後腹膜剥離困難症例に対する 腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術に対する

一般演題②
後腹膜剥離困難症例に対する
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術に対する検討
⃝兵庫県立西宮病院 外科
吉岡慎一、徳山信嗣、久保維彦、柳澤公紀、濱野梨絵、平井利明、太田英夫、柏崎正樹
三木宏文、小西宗治、福永 睦、小林研二
はじめに
最近の鼠径ヘルニアの手術においては、Preperitoneal Repair法による術式が多く施行されるようにな
ってきており、さらに腹腔鏡を用いたヘルニア修復術(TAPP法ならびにTEPP法)も多数施行されるよ
うになってきた。一方、前立腺全摘手術後においては鼠径ヘルニアは比較的多く発症するとされている
が、手術操作による剥離切開創による影響のため、後腹膜の剥離困難な部位が生じ、手術を行う際には
解剖の理解と術前の状況把握が肝要と思われる。さらにメッシュ修復後の再発鼠径ヘルニアは前回の術
式によっては手術は困難であることが多い。今回我々は当院にて施行した、前立腺全摘術に生じた鼠径
ヘルニアや再発鼠径ヘルニアなどの後腹膜操作が加わっているような症例に対する鏡視下手術の有用性
に関して検討を行った。
対象と方法
2013年6月より、当院にて施行された腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP法)186例のうち、前立腺
結 果
前立腺全摘後症例では全例Ⅰ型のヘルニアであった。3例中2例で腹膜修復困難であったため、腹壁瘢
全摘術後3例、再発鼠径ヘルニア8例を対象に検討を行った。
痕ヘルニア用メッシュを使ってIPOM変法にて修復を行った。再発症例は1例がKugel法、2例はプラグ
メッシュ法、その他は従来法での再発であった。Kugel法の再発は1型の再発であり、前立腺全摘後と
同様の修復法を用いた。その他は剥離は困難であったものの従来のTAPP法と同様の方法で行うことが
出来た。
ま と め
後腹膜剥離困難症例においても、鏡視下手術は視認性がよく、ヘルニア門の同定が容易であり、工夫は
必要であるが修復においては有用な方法であると考えられるが、手技の確立・コスト面を含めた有用性
の検討については、まだ症例の蓄積が必要である。
転移性肝癌及び腹壁瘢痕ヘルニアに対し、
同時に腹腔鏡下に切除及び修復を行った1例
⃝独立行政法人 労働者健康福祉機構 大阪労災病院 外科
安山陽信、人羅俊貴、清水潤三、古賀睦人、村上昌裕、吉田雄太、川田真大、吉川幸宏、
渡瀬智佳史、川端良平、廣田昌紀、吉川正人、池永雅一、長谷川順一
腹壁瘢痕ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術が保険収載され、新しい治療法として確立しつつある。今回、我々は転移性
肝癌及び腹壁瘢痕ヘルニアに対し、同時に腹腔鏡下に切除及び修復を行った1例を経験したので報告する。症例は76
歳、男性。2013年6月、盲腸癌に対し腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。最終ステージはfStageⅡだった。2013年
12月のフォローのCT検査で肝S6に約20mm大のLDAあり、臍下部に60mm大の腹壁瘢痕ヘルニアを認めた。転移性
肝癌及び腹壁瘢痕ヘルニアと診断し、手術を施行した。まず、左側臥位にて手術を開始し、肝S6部分切除術を行った。
次に、体位を仰臥位に戻し、腹壁瘢痕ヘルニア修復術を行った。臍下部のヘルニア門の大きさは7cmであった。パリテ
ックスコンポジットメッシュ(直径15cm)を挿入し、ヘルニア門を覆うように固定した。術後経過良好で、術後11日
目に退院した。術後9ヶ月経過するも明らかな癌及びヘルニアの再発を認めていない。
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