臨床心理士による 組織的・継続的なメンタルケアの実際

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No. 11
臨床心理士による
組織的・継続的なメンタルケアの実際
看護職員のヘルスケアとサポートについて
勤医協中央病院看護支援室 吉岡愛未臨床心理士
臨床心理士とは
「臨床心理士」は、文部科学省の認可する財団法人日本臨床心理士資
格認定協会(昭和 63 年設立)が実施する試験に合格し、認定を受け
ることで取得できる心理専門職。臨床心理学にもとづく知識や技術を
用いて、人間の “ こころ ” の問題にアプローチします。2013 年 4 月 1
日現在で 26,329 名の 「臨床心理士」 が認定され、教育や医療の現場
で活躍しています。
迷いや不安を解決するメンタルケアを
「患者さんの支えになりたい」「感謝される仕事をしたい」と夢や希望
看護支援室
吉岡愛未臨床心理士
を持って看護師になっても、10 人に 1 人が退職している……というデー
タ(2011 年度常勤看護職員離職率 10.9%【日本看護協会調べ】)があ
【プロフィール】
ります。その理由は「自分には向いていない」「仕事がきつい」「これ以
高校時代に友人の不登校を
上は頑張れない」など精神的に追い詰められた結果の選択ともいわれて
体験したことから臨床心理
います。
士 を 志 す。 北 海 道 医 療 大
どんな仕事でも「ストレス」は避けられないものですが、業務内容が
学大学院心理科学研究科
人の命に直接関わることから神経を使う場面が多く、厳しい現実と理想
を 2004 年 に 修 了。 勤 医
のギャップから自信や意欲を失う看護師は少なくないようです。
仕事での心理的なストレスが過度に続くと睡眠不足や食欲不振へとつ
ながり、看護師自身の健康にも深刻な影響が出るだけでなく、業務に支
障が出たり、医療ミスにつながったりする懸念もあることから、当院で
も「職員のメンタルケア」を重要視しています。
特に 1 年目と 2 年目の看護職員へのメンタルケアは手厚く行い、臨床
協丘珠病院を経て、勤医協
メンタルクリニック東に勤
務し、勤医協中央病院看護
職員のメンタルケアに関わ
る。2012年2月から現職。
精神科外来での心理検査、
がんサロン相談員、勤医協
心理士が心理検査や個人面接、個人面談などで定期的に関わります。さ
中央病院職員のメンタルヘ
らに、ストレスチェックを 3 カ月おきに行うことで「ストレスへの自覚」
ルスのサポートを担当。
を促し、心の悩みを相談できる体制があることを周知します。
3 年目以降の看護職員や他職種の職員には、本人や管理職からの要望
を受け、臨床心理士との面談を行っています。
-1-
回復まで組織的にサポート
毎年 40 人前後の看護師が入職しますが、
「受け止め方」「感じ方」
は一人ひとり違います。同じ体験でも「つらい」と感じる人もいれば、
「平気」と流せる人もいます。他人と比べずに、つらいときは SOS を
発し、サポート面談で問題解決の方法を探りましょう。
全てのメンタルケアは、業務内に受けることができます。症状が重
い時には精神科へつなぎ、有給の病休をとってもらうなど、回復まで
しっかりとサポートします。
こんな場合に相談できます
新人看護師さん
師長
私は看護師に向いていないのかもしれない……
もう社会人なのだから、できない、
分からないなんて言えない
自分で解決できるように
もっと努力しなくては
様子がいつもと違うみたい…
最近元気がないみたい
「食欲がない」と
昼食をとらなかったみたい
みんなも頑張っているのだから、
私も頑張らないといけない
夜眠れていないみたい
みんな忙しいのに、
私だけ疲れたなんて言えない
顔色が悪いみたい
管理職の「サポート力」をアップするために
当院で看護職員のメンタルケアに取り組むようになってか
ら、管理職の「メンタルヘルス」への意識が大きく変わりま
した。今では職場で取り組むべき対策であるという意識が定
勤医協中央病院では、
看護支援室以外にも
相談窓口を案内しています
着しています。
そうした中、
管理職から「どんな言葉でフォローすべきか」
「メンタルケアが必要か必要でないかの見極め方を知りたい」
【相談窓口】
●勤医協中央病院 看護支援室
などの問い合わせも寄せられるようになりました。今後は、
●北海道勤医協 職員育成部
正しいメンタルケアの具体的方法について学ぶ機会を提供で
●日本産業カウンセラー協会
きるよう、臨床心理士と精神科医が連携しながら、研修会な
どを企画したいと考えています。
-2-
セルフケア編
ストレスの負荷と解消のバランスをとる工夫を
ストレスは人間が環境に適応していくときのプロセスで、自己調節するために欠かせないものですが、過度
に続くと心身に異常を来すことがあります。
「つらい」
「嫌だな」
「しんどい」
「眠れない」
「食欲がない」と感じたら、それは「信号症状」。一人ひとりの「ス
トレスの器」の形はそれぞれで、大きな器も小さな器もあります。他人と比べず、自分の心身の変化を見逃さ
ないことが大切です。
ストレスを感じたら一旦立ち止まりましょう。「つらいストレス(-)」があったら、「ストレス解消(+)」
を行い、両者のバランスがとれるよう工夫をしましょう。
大切なのはバランス
-
+
つらいストレス
ストレス解消
仕事がつらい 上司と合わない
長時間勤務
家でトラブル
満足感・充実感 頼れる仕事仲間
楽しみ・適度な運動 安心できる家族
個人の特性
身体の抵抗力
人生観
価値観 物事の受け取り方
ストレス対処法いろいろ
看護師の仕事に一生懸命に取り組んでいても、ストレスに負けてしまったら仕事に遣り甲斐を見出すことが
できなくなります。視点を変えてみたり、仕事のスキルを高める努力をしながら、ストレスを上手く解消する
工夫も必要です。ストレスは以下の方法でコントロールできます。
プラスを増やす
遊び仲間を増やす
相談相手を増やす
音楽を聴く、映画を観る
ゆっくり一人で過ごす
お笑い番組を見る
散歩、スポーツ
有酸素運動
ヨガ、ストレッチ
呼吸法
趣味、温泉、自己訓練法
こころへ
からだへ
仕事量を減らす
環境改善(職場 ・ 家庭)
心配事の解消
あまり深刻に考えない
人間関係の円滑化
睡眠不足の解消
規則正しい生活
バランスの良い食事
お酒の量を減らす
マイナスを減らす
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このほかにも
いろいろな方法があります
自分が行いやすいものから
試してみましょう
サポート編
同僚や部下がストレスをためていると感じたら
過度なストレスが続くと、誰もがこころの病気になる危険性があります。同僚や部下の「信号症状」に気が
ついたら、声をかけ、話をじっくりと聞きましょう。説得したり、説教したりする必要はありません。具体的
なつらさを聞き出すだけでいいのです。
ストレスが解消できるような休暇をすすめたり、看護支援室のサポート面接を申し込めるような「きっかけ」
を作ってあげましょう。
相手の話にじっくりと耳を傾ける
相手の言葉を繰り返す
説得や説教する必要はない
看護支援室のサポート面接をすすめる
あなたはここにしてもいいんです
みんなでサポートします
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