新設大学の試み

わたしの「大学のトップマネジメント鴎」
新設大学の試み
岡村南
会ではプロフェッショナルが求められるよ
大学のあるべき姿を常に追求し,
うになるでしょう。他の人ができないこと
世界一流の大学を目指す
ができることがいっそう疋要になると思わ
商知工科大学は1997年に公設民営の大学
として刎立されました。少子化時代のI1II学
れます。短所をなくしていくよりは」と所を
伸ばしていくということです。
でしたので,既存の大学でできることをし
商知工科大学は,「長所を伸ばせ」を教
ていたのでは存在意義がありません。「大
育の中心に据えることにしました。すべて
学のあるべき姿を糊に追求する」ことによ
の学生は,必ず何か災い資蘭を持っていま
って「他の大学ではできない」ことを表現し
す。それを兄つけて伸ばすことが,教育に
ました。なお,「世界一流の大学を目指す」
搬わるものの務めです。そのため,「必修
ことは大学の発展にとっては不可欠です。
科目」は置いていません。卒業研究をふく
めてすべての科目を選択科目としました。
長所を伸ばせ
、i知工科大学では,「米るべき社会に活
どのような社会にあっても,「システム
思考」ができることは菰要です。高知工科
雁できる人材の育成」を基本方針の一つと
大学の学科名にはすべて「システム工学」
しています。来るべき社会が.高度愉報通
がついているのは,このことを表現してい
信社会であることはH1違いありません。グ
ます。また,「自己学習能ノルや「1mかな
ローバリゼーションが進み,地球環境問題
人間性」の涌養もいかなる社会においても
がいっそう深刻化します。わが国では,少
必要です。また当面,IHI際語としての英語
子商齢化社会の進展や社会の成熟化,地方
と燗報処理技術は航要です。
分権化が進みます。
これらのことすべてを標語としてはM1学
そのような社会で活踊できる人材はどの
時からやってきました。カリキュラムとシ
ような人材か,そのためにはどのような教
ラパスとにより〃l確に我現し.それを公IHI
育をすべきか,を常に考え,桃l成しつづけ
することによって徹底することにしました。
なければなりません。
スペシャリストよりもジェネラリストが
もてはやされてきましたが,二れからの社
7り
プロジェクト研究の推進
「11上界の未来に貢献する研究成果の懲り出」
jDE2003年1-2月暇
ってきており.学内にはそれを誇る伽向が
学で学習することへの明硴なモチベーショ
一部に見られるが,仏は私立大学にとって
ンをもっているか,そしてそれを大学で達
はそれは危険な倣向であると思っている。
成するための知的体力をもっているかどう
これまでわが脚では、偏差lijiの商い学生
かがまず1111題にされるべきで,入学iiljの知
を多く集める大学が良い大学といわれてき
議のfitは二次的な1111題と考えるべきだと思
たが,これに私は疑'11】を持っている。良い
う。
大学とは,しっかりとしたモチベーション
大学で初歩的英語から始めても,数学の
をもった多様な学生が染まり,それらの学
第一歩から始めても,それを学習したいと
生が在学する4ゴドなり5年なりの一定の期
思う愈欲とモチベーションさえしっかりし
IIHOIjにその当初のモチベーションを自己災
ておれば,そのような初歩的段階から始め
現することを保証するシステムをもった大
るカリキュラムをこれからの大学は11k筋し
学こそが典の質の高い良い大学であるとい
ておくべきである。大学で大那なのは,ど
えると考えている。
こから始めるかでは厳くて,蛾終的にどこ
いわゆる知識吸収能力に優れた学生はせ
まで高い水準に至り達させることができるか
いぜい3~4W11もいれば十分で,他は多様
である。大学とは,それがIMIわれるべき鳩
な知的好奇心と一定の知的iUI疎に耐え得る
所なのである。
知的体力と梢神的強さをもった元飢な学生
今ひとつのことは,大学は,ひとつの劇
を染めてほしいと富っている。なぜなら,
場空間のような所であるべきだと思う。そ
本当の意味での創造性は,知的吸収能力に
の刺蝿が成功するか否かのキーは,」2滴さ
優れた均質な学生のtI1よりも,多概で雑多
れる脚本や優れた演出希の選定にある。教
なモチベーションに溢れた学生巣側の中か
11はそこにlllipiする役者と考えるべきであ
らこそ生まれると確偲しているからである。
る。良い脚本と十分魅力的なギャランティ
私立大学こそこのような一F11の刺激に満ち
ーが用意されておれば,役朽(教11)はlIl
た知的アリーナであるべきであると考えて
iiiiしたくてその劇場に押しかけて米る゜こ
いるからである。
のような劇場の経営とプロデュースを担う
最近,大学でもMi習授業の必要性が1M1題
のは,将来,いわゆる教員ではなく、聯P1I
となり,一部の教、が価慨しているようで
職的職LUWになると思う。そのため,今後
あるが,2111t紀の11Mかれた大学,とくに私
の大学の活性化とその成否は,このような
立大学では発想の転換が要求される。今後
教員以外のWi11l1的職11スタッフをどれだけ
大学には,社会人をふくめ年齢的にも学力
f『てられるかにかかっているということが
的にも多様な1Mの人びとを受け入れなくて
できると.魁う゜
はならなくなる。そのときの受け入れの原
(立命館大学総及・学長)
Ⅱリは,いわゆる学力第一主義ではなく、太
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が基本方針の2稀nです。個人個人の自111
i;f価するのに地の利を11}ているといえます。
愈志で独自に研究を展111Iすることは大学の
しかし.11tなる地域武献を主とする研究
特長です。二れが基本ではありますが,分
スタンスでは.世界に文献する研究に進展
野の異なる研究者が共Iiilして研究すること
せず,やがては地域にも貢献できなくなる
がますます爪要になっています。
恐れがあることに心しなければなりません。
高知工科大学では,IlI1学以米,大!、rPの研
究資金を個人研究と同時に,大学プロジェ
学長としての所信表明
クトと学科プロジェクトとに投入してきま
私はかねがね既存の大学のあり方に疑IHI
した。2001年度に.情報電子機械工学系を
を抱いていました。閲学に参加した人たち
IIn心とした「ハイテクリサーチ」プロジェ
は皆.同じ.uいでした。さまざまな分野で
クトを,2002年度に,社会環塊系を11心と
活BIMしていた人が染まって,n分たちがこ
した「学術フロンティア」事雅を,それぞ
うありたいと思う大学のビジョンを持ち寄
れ5年叶画の大学共1両l研究プロジェクトと
ってできたのが,商知二[科大学です。それ
してスタートさせました。いずれも10億1'1
に加えて,学校法人理?I(是でもある橋本人
を超える研究費のうち,半額を大学研究Yll
二郎iii知1M知事と宮地批一副Eu事奨の大学
でまかなっています。iili者はiWi度M1柵jjMii
教育にかける想いと実行力がありました。
社会に役立つものであり,後朽は少子高齢
IlIl学から4年間,末松宏晴初代学奨を先頭
化社会における環境共生型社会を実現する
に,がむしゃらに進んできた結果,どうや
実際的な研究です。
ら大学が軌道にのってきました。
M1学5年I]からの4fIi間を111当する私の
地域への貢献
役目は,これまでつくり上げてきた笈績を,
大学の研究は,世界111[高水IVHをn指すの
統合されたシステムとして柵築することと
は当然としても,商知工科大学はその設虻
考えて,それを災行してきました。企業と
経純からいって.地域に貢献することを念
何じょうに,大学でもビジョンや[I的をi;
頭に髄<必要があります。このことが大き
葉として掲げています。しかし.大学には
なプラスをもたらすことに剣づきました。
高動が一致しているかどうかを測るシステ
地域という現場を持つことは,工学研究を
ムがありません。そこで,教11の行動規範
行なう際に典所となり,研究に現爽感がで
を「教員iiv価システム」として,具体的、
てきます。
定fit的に糞すことにしました。
高知県は防災の観点からも大変良い現jル
この教此評価システムの評価を定める手
を提供してくれます。台風の通りinであり,
続きは,「学長は.学此任期の最初の年に
洪水やがけ肋れの現場に事欠きません。ま
軟風iif価の典体的な方法を提案し,教授会
た,南海地震の影響範llIlでもあります。こ
の蕊を経て決定する。その教、評価法は,
れらとどのように付き合っていけばよいか
原ⅡIとして学長の任期DIIは変史しない。」
を研究すると同時に,一般性のある研究を
としました。教11評価システムをつくるこ
IDE20“年1-2〃号
刀
とは,大学がどのような教11を好ましいと
さまざまなベクトルを持つ教11がそれぞれ
考えているかを表現することです。それに
'1zかさオLなければなりません。若い教員に
よって,大学が持続的発腿可能かどうかが
は,研究と教ブリの両方を勧めますが、研究
決まります。教学の貰任稀である学艮が「I
8利,教育2W11でもよいのです。すでに世
ら提案する必要があるH1紬です。
界的な研究朽になっている人はそのほうが
よいでしょう。一方,企粟や大学で一仕邪
教員評価システム
終えて,それまでの特械を教育に生かした
大学にはいろいろな人M1が必要です。そ
いという教flは、教fri三体でやって欲しい
のような人たちを一iltに評価することは難
と思います。「教且i;1i価システム」はこれ
しいのですが.大学へのjfj【献度として定lUt
らのことをうまく表現できていることを願
化することにしました。ri1Illtはin:接的貢献
って作成しました。
と間接的貢献に分かれます。前肴には,:、j片
この,if価システムは,教11を評価するこ
生の敬育,外部資金の調述,学生の就職や
とだけが目的ではありません。大学が進む
人半折勧誘などがふくまれており,後者に
方向をIリI砿に示し,そのために教貝はどう
は,研究,広搬,学会や地域活動などの社
あるべきかを衣Ijilする1M本的な手段といえ
会貢献などがふくまれています。なお.こ
ます。各教員がそれぞれ自分の評価を_'二げ
のシステムは大学のホームページに公IMIし
るべ<努力すれば,大学のU標が自然に達
ています。
成できていくⅡ:組みになっているはずです。
評価に当たっての雑木的な考え方は,
「定賦化」「[IEI茗性」「結果j{淀」「透明性」
博士課程の充実
の4点に絞られます。まず,汗価Jnpのす
大学の発展にとって,大学院,とくに樽
べては,その時点における大学のⅡ標にlⅢ
」:後期採程の充爽は不DOI欠です。そこで全
した係数によって,一元的に数伍化される
阯界から人材を災ぬることにしました。そ
のが,このシステムの中心的特徴です。研
して,2002年411にIIil際交流オフィスを説
究,広搬,学会や地域活動などに111Iするiif
慨しました。企堆からスカウトした(V住教
価点は自己'11(o;に基づいてW〔出され,プロ
授が各|刊で奨学生受け入れのチャンネルづ
セスよりも結果がⅡ11われます。雌後に,子11
くりを進めています。大学院M1[士後jUI課程
硯的な評価結果はすべて公炎することにし
への授業料免除と奨9.織り度とをガリ没し,
ています。
2003年から毎flK20~30人礎度を受け入れる
大学の商品は「学生」と「研究成果」,
それらを通じての「社会貢献」です。教il
予定です。
海外から優秀な学生が染まることにより
評価システムはこれらの商品をつくり出す
研究体制の充爽を図るとともに,日本人学
装置です。教育を茄点的に行なう教貝は必
生にとっても良い刺激となり[則際的センス
ずしも研究を行なう必要はないし,研究中
を身につけてくれるものと思います。
心の教11は教育の負孤が少なくてもよく,
え2
(侭j知兀科大学被災/土木-1ツ、被,コンクリート正字)
jDE2DO3年1-2〃\