特 集 特 集 ● ● キ ャ リ ア が 明 か す 次 世 代 網 構 想 キャリアが明かす 次 世 代 網 構 想 KDDI ワイヤレスブロードバンドでも先行 NGN Rel.1を先取りした「ウルトラ3G」構想 固定通信市場の縮小と移動体通信市場の飽和 【契約数の推移】 10,000 【固定電話発信の通信回数・通信時間の推移】 1,200 60 ● ● ● ● 契 8,000 約 数 6,000 ︵ 単 位 4,000 万 ︶ ● ● 2,000 EV-DOによるauサービスのブロードバンド化を推進。さらにKDDIのNGNビジョンとも言える 「ウルトラ3G」構想に沿って、既にMMDやモバイルWiMAXの実証実験にも成功している。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 0 ● 固定通信(加入電話+ISDN) 移動通信(携帯電話+PHS) ブロードバンド (CATV+ADSL+FTTH)● ● '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05年 各年度末 0 ● ● 信 40 時 ● ● 間 30 ︵ ● ● ● ● '99 コストダウン ネットワーク統合へ 50 通 ● ● ● 200 ● ● トラフィック属性変化 への対応 世界の先頭を行くKDDI/auの描く、次世代ネットワークのビジョンと取り組みを明かす。 ● ● 通 信 800 回 数 600 ︵ 億 回 400 ︶ ● : KDDIは2007年度末までに固定網のオールIP化を目指す一方、東京電力のFTTH事業を糾合し、 1,000 ● ● 億 20 時 間 通信回数 通信時間 '00 '01 10 ︶ '02 '03 '04 0 '05年度 新しいビジネス領域 の模索 柔軟なネットワークへ 図1:通信市場の現状と課題 ワーク資源の無駄遣いと、利用者の時間の搾取を引き 技術とビジネスの両面で 転換期を迎えた通信市場 NGN構築に向けた動きが活発化している背景には、 通信市場の全体状況がある。まずはそのポイントを整 理しておきたい。 ■ブロードバンドの進展 の、増加率は鈍化し、飽和状態に近づきつつある。 攻撃等の脅威には、確かに適宜対策が講じられている。 ARPU(1契約当たりの売上)が減少を続けているため、 だが、それをかいくぐる手口が次々と開発されるため、 売上高には飽和傾向が窺える。 完全な防御は困難であり、社会的なセキュリティ問題 こうした現実の中で事業の成長を持続し、利益を確 期を迎える昨今である。 そうした状況の下、新技術パラダイムとなったIPを採 用して「コスト削減」を図る取り組みが、既に各国で始 まっている。ブリティッシュテレコム (BT)は2004年6月、 保していくために、通信事業者は複数の対応を迫られ 電話網のIP化推進計画を発表した。 「21世紀ネットワー また、Winnyに代表されるP2Pのファイル共有や、映 ている。第1に、固定・移動・インターネット等のトラフ ク」 (21CN) と呼ぶIPベースのネットワークへの移行を 像等のリッチコンテンツの配信は、インターネットのトラ ィック属性の変化に効率的に対応していかなければな 進め、2008年には固定電話顧客の半数以上を巻き取る となっている。 21世紀に入ってからのブロードバンドサービスの普 フィックを指数関数的に増大させている。他方でほと らない。第2に、縮小あるいは飽和する通信トラフィッ 計画である。網の簡素化によって、年間10億ポンド(約 及は目覚しく、わが国は世界有数のブロードバンド大国 んどのISPサービスが定額制になっているため、事業 ク市場から利益を確保するために、設備投資と運用経 2200億円)のコスト削減を見込むという。これに触発さ になった。2006年6月末の契約数は2422万に達してお 者は収入が増加しない中で設備増強を迫られている。 費の両面でコストを削減していく必要がある。第3に、 れてか、世界の主要キャリアが電話網のIP化計画を トラフィック収入以外の新しいビジネス領域を模索しな 続々と発表している。 り、ほぼ半分の世帯がブロードバンドを利用していると ブロードバンドがほぼ半数の世帯に普及した今日、 考えてよいだろう。特に最近は、ADSLに代わって インターネットは事実上の社会インフラとなりつつある。 FTTHが加入数を伸ばしている。 だが、インターネットは本質的に「ベストエフォート」を こうした課題を達成するには、固定・移動・インター 前提とした仕組みである。通信品質の保証や災害時の ネット等に分かれている現状の網を統合していくこと、 重要通信確保といった社会インフラとしての機能面は、 そして付加価値創造に優しい柔軟な網を構築すること サービスでは、既に97%*のユーザーが3Gへ移行して 脆弱であると言わざるを得ない。 が有効である。これによりトラフィックの属性変化を吸 いる。また、俗に「3.5世代」と呼ばれるさらに高速なパ ■国内通信市場の現状と課題 収し、設備の効率的かつ統合的な運用によってコスト 直近の取り組みを紹介する。 を抑制し、1つのネットワーク上で新サービス提供の試 ■固定電話網のIP化 移動通信の分野でも、高速パケット通信の可能な3G (第3世代携帯電話)の普及が進んでいる。KDDIのau ケット通信も始まっている。2003年11月に開始したau のWIN(EV-DO)サービスは、全auユーザーの42%*に 利用されている (*いずれも2006年8月末)。 ■インターネットの光と影 日本の通信事業者は、固定通信市場の縮小と、移動 通信市場の飽和という現実に直面している (図1)。 固定電話発信の通信時間は、2000年度のピークから わずか4年で半減するという状況にあり、固定電話サー ければならない。 行錯誤を容易に繰り返せるようになる。 ■通信技術パラダイムのIPシフト インターネットの爆発的拡大を受け、通信技術開発、 KDDIが取り組む IP化・ブロードバンド・FMC 次に、IP化、ブロードバンド、FMCに向けたKDDIの KDDIは2004年9月、固定電話網のオールIP化計画を 発表した。 「2007年度末までに」という、知り得る限り世 界で最も早い完全移行計画である (図2)。 ビスの維持に黄色信号が灯っている。原因は携帯電話、 機器開発・製造の重点分野はIPにシフトしている。従 「オールIP化」とは、全ての電話交換機をIP網の上に 便益を社会に広めたが、同時に様々な問題を顕在化さ IP電話、電子メールといったコミュニケーション手段の 来型のSDH/ATM伝送機器や電話交換機は、もはや製 置いたソフトスイッチに置換することと、音声をVoIP転 せている。インターネット経由で送受信される電子メー 多様化にあると考えられている。 造中止の方向にあるばかりか、保守も期限が切られる 送することを意味する。KDDIでは「光プラス」 (現・ひ 状況となっている。そこへ回線交換電話網が設備更改 かりone)サービス用に、QoS制御を具備した高品質IP ブロードバンドの普及と高速化は、インターネットの ルの大半がスパムメールであると言われており、ネット 30 起こしている。ウイルス、不正侵入、フィッシング、DoS vol.2 2007 一方の移動通信も、契約数は依然増加しているもの vol.2 2007 31
© Copyright 2024 Paperzz