知的財産の『今』を伝える 知財情報局 11月号 発行日 2007年11月 Vol. 25 発行 株式会社ブライナ 知財情報局 http://braina.com 〒338-0013 埼玉県さいたま市中央区鈴谷2丁目794番 TEL 048-851-5324 FAX 048-851-5326 公取委、知的財産の利用に関する指針の改訂版公表 公正取引委員会は9月28日、「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指 針」を公表した。平成11年公表の「特許・ノウハウライセンス契約に関するガイ ドライン」を全面的に見直したもの。 (※) (※)の続き 近年の知的財産の保護及び活用に関する取組が活発な状況を 踏まえて、知的財産の利用に係る制限行為についての独占禁止 法上の考え方を一層明確化するために作成されたもので、従来 の指針との主な変更点は、下記の通り (1) 対象となる知的財産の拡大 従来指針の「特許およびノウハウとして保護される技術」か ら、集積回路の回路配置、プログラム著作物、物品の形状に係 わる意匠、を含む「知的財産のうち技術に関するもの」と拡大 された。 (2) 技術を利用させないようにする行為の追加 技術に権利を有するものが技術を利用させない行為の記述が 加えられた。 (3) 競争減殺効果の分析方法 従来指針では、必要に応じ行為ごとに記述されていた競争減 殺効果の分析方法を、新指針では、競争に及ぼす影響を分析す るに当たっての基本的な考え方が、市場、競争減殺効果の分析 方法の別に横断的に記述された。 (4) 構成要件の横断的記述 上記の分析を踏まえ、競争の実質的制限と判断される場合の 考え方および公正競争阻害性が認められる場合の考え方を明ら かにされた。 なお、新指針は4月に原案が公表され意見募集が行われ、そ の意見も一部とりあげるかたちで最終的にまとめられた。 【詳細】「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」の公 表について http://www.jftc.go.jp/pressrelease/07.september/ 07092803.pdf 文化庁、著作権の法制問題、 録音録画補償金問題で意見募集を開始 文化庁は10月16日、文化審議会著作権分科会のなかで、 著作権法の非親告罪化の問題などを検討してきた「法制問題小 委員会」、私的録音録画補償金制度の必要性やあり方などを検 討してきた「私的録音録画小委員会」の、それぞれの議論をま とめた「中間まとめ」「中間整理」を公表、パブリックコメン トの受付を開始した。 法制問題小委員会の「中間まとめ」では、海賊版の拡大防止 に関して、ネットオークション出品などの「海賊版と知った上 での譲渡のための告知行為」は新たに違法とすべきとしている が、「著作権法の親告罪の範囲の見直し」については、一律に 非親告罪とすることは不適当、「一部の犯罪類型を新たに非親 告罪化すること」についても慎重な検討が必要としている。 一方、障害者福祉の視点から、「公共図書館の録音図書の作 成や映像への字幕や手話追加」は許諾無く可能とすること、 「美 術品商品紹介のためのネットオークション出品時の画像掲載」 も、権利者の利益を不当に損なわないとの配慮の上で許諾無く 可能とすること、なども方針として述べられている。 私的録音録画小委員会の「中間整理」では、委員間で意見対 立があることを認める意見併記が多く、例えば、いわゆる「私 的使用」を認めた著作権法30条の適用範囲について、「海賊版 や違法サイトからの私的録音録画は30条の適用除外として違法 とみなす」が大勢としつつも、 「送信側の違法性追求で十分で、 利用者保護の観点から反対」の意見も併記されている。 私的録音録画補償の必要性についても、権利者が私的録音録 画で被る経済的不利益、補償金の課金対象、著作権保護技術と 権利者が被る経済的不利益、などで意見が併記されるかたちと なっており、補償金対象機器・記録媒体についても、(仮に補 償の必要がある場合)と括弧書きした上で、「著作物の録音録 画の可能性のある機器は原則として対象」「私的録音録画の可 能性の高い機器に限定」の2つに意見が分かれ、「携帯オーデ ィオプレヤーやHDD 内蔵型録画機器は対象に追加すべき」が大 勢であるが、PC、携帯電話等の汎用機器については意見が一致 しなかったとしている。 パブリックコメントは電子メールか郵送、FAXで提出でき、 締め切りは11月15日。パブリックコメントの結果も受け、 小委員会は来年1月に報告書をまとめる予定となっている 【参考】法制問題小委員会中間まとめに関する意見募集 http://search.e-gov.go.jp/servlet/ Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=185000283&OBJCD=100185&GROUP= 【参考】私的録音録画小委員会中間整理に関する意見募集 http://search.e-gov.go.jp/servlet/ Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=185000284&OBJCD=100185&GROUP= JEITA、私的録音録画問題で さらに議論を求める見解表明 電子機器・部品の業界団体 JEITA(電子情報技術産業会)は 10月16日、公表されパブリックコメント募集中の、文化審 議会著作権分科会 私的録音録画委員会の「中間整理」に関し て、「補償の必要性の議論が尽くされていない」として、補償 金制度について抜本的な見直しを求める見解を表明した。 JEITA は、小委員会では制度の前提条件となる「どのような 行為に対して補償が必要か」について、議論が尽くされていな いとして、例えば、「コピー制限付きコンテンツ」、購入した CDをポータブルプレーヤーなどに取り込んで聞くなどの「プレ イスシフト」、デジタル放送を録画して放送時間に制約されず に視聴する「タイムシフト」、などの場合には補償金は不要な 筈としている。 また、小委員会で補償の必要性の議論が尽くされていないに も関わらず、「仮に補償の必要性があった場合」としての「制 度の維持」や「対象機器の拡大」を前提とした議論は問題と指 摘。そもそも、現行制度がユーザーに理解・支持されていると 言えず、ユーザーの意識や使用実態を反映せずに結論を急ぐこ とに反対するとしている。 さらに、「技術的にコピー制限されているデジタルコンテン ツの複製は、著作権者に重大な経済的な損失を与えるとは言え ず、補償の対象とする必要はない」とし、特にデジタル放送で は限られた範囲・回数しか録画ができないため、デジタル録画 機器を補償金制度の対象とすることに合理性はないと考えると している。 JEITA では、パブリックコメント募集に対し、小委員会での これまでの主張も含め改めて意見書を提出する予定で、「著作 権の重要性や権利の保護については十分に理解している」とし 知財情報局 ながらも、JEITA の主張をユーザーやクリエイターを含めた多くの 人に理解してもらえるよう努力し、また、ユーザーが広くこの問題 に興味を持ち、率直な意見を表明することを期待するとしている。 青空文庫、6500作品収録のDVD-ROMを 8000の図書館に寄贈 【参考】私的録音録画問題に関する当協会の見解 http://www.jeita.or.jp/japanese/hot/2007/1016/071016.pdf 主に著作権が切れた文学作品を電子データ化してインターネット 上に公開している電子図書館「青空文庫」は10月26日、開設1 0周年を記念して、青空文庫の一式をおさめたDVD-ROM付き冊子「青 空文庫 全」を、約8000の図書館に寄贈すると発表した。インターネ ットに接続できない人にも青空文庫の利用の機会を提供したいと言 う。 この計画は日本図書館協会との協賛事業として進められ、10月 27日からの読書週間に合わせ、公共図書館、大学、短大、高専付 属図書館計約3000には10月末に、高校図書館5000には11月20 日ごろに、一冊ずつ届けられる。寄贈に要する費用約300万円は、 青空文庫の広告収入から支出されるとしている。 寄贈冊子の正式名称は「青空文庫 全 もう一つの読む自由」で、 青空文庫収録作品のうち著作権の切れた作家と翻訳家407名の約6500 点がおさめられ、冊子には、DVD-ROMの使い方、寄贈計画の狙い、青 空文庫の成り立ち、著作権保護期間の延長に反対する青空文庫の考 え方などが説明されている。 発表によると、青空文庫サイト利用者は約1万4000人にのぼり、紙 の本を持てない人や視覚障害者にも利用され、そのデータにもとづ く商品も、ニンテンドーDSで読む文学全集や、1冊100円全30巻の文 学全集、お風呂で読む本、大きな活字の本まで広がっているという。 青空文庫では、文化的な遺産を収集、保存し、広く公開する仕組 みへのインターネットの貢献も明らかになってきた今、一部から求 めのある、著作権保護期間の延長をおこなえば、こうしたデジタル ・アーカイブで自由に公開できる作品はより古いものに限られ、イ ンターネット社会の可能性の一つがしぼんでしまうとして、「青空 文庫 全」では、そのことも訴えていくとしている。 ネットユーザー団体MIAU設立 まずダウンロード違法化反対へ IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏や法政大学准教授の白田秀 彰氏、AV機器評論家・コラムニストの小寺信良氏ら11人は10月1 8日、一般インターネット利用者の意見を表明する任意団体「MIAU (Movements for Internet Active Users:インターネット先進ユー ザーの会)」を設立し、公式サイトを開設した。 発表された設立の経緯では、「ネットワークの自由には価値があ るが、その自由は古い制度で縛られており、その自由を主張し擁護 する団体がない。だから作ることにした」としており、活動として は、(1) デジタル技術と法制度に関する正確な知識の供給、(2) 技 術発展や利用者の利便性に関わる法制度への対応、(3) 関連する政 府報告書のパブリックコメントに対する意見提出活動、(4) インタ ーネット利用者の情報リテラシー向上の支援、を掲げている。 具体的な活動内容としては、(1) 違法サイトからのコンテンツダ ウンロード違法化への反対意見表明、(2) コピーワンスおよびダビ ング10技術の採用に対する反対意見表明、(3) 著作権の保護期間 延長に対する反対意見表明、(4) 上記に関するインターネットユー ザーの意見表明の支援、が掲げられているが、特に(1)に関係する、 文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会の「中間整理」に 対するパブリックコメントの募集が11月15日締切で開始された ことが、MIAU設立を急いだ理由としている。 【参考】MIAU公式サイト http://miau.jp/ その他 マイクロソフト、EU独禁法違反の裁定受諾、 長期の係争終結 (1) 欧州委員会、EU独禁法違反容疑で 米クアルコムに対する調査開始決定 ∼W-CDMAに不可欠な技術のライセンス供与条件を集中調査∼ http://news.braina.com/2007/1002/judge_20071002_001____.html EUの執行機関である欧州委員会(EC)は10月22日、マイクロ ソフトが、EUの競争法(独占禁止法)違反についての2004年の裁定 の完全順守を受諾した、と発表した。2004年の裁定から3年半以上 に及んだ両者の係争がようやく決着した。 発表によると、マイクロソフトは以下の3点の大きな方針変更に 同意し、先の裁定を順守することに合意したという。 (1) オープンソースソフトウェア開発者に互換性情報へのアクセス と利用を許可 (2) 特許を含まない互換性情報のロイヤリティを1回限りの1万ユ ーロに減額 (3) 特許を含む国際ライセンスのロイヤリティを現行5.95%から0.4 %に大幅減額 ECは、2004年の裁定でマイクロソフトに、4億9700万ユーロ(約6 億ドル)の罰金の支払いと、Windows XPのメディア・プレーヤー非 搭載版のリリースを要求。さらに、マイクロソフトのサーバOSの 通信プロトコルの詳細を公開するよう、同社に改善命令を出してい た。 マイクロソフトは、 この裁定を不服として欧州第一審裁判所(CFI) に控訴したが、今年9月に敗訴。欧州司法裁判所には控訴せずにEC と交渉を続けていた。 (2) インテル、トランスメタとの特許侵害訴訟で和解 ライセンス契約して合計2億5000万ドル支払い http://news.braina.com/2007/1025/judge_20071025_002____.html (3) 3Mと三洋電機、リチウムイオン電池特許訴訟で和解 http://news.braina.com/2007/1026/judge_20071026_001____.html (4) 特許庁、知的財産権制度説明会(実務者向)テキスト公表 【参考】平成19年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/h19_jitsumusya_txt.htm (5) 特許庁、地域団体商標、 小売等役務商標の制度説明会テキスト公表 【参考】平成19年度地域団体商標制度及び 小売等役務商標制度説明会テキスト http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/h19_tiikidantai.htm (6) 特許庁、特許、意匠などの面接ガイドラインを改定・策定 【参考】面接ガイドラインの改訂・策定について http://www.jpo.go.jp/torikumi/hiroba/mensetu_guide_kaitei.htm 知財情報局 ーWEBサイト版 のご案内ー 紙面版で紹介しきれないニュース記事は、WEB版「知財情報局」でご覧に 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