ソーラーネット通信 12 号

手 か ら手 へ
ソーラーネット通信
ソーラーネット 事務局
埼玉県比企郡小川町大字角山 208-2
Tel 0493-71-1102
Fax 0493-71-1104
自然の
エ ネル ギ ー
爺芝の報告(2010.4 月)
ソーラーネット事務局
ソーラーネットでは、2007 年 9
月より、手づくり太陽電池の出前
講座(爺芝ブロジェクト)を各地で
開催しています。2010 年 3 月ま
でに、参加者数はわかるだけで
726 名、製作した太陽電池は 88
枚になります。北は青森の六ヶ
所村、南は山口県光市や高知
県須崎市まで、46 ヶ所になりま
す。出来上がった太陽電池の大
半は、主催団体が自分たちの活
動に利用しています。一部は、ソ
ーラーネットで設けている「揺り
かご」に寄付されて、海外に届け
られています。
呼んでくれるところは、大きく分
けて、三タイプあります。
一つは、地元に根を下ろした
マチ作りの団体。自然エネルギ
ーが、やがて来る次の社会 地
産地消をベースとした地方分散
の時代の、地元の暮らしの柱に
なると、感じているのでしょう。
二つ目は、学校。子供達の教
育として、行われます。工業高校
では先生方も興味津々です。
12 号
夜間高校でもやりました。学童保
育所でも作りました。小学生は、
5 年以上になると、かなり持久力
がでてきます。なかには、3 年生
で、大人顔負けに作る子供もい
ましたが 子供達は、覚えが早
い。
に、ソーラーネット事務局にご相
談下さい。
2009 年度には、パルシステム
東京、サイサン環境保全基金か
らの助成金、エコポイントなどか
らの寄付も充当させて頂きました。
有り難うございました。
未 来 の 扉
手づくり太陽電池を切り口として、
様々な方々が、未来の扉を開こうと
しています。その一端をご紹介しま
しょう。
ニカラグアの会
第三は、途上国で活動する国際
NGO です。彼らの製作した太陽
電池は、ほとんどは、活動する現
地に届けられています。太陽電
池には名前が入りますが、漢字
で書くか、英語標記にするか、
みんな悩みます。「魚を与えるよ
りは、魚の取り方を教えなさい」と
言う中国の格言を地で行く活動
に繋がって行くケースもありま
す。
どこへ行っても、皆さんが喜ん
でくれます。その明るい笑顔に
会いたいので、今後も、資金が
続く限り、続けて行きたいと思っ
ています。
ところで、この活動は、ある篤
志家の方の基金をベースにして、
金銭的にはかなりの「持ち出し」
で続けられています。今後主催
を検討される方々には、「持ち出
し」をすこしでも解消すべく、可
能な限りのご協力(助成金が取
れるならば、経費をその範囲で
ご負担いただくなど)をお願いす
ることもありますが、まず、お気軽
1
伊藤 幸慶
ニカラグアの会は、名古屋に拠
点を置き、同国の教育支援を行
っている NGO です。今年度中に、
手づくり太陽電池の技術と資材
を、現地に移転しようと、張り切っ
ています。
* * *-------------* * *
ニカラグアでは、ただいま、日
本から持ち込んだ 6 枚のソーラ
ーパネルが活動しています。そ
のうち 3 枚は、首都・マナグアに
あるフロール・デ・ピノ小中学校、
残りの 3 枚は、エステリという町に
ある夜間女性成人学校に設置さ
れています。停電の多いニカラ
グアでは、ソーラーパネルは重
宝されています。皆様のご協力
に感謝しています。
昨月(2010 年 2 月)、ニカラグア
を訪ねた際、太陽光発電につい
て、調査をしてきました。思った
よりソーラーパネルは普及してい
たのですが、ただ、それは一部
の業者の儲けになっているに過
ぎず、現地の人はただ消費する
のみであって、太陽光発電を技
術的に扱うことのできる専門家が
国内で育っていないそうです。
そういった意味においても、手作
りソーラーパネルの技術移転は、
早急に行うのがいいかな?と考
えているところです。今後も、皆
様のお力をお借りし、ニカラグア
で技術の花咲くことを夢見ていま
す。
ニカラグアの会:
http://www.aichinet.ne.jp/~nicaragu/
パレスチナ・オリーブ
皆川 万葉
パレスチナ・オリーブは、仙台に
拠点を置き、バレスチナからのフ
ェアートレードなどを行っています。
(http://www.paleoli.org/)
2010年1月、手づくり太陽電池1
枚、現地への婿入りをしてもらい
ました。無事設置され、活躍をは
じめているとの嬉しい報告が届き
ました。検問を通過する時は、き
っと、メンバーの方々、相当緊張
したでしょうね。有り難うございま
した。太陽電池を作って、寄贈し
てくれたのはパルシステム東京
の環境委員の方々です。
* * *-------------* * *
パレスチナのヨルダン渓谷地帯
では、水道や電気を通すこともイ
スラエルに禁じられています。こ
のため、水を買って水タンクに入
れて利用したり、燃料を買ってジ
ェネレーターで発電したりします
が、高いお金がかかります(イス
ラエル人入植者用の電線も水道
管も近くを通っているのです
が)。
イスラエル軍の軍事演習なども
行なわれ見晴らしもよく、イスラ
エルが軍事戦略的に欲しがって
いるため、破壊の危険性が高い
地域に住むベドウィンコミュニテ
ィがあります(実際に何度も破壊
されています。そして、家屋修復
は「違法」になります)。とても美
しい丘陵地帯で、鶏や羊、山羊
など多くの家畜が飼われていま
す。しかし、この厳しい条件によ
って人々はこの場所を離れ、
1967 年の占領前には約 350 人
住んでいたのが現在は約 40 人
となってしまいました。人々は、
そこがイスラエルに没収されたら
他の地域も奪われてしまう、と感
じています。そこに住み続けるこ
とが彼らにとって抵抗であると考
えられているのです。
そこで、少しでも暮らしやすくな
るように、手作りソーラーパネル
を持っていきました。埼玉県小川
町にある「ソーラーネット」さんか
らの提供です。ソーラーネットの
ノウハウで市民グループがソーラ
ーパネルを手作りし、ソーラーネ
ットに預ける。それを国内外の必
要な地域に提供するというプロ
ジェクトです。1枚のパネルの発
電量は多くはありませんが、まず
始めてみようと、今回は1枚持っ
ていきました。天気もよかったた
め、つないだとたんに電気がつ
きました。
今後どのようにプロジェクトを発
展させていくか、まだ乗り越える
べき課題も多いのですが、無事
に発電してほっとしました。
2
ヨルダン渓谷ソリダリティーのメン
バーが太陽光パネルを屋根に置い
て、どうしようか考えているところ。丘
の上にある家、という様子が分かる
でしょうか?
住民がパネルを固定するために、
泥レンガを並べているところ。雨水
が通る場所をつくるなど、この後、も
う少し並べ替えました。家も泥レンガ
でできているので、簡単にくっつき
ます。屋根とパネルの間に空間を作
って熱を逃がした方がよいことを後
から伝えました。
とりあえず、線をつないで、電気が
ついたところ。蛍光灯は縦に壁にと
りつける予定(既に取り付けたはず)。
コントローラーを板に固定していま
す。
インドの貧しい家の全てに
40wソーラーパネルを!
田島 俊雄
「ケルガル日本の会」は、上尾市
に拠点を置き,インドで、「スラム
の子ども達の自立」を支援してい
ます。世話人の田島さんから,ご
寄稿して頂きました。
* * *-------------* * *
日本とインドとの間で、マハラ
シュトラ州プネ市(インド西部の州
都ムンバイから東約250km)の中
にある2つのスラムから「毎年1回、
子ども達を教えている先生と生
徒(青年)を1名ずつ日本へ数週
間呼ぶプロジェクト」が進められ
ています。昨年(2009年)春には、
Khelghar(マラティ語で「遊びの
家」の意味)を共同運営する2名
の先生を3週間招きました。2007
年からインドへ贈り続けている教
材「日本の写真集」や上尾高校
の生徒達がつくった「日本の高
校生の生活」をみて、「日本に行
ってみたい」とスラムの子ども達
が夢をいだきました。
子供達の作品
人口の30%が字を書くことが
できないというインドで、勉強す
る面白さを知った子ども達の笑
顔に私達は魅せられました。子
ども達の持ったその夢を、ただの
夢に終わらせないで、「努力す
れば夢は実現する」という希望を
子ども達が持てる一助にと考え
ました。「 100名以上いるスラム
の子ども達に年1回」では本当に
微々たるものですが、「1%でも
その実現に向けて努力する過程
に価値を見出したい。」と願いを
こめて、「ケルガル日本の会」は
作られました。
インドで 自 分 た ち の 手 で ソー
ラー パ ネ ル を作 り、将 来 は 、
小 型 の 井 戸 の ポンプ とつ な ぐ
ことも!
今年(2010年)、そのプロジェ
クトも2年目を迎え、4月9日から
27日まで、Khelgharの若い先生
とKhelgharで育った青年、通訳
の女性の3名を日本に招きまし
た。埼玉県内を中心に各地を訪
ね、埼玉県立上尾高校や岩槻
高校、大東文化大学、埼玉大学
でも交流しました。その中でも、
私達が特に力を入れたのは、4
月17、18日と2日間にわたった
手作りソーラーパネルの取り組
みです。小川町から桜井さんに
上尾市まで来てもらい、第1日目
は、上尾高校の社会科教室で2
枚のパネルをつくりました。一つ
はインドへのお土産として、もう
一つは身近な場所に実際に設
置して実用化を試みるためで、
第2日目は、そのパネルを田島
宅に設置しました。
今回、インドと日本の若い人達
が一緒になってソーラーパネル
を作ったねらいの第一は、インド
と日本の両方に、手作りソーラー
パネルを作れる経験者を育てる
ことです。インドへ土産として持
って帰ったパネルは、スラムの中
の学校の屋根に設置して照明に
使う予定です。毎日、停電が当
たり前のインドで、子ども達がそ
の照明をみて、「自分たちも作っ
てみたい」と思うようになれば、毎
年、数名づつがパネルを作って
行く中で、将来、インドで自分た
ちの手で手作りソーラーパネル
を採算がとれる形で作れるように
なるのも夢ではないと思います。
私達にはまだ、構想段階です
が、もう一つの夢があります。そ
れは、農村で、ソーラーパネルを
井戸の小型のポンプにつなぎ、
農業用水に使うことが出来ない
かということです。インドへ旅をし
た人なら都市の至るところで目に
するスラムの作られる原因は、農
村が貧しいからです。強い太陽
の日差しのあるインドでは水さえ
3
あれば、三毛作も可能です。私
達の夢が実現すれば、日本が国
際公約しているCO2の削減にも
大きく貢献します。40wの電灯
があって、これに教育施設が整
えば、そんなに豊かでなくても農
村で生活しつづけることができ、
スラムを減らしていく展望もでて
きます。私たちには、まだ、技術
的な知識や力がありません。協
力していただける会社や個人の
方がおられたら私達に力を貸し
てください。
後ろの灯りは太陽の光
「ケルガル日本の会」
埼玉県上尾市壱丁目 184-10
田島 俊雄
自分たちで作って、
自分たちで設置する。
ケルガルの会の主催する太陽
電池の講習会の模様を報告しま
す。「爺芝」講座としては 47 回目
となります。
* *-------------* * *
17 日 10 時から,上尾高校の教
室を借りて,手づくりの太陽電池
の製作です。参加者は 13 名。2
枚作るので,講師は 2 人で、2 班
に分かれます。今回の参加者の
特色は,若いということと、多国
籍と言うことです。インド人が 5 名,
韓国人が一名。2 日目にはガー
ナ人も加わりました。そして日本
の若者達。
午前中は,作り方の説明と,34
枚の 1/2 セルへのリボンつけで
す。これで午前中は終わります。
お昼からは,そのセルどうしを接
続します。8 枚つなぎの物と,9
枚つなぎの物が 2 列ずつ出来上
がります。そこで,その出力のチ
ェックを行います。朝から曇り気
味だった空が,この時ばかりは,
晴れ上がり,テスターに出力が
確認されるたびに歓声が上がり
ます。ここまでは実に順調でした。
出力が確認され大喜びで部屋
に戻って来た時、あの大惨事が
おこりました!!!一人の人の手から,
9 枚つなぎになった一列が
ぽろり。セルは,本当に割れ易
い物です。この一班は,もう 9 枚,
リボンつけの練習を行うことが出
来ました。
焼き上がりの笑顔
大切だと言うことも。コントローラ
ーの働き、バッテリーや結線上
の注意点も,見ながら,やりなが
らですから具体的に解ってもら
えます。併せて,直流 12V の比
較的揚水量の多いポンプを動か
してみました。庭に太い水柱が
噴水のように吹き出ると,また歓
声です。若い人たちは,本当に
賑やかで,歓声を上げてくれま
す。負荷としては,玄関と,居間
に 12W の蛍光灯を付けました。
スイッチの付け方も,覚えてもら
整形作業
いました。点灯式,もちろん,ここ
でも大歓声。
この 4 列をさらにつなぎ,整形
時間が取れなくて下見もなしに
します。その後、ラミネーターで
行った工事でしたが、温かな天
ラミネートし,およそ 25 分後,ほ
候にも恵まれて,17 時には,完
かほかに焼き上がった 40W が、
了することが出来ました。
姿を見せると,ここでもまた,大
歓声。興奮は頂点に達しますね。
これで、自分たちで作った太陽
実は,講師としては,この瞬間が 電池が、インドで、電気を産み出
一番ほっとする時です。
せるか .乞う,ご期待
その後のフレームつけなどの
作業をこなす頃には,心無しか,
疲れが見え始めます。外を心地
手作り技術で、感じる・
よい夕方の風が,吹きはじめて
広がる・つながる
いました。
庄司 洋一
18 日は,主催者の田島氏の自
宅に,一システムを設置してみる
山形県立東根工 業高校では,
講習です。ケルガルからの青年
手づくり太陽電池の技術を、積
と教師がインドに戻ったとき,す
極的に取り入れて,成果を上げ
ぐにシステムを設置できるように
ています。電子システム科の庄
なってもらうためです。
司先生から,ご寄稿頂きました。
田島さん宅の金属瓦棒屋根が、
* *-------------* * *
ちょうど良い設置場所と判断し,
1 はじめに
そこに専用の金具でパネルを固
本校は、機械システム科・総合
定しました。しかし,専用金具は
技術科(自動車専攻・デザイン
インドにはありません。どんな場
専攻)・電子システム科の工業科
所でもある程度対応できる方法
と生活クリエイト関係の家庭科を
を伝えました。もちろん,防水が
設置した専門高校である。
本校では、工業科と家庭科の
4
枠を超えた自由な発想とお互い
が持つ技術を融合させ、社会に
役立つものづくりをすると共に、
生徒が授業で学習していること
が、社会で役に立っていることを
実感させることを目的として、平
成 19 年 7 月にものづくり委員会
を設置した。この委員会の柱は
(1)産業財産権推進、(2)手作
り太陽光発電を核とした事業の
実施、(3)生活に役立つものづ
くり活動の実施である。
特に、本校が平成 20 年 1 月か
ら取り組んでいる手作り太陽電
池パネルは、国際協力 NGO ソ
ーラーネットが進める開発途上
国 向 けのエネル ギー 支 援 の 技
術である。その技術を活用し、平
成 20 年 5 月から平成 21 年 2 月
まで約 9 カ月かけて、全校生徒
464 人で 100 枚の手作り太陽電
池パネルを製作した。そして、も
のづくりによる国際貢献を念頭と
した取り組みとして、生徒会が下
記の「光プロジェクト」に取り組ん
だ。更に平成 22 年にサステナタ
ウン・プロジェクトを立ち上げ取り
組んだ。
2 取り組み
(1)東工生徒会「光プロジェクト」
平成 20 年 4 月、本校生徒会
の役員が、山形大学工学部に入
学したモンゴル人留学生と交流
する機会があった。「科学者にな
って環境問題を解決し、祖国モ
ンゴルの発展に役立ちたい。」と
いう彼女の夢に生徒達は大いに
共感し、自分達の学んでいる技
術を使って彼女の夢に協力でき
ないかと考えて取り組んだのが
「光プロジェクト」である。このプロ
ジェクトは、手作りの太陽光電化
システムをモンゴルの設置しよう
とするものである。そこで、平成
20 年に留学生と共にこの太陽光
電化システムを作った。平成 21
年に入り、平成 20 年に作ったシ
ステムを使いやすくするために
改良した。そして平成 21 年 8 月
15 日から 19 日の 4 泊 5 日の日
程で、本校生徒 8 名がモンゴル
に行き、留学生の母校新モンゴ
ル高校で、現地の高校生と留学
生と一緒に設置作業を行った。
(2)サステナタウン・プロジェクト
「誰もが安心でき、自然と共存
しながら生活できる空間づくりを
し、持続可能な町づくり」を目指
して、「東根工業高校サステナタ
ウン・プロジェクト」を立ち上げた。
このプロジェクトは「開発途上国
の学校(高校等)と連携した代替
エネルギーの開発と現地での適
用」を目指したものである。この
取り組みに生徒が参加する目的
は(1)生徒が学習していることが
社会に役立っていることを実感さ
せること、(2)知識だけでなく実
際の体験を通して学ぶこと、(3)
自分の住んでいる地域から世界
を見つめることの 3 つである。
そして、NPO 法人アロアシャ・
プロジェクトと一緒に、平成 22 年
3 月 20 日から 26 日の 6 泊 7 日
の日程で、本校生徒 4 名がバン
グラデシュ・ラッシャヒ市にあるア
ロアシャ学園を訪れ、現地生徒
との交流とともに太陽光発電シス
テムの設置と技術指導を行っ
た。
3 今後
本校では以上の2つのプロジェ
クトに取り組んでいる。今後も高
校生が参加する手作り太陽電池
パネルを軸とした、国際貢献活
動の取り組みを続けていきたい
と考えている。
しかし、イラクの内情を考慮して、
日本から太陽光発電が送られる
と言う情報は、公にしませんでし
た。復興ビジネスに関わる様々
な国の思惑、利害関係が入り乱
れ、邪魔される可能性が高いと
言う判断です。それでも、私の廻
りの方々から、10 万円のカンパ
が瞬時に集まりました。有り難う
ございました。
荷物は、5 月には、現地の受け
入れ団体に届きました。
さて、大変なのは、これから先
でした。送り出してしまった我々
ではなく。
イ ラ クに、
太陽電池の灯がともる
ソ-ラ-ネット事務局
「イラクには石油の埋蔵の偏り
があり、今後、これを巡って内戦
になる可能性があるので、是非と
も早急に太陽電池を」と、高遠菜
穂子さんから相談を受けたのは、
2009 年 2 月のことでした。気安く
引き受けたものの、話は、医療
機関か学校と言う単位です。ふ
っと我に帰ってみると、格安の太
陽電池がそれほど、手元にある
訳ではありません。もちろん、ポ
ンと気前良く寄付できる程の財
力もありません。しかし、幸運の
女神、いるものです。頭を抱えよ
うと、腕を上げ始める間もなく、
長野にあるネクスト・エナジーと
いう中古パネルを扱う事業者か
ら、1kw ほどの太陽電池の寄贈
話が舞い込んで来たのです。な
んと言うタイミングでしょう。パネ
ルが何とかなれば、話は早い。
翌 3 月には、北海道の港から、
30W の中古太陽電池 32 枚、3kw
のインバーター、バッテリーなど
が、送られて行きました。我が国
での窓口はセイブイラクチルドレ
ン札幌です。はじめは大々的に
支援カンパを求めるつもりでした。
5
イラクに贈られたものたち
設置予定だった小学校が、治
安が悪化する中で不安を募ら
せ 、ソーラーパネルの設置は外
国を嫌う勢力の標的になる可能
性があるとして設置を辞退してし
まいました。替わりの設置場所を
探すのに、現地の団体は大変苦
労なさったようです。
設置された太陽電池
2009 年の 12 月、高遠さんがイ
ラクに行き、最終的には、受け入
れ団体のメンバーの住居に、仮
に設置すると言うことになりまし
た。
「手づくり太陽電池
里親基金」を設立
ソーラーネット事務局
常日頃、暖かいご支援、有難う
ございます。おかげさまで、皆様
から手づくりしていただいた太陽
電池が、電気を心待ちにしてい
る世界各地へと、順調に届けら
れています。
ソーラーネットでは、手づくりし
たものを送る活動をさらに一歩
進めて、「現地の人自らが太陽
電池を製作し、それを自分たち
の暮らしや活動の糧として活用
する地産地消の仕組みを作る」
ための支援基金(里親基金)を立
ち上げました。
手づくり太陽電池 40W が途上
国で利用されるとすると、一年で
およそ 40kwh の電気を産み出
します。これは 26kg-co2/年の削
減量に当たります(産業技術総
合研究所)。
平和な社会を作ることにも、大
きな働きをします。エネルギーと
食料は、不足すれば有るところ
に盗りに行きます。それが戦争
です。我が国が石油の利権を求
めて、イラクへ出兵したことは記
憶に新しい出来事ですね。
また、大きな国際問題である
南北格差の是正と言う面からも
重要です。先進国から物が流れ
るのではなく、途上国の人々が
自らの仕事として製作する訳で
すから。手づくり太陽電池は、大
きな資本・施設がなくても、誰で
も手軽に製作できると言う特色を
持っています。我が国ではすで
に身障者の施設が自分たちの
仕事作りとして、導入していると
ころもあります。
手づくり太陽電池に対する我
が国の国際 NGO の関心は、こ
の数年、急激に増えていて、ソ
ーラーネットには、「自分たちの
活動している地域・コミュニティ
ーにこの技術を導入し、自分た
ちの電源として、さらには仕事作
りとして活用したい」と言う相談が、
多く寄せられています。今年中
にプロジェクトをスタートさせよう
としている NGO もいくつかありま
す。設立した学校の運営資金と
したい、貧困層の仕事起こしにし
たい、村の電力供給源にしたい
….
インドネシア技術者への講習
の模様(2009.4)
さて、手づくり太陽電池の現在
における最大の弱点は、価格に
あります。途上国での同程度の
大きさ(40W)の太陽電池の販売
価格は(もちろん国々でのちがい
はあります) 、私どもの協力会社
から供給される原材料による製
造コストと、ほぼ同じになってい
ます。そのままでも、ある程度の
競争力はあると言えます。しかし、
最近では、中国などからの格安
のものも出回りはじめ、かなり厳
しい状況になることが予想されま
す。
安い設備費用・人件費にもか
かわらずこの状態になるのは、
原材料の値段が大手メーカーと
比して、かなり割高になるからで
す。それは、協力会社の買い付
ける部材の量が、大手メーカー
のそれと比較できない程に少な
いことから来ています。
手づくり太陽電池の支援基金
のもつ意義は、ここにあります。
価格を下げるには、自作する
たくさんの工房が共同購入する
ことにより、その取扱量を増やす
ことです。そのために、この数年、
30 50%の資材支援(一枚分に
6
つき、10,000 円程度)を行い、世
界各地、あるいは我が国での仲
間を増やすことが目的となります。
一定の量にまで達すれば、この
基金の目的は達成されることに
なります。
当面は、皆さんからのカンパを
もとに、少しずつでも、支援を行
って行きます。賛同頂ける方は、
是非、下記にカンパをお願いし
ます。
人と人との支援の形、恊働のあ
り方、ものの流通の仕組みを,市
民の手に取り戻す….次の社会
のイメージが、少しずつ見えて来
ませんか…….
「里親基金」カンパ先
郵便振替: 00110-7-37877
名称: 里親キャンペーン
**************************
インドネシア事業報告
ソーラーネット事務局
**************************
2010 年 3 月 3 日より,8 日まで
ソーラーネットメンバーの安部竜
一郎氏に、マカッサル及びタブ
アカン地区を訪問してもらいまし
た。
まず,タブアカン地区は、標高
の低い方(下)から、バリンガン、
ガレトン、バトゥ・カロン、カンプ
ン・ペロ、ボロン・ブロ、そしてガ
レトンの西にタブアカンの 6 つの
集落が並んでいます。バリンガン
までは、車が入り,電気も通って
いました。2 年前,下の 2 集落の
人々がお金を出し合って,各集
落 900W の商用の電気を引きま
した。報告書中に出てくるタヒル
氏はモスリムの指導者で、ガレト
ン地区のリーダー、ポナ氏はキリ
スト教の指導者で,カンプン・ベ
ロのリーダーです。
今回の訪問の目的の一つは,
その後の様子を見てもらうためで
す。
商用電源の積算計
また、前回の訪インドネシアの際
にソレマン氏と、「マカッサルにロ
ーカルテクニシャンを育成するた
めの環境センターの設立」を検
討しました(通信 10 号参照)。しか
しその後,この事業は進展しな
いのままでした。訪問の目的の
第 2 は,環境センターの設立事
業をどうソレマン氏側が考えてい
る の か ,確 認 し て も ら うことで し
た。
文中に登場するアンドレアス氏
は大学講師で再生可能エネル
ギーを扱う事業を経営しているソ
レマン氏の友人です。
2010 年 3 月
調査報告
安部竜一郎
1. 調査結果
(1) パネルの所在・現状
・タヒル氏によると、ガレトンでは
7 基の SHS(ソーラーホームシス
テム)がまだ使われており、多く
は PLN(電力公社)の停電の際
のバックアップ電源として使われ
ている模様。
・その他はタブアカンとボロン・ブ
ロに移設。タブアカンに移設され
たもののうち、さらにボロン・ブロ
に移設。
・移設の際、家族の場合は無料
もしくは小額のお金で、他人の
場合は初期の支払い費用(250
万∼350 万ルピア)程度のお金
で委譲された模様。
・コントローラーはほとんど全て
ではずされている模様。
・バッテリーは買い換えられる家
庭をのぞき、全て劣化。その場
合はパネルと直結。
・バッテリーの価格は、現在1A
当り 10 万ルピア程度。テレビが
観られる 10A だと 100 万ルピアも
する。
・バトゥ・カロンでは、ポナ氏によ
って取り外されたとのこと。
・ ボロン・ブロではコンタクト・パ
ーソン(イスラム教師)に会えず、
情報が取れなかった。
バックアップの太陽電池
(2) 政府の援助
・ボラン・ブロでは、2 年ほど前か
ら政府の貧困対策(Bahan Bakar
Minya=BBM)として 26 基が設
置された模様(コントローラー、
バッテリーのセットで)。まだ電気
がない家庭が 50 戸ほどあり、ま
だ欲しいとのこと。集落では、当
時の副大統領ユスフ・カラに繋
がる議員からの支援(恩恵)とし
て受け止められている(受益者を
恣意的に選択した可能性があ
る)。
(3) 協同組合の現状
・タヒル氏が管理する帳簿による
と 、 ガ レ ト ン の SHS 受 益 者 は
2006 年ごろまで支払いをしてい
た。その後は支払い停止。ソレ
マン氏が訪れなくなったこととバ
ッテリーが使えなくなったことが
理由と思われる。タヒル氏の帳簿
は支払い帳簿で、引き出し額に
ついては記載されていない。残
額も不明。
・カンプン・ベロの帳簿は不明。
ソレマン氏の管理する銀行口座
には 2006 年 2 月 2 日付で 155
万ルピアの残高あり(写しあり)。
口座を見る限り、金額に動きは
なく、ローカル・テクニシャンが現
実に仕事をしていたかどうか疑
問が残る。
7
(4) マカッサルで SHS 販売会社
WIKA を訪問。パネル(12V、
100W)、コントローラー、バッ
テリー、ケーブル、支柱など
をセットで 550 万ルピア。ア
ンドレアス氏の情報では、パ
ネルのみだと市内で 350 万
ルピアで購入できるとのこ
と。
2. ソレマン氏、アンドレアス氏
との話し合い
・ローカル・テクニシャンの育成
については、せめて中学校卒程
度の電気に関する知識がないと
難しいとのこと。
・ソレマン氏より、南スラウェシより
西スラウェシ州で政府がより多く
の SHS が設置されているとの情
報(一覧表あり)。西スラウェシ州
は、山地のうえ面積も広く、電化
がなかなか行き届かないとのこ
と。
・トレーニングセンターは、西スラ
ウェシよりマカッサルのほうがよ
い。航空アクセスがよい(西パプ
アにも直行便アリ)
・ソレマン氏の構想は、ほぼ桜井
構想と同じ。違いは、トレーニン
グ自体は無料で、SHS の組み立
て販売で資金を稼ぐ点。
3. コメント
(1) タブアカンの現状について
・ソレマン氏や川上さんの尽力で、
2006 年まではそれなりに支払い
も行われていた模様。ローカル・
テクニシャンは?マーク。基本的
にタブアカン地区は、マレーシア
への出稼ぎが多く(住民の 50%
程度とのこと)、流動性が高くて、
現金経済が支配。農業は収入の
一部で、日銭稼ぎに走る住民が
多い模様。むしろ収奪型資本主
義の最先端ともいえるかもしれな
い。「払わなくてよいものは払わ
ない。払わなければなれないも
のも、できるだけ払わない」「貰え
るものは貰う(棚から牡丹餅)。で
も、義務はできるだけ果たさな
い」という生活態度がほとんど文
化のようになっているのではない
か。
・そもそもすぐそばまで電力公社
の電線が延びているタブアカン
地区を選定したグニに問題があ
ったと思われる。技術的な評価
はともかく、農村開発の事例とし
てはほぼ完全な失敗。1999 年当
時サラティガに駐在した私自身
を含め、ソーラーネットも反省す
べき。
(2) 新たなプロジェクト形成につ
いて
・問題はローカル・テクニシャン
ではなく、バッテリーにある。テレ
ビは山村において唯一の外への
窓口であり、制限は不可能。バッ
テリー問題を解決できなれけれ
ば、SHS は電力公社の電線が届
くまでの一時しのぎか、せいぜい
電力公社のバックアップとしての
役割しか期待できない。むしろ
半年∼1 年程度の消耗品として
捉えるべき? あるいは、もともと
途上国の貧しい村での設置には
不向きな技術では?
・ソーラーネット側で、農村開発
としての総括、技術的な側面か
らの総括をきちんとやったうえで
ないと、新たなプロジェクトには
取り組むべきではないと考える。
・アンドレアス氏は協力の意思が
あり、ソレマン氏とのコンビネー
ションもよさそう。あとは、中央や
各州政府の協力をどうとりつける
かが難題。JICA の力を借りるの
がベスト。その点で、草の根援助
を再度挑戦するのが現実的か。
・ パネルの作成・販売で資金を
稼ぐとすれば、パネルにはある
程度の完成度が求められる。
安
かろう、悪かろうでは駄目。市販
品と競争できなければ、評判を
落とすだけ。
・その場合、想いだけではなく、
目的をはっきりさせ、具体的なデ
ータに基づいたプロポーザルを
作成する必要がある。データの
収集にはアンドレアス氏が協力
してくれるとのこと。
・ もう一つのポイントは、地域政
府(州、県、郡)の協力。政府が
設置したパネルのメインテナン
スに加え、学校等での環境教
育に入り込む(ソレマン氏の構
想)。
・ いずれにせよ、もし新たなプロ
ジェクトを実施するのであれば、
最低でも 1 年に 2 回各一ヶ月ず
つぐらいはマカッサルに張り付
いてくれる日本人スタッフが不
可欠。中途半端なら、むしろや
らないほうがよい。
・
*************************
エコポイントの寄付対象
団体となっていますので、
よろしくお願いします。
手作り太陽電池の出前講座
「 爺 柴 プ ロ ジ ェ ク ト 」 がグ リ ー ン
家 電 と 住 宅 エ コ ポ イ ン ト の寄付
対象団体として採択されていま
す。また、たんすケータイあつめ
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インドネシア事業を
一時凍結します。
有り難うございました。
ソーラーネット
*************************
安部氏の報告を受けて,2010
年 4 月 9 日、インドネシア事業の
関係者が協議しました。
1. スラウェシで環境センターを作
ることが,現在進行中の他の
事業と比較して,優先順位が
高くはない。
2. ソーラーネットの現状の能力
では、結局中途半端なかかわ
りしか出来なくなる。
http://eco-points.jp/index.html
http://jutaku.eco-points.jp/
*************************
こうした判断のもとに,インドネ
シアでの支援事業を、一時中
止することにしました。
現地に一定期間張り付いて、
事業の進捗を管理できる力量
がソーラーネットに戻ったら、
再度検討することとします。
一緒に活動してくれる方、手づく
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たい若者,及びカンパ 大歓迎!
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名称 : ソーラーネット
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Tel 0493-71-1102 Fax 0493-71-1104 mail:[email protected]
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大豆インクを使用しています
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