平和の砦へようこそ From War to Peace Castle この「オーストリア平和紛争解決センター (Austrian Study Centre for Peace and Conflict Resolution)」はオーストリア最東部の州、ブルゲ ンラント(Burgenland)の小さな町の中に位置します 。首都ウイーンから車で1時間半ほどの距離にあ る小さな落ち着いたどこか暖かい雰囲気のただよ うその町に、このセンターの本館であるシュライ ニング城(Castle Schlaining)はたたずんでいます。 古くは1271年からその存在を記録されているシュ ライニング城ですが、この城は長きにわたり様々 な人々の間での争いや戦乱の舞台としてあり続け ていました。またこの古城はオーストリアとハン ガリーの国境からわずか8kmというところに位置 するために、両国間の紛争やさらには第二次大戦 後の東西冷戦における緊張の最前線につねに立た されてきました。 何世紀もの時にわたり人々の争いをその渦中から 見つめてきたこのシュライニング城ですが、現在 はオーストリアでもこの種のセンターとしては唯 一のものである「平和紛争解決センター」として 世界的にも重要な役割を担っています。敵を倒す 戦争のための要塞ではなく、人々が手を取り合い 、平和を築いていけるための場として、静かにし かし力強く東西ヨーロッパの中心にこの「平和の 砦(Peace Castle)」はたたずんでいます。 平和紛争解決センターでの人々の取り組みは多岐 にわたります。城の塔から見える山の向こうには 、かつて「鉄のカーテン」と呼ばれた東西陣営の 分断点が存在します。世界が真二つに分かれてし まったような時代のなかに発足したこのセンター は、東と西に分断された人々をつなぐ、対話の場 としてのはたらきを始めました。現在では平和の ための学びと教育・実践の場としての役割もこの センターは担います。 しかし、それだけに留まらず、このセンターは国 連PKOやその他の平和維持・平和構築活動に従事 する人々のための重要な研修施設ともなっていま す。国連やEU、OSCEなどの大規模な国際機関や、 数々のNGOなどにつとめる人々が、このオースト リア平和紛争解決センターでの研修を受けてから 任地へと赴いています。 ヨーロッパ平和ミュージアムを併設 またこのセンターは人々の平和の砦として、子ど もから大人まで様々な人々をひきつけるさらにも う一つの顔を持ちます。それが、ヨーロッパ平和 ミュージアム(European Peace Museum)」 としての顔です。このミュージアムは城内におい てその地下から高くそびえる塔の中にいたるまで 約4000平方メートルのスペースを使ったものです 。平和ミュージアムと聞くと、もちろん大切なも のだとはわかるけれども、どこか重苦しい空気が あって難しいと思う方もいらっしゃるのではない でしょうか。このミュージアムでは、もちろん過 去や現在の様々なできごとや事象からたくさんの 大切なことを学ぶことができます。 しかしミュージアム全体を通して特徴的なのは、 様々なデザインやアイディアをふんだんに取り入 れ、訪れる人々をあっと言わせるような工夫をこ らした(時に斬新な)その展示物や展示方法だと言 えます。それらは今まで何気なく見過ごしていた 歴史の新たな側面の発見や、普段のみなさまの身 近なところにさりげなく存在している「暴力の文 化・平和の文化」への発見にもつながるかもしれ ません。 広島より託された折り鶴 このオーストリア平和紛争センターには、日本と の強い繋がりを持つものも存在します。センター の本館であるシュライニング城のすぐ向かいには 、シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)があります。ユダ ヤ人排斥の流れから多くのシナゴーグが破壊され たこの地域の中でも奇跡的に破壊されることなく 残されたこの一軒は、現在は多くの平和学関連の 本を所蔵する図書館として残されています。その 図書館の中に入るとすぐにある本棚のひとつに、 ある小さな「折り鶴」がひとつ大切に保管されて います。 その折り鶴は、広島から届けられたものです。み なさまは1945年8月広島で原子爆弾の被害を受け 、後年その命を落とすこととなった、佐々木禎子 さんという方をご存知でしょうか。広島平和記念 公園にある原爆の子の像のモデルとなり、アメリ カのシアトルにある平和公園にもその銅像のつく られた禎子さんですが、その「千羽鶴」のお話か らみなさまにも知られているのではないかと思い ます。1945年8月6日の広島で原子爆弾によって被 爆しその影響から後年に白血病を発症した禎子さ んは、病棟で病気の治ることを信じて鶴を折り続 けますが、その願いはかなわず短すぎる一生を終 えました。 その禎子さんの手で折られた実際の鶴のうちの貴 重な一羽が、禎子さんの親族の方によってこのオ ーストリア平和紛争解決センターにその思いとと もに託されました。図書館に入ってすぐに目に入 る本棚のひとつに大切に収められたその非常に小 さな折り鶴は、決して派手に飾られているわけで はありませんが、むしろ飾らないありのままのそ の姿によって人々に禎子さんの思いを伝え続けて います。日本のみなさまもぜひ一度、このオース トリア平和紛争解決センターへと足をお運びにな られてはいかがでしょうか。 開館情報 開館時期:毎年イースターから10月末までの間 開館時間:午前9時から午後5時 ※定休日:毎週月曜日 Peace Castle Austria · Burg Schlaining Rochusplatz 1 A-7461 Stadtschlaining AUSTRIA Phone +43 3355 2662 Fax +43 3355 2498 Internet www.peacecastle.eu E-mail [email protected]
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