実用化研究 代表研究者 広常 真治(大阪市立大学大学院医学研究科 教授) カルパイン阻害剤を用いた 滑脳症治療への新戦略 概 要 滑脳症は発生期における神経細胞の遊走障害によるヒト中枢神経系の形成不全であり、重度の精神遅滞とてんかん 発作を特徴とする。原因は主としてヒト染色体17番にあるLIS1のヘテロの変異による。LIS1はモータータンパク質である 細胞質ダイニンの制御因子であるが、 カルパインによって分解される半減期の短い蛋白質である。我々はLIS1変異マウ スをモデルとした実験で、 カルパイン阻害剤の投与がLIS1変異マウスでLIS1蛋白質を回復させ、変異マウスにおける 様々な表現形を回復させることを発見した。本計画ではヒト滑脳症の治療を目指し、 より有効なカルパイン阻害剤の同定 と有効性の確認を行う。 期待される成果 滑脳症はLIS1のヘテロの変異に伴う中枢神経系の形成不全であり、有効な治療法はない。我々はLIS1の変異マウス を用いた実験からカルパイン阻害剤が滑脳症の治療薬として有望であることを発見した。 この成果は、滑脳症の治療薬 開発としての展望が開けるだけでなく、他のハプロ不全の疾患にも適応が期待され、遺伝子疾患に対する新たな治療法 の確立につながる可能性がある。 滑脳症と原因遺伝子・LIS1について 滑脳症のMRI像 正常 滑脳症 1. 脳回の欠如、 神経細胞の層構造の異常を示す。 2. 精神遅滞、てんかん発作等を示す。 3. 発生頻度は1万5千人の新生児に1人。 ガラクトース血症(3万人に1人) クレチン症(4千人に1人) 4. 60%はPafah1b1(LIS1) の ヘテロ変異に伴う 神経細胞の遊走異常。 LIS1 Pac1(Yeast), NudF(Aspergillus), D-Lis1(Drosophila) LIS1はモータータンパク質 細胞質ダイニンの順行性の運搬 に必要。 カルパイン阻害剤による神経細胞遊走の回復 小脳顆粒神経細胞 を用いた神経細胞の 遊走実験でカルパイン 阻害剤がLIS1変異 マウスに見られる遊走 障害を回復させた。 カルパイン阻害剤による行動異常の回復 LIS1変異マウスに見られる 行動障害は カルパイン阻害剤の 投与により回復した。 。
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