夏 の たより

夏 の
たより
花は少ない時季に入り、足下に咲いている花も小さなものが多い中、香りと
共に人目を引くのがヤマユリです。
夏はセミの鳴き声と共に訪れ、セミの鳴き声が終わりを告げると言っても過
言ではありません。前者はニイニイゼミ。後者はツクツクボウシです。今年の
8月7日は『立秋』。暑さは本番ですが、太陽はもう高度を下げています。
■主役はセミ
油蝉、空蝉、蝉、蝉時雨、初蝉、
ミンミンゼミ。秋の蝉、カナ
カナ、法師蝉、蜩。7月、8
月の季語にはセミが多くあり
ます。
松尾芭蕉が山寺で『閑さや
岩にしみ入る 蝉の声』と読
んだのは、新暦7月 13 日で
あることから、ニイニイゼミ
の鳴き声ではないかと言われ
ています。ヒグラシは8月 ( 秋 )
の季語となっていますが、ニ
イニイゼミと同じころ、梅雨
が明けるか明けない内から鳴
き始めます。ただ8月末、時
には9月まで鳴き声が聞かれ
るので、夕刻に聞く「カナカ
ナカナ」というどこか哀愁を
帯びた声は、やはり秋を
感じさせてくれます。暑
苦しいと言われがちなセ
ミの声ですが、初夏から
晩夏まで、昔から日本の
夏はセミの鳴き声と共に
あったようです。
仲間、カメムシの仲間、コガ
ネムシの仲間、クモの仲間。
もちろんチョウやガの幼虫も
います。
子どもたちに人気なのは、
カブトムシの仲間でしょうが、
昼も夜も、夏の森は実にたく
さんの昆虫たちで一杯です。
果、心身をいやしてくれるも
のとなります。夏の陽ざしを
浴び、しっかり光合成をして
養分を貯えたい植物。静かな
戦いがここにはあります。こ
の時季の日照は、紅葉にも大
きく影響します。人間の勝手
な願望としては、虫もいて欲
しいのですが、木にはフィト
ンチッドをたくさん出しても
らい、虫食いのない葉に太陽
の陽ざしを一杯浴びて、養分
を貯えて欲しいなと思いま
す。
■小さな生きものたち
主役はセミとして、草や木
の葉をちょっと注意してみる
と、小さな虫たちに出会うこ
とがよくあります。ハムシの
■木も活動期
沢山の生きもので一杯の森
の中。チョウやガの幼虫を始
め、多くの昆虫たちが木の葉
を食べています。そこで木も
自己防衛のため、忌避作用の
ある成分『フィトンチッド』
を出します。この『森の香り』
は、人間にとっては森林浴効
■そして中秋へ
今年は9月 22 日が中秋の名
らす風。ほとんど緑のグラデー
月。この日の埼玉の日の入りは
ションだったような森やその周
17 時 39 分。7月1日は 19 時
辺にもアオハダの赤い実、ユウ
02 分ですから、約1時間半早
ガギクの紫、キンミズヒキの黄
くなっています。翌 23 日は秋
色など彩りが添えられ、イチモ
分の日。いつまでも残暑が厳し
ンジセセリなどチョウの数も増
いと思っていたら、以外と秋は
えます。夜には涼やかなエンマ
駆け足でやってくるかもしれま
コオロギやカンタンの声が聞か
せん。モズやカケスの声、アキ
れることでしょう。
アカネの飛翔。ススキの穂をゆ
絵:堅香子の会