比 較 ス ポ ー ツ 論 ( 和 田 浩 一 、 2016.10.20) テーマ:フットボール禁止令と近代サッカーの萌芽 1.中世フランス ラ・シュール 2.中世イギリス 1)民族フットボールの別称 モブ・フットボール(暴動フットボール) ストリート・フットボール(町中のフットボール) フーリガン マス・フットボール(群衆フットボール) オフサイド 2)民俗フットボールの盛衰 民俗フットボール:地域共同体の同胞意識の上に成り立つ民衆の身体文化 a. 一 個 の ボ ー ル を 二 チ ー ム に 分 か れ て ゴ ー ル に 運 び 込 む と い う ゲ ー ム だ が 、 ル ー ル や 形態は地域によって大きく異なっている。 b. 主 な プ レ イ ヤ ー は 民 衆 。 プ レ イ の 場 所 ・ 時 間 ・ 人 数 は 一 定 せ ず 、 郊 外 を 含 む 街 全 域 で数千人が参加することもあった。 c. 足 だ け で な く , 手 を 使 っ て 運 ば れ る 。 d. 肉 体 的 暴 力 が 大 幅 に 容 認 さ れ 、 大 勢 の 負 傷 者 や 時 に は 死 者 ま で 出 た 。 e. 多 人 数 が 参 加 す る 場 合 は 安 息 日 や 農 閑 期 、 特 定 の 宗 教 祭 日 に 行 わ れ 、 地 域 共 同 体 の 祭の一つでもあった。 f. 産 業 革 命 後 : 工 場 用 地 と し て 土 地 を 奪 わ れ た 農 民 、 過 酷 な 工 場 労 働 に 不 満 を 持 っ た 労働者たち → 資本家や経営者に対して反抗 → 仕事をサボってフットボール 3)繰り返される禁止令 国 王 ・ 市 長 ・ 治 安 判 事 な ど の 為 政 者 に よ る 民 衆 フ ッ ト ボ ー ル 禁 止 令 ( 1314-1847年 : 理 由 a. 治 安 の 維 持 : フ ッ ト ボ ー ル に よ る 死 者 と 民 衆 の 暴 徒 化 の 回 避 計 42回 ) b. 財 産 の 保 護 : 商 店 や 家 屋 ・ 財 産 → 大 き な 損 害 ↓ c. 国 防 : 14~ 15世 紀 、 フ ッ ト ボ ー ル : 弓 術 訓 練 の 妨 げ 4)急速な衰退(19世紀)の要因 イングランド中部アッシュボーンでは、今でも懺悔火曜日のフットボールが続いている。 要 因 a. 家 父 長 的 領 主 → 資 本 主 義 的 地 主 → 保 護 を 与 え て い た 農 民 と 対 立 関 係 b. 産 業 革 命 → 労 働 時 間 の 増 大 ・ 休 日 の 激 減 ( 1833年 の 工 場 法 で は 、 安 息 日 以 外 c. 都 市 化 の 進 行 → 共 同 体 の 同 胞 意 識 の 喪 失 d. 為 政 者 や 教 会 か ら の 継 続 的 な 抑 圧 3.近代イギリス 1 2日 の み ) 1)パブリックスクールでのフットボール 各校独自のルールを持つフットボール(盛)=共同体意識の学校内・卒業生間での堅持 ↓ 卒業後もクラブでフットボールを継続 → 出身校のルールの違いが障害 2)サッカーとラグビーへの分裂 → ルールの制定 = 近代スポーツの始まり 1863年 . フ ッ ト ボ ー ル 協 会 ( Football Association) の 結 成 → 手 の 使 用 を 禁 止 ・ 足 の プレイを主体とするサッカー 1871年 . ラ グ ビ ー ・ ユ ニ オ ン ( Rugby Union) の 結 成 → 手 が プ レ イ の 主 体 3)分裂の原因となった二つの対立 a. イ ー ト ン 校 と ラ グ ビ ー 校 ― ― パ ブ リ ッ ク ス ク ー ル 間 の 根 深 い 対 抗 意 識 b. 旧 支 配 層 の 上 流 貴 族 ( 地 主 ) 階 級 と 産 業 革 命 に よ っ て 経 済 力 を 得 た 新 興 中 流 階 級 サッカー → イートン校やハロー校など伝統ある名門校:〈貴族〉階級子弟 ラグビー → ラグビー校などの新興パブリックスクール:〈中流〉階級子弟 例.ラグビー:手の使用 + 上限のないH型ゴール vs イ ー ト ン : 手 の 使 用 禁 止 + 上 限 の あ る □ 型 ゴ ー ル ※.フットボールルール統一の際にも、ラグビーとイートンの対立が表面化 → 主 導 権 争 い に 負 け た ラ グ ビ ー 校 出 身 者 : FA脱 退 → RU結 成 4)オフサイドの意味 a. オ フ サ イ ド 自分のチーム(=サイド)を離れる(オフする) b. 産 業 革 命 へ の 抵 抗 運 動 フットボールの興隆、密かに相手チームに入って一気にゴール:増加 1点 先 取 → す ぐ に 決 着 → 面 白 く な い → 抵 抗 運 動 に も な ら な い 。 c. 現 代 サ ッ カ ー 小得点で勝負が決まる。 ←〈民族フットボールの歴史の〉近代への影響 参考図書 F・ P・ マ グ ー ン 著 、 忍 足 欣 四 郎 訳 『 フ ッ ト ボ ー ル の 社 会 史 』 岩 波 新 書 、 1985年 中 村 敏 雄 『 ス ポ ー ツ ・ ル ー ル 学 へ の 序 章 』 大 修 館 書 店 、 1995年 山 本 浩 『 フ ッ ト ボ ー ル の 文 化 史 』 筑 摩 書 房 、 1998年 エリク・ダニング、ケネス・シャド著、大西鉄之祐・大沼賢治訳『ラグビーとイギリス人』 ベ ー ス ボ ー ル ・ マ ガ ジ ン 社 、 1983年 中房敏朗「サッカーはなぜボールを手で扱ってはならないのか」、山本浩「パブリック・ ス ク ー ル と フ ッ ト ボ ー ル 」 『 現 代 ス ポ ー ツ 評 論 』 3、 2000年 、 pp. 18-46. 中 房 敏 朗 「 イ ギ リ ス 中 世 の フ ッ ト ボ ー ル 再 考 」 『 ス ポ ー ツ 史 研 究 』 3、 1990年 、 pp. 41-46. 阿部生雄「ウィリアム・ウェッブ・エリス神話と『ラグビー・フットボールの起源』 ( 1897) 」 『 筑 波 大 学 体 育 科 学 系 紀 要 』 30、 2007年 、 pp. 13-23. 2
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