Ⅳ. X 線造影剤の用法 X 線造影剤が適用される分野は広く、管腔臓器 じて生体から排泄される。その結果、実質臓器の の単純な充盈像を見る目的から、造影による機能 構造や排泄経路が X 線フィルム上でも見えるよう 診断までが含まれる。後者の場合、腎臓や肝臓な になる(図 20) 。 �� どの代謝による最終生成物や外因性物質の排泄を 4-1. 管腔造影 利用して、臓器の機能や臓器そのもの、あるいは 排泄経路を描出する。外因性物質である造影剤は、 腎臓からの尿(尿路造影)や肝臓からの胆汁(胆 管腔臓器、または穿刺などで医学的に作られた 道造影)のように、その化学構造および性質に応 管腔を直接に充盈する主な目的は、形態学的構造 図 20. 造影の原理 消化管 逆行性尿路 静脈性胆道造影 静脈性尿路造影 肝臓 腎臓 肝臓 腎臓 管腔充盈 臓器機能 造影CT 血管造影 18 Ⅳ. X線造影剤の用法 を認識することである。これによって表層の変化 造影剤注入後に臓器のコントラスト変化のパター なのか、壁内の変化なのかを鑑別できる。さらに、 ンを追跡することができる(ダイナミック CT)。 中腔器官の緊張力の変化または蠕動の変化(消化 造影剤の到達と流出という造影剤の分布パターン 管、逆行性に充盈した尿管、その他)といった機 から、機能的情報を引き出せる。 能的情報についての評価も可能である。 らせん CT やマルチスライス CT は、非イオン性 管腔造影では、画像のコントラストは使用する 造影剤の急速投与による血管や実質臓器の三次元 造影剤の濃度に大きく影響される。 映像化や、静脈性胆道造影剤の投与による胆管の 造影を可能にする。 4-2. 臓器機能 4-4. 血管造影 尿路造影や胆道造影でのコントラストは、本質 的に検査対象臓器の機能に依存している。したが 血管造影では、血管内に造影剤を直接注入する って、機能と形態との両方についての評価が可能 ことによって選択的造影を行うことができる。こ である。 れによって、造影された血管の形態と濃染パター このように、腎・尿路または肝・胆道の放射線 ンだけでなく、臓器の灌流状態についても診断が 学的検査には形態学的情報だけでなく、それぞれ 可能となる。血管造影は細部まで明瞭な多くの情 の臓器の機能的変化の指標も含まれるため、臨床 報を提供し、形態と機能の評価を可能にしてい 医にとって重要な付加価値をもった診断情報を提 る。 供することができる。一例として、尿路造影剤の DSA(digital subtraction angiography)は、骨 排泄の遅延は、急性または慢性の糸球体濾過障害 などの画像上で邪魔になる背景を除いて、関心領 の明確な指標と解釈される。 域の血管をごく低濃度の造影剤で描出することを 可能にする。この方法は、目的とする血管中に造 4-3. 造影 CT 影剤を充填した状態で得られた一連の映像から、 造影剤注入の直前に得られた映像を差し引くもの である。 造影剤使用のもう一つの領域として CT の重要 性が高まっている。当初、CT はコントラスト分 DSA では、造影前の画像と造影剤投与後の画像 解能が高いので、造影剤の使用は不要であると考 のほんのわずかな差を電気的に増幅して高いコン えられた。しかし、CT における造影剤の使用が トラストの血管像を得る。さらに、電気的データ 日常的なものになるのに時間はかからなかった。 処理は速いので、結果として得られるサブトラク 臓器ごとに造影剤の通過や集積が異なることを指 ション像はすぐに見ることができる。この技術を 標として、正常組織と病的組織の鑑別など、形態 使用することで、造影剤の静脈内投与でも動脈系 学的構造の鑑別に用いる。この増強効果の差異は が描出できる。 静脈内投与での DSA や、高速 CT で高用量の造 病理学的過程や、場合によってはその病因を描出 したり、示唆したりすることもある。 影剤の使用や高速注入を行う際には、とりわけ造 この他に、CT による時間 — 濃度関係の評価では、 影剤の安全性が要求される。 19
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