼効率向上の要因について、伝熱学的な推 定により実験結果を考察した。拡散噴霧バーナーの最適化については、これまでの数値計算に加 えて、保炎器構造、とくに、低エミッションのために最適な二次空気導入を行うための設計要件 を検討した。実験では、保炎器の二次空気導入孔の位置や大きさ、個数などを変えることにより 導入空気流速や空気導入方向を変化させて、排気測定を行うことにより二次空気導入方法を検討 した。 -215- 3. 結果と考察 3−1 基材燃料および界面活性剤の影響 基材燃料が燃焼に及ぼす影響を調べた。基材燃料を軽油、A重油、廃食油として拡散噴霧バ ーナーで燃焼させたときの排気ガス成分を比較すると、NOx 濃度は、軽油、A重油、廃食油の 順に高くなるが、水含有率が大きくなると NOx 濃度が低減する傾向は基材燃料により変化しな かった。CO2 濃度も基材燃料によりあまり変わらないことから、水エマルジョン燃料の基本的 な燃焼特性は基材燃料により変わらないといえる。ただし、CO 濃度はA重油、廃食油で軽油よ り高くなった。とくに、水含有率が 50%になると、廃食油で CO 濃度が大きく増加した。これ は、廃食油-水エマルジョン燃料では、粘性が高く燃焼が不安定になるためであり、粘性を適正 にするためには界面活性剤を最適化することが必要である。 水エマルジョン燃料製造については界面活性剤が重要であることから、新しい界面活性剤と して高分岐ポリマを検討した。ポリマ分子は球状を形成し、分子内に空隙が存在するため、溶 解性が高く、溶解粘度が極めて低い特徴をもつ。本研究では、ポリマ分子を Divinylbenzene お よび 2-Methylbutyl methacrylate をモノマとし、Dimethyl 2, 2’-azobisisobutyrate を用いて Toluen で 混合させることにより重合し作成した。この高分岐ポリマを界面活性剤に用いたところ、水エ マルジョン燃料の粘性を低くする効果がみられた。ただし、燃料安定性は改善せず、活性剤と してさらなる改良が必要である。拡散噴霧バーナーにより、高分岐ポリマを用いた水エマルジ ョン燃料の排気特性を調べた結果、従来の界面活性剤を用いた場合よりも CO 濃度が低く、ま た、水含有率を大きくしても CO 濃度がほとんど悪化しなかった。これは、粘性が低下して燃 焼改善に効果があらわれたものと考えられるが、燃料構造が変化した影響についても検討が必 要である。 3−2 水エマルジョン燃料のバーナー燃焼特性 拡散噴霧バーナーを用いて水エマルジョン燃料の燃焼特性を調べたところ(図 3-2-1 および 図 3-2-2)、水エマルジョン燃料では火炎温度が低く、燃焼が早期に終了して火炎長が短くなる ことが示された。これにより、水エマルジョン燃料では NOx が低減する。とくに NOx 低減効 Exhaust gas sampler φ120 Cu ball Cassegrain optics T Water Water cooled sampling probe Pump Drain Cooling unit tank Nozzle exit Spark plug r Emulsion Fuel tank Pump Accumlator ⊿ P T F Blower Combustion air h θa Pilot gas Flame stabilizer Fuel LPG Compressor Nozzle Atomizing air 図 3-2-1 φ3.5 P Laminar flow meter P F φ97 T h Nozzle Band pass filter & Photo-multiplier 131 CO,CO2 ,O2 Analyzer NO,NOx Analyzer r Air Air Outer pipe Atomizing air 燃焼解析実験装置 図 3-2-2 -216- 噴霧バーナーおよび保炎器の構造 果は水含有率が大きい る。また、水エマルジ ppm ョン燃料では、水の存 排出が増加するため、 保炎器内の燃焼改善は 重要である。火炎中の GO =0.3 0 9 8 h=75 h=50 1 0 7 0 10 6 20 h=100 30 Water content 40 50 vol.% 図 3-2-4 火炎内の OH*と CH*の 自発光強度比 (h:噴霧バ−ナー噴孔 からの距離) 10 5 0 h=25 2 * 50 5 vol.% が盛んになって CO の 100 O2 在により水性ガス反応 150 * ppm CO vol.% ことがとくに重要にな CO2 空気の混合を促進する 3 15 0 きい場合には、バーナ ー保炎器内での燃料と GO φ=0.3 30 OH max/CH max ただし、水含有率が大 NOx と顕著になる(図 3-2-3)。 45 0 10 20 30 40 50 Water content vol.% 図 3-2-3 水含有率が排気ガス 成分に及ぼす影響 局所領域におけるラジ カル活性種の挙動を解析すると、水エマルジョン燃料では燃焼初期に OH ラジカルが多く生成 し、水含有率が大きいと OH*の自発光強度が大きくなる(図 3-2-4)。このラジカル生成は燃焼 および熱量の増加に影響を及ぼしていると思われる。 3−3 水エマルジョン燃料の熱量評価 水エマルジョン燃料の熱量評価については、前 100 年度までの研究において、拡散噴霧バーナーの火 =0.3 燃料では火炎温度が低いにもかかわらず、少ない 燃料で被熱体の温度を上昇させることが可能で、 kJ くなることを明らかにしており、水エマルジョン 60 Q 炎中心軸上に置いた被熱体の受熱量測定により、 水エマルジョン燃料では被熱体の受熱量が大き 40 GO 20 0 0 燃料消費量を少なくできることを示している(図 3-3-1)。本年度はこの要因について伝熱学的に検 W50 80 200 400 600 t 図 3-3-1 800 sec 1000 1200 被熱体の吸熱経過の比較 討した。すなわち、水エマルジョン燃料では、燃 焼時に発生する水蒸気が被加熱面での熱伝達係数の増加を引き起こし、燃焼効率が改善したと 推定した。実験結果との比較から、定性的にも定量的にもこの推定の妥当性が示された。この ほかに、水エマルジョン燃料で燃焼効率が改善する要因を化学反応の側面から検討すると、水 蒸気の存在により高温の燃焼場で水性ガス反応、すなわち、 C H 2O CO H 2 の反応が 起こり、未燃分の炭素がガス化して可燃分の CO となり、これが燃焼するため、吸熱反応 ( -131.3MJ/kmol ) で あ る 水 性 ガ ス 反 応 よ り 大 き な 発 熱 反 応 ( +283.0MJ/kmol )、 あ る い は 、 高 温 で CO H 2O CO2 CO OH CO2 CO 1 / 2O2 CO2 H ( +104.5MJ/kmol )、 H 2 (+41.2MJ/kmol)などの反応が起こり、全体として熱量が増加したも のと考えられる。 -217- 3−4 バーナー保炎器構造の最適化 本研究で水エマルジョン燃料を燃焼させる拡散噴霧バーナーは外部混合型で、噴霧ノズルか ら燃料と高圧の一次空気を別々に噴射し、二次空気導入のための小孔を多数もつ円錐台状の保 炎器内で燃料と空気を混合して燃焼させる(図 3-2-2)。このため、保炎器内の混合最適化が燃 焼改善対策の一つになる。 本年度は、保炎器への二次空気導入速度および導入方向を変更させるため、保炎器側面に設 けてある二次空気導入孔の位置や大きさ、個数などを変化させて排気ガス測定を行い、最適設 計変数を求めた。まず、二次空気導入方向は火炎の成長を妨げないようにする必要があり、こ のため、導入空気速度および導入方向の最適化が必要である。燃焼用の一次空気と外部混合を 促進させるための二次空気の流量割合は(一次/二次)=0.9 付近にすると燃焼が安定し、排気も良 好になる。つぎに、二次空気導入位置を検討したところ、保炎器底面直径Dに対して二次空気 導入孔の位置h(バーナー噴孔からの高さ)は、h/D=0.4 付近に二次空気を導入したときに最も 排気が良好となった。h/D をこれより大きくすると、燃焼後期に二次空気が導入されることに なり、排気改善効果は得られない。さらに、保炎器の容積Vに対して微粒化用空気と二次空気 の総流量Qの最適値を調べた。その結果 Q/V=900∼1000(min-1)で最も排気が改善されること がわかった。以上のように、水エマルジョン燃料の拡散噴霧バーナーの設計諸元として、保炎 器への二次空気導入孔の最適化指針を示した。 4. 結論 本年度は水エマルジョン燃料製造技術として重要な界面活性剤の一つとして、高分岐ポリマを 検討し、これが燃料安定性と燃焼に及ぼす影響を調べた。その結果、高分岐ポリマでは燃料安定 性は改善しないものの、水エマルジョン燃料の粘性を低下させる効果があり、燃焼改善が見込め ることがわかった。今後、改良を加えて燃料安定性が向上する界面活性剤にする必要がある。 水エマルジョン燃料の基本的な燃焼特性は基材燃料により変わらない。ただし、廃食油-水エマ ルジョン燃料では粘性が高く燃焼が不安定になるため、水含有率が 50%まで大きくなると、排気 ガス中の CO 濃度が大きく増加する。このため、基材燃料によって界面活性剤を最適化して粘性 を適正にすることが必要である。 水エマルジョン燃料では火炎温度が低いにもかかわらず、少ない燃料で被熱体の温度を上昇さ せることが可能で、燃料消費量を少なくできる。この要因について、伝熱学的に水エマルジョン 燃料では、燃焼時に発生する水蒸気が被加熱面における熱伝達係数の増加を引き起こし、燃焼効 率が改善すると推定した。これを検証したところ、定性的、定量的に実験結果を説明することが できた。このほか、化学反応の側面からは、水エマルジョン燃料では水蒸気の存在により高温の 燃焼場で水性ガス反応が起こり、未燃分の炭素がガス化して CO となり、これが燃焼することに より熱量が増加すると考えられる。 水エマルジョン燃料の拡散噴霧バーナーの最適燃焼条件、設計要件を検討する具体例として、 保炎器への二次空気導入に関して最適設計変数を排気ガス測定を評価基準として検討した。その 結果、一次空気と二次空気の流量割合、二次空気導入位置、保炎器に対する総導入空気流量など の設計諸元に対し、最適値を示すことができた。 -218- ビジネススタイルの相違による廃棄物排出抑制及び再生利用促進効果の 検証と変革のための成立要件に関する研究 研究期間(西暦)=2003−2005 研究年度(西暦)=2005 研究代表者=乙間 末廣(北九州市立大学) 共同研究者=村田 朋美(北九州市立大学) 二渡 了(北九州市立大学) 松本 亨(北九州市立大学) 森 保文(国立環境研究所) 1.研究目的 本研究は、製品売り切り型ではない製品ライフサイクル管理形態をとるビジネススタイルを対 象に、その廃棄物の排出抑制効果及び再生利用促進効果について実データをもとに検証し、その ボトルネックと成立条件を明らかにすることを目的とする。具体的には、サービス提供型ビジネ スといわれるリース/レンタル型のビジネススタイルやその類似モデルとこれらの支援産業が対 象となる。このためには、既存のビジネススタイルを体系的に整理するとともに、それらが環境 負荷削減に寄与する条件と削減効果を検証する。さらには、環境負荷削減効果と事業者・消費者 メリットを両立させるための製品設計、社会システムのあり方についても一体的に検討する。 2.研究方法 本研究は3年計画であり、全体の研究手順は以下の通りである。 まず、既存のサービス提供型ビジネススタイルおよびその類似モデルの廃棄物排出量と再生利 用量を把握するための調査を行う。従来の典型的な製品売り切り型ではない製品ライフサイクル 管理形態をとるビジネススタイルの事例を調査、収集する。対象項目は、ライフサイクル全体か らの廃棄物排出量と再生利用量(製品及びリユースを含む)が中心となる。対象ビジネススタイ ルは、サービス提供型ビジネスと言われるリース、レンタル、シェアリング、リユース、一部の 通販、使用後の返却券つき製品等とその支援事業とする。調査方法はヒアリング及びアンケート 調査を主とする。また、ライフサイクル全体からの廃棄物排出量削減の可能性を探るための調査 もあわせて行う。その際の視点としては、リースアップ品のリユース/リサイクルの可能性、維 持管理体制の充実による長期使用の可能性、生産者とのエコデザインのための連携の可能性等で ある。 次に、上記により収集したデータに基づいたライフサイクルシュミレーションによる環境及び 経済評価を行う。これにより、リース/レンタル型のビジネススタイルへの移行によるメリット を事業者、消費者、社会全体について定量的に推定し、ビジネス成立の条件やボトルネックを明 らかにする。 成立要件としては、多くの要素が関与する消費者の受容性が重要であるので、消費者を対象と -219- したアンケート調査を実施し、ニーズの普遍性と個人属性による特性を把握する。その際、現状 分析のみならず将来的なライフスタイルや世帯構成等の変化を踏まえて将来を展望する。 3.研究の内容、結果及び考察 本年度は、研究期間3年のうちの最終年であり、これまで得られた要素データに基づき、実施 可能と思われる具体的な先駆的ビジネスモデルのいくつかについて検討した。すなわち、太陽光 発電パネルやコジェネ機器をリースするサービス提供型ビジネススタイルについて個別に検討し、 その一部についてはライフサイクルシミュレーションを実施し、環境面、機能面及びコスト面か ら評価した。 (1)賃貸マンションを想定した太陽光発電システムのエネルギー収支と経済性評価 賃貸マンションはリース・レンタルの典型例であるが、廃棄物削減、省エネルギーの観点から 検討されることは少なく、また太陽光発電パネルをセットで導入するという事例も稀有である。 ここでは実測データを基に、賃貸マンションへの太陽光発電導入によるエネルギー評価およびマ ンションオーナー・居住者それぞれの経済性評価を行い、このモデルの普及可能性を探った。 発電実績データに 居住者が太陽光発電利用によって節約できる金額 基づくと、太陽光発 電システムは 2.3 年 で製造時に投入した 家賃への 上乗せ金額 エネルギー分を回収 (高額) オーナーが金利を含めて投資額を回収できる金額 することができ、そ れ以降は一般電力供 オーナと居住者の双方に メリットがある範囲 (低額) 図2−1 賃貸マンションのオーナと居住者の双方にメリットのある範囲 用による環境負荷の低減に貢献することになる。また、太陽光発電システムの設置に伴う家賃付 加額を適切に設定することにより、オーナーと居住者の双方に経済的メリットのあることが示さ れた。 なお、太陽光発電の環境・経済両面にお ける貢献の度合いを見ると、環境負荷削減 助成割合(%) 100 90 入居率100% 効果よりコスト削減効果の方が大きくなっ 80 入居率80% たが、これは、太陽光発電をすることによ 70 って居住者の電力購入のほとんどが夜間電 50 力となり、昼間電力より割安に購入できる 40 こと、また発電の余剰分を割高な昼間電力 30 並みの金額で売れることによる。 20 このように環境面と経済面で貢献度に差 オーナーと居住者の双方に経済的メリット 居住者の利益 がなくなる範囲 10 0 0 はあるが、太陽光発電が環境負荷低減に寄 与することは確かで、かつ、マンションの オーナー・居住者双方に 利益のある範囲 60 図2−1 をもたらし得ることが分かった。太陽光発 1 2 3 4 5 6 7 金利利率(年利)(%) 8 9 10 投資回収期間30年のときのオーナー・ 居住者双方に利益がある助成割合 および年利の限界範囲 電システムの賃貸マンションへの設置が、環境(社会) ・オーナー・居住者の 3 者で Win-Win の関 -220- 係を構築することになり、今後、このモデルが広く普及する可能性を秘めていると言える。なお、 分譲マンションへの設置は、分譲額を引上げることになり居住者(購入者)の初期投資が増加す ること、さらに、近年の分譲マンションの流動性向上を考えると回収が長期になる付加投資は避 けられることから、賃貸マンションへの設置に比べて普及は限定的と推測される。 (2)エアコンを例にした省エネ型家電製品のリース事業の可能性評価 LCCO2 と LCC の観点から、省エネ型エアコンと従来型エアコンの比較を行った。これにより、 CO2 とコストによるペイバックタイムを算出した。機器の物理的寿命よりこれが短い場合は、買 替を行った方が環境、経済それぞれに良いという意味を持つ。機器の物理的寿命は正確に把握で きないが、現在の平均使用年数(12∼13 年)が一つの基準となろう。つまり、これより短い場合 は買い替えた方が環境あるいは経済的メリットがあるといえる。 表2−1 エアコンのCO2ペイバックタイム(年) 製造年 買 い 替 え 年 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 1995 30.7 15.8 10.9 8.4 6.9 5.9 5.2 4.7 4.3 4.0 3.7 3.5 1996 32.7 16.8 11.6 8.9 7.4 6.3 5.6 5.0 4.6 4.2 4.0 1997 34.7 17.9 12.3 9.5 7.8 6.7 5.9 5.3 4.9 4.5 1998 36.9 19.0 13.1 10.1 8.3 7.1 6.3 5.7 5.2 1999 39.3 20.2 13.9 10.7 8.8 7.6 6.7 6.0 2000 41.7 21.5 14.8 11.4 9.4 8.1 7.1 2001 44.4 22.9 15.7 12.1 10.0 8.6 2002 47.2 24.3 16.7 12.9 10.6 2003 50.2 25.8 17.8 13.7 2004 53.3 27.5 18.9 2005 56.7 29.2 2006 60.3 ま た、省エネ型家電のリース事業の一形態として、賃貸マンションのオーナーが入居者に家電をリ ースし(省エネ型家電のビルトインタイプ)、そのリース料金を家賃に上乗せするモデルを想定し、 リース事業の可能性を検討した。その結果、経済的、環境的メリットが出せる賃貸料金の範囲が 存在することを示した。今後は、製造年数と買替年の組み合わせによる事業可能性の有無を判定 することが課題として残された。 なお、今回は電力消費量が多く、かつエネルギー消費効率の改善の大きいエアコンをとり あげたが、同じような機器に冷蔵庫や液晶テレビ、洗濯機、電動ポット、食器洗い機などが 考えられる。これらの機器に関しても同様の分析が可能であろう。 (3)家庭用ハイブリッド型エネルギーシステム(ガスコジェネ+太陽光パネル) 環境負荷低減型の家庭向けサービサイジングとして、 「太陽光パネル・ガスコジェネ・ガス床暖 房」を一括パッケージとして導入することの可能性を検討するため、既存の導入事例を参考にし たモデル建築を設定した。具体的には、3 人家族が住む 100m2 の集合住宅に 1 戸あたり 1.5kW の太 陽光パネル、ガスコジェネ、ガス床暖房を一括リースする場合について検討した。 月別電力負荷と発電量および月別温熱負荷と排熱利用量を基に試算した結果、年間電力負荷量 3,893 kWh に対して一括パッケージによる発電量は 3,223kWh(コジェネ:1,721 kWh、太陽光:1,502 kWh) 、また年間温熱負荷量 5,803Mcal に対して排熱利用による温熱供給量 4,617Mcal となり、電 力使用量の 82%(うち太陽光は 38%)、温熱使用量の 79%を本パッケージによって供給できること が分かった。これによって、一次ネネルギーの消費量は熱量ベースで 72%、CO2 排出量は 67%に低 減される。 -221- 引き取ったものの再リース 一括パッケージの導入に係る投資総額は 一括パッケージの納入 188 万円である。このうちガスコジェネの リース会社 導入については国から 19 万円の「ガスエン 維持管理サービス リース料金の支払い ジン給湯器導入支援補助金」があることか ら、世帯当たりの負担額は 188 万円となる。 賃貸住宅オー ナー及びそのテ ナント リース期間終了後は残価での引き取り 一方、本システムによる年間光熱費を試算す 図2−3 リース事業導入の仕組み ると、従来型に比べて世帯あたり年間 7.8 万円 のメリットが生じ、経済的ペイバックタイムは約 24 年となった。 これらに加えて、集合住宅所有者や居住者を対象に、一括パッケージの受容性について WEB アンケ ートを実施し、リース事業の可能性と今後の課題について検討した。 (4)コンピュータサービスのアウトソーシング コンピュータのアウトソーシングは、サービサイジングのひとつの例であり、その環境影響が 従来の自社所有の場合とどのように異なるかは、検討を要す。本研究ではコンピュータのアウト ソーシングのうち、中堅・中小企業にも関連が多い、ハウジングサービス、ホスティングサービ スを取り上げ、各社の社屋内にコンピュータサーバーを置く場合と、データセンターにコンピュ ータサーバーを置く場合において、各種のメリット、デメリットの比較と、環境影響について調 べた。具体的には、ハウジングサービス、ホスティングサービスにおける、セキュリティ、リス ク対応、サービスの品質、運用管理、コスト、環境影響の各項目別に半定量的にメリット、デメ リットを明確にした。また、ハウジングサービス、ホスティングサービスを特に中小企業が利用 するためのわかりやすい支援ツールを開発した。 (5)化学物質の管理に及ぼす効果 製品ライフサイクル管理形態をとるビジネス形態には、売切り型に比べて化学物質の管理が容 易になるという期待がある。製品の調達、維持管理、廃棄の責任が個人ではなく、サービスを提 供する企業に残ることから、製品に含まれる化学物質が散逸するリスクを軽減できるとともに、 サプライチェーンにおける化学物質情報の収集・管理も容易になる。 製品含有化学物質管理に関する行政や業界団体の取り組みが活発になっており、環境省や経済 産業省による報告書等が取りまとめられるとともに、JGPSSI(グリーン調達調査共通化協議会) がガイドラインを発行した。さらには、電子・電気機器の特定の化学物質の含有表示方法に関す る JIS 規格(JIS C 0950:2005)も発行されている。これらの資料を参考にして、製品ライフサイ クル管理型ビジネススタイルでの化学物質管理において具体的にどのような局面で有効となるの かを検討した。 4.結論 先駆的なサービス提供型ビジネスモデルについて検討をしたところ、いずれの場合も環境面か らの効果は見られるが、消費者と事業者の経済的収支はビジネスモデルの個別条件によって異な る。社会的な定着を図るには、コスト面から消費者と事業者に受容される仕組みを構築すること が重要であり、本研究によりその可能性が示された。 -222- UHF 帯 IC タグを利用した廃棄物トレーサビリティシステムの開発 事業者名:株式会社コシダテック 1.技術開発担当・照会先 株式会社コシダテック 新規事業開発本部 システムソリューション営業部 〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目 5 番 10 号 TEL.03-3432-4671 FAX.03-3432-3470 2.技術開発の目的と開発内容 2-1-1 技術開発の概要 本技術開発では、近年廃棄物管理で話題となっている有害廃棄物の適正管理、不法投棄の 抑止、資源循環等の観点から、確実性・信頼性・作業性に優れたトレーサビリティの開発を 目的としている。昨年度、次世代廃棄物処理技術基盤整備事業補助金に採択頂き、GPS・IC タグ・モバイル通信を利用し、電子マニフェストに連携した感染性廃棄物のトレーサビリテ ィシステムの開発を行なったが、利用した IC タグは 13.56MHz と情報の読書きの距離が数 cm と短いため、対象廃棄物が限定されてしまう。そこで本事業では読書きの距離が数mと長 く、同時読取にも優れているUHF(950MHz)及び準マイクロ波(2.45GHz)IC タグを利 用し、尚且つそのタグ情報と映像を連携させるシステムを開発する。 2-1-2 達成すべき目的 廃石綿等の有害廃棄物の適正管理、産業廃棄物の適正処理の管理(監視)、適正な循環資源 システム等に応用可能なトレーサビリティ実現化のため、本事業は 3 つのフェーズにて開発 を行い、それぞれの達成目標は下記の通りである。 ①車載機(GPS・通信機能)若しくは GPS・ブルートゥース内蔵型携帯電話に連動した準マ イクロ(2.45GHz)IC タグ用のインターフェースユニット並びにインターフェースユニッ トと連動するハンディターミナルアプリケーションの開発。 ②トレーサビリティの ASP システムと、取得した画像データを連動するためのソフトウェア の開発。 ③本事業の実証試験では、廃石綿及びリサイクル可能な機密書類を対象とし、上記 2 つのツ ールを使用して、対象物が最終処分場(廃石綿)及びリサイクル工場に持ち込まれ処理さ れたことをトレース、各フェーズにおけるデータ管理が出来ていることを実証試験により 確認する。 -223- 2-1-3 実証施設 本技術開発で作成した機材ならびにソフトウェアの仕様を表 2-1-1 に示す。 表 2-1-1 実証機器の仕様 ハードウェア関連(モバイル関連) 名 称 仕 様 ハンディターミナル 13.56MHz RFID 対応 一次元バーコード対応 Bluetooth 対応 IC タグリーダーインターフ マイコン内蔵 ェースユニット IC タグリードモジュー ルの変更により UHF、 準マイクロ双方に対応 Bluetooth 対応 電子秤 MAX60kg 0.5kg 刻み 用 途 各認証 IC タグのリード機器 通信機器と UHF、準マイクロ IC タグイン ターフェースとの中継用 電子秤と IC タグユニークコードの紐付け を行い、ハンディターミナルにデータ送信 測定重量データをインターフェースユニッ トに送信 車載端末(GPS 内蔵) NTT ドコモ Dopa 対応 ハンディターミナルで収集集計した廃棄物 データの送受信及び位置情報の把握 携帯プリンター Bluetooth 対応 引取票、納入票の印刷 ゲート型アンテナリーダ UHF 、 準 マ イ ク ロ 処分場、リサイクル工場に設置し、廃棄物 RFID 対応 情報のリード機器 IC タグ 準マイクロ RFID 廃棄物の管理用 13.56MHz RFID IC タグ 各フェーズの認証用 サーバ関連(ソフトウェア関連) 名 称 用 途 IC タグ情報データベース 各種排出情報と IC タグの管理用データベース 管理対象物情報管理システ 各種管理対象物の入出力ソフト ム 地図データベース 場所管理用データベース 認証システム ASP サービスへの各種認証 通信システム 車載端末との通信管理ソフト 2-1-4 実証施設及び規模 ・管理対象物:廃石綿 委託事業者:株式会社 廣川組 運搬事業者:新潟メスキュード株式会社 処理事業者:三重県内管理型最終処分場(処理事業者の希望により名称は非公開とさせてい ただきます) ・管理対象物:機密文書(紙リサイクル) 委託事業者:NTT ドコモ 群馬支店、利根郡信用金庫 運搬事業者:群馬綜合ガードシステム株式会社(警備輸送車両:35 台保有) 保管事業者:永田紙業株式会社 前橋中央事業所 処分事業者:永田紙業株式会社 深谷事業所 -224- 2-1-5 処理対象廃棄物の種類及び試験回数 本技術開発における対象廃棄物は、廃石綿及びリサイクル可能な事業系紙とする。 廃石綿は、専用のビニール袋を 2 重に梱包し、専用ビニール袋毎に IC タグを貼付、運送時 にフレコンバッグにビニール袋を詰め込み運搬される。フレコンバックには、ロット管理用 タグを準備し、フレコンバック単位で管理可能かを実証する。 事業系リサイクル用紙は、段ボール箱等に IC タグを貼付、運送時のトレース及び受入確 認を行う。 2-1-4 に示す各社の協力により、実証試験期間は平成 18 年 3 月 20 日より 3 月 28 日までの 9 日間で実証試験を行った。 実証試験内容は、廃石綿は、排出現場より回収を行い、管理型最終処分場に納入するまで をトレースした。 事業系リサイクル用紙は、排出先から保管倉庫、保管倉庫から排出元へ返却、排出先から リサイクル工場、保管倉庫からリサイクル工場の工程でそれぞれのトレースを確認した。 2-2 試験方法 本技術開発における実証試験方法としては、通常行われている委託情報を委託事業者・収 集運搬事業者・処分施設の各フェーズでの個体管理を検証する。(各事業者の作業性確認を含 む) 3.技術開発の成果 平成 16 年度開発システムでは、近距離での運用を余儀なくされたが、今回の長距離対応の IC タグでは大きな対象物やロット管理等一度に多くの管理対象物を処理することが可能と なった。 4.まとめ 4-1 自己評価 本技術開発で目標としていた「2.1.2 達成すべき目的」に明記した 3 つのフェーズ全ての 目的を達成し、排出・収集運搬・保管庫の入出庫、リサイクル工場での処分、廃石綿の排出 から管理型最終処分場への搬入までのトレーサビリティすることができた。本技術開発の目 標としては十分な結果が出たと自己評価できる。各フェーズの評価は下記の通り。 ①2.45GHz IC タグの情報をインターフェースユニット経由にてハンディターミナル内にデ ータを取り込み、各データを管理サーバにてトレース結果を記載することが出来た。 ②下記ⅰ)∼ⅴ)が問題なく機能し、目的を達成できた。 ⅰ)電子秤から重量データを取得し、ハンディターミナル内で重量データ、IC タグの製造 番号と作業管理番号との紐付け ⅱ)フレコンバッグに取付けた代表管理用 IC タグとそれに紐付く個別タグを管理 ⅲ)各通信機器間は、ブルートゥース機能を利用して、ワイヤーレスでの通信で操作性の 向上 ⅳ)モバイル通信による、ハンディターミナルからの IC タグ製造番号情報の ASP サーバ -225- への通信 ⅴ)ASP サーバでは、ハンディターミナルからの IC タグ製造番号のみでの管理を実現 ③リサイクル工場で長距離ゲート型リーダアンテナによる IC タグ情報の読み込みと ASP サ ーバへの通信も問題なく機能し、目標を達成できた。 ④①∼③を通し、実証試験にて廃石綿、機密文書のトレーサビリティすることができ、本技 術開発の目標を達成できた。 4-2 今後の課題 本技術開発では、平成 18 年 1 月 25 日総務省より公示即日施行された新電波法により当初 計画していた UHF 帯での実証試験を行うことが出来なかった。 電波法改正前、メーカで試験を行った際、アンテナの特性により変化はするものの最大 8 mの通信が実現できており、リーダアンテナと管理対象物の間に障害物があった場合に電波 特性によって読み取れるケースもあり、フレコンバッグ等の袋に入れた廃石綿等がゲートを 通過するだけで管理が出来るようになる。 しかし、廃石綿は、解体業者が密閉空間で除去作業を実施した際に指定された二重の袋に 詰めて排出されるため、排出場所が転々とするため、排出場所にゲート型アンテナリーダを 設置することは非常に困難であると思われる。 現在、総務省で検討されている小出力 UHF 電波規格による機材で管理サーバへのデータ 管理が出来る対応を行う必要性がある。 4.3 国内の廃棄物処理全般に与える影響(メリット) 廃石綿等人体に悪影響を及ぼす廃棄物に IC タグによる管理を行うことで、災害等で処分場 より流出した容器が IC タグの製造番号を読み取ることにより、どこから排出されてどこで処 分されたかを確認することが可能となる。 以上 -226- マイクロ波による土壌無害化技術の開発 事業者名:日本スピンドル製造㈱ 1.技術開発担当・照会先 技術開発担当 与川 慎太郎、木嶋 敬昌 (日本スピンドル製造㈱技術開発室) 青木 正裕、三坂 浩司、辰巳 道雄(日本スピンドル製造㈱環境システム事業部) 照会先 尼崎市潮江 4-2-30 技術開発室 TEL.06-6499-4304、FAX.06-6495-2241 尼崎市潮江 4-2-30 環境システム事業部 TEL.06-6499-5560、FAX.06-6495-2051 2.技術開発の目的と開発内容 本事業は、これまでに日本スピンドル製造㈱と大阪大学との共同開発により確立された、小型 試験機における、マイクロ波化学に基づくダイオキシン類無害化処理技術と電磁波照射方法を基 に、オンサイト処理可能且つ、環境負荷を低減できる高効率で低コストな連続処理システムを製 作し、汚染土壌および産業廃棄物飛灰の長期連続処理試験を行い、操作条件の最適化を行うこと を目的としている。 本事業ではこの目的達成のため、実証試験機(連続処理システム)を実際に設計・製作して、 実汚染物質を使用した実証試験を実施し以下の目標達成を目指した。 [1]対象物質中のダイオキシン類の分解率の実証(99.9%以上) [2]省エネルギー条件での長期安定運転の実証(0.2kwh/kg 以下) [3]通常空気雰囲気条件での 1.を充足するマイクロ波照射条件最適化 [4]前後処理装置を含めたマイクロ波処理システムによるオンサイト連続運転(200kg/h) [5]高環境負荷での連続運転におけるシステムの耐久性実証 [6]処理後土壌の再利用技術の検討 [7]高温操作条件下における重金属類挙動の明確化 上記開発により、商用規模として 1∼2t/h以上の処理能力を有するオンサイト方式による連 続装置の設計製作が可能となる。 3.実証試験機の製作 装置製作にあたり、マイクロ波の照射効率を高めるために装置内への入射波に対して反射波が 少なく、且つ処理対象物質に効果的に照射される構造の装置を開発する必要がある。また、マイ クロ波発振装置内に含塵ガスが逆流するのを防止するための汚染防止窓と窓に付着する粒子状物 質の洗浄装置の開発が必要となる。さらに、上記を充足した条件下において、マイクロ波を効果 的に吸収させる目的で処理対象物質の混合攪拌処理を最適化する必要があり、それぞれ以下の検 討により実証試験機を製作する。 3.1 電磁波解析(装置寸法・形状・マイクロ波発振装置設置位置の設計) 既存の小型試験機には 2 台の発振装置が設置されている。この装置を使用したこれまでの知見 から、本照射対照物に必要と考えられる照射電力以上の複数台のマイクロ波発振装置を反射電力 -227- が入射電力の 20%未満となるような装置形状と設置位置を開発することを目的とした解析を行 い、装置設計を行う。 3.2 高環境負荷耐久性向上化設計 マイクロ波を透過し、且つ含塵ガスの発振機内への逆流を防止する石英ガラス製またはマイカ 製逆流防止窓に空気流をシースエアとして間欠的に吹き付けて窓の洗浄機構とした装置を開発す る。 3.3 対象物質の混合攪拌操作の最適化 これまでに小型試験機にて開発したマイクロ波照射場においても粉体の混合攪拌を良好にする 攪拌羽根をほぼ相似的にスケールアップ化した攪拌羽根を開発する。 4.実証施設の規模・設置基数 上記により製作した実証試験機と既存の小型試験機を使用して、試験を実施する。 表 4-1 試験装置の仕様 項目 容量 型式 処理温度 設置場所 基数 備考 小型試験機(既存装置) 50kg/バッチ マイクロ波照射処理(10kw出力) 200、450℃ 本社工場内単独設置 1基 土壌処理試験に使用 実証試験機(本製作装置) 最大750kg/バッチ(オンサイト) マイクロ波照射処理(61kw出力) 250∼430℃ 某種飛灰輸送プラント併設 1基 飛灰処理試験に使用 5.処理対象廃棄物の種類 処理試験に際し、以下の物質を処理対象物とした。 ① ダイオキシン類に汚染された土壌(土壌 A、土壌 B) ② ダイオキシン類に汚染された某産業廃棄物飛灰(飛灰) 表 5-1 処理対象物の組成 試料 C l(w t% ) 土壌A 0 .1 8 土壌B 0 .0 1 飛灰 1 0 .0 0 *各平均値による A l(w t% ) 5 .9 9 6 .2 9 0 .7 2 S i(w t% ) 2 0 .7 0 2 0 .1 0 2 .0 0 F e (w t% ) 2 .9 6 2 .8 6 2 8 .0 0 C a (w t% ) 8 .4 2 1 1 .0 0 2 .9 0 6.試験方法 開発項目の[1],[6],[7]については、土壌試料を用いて図 6-1 に示す小型試験機により、装置内に 予め装填した調整試料に対して試料の混合攪拌操作を伴ったマイクロ波照射処理を実施し(空気 雰囲気) 、処理前後の試料のダイオキシン類を含む成分分析を実施した。本試験では、処理中に発 生する排ガスおよび凝縮水を装置後段に設置した採取装置により採取し、ダイオキシン類の挙動 を検討した。尚、各照射処理終了後は、窒素ガスにて装置内を換気して残留する排ガスを強制排 出させ、採取した。 開発項目の[1]∼[5]については、飛灰試料を用いて図 6-2 に示す実証試験機を用いて、オンサイ -228- トにて長期高環境負荷装置耐久性能と処理前後のダイオキシン類の分析を実施した。本処理では、 消石灰を添加して調整された試料が供給コンベアから装置内に供給された後、供給弁を閉じて混 合攪拌操作を開始すると同時にマイクロ波照射処理を実施し、処理後排出弁を開いて試料を排出 するプロセスとなる。試料温度は、装置内高さ方向 3 箇所に設置した熱電対により測定した。マ イクロ波の反射率は③/②により測定した。尚、排ガスはセラミックフィルタ後段に設置した ACF(活性炭素繊維吸着フィルタ)による吸着処理後大気開放した。 6.1 調整試料 これまでのラボスケール試験で添加により分解促進効果が確認されている活性炭、消石灰を各 処理対象物に適宜添加して調整試料とした。 6.2 試験装置 セラミックフィルタ マイクロ波発振設備 MW 調整試料 XAD 水冷管 N2 Air ガスメータ ポンプ 熱電対 攪拌羽根 DEG 排ガス・凝縮水採取装置 図 6-1 小型試験機概略 MW 試料供給コンベア ACF ② マイクロ波発振設備 ④ ⑤ ① ③ ⑥ セラミックフィルタ 調整試料 熱電対 試料排出コンベア ①マイクロ波発振装置 ②入射波検知パワーモニタ ③反射波検知パワーモニタ ④入射波 ⑤反射波 ⑥発振装置内汚染防止窓 攪拌羽根 図 6-2 実証試験機概略(本製作装置) -229- 6.3 分解試験条件 表 6-3 分解試験条件 試料 土壌A、B 飛灰 添加剤 消石灰 活性炭 有り 有り 有り なし 処理温度(℃) 処理量(kg) 200,450 250∼430 50 300∼750 使用装置 小型試験機 実証試験機 7.事業工程 表 7-1 事業工程 7月 8月 平 成 17年 9月 10月 11月 12月 1月 平 成 18年 2月 3月 装 置 設 計 (電 磁 波 解 析 ・装 置 ス ケ ー ル ア ッ プ 化 ) 装 置 製 作 、 詳 細 実 験 計 画 ・準 備 実 証 試 験 (小 型 試 験 機 ・実 証 試 験 機 ) デ ー タ 分 析 ・解 析 報 告 書 作 成 8.技術開発の成果 8.1 ダイオキシン類分解挙動 表 8-1 より、組成の異なる両土壌に対して 200℃程度でもダイオキシン類が分解しているが、 450℃処理を行うことで 99.9%前後の高分解が実現できていることがわかる。表 5-2 からは、処 理時に発生する排ガス量は数 m3 と少量であるが、土壌の種類により、排ガス・凝縮水へ数%の ダイオキシン類の揮発が見られ、本処理においては後段に ACF を始めとする吸着処理などが必 要であることがわかる。尚、土壌 A は含水率が高かったが、混合・攪拌操作中の固化などによる 粉体トラブルは生じず良好に操作することができた。 これまでにマイクロ波照射処理においては、処理対象物質中の含有塩素に対して消石灰を添加 することで分解効果を向上させることを確認しており、図 8-3 より本申請にて製作した実証試験 機においても同一の傾向を得ることが実証できた。また、250℃<350℃の順に高い分解効果が得 られている。 表 8-1 ダイオキシン類の分解挙動(1) 土壌A 土壌B 200℃処理 dxn初期濃度 (ng-TEQ/g) 総量分解率 毒性分解率 消費電力 0.64 28.3% 21.9% 0.58kwh/kg 51.3% 48.1% 0.25kwh/kg 0.27 -230- 450℃処理 総量分解率 毒性分解率 消費電力 99.9% 99.8% 0.87kwh/kg 99.1% 99.7% 0.6kwh/kg 表 8-2 ダイオキシン類の分解挙動(2) 土壌A 土壌B 排ガス 凝縮水 排ガス 凝縮水 総量混入率 0.02% 0.26% 0.00% 2.27% 200℃まで 毒性混入率 0.10% 3.13% 0.00% 2.15% 排出量 3 4.00m N 4.72L 3 1.07m N 0.98L 200∼450℃まで 総量混入率 毒性混入率 排出量 3 0.29% 3.13% 2.85m N 0.68% 8.13% 1.49L 3 0.04% 0.05% 1.58m N 0.61% 0.70% 0.87L 図 8-3 実証試験機による飛灰分解性能 8.2 省エネ運転実績 表 8-4 は実証試験機と小型試験機による飛灰の 350℃処理時における消費電力を比較したもの である。これより、処理量が多いほど、また連続処理するほど省エネが実現できていることがわ かる。尚、バッチ連続処理とはバッチ処理終了後、連続して次のバッチ処理を実施する処理を示 す。 表 8-4 処理に伴う消費電力比較 消石灰含有量(%) 10 18 小型試験機(50kgバッチ処理) 実証試験機(500kgバッチ処理) 0.56 0.36 0.43 消費電力(kwh/kg) 実証試験機(500kgバッチ連続処理) 0.29 0.35 実証試験機(750kgバッチ連続処理) 0.27 8.3 重金属類挙動および処理後土壌の再利用化の検討 表 8-5 は、処理前後における土壌の含有重金属類を比較したものである。これより、450℃処 理において含有量はほとんど変化していないことがわかる。また、450℃処理後土壌についての 溶出試験結果から両土壌に対して第二溶出基準未満であったため、本処理による処理後土壌は、 運搬費及び埋め戻し土の購入費等の経済的な面を考慮すると①原位置への埋め戻し、再利用とし て活用するのであれば②セメント原料化などが適していると考えられる。 表 8-5 含有重金属類成分比較 単位 Cd Cr CN T-Hg Se Pb As F B mg/kg mg/kg mg/kg mg/kg mg/kg mg/kg mg/kg mg/kg mg/kg 初期 <5 <2 <2 0.2 <2 73 2 <50 5 土壌A 450℃処理後 <5 <2 <2 <0.1 <2 74 3 60 6 -231- 初期 <5 <2 <2 <0.1 <2 6 <2 <50 <5 土壌B 450℃処理後 <5 <2 <2 <0.1 <2 9 <2 60 <5 土壌含有基準値 150 250 50 15 150 150 150 4000 4000 8.4 連続運転実績 マイクロ波利用技術では、省エネ化と装置耐久性の観点から、反射波率を少なくすることが必 要であるが、これまでの 100 時間に及ぶ長期連続試験において 20%未満を維持できた。また、 電磁波漏洩量は 0.1mW/cm2 未満を維持でき、高い安全性を実証できた。また、設計仕様を上回 る処理量においてもマイクロ波照射場において、測定部位での試料温度差が±20℃未満となる均 一加熱が実現でき、供給・排出時を含め目立った粉体トラブルは生じなかった。ただし、発振機 内への汚染防止窓には塵埃が若干量付着しており、より効果的な窓洗浄機能の開発が望まれる。 9.まとめ 表 9-1 に開発成果をまとめた。これらより、省エネ化については、やや下回ったが、多くの点 で目標値を達成することができ、特に溶融処理に代わる簡易な処理が望まれている土壌処理に普 及できるものと考える。以上より、本事業における達成率は 80%以上と評価する。 マイクロ波は対象となる物質によって、吸収性能が異なるため、全ての廃棄物に対して利用で きるとは限らない。本事業では土壌および飛灰に対して多くの点において、事業化可能な性能を 実証することができたが、今後他の対象物質についても処理可能性の検討を行う予定である。ま た、廃棄物処理のみでなく、本事業で得た知見を基に活用して、他のマイクロ波有効利用技術も 視野に入れていく予定である。 表 9-1 開発成果 開発項目 ダイオキシン類分解率 省エネ処理化 照射条件最適化 オンサイト連続実証運転 マイクロ波反射率 [5] 処理試料温度差 電磁波リーク量 処理後土壌の原位置埋め戻し [6] 処理後土壌のセメント原材料化 [1] [2] [3] [4] 開発目標値 99.9%以上(土壌) 0.2kwh/kg以下 [1]を充足する条件化 積算100h実証運転実績化(処理量200kg/h) <20%(測定部位平均) <±20℃(500kg、350℃処理時) <0.2mW/cm2 運転実績値 99.9%(総量分解率)・99.8%(毒性分解率) 0.27kwh/kg 消石灰、活性炭添加量調整にて達成 100h(飛灰処理量340kg/h:350℃処理時) <20% <±20℃ <0.1mW/cm2 <第二溶出基準 <第二溶出基準(450℃処理) 重金属類挙動(処理後土壌の含有量および溶 [7] 出量)(Pb,Cr(Ⅵ),CN,Hg,As,F,B,Se) 処理後土壌の含有基準値・溶出基準値未満 処理後土壌の含有基準値・溶出基準値未満(450℃処理) *(◎・・期待以上、○・・達成、△・・ほぼ達成、×・・未達) *飛灰処理量は、前後処理装置(コンベアによる試料供給・排出処理)の操作時間を含む -232- 評価 ○ △ ○ ◎ ○ ○ ◎ ○ ○ ○
© Copyright 2026 Paperzz