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「仲秋の風景」 熊本県 近見一郎
目 次
随 想 トマト加工の研究開発に携わって………………… <早川喜郎>… 570
解 説 シリーズ解説:食品産業における環境対策(第5回)
食品廃棄物の実態と食品ロス削減に向けて <牛久保明邦>… 572
解 説 シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用(第33回)
麹菌の遺伝子資源・遺伝子解析……………… <柏木 豊>… 578
連載エッセー:食の遠近画法 シチズン・コンシューマー <五明紀春>… 586
海外技術・マーケット情報
食品ナノテクノロジーに関する世界の規制政策………………………… 588
持続可能なブランド&マーケティング戦略……………………………… 590
アメリカの食品産業,従業員の給料と満足度調査……………………… 592
セルロースナノファイバーで強化されたマンゴピューレからの
ナノコンポジット可食性フィルム……………………………………… 594
バイオプラスチックを用いた飲料容器…………………………………… 596
2009年の世界の金属容器市場……………………………………………… 598
リステリアの脅威の低減…………………………………………………… 600
PACKAGING NEWS…………………………………………… 602
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肺魚のため息 バナナ………………………………………………<多紀保彦>…
特別解説:携帯型近赤外装置による果実の樹上品質評価法…<河野澄夫>…
特別レポート:日本における清涼飲料,ビール系酒類市場
─2009年の7・8月を振り返って─
……………………… <醸造産業新聞社 編集部>…
業界トピックス:09年の日本茶飲料もマイナスへ…………………………………
技術用語解説:可食性フィルム………………………………………………………
業界の話題………………………………………………………………………………
今月の統計………………………………………………………………………………
最近の技術雑誌から……………………………………………………………………
605
608
614
618
619
620
624
626
野菜・果物を巡って(第十話) 秋なすは嫁に食わすな… ……<吉田企世子>… 631
FOOD
&
PACKAGING
缶詰技術研究会 http://kangiken.net/
随 想
トマト加工の研究開発に携わって
はや
かわ
き
ろう
早 川 喜 郎
(カゴメ株式会社 総合研究所技術開発研究部長)
ヨーロッパには,古くから「トマトが赤くなる
なった。さらに農業従事者の高齢化や後継者不足
と医者が青くなる」という諺がある。このように
も重なって,その生産量は年々減少し,現在は最
トマトは古来より体に良い野菜として知られてき
盛期の10分の1以下の規模にまで低下してしまっ
た長い歴史がある。日本には,17世紀の終わりご
ている。このような時代の推移に伴って,私の入
ろ,観賞用植物として入ってきたのが最初である。
社当時(ほぼ30年前),トマトの加工技術研究は
日本でトマトが食べられるようになったのは,明
国内の加工用トマトを活用して行うことができた
治以降のことで,その後,大正,昭和という時代
が,近年では加工用トマトの海外移転に伴い,研
の変遷と共に,トマトは,日本人の食生活に無く
究開発のやり方も変化してきた。国内では主に基
てはならない野菜として浸透してきたと言える。
礎的な研究を行い,実用化のための研究は海外で
しかし,日本人の食べるトマトの量は,諸外国に
行う場合が多くなっている。入社当時は,国内市
比較すると,まだまだ少ないというのが現状であ
場を中心とした食品企業に勤務したという意識も
る。世界で最もトマトを消費しているギリシャ(年
あり,海外出張などは夢のようなことだったが,
間1人当り129㎏)に比較して,日本人はその10
今では当たり前のように海外に出張して,研究開
分の1以下の9.9㎏に過ぎない量である。これだ
発に取組むことが多くなっている。そういう私も
け日本人の食生活に入り込んでいるトマトでも世
海外出張を毎年積み重ねた結果,二桁を超える数
界的にみれば,まだまだその量は少ないというの
を重ねることになった。入社以来トマト加工技術
が現状である。日本ではトマトの摂取形態はサラ
研究に20数年間携わってきたが,国内のトマトが
ダに代表される生食としての需要が中心であるが,
減少することは国内農業の縮小,自給率低下とい
ギリシャ等の地中海を中心とする外国においては,
った産業の空洞化に繋がる大きな課題ではあるが,
トマトあるいはトマトを加工したホール・ダイス
個人的には,海外でのトマト加工技術研究を目的
等を料理の素材として非常に多く利用しているた
として数多くの国に海外出張し,多くの経験をす
めである。
ることができたとも言える。
国内の加工原料用トマトは,かつてはケチャッ
20数年間のトマト加工技術研究を振り返ってみ
プ等の原料にも多くの量が使用されていたが,
て,最も記憶に残っているのは,トマトジュース
1972年のトマトピューレー,ペーストの輸入自由
のRO(逆浸透膜)濃縮技術の開発である。トマ
化後は,国内生産は縮小を余儀なくされ,その結
トジュースの濃縮は,トマト加工品製造工程にお
果1983年には国内原料比率が50%を下回ることに
いて最も重要な工程であり,昭和30年代の蒸気加
食品と容器
570
2009 VOL. 50 NO. 10
熱によるコイル式のバッチ型濃縮装置を経て,連
ストの重要な調達先であったトルコにROプラン
続式の真空加熱濃縮機による効率的な濃縮へと進
トを設置し,1985年より,海外での生産を開始し
歩し,それに伴い製品の色や香味等の品質も格段
た。
に向上していった。しかし,これらの濃縮法では
トルコについては,中学・高校の世界史で学ん
水を除去するために必ず熱を加える必要があり,
だ「アジアとヨーロッパの両方にまたがる国であ
どうしてもトマト本来の品質を保持することがで
り,歴史的には強大なオスマントルコ帝国時代が
きなかった。一方,商品設計の観点から,トマト
あった」程度の僅かな知識しかなかったが,海外
ジュースの周年製造化が求められていたが,従来
で仕事をするにはその国の歴史を勉強する必要が
の真空加熱濃縮法で製造されたトマト濃縮品を用
あると思い立ち,日本で販売されているトルコに
いた還元トマトジュースでは,シーズンパックト
関する書籍を買いあさって読破した覚えがある。
マトジュースとの間に明らかな品質差があり,高
今ではかなり忘れてしまっているが,トルコは,
品質の商品を製造することができなかった。当社
長い歴史の中で培われた大変親日的な国であるこ
では,すでに1972年(私の入社以前)より,海水
と,日本語とトルコ語は言語的に大変近いこと,
の淡水化プラントで実用化が開始されていたRO
トルコ共和国の初代大統領であるケマル・アタチ
濃縮法に着目して,非加熱でトマトジュースの濃
ュルクの偉大な業績などを初めて知ることができ
縮が可能となる研究を開始していた。RO濃縮法
た。
は,①色調や香味が良く,高品質の濃縮品が得ら
以上述べたように,幸いにも20年以上にわたり
れる。②相変化(水→蒸気)がないため,濃縮に
トマトを中心とする加工技術研究に携わることが
よるエネルギーコストの低減が図れるなどのメリ
できた。まだまだ多くの研究すべき課題があり,
ットがあった。
今後もその実現に向けて研究を推進していきたい
このような基礎研究を経て開発されたRO濃縮
と考えている。ナポレオンが日常よく口にした「余
システムを,1975年に工場に導入して実用化テス
の辞書に不可能の文字はない」という言葉は大変
トを開始した。しかし,RO濃縮は高品質の濃縮
よく知られているが,RO濃縮を初めとするこの
ができるという大きなメリットを有するものの,
ような新しい技術開発においても「技術開発に不
微生物汚染が著しい,連続運転による膜性能の低
可能という文字はない」という言葉がピッタリあ
下,濃縮コストが高いなど実用化に際しては多く
てはまると考えている。新しい技術を開発するた
の課題があり,本格的な実用化には至らなかった。
めには,多くの課題があるが,最後まであきらめ
この間,連続運転による膜性能変化の測定のため
ないでやり抜くという姿勢を持っていれば,必ず
に丸一日寝ないで実験を行なったことが,今では
や研究が実を結ぶときが来るという信念が重要と
大変懐かしい思い出でもある。こうしたいくつか
考えている。このような研究の姿勢を若手の研究
の課題を毎年(トマトは夏季にしか収穫できない
員にも伝えていくことが私の今後の使命でもある
ため,実用化の研究は夏季に限定されていた),
と考えている。
少しずつ克服し,1980年には,微生物汚染の影響
今後もトマト・野菜の加工技術研究を推進し,
を極力少なくした低温濃縮システムを開発し,
今まで世の中に無い新しい価値を持つ加工品を開
1981年から本格的にRO濃縮ピューレの生産を開
発し,それが商品化され,消費者の皆様の楽しく,
始した。
豊かな食生活と健康の維持に貢献し続けることが
その後,国内加工用トマトの生産量減少に伴い,
夢である。
RO濃縮ピューレの増産のため,当時トマトペー
食品と容器
571
2009 VOL. 50 NO. 10
シリーズ解説:食品産業における環境対策(第5回)
□解説□
食 品 廃 棄 物 の 実 態 と
食 品 ロ ス 削 減 に 向 け て うしくぼ・あきくに
東京農業大学大学院農
学研究科農芸化学専攻
修士課程修了。東京農
業大学助手,講師,助
教授を経て現在,同大
学国際食料情報学部国
際農業開発学科教授。
専門は環境科学,土壌
学。農学博士
牛久保 明 邦
現状にある。世界的な人口増加による食料需要の
□1.初めに□
増大や地球温暖化による異常気象など食料生産の
我が国は,大量の食料品を海外に依存し食料自
不安定要因が顕在化する中で,我が国の食料の安
給率が先進国中最低水準にあるなかで,農林関連
定供給を将来にわたって確保するためには,国内
事業者(食品産業)および一般家庭から合わせて
での食料供給力を強化することは当然であるが,
年間約2,200万トンの食品廃棄物が発生している。
併せて食品ロスを削減する努力についても考え実
この食品廃棄物の取り扱いにあっては,すべての
行する必要がある。
食品関連事業者に対して平成13年に「食品循環資
ここでは,食品関連事業者から排出される食品
源の再生利用等の促進に関する法律」(通称 食
廃棄物の実態について説明するとともに「食品ロ
品リサイクル法)が施行され,発生抑制・再生利
ス」として廃棄される様々な要因を明らかにし,
用および減量に取り組み,再生利用等の実施率を
食品ロスの削減が食料自給率や食品リサイクルに
企業横断的に20%以上にすることを目標として実
いかに関連するかについて食品関連事業者および
施されてきた。その後,法施行5年を経て見直し
消費者の立場で考えてみることにする。このこと
が行われ平成19年に改正食品リサイクル法として
は,食料自給率の低下を食い止める要因となるば
制定された。再生利用等の見直しでは,発生抑制
かりでなく食品廃棄物の発生抑制と処理費用削減
の促進と再生利用の手段として飼料化を優先順位
に資することを望むものである。
のトップにあげ,横断的実施率を見直して業種・
□2.食品関連企業から排出
される食品廃棄物の実態□
業態を考慮した企業実態の状況によって実施率の
向上を求めることとなっている。
一方,食品の製造・流通および消費の過程から
食品リサイクル法における食品関連事業者とは,
発生している食品廃棄物の中には,本来食べられ
食品製造段階の食品製造業,食品の流通段階の食
るにもかかわらず多量の食品が食べられずにいわ
品卸売業,食品小売業および食事を提供する消費
ゆる「食品ロス」として,大量に廃棄されている
段階の外食産業等の事業者である。
「食品廃棄物」
食品と容器
572
2009 VOL. 50 NO. 10
食品廃棄物の実態と食品ロス削減に向けて
とは,食品の製造段階で発生する加工残さ(産業
あるが,食品製造業,食品卸売業および食品小売
廃棄物),流通段階および消費段階における調理
業においては微増あるいは横ばいの傾向にある。
くず,食べ残しの他,規格外品・売れ残りや食品
食品製造業から発生する食品廃棄物が食品産業計
廃棄等の食品ロス等を含むものである。
に占める割合は,約44%であり,次いで外食産業
食品リサイクル法が施行された平成13年度から
の約27%,食品小売業の約23%,食品卸売業の約
19年度までの食品廃棄物の年間発生量の推移は,
6%の順となっている。
食品産業( 食品製造業食品卸売業
食品小売業外食産業
1092
464
72
236
320
平成13年度
第1図に示す通りである。食品産業(食品関連事
食品リサイクル法では,食品廃棄物を少なから
1131
483
75
260
313
平成14年度
1135
487
74
262
312
平成15年度
業者)全体での食品廃棄物発生量は,平成13年度
ず排出するすべての食品関連事業者は食品循環資
1136
490
75
260
310
平成16年度
は1,092万トンであったが,平成19年度のそれは
源の再生利用等の実施率を平成13年度から5年の
1136
495
74
263
304
平成17年度
1135
495
74
262
304
平成18年度
1,134万トンとなっており,平成14年度以降横ば
間に20%以上向上させることとされており,第2
平成19年度
1134
493
74
263
305
い傾向にある。業種別では外食産業が減少傾向に
図には平成13年度から19年度までの食品産業およ
1134
1200 1092
1000
左から平成13年度~19年度
800
600
493
464
400
200
0
263
236
食品産業(計)
食品製造業
平成14年度
食品卸売業
平成15年度
305
73
72
平成13年度
320
平成16年度
食品小売業
平成17年度
外食産業
平成18年度
平成19年度
*横軸単位:万トン/年 資料:「食品循環資源の再生利用等実態調査報告」(農林水産省統計部)
第1図 食品廃棄物の年間発生量の推移
13年度
100%
14年度
15年度
16年度
80%
17年度
18年度
19年度
60%
食品産業( 食品製造業食品卸売業食品小売業外食産業
37%
60%
32%
23%
14%
40%
66%
36%
25%
13%
43%
69%
45%
23%
17%
81%
81%
食品製造業
45%
72%
41%
28%
17%
72%
52%
81%
61%
31%
21%
69%
66%
食品卸売業
53%
81%
62%
35%
22%
60%
62%
61%
54%
81%
62%
35%
22%
食品産業(計)
40%
37%
40% 100%
36%
32%
20% 80% 23%
14% 60%
66%
45%
43%
食品小売業
41%
35%
35%
食品製造業31% 81%
28%
81%
72%
食品卸売業
21%
62% 22%
61% 22%
17%
外食産業
17%
13%
0% 60%
13年度食品産業(計)
14年度
62%
45%
23%
25%
81%
69%
53%
52%
54%
81%
62%
45%
15年度
45%
16年度
17年度 18年度
19年度
54%
53%
52%
40%
41%
37%
食品小売業
40% 「食品循環資源の再生利用等実態調査報告」
資料:
(農林水産省統計部)により計算
36%
35%
35%
43%
32%
31%
23%
28%
25%
第2図 食品循環資源の再生利用等の実施率の推移
23%
20%
食品と容器
14%
13%
13年度
14年度
0%
17%
17%
21%
22%
外食産業
2009 VOL. 50 NO. 10
573
15年度
22%
16年度
17年度
18年度
19年度
シリーズ解説:食品産業における環境対策
び各業種の再生利用等の実施率の推移を示した。
産工程の見直し,流通過程での配送や保管方法の
食品産業全体として再生利用等の実施率は,平成
改善による品質管理,販売過程での仕入れや販売
13年度の37%が5年後の平成19年度には54%に着
方法の工夫および調理方法やメニューの工夫等が
実に上昇している。
考えられるが,この中には依然として本来食べら
再生利用等の実施率を業種別にみると,産業廃
れるべき「食品ロス」が廃棄部分として含まれて
棄物に区分される加工残さが発生する食品製造業
おり,食品ロスの削減を推進することは,食品廃
においては極めて高い実施率を上げているのに対
棄物の発生量を抑制する上で大きな意義がある。
し,食品卸売業,食品小売業および外食産業と川
食品リサイクル法では,食品廃棄物中で飼料・
下に位置する業種ほどその実施率が低迷している。
肥料等の原材料として有効利用されるものを「食
特に外食産業においては,各店舗において多種多
品循環資源」と称することになっている。旧食リ
様の食品廃棄物が少量ずつ発生する状況に加えて
法では,食品循環資源の再生利用手法として,
「肥
楊枝やナプキン等の夾雑物が混入しているなどが
料化」,
「飼料化」,
「油脂・油脂製品化」および「メ
再生利用等の実施率に影響を及ぼしている。
タン化」があげられていた。再生利用の用途別仕向
次に,食品関連事業者いわゆる食品産業におけ
割合をみると食品製造業では,製造工程で発生する
る平成19年度における業種別の再生利用等の実施率
動物性残さを主体に栄養価が高いものが大量に発生
および再生利用の用途別仕向割合を第1表に示した。
し,飼料に加工しやすいことや海外飼料の高騰が後
再生利用等に取り組む際には,優先順位が定めら
押しして「飼料化」が促進され,食品廃棄物の種類
れており,
「発生抑制」,
「再生利用」および「減量」
が多様で分別が困難な状況下にある食品卸業や食品
の順とされている。再生利用等の取り組み実績をみ
小売業において「肥料化」が「飼料化」に勝る結果
ると,肥・飼料化等の「再生利用」が食品産業計の
を示している。また,外食産業にあっては,揚げ物
再生利用等の実施率(54%)の87%を占めており,
メニューから発生する廃食用油をBDF(バイオディ
よう
きょう
「発生抑制」および「減量」の取り組みは極めて低
ーゼルフィエル)等の燃料製造を含む再生利用が他
率である。本来は,食品廃棄物の発生抑制がなさ
業種に比較して高い比率を示しているのが特徴であ
れ,発生量を極限まで削減し,最少量の食品廃棄
る。また,高価な装置を必要とする「メタン化」は,
物を再生利用処理することが処理上の原則である。
わずかに食品製造業に導入が見られるのみであった。
発生抑制を促進するためには,製造過程では生
第1表 平成19年度における食品循環資源の再生利用等の実施率
再生利用等の実施率(%)
年間
発生量
(万t)
食品製造業
発生
抑制
(%)
減量
再生利用の用途別仕向割合(%)
(%)
再生
利用
(%)
肥料
飼料
油脂
油脂製品
メタン
493
81
5
3
73
41
50
3
6
食品卸売業
73
62
4
2
56
69
23
7
-
食品小売業
263
35
4
1
30
67
26
7
-
外食産業
305
22
3
1
15
28
31
40
-
食品産業計
1134
54
4
3
47
46
43
7
4
資料:「平成 19 年度食品循環資源の再生利用等実態調査報告」農林水産省統計部より計算
注:計と内容が一致しない場合があるのは,四捨五入のため
食品と容器
574
2009 VOL. 50 NO. 10
食品廃棄物の実態と食品ロス削減に向けて
せて再生利用総量は約800万トンとなる。これは,
□3.食品ロスの実態□
食品廃棄物発生総量の約2,200万トンの約36%が再
本来食べられるにもかかわらず食品廃棄物とし
資源化されていることになる。さらに,食品廃棄
て廃棄されている可食部分である「食品ロス」の
物発生総量の約2,200万トンの内約64%に相当する
実態は,第3図に示す通りである。
約1,400万トンが,焼却または埋め立て処分され
わが国において食用に向けられる農林水産物は,
ており,この割合の大部分は一般家庭から発生し
粗食料や加工用等として一般家庭と食品関連事業
ている食品廃棄物が占めている。
者へ,約9,100万トン(平成17年度実績)とされ,
これらが利用されて食品廃棄物が発生することに
□4.食品ロスの発生要因□
4.1 食品製造業・食品流通業(食品卸業・食
なる。一般家庭から発生している食品廃棄物約
品小売業)における食品ロスの発生要因 1,100万トンのうち,過剰除去・直接廃棄および
食べ残し等の「可食食品廃棄物(いわゆる食品ロ
食品製造業においては,製造過程での機械の不
ス)」は,200万~400万トンと推計される。また,
具合等により発生する規格外品には品質に問題が
食品関連事業者から発生する食品廃棄物は,一般
ないものが相当量含まれている。これらは,通常
家庭同等の約1,100万トンが発生しており,その
販売には支障があるとの理由で廃棄される場合が
うち約300万トンが飼料等の原料として製造副産
多くみられる。販売・流通過程では売れ残り,余
物等が有価取引されており,実質食品廃棄物は,
剰により食品ロスが発生しており,これらは需要
残りの約800万トンとなる。このうち,規格外品
と供給のミスマッチによるものであり,これらを
や売れ残りおよび食べ残し等として可食な食品ロ
増大させる背景には,食品の販売や取引における
スが300万~500万トンの範囲で発生している。以
商慣行等が考えられる。
上の結果から,一般家庭および食品関連事業から
発生している食品廃棄物の総量は,
約1,900万トンとなり,このうち
の食品ロス総量は,500万~900万
トンと推計される。したがって食
㘩ᢱଏ⛎㊂
ਁ㨠
㘩ຠ㑐ㅪ੐ᬺ⠪ ৻⥸ኅᐸ
品ロスが,粗食料や加工用等とし
㘩ຠᑄ᫈‛ 㘩ຠᑄ᫈‛
ਁ㨠 ਁ㨠
߁ߜน㘩ㇱಽ
食用向け量の約5~10%,また食 ᦭ଔߢขᒁಽ
㘩ຠᑄ᫈‛ 㨪 ਁ V
ਁ V ਁ V
品廃棄物総量の約30~50%を占め ߁ߜน㘩ㇱಽ
ていることになる。
㨪 ਁ V
✚ౣ↢೑↪㊂ これらの食品ロスを含む食品廃
ਁ㨠
棄物が肥料,飼料やエネルギー等 㘩ᢱ↱᧪ߩᑄ᫈‛ว⸘
ਁ㨠὾ළ࡮ၒ┙
の原料として再生利用されている ಣಽ㊂
ౣ↢೑↪㊂߁ߜน㘩ㇱಽว⸘ ਁ㨠
食品循環資源量は約500万トンで, ਁ㨠 ޿ࠊࠁࠆ㘩ຠࡠࠬ
㨪 ਁ㨠
て一般家庭と食品関連事業者への
前述した有価で資源化されている
製造副産物量の300万トンを合わ
食品と容器
第3図 食品廃棄物の実態および食品の発生量
575
2009 VOL. 50 NO. 10
シリーズ解説:食品産業における環境対策
4.1.1 食品の期限表示および納入期限・販売
や販売期限切れの食品は,流通業者自ら廃棄する
期限の設定による食品ロス
ケースの他,契約では買い取りとされているが慣
食品の消費期限や賞味期限は,「食品期限表示
行的な返品等により販売ルートから外れる商品も
の設定のためのガイドライン」(平成17年2月厚
ある。さらに,製造業者,流通業者ともに欠品を
生労働省・農林水産省)において理化学試験・微
生じないようにすることが販売戦略上重要である
生物試験等の客観的な指標に基づき設定された期
ことから,一定以上の在庫を抱えることがある。
限に食品の特性に応じた1未満の安全係数をかけ
在庫としても持ち越すことのできない日配品にお
て客観的な指標において得られた期限よりも短い
いても,短い納入期限(リードタイム)に欠品し
期間を設定することが基本であるが,商品販売戦
ないように対応するための見込み生産が行われる
略や商品開発のスピードに対応する等の観点から
が,天候や人出予測の見込み違い等が余剰食品の
必要以上に短く設定される場合がある。各社の客
原因となっている。
観的指標に基づく期限や安全係数が大きく異なる
4.2 外食産業における食品ロスの発生要因
同種の商品の場合においても,表示される賞味期
外食産業からの食品ロスの発生要因は,製造・
限が各社間で大きな差異はないという事例もある。
調理段階での仕込み過ぎと,利用客の食べ残しが
また,これとは別に流通業者が商品管理の必要
主なものである。
性から独自に,製造業者から流通業者に納入する
仕込み過ぎにより発生する食品ロスは,過去の
期限の「納入期限」,流通業者による店頭での「販
販売実績を踏まえて仕込み量予測を立ててはいる
売期限」さらに消費者が消費するまでの期間を,
が,催し物による人出予測や天候等通常と違った
商品の製造日から賞味期限までの期間をおおむね
状況による予想した販売量と実際の販売量のミス
3等分に分けあって設定される通称3分の1ルー
マッチによるものである。
ルと呼ばれるルール化がみられる。これらの納入
外食における食べ残しは,お客が食べきれる食
期限・販売期限によって,安全性や品質に問題な
材・量と実際に提供される料理の食材・量のミス
いにもかかわらず期限より店頭で販売される期間
マッチにより発生する。現在,お客が食べきれる
のサイクルが速まり,廃棄されるケースが増す傾
量を選択できるように食品の提供量を工夫する取
向にある。
り組みも行われているが,お客へのサービス内容
4.1.2製造業者と流通業者の取引や事業者の経
の丁寧な情報提供が必要である。
営戦略等による食品ロス
4.3 消費者による食品ロスの発生要因
製造業者は,商品を一定規模のロットで流通業
家庭からの食品ロスの要因は,皮を厚くむきす
者
(卸売業者)
に出荷するのが通常で,
卸売業者もこ
ぎるような「過剰除去」,作りすぎによる「食べ
のロット単位で在庫管理するが,
小売店舗からの発
残し」や期限表示を過ぎた食品を食卓に出さずに
注量は必ずしもロット単位ではない少量発注のた
そのまま捨てる「直接廃棄」である。特に,直接
めに卸売業者において売れ残り在庫の原因となる。
廃棄については,過度な鮮度志向も影響している
また,販売促進計画に伴う新商品の開発販売や
ものと考えられるが在庫を確認しないで同種の食
規格変更等により集中的な出荷や売り込みが,販
品を購入したり,冷蔵庫等の奥に仕舞い込んで期
売スペースや既存商品を店頭に並べにくいといっ
限切れになって廃棄される場合が考えられる。
た事情により店舗から撤去される定番カット食品
また,消費者の期限表示に関する理解が不十分
食品と容器
576
2009 VOL. 50 NO. 10
食品廃棄物の実態と食品ロス削減に向けて
なことが食品ロスを生む要因となっており消費期
減を量による表示から金額ベースに換算し,削減
限が過ぎたことと賞味期限が過ぎたことを同じよ
による経済効果で表示することによって社内での
うに捉えて食品を廃棄するといった回答が農林水
意識の向上を図る等,食品ロス削減に向けた具体
産省の食品ロス調査で多く,未だ期限表示の意味
的取り組み計画を早期に策定すべきである。
が十分理解されていないことを示している。
食品関連事業者並びに消費者一人ひとりが食品
とら
ロスの課題や削減のための取り組みの重要性につ
□5.最後に□
いて認識し,これまでの事業活動や食べものに対
製造・流通・消費のすべての食品関連事業者は,
する感謝の気持ちや大切さに対する意識が薄れが
発生した食品廃棄物について食品リサイクル法に
ちとなっている今日の生活の見直しを含め,食品
準拠して再生利用等に取り組む責務を負わされて
ロスの削減のために国民的行動が開始されること
いる。そのため,発生した食品廃棄物について再
を望むものである。
生利用等を実施することは多額の経費が必要であ
参 考 文 献
り食品関連事業者にとっては過度の負担となる。
食品リサイクル法の再生利用等の優先順位は,食
品廃棄物の発生抑制であり,製造・流通・消費の
各段階で発生する食品廃棄物を削減することは,
経費削減と省エネにつながることから重要な観点
である。
さらには,コストをかけて製造した食品が本来
食べられるにもかかわらず廃棄されている現状は,
結果として必要以上の食料が輸入されていること
になっているとすれば,食料自給率を引き下げて
いる要因の一つと考えられる。
そこで,食品関連事業者にあっては,自らの食
品ロスの実態や削減目標を明確にし,食品ロス削
1)農林水産省・食品ロスの削減に向けた検討会:食
品ロスの現状とその削減に向けた対応方向につい
て-食品ロスの削減に向けた検討会報告-,p.173,
(2008)
2)農林水産省:食品ロスの現状について,(2009)
3)農林水産省総合食料局食品産業企画課:食品リサ
イクル制度の見直しについて―食料・農業・農村政
策審議会総合食料分化会食品リサイクル小委員会,
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会食品リサイ
クル専門委員会最終とりまとめ,(2007)
4)農林水産省大臣官房統計部:農林水産統計「平成
19年度食品循環資源の再生利用等実態調査結果の
概要」,(2007)
5)農林水産省大臣官房統計部:食品ロス統計調査報告,
(2008)
6)農林水産省ホームページ:http://www.maff.go.jp/
シンポジウムのご案内
日本包装学会 第50回 シンポジウム
-食品事故(クレーム)の原因と対策-
◇日 時:平成21年10月30日(金)10:00~16:40
◇主 催:日本包装学会
◇会 場:きゅりあん 6F 大会議室
東京都品川区東大井5-18-1 TEL 03−5479−4100
◇参加費:維持会員15,000円,企業に属する個人会員
10,000円,その他は下記に問い合わせ下さい
◇申込・問合せ先:
日本包装学会「第50回シンポジウム」係
〒169-0073 東京都新宿区百人町1-20-3
バラードハイム703
TEL 03−5337−8717 FAX 03−5337−8718
◇定 員:100名
◇内 容
食品と容器
・「密封包装品におけるピンホールの検査技術」
ニッカ電測㈱営業部長 山中 明氏
・「輸送損傷を防止する緩衝包装設計について」
全国農業協同組合連合会 打田 宏氏
・「器具・容器包装の規格基準と試験方法」
東罐工業㈱紙容器販売本部 西 秀樹氏
・「食品包装における異臭クレームの分析と評価」
大和製罐㈱総合研究所 所長 加藤 寛之氏
・「日本生協連に寄せられる消費者苦情の現況と現場
における品質管理」
日本生活協同組合連合会 佐藤 邦裕氏
○詳細は日本包装学会ホームページを ご覧下さい。
(http://www.spstj.jp/event/sympo/index.html)
577
2009 VOL. 50 NO. 10
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用(第33回)
○解説○
麹菌の遺伝子資源・遺伝子解析
かしわぎ・ゆたか
東京農工大学大学院農
学研究科修了。農林水
産 省 食 品 総 合 研 究 所,
秋田県総合食品研究
所,(独)農研機構食
品 総 合 研 究 所 を 経 て,
現在東京農業大学応用
生物科学部醸造科学科
教授。
博士(農学)
柏 木 豊
落下して繁殖することがある。米麹には,コウジ
○1.はじめに○
カビを含む複数の微生物が混在して存在すること
こうじ
麹菌とは,コウジカビとも呼ばれ,菌類に属す
があるが,混入菌は麹の中で主体となる有用菌で
る糸状菌である。菌類は真核微生物であり,単細
はないので,コウジカビとは明らかに区別される。
胞で存在する酵母,糸状細胞で大きな子実体をつ
麹中に混在する一切のカビ類と区別して,コウジ
くるキノコとともに菌糸状の形態で生育するカビ
カビは麹菌と呼ばれている1)。麹菌は,味噌,醤
が含まれている。コウジカビは,生活環に有性世
油,酒の醸造に用いられるほか,酵素製剤の供給
代をもたない不完全菌類の一つとして分類されて
源としても用いられ,産業的に重要な位置を占め
おり,学名ではAspergillus属に含まれるカビであ
る微生物である。そこで,本稿では,微生物の遺
る。
伝子資源として最近行われた麹菌ゲノム解析研究
しょう
そ
醤油,味噌,清酒などの伝統的発酵食品や醸造
について紹介したい。
産業に使われているコウジカビは,明治時代初期
○2.麹菌の由来と品種○
に政府の御雇外国人教師として日本に滞在した
Herman Ahlburgが,わが国の米麹から初めて分
わが国の伝統的発酵食品である味噌,醤油,酒
離 し, 米 に よ く 繁 殖 す る こ と か らEurotium
などの醸造には,必ず麹菌が用いられている。醤
oryzaeと命名した。その後,このカビは有性生殖
油は日本農林規格において,清酒は酒税法におい
をしないことがわかり,
不完全菌としてAspergillu
て,必ず麹を用いることがうたわれている。また,
soryzae(Ahlburg)Cohnと改名された。
味噌は,麹の原料によって,米味噌,麦味噌,豆
米麹は,麹室などの管理された環境であるが,
味噌の区分があり,それぞれ麹菌を蒸した米,麦,
開放系の状態で造られるため,まれに大気中から
大豆に生育させて麹を造り,これを酵素源として
他の微生物が混入することがある。大気中には,
原料大豆を発酵し製品を製造している。さらに麹
クモノスカビ,ケカビなどのその他のカビ類が胞
菌は,麹漬物,魚介類を原料とした塩からの製造
子や微粒子に付着して浮遊しており,麹のなかに
にも広く利用されていることから,麹菌はわが国
食品と容器
578
2009 VOL. 50 NO. 10
麹菌の遺伝子資源・遺伝子解析
の食事の根底を支えているといえる(第1図)。
んどが種麹メーカーから種麹として供給されてい
味噌の醸造工程では,原料成分,タンパク質,
る。一部の発酵食品製造業では,自社製の種麹を
糖質,脂質がそれぞれ麹菌のプロテアーゼ,ペプ
保持し利用しているところがある。わが国の種麹
チダーゼ,アミラーゼ,リパーゼ等の酵素によっ
メーカーでは種麹の販売を全国的に展開している
て分解され,アミノ酸,ブドウ糖,脂肪酸,グリ
業者は6社である。これらの種麹業者は,自社内
セリンが生成される。味噌の発酵熟成中には,麹
に研究室を持ち種麹原菌の管理,出荷種麹の品質
菌酵素の反応と同時に,耐塩性酵母,乳酸菌が生
管理,新製品の開発を行っている。種麹の品種は,
育しアルコール,香気成分や乳酸を生成する(第
酒造用,味噌,醤油醸造用にそれぞれ適した性質
2図)。酵母,乳酸菌の香りや味の成分を生産す
のものがある。ほとんどの品種は,A. oryzae,
る働きは,麹菌の酵素によってブドウ糖,アミノ酸,
A. sojaeに属するが,一部ではA. tamariiが品種
脂肪酸などが生成されなければ十分に活かされな
として市販されている。一方,沖縄特産の泡盛,
い。すなわち,麹菌は原料成分を消化分解するとと
九州地方の焼酎 用の麹菌として,黒麹菌である
もに酵母,乳酸菌の活躍の場を整備する役割を担
A. awamori,A. saitoiなどの品種もある。これ
っている。酒造においても,清酒酵母のアルコール
らの品種は,種麹メーカーにより優良株の選抜や
発酵は,麹菌のアミラーゼによって米デンプンか
変異処理などによって育種されたものである1)。
らブドウ糖が生成され,これを原料として酵母が
このように,歴史的に食品として安全に食べら
アルコールを生産する。このように,発酵食品の
れてきたことから,アメリカ合衆国FDAは麹菌
製造では,麹菌の役割が大変に大きなものである。
をGRAS(Generally Recognized As Safe) の リ
ちゅう
麹菌の粗酵素粉末は「酵素の宝庫」であると言
㤕 ⩶
ේᢱ
われるように,麹菌は多種類の酵素を大量に生産
⊒㉂㘩ຠ
する能力を持つ。食品加工用アミラーゼ,プロテ
ᄢ⼺䋬☨䋬㤈
䉂䈠䋬㉟ᴤ
アーゼ,ペクチナーゼ等の食品用酵素や繊維工業
☨
ᣣᧄ㈬䋬὾䈤䉈䈉䋬䉂䉍䉖
用アミラーゼ,セルラーゼなどの酵素剤が,麹菌
㊁⩿
ẃ‛䋨㤕ẃ䈔䋩
から生産されている。麹菌は,発酵食品製造だけ
㝼੺㘃
Ⴎ䈎䉌
でなく工業的にも多く用いられており発酵産業全
第1図 麹菌と日本の発酵食品
般にわたって欠くことのできない位置をしめてい
る。
麹菌は,わが国の発酵食品の製造に長年月
࿑䋱 㤕⩶䋨䈖䈉䈛䈐䉖䋩䈫ᣣᧄ䈱⊒㉂㘩ຠ
原料: 大豆,米,麦,食塩
にわたって使われ続けてきた。酒造方法は,
タンパク質
奈良時代の朝廷において法令として存在して
糖
糖 質
があるほどで,わが国の麹菌は一千年もの歴
ペプチダーゼ
麹 菌
アミラーゼ
おり,味噌の記録は平安時代の延喜式に記載
脂肪酸
脂 質
が国では,種麹業界が種麹を保存管理し,商
食塩
乳酸菌
リパーゼ
史を持つ発酵食品の微生物である。また,わ
アミノ酸
ペプチド
プロテアーゼ
味
有機酸
香り
酵 母 アルコール
エステル
グリセリン
業的に営々と維持してきた伝統がある。
わが国で現在用いられている麹菌は,ほと
食品と容器
第2図 味噌醸造の微生物の働き
図2 味噌醸造の微生物の働き
579
2009 VOL. 50 NO. 10
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用
ストに掲載し,安全性を認定している。
選択に起因すると考えられている2)。現在,麹菌
麹 菌 の 近 縁 の カ ビ に は,Aspergillus flavus,
の全ゲノム配列解析が完了し,ゲノムDNAの全
Aspergillus parasiticusのようにカビ毒を産生する
配列が判明したことから,ゲノム配列を比較する
危険なカビも存在する。しかし,麹菌はアフラト
ことによって,近縁菌の判別への活用が期待され
キシンを産生しない。また,他の低毒性の物質を
ている。
作る麹菌は実用株としてほとんど利用されていな
○3.麹菌の酵素と遺伝子○
い。
これまで,麹菌とカビ毒産生菌との判別に関す
ゲノムとは,一つの生物の全遺伝情報の一式を
る研究が行われ,形態的特徴とカビ毒産生の相関
指す。すなわち,麹菌ゲノムは,麹菌が持ってい
関係が詳細に研究されてきた。この結果,一定の
るすべての遺伝子のワンセットということになり,
形態的特徴が関連することが浮き上がってきた。
麹菌の生命の設計図とも言える。麹菌が麹菌であ
しかしながら,形態的特徴は幅が大きくあり,分
るためには,菌体構成タンパク質,酵素タンパク
類,判別には培養,観察技術に高度の熟練が必要
質,代謝関連タンパク質,情報伝達タンパク質な
である。最近では,麹菌が属する糸状菌の分類に,
どの多数の機能性タンパク質が調和して働いてい
生化学的特徴,DNA相同性,遺伝子配列の解析
る。これらタンパク質の情報は,染色体DNAを録
技術を導入することが行われている。
音テープに見立てると,その上にACGTの塩基配
この結果,特定酵素マーカーの電気泳動を用い
列によって遺伝情報として記録されている。しか
た生化学的判別,DNA-DNAハイブリッド形成*,
し,この遺伝情報は所々でイントロン(介在配列)
リボゾームRNA遺伝子塩基配列の面から,麹菌
と呼ばれる配列で分断されている。この遺伝情報
A. oryzaeとA. flavusはほぼ同一のクローン群に
は,イントロン部分をスキップしてメッセンジャ
属 す る こ と が わ か っ て き た。A. oryzaeは,A.
ーRNA(mRNA)に一旦 転写されたのち,タン
flavusの単系統の一部をなし,選抜育種によって
パク質合成装置であるリボゾームによって翻訳さ
派生した一群であり,形態的特徴である,オリー
れ,特有のアミノ酸配列を持つタンパク質が生合
ブ色のコロニー色調,羊毛状コロニー表面,非ア
成され機能を発現する。染色体DNAに記録され
フラトキシン(AF)産生は,育種における強い
ているゲノム情報はタンパク質の設計図と言える
たん
が,そのままでは機能を発揮することはな
ࠗࡦ࠻ࡠࡦ
ࠛࠠ࠰ࡦ
ࠥࡁࡓ&0#
く,転写,翻訳過程の後に酵素タンパク質
などの機能分子が合成されることによって,
ォ౮
ࡔ࠶࠮ࡦࠫࡖ࡯40#
はじめて生体機能を発現する(第3図)。
AAAAAA
AAAAAAAAAA
さらに最近では,染色体DNAの非翻訳領
⠡⸶
域にコードされている短鎖長RNAが,転
࡝ࡏ࠰࡯ࡓ
写産物の調節に機能していることがわかり,
転写制御因子の結合領域が存在することも
↢૕⚵❱䋬↢૕ᯏ⢻
明らかになり,染色体DNAはタンパク質
の設計図としてだけではなく,発現調節の
Ⱞ⊕⾰䇮㉂⚛
࿑䋳 㤕⩶䉭䊉䊛ᖱႎ䈱⊒⃻䈱ᵹ䉏
機能をも担っていることがわかってきた。
第3図 麹菌ゲノム情報の発現の流れ
食品と容器
580
2009 VOL. 50 NO. 10
麹菌の遺伝子資源・遺伝子解析
供試菌株は,Aspergillus oryzae RIB40株を共
○4.麹菌のEST解析○2,3)
通して用い,ふすま麹,富栄養液体,貧栄養液体,
麹菌の酵素遺伝子などの遺伝情報を入手すれば,
分生子発芽,高温富栄養液体,アルカリ性培地等
バイオテクノロジー技術を用いて産業への利用が
の異なる生育条件にて培養を行い,得られた菌体
期待される。わが国の醸造発酵産業には,新しい
から定法に従いmRNA抽出,cDNA調製,ESTラ
麹菌利用技術の開発が求められている。海外企業
イブラリーを作製し,得られたESTクローンの塩
等は,麹菌の遺伝子特許に強く注目しているため,
基配列をランダムに決定した。富栄養液体培養:
これに対抗する必要が考えられ,ゲノム解析が緊
2,693,高温培養:2,072,貧栄養液体培養:1,953,
急を要する研究となった。
マルトース炭素源培養:932,アルカリ液体培養:
染色体DNAの全塩基配列を解読するゲノム配
751,固体培養:5,358,発芽分生子:1,049のEST
列解析は,多大の時間,労力,資金が必要とされ
配列が解析され,約1年6カ月の期間で得られた
るため,より効率的な方法としてEST配列解析**
ESTクローン総数は約17,000個に達した。EST配
が先行して実施される。ゲノム上にコードされて
列データのうち同一配列を持つクローンを結合し
いる遺伝子情報はイントロン配列で分断されてい
グループ化するクラスタリング操作を行った。そ
る。そこで,タンパク質に翻訳される意味のある
の結果,約17,000個のESTクローンは約6,000個の
情報のみをmRNAとして取り出せば(第3図),
クラスターにまとめられた。
発現遺伝子をcDNAとして効率的に得ることがで
クラスターの共通配列をコンティグというが,
きる。
得られたコンティグの塩基配列を用いて,公開デ
このEST解析から得られたデータを用いれば,
ータベースに対して相同検索を行った結果,約
多く発現する遺伝子はクローン数が多く,低発現
49%が既知遺伝子とは相同性を持たないことがわ
の遺伝子は少ないクローン数となり,クローン数
かった。これらの遺伝子は新規のものであり,麹
が遺伝子の発現頻度に対応している。また,得ら
菌に特異的な遺伝子である可能性が高く,産業上
れた塩基配列は,ゲノム上への遺伝子のマッピン
有用なものが含まれていることが期待される。
グ,新規有用遺伝子のスクリーニングにも利用す
得 ら れ たEST塩 基 配 列 デ ー タ は,DDBJ/
ることができる。得られたcDNAはcDNAマイク
GenBank/EMBLならびにインターネット上にて
ロアレイの作成への利用が可能となる。
そこで,わが国では国税庁醸造研究所
㤕⩶ో䉭䊉䊛㈩೉⸃ᨆ
(現,独立行政法人酒類総合研究所),工業
Aspergillus oryzae RIB40ᩣ
䊖䊷䊦䉭䊉䊛䉲䊢䉾䊃䉧䊮ᴺ
技術院生命工学工業技術研究所(現,独立
行政法人産業技術総合研究所),農林水産
ᄢⷙᮨ䉲䊷䉬䊮䉴⸃⺒䋺5䌾7
ᄢⷙᮨ䉲
䉬䊮䉴⸃⺒䋺5䌾7 X genome
省食品総合研究所(現,独立行政法人農研
機構食品総合研究所),東京大学,東京農
工大学,東北大学,名古屋大学,愛知県食
工技センターが分担し,企業等からの協力
ᨴ⦡૕DNA
䊤䊮䉻䊛ᢿ ൻ
䋨ᢙජਁႮၮ䋩 (1000~2000Ⴎၮ)
を得て,1998-1999年の期間で麹菌EST配
࿑䋴 㤕⩶䉭䊉䊛㈩೉⸃ᨆ䈱᭎ⷐ
第4図 麹菌ゲノム配列解析の概要
列解析計画が行われた。
食品と容器
䉝䉾䉶䊮䊑䊦
䋨㊀䈰ว䉒䈞䇮ᢛ೉䋩
䉮䊮䊏䊠䊷䉺ಣℂ
581
2009 VOL. 50 NO. 10
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用
公開されている(http://www.aist.go.jp/RIODB/
数百万塩基の長さを持つ約20個のスーパーコンテ
ffdb/welcomej.html)。本研究から,固体培養時
ィグ(超結合配列)が得られた。そこで,染色体
特異的に発現する転写制御遺伝子atfB,高温培養
へのスーパーコンティグの物理マッピングを行う
時に特異的に誘導される遺伝子Aohsp30等の有用
必要が生じた。麹菌ゲノム解析コンソーシアムで
遺伝子が単離された。
は,染色体をパルスフィールド電気泳動によって
分離し,サザンハイブリダイゼーションによりマ
○5.麹菌のゲノム解読○
ッピングを行った。また,蛍光標識を用いたオプ
麹菌EST解析に引き続き,ゲノム配列解析がプ
チカルマッピング技術を用いて染色体上への物理
ロジェクト研究として行われた。麹菌ゲノム解析
マッピングを完成させた。その結果を見ると,コ
コンソーシアム(代表:財団法人日本醸造協会)
ンピューター上で作成され,結合された結合配列
が設立され,
(独)製品評価技術基盤機構(NITE)
は完全に正確な染色体配列であり,ほとんど間違
との共同研究によって,2001年に麹菌の全ゲノム
いがない高精度であった。本研究では,当初から
配列解析プロジェクトが開始された。供試菌株は
完全なWGS法を用いて約37Mbという巨大なゲノ
A. oryzae RIB40株として,ホールゲノムショッ
ムをほぼ完全に解読した4)。
トガン(WGS)法***によって,ゲノム配列解析
さらに,DNAシーケンスデータ上に存在する遺
が行われた(第4図)
。NITEのDNAシーケンスセ
伝子領域を産総研にて開発されたGeneDecoder
ンターにおいてシーケンス解読作業が行われた。
プログラムによって推定し,この結果,全ゲノム
得られたデータはコンピューター上でアッセンブ
配列は約37Mb(37,000,000塩基対),推定遺伝子
ル(結合)された。
しかし,
ゲノム上にはATが多い
数12,000の値が得られた。推定遺伝子の機能アノ
繰り返し配列領域,
セントロメア領域****が存在し,
テーション*****は,コンソーシアムの研究者がす
一般的にWGS法では完全に連結したデータの取得
べて手動にて確認修正作業を行い,精度を高めた。
は困難であるとされている。最終的にそれぞれが
この結果,染色体8本,ゲノムサイズ約37Mbの
(Mb)
ᨴ⦡૕⇟ภ
Ch. 1
Ch. 2
5.7
4.4
3,043 b
6.4 Mb
2.0
4.2
6.2 Mb
2.7
2.3
Ch. 3
2.1
Ch. 4
4.6
1.9
2.7
2.4
Ch. 5
5.0 Mb
4.8 Mb
2.0
4.4 Mb
0.5
1.8
Ch. 6
3.5
Ch. 7
Ch. 8
PFGE
ᨴ⦡૕㔚᳇ᵒേ
rRNA 0.3
0.6
1.3
1.8
2.5
2.0
ࡒ࠻ࠦࡦ࠼࡝ࠕ
4.1 Mb
0.01
29,202 b
3.4 Mb
3.3 Mb
㈩೉ࠡࡖ࠶ࡊ
‛ℂ⊛ࠡࡖ࠶ࡊ (linked)
࠮ࡦ࠻ࡠࡔࠕ
࠹ࡠࡔࠕ
‛ℂ⊛ࠡࡖ࠶ࡊ (unlinked)
第5図 麹菌染色体の概要
࿑䋵 㤕⩶ᨴ⦡૕䈱᭎ⷐ
食品と容器
582
2009 VOL. 50 NO. 10
麹菌の遺伝子資源・遺伝子解析
麹菌全ゲノム配列が明らかになった(第5図)。
において,野生に近いプロテアーゼ数を持つこと
が必要であったためと考えられている。一方では
○6.麹菌ゲノムの特徴○
麹菌Aspergillus oryzaeのゲノム解析
5)
A. nidulans,A. fumigatusでは生育環境が限定さ
と同時
れているため,不要な遺伝子が脱落する方向に進
6)
に,A. nidulansのゲノム解析 ,A. fumigatusの
化したものと考えられる4)。
ゲノム解析7) が完了した。ゲノムサイズを比較
このほか,ペクチナーゼ,P450など分解酵素
す る と,A. oryzae:37Mb,A. nidulans:30Mb,
の遺伝子は,やはり麹菌が多く保有する傾向があ
A. fumigatus:28Mbであった。また,推定され
り,麹菌は野生型に近いゲノム構造を持ち続けな
た 遺 伝 子 数 は, そ れ ぞ れ12,000,9,300,9,000で
がら,今日まで生き続けたものと考えられる。
あ り, ほ ぼ ゲ ノ ム サ イ ズ に 比 例 し て い た。A.
○7.おわりに-麹菌
利用の展望-○
nidulansは,歴史的に糸状菌遺伝学の研究対象で
あって実験室の中で保存されてきたものである。
A. fumigatusは,ヒトに日和見感染する病原性カ
麹菌は食品,発酵工業など産業上重要な微生物
ビであり,人体という恒常的な環境で生育するも
でありながら,有性世代が未発見である等の理由
のである。これに対して,A. oryzaeは,醸造,
から,意外にも遺伝学的解析等の研究が進んでい
発酵に実用的に用いられ,麹として自然開放系に
るとは言えない。農作物や家畜は交配によって
て 穀 物 な ど に 培 養 さ れ,A. fumigatus,A.
数々の品種が育成されてきた。酵母も交配によっ
nidulansに比べて遙かに過酷な条件で生育する。
て品種改良ができ,交雑法によって遺伝解析が行
このため,生育環境に対応するための遺伝子を保
われてきた。
有し,ゲノムサイズも大型化の方向に進化したも
近年,ヒトゲノムに代表されるように生物のゲ
のと考えられている(第1表)。
ノム解析研究が次々と行われ,医療や産業利用へ
また,酵素遺伝子の面から比較を行ってみると,
期待されている。特に実用麹菌の遺伝子情報は,
醸造発酵において重要なプロテアーゼの推定遺伝
産業的に価値の高い情報である。麹菌のゲノム情
子の数を比較すると,プロテアーゼ遺伝子総数は,
報に含まれている未知遺伝子の中から,画期的な
それぞれ135,90,99であり麹菌が50%ほど多い(第
⴫䋱 㤕⩶䈫㘃✼⩶䉭䊉䊛䈱Ყセ
2表)。これも,実用的な醸造発酵条件では麹菌
活性を有する酵素の遺伝子を,先に手中に収めら
に求められる形質の一つであり,実際の生育環境
る。
れれば,産業的に有利な位置を占めることができ
第1表 麹菌と類縁菌ゲノムの比較
䉭䊉䊛䈱․ᓽ
䉭䊉䊛ో૕
䉭䊉䊛㈩೉㐳 (bp)
G+C฽㊂ (%)
ផቯ ㆮવሶᢙ
ផቯㆮવሶᢙ (100䉝䊚䊉㉄એ਄ )
A. nidulans
A. fumigatus
A. oryzae
30,068,514
50
9,541
9,396
27,980,910
49
9,926
9,009
37,047,050
48
14,063
12,074
ផቯㆮવሶ㈩೉ 䈱․ᓽ(100䉝䊚䊉㉄એ਄)
Coding (%)
ᐔဋㆮવሶኒᐲ (1 gene every n bp)
ᐔဋㆮવሶ㐳 (ਛᄩ୯)
ㆮવሶ䈅䈢䉍 ᐔဋ䉣䉪䉸䊮ᢙ
50
3,151
1,547 (1,868)
3.6
49
2,938
1,389 (1,644)
2.8
45
2,613
1,152 (1,414)
2.9
食品と容器
583
2009 VOL. 50 NO. 10
シリーズ解説:食品加工における微生物・酵素の利用
第2表 麹菌のプロテアーゼ系酵素遺伝子
EC number
A. oryzae
䉣䉨䉸䊕䊒䉼䉻䊷䉷
䉝䊚䊉䊕䊒䉼䉻䊷䉷
3.4.11.䉳䊕䊒䉼䉻䊷䉷
3.4.13.䉳䋨䊃䊥䋩䊕䊒䉼䉳䊦䊕䊒䉼䉻䊷䉷
3.4.14.䉶䊥䊮-䉦䊦䊗䉨䉲䊕䊒䉼䉻䊷䉷
3.4.16.䊜䉺䊨䉦䊦䊗䉨䉲䊕䊒䉼䉻䊷䉷
3.4.17.䊕䊒䉼䉻䊷䉷䋨䈠䈱ઁ䋩
⸘
䉣䊮䊄䊕䊒䉼䉻䊷䉷
Oryzin
3.4.21.63
Aorsin
3.4.21.Kexin
3.4.21.61
ATPଐሽ䊒䊨䊁䉟䊅䊷䉷
3.4.21.51
䉲䉴䊁䉟䊮䊒䊨䊁䉟䊅䊷䉷
3.4.22.䊡䊎䉨䉼䊮․⇣⊛䊒䊨䊁䉟䊅䊷䉷
3.4.22.PalB
3.4.22.䉝䉴䊌䊦䊁䉞䉾䉪䊒䊨䊁䉟䊅䊷䉷
3.4.23.18
䊕䊒䉴䉺䉼䊮㕖ᗵฃᕈ䊒䊨䊁䉟䊅䊷䉷 3.4.23.19
䉰䉾䉦䊨䊥䉲䊮
3.4.24.37
䊜䉺䊨䊒䊨䊁䉝䊷䉷
4.2.24.䉟䊮䉴䊥䊅䊷䉷
3.4.24.䈠䈱ઁ
3.4.99.⸘
ว⸘䋨䉣䉨䉸䋫䉣䊮䊄䊕䊒䉼䉻䊷䉷䋩
A.nidulans
A.fumigatus
19
3
9
12
12
14
69
15
1
6
5
7
10
44
14
2
6
8
7
11
48
2
2
1
6
4
7
1
11
3
3
12
4
10
66
135
2
1
1
6
3
7
1
7
2
0
5
4
7
46
90
2
1
1
6
4
7
1
7
2
1
8
4
7
51
99
麹菌遺伝子についてこれまで多くの研究がされ
性質や構造の解明を行うことができる。すなわち,
てきたが,酵素等のタンパク質からの研究には限
新たな食品素材や食品製造工程の開発に応用でき
度がある。酒造で重要なアミラーゼ,醤油醸造で
るかもしれない。
重要なプロテアーゼ,ペプチダーゼ等の一部の酵
また,麹菌ゲノム上の遺伝子情報がすべて入手
素についての研究は詳細に行われていたが,発現
できるため,それぞれの遺伝子の発現状況をマイ
量が少ない酵素タンパクの研究は困難であった。
クロアレイ技術等によって網羅的に解析すること,
麹菌ゲノム解析の結果から,これまで存在すら知
いわゆるトランスクリプトーム解析が可能となる。
られていなかった数多くの遺伝子の存在が明らか
これまで,発酵状況の解析は酵素活性やタンパク
になり,プロテアーゼ遺伝子と推定されるものだ
質生産量などの定量により推定されてきた。網羅
けでも135個もの遺伝子が存在する。このうち大
的な遺伝子発現解析によって,発酵中のステージ
部分は発現量がきわめて少ないか,通常の環境で
においてどの遺伝子が発現するかを知ることがで
は発現していないであろうと考えられる。この中
きる。その遺伝子群の中で特徴ある遺伝子を指標
には,全く新しい機能を有するものや特異的反応
とすれば発酵中の麹菌の状態を推定することがで
を触媒するものの存在が期待される。微量にしか
き,発酵の工程管理などへの応用が考えられてい
得られなかった酵素タンパクでも,遺伝子をクロ
る。このように,単独の酵素,遺伝子の解析だけ
ーニングすれば大量に入手することが可能となり,
では判然としなかった菌の生育状態を遺伝子発現
食品と容器
584
2009 VOL. 50 NO. 10
麹菌の遺伝子資源・遺伝子解析
によって把握する新しい測定技術が考えられてい
くなるほどハイブリッド形成がしにくくなる。
る。ゲノム情報解析によって得られた膨大な情報
** EST配列解析とは,麹菌が実際に発現している遺伝
は,これまでできなかった新しい測定法,発酵法
子をcDNA(相補的DNA)としてとらえ,その末端塩基
の開発の基礎として,今後の応用が期待されてい
配列(EST:expressed sequence tags)を決定するもの
る。
である(第2図でmRNAを鋳型としてcDNAを作成し,
本稿の研究は,麹菌ゲノム解析コンソーシアム
その配列を決定する)。
によって行われたものである。また,麹菌EST解
*** ホールゲノムショットガン法とは,ゲノムDNAを1
析において,多大な協力をいただいた種麹組合,
~2kbに断片化し,断片化されたゲノムDNAクローン
全国味噌工業協同組合連合会に深く感謝いたしま
の塩基配列をランダムに解読し,断片配列を連結してゲ
す。
ノム全体の塩基配列を構築する方法である。
**** セントロメアとは,染色体が有糸分裂により分配さ
* DNA-DNAハイブリッド形成とは,比較しようとする
れる際に必要なDNA配列である。ATを多く含むくり返
染色体DNAを混合して加熱し,1本鎖にした後に冷却し,
し配列である場合が多い。
ハイブリッドとして2本鎖が再形成する温度を測定して,
***** 機能アノテーションとは,ゲノムDNA配列中に存
DNA配列の近縁性を調べる方法である。配列の相違が多
在する遺伝子に付加した機能や名称の注釈である。
参 考 文 献
1)村上英也編著,「麹学」,日本醸造協会(1986)
Archaer, D.B., Bennett, J.W., Bhatnagar, D.,
2)北 本勝ひこ他,分子麹菌学―麹菌研究の進展―,
Cleaveland, T. E., Fedorova, N.D., Gotho, O.,
日本醸造協会(2003)
Horikawa, H., Hosoyama, A., Ichinomiya, M.,
3)Akao, T., Sano, M., Yamada, O., Akeno, T., Fujii,
Igarash, R., Iwashita, K., Juvvadi, P.R., Kato, M.,
K., Goto, K., Ohashi-Kunihiro, S., Takase, K.,
Kato, Y., Kin, T., Kokubun, A., Maeda, H.,
Yasukawa Watanabe, M., Yamguchi, K., Kurihara,
Maeyama, N., Maruyama, J., Nagasaki, H.,
Y., Maruyama, J., Juvvadi, P.R., Tanaka, A., Hata,
Nakajima, T., Oda, K., Okada, K., Paulsen, I.,
Y, Koyama, Y., Yamaguchi, S., Kitamaot, N., Gomi,
Sakamoto, K., Sawano, T., Takahashi, M., Takase,
K., Abe, K.,Takeuchi, M., Kobayashi, T., Horiuchi,
K., Terabayashi, Y., Wortman, J.R., Yamada, O.,
H., Kitamoto, K., Kashiwagi, Y., Machida, M.,
Yamagata, Y., Anazawa, H., Hata, Y., Koide, Y.,
Akita, O. Analysis of expressed sequence tags
Komori, T., Koyama, Y., Minetoki, T., Suharnan, S.,
from the fungus Aspergillus oryzae cultured
Tanaka, A., Isono, K., Kuhara, S., Ogasawara, N.,
under different conditions. DNA Research, 14,
Kikuchi, H., Genome sequence and analysis of
47-57(2007)
Aspergillus oryzae. Nature, 438, 1157-1161(2005)
4)Machida, M., Asai, K., Sano, M., Tanaka, T., Kum-
5)http://www.bio.nite.go.jp/dogan/MicroTop?GENOM-
agai, T., Terai, G., Kusumoto, K., Arima, T., Akita,
E_ID=ao
6)http://www.broad.mit.edu/annotation/genome/aspe-
O., Kashiwagi, Y., Abe, K., Gomi, K., Horiuchi, H.,
Kitamoto, K., Kobayashi, T., Takeuchi, M.,
rgillus_nidulans/Home.html
Denning, D.W., Galagan, J.E., Nieman, W.C., Yu, J.,
食品と容器
7)http://www.tigr.org/tdb/e2k1/afu1/
585
2009 VOL. 50 NO. 10
○
食の遠近画法
連載エッセー
2009 年9月1日,消費者庁が発足した。「消費
シチズン・コンシューマー
ご
みょう
とし
者行政の司令塔として,消費者の安全,安心にか
はる
五 明 紀 春
かわる問題について幅広く所管し,消費者の視点
(女子栄養大学教授)
から監視する強力な権限を有する消費者庁を来年
「ゴミ屋敷」のテレビ報道に,ときどき目を剥
度に立ち上げ,早急に事務作業に着手する」(福
くことがある。文字通り足の踏み場もないほどに
田首相・当時)としていたものである。
ゴミを溜め込んでは騒ぎを起こす人が世間には結
「消費者は王様」「消費者主権」「消費者主導」
構いるらしい。その家の主は苦行僧,隠遁者の風
の殺し文句を聞いて久しいが,消費者庁設置で消
情であるのも興味深い。大量消費,大量廃棄の現
費者はさらに強固な防塁を築いたことになる。
代社会にあっては,一消費者による痛烈な風刺と
「消費者」という概念が一体いつ生まれたのか
見えてくるからこれも面白い。
詳らかにしないが,いつの時代,社会にあっても,
自分の生活ゴミを家の中に廃棄するだけでな
市場で堂々と投票権を行使する消費者がかつて弱
く,近所のゴミまで持ち込んで,その中に埋もれ
い存在であったことなどあろうか,というのが筆
て暮らす人の心情はむろん計りがたい。しかし,
者の密かな疑念である。人類史に市場が登場して
自分の出すゴミで,環境に負荷をかけまいとの,
からというもの,とっくに消費者は王様であった
その家の主の涙ぐましい孤独の闘いと見て取るこ
し,主権者だったのではないかという疑問である。
とも出来よう。それがはた迷惑な常軌を逸した努
「消費者」という名の投票権者は,毎日,時々
力であったとしてもである。
刻々,リアルタイムで市場に,圧倒的な権力をもっ
知人のお茶の師匠の家は,
「ゴミ屋敷」とは正反
て裁定を下しているのではないのか。不祥事が暴
対である。どの部屋も,隅々まで見え,至ってす
露されれば,どんなブランド企業も有無を言わさ
がすがしい別世界である。家具・調度品の類は最
ず市場から強制的に退去を命令されることは周知
小限,ゴミの片鱗もない清浄空間である。たいて
のことである。こうして,消費者は,日々の投票
いの家にはある「始末に困る品々」がまったく無
行動を通じて,世の中を「変革」しているとも言
い光景は,かえって人間味に乏しいのも止むを得
える。
ない。これも師匠の哲学・信条によるものである
投票権者の権利は守られなければならないが,
と承知はしていても,筆者の理解は到底届かない。
権利には応分の責任が伴うことは当然であろう。
当然,師匠の消費行動は細心である。まず,ゴ
実際,すでに 1984 年には国際消費者機構(注)は,
ミも含めて形を残すものは極力購入しない。仮に
八つの権利に加えて,「消費者の責任」として,
形ある物を購入する場合は,あらかじめ棄てる品
①批判②行動③社会への関心④環境への配慮⑤連
を定めておくのである。こうして部屋内の物の数
帯,の五つを挙げている。
は,何年経っても減りも増えもしない定常状態が
(注)国際消費者機構(Consumers International)
保たれるというわけである。どこか浮世を離れた
1960 結成(ロンドン)。約 90 ヶ国以上の団体が加盟。
尼僧の暮らしを彷彿させる。
日本消費者協会,全国消費者団体連絡会が正会員。国
筆者も含めて,世間一般の消費者はこの二つの
民生活センターは政府機関連絡会員。
世界の中間に住んでいる。時々,大掃除をしない
○
では済まない程度には「ゴミ屋敷」となるのであ
筆者の近隣に大型店が進出して十年,おかげで
る。
旧来の懐かしい商店街がほとんど姿を消してし
食品と容器
586
2009 VOL. 50 NO. 10
まった。最近,その大型店の至近距離に別の大型
○
店の建設工事が急ピッチで進んでいる。いよいよ
食料安全保障が叫ばれて一世代も経つ。この間
大型店同士のすさまじい潰しあいが始まる気配で
にも食料自給率は低下の一方をたどり,世界最大
ある。枯れ尽くした荒野で二頭の巨獣が血みどろ
の農産物輸入国でありながら,米の減反政策は依
のサバイバル闘争を始めるだろう。
然続いている。エネルギーベースでは,国民の三
2000 年「大店法改正」による規制緩和は,感
分の一も養えない事態は放置されたままである。
傷に浸る暇もなく,町の形をつぎつぎ激変させて
一億人が日々薄氷を踏みながら生活している,と
しまった。これは全国至るところで繰り広げられ
いってもよいであろう。
ている光景にちがいない。蓄積された歴史も文化
この結果を農業政策の失敗に帰することは容易
も生活も朝露のように消えてしまうことに,誰し
であるが,その過半は「消費者の責任」にも求め
も複雑な思いにとらわれるだろう。すべての人か
られるのではないだろうか。国際価格より高い自
ら,郷愁の拠り所を奪い棄ててしまうのだから。
国農産物を消費者が甘受しない限り,「薄氷」か
どうしてこんな風に事が運んで行くのだろう
ら脱することは困難であろう。つまり,食料安全
か。それは法改正による規制緩和のせいでもなく,
保障において求められる「消費者の責任」が問わ
大型店経営者のせいでもない。絶対的な権力を行
れねばならない。当然のことながら,そこには応
使する消費者の投票行動の結果である。しかし,
分の自己犠牲が伴う。「消費者の利益とは何か」
消費者個々にとっては,決して幻惑された選択で
の再定義の求められる所以である。
はない。・それは慎重に考え抜かれた賢明かつ合
その上,供給熱量の三分の一という大量の食料
理的な投票行動と見なければならない。巨獣を倒
が日々廃棄され,国全体が「ゴミ屋敷」になって
すのもまた,消費者一人一人なのである。
いる。異常な光景である。流通システムにその原
したがって,駅前商店街をゴースト通りに変え
因を求めるのは容易である。しかし,責めの過半
てしまうのも,町から夏祭りを消してしまうのも,
は,消費者自身にあることは明らかであろう。
すべては消費者の「社会変革行動」によるものと
いったい,わが国ほど,「消費者の責任」が強
しなければ辻褄が合わない。
く求められている国はないのではなかろうか。裏
その強大な権力を日々行使して,自らの生活空
返せば,筆者も含めて,「消費者の責任」を忘れ
間を破壊して止まない消費者が,一切の責任から
た能天気な消費者が大勢いるということである。
免れているというわけにはいかない。というのが,
消費者が「消費者の責任」を果たすことによっ
国際消費者機構「消費者の責任」である。これは,
て,食料をめぐる今日の難局を乗り切ることがで
「もっぱら守られ救済される弱き消費者」という
きる,とも言えよう。「社会変革の担い手として
思い込みが虚構であることをいみじくも指摘して
の消費者」に消費者が目覚める時が来ているのか
いるのである。
もしれない。
責任には,何がしかの自己犠牲が求められる。
○
利便の陰で失われているものへの洞察が必要であ
米国オバマ大統領は,国民の社会参加のあり方
る。「消費者の利益とは何か」の再定義が求めら
として,従来のボランテイア活動,コミュニテイ
れるであろう。その投票行動が社会の変容をもた
活動に加えて,Responsible Consumer(責任あ
らすとしたら,どのような方向に向かって投票権
る消費者),Citizen Consumer(市民消費者)を
を行使するか,は重大な消費者の責任・使命とも
呼びかけている。消費者こそが社会を変革する担
言えるだろう。
い手である,とのメッセージであろう。
食品と容器
587
2009 VOL. 50 NO. 10
食品ナノテクノロジーに関する世界の規制政策
Food Technology(U.S.A.)24(’09・5)
文献 №5490
世界の規制当局によるナノ科学/技術の食品へ
現時点でのnanomaterials(NMs)の特性と健康/
の応用に関する提言・政策が次々に発表されてい
環境リスクに関する知識をまとめるよう求めた。
る。本稿の目的は,現在および将来のナノテクノ
これを受けCCAは,NMs導入によるリスクにつ
ロジー応用について,各国の法的視点を踏まえた
いて包括的な結論を出すには知識が限定的すぎ,
理解の一助とすることである。
一方でNMs利用が現管理体制で対処できないほ
アメリカ
どの危険性をはらんでいる確証は得られなかった
食品・医薬品局(FDA)が連邦食品・医薬品・
との見解を示した。
化 粧 品 法(Federal Food, Drug, and Cosmetic
保健省は公衆衛生局や保健研究機構と共同で情
Act:FFDCA)により食品安全管理を担当する。
報を集め,追加的規制を要する分野を特定し,ナ
2006年,ナノスケールの素材を使った安全で
ノテクノロジー関連問題を議論するフォーラムと
FDAの基準を満たす製品開発の継続に向けてナ
しても機能している。環境省からは環境保護法注
ノテクノロジー調査特別委員会
(Nanotechnology
意書の形で出版が予定され,2008年中にNMs食
Task Force)を新しく設立した。
品製造または輸入にかかわった対象者に情報提供
同委員会は2007年に報告書を発表し,その中で
の義務が生じる。対象外の関係者にも別途協力を
ナノテクノロジーを活用またはナノサイズの素材
求め,NMs関連規制の枠組み確立への貢献が期
を含む食品の安全性と現行法の存在意義,および
待されている。
安全性確認のための科学的根拠について考察して
EU
いる。報告書では現在のところ,市場導入前の新
EUではNMs利用食品/飼料の安全性について
製品認可に関しては,FDA当局が柔軟に対応で
調査を行うヨーロッパ食品安全委員会(European
きているとしている。しかし個別の法的対処が必
Food Safety Authority:EFSA)を設立した。消
要な場合に備え,業界に対して当局が提供する専
費者の安全・公衆衛生・環境に関する問題には保
門的知見を研究開発の早い段階で取り入れ,新技
健・消費者保護総局の各委員会も取り組む。この
術に課せられ得る規制と認可に際して必須のデー
うち新しい健康阻害要素を扱う科学委員会
(Scientific
タを知っておくよう求めている。
Committee on Emerging and Newly Identified
製造現場の安全性に関しては国立職業安全健康
Health Risks: SCENIHR)は広範かつ複雑な要リ
研 究 所(National Institute for Occupational
スク管理事項を担当している。
Safety and Health:NIOSH)が遺伝子操作ナノ粒
EU域内各国間の規制格差分析が行われ,現行
子にさらされる可能性がある従業者の医学的調
のリスク管理体制の基本原則はナノテクノロジー
査・危険性監査について,本年2月に中間指針を
の食品・飼料利用についても応用可能と結論づけ
発表した。
たが,毒性/曝露検査の方法には修正が必要とし
カナダ
た。EFSA科学委員会は本年,リスク管理がしに
カナダ保健省はカナダ学術会議(Council of Can-
くい場合として(1)特徴づけ,探知,遺伝子操作
adian Academics:CCA)に対し,法整備のため,
ナノ素材(engineered nanomaterials: ENM)測
食品と容器
588
2009 VOL. 50 NO. 10
定が困難,(2)毒物動力学・毒物学的観点からの
新化学物質の市場導入防止を目的としている。製
情報不足を挙げている。さらに特定のENMにつ
造の物理的形態および素材の性質が応用形態との
いては,リスク管理体制の確立より個別の評価を
関連で詳述されていなければ,市場導入は許可さ
優先させるよう勧告している。
れない。REACHは化学的組成のほか,全工程に
規制格差については,ナノテクノロジーの利用
わたる物理的状態・結晶構造・粒子次元の説明義
を既存の食品一般法や「新素材」法により適法と
務を課すという点でNMsにも応用可能である。
すれば解決可能とされた。後者は1997年5月15日
SCENIHRによる最近のナノテクノロジー見解
以前にEU域内で大量消費されていなかった食
は,NMsリスク管理のため必要な知識の不足を
品・食品素材,あるいは食品・食品素材の加工法
指摘した。NMsの安全検査に適当な方法は現存
で,最終製品の栄養価・代謝・有害物質の生成程
せず,ナノテクノロジー専用の非動物検査方法の
度に影響を与える重大な組成変化の原因となるも
開発が望ましいという。そうした検査が可能とな
のに適用される。
るまで,NMsの食品利用は禁止すべきであると
食品認可の過程においては,加盟国のうち一国
結論づけている。
が安全検査を行い,他の各国が承認する。一国で
オーストラリア・ニュージーランド
も新製品の市場導入に反対すれば,EFSAからさ
オーストラリアでは現行法の枠組み内でNMs
らに検査を行うよう要請される。検査項目は原材
を規制することができる。消費者保護を担当する
料・栄養価・毒性・アレルギー性などで,粒子の
オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関
大きさも検査項目の一部になると考えられる。
(Food Standards Australia New Zealand:
本年3月,EU議会はナノテクノロジー利用新
FSANZ)は食品基準規範(FS Code)の開発,
食品の検査項目改定案を採択した。同改定案は,
維持を役割とする。食品基準規範は両国における
「慎重原則」に重点を置き,科学的根拠やデータ
調理済み/輸入/販売食品の質・組成・ラベル表
を欠く食品は認可リストからの除外を勧告される。
示を規制するもので,NMs用の基準を設けてい
食品添加物に関する現行法はNMsにも適用可能
るわけではない。
にみえるが,従来の化学的添加物とナノテクノロ
したがってFSANZの枠組みにおいては従来の
ジー利用添加物とを区別していない。添加物使用
食品に対するのと同様の適用がNMsに対してな
に関する法整備は欧州議会・理事会の管轄であり,
される。NMsは食品に多用されたり,包装材や
EFSAの安全検査を経たものしか使ってはならない。
接触物から食品に多く混入したりする場合は添加
最新の食品添加物法(EC1333/2008)はナノテ
物として扱われ,混入の度合いが低い場合は汚染
クノロジー利用を含め,粒子サイズの著しい変化
物質として扱われる。
がある場合に再評価を要する旨を明記した。ヒト
NMsが従来の食材とは異なると判断され,食品
の健康を危険にさらすおそれのある添加物に対し,
に混入したり触れたりする場合にも,その食品は
EU加盟国は域内での一時的使用差し止め,また
汚染されたと解釈され,
当該NMsは使用禁止となる。
は縮小を求めることができる。EC1935/2004法は
すべての加工/輸入食品の包装材も接触物基準
EU域内における食品に接触する物質に関する 組
に適合しなければならない。健康を害するおそれ
成・ 性質・使用について規制しており,包装材
のある物質は食品との接触を禁じられる。
の原料を検査して潜在的危険性・摂取量による反
食品が特に食品基準規範の規制を受けなければ,
応が明らかになった場合のみ適用される。
FSANZの枠組みは適用されない。しかし食品が
既存化学物質のリスクの評価および管理に関す
安全かつ摂取に適するよう条件を付したり,地方
る理事会指令(Registration,Evaluation,and Auth-
条例を適用したりすることはできる。FSANZも
orization of Chemicals: REACH)はEUにおける
科学的根拠が不十分な場合には公衆衛生的・植物
NMs規制のひとつで,安全性保証データのない
検疫的規制手段をとることができる。
食品と容器
589
2009 VOL. 50 NO. 10
アジア
設立され,国内基準の開発にあたることとなった。
日本では公的機関が共同で国民によるナノテク
ナノ製品の検査や販売許可について指揮監督を行
ノロジー受け入れのための努力を続けている。文
い,品質改善および新製品開発に伴う健康リスク
部科学省は産官学共同によるナノテクノロジー/
軽減を後押しする。
NMs科学研究開発推進のための研究大綱づくり
その他機関
を担当し,これと平行して経済産業省がナノ粒子
世界の規制当局への情報提供を手助けする国際
の安全性検査および評価方法の標準化を,厚生労
機関もある。国際標準化機構(ISO技術委員会
働省がNMsの健康への影響評価方法の開発を担
229)・国際リスク管理委員会・経済協力開発機構
当している。
などである。
2003年,中国科学院(Chinese Academy of Scie-
結論として,ナノテクノロジー利用製品の規制
nce:CAS)と同国文部省が共同でナノテクノロジ
は現時点で困難といえる。分析に特化した研究の
ー研究センター
(National Center for Nanoscience
推進と,食品に含まれるNMsの安全性および環
and Technology:NCNST)を設立した。2005年,
境・ヒトの健康に与える影響に関する研究の財源
NCNSTの下にナノテクノロジー標準化委員会が
拡大が求められる。
(力丸みほ)
持続可能なブランド&マーケティング戦略
Packaging Digest(U.S.A.)40(’09・5)
文献 №5486
「商品とその包装に持続可能性があるものだと
中年世代を除く3つの世代は特に価格に敏感で
して,消費者は本当にそれに関心があるか?」と
あり,値段のつけ方で購入を手控えるか,あるい
いうテーマで行なわれた世代別消費者意識調査の
は多少無理しても手が出るか,大きく分かれると
結果から成功するブランド戦略について以下提言
ころである。なかでも,自分を「貧乏」であると
する。
考えている若年世代にとっては価格が最大の商品
調査対象年齢は,17~25才(Millennials:青年世
購入の要素であり,しかもこの世代は基本的に会
代:),26~40才(GenXers:壮 年 世 代 ),41才 ~55
社というものに不信感を持っていて,IT機器に
才(Boomers:中年世代),56才以上(Matures:熟
依存しているため,テレビや宣伝ビラなどの既存
年世代)の4世代。
メディアにはあまり影響されない。
4つの世代には次のようないくつかの共通点が
壮年世代の場合はより個人的なつながりでの購
みられる。
買動機が強く,またメーカーのホームページでよ
り詳しい情報を得ようとする傾向がある。
(1)いずれの世代も商品の持続可能性に関する情
報は自分にとってメリットがあるとしている。
子供が大学生であったり,定年も見え始めてい
(2)友人・知人の勧めで商品を選ぶ傾向がある。
る中年世代も価格志向が強いが,従来の宣伝媒体
(3)新しい商品は,買う前に一度試してみたいと
に比較的馴染みがあり,熟年世代と並んで新聞や
いう気持ちがある。そしてこの不況下にあっ
テレビなどからの情報を受け入れやすい傾向にあ
ては,価格という点に非常に敏感になってい
る。
る。
こうした世代間の違いを踏まえると,成功する
食品と容器
590
2009 VOL. 50 NO. 10
ブランド戦略,マーケティング戦略はそのターゲ
消費者にダイレクトに接触し,そのアイデアや情
ットとする世代によって変わってくる。
報を取り込んで商品開発に役立てようというもの
青年世代,壮年世代はいずれもインターネット
で,やりようによっては従来の方法よりコストも
に慣れ親しんでおり,彼らを取り込むためにはや
安く済むものとなる。
はり次のようなインターネットの活用が必要であ
巧くいっているブランド戦略,マーケティング
る。
戦略の特徴としては世代別にターゲットを絞って
・双方向通信(この世代の85%がその経験者であ
いることが挙げられるが,DellやStarbucksとい
り,300社以上の大手企業が実施)
った「グリーンジャイアント」と呼ばれる環境重
視の企業の例を見ると次のようないくつかの共通
・ユーザー自身に包装容器のデザインにかかわら
せること
点がみられる。
・ソーシャルネットワーキングに商品を登場させ,
①持続可能性ということをブランドの重要な要素
環境への優しさその他の情報を発信すること
とするにあたって,持続可能性と倫理性は不可
・同じくインターネットを通じて無料クーポンな
分のものであると考え,これをグループの隅々
どを提供すること
まで徹底している。
・その他,“iPhone”や“YouTube”等のITメデ
②ターゲットとする顧客セグメントごとにブラン
ィアの活用
ドイメージの定期的な検証を行い,社内と社外
かい
環境問題に最も熱心なのは中年世代,熟年世代
のブランドイメージの乖離を調査し,必要に応
であるが,特に熟年世代はエコや省エネに極めて
じてこれを修正する。
関心が高い。この両世代を標的にする場合には以
③現代のコミュニケーションに不可欠のウェブサ
下のようなやり方を検討すべきである。
イトを通じた手段(ブログ,フォーラム等)に
・この世代の好むテレビその他のメディアに商品
よって顧客(消費者)の参加をうながし,ブラ
を載せる
ンドイメージをアピールする。
・環境対応について強調する
消費者が「環境にやさしい」と考えるブランド
・ホームページで割引券などをダウンロードでき
はいずれもその容器や包装,ラベルにそのような,
るようにすると共に,アクセスしてきた消費者
つまり「グリーン」な表示をしているのが通例で
のメールアドレスなどの情報を収集し,アンケ
あり,企業によってはさらに一歩進んでCO2排出
ートなどを通じ新製品の開発に資する。
量,リサイクル性,生分解性,等々の環境情報を
このように,調査結果から導き出される戦略や
率直に表示するようになってきている。
戦術は,テレビや印刷物といった既存媒体による
(大池静男)
宣伝にはあまり重きを置かず,ターゲットとする
「食品総合研究所研究成果展示会2009」の案内
食品総合研究所のこれまでの研究成果と関連情報を広く提供し,啓発および共同研究や技術移転を通じて社会に
還元を図ることを目的に,下記要領で「食品総合研究所研究成果展示会2009」を開催します。研究成果の展示だ
けでなく,主要成果紹介の講演会,食品の安全・安心,機能性,分析・評価,先端加工などに関する技術相談コ
ーナーなども設けます。さらに,フード・フォラム・つくば主催の企業交流展示会,BioTsukuba主催の交流会,
関東農政局,㈳食品需給研究センター主催の食農連携促進技術交流会も同時開催する予定であり,全体名称を「フ
ード・テクノフェアinつくば」として,つくば地域だけでなく全国における幅広い食品産業関係者と研究者との
交流を深める場として,毎年秋に開催しております。ご来場をお待ち致しております。
記
日 時:平成21年11月6日(金)9:30~16:00
場 所:つくば国際会議場(つくば市竹園2-20-3)
参加費:無料
参加登録:不要
問合せ先:農研機構 食品総合研究所 企画管理部 連携共同推進室
TEL:029−838−7990・8017,FAX:029−838−7989
食品と容器
591
2009 VOL. 50 NO. 10
アメリカの食品産業,従業員の給料と満足度調査
Food Processing(U.S.A.)16(’09・6)
文献 №5494
Food Processing(U.S.A.)誌が実施した,2009
ープ(工場作業員)は最大グループで27%を示
年のSalary & Job Satisfaction Surveyでは,すべ
していた(第1図参照)。
ての回答者の平均給与は,昨年の95,226ドルから
・雇用期間は若干長く,66%が15年以上食品ビジ
99,877ドルにアップした。また,仕事に対する満
ネスに携わっている(前年は15年以上は61%)。
足度は「非常に満足」と「やや満足」は合わせて
・毎年昇給している人は顕著に少なくなり,前年
68%であり,昨年の71%から少し低下した。
の76%に対し,今回は65%であった。
調査の実施者が最も心配したのが回答者の数で
・利益の分配やボーナスも同じように下がってい
あった。昨年の調査では1,732人であったが,今
る。
年(2009年)は1,286人であった。この446人の従
・ほぼ同じ人数が医療保険,歯科医療保険,生命
業員に何があったのか?
保険を続けるとしているものの,401Kは3%
これは,必ずしも説明の必要はないであろう。
下がっている。
「全従業員の1/3は一時解雇され,6カ月間賃
69%が男性(女性31%)で,82%が白色人種で
金が凍結された」と南西部のポテト加工会社の40
あった。1週間に50時間以上働く回答者は2%減
-49才の女性は言う。
少した。
「みんなが怖がっている」と30-39才の南西部
回答者の内訳
の食肉会社の従業員は言う。
回答者の1,286人は,すべてFood Processing誌
給与の調査は4月に実施されたが,この時期は
の読者である。グループは都市部(35%),都市
一般経済が底を打ち,おそらくリバウンドの兆候
近郊(38%),地方(27%)とほぼ均等に分けた。
が示されたときであろう。
教育に関しては,79%が単科大学卒,21%がマ
今回の調査で特筆すべき変化は,
スター,5%がドクター修了者であった。
・調査対象グループはやや高齢化し,44%が50-
先に述べたように,R&Dが工場作業員をわず
64才で,これは前年度に比べ5%増になる。
かに上回る最も大きなグループであり,管理者が
・R&D要員(22%)は工場作業員(21%)をか
19%,エンジニアと販売担当者が10%,購買担当
ろうじて上回った。ちなみに,前年はこのグル
者が4%であった(第1図)。
19.0%
21.0%
その他
$66,167
販売
9.5%
$104,635
14%
22.0%
4.1%
65才以上
3%
$113,861
管理
$135,489
19%
4.1%
21%
22%
R&D
$100,441
44%
工場作業員
$81,397
50-64才
$108,020
9.5%
30%
40-49才
$101,991
エンジニア
$101,008
第1図 職種の割合と給与
食品と容器
30-39才
$87,240
18%
10%
10.0% 購買
$93,520
14.0%
29才以下
$55,277
5.5%
第2図 年令構成と平均給与
592
2009 VOL. 50 NO. 10
3.0%
15.0%
55.0%
22.0%
5.4%
39.0%
35H以下
3.0%
61H以上
12.0%
13.0%
6.5%
5.4%
36-40H
15%
51-60H
非常に不満
6.5%
非常に満足
13%
やや不満
29%
22%
12%
不満も満足もない
39%
55%
やや満足
41-50H
第3図 1週間当たりの労働時間
割合
の
回答者の21%は5000人以上の企業に属し,その
仕事の安全
他の15%は1000人以下の企業に属している。
回答者は食品産業の各分野に分かれていた。
全職種で見ると,給料は典型的なベルカーブを
第4図 仕事に対する満足度の割合
37.0%
ストレスの少ない
17.0%環境 3.7%
当
会
18.0%
8.5%
16.0%
16%
評価
環境
3.7%
描いていた。
やりがいのある
仕事
37%
8.5%
昇進の機会
給料の満足度については
18%
17%
・最 も不満なグループは50−64才で,7.5%は非
給与と手当
常に不満,14%はやや不満としており,他の年
令グループよりはるかに多い。
仕事の安全性
第5図 仕事の満足度に影響する要因
・仕事の満足度は賃金とともに増加する。
しかしながら,ポジティブなコメントもあった。
・男性(108,713ドル)は女性(80,598ドル)より
それらには
収入が多い。
・多くの人が家庭で食事をするようになったため,
・給料は年令とともに増加する(第2図参照)。
我々の売り上げはかなり上昇した。
労働時間
・ピーナッツバターの需要が増え,売り上げが上
昇した。
55%の人が週当たり41−50時間働いている。そ
の他の労働時間と割合を第3図に示す。
・我々が作れる以上のキャンディが売れ,シフト
最近の経済状況と企業への影響
を増やした。
調査では現在の経済状況が調査対象の企業に与
これらの質問に続いて,不満な項目と満足な項
える影響について質問している。ネガティブな回
目をリストアップしてもらった。不満は201項目,
答が予想され,そのような回答が多く見られた。
満足な項目は451項目あった。
その中には
その他のコメントとして
・銀行が信用貸しを凍結し,顧客の注文がなくな
「私の仕事は課題が多く,刺激もある。食品産
った。
業に30年以上いるが,それでも学ぶべきものが常
にある。勉強をやめるわけにはいかない。スーパ
・従業員が一時解雇され,消費は凍結,給与は上
がらない。
ーマーケットに行き,人を観察し,以前は見るこ
・工場の一つが閉鎖され,統合された。
とがなかったことを見る。(インターネットウエ
・10%給与をカットされた。
ブではすべてを学ぶことはできない)」と大手多
・多くの企業の利益が減少した。昇給は不確実。
国籍企業のR&Dに属する50-64才の回答者は言
生活調整コストも不確実である。
う。
仕事の満足度の割合を第4図に,仕事の満足度
・給与支払いが遅延された。計画やビジネス目標
が行き詰まった。監視がより厳しくなった。
に影響する要因を第5図に示す。
・相談のための仕事が増えた。
食品と容器
593
(十時正義)
2009 VOL. 50 NO. 10
セルロースナノファイバーで強化されたマンゴピューレからの
ナノコンポジット可食性フィルム
Journal of Food Science(U.S.A)N31(’09・6-7)
文献 №5491
要約
いるが,近年,これらの問題を解決するために,
マンゴピューレをベースとしたバイオフィルム
強化剤成分を添加した種々のコンポジットが開発
に,100gマトリクスあたり36gまで種々の濃度の
されている。少なくとも1次元(線状)の充填剤
セルロースナノファイバー(CNF)をナノ強化
(ナノ粒子)を用いればポリマーナノコンポジッ
剤(nanoreinforcement)として添加し,得られ
トを作製することができ,さらに,ナノ粒子を均
たナノコンポジット可食性フィルムの引張特性,
質に分散できれば,広大なマトリックス/充填剤
水蒸気透過性,ガラス転移温度等を調べた。その
境界面が生じ,相互作用による分子運動や緩和挙
結果,引張強度,ヤング率,水蒸気バリアーの効
動が変化して,熱特性や機械特性が変化する。セ
果が顕著に改善し,ガラス転移温度(Tg)もわ
ルロースは極めて高強度の天然ポリマーであり,
ずかだが有意な効果が見られた。以上,CNFが
CNFは低価格で,軽く,破壊強度の高いナノコ
マンゴピューレ可食性フィルムの特性改善に効果
ンポジットであることから,魅力的なナノマテリ
があることが証明された。
アルである。植物や動物ではセルロース鎖はナノ
説明
ファイバーとして合成され,これは水素結合によ
食品・飲料パッケージは,米国の包装市場の約
り伸びた安定な分子束となっている。ナノファイ
70%,また世界市場では50%以上を占めている。
バーは直径がナノサイズ(由来によって2nmか
食品・飲料パッケージには合成ポリマーが広く使
ら20nm)であり,長さが数百から数千nmである。
われているが,パッケージのリサイクルコストが
この研究では,種々の濃度のCNFを強化剤とし
高く,ポリマーの分離が困難などのため,ほとん
てマンゴピューレ可食性フィルムに添加し,作製
どのパッケージは廃棄され,合成ポリマーが無駄
した可食性フィルムの特性を検証した。
になっている。
原料として,CNF
(Novacel®PH-101)
はFMC Bio-
食品パーケージの材料として果物や野菜のピュ
Polymer社から,またマンゴピューレ(29%全固形
ーレまたはそれらの濃縮物が注目され,これらに
分,27.5%可溶性固体)はKeitt mangoes社から
含まれるペクチンやデンプン,セルロース誘導体
入手した。種々の濃度のCNFをマンゴピューレに
物質などポリサッカライドがフィルム作製に利用
添加し,Polytron PT3000を用いて,6500rpm,
されている。ここでは,合成ポリマーの代替とい
30分間ホモゲナイズし,コントロールではCNF添
うより,これらのピューレに合成ポリマーを添加
加なしで同様の操作を行った。ホモゲナイズした
してフィルム特性を向上させ,結果として合成ポ
分散物は泡を除くために真空処理し,その後,水
リマーの使用量を減らすことを目的としている。
平な正方形のプレート(29x29cm)に広げ(プレ
フルーツの色や香りも付加でき,さらに,果物加
ートあたり45g),22℃,42%RH(相対湿度)で16
工過程の副産物(廃棄物)が利用できるなど,利
時間乾燥した。乾燥フィルムはカットし,プレー
点も多い。
トからはがして,実験に使うまで冷蔵保存した。
食用ポリマーは機械的特性およびバリアー特性
実験で用いたCNFの平均サイズは長さ82.6±
が劣るため,食用フィルムの市場価値は限られて
4.3nm,直径7.2±0.3nm,アスペクトレシオ(長
食品と容器
594
2009 VOL. 50 NO. 10
第1表 異なった濃度のCNFナノ強化剤を含むマンゴピューレ食用フィルムの物理的特性
A
CNF(g/100g)
TS(MPa)
EB(%)
e
WVP(g.mm/kPa.h.m2) Tg(℃)
YM(MPa)
a
e
a
(2.66 ± 0.06)
e
ab
(4.09 ± 0.12)
(44.07 ± 0.98)
1
de
(4.24 ± 0.25)
ab
(42.42 ± 1.90)
(21.55 ± 0.98)
(2.40 ± 0.19)
d
(-8.51 ± 0.46)
2
de
(4.42 ± 0.14)
ab
(43.30 ± 1.46)
e
(22.56 ± 0.88)
bc
(2.17 ± 0.08)
d
(-8.57 ± 0.33)
5
cd
(4.58 ± 0.21)
(41.79 ± 0.44)
d
(30.93 ± 1.27)
bc
(2.16 ± 0.05)
c
(-7.72 ± 0.26)
10
c
(4.91 ± 0.13)
ab
(43.19 ± 1.73)
c
(40.88 ± 1.41)
c
(2.03 ± 0.11)
b
(-6.81 ± 0.36)
18
b
b
cd
(1.90 ± 0.06)
a
(-5.88 ± 0.25)
d
a
(-6.04 ± 0.17)
(5.54 ± 0.07)
a
(8.76 ± 0.11)
36
b
b
(39.8 ± 0.53)
c
(31.54 ± 2.29)
(19.85 ± 0.51)
e
(-10.63 ± 0.47)
0
(78.82 ± 5.00)
a
(322.05 ± 19.43) (1.67 ± 0.11)
A
100gマンゴピューレに加えたCNF重量(乾燥重量).TS=tensile strength(MPa); EB=elongation at break(%)
YM=Young's modulus(MPa); WVP=Water vapor permeability(g.mm/kPa.h.m2); Tg=glass transition temperature(℃).
同じ列で異なる文字で示された値は有意に相異(P<0.05).
さ/直径)は11.5であった。
トリクスに比較すると,ナノコンポジットでは引
マ ン ゴ ピ ュ ー レ100g当 た り36gのCNFを 添 加
張強度と弾性率の両方が改良された。一方,伸び
(以下「CNF36」と記載)して形成したフィル
はCNFに依存し,CNF10では伸びに影響ないが,
ムについて超微細構造を走査電子顕微鏡で観察し
CNF36では伸びが損なわれた。CNF36では成分間の
たところ,マンゴピューレ中,ナノファイバーが
高い相互作用を示したが,この高濃度CNFの添加
塊を作ることなくよく分散し,十分に相互作用し
による伸びの減少は,ナノファイバーとマンゴピ
ていることが確認できた。
ューレマトリクスの弱い相互作用を示唆している。
種々の濃度のCNFを含むマンゴピューレフィルム
CNF添加で最も影響を受けるのはヤング率で
について,物理的特性〔引張強度(TS:tensile Str-
あり,CNF10で100%以上,CNF36では1500%以
ength),破断伸び(EB:elongation at break),ヤ
上に増加した。
ング率(YM:Young's modulus)および水蒸気透過性
コントロールフィルムの水蒸気透過率は,他の
(WVP:water vapor permeability)
,ガラス転移温
研究者が報告した乳酸によって可塑性を付与され
度(Tg:glass transition temperature)〕
(第1表)
たペクチンフィルムの値(2.23g.mm/kPa.h.m2)
を調べた。
と同程度であり,マンゴピューレのポリサッカラ
引張強度はCNF2以上,ヤング率はCNF5以上
イド含量は水蒸気バリアーが十分に高くなり,さ
で増大し,破断伸びはCNF10までは顕著な変化は
らに少なくともCNF10の添加は,水蒸気透過率
ないが,
それ以上では伸びが減少した。CNF0(コ
を減少させるのに効果的であった。
ントロール)
,CNF10,CNF36の応力-ひずみ曲線
Tgは大変低い値であったが,マンゴピューレ
(stress-strain curves)を検討すると,CNF添加
の可溶性固体含量が27.5%であり,マンゴ成分の
で挙動が変化し,混合した変形機構を示した。
主要可溶性固体がモノサッカライドとジサッカラ
CNF10フィルムとCNF36フィルムは3%伸びで応
イドであることを考慮すると,低いTgはこれら
力を生じ,この降伏点以下では,CNF添加はフィ
の糖の可塑化効果によると予想される。Sub-zero
ルムの弾性率を増加させ,特にコントロールフィ
(0℃以下)Tg値は,成分の分子運動性の高さ(反
ルムと比較して弾性率がシャープに増加し,可逆
応性の高さ),つまりフィルムの比較的低い科学
的な弾力変形を示した。
的安定性を示している。つまり,冷蔵温度でさえ
3%伸び以上では,非可逆的に変形し,塑性変
もフィルムが大変良い柔軟性を有すことを意味し,
形挙動(plasticity behavior)を示した。一方,コ
これは食品包装に利用する際には利点となりうる。
ントロールフィルムは単純な直線を示し,降伏点
CNFの混入によるTg上昇は,わずかではあるが
は見られなかった。降伏点以降は,CNF10とCNF36
有意であった(第1表)。 (矢部希見子)
とで有意差はなかった。均質なマンゴピューレマ
食品と容器
595
2009 VOL. 50 NO. 10
バイオプラスチックを用いた飲料容器
Beverage World(U.S.A)76(’09・4)
文献 №5480
昨年(2008年)の急激な石油価格の上昇によっ
Primo社の場合,
PLAは素晴らしい解決策になった」
て,PETなどの石油系ボトルを使用している飲
とPrimo社に協力し,PLAの特性を生かしたボトル
料業者が抱える将来の課題が明らかになった。そ
をデザインした米国に拠点をもつPlastic Techno-
の後,石油の価格が劇的に下がったが,実質的に,
logies社のS.STEELE氏は言う。
世界の石油資源はいつかなくなることを誰もが認
しかし,PLAは市場で支配的なバイオプラス
めている。
チックであり,NatureWorks社がIngeoの商品名
次のオイルショックがいつ起こるか誰も分から
で販売しているPLAが初めて飲料会社(今はな
ないが,遅かれ早かれ石油の価格は再度急上昇し,
いBiota社)で使われたのは2004年だというのに,
資源が尽きるまで上昇が続きそうである。
バイオプラスチックボトルを使用している飲料業
しかし,一部の飲料業者はその日を待たずに,
者の実数は非常に少なく,Primo社はいまだに独
すでに飲料包装容器にバイオプラスチック製ボト
占状態である。
ルを採用している。しかしほとんどの場合,バイ
ドイツに本拠があるEuropean Bioplastics trade
オプラスチック製ボトルを採用する目的は市場の
group会長のH.KAEB博士によると,世界のバイオ
差別化であり,まだコストではない。
プラスチックの市場シェアはまだ1%以下である。
例えば,Primo Water社が小型ボトルドウオー
「石油系プラスチックの総供給能力が約2.3-2.4
ター用にNatureWorks社製の植物ベースのポリ
億トンに対し,世界のバイオプラスチックの供給
乳酸(PLA)を選んだとき,その選択は製品の
能力は約30万トンである」と博士は指摘する。
ポジショニングにピッタリだった。
しかし,KAEB博士らは現在の市場の動向はバイ
「実のところ,Primo社は特別のマーケティング
オプラスチックの方に向かっていると考えている。
メッセージのためにアメリカで栽培されて生産さ
まず,上述したように,PLAなどのバイオプラス
れた製品を使
チックの価格はPETボトルなどの石油系プラスチ
うことにした。
ックに比べて将来的により安定すると思われる。
わが国の農業
実際,バイオプラスチックの供給能力は次第に増
由来のボトル
えてくるので,価格はさらに低下するはずである。
原料を使用し,
さらに,持続可能性の問題がある。PETは有
ボトルや水な
限資源(石油)から作られるが,PLAは再生可
どすべてを地
能資源(コーンなどの植物ベースデンプン)から
産のものに転
作られる。「PLAの最も重要な利点は原料資源で
換することは,
ある。PLAは再生可能資源由来であり温室効果
市場へのメッ
ガスの排出量や化石燃料の使用量が少なく,環境
セージであっ
負荷が小さい」とNatureWorks社アメリカ事業
て,技 術 上 の
部の飲料・フィルム・カード部長B.GLASBRENNER氏
事情ではない。
は言う。そして使用後,PETはリサイクルされ
写真1 Natural Iowa社のGreen Bottle
Spring Waterは石油ではなく,植
物から作られたボトルであること
を売りとしている
食品と容器
596
2009 VOL. 50 NO. 10
ずに相当量が埋め立てゴミになるという大きいマ
北米の乳製品業者のNaturally Iowa社は牛乳や
イナス要素があるが,PLAは堆肥化が可能である。
ヨーグルト飲料のパッケージにIngeoを使用して
GLASBRENNER氏は,「ボトルやキャップ,ラベル,
おり,果汁ブランドでもフロリダのNoble Juice
すべてIngeoで作られたパッケージが使用され,
社が使用している。その他には,イタリアのボト
しかも完全にリサイクルされて,すべてバイオプ
ルドウオーターブランドのSant-Anna,ニュージ
ラスチックの原料として乳酸に再生されることが
ーランドのGood Water,オーストラリアのCool
最終目標である」と言う。
ChangeもIngeoのボトルを使用している。
しかし,まだ課題がいくつかある。1つは,
しかし,KAEB博士は,「NatureWorks社は現在
PLAを完全に堆肥化するための適切な収集システ
同社のIngeoボトルがバイオプラスチックボトル
ムが必要である。さらに,使用に際して,PLAは
の市場を独占しているが,これは今後2-3年で
すべての飲料(特に炭酸飲料)に必要な,湿気や
変わり,バイオプラスチック市場の競争が激化す
酸素,炭酸ガスに対するバリア性が不十分である。
るとともに飲料への適用も増加するだろう」と言
しかし,バイオプラスチック製飲料パッケージ
う。さらにSTEELE氏は,「現在の市場ではバイオ
の 採 用 は 次 第 に 増 え て い る。GLASBRENNER氏 は,
プラスチックは高価だが,石油の価格は平均して
Ingeoの採用はこの1年で約75%増えたと見ている。
上昇が続くと見られ,5-10年後には石油から作
昨年PLAを採用した北米のボトルドウオーター
られる合成樹脂より安くなると予測される。そし
会社の例として,シカゴのGreen Planet Bottling
て,やがていつかPLAのようなバイオプラスチ
社,ワシントンD.C.のGreen Bottle Spring社,米
ックが飲料パッケージ素材としての地歩を固める
西海岸のNature's Bottled Water社などがあり,
だろう」と言う。
カナダのモントリオールでももう1社ある。
(大川 葵)
新刊紹介
ソフト・ドリンク技術資料 No.158 発刊のお知らせ
(
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 大池 秀明)
5.味の現象を分子でどこまで説明できるようになっ
たか
(
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 日下部 裕子)
6.食品製造機器表面への汚れとしての食品成分と微
生物の付着
(東京海洋大学海洋科学部 﨑山 高明)
7.飲料・食品包装フィルム,容器に於ける臭気防止
対策と保香性包装技術
(包装科学研究所 葛良 忠彦)
8.コーヒー飲用と肝臓病・糖尿病の予防
(九州大学大学院 古野 純典)
9.缶コーヒー中の一酸化窒素(NO)含量とそれら
の投与によるラットの血清中のNO量
(中村学園大学栄養科学部/中村学園大学大学院
栄養科学研究科 大和 孝子 他)
10 .三島の「食の安全担保」への取り組み
(三島工業㈱工場長補佐兼品質保証 川中 有弘)
11 .Cフルート段ボール
(レンゴー㈱パッケージ・デザイン部 安川 義浩)
ティータイム
古代ローマ世界コイン収集へのいざない
(明治乳業㈱ 久保田 康史)
山菜取りに行こう
(アサヒ飲料㈱ 江上 徹)
(社)全国清涼飲料工業会では,「ソフト・ドリンク
技術資料158号」を発刊しました。ご希望の方はホー
ムページでお申し込み下さい。
◇書 名:ソフト・ドリンク技術資料 No.158
(2009年・第2号)B5判 181ページ
◇価 格:1部購入の場合=4,500円(全清飲また
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◇お問合せ先:(社)全国清涼飲料工業会
TEL 03(3270)7300 担当 東根または安達
◇内 容
1.食品微生物試験法の国際的手法とのハーモニゼー
ション
(国立医薬品食品衛生研究所 五十君 靜信)
2.微生物検査の現状とこれから-衛生指標菌等に
ついて-
(㈶日本食品分析センター/大阪府立大学大学院
浅尾 努)
3.時間栄養学の謎に答える
(県立広島大学健康科学科 加藤 秀夫 他)
4.食品による体内時計の調節
食品と容器
597
2009 VOL. 50 NO. 10
2009年の世界の金属容器市場
The Canmaker(U.K)65(’09・6)
文献 №5496
欧米の主要銀行の第1四半期の株式市場の大幅
やWalMartのような安売り店は,この数十年で最
な変動により,経営管理はリスクを含んだ困難な
悪の四半期でも高成績を維持している。
状況にある。第2四半期は新型ウィルスへの影響
缶の価格と需要
により不確実性に直面している。経済の衰退は主
金属容器の分野では,ブリキ価格は経済衰退に
な原材料生産者,特に鉄鋼,アルミニウムおよび
もかかわらず高騰した。鉄鋼メーカーは,熱延鋼
非鉄金属製品に劇的な打撃を与えた。食品,飲料,
板のコスト上昇を補うために価格を上げている。
非耐久財や消費財の価格指標は限定的な値下げは
アルミ価格がLME
(ロンドン金属取引所)
で急落し
あるが安定している。原油,ガス,ポリマー,卑
ているにもかかわらず,ブリキ価格は優勢である。
金属は暴落した。耐久消費財と建築資材は,過剰
製缶業者は,金属価格の上昇を価格に転化する
な生産能力があるために明らかに値下がりした。
ことで,急激なコスト上昇から利益を得ている。
P&G社,Colgate社やKimberly Clark社などの
食品や飲料のパッカーも金属の価格上昇を吸収し
安定成長会社でさえ不況による価格や数量減の激
ている。第1表に最近のブリキとアルミ缶の価格
しい逆風にさらされた。第1四半期にこれらの会
推移を示す。
社は,消費者が安い物に買い換える時でさえ,数
このデータは,景気が最悪の四半期でも,スチ
量減を補うために価格を上げている。
ール缶の卸売物価指数が高騰したことを示してい
多くの消費者製品メーカーは代替品に対処する
る。2001年の指数を100とすると,2008年までス
ため,消費者が自社ブランド製品を買い戻すよう,
チール缶の価格は毎年4%ずつ上がり,これは経
第2四半期に強力な広告と促販プログラムを企画
済成長をかろうじて上回るレベルである。しかし,
している。
2009年の1〜3月は,2008年の平均を20%以上上
McDonaldのような低価格レストランチェーン
昇した(2006年比では32%)。しかし,2009年3
第1表 缶,ガラス,プラスチック容器の物価指数
月のアルミ缶価格は,2008年12月に比べわずか
年
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
1月
2月
3月
3/09/Av/06
5.3%しか上がっていない(2006年比は21%)。
スチール
ガラス プラスチ
アルミ缶
缶
容器
ック容器
100.0
100.0
101.6
102.0
100.6
103.7
103.6
101.1
107.2
105.9
107.2
110.4
116.1
111.7
111.9
120.2
113.1
116.8
100.0
122.2
123.9
123.9
98.9
132.0
129.7
129.7
106.6
食品と容器
143.9
158.8
158.6
+31.9
130.2
136.6
136.6
+20.8
126.8
135.5
136.2
+16.6
缶数量はわずかに減少
アメリカのGDPが6.1%と急落したにもかかわ
ら ず, 全 体 の 缶 数 量 は2009年 の 第 1 四 半 期 は
2008年の同期と比べ2.9%減少しただけだった(第
2表)。2Pのビール缶と飲料缶は,ここ数十年
間で最も悪かった経済においても1.2%下がった
だけである。最も生産量の多いソフトドリンクは
雇用や収入のマイナス傾向を受け2.7%落ち込ん
104.5
101.3
101.9
+1.9
だ。経済状況によりディスカウント店の安い製品
が恩恵を受けた。ビール缶の出荷量は,自宅で消
費 す るこ と が多 く な り,1.7 %増 加 し た。Pepsi
598
2009 VOL. 50 NO. 10
第2表 アメリカの缶の売り上げ(単位100万缶)
ビール缶
飲料缶
小計
食品
野菜
スープ他
ペット用
その他
小計
一般缶
エアゾール
その他
小計
計
2009 年
2008 年
第1四半期 第2四半期
7,961
7,830
14,289
14,689
22,250
22,519
第3表 Ball,Crawn,Silgan社の第1四半期の比較傾向
%
変化率(%)
カテゴリー
Ball 社
Crawn 社 Silgan 社
総売上
− 9.9
− 9.6
− 3.7
US での飲料(a)
− 11.9
− 5.5
−
EU での飲料
− 15.3
− 2.6
−
食品&家庭用
+ 7.5
− 12.9
+ 5.7
売上総利益率(%)
17.2
17.3
14.7
営業利益率(%)
7.9
6.5
8.2
キャッシュフロー(b)ミリオン
$68.4
$60.0
$40.6
負債総額(3/31/09)
$2.6bn
$3.1bn
$0.8bn
+ 1.7
− 2.7
− 1.2
1,865
1,255
1,596
1,460
6,176
1,914
1,258
1,806
1,603
6,581
− 2.5
− 0.2
− 11.6
− 8.9
− 6.2
844
218
1,062
29,487
994
290
1,284
30,383
− 15.1
− 24.6
− 17.2
− 2.9
(a)アジアでの販売含む (b)総売上+減価償却−初期投資
料缶の販売はPB製品の増加に助けられたもので
ある。もう一つの要因は販売の1/4を占めるヨ
ーロッパでの食品ビジネスで,30%増加した。
Cola社は第1四半期の数量の落ちは1ケタ半ばだ
食品用金属容器とクロージャーに集中している
が,それが缶に集中した。食缶は全体で6%減少
Silgan社は,家庭で調理する傾向に助けられた。
したが,家庭のスープや肉,魚などの食事に供さ
Rexam社は,第1四半期の事業収益は適正を
れる製品の減少はわずかだった。
維持している。名目上の利益は為替差益であり,
一般缶の塗料や潤滑剤などの建設関連は25%減
需要減を相殺している。北アメリカのビジネスは
少した。“value(お買い得)”という名で製品を
減少したが,第4四半期よりは緩やかであった。
提供しているCampbell Soup社,General Mills社,
これは,アメリカの3工場の閉鎖によるものであ
Kellog社およびKraft社は第1四半期に適正な結
る。2008年6月,生産能力は19億缶減少した。
果を出した。Pepsi,Coca-Colaおよび同社のアメ
Impress社の食缶事業とその最近の買収は,収
リカ市場の飲食製品の生産量は減少したが,低価
益維持に貢献している。第1四半期の売り上げは
格品は第1四半期にはシェアを増加させた。
3%ダウンしたが,年初より缶の価格が上がって
主要製缶会社の販売状況
いるので,生産量の減少はそれより少ない。
全体的な販売の落ち込みにもかかわらず,製缶
第2四半期の展望
会社の利益は第1四半期に回復した。アメリカに
第2四半期になれば,多くの要素から改善が期
多くを集中させているBall社の第1四半期は,全
待できる。先ず,多くの消費者商品企業は顧客の
体でおよそ10数%の売上減であった。ヨーロッパ
在庫が減少した。ブリキ価格の上昇を予測した先
に大きなシェアをもつCrown社は,飲料缶の増加
物買いが年初の高い在庫レベルを引き起こしたが,
により減少はわずかであった。食缶に集中してい
第1四半期の在庫の払い出しにより,第2四半期
るSilgan社の減少は中程度であった(第3表)。
の在庫の積み増しを促した。また,プライベート
Ball社とCrown社の粗利益とキャッシュフロー
ラベルのシェア獲得の勢いが緩和し,食品や飲料
は,製品や地理的条件が異なるにもかかわらず,
の主要ブランドが夏場の広告や販促プログラムを
驚くほど似通っていた。Ball社の第1四半期の利
開始した。
益は食品や家庭用品からのもので,販売増と営業
その結果,欧米の缶数量は春夏の季節要因によ
利益は3倍となった。これらの成功がアメリカに
り,改善が期待できる。明らかに,消費者は家で
おける飲料缶の急減を相殺している。
多くの時間を過ごし,旅行は制限されるだろう。
Crown社はアメリカとヨーロッパの飲料缶部
この環境は一般的に食品や飲料消費には良い影響
門で成果をあげた。ヨーロッパで5%の数量増が
をもたらす。時間の経過とともに,数量の増加が
あり,営業利益は16%上昇した。アメリカでの飲
製缶会社に利益をもたらすであろう。
(田嶋一雄)
食品と容器
599
2009 VOL. 50 NO. 10
リステリアの脅威の低減
The World of Food Ingredients(Neth.)41(’09・4-5)
文献 №5493
リステリア・モノサイトゲネス
(L.monocytogenes)
症や髄膜炎を患う。米国ではリステリアにより,
は,通性嫌気性でグラム陽性の日和見感染病原菌
毎年2500名が重症疾患となり,500名が死亡して
であり,自然界のどこにでも生息している。汚染
いる。医者の誤診もあり,この数値は実際よりも
食物の摂取により感染し,まれではあるがリステ
少ないと推定されている。リステリア菌は冷蔵温
リア症と呼ばれる重症となる。免疫力が低下した
度(1~10℃)で最もよく生育し,リステリア菌
人,老人,妊婦,新生児はリステリア症となりや
が検出されたとしても,乳酸球菌や他の偽ジフテ
すく,食中毒で死亡する1/4は,リステリア菌
リア菌と類似した特徴を示すことから,微生物検
が原因である。リステリア菌は腸から進入し,肝
査技師が無害の汚染菌としてしまうこともある。
臓,脳,子宮に到達する。リステリアの感染源は,
食中毒による死者の1/4近くがリステリア菌が
大半が調理済み食品である。最近では,食品加工
原因と推察されているにもかかわらず,サルモネ
会社Maple Leaf Foods社の製品で52件におよぶ
ラや大腸菌等の食中毒菌と比べ,リステリア菌は
感染が2008年9月にカナダで発生し,重篤なリス
知られていない。リステリアに特徴的なことは死
テリア症により20名が死亡した。同社は 191種類
亡率であり,危険性の高い集団では致死率は40%
の製品をリコールし,その損失額は数億円にのぼ
に達する。
る。食品企業は常に食中毒を最小限に抑えるべく
食品産業
対策を講じており,最近では,数社がバクテリオ
食品産業にとっては,リステリア菌の特殊性が
ファージを使用する許可を政府から取得した。
問題となる。リステリア菌は1~45℃の温度帯で
脅威
繁殖可能であり,短時間であれば低温(-20℃)
健康な人の1~10%には,リステリア菌が腸内
や高温(80℃)でも死滅しない。リステリア菌は
細菌として存在することが示唆されている。リス
耐塩性で,他の細菌が生育できないような高塩濃
テリア菌の感染により,リステリア症と呼ばれる
度でも生育・生存できる。食品の加工工程ではし
多くの症状が発症する。リステリア症にかかりや
ばしば酸性となるが,こうした低pH条件もリス
すいのは,妊婦,新生児,免疫力が低下した人(免
テリア菌にはさほど影響を及ぼさない。リステリ
疫疾患あるいは臓器移植患者),60才以上の老人
ア汚染の原因となる食品としては,魚介類とその
である。リステリア症となる大半の者は,細胞性
加工品,生肉とその加工食品(ホットドッグやパ
免疫に影響を及ぼす生理学的・病理学的な欠陥を
テ等),生野菜とその加工品,熟成軟質チーズ,
もっていることから,リステリア菌は日和見感染
アイスクリーム,小売り加工肉食品,コールスロ
菌として分類されているが,ヨーロッパおよび北
ー等のサラダ,生あるいは部分殺菌牛乳,生卵と
アメリカの政府機関はいまだにリステリア菌を病
液卵である。摂食前に必ずしも再加熱しない調理
原菌とし,万人に共通の脅威であるとみなしてい
済み食品はとりわけリステリアの汚染源となりや
る。妊娠中にリステリア菌に感染すると,早産,
すい。米国では,リステリア発生により,調理済
流産につながったり,新生児髄膜炎を引き起こす。
み食品の全国的なリコールに発展している例が
免疫力が低下した大人や老人が感染すると,敗血
多々ある。
食品と容器
600
2009 VOL. 50 NO. 10
リステリアとの戦い
第1表 ファージによる食品微生物制御における考慮
すべきポイント
抗生物質ではリステリア菌に対処できない。ワ
利点
自己永続的作用
細菌の菌叢を選択的に
修飾
食品ならびに食品加工
工程で安定
天然
ファージはどこにでも
いる
クチンは実用化されていないし,ニーズが少ない
ことから開発される可能性も低い。耐性菌の出現
が世界的な問題となっており,有効な対処法が限
定される医療分野ではリステリア対策に頭を悩ま
せている。一方,食品産業では,食品に使用でき
るリステリア殺菌剤,リステリア菌に有効な加工
工程等,多くの対策があるが,多くの企業では,
ファージの調製と利用
が簡便
食品成分やコストが原因で,こうした対策を講じ
ていない。医療分野と同様に,食品産業でも,簡
真核細胞には無毒
便な効果的手法がのぞまれている。最近の研究成
食品の品質に影響を及
ぼさない
果に基づき,バクテリオファージを活用したリス
テリア菌対策が見直されている。
欠点
作用対象の菌種が限定される
ファージ耐性変異株が出現す
る可能性
攻撃対象となる細菌はある程
度の菌数が必要
食品中では障壁もある
形質導入過程が必須であり,
このことが好まれない特性で
ある
ビルレント(溶菌)ファージ
がテンプレート(溶原)ファ
ージに変異する可能性
抗原性(微量 のファージ由
来タンパク質等)
消費者の受容性
食品汚染
影響を及ぼす。
大半のリステリア症は汚染食物の摂取が原因で
バクテリオファージ活用技術
ある。生肉製品は食中毒菌で汚染されている可能
バクテリオファージの利用技術は古いものの,
性が高いが,実際には殺菌温度にまで加熱された
リステリア対策としては新技術である。バクテリ
後,消費されておりリスクは低い。リスクが高い
オファージとは細菌に感染するウイルスであり,
のは,調理済み食品である。家畜糞を肥料に栽培
感染後期に宿主を溶菌する溶菌性ファージと宿主
した生食用野菜は極めて食中毒の原因となりやす
を直ちに溶菌しない溶原性ファージの2種類に大
い。畜肉,酪農製品では処理工程が多く,各工程
別できる。ファージは宿主特異性が極めて高く,
で汚染の危険が増大することから問題である。牛
すべての細菌にとって天敵でもある。リステリア
肉を用いた調理済み食品では,牛からサンドイッ
に有効なファージは天然界に普遍的に存在し,リ
チとなるまでには5~6工程を経ている。
ステリア菌が存在する環境から分離できる。ファ
リステリアの防御
ージに感染しても,溶菌性か溶原性かにもよるが,
望みがないわけではなく,リステリア汚染に有
感染細胞は通常どおり機能する。溶菌ファージに
効な様々な方法があり,食品企業は,製品性状や
感染した細胞は,生育最適温度とも関連するが,
原料組成に適した様々な方法を選択できる。主に
宿主の代謝活性が高いと早く溶菌するし,その逆
機械的殺菌,物理的封じ込め,化学・生物処理の
も成り立つ。食品産業では様々な理由により,2
3つがある。機械的殺菌では高温処理が主体であ
種類のファージうちの溶菌ファージだけが利用価
るが,紫外線照射や高圧処理もある。物理的封じ
値がある。
込めは,病原菌の繁殖抑制のための包装であり,
オランダのEBI food safety社,米国のIntraly-
酸素を窒素で置換するガス置換包装は,好気性微
tix社は,様々な病原菌に有効なファージを分離し,
生物の繁殖防止に広範に使われている。化学・生
改良した。ある種のファージはリステリアを溶菌
物処理では,殺菌剤や静菌剤である。大半の技術
することから,製品に高濃度ファージ液を噴霧す
は,酸や塩の使用といったように古典的である。
るだけで,殺菌剤,静菌剤としての効果がある。
高度に精製されたハーブや燻煙抽出物等の新規化
バクテリオファージ活用の問題点を第1表に示し
合物は,効果的ではあるものの最終製品の品質に
た。
ふん
くん
食品と容器
601
(林 清)
2009 VOL. 50 NO. 10
今月のPACKAGING NEWSは2009年のDuPon
とバージン樹脂をキャリアとした4%の着色剤で作
賞を受賞したプラスチック容器を紹介する。
られる。高濃度のPCRHDPEを含むAvedaのシャンプ
最近の持続可能技術の傾向に合わせ,受賞製品
ーボトルはMatrix Packaging社で成形されている。
には「省資源」
「生分解性」
「リサイクル材を含む」
PCRHDPEはミルク容器からリサイクルされている。
「再生産可能な構成部品」などをうたった製品が
材料使用料を減らした水差し型パウチ(写真3)
多く含まれる。
スウェーデンのEcolean Groupは乳製品用の無
堆肥化が可能なベーキングトレー(写真1)
菌包装容器のパッケージ重量を半分にした。
Sealed Air Corp.とBiophere Industries LLCが
本部,製造部門,開発部門をスウェーデンに,
共同で提供するWhole Foods社の新しい堆肥化可
製造部門を中国に置く国際企業のEcolean Group
能(compostable)なパン焼き皿(bakeware)は
は30カ国で商業活動をしているが,最も大きな市
Renew-A-PakTMベーキングトレーとして新登場した。
場は中国とロシアである。
オーブン加熱と電子レンジ加熱ができるようデザ
従来の液状食品カートンやボトルより40〜50%
インされ,冷凍温度や420゚F(216℃)の高温で
軽いAir Asepticパウチは,低酸性食品用にデザ
も構造の剛性を維持し,トレーは再生産可能なデ
インされたEcolean社のコンパクトなEL3マシー
ンプンベースの組成で作られ,従来の金属性のパ
ンで無菌充填される。
ン焼き皿と同じように苛酷な取り扱いに耐える。
パウチはカートンボードの代わりにフィルム構
しかし,これらは屋外では40日以内(降雨条件に
造が使われている。これは,資源やエネルギーを
依存),市販のコンポスト環境では10日で生分解
節約する助けになると同社は言う。興味深いこと
を始める。また,トレーは紙のリサイクルとして
は,ポリマーの必要量を減らすため,炭酸カルシ
処分することもできる。しかも,屋内では数年の
ウム(チョーク)が構造に組み込まれていること
シェルフライフをもつと,Sealed Air社は言う。
である。重量と容積が少ないことは,トラック1
PCRを含むシャンプーボトル,
キャップ
(写真2)
台でより多くのパウチが運べることを意味する。
Aveda Corp.は30周年を祝って,持続可能なオリ
空のパウチは封筒のようにフラットになり,輸送
ジナルのシャンプーの一つを再登場させた。Aveda
や処分が有利になる。
社のシャンプーボトルの大半は80%のPCR(post-
リサイクルPETを用いた食品トレー(写真4)
consumer-recycled:消費者より回収したリサイク
ConAgra社の冷凍食品用PCRPETトレーは,
ル品)を含み,同社はHDPEボトルに年
間30万ポンドのリサイクルプラスチックを
使用している。Aveda社のボトルは96%
PCRHDPEを含み,キャップは100%PCRPP
写真1
食品と容器
写真2
602
写真3
2009 VOL. 50 NO. 10
発した。バッグは1.5kgから6kgサイズのAriel洗
濯洗剤のパレット輸送に用いられ,80%のケース
重量削減だけでなく,20%の容量も削減した。
以前,P&G社はAriel洗剤の8袋を段ボールケー
スに入れて輸送していた。この大きな透明な3.3mil
(82.5μm)厚の単層PEフィルムの“Polyouters”
はリサイクル可能で,資源を削減し,道具なしで
写真4
開封できる。
40%のPCRPETを含む。
陳列ケース兼用輸送包装(写真6)
1年ちょっとの開発で,ConAgra社の冷凍食品
P&G社のもう1つの輸送用コンテナーも賞を
ブランド用トレーはHealthy Choice Select Entrées
獲得した。この新しい陳列ケース兼用バージョン
など約100種類に使われるようになった。
は同社のドイツ市場で“Allday feminine” 製品用
ト レ ー はAssociated Packaging Technologies:
として採用されている。新しい2ピースの輸送ケ
APT)社で開発され,種々の肉厚(注文に応じて)
ースは現在,トレー&フードの形態で構成され,
で熱成形されている。PCRはリサイクルされた飲
包材使用料を28%カットし,小売店でのアピール
料用PETボトルから得られる。
と保管効率を強化する。
一般的に,この種のトレーは清浄性が要求され
P&G社は小売店が店レベルでパッケージの量
るため,バージンのCPETで作られる。ConAgra
を削減したいという要望があることを知っており,
社はこの特殊用途でPCRを用いるため,FDAが
設定した要望に適合させた。
そのためより小さなパッケージに再デザインした。
ConAgra社の協力会社であるAPT社が独占権
トレー&フードのコンセプトは,店での労力と棚
をもつウルトラクリーンRPET樹脂は,直接食品
での消費者アピールを改善することであった。ま
に接触するFDAの規制に適合させている。ATP
た,印刷面を80%省くことでインクの使用量を減
社はこの材料を“RePET” と称している。
らした。
荷造り用フレキシブルフィルム(写真5)
P&G社のR&D部長は,このケースは年間1,500
ベルギーおよびトルコのProcter & Gamble社
トンの段ボールと375台のトラック輸送と180万ド
の“Invisible Case Polyouters” と称する荷造り
ルの材料コストを削減すると言う。
フィルムは,資源やエネルギーを最適化し,コス
工夫を凝らしたパスタソースパウチ(写真7)
ト効率がよく,性能強化が得られるとして高い評
ガラスジャーを常温流通のスタンディングパウ
価を得ている。環境負荷を低減するため,同社は
チに替え,構造材を70%削減するのは容易な仕事
段ボールケースに代わる透明フィルムバッグを開
で は な い が,Unilever社 のBertolli®とRagu®ソ
写真5
食品と容器
写真6
写真7
603
2009 VOL. 50 NO. 10
写真8
写真9
ース用のスタンディングパウチはそれ以上のこと
をやった。Amcor Flexibles社が製造するパウチ
写真10
は電子レンジ加熱が可能で,ソースはパウチ内で
環境に優しい生分解性ギフトパック(写真9)
迅速に加熱され,ほとんどゴミがでない。また,
Pangea Organics社のホリデイギフトパックは,
パウチのシェルフライフはガラスジャーに匹敵す
再生可能な生分解性リサイクルファイバーボード
るとUnilever社の環境対策のパッケージマネージ
で成形されたクラムシェル型カートン容器に,ボ
ャーは言う。
ディケア製品がリサイクル材で作られたクッショ
しかし,輸送メリットはかなり大きい。パウチ
ン 材 と と も に 収 め ら れ て い る。 容 器 はUFP
は一次包装では1オンス当たり95%の省資源を示
Technologies社で100%消費者から回収した新聞
す。一次包装と陳列トレーの2次包装の両者とも
紙で作られ,廃棄物を出さず,糊,染料を用いて
同サイズのガラス容器に比べ,70%の削減すると
いない。外面の装飾は植物性インクで印刷された
Unilever社は言う。充填されていないパウチは1
大きな板紙のバンドラベルのみである。
台のトラックでガラス容器25台分が積載できる。
植物の種が容器内に埋め込まれており,容器は
Amcor社は,PET/ナイロン/PP構成のバリア
使用後,プランターとして使用することができる。
ラミネーションに7色の裏面印刷された104μmの
ラベルを除去して,容器をフラットにし,24時間
パウチストックを製造している。この材料は酸素
水に浸漬し,約1/8インチを土に埋め込む。約
に敏感なソースの常温保存の課題を解決する。
2週間後,種子は発芽し,トウヒの木が育ちはじ
包材をカットしたブリスターパック(写真8)
める。
P&G社の制酸剤のPrilosec OTCタブレットカプ
スペースを節約する水差し型容器(写真10)
セル用ブリスターパックは,徹底改修された。経
オーストラリアのA&C Packers Pty社が再デザ
済性と性能強化に注目し,新しい構造は1枚のブ
インした20ℓの水差し型容器(jug)は,ビルト
リスターカードに2倍の錠剤が利用できるので,
インハンドルを2面につけ,メカニカルのTEク
消費者は1枚のカードで完全な処置ができる。こ
ロージャーを装着している。容器は“Chlorpyrifos
れはパッケージの廃棄を削減する。以前,Prilosec
500” 殺虫剤の輸送や保管効率が30%以上改善さ
は,peel-and-push方式のチャイルドレジスタント
れた。再使用やリサイクルも可能である。金属の
機能をもつ1枚のブリスターカードに7個の錠剤
ドラム缶から置き換えられた新しいデザインは,
を収納していた。しかし,製品は14日服用する必
スタッキング性や立法体効果が30%改善された。
要があるため,2枚のカードが必要であった。
注ぎやすいネックデザインは,漏れやはね飛び
Prilosecのチームは再デザインによって包材の
が生じにくい。不透明の白い容器はリサイクルが
使用量を半分にカットし,ブリスターシートをカ
可能で,水抜きパイプなどに作りかえられる。 ートンに入れた。1枚のシートで以前の2倍の錠
剤を収納し,錠剤は容易に取り出せる。
食品と容器
のり
604
Packaging Digest(U.S.A.)30('09・7)
文献No.5503
2009 VOL. 50 NO. 10
バ ナ ナ
た
き
やす
ひこ
多 紀 保 彦
( 東 京 水 産 大 学 名 誉 教 授 )
地で青いうちに収穫し日本に運んでから室〈むろ〉
■■■ 島バナナ
で熟成させた輸入バナナしか知らなかった私にと
バナナを木(厳密には木ではないが)から直接
って,新鮮な驚きだった。いわゆる三尺バナナ系
切り取って食べた初めての経験は,沖縄でのこと
で植物体は丈が低く果実も小ぶり,いま人気の“島
だった。この地が米国の統治下にあって渡航には
バナナ”と同じ系統なのだろう。
パスポートのような“身分証明書”が必要だった
同じくいま人気の沖縄産“完熟マンゴー”はな
ころ,通貨はドルだった。
かった。マンゴーの木そのものは当時すでにあっ
当時私は東京農大育種学研究所に勤務していた。
たというが,低木化とハウス栽培によって“完熟”
研究所の創設者で所長の近藤典生教授は,かの有
が生産できるようになったのは最近のことだ。マ
名な細胞遺伝学者の木原均先生のお弟子さんで,
ンゴーの輸入は,チチュウカイミバエの防疫のた
木原生物学研究所での“種なしスイカ”作出の実
め長く閉ざされていた。輸入が解禁になって,フ
戦部隊長だった方である。育種研では私も魚の染
ィリピンからのペリカンマンゴー〈カラバオマン
色体など一応は遺伝がらみの研究らしきものをし
ゴー〉にはじまりタイ,メキシコ,ブラジルなど
ていた。ただしこのときの沖縄行きは遊び半分の
からのさまざまな種類がスーパーに並ぶようにな
“サンゴ礁魚類調査”,学生3名帯同の貧乏旅行
ってから,まだ20年もたっていないだろう。
で,海岸にテントを張ったり漁業組合の板の間に
これに較べ日本へのバナナ輸入の歴史ははるか
寝かせてもらったりの毎日だった。
に古い。開始は明治36年(1903年)という。そう,
そんなある日,学生が知り合いの農家に招かれ
台湾からである。
た。庭先には何株かのバナナが植わっていて,食
べたい房を選べという。ひとりがこれと指さすと,
■■■ バショウ属
その家のおじさんはナタをかまえて茎の根本から
バナナはバショウ科バショウ属の多年生草本植
切り落とそうとするではないか。一同あわてて押
物,日本のバショウと同科同属だ。属名はMusa
しとどめると,おじさんは笑った。“バナナは1
〈ムサ〉で,バショウの学名はMusa basjoo〈ム
本の幹に1回しかならないんだよ”。あとで知っ
サ・ バ シ ョ ー〉, 栽 培 バ ナ ナ の ほ う はMusa ac-
たのだが,バナナの“幹”あるいは“茎”は葉鞘
uminata〈 ム サ・ ア ク ミ ナ ー タ 〉 とMusa balbi-
が円柱状に幾重にも巻いたもので,偽茎という。
siana〈ムサ・バルビシアーナ〉という2種の野
本物の茎は地下にある。
生種に起源する。バショウといえば日本でも暖地
完熟に近いこの木もぎバナナの味と香りは,産
なら露地で育ち,かの有名な俳号にもなり,沖縄
食品と容器
605
2009 VOL. 50 NO. 10
では芭蕉布となる植物だ。ただし日本のバショウ
まり受粉によって実を結ぶふつうの染色体構成で,
は中国あたりからの移入起源らしい。
種なし性は不完全なものだった。だがやがて完全
さてここからはバナナの栽培史に入るが,植物
な種なし個体も生まれ,さらには三倍体(3n)
学の門外漢が安易な受け売り解説はすまい。ここ
も出現した。三倍体は種子ができない。いま出ま
では主として「中尾佐助.1966.栽培植物と農耕
わっている中南米からのグロスミッチェルという
の起源.岩波新書」と「J. W. Purseglove. 1975.
品種や台湾バナナがこれである。
Tropical Crops: Monocotyledons. Longman,
他方,インドからフィリピンにかけてはムサ・
London」に基づくことにした。中尾佐助先生は
バルビシアーナが広く分布していて,その地域で
ヒマラヤ地方の調査や照葉樹林文化論の提唱で有
アクミナータの栽培がはじまると両種間で交雑が
名な方で,農大育種研にもときおりお見えになっ
起こり,さまざまな染色体組み合わせの雑種が出
ていた。大阪府立大の教授になられる前には木原
現した。生食よりは料理に適したplantain〈プラ
生物学研究所で研究をされていた。
ンティン〉と呼ばれるものが多い。プランティン
バショウ属は熱帯アジアにひろく分布し約40種
の本場はアフリカで,主食となっている地方が少
があるが,栽培バナナの起源となったのは前述の
なくない。
2種である。栽培はマレー半島を中心とした東南
■■■ 三倍体
アジアで始まったらしい。バナナも果実だから種
〈タネ〉があるが,野生のアクミナータのなかに
私の教え子で東京農大助教授で早世してしまっ
は受粉をしなくても種なしの果実ができる性質―
た鈴木淳志君との共著論文に,アユモドキ類の染
単為結果性―をもつものがあり,それを“選んで
色体についてのものがある。この類はアジアにひ
掘り取って,植えたり保護したりしたのが人類最
ろく分布しているドジョウの仲間で,論文の結論
初の農業だと考える人がいる”(中尾)という。
は,熱帯アジア産の種類の基本染色体数は100本
いまから5,000 ~ 10,000年の昔のことらしい。
で東アジア産の種類のそれは50本――つまり前者
このような単為結果個体は二倍体(2n),つ
は後者の染色体が倍加して生まれた四倍体(4n)
起源である,というものだ
った。
動物の体細胞染色体は卵
と精子由来の1セットずつ
計2セットからなる。これ
が二倍体だが,ときに多数
セットをもつ三倍体や四倍
体が出現する。彼らは繁殖
困難という宿命を背負って
いる。減数分裂がうまくい
かず卵や精子ができにくい
のだ。アユモドキは偶数倍
なのでなんとかなった。だ
が三倍体だとそうはうまく
運ばない。
ところが問題を巧妙に解
決した魚がいる。ギンブナ
だ。日本のフナにはキンブ
メコンの岸部に立つバナナ
食品と容器
606
2009 VOL. 50 NO. 10
ナ,オオキンブナ,ギンブナ,ゲンゴロウブナ,
した植物体は四倍体(4n),やがて花(2n)が
ニゴロブナ,ナガブナなどの種類がある。そのな
咲き,その雌しべに二倍体スイカの花粉(n)を
かでギンブナはもっとも広く分布しているポピュ
受粉させれば3nの種子ができる。“種なしスイ
ラーな種類だが,他のフナ類が染色体数100の二
カのタネ”だ。そして次のシーズン,この種子か
倍体であるのに対し,ギンブナは156つまり三倍
ら三倍体(3n)の植物体を育てる。種子はでき
体起源で,しかも雌が圧倒的に多く雄が少ない。
ないが,その雌しべに二倍体の花粉をつけると受
関東ではほとんどすべてが雌だ。だが産卵期にな
精せずとも刺激で果肉が肥大する――という仕掛
ると雌は全員集合して産卵し,卵は孵化して一人
けである。
前のギンブナになる。
自らの力で移動することができず,受精を風や
この雌だけでの繁殖―雌性発生―を可能にして
昆虫に頼ったりしなければならない植物は,球根
いるのは,減数分裂が完結せず染色体が半減しな
や株分けといった“栄養繁殖”を含め,かなり可
い卵をつくること,そして精子が侵入すると受精
塑性のある子孫維持戦略をもっているのである。
しなくても侵入の刺激によって発生をはじめると
■■■ ひと房100円 いう卵の性質である。精子は他のフナ類のもので
も,ウグイやドジョウのものでもいい。生まれる
いまから100年以上も前,台湾からの輸入がは
のは母親と遺伝子構成の同じ子供,つまりクロー
じまった頃は,バナナは貴重品だったことだろう。
ンである。
だが昭和10年代,私が小学生の頃には,珍重はさ
このような例は高等動物では稀だ。だが植物で
れたが特段の贅沢食品ではなかった。例の“たた
は三倍体やさらに高次の倍数体が子孫を維持して
き売り”もあった。その後,戦中・戦後の入荷途
いる種類が珍しくない。ヒガンバナはその身近な
絶の時期を経て,まず台湾からの輸入が再開し,
例だ。この植物は中国大陸から日本にかけて生育
さらにエクアドルそしてフィリピンからの輸入が
しているが,中国のヒガンバナは二倍体で種子繁
急増するに至り,バナナは大衆食品となった。い
殖をするが,日本産は三倍体で種子をつくらない。
ま日本への総輸入量は年間100万トン台,輸入額
だが彼らは平気だ。球根で殖えるのである。三倍
ではグレープフルーツやパイナップルなどの後塵
体は二倍体から生まれるから,日本のヒガンバナ
を拝しているが,量ではダントツだ。
の親元は中国のヒガンバナであるに違いない。お
戦後台湾からの輸入再開からしばらくして,あ
そらく人為的にもちこまれたものだろう。ではバ
れは東京の大塚でのことだった。当時大学2年生,
ナナも球根かというと,そうではなく地下茎から
知人の家の留守番を頼まれて大塚駅を降りた私は,
“吸芽”を出して殖える。
駅そばの八百屋に並ぶバナナに眼を吸い寄せられ
種なしスイカは,コルヒチンを使って人為的に
た。わが財布は軽かったが,その豊満な姿に魅せ
作出した三倍体である。コルヒチンは医薬品とし
られて買ってしまった。5本ついたひと房が100
て用いられるアルカロイドの一種だが,1930年代
円だった。先方の家に着く前に1本だけ,と食べ
に染色体を倍加させ四倍体をつくる作用をもつこ
出して,歩きながら全部食べてしまった。うまか
とが報告された。細胞分裂の際に紡錘糸の形成を
った。大学出の初任給が10,000円前後,育英会の
妨げ,分裂が中期で停止してしまうのである。こ
奨学金が月1,800円の頃である。
の現象に着目して,四倍体のスイカをつくってそ
味,栄養,種なし,オールシーズン性,そして
れを二倍体のスイカと掛け合わせ,三倍体の種な
なによりも可食部に手を触れることなく無菌状態
しを作出したのが木原先生,その片腕となったの
で手軽に食べることのできるフルーツ――バナナ
が近藤先生である。
は優秀食品である。駅前に白木屋デパートの支店
種なしスイカを作るには,まず普通の二倍体ス
があった当時の大塚の町並みを瞼に浮かべながら,
イカ(2n)の新芽をコルヒチン処理する。生育
いま,バナナとの長い付き合いを思うのである。
食品と容器
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特別解説
携帯型近赤外装置による 果実の樹上品質評価法
か わ の ・ す み お
九州大学大学院農学研究科
修士課程(農産機械専攻)
修了。農林省食品総合研究
所食品工学部流通工学研究
室研究員,同研究所分析栄
養部非破壊評価研究室長,
筑波大学教授併任,現在,
(独)農業・食品産業技術総
合研究機構食品総合研究所
食品分析研究領域非破壊評
価ユニット長。農学博士
河 野 澄 夫
D118)は,測定部,光学系(分光器および検出器),
1.はじめに
制御・演算用マイクロプロセッサー(CPU),表
各農家から共同選別施設(選果場)に搬入され
示部から構成された小型の分光装置である。光源
た果実は農家ごと,あるいは園地ごとに糖度選別
にはタングステンハロゲンランプ,分光器には回
機にかけられ,その選果データにより各農家の果
折 格 子, 検 出 器 に は リ ニ ア イ メ ー ジ セ ン サ ー
実が格付けされている。
(256nm波長)が用いられている。測定部のイン
しかし,糖度選別機は果実の品質を選別するだ
タラクタンス型のプローブ(光ファイバーの長
けで,品質を向上させる装置ではない。したがっ
さ: 1m) を 対 象 物 に 接 触 す る だ け で,600~
て,糖度選別機のメリットを最大限に発揮するた
1,000nmのスペクトルが数秒で測定される。イン
めには,質の良い産物を生産することが重要であ
タラクタンスプローブは中心部とリング状部から
る。
なり,リング状部から光が試料に照射され,試料
ほ
このような要求を満足させるため,圃場などの
内部で拡散反射された光が中心部の光ファイバー
現場で利用可能な携帯型の装置を用いた品質モニ
バンドルを介して検出部に導入,リニアイメージ
タリング技術に関する研究が行われている。
センサーで瞬時に検出される。通常,このような
ここでは,Saranwongら 1) が発表した「マン
スペクトル測定は本装置単体で行われるが,検量
ゴー果実品質の樹上モニタリング」に関する報文
線作成時のように多数の試料のスペクトル測定を
を中心にして,携帯型近赤外装置による果実の樹
室内で行う場合,装置に接続したコンピューター
上品質評価法について解説する。
側から専用のソフトを用いて本装置を制御するこ
とが可能である。すなわち,コンピューター制御
2.携帯型近赤外装置の現状
による小型の分光装置としての利用が可能になっ
携帯型近赤外装置は,肩にかけるショルダー型
ている。K-BA100の開発のコンセプトは,①非破
装置,拳銃の形をしたハンディー型装置,および
壊測定が可能である,②操作が容易である,③コ
糖度専用の糖度検出器に大別される。
ストパフォーマンスに優れている,④圃場などの
2.1 ショルダー型装置
現場で使用可能である,などであった。価格は
ショルダー型装置に株式会社クボタ製のK-BA100
100万円~200万円程度である。
けん
2)
がある(第1図) 。K-BA100(H240×W300×
食品と容器
608
2009 VOL. 50 NO. 10
2.2 ハンディー型装置
主要成分である水,タンパク質,脂質,デンプン
ハンディー型装置に株式会社果実非破壊品質研
の近赤外スペクトルである3)。吸光度は光の吸収
究所(現静岡シブヤ精機株式会社)製のFQA-
される程度が大きいほど高い値を示す。構成成分
NIRGUNがある(第2図)。FQA-NIRGUN(H210
の吸収バンドは,成分特有の原子団に基づくもの
×W88×D225)は,重量750グラムの拳銃型をし
で,
米および大豆のスペクトルにおいても内容成分
た小型の分光装置である。前述したK-BA100と同
様,測定部,光学系(分光器および検出器),制御・
演算用マイクロプロセッサー(CPU),表示部か
ら構成されている。測定部の先端を試料に接触さ
せ,装置の引き金を引くだけで,瞬時にスペクト
ルを測定することが可能である。専用ケーブルと
専用ソフトを用いることにより,FQA-NIRGUN
内のスペクトルデータをコンピューター側に転送
できる。通常,重回帰による検量線作成が行われ
るが,より複雑なスペクトル解析を行う場合は市
販のケモメトリック用ソフトを利用することも可
2)
第1図 ショルダー型装置(クボタ製,K-BA100)
能である。FQA-NIRGUNは,①総重量が750グラ
ムと軽量であることからどこへでも運べる,②一
回の充電で2000回以上の計測が可能である,③屋
外の環境でも使用可能である,④3成分が同時計
測可能である,⑤収集したスペクトルデータを保
存・転送が可能であるなどの特徴を有する。価格
は100万円~200万円程度である。
2.3 糖度検出器
果実糖度測定専用の携帯型装置として,東和電
機工業株式会社製の「アマミール(Optical Taster
TD-2000C)」や,株式会社アステムの「非破壊果
実糖度計(AMAICA)」が開発されている。前者
第2図 ハンディー型装置
(FANTEC製,FQA-NIRGUN)
はリンゴの糖度測定専用であり,後者は内蔵され
た検量線を選択することによりリンゴ,モモ,
日本ナシ,トマトなどの糖度を測定可能とし
3.近赤外分光法の原理
糖度選別機および携帯型装置は近赤外分光
ๆశᐲ
ている。価格は共に数十万程度である。
法の原理を応用している。そこで,その原理
について概説する。
対象物に照射する光の波長を変えながら,
光の減衰の程度(吸光度)を連続的に測定し
たグラフを近赤外スペクトルと呼ぶ。
第3図は米および大豆,並びにそれぞれの
食品と容器
ᵄ㐳 PO
第3図 米および大豆,並びにそれぞれの主要成分の
近赤外スペクトル3)
609
2009 VOL. 50 NO. 10
特有の吸収バンドが見られる。米,大豆のいずれ
粉のタンパク質含量を求める検量線はタンパク質,
の試料でも観察される1935nmの吸収バンドは主
デンプンおよび試料粒度の複数の情報から構成さ
に水によるものである。米のスペクトルの2100nm
れ て い る こ と が 分 か る。 第 4 図 の2180nm,
に見られる吸収バンドは主にデンプンによるもの
2100nmおよび1680nmにおける吸光度
{log
(1/R)
}
で,デンプン含量の少ない大豆ではこの吸収バン
を上記の式に代入するだけで,小麦粉のタンパク
ドは顕著でない。2180nmに見られるタンパク質
質を求めることが可能である。その他の産物用の
の吸収バンド,並びに2305nmおよび2345nmに見
検量線も同様の考えの基に作成される。
られる脂質の吸収バンドはタンパク質,脂肪含量
の多い大豆においてはっきりと見ることができる。
以上のように,近赤外スペクトルには複数の成
4.携帯型近赤外装置による樹上
での品質モニタリング方法
分の情報が含まれており,近赤外分光法において
現在,市販されている携帯型近赤外装置には果
は,これらのスペクトルから重回帰分析などの統
実の糖度,例えばリンゴの糖度などを測定する検
計的手法を用いて対象物の品質にかかわるいろい
量線がインストールされているものもあるが,そ
ろな情報が抽出,解析される。
のほとんどが収穫後の果物を対象とした検量線で,
農産物のような多成分を含む試料の特定な成分
樹上での未熟な果実は対象としていない。したが
の濃度を測定するには,検量線(モデル)と呼ば
って,樹上で未熟な果実をも測定対象とする場合
れる多項式(関係式)が必要になる。第4図は小
は検量線を作成し直す必要がある。また,測定が
麦粉のタンパク質含量Cpを求める例で,検量線
屋外で行われることから,次の事項について検討
は次式で示される。
する必要がある。
Cp=12.68+493.7×log(1/R2180)-323.1×log(1
(1)スペクトル測定時の直射日光の影響を除去す
/R2100)-243.4×log(1/R1680)
ること。
ここで,log(1/ R2180),log(1/ R2100),log(1
(2)試料温度に影響されない検量線であること。
/R1680)はそれぞれ2180,2100,1680nmにおける
(3)樹上における品質と食味時の品質の関係を事
吸光度である。2180nmはタンパク質の吸収バン
前に明らかにすること。
ド,2100nmはデンプンの吸収バンド,1680nmは
(4)モニタリングの詳細な手順を明確にすること。
成分に依存しない中立のバンドである。粉砕試料
個々の内容について次に示す。
の場合1680nmに粒度の情報が反映される。小麦
4.1 直射日光の影響の確認
屋外でスペクトル測定をする場合,直
射日光の影響を確認し,影響のある場合
はその対策を講じる必要がある。
第5図は携帯型装置によりマンゴー果
実のスペクトルを色々な光環境条件下で
測定した例である1)。すなわち,インタラ
クタンスのヘッドを果実の腹部にあて,
直
射日光下,屋外の日陰,室内,およびそ
れぞれの条件下で遮光用のカバーを用い
た場合の計6つの条件で測定が行われた。
図中,直射日光下および屋外の日陰で
測定したスペクトル(反射率)は,他の
スペクトルと比較して短波長側で上にシ
第4図 小麦粉のタンパク質測定用検量線の仕組み
食品と容器
610
フトしており,太陽光線の影響のあるこ
2009 VOL. 50 NO. 10
࿑䋵
とが確認された。764nmに観察される吸収バンド
0.9
は大気中の酸素による吸収である。この様な条件
0.8
下であっても,遮光用のカバーをすることにより,
スペクトルは他のスペクトルとほぼ同じ反射率と
以上のことから,屋外でインタラクタンスのヘ
ッドを用いてスペクトルを測定する場合,遮光用
764
ᣣ㒶
0.6
෻኿₸㩷㩿㩼㪀
なり,764nmに観察される吸収バンドは消滅した。
⋥኿ᣣశ
0.7
0.5
0.3
のカバーが必要であることが明らかとなった。
0.2
4.2 試料温度に影響されない検量線の作成
0.1
近赤外スペクトルは試料温度の影響を受ける。
ቶౝ
⋥኿ᣣశ㪂䉦䊋䊷
ᣣ㒶㪂䉦䊋䊷
ቶౝ㪂䉦䊋䊷
0.4
0.0
700
したがって,検量線作成時の試料温度とモニタリ
750
800
850
900
950
1000
ᵄ㐳㩷㩿㫅㫄㪀
ング時の試料温度が異なる場合,成分値の測定値
第5図 色々な光環境条件下で測定したマンゴー
1)
࿑䋶
果実のスペクトル(反射率)
に誤差が発生する。樹上などの現場では果実の試
料温度をコントロールすることは困難で,試料温
度の影響を受けない温度補償型検量線の開発が不
54
可欠である。
52
䊂䊮䊒䊮㩷㩿㩼㩷㪻㪅㪹㪅㪀
温 度 補 償 型 検 量 線 の 作 成 方 法 に つ い て は,
Kawanoらの方法4)がある。第6図は温度補償型
検量線の作成方法を図示したものである。すなわ
ち,検量線作成に用いるスペクトルを複数の異な
った温度で測定し,得られたスペクトルをすべて
50
48
46
44.5
44
42
40
38
統合して重回帰などのケモメトリックスの方法に
36
より解析することにより温度補償型検量線の作成
19.6
34
16
が可能である。第1表は通常型(試料温度の影響
17
18
19
を受ける)検量線および温度補償型検量線により,
果実温度の異なるモモ果実の糖度(Brix値)を推
検量線作成時の温度より5℃
5 ℃ 高 い 場 合0.20 °Brix高 め
バ イ ア ス は0.03 °Brix以 下 と
なり,温度補償型検量線では
試料温度の影響を受けないこ
とが分かる。マンゴー果実の
実験においても温度補償型検
量線の作成にこの方法が採用
1)
された 。すなわち,196個
のマンゴー果実のスペクトル
を,25,32および39℃に調整
食品と容器
22
23
24
第1表 重回帰によるモモ果実の糖度用検量線解析結果4)
(通常型と温度保証型の比較)
低 い 場 合0.33 °Brix低 め に,
に推定されるが,後者の場合
21
第6図 収穫時期の乾物・デンプン含量と
追熟後の食味品質との関係1) 定した場合のバイアス値(測定値のズレ)を示し
たものである。前者の場合,
20
ੇ‛㩷㩿㩼㪀
通常型 a)
温度補償型 b)
R
SEC
0.96
0.96
0.44
0.41
21℃
SEP
Bias
0.49
-0.33
0.41
-0.02
試料温度
26℃
SEP
Bias
0.44
0.05
0.39
-0.01
31℃
SEP
Bias
0.5
0.2
0.46
-0.03
R:検量線の作成時の相関係数,SEC:検量線の作成時の標準誤差,
SEP:検量線の評価時の標準誤差,Bias:バイアス,a)904,986,897nm 使用,
b)913,1042,753nm 使用,単位:°Brix
第2表 PLS回帰によるマンゴー果実の乾物・デンプン用検量線解析結果1)
(温度保証型)
波長範囲
乾物(%)
800 – 1000 nm
デンプン(%, db) 700 – 1000 nm
F
5
11
R
0.94
0.9
SEC
0.51
1.93
SEP
0.52
2.04
Bias
0.1
-0.17
F:ファクター,R:検量線の作成時の相関係数,SEC:検量線の作成時の標準誤差,
SEP:検量線の評価時の標準誤差,Bias:バイアス
611
2009 VOL. 50 NO. 10
して測定し,各温度のスペクトルを一つに統合し
て甘くなる果物である。したがって,最適収穫時
て検量線を作成した。第2表は乾物用およびデン
期を判定するには,収穫時の品質と追熟後の食味
プン用のPLS検量線の解析結果である。測定精度
品質との関係を予め解明することが不可欠である。
はSEPの値で乾物が0.52%,デンプンが2.04%(db:
マンゴーの実験では,収穫時の乾物・デンプン
乾物基準)であった。この検量線を用いることに
含量と追熟後の食味品質の関係が調べられた。す
より,試料温度に影響されない測定が可能である。
なわち,収穫した成熟度の異なる果実の乾物・デ
4.3 収穫時の品質指標と食味との関係の解明
ンプン含量を近赤外分光法により非破壊的に求め,
マンゴー果実の収穫時の主要成分はデンプンで
その同じ果実を25℃で5日間保存した後,その食
あり,収穫後の追熟期間にデンプンが糖に分解し
味が専門家により評価された。収穫時の成分品質
と追熟時の食味検査が同一の果実で行えることか
ら,次式のような精度の良い関係が求められてい
る5)。
SSC = 14.755 + 0.812DMc + 0.677ST
ここで,SSC:追熟時の可溶性固形物(°Brix)
DMc:収穫時の乾物(%)
ST:収穫時のデンプン含量(%, db)
さらに,良好な糖度を得るための収穫時の乾物
とデンプン含量の関係が調べられた。第6図は収
穫時期の乾物・デンプン含量と追熟後の食味品質
の関係を示したものである。図中の右上の区分は
適熟,左下の区分は未熟である。追熟後に適熟に
࿑䋸
第7図 樹上での果実品質指標のモニタリング
なるためには,収穫時期に乾物が19.6%,デンプ
ン含量が44.5%(db)以上あることが重要である1)。
23
ੇ‛㩷㩿㩼㪀
A
㩿㪸㪀㩷ੇ‛
22
4.4 樹上での果実品質指標のモニタリング
B
21
これまでの確認実験により,直射日光の遮断方
C
20
19.6
法,試料温度に影響されない検量線の作成,食味
D
19
の良好な産物を得るための収穫時期の主要成分と
18
その閾値が明らかになった。これらの知見を生か
いき
して樹上での果実品質のモニタリングを行うこと
䊂䊮䊒䊮㩿㩼㩷㪻㪅㪹㪅㪀
17
114
52100 107
㩿㪹㪀㩷䊂䊮䊒䊮
50
48
46
44
121
128
135
142
149
になるが,ここで重要な点は得られた検量線が限
はん
られた試料で作成されたため,汎用検量線になっ
B
A
ていないことである。すなわち,測定日および果
D
C
44.5
実熟度ステージが微妙にことなることから,推定
値に誤差が発生する可能性がある。そこで,樹上
42
40
で果実品質のモニタリングを行う場合,バイアス
38
36
100
チェック用の果実を収穫し,目的とする成分を従
107
114
121
128
135
142
来法により測定することが必要である。
149
⌕ᨐᓟᣣᢙ㩿ᣣ㪀
第7図の様にして樹上で測定した果実の乾物・
デンプンの推定値(バイアス補正後)の変化を第
第8図 樹上で同じ果実の乾物・デンプン含量を
モニタリングした結果1)
8図に示す。着果後日数が増加するにつれて両成
分とも徐々に増加した。追熟時の食味品質が良好
食品と容器
612
2009 VOL. 50 NO. 10
であるためには,両成分値が図中の点線の閾値を
確にすること,などを検討する必要がある。
超える必要がある。例えば,B果実の場合,着果
今後,この技術を普及させるためには,各地域
後日数が114日で乾物はほぼ閾値の19.6%に達して
の特産品ごとにシステム作りが必要であり,国・
いるが,デンプン含量は目標の閾値に達していな
県管轄の公設試験研究機関とメーカーとの共同研
い。すなわち,まだ収穫できないことになる。着
究が不可欠と思われる。
果後日数が121日になれば,両方の成分値が閾値
参 考 文 献
に達し,収穫に適する。同様な方法により,各果
実の収穫適期の判断が可能になる。
1)S. Saranwong, J. Sornsrivichai and S. Kawano:Ontree
harvesting quality evaluation of mango fruit with a
handheld NIR instrument. J. Near Infrared Spectrosc.,
11, 283-293 (2003).
2)株式会社クボタカタログより
3)岩元睦夫・河野澄夫・魚住 純:近赤外分光法入門,
幸書房,東京,p.53 (1991)
4)S. Kawano, H. Abe and M. Iwamoto: Development of
a calibration equation with temperature compensation
for determining the Brix value in intact peaches,
J. Near Infrared Spectroscopy, 3, 211-218 (1995).
5)S. Saranwong, J. Sornsrivichai and S. Kawano: Prediction
of ripe-stage eating quality of mango fruit from its harvest quality measured nondestructively by near infrared
spectroscopy, Postharvest Biology and Technology, 31,
137-145 (2004) 5.おわりに
以上のように,携帯型の近赤外装置を用いるこ
とにより樹上での果実品質指標をモニタリングす
ることが可能になりつつある。しかし,まだ技術
が成熟していないため,ユーザーの技量に負うと
ころが大きい。繰り返しになるが,樹上で果実品
質指標をモニタリングするためには,(1)測定
時の直射日光の影響を除去すること,(2)試料
温度に影響されない検量線であること,(3)収
穫時の果実品質と食味時の品質の関係を明らかに
すること,(4)モニタリングの詳細な手順を明
研究例会のご案内
食品膜・分離技術研究会(MRC)第21回秋季研究例会
◇日 時:2009年11月13日(金)9:45~19:00
◇場 所:㈶川口総合文化センター(11階大会議室)
〒332−0015 川口市川口3-1-1
TEL:048−258−2000 FAX:048−258−2100
(JR川口駅西口徒歩1分)
◇主 催:食品膜・分離技術研究会(MRC)
◇協力機関:東 京農工大学農学部付属硬蛋白質利用
研究施設
◇参加費:民間会社・特例会員:会員=30,000円/人,
非会員=40,000円/人。当会顧問・国公立研究
機関・大学等教育機関:会員=20,000円/人,
非会員=28,000円/人(10月20日までの申し込み
は早割扱いで,5000円引き)
◇参加者名簿記載締切日:2009年11月7日(土)
(7日以降でも参加受付)
◇参加申し込みおよび問合せ先
MRC本部事務局:〒332−0015 川口市川口1−1−3−3211
TEL&FAX 048−224−3336(事務局 渡辺敦夫)
e-mail:[email protected]
食品と容器
613
◇プログラム
挨拶 渡辺敦夫((MRC)会長)
①脱脂乳のナノろ過
佐藤幾郎(森永乳業株式会社)
②水処理膜の市場動向と最先端技術
峰岸進一(東レ株式会社)
③食品製造工場の食品衛生法に基づく水質管理
~水質検査の最近の話題~
川口寿之(㈶日本食品分析センター)
④生活の中の化学工学
『煮物は冷めるときに味がしみ
るというのはなぜ-伝熱と拡散のはなしなど-』
伊東 章(東京工業大学大学院)
⑤エマルションの相分離を利用した新温度履歴セン
サー 千葉一裕(東京農工大学大学院)
⑥膜の支持用紙の役割・性状
中川浩一(阿波製紙㈱)
⑦合成吸着剤を用いた機能性食品の分離精製技術
大倉幸洋(日本錬水㈱)
交流会(1階:ラウンジリリア)
2009 VOL. 50 NO. 10
特別レポート
日本における清涼飲料,ビール系酒類市場
-2009年の7・8月を振り返って-
さ
と冴えない動きで7月と同じく6%減で終了した。
清涼飲料の最新市場動向
上半期同様,景気復調はみられず,職域自販機の
市場全体7,8月ともに6%減,天候要因が大
影響はいまだ残り,さらに「数字をつくる」
(中堅
上半期(1~6月)の清涼飲料市場は本誌(第
メーカー)CVSでは商品寿命が短くなる中で,よ
50巻8号)のとおり,前年比2%減で着地も,
「夏
り厳しさが増す。カテゴリー別では,夏場商材と
の好天でまだ取り戻せる範囲」
(メーカー関係者)
いわれるミネラルウオーターや茶系の苦戦が目立
だった。それが7月には脆くも崩れた。昨年の大
った。一方,気温が低かったことに加え,新製品
幅増(14%増)の裏返しもあり,6%減と大きく
のあったコーヒー飲料はプラスに動いた。コーヒ
低迷した。挽回を期すはずの8月も盆明けまでの
ーが動いたこと自体が異常とも言えるが,
「夏がな
天候不順により,大きなマイナスを喫した。西日
かった」
(メーカー関係者)との声に象徴されるよ
本での天候不順は各社の出荷に多大な影響を及ぼ
うに,天候に大きく左右された夏と言えよう。1
し,盆明け以降数字上は上向いたものの,「単に
~8月累計では3%減まで後退,
「事実上,今年は
前年が悪かった裏返し」(大手メーカー関係者)
マイナス」(大手メーカー)との声も聞かれる。
もろ
ばん
第1表 2009年1~8月の主要各社の清涼飲料出荷実績前年対比(単位:%)
業界平均 サントリー
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
1~2月累計
102
96
98
101
97
99
94
94
99
102
99
101
104
102
102
100
92
101
1~3月累計
1~4月累計
1~5月累計
1 ~ 6 月累計
1 ~ 7 月累計
1 ~ 8 月累計
98
99
98
98
97
97
101
102
102
102
102
100
キリン
ビバレッジ
104
94
99
98
91
90
87
88
99
99
99
97
95
94
93
伊藤園
アサヒ飲料
109
101
97
105
105
109
99
100
104
107
97
100
110
100
104
99
96
102
101
102
103
104
103
103
101
104
103
103
102
101
大塚
グループ
92
90
105
90
90
97
87
89
91
96
94
93
94
92
92
ポッカ
カルピス
102
98
100
109
99
107
100
97
100
117
88
98
103
95
114
94
95
100
100
102
101
102
102
101
99
101
99
102
100
99
コカ・コーラ
合計
100
96
96
101
95
99
92
97
98
97
98
97
98
96
96
※コカ・コーラ合計は醸造産業新聞社推計。
食品と容器
614
2009 VOL. 50 NO. 10
ここでは,この夏商戦(7,8月)を振り返ると
「数字を押し上げた要因は〈ジョージア・ヨーロ
ともに,秋冬の主戦場・缶コーヒー商戦を占って
ピアン微糖〉のリニューアル」(コカ・ボトラー
いきたい。
関係者),「〈ファイア〉新商品三品の初動が好調
7月:昨年大幅増の裏返し,天候不順で6%減
で単月2ケタ増」(キリンビバレッジ)など各社
7月の清涼飲料市場は前年比6%減と大きな減
とも他飲料のマイナスを下支えした缶コーヒーの
少となった。昨年の大幅増(14%増)の裏返しに
姿がみえる。夏場の商品群が失速したことから,
加え,梅雨明けの遅れや関東・九州南部など梅雨
秋冬主力の「缶コーヒー頼み」
(メーカー関係者)
明けした地域でも荒天が続くなど天候要因が大き
の戦略に方針を転換している。ミネラルウオータ
く影響した。昨秋以来続いている職域の自販機の
ーはコカ社〈いろはす〉を除きマイナス。天候要
稼働率低下も大きく影響した形。メーカーで前年
因が直撃した形だが,大容量PETでの常態化し
並みを維持したのはサントリーのみ。累計は3%
た低価格に加え,小型PETでも価格要因による
減と1ポイント後退。「梅雨明けの大幅な遅れや
ブランド間格差が生じ始めている。比較的値段が
猛暑だった昨年の反動など天候要因が大きく影響
高い輸入ブランドは各社苦戦が続いている。「価
した」のはメーカー各社共通の見解。天候要因に
格に頼らないブランドの再訴求が必要」(メーカ
大きく左右される無糖茶やスポーツ・機能性飲料,
ー関係者)。店頭での特売価格も下落傾向で,炭
ミネラルウオーターに大きな影響が出た。ミネラ
酸飲料で2ℓPET138円,ミネラルウオーター1
ルウオーターは,サントリーを除きマイナスとな
箱で398円などの価格も散見された。
るなど,「夏場に売る」商材が動かなかった。「小
ミネラルウオーター小容量も「価格政策」に関心
型PETはサントリー〈天然水〉への流出もあるが,
清涼飲料市場を牽引してきたミネラルウオータ
炭酸への流出もみられる」(メーカー関係者)。炭
ーの小型PET商品は,メーカーのミネラルウオ
酸飲料はおおむね好調。コーラ飲料のみならず,
ーター事業の収益源として一定の価格を保ちつつ
透明炭酸〈三ツ矢サイダーオールゼロ〉〈ファン
成長してきたが,コカ・コーラシステムの新製品
タ・ゼロサイダー〉や果汁炭酸でも「ゼロ」商品
〈いろはす〉が発売3カ月で1億本を突破するな
が登場,市場での構成比を高めている。今後も「ゼ
ど好調な動きとなっていることから,CVSでの価
ロ」の炭酸飲料市場から目が離せない。一方,缶
格を巡り,メーカーの動きが活発になっている。
コーヒーは微糖を中心に出荷を伸ばした。気温が
コカ・コーラシステム〈いろはす〉は「おいしい
上がらない状況も追い風に。ただ,自販機台数の
と環境にいいを両立,双方で支持を広げている」
多いメーカーほど,職域での稼働率低下が響いた。
(同社)というように,発売以来好調な動きを示
8月:後半盛り返すも6%減と大きく低迷
す。加えて,CVS店頭価格が105円とNBでは最も
8月の清涼飲料市場は前年比6%減となった。
安いこともトライアルを増やす要因となっている
7月に続き低温多雨となった地域も多く,西日本
ようだ。これまで大塚ベバレジ〈クリスタルガイ
を中心に出荷が伸び悩んだ。職域自販機の台数減
ザー〉,サントリー〈天然水〉が110円で販売,い
やパーマシン(稼働率)が上がらない状況がいぜ
ぜん好調な推移をしているものの,両社とも〈い
ん続いた。中旬までよりは数字は持ち直したが,
ろはす〉の動向に神経を尖 らせる。これまで,
「単に昨年の数字が低かった裏返し」(大手メー
PB製品を除き,110円という価格がCVSでの最安
カー関係者)と市場全体の好転とはほど遠い状況。
値だったが,一段階下に舵を切った形で,〈いろ
メーカーで前年並みをキープしたのは伊藤園のみ。
はす〉の販売を各社注視している状況だ。「追随
月末にかけ数字を押し上げたのは,昨年のお盆過
して利益がでない状況にしたくはない」「一度下
ぎから失速した裏返しという数字上の対比に加え,
げた価格は戻らない」ことから各社値下げに対し
各社缶コーヒー商品の発売があったことが上乗せ
ては慎重な姿勢だ。2ℓの大容量PETが箱販売
要因。各社とも秋需の缶コーヒーの初動は好調で,
では100円を切り「売っても儲からない」状況だ
食品と容器
けん
とが
615
かじ
もう
2009 VOL. 50 NO. 10
けに,「利益の出る」小型PETをいかに価格・価
不振の要因は、天候不順と業務用需要の減退。
値を守り,各ブランドが存在感を示せるか重要な
特に今年の夏は、最終的に梅雨明け宣言が出なか
時期にきている。
った地域もあるなど、
長雨と低温にたたられて散々
ブランド内で微糖の「複数化」進み競合過熱
の夏となった。また、長引く景気低迷の影響で料
缶コーヒー市場で伸長を続ける「微糖」製品に
飲店需要が落ち込んでいることも響いた。ただ、
各ブランドから新製品の投入が相次ぎ,複数アイ
今年は天候要因が大きいものの、夏場の出荷が5
テムを持つブランドが増えてきた。微糖は缶コー
年連続で前年を下回ったということは、若い層を
ヒー全体の20%強まで拡大,CVS店頭でもスタン
中心としたビール離れを背景に、夏場のビール需
ダードの枠が狭まり,微糖のアイテム数が増えて
要そのものが漸減傾向にあることが根底にある。
いることを受け,各社注力姿勢が鮮明だ。スタン
ビール系酒類総計では低調だが、分野別にみる
ダード(砂糖・ミルク入り)と微糖の対比だけで
と動きは異なる。6~8月の3カ月出荷数量は、
なく,微糖内で競合が過熱,CVSなど主要売場で
ビールが7.8%の1ケタ減、発泡酒が16.3%の2ケ
は,次々に発売される商品に先行商品が押し出さ
タ減、新ジャンルが14.4%の2ケタ増と大きな違
れる状況もみられた。特にアサヒ飲料は年初から
いがみられる。3カ月間の総計数量に占める分野
微糖製品を相次ぎ発売,
〈ワンダ金の微糖〉に加え,
別構成比では、新ジャンルだけが上昇した。消費
プラス一品を展開,市場でのブランドの存在感を
者の節約志向による、新ジャンル支持の流れはさ
示す。逆にキリンビバレッジ〈ファイア・挽きた
らに強まっていることがうかがえる。以下、夏場
て微糖〉はCVS週販も高いレベルをキープ,「逆
3カ月の月別の動向は次のとおり。
に動かなかったことで,ブランドへの支持を獲得
6月 課税数量の総計は6.1%のプラスとなっ
できた」(同社)。微糖製品はミルクや砂糖が少な
たが、これは前年同月が天候不順により8.8%減
い分,
「コーヒー本来の味わいが引き立ちやすい」
と不振だったことの裏返しが影響したもの。前々
(メーカー関係者)ことから,各社コーヒー感を
年対比では3.2%のマイナス。また、今年の6月
訴求,味わいを訴求する商品が増えつつあること
は月間の営業日数が前年同月より1日多いことを
も背景にある。現在,微糖製品が単品展開のブラ
合わせて考えると、実質的にはかなり低調だった
ンドも違うタイプの微糖製品を模索する動きもあ
と言える。最近10年間の6月の月間課税数量の中
る。「味わい」の微糖製品と「健康志向」の微糖
では、昨年に次いで2番目に少ない数量だ。総計
と両極が形成されつつあり,さらに微糖を突き詰
に占める新ジャンルの構成比は29.5%で、今年2
めた「超微糖」など,ブランド内で複数アイテム
月(30.1%)、3月(29.6%)に次いで過去3番目
を保有し,自販機を含めて複数の商品を展開する
に高い構成比を記録した。
動きが目立っており,微糖のマーケティングの成
7月 11.8%の2ケタ減で、数量は最近10年間
否が今後のブランドの動向を左右しそうだ。
の7月の月間数量で最も少ない数量を記録した。
前年比が悪いのは前年同月が猛暑で大幅増(9.6
ビール系酒類の最新市場動向
%増)だったことの裏返しもある。ことしは全国
夏場3カ月の出荷、最近10年間で最低
的な天候不順がおおきく響いた。その中でも、新
今年の夏場3カ月間(6~8月)のビール系酒
ジャンルは伸び率は1ケタ台だったが、しっかり
類(ビール・発泡酒・新ジャンル)の課税数量は
とプラスを記録した。発泡酒の構成比は、新ジャ
第2表のとおり。6月は、6月の数量としては最
ンルが登場した以降で、最も低い月間構成比を記
近10年間で2番目に少なく、7、8月はいずれも
録した。
最も少なかった。このため、3カ月合計の課税数
8月 7月に続いて全国的な天候不順が災いし、
量は、最近10年間で最低数量を記録した。夏場3
6.0%減と低調。7月同様に最近10年間の8月の
カ月の数量はこれで5年連続で前年割れ。
月間数量としては最低を記録した。発泡酒は7月
食品と容器
616
2009 VOL. 50 NO. 10
第2表 2009年夏場3カ月のビール系酒類課税数量
6月
数量
前年比
(㎘)
(%)
ビ ー ル
297,378
100.4
発 泡 酒
117,454
94.4
新ジャンル
173,374
129.7
総計
588,206
106.1
ビール÷総計
50.6%(53.4%)
発泡酒÷総計
20.0%(22.4%)
新ジャンル÷総計
29.5%(24.1%)
7月
数量
前年比
(㎘)
(%)
314,732
85.6
109,460
76.8
160,441
105.2
584,633
88.2
53.8%(55.5%)
18.7%(21.5%)
27.4%(23.0%)
8月
数量
前年比
(㎘)
(%)
287,207
92.0
100,138
81.0
153,343
110.1
540,688
94.0
53.1%(54.3%)
18.5%(21.5%)
28.4%(24.2%)
第3表 缶製品に占める分野別構成比
6月
7月
8月
33.3
37.6
36.1
ビ ー ル
(35.7) (39.9) (37.2)
26.1
24.4
24.4
発 泡 酒
(30.3) (28.4) (28.8)
40.5
38.0
39.4
新ジャンル
(33.9) (31.7) (33.9)
6~8月
数量
前年比
(㎘)
(%)
899,317
92.2
327,052
83.7
487,158
114.5
1,713,527
95.6
52.5%(54.5%)
19.1%(21.8%)
28.4%(23.7%)
1~8月
数量
前年比
(㎘)
(%)
1,951,666
92.6
809,361
84.9
1,114,597
121.1
3,875,624
97.3
50.4%(52.9%)
20.9%(23.9%)
28.8%(23.1%)
第4表 家庭用における分野別構成比
1~ 8 月
31.7
(34.3)
27.9
(32.8)
40.4
(33.0)
6月
7月
8月
36.6
41.0
39.7
ビ ー ル
(39.5) (43.3) (41.1)
24.8
23.1
23.0
発 泡 酒
(28.5) (26.8) (27.0)
38.6
35.9
37.3
新ジャンル
(31.9) (30.0) (31.8)
《注》単位%,カッコ内は前年。
1~ 8 月
35.6
(38.4)
26.3
(30.6)
38.2
(30.9)
《注》単位%,カッコ内は前年。
に続き2ケタ減で、総計に占める構成比は7月を
缶製品、家庭市場とも新ジャンル主役に
さらに下回り、新分野登場後、最低を更新した。
6~8月の缶製品全体に占める分野別構成比の
また、発泡酒と新ジャンルの構成比の差は9.9ポ
推移(醸造産業新聞社推定)は第3表のとおり。
イントで、月間の構成比では過去最も大きく差が
前年の6~8月とも毎月ビールの構成比が最も高
開いた。
かったが、今年は新ジャンルの構成比が3カ月と
景気低迷で中元ギフトも低調
も最も高かった。特に6月は40%を超えている。
かつて、中元期のギフトでビールの占める割合
1~8月累計でも新ジャンルの構成比が他の分野
はかなり高いものがあったが、最近10年間の傾向
を大きく上回った。昨年の同期は3分野の構成比
をみると、底流としてのビール離れに加え、ギフ
がほぼ同じだったことと比べると様相が大きく変
トに対する消費者の考え方や販売店(百貨店、ス
わったと言える。メーカー各社から発売される今
ーパー等)の取り組み姿勢が変化したことで、年々
年の新商品の顔ぶれが新ジャンル中心となってい
ビールギフト需要の落ち込みが続いている。昨年
ることも、この傾向を象徴している。
までの5年間は、毎年3~5%減のペースで縮小
家庭用市場における分野別構成比(第4表)を
していたが、今年の中元期は9%減と落ち込み幅
みると、6月は新ジャンルの構成比が最も高いが、
が拡大した。この要因に関してビールメーカー筋
7月、8月はビールが最も高かった。これは、中
は、「長引く景気低迷に加え、天候不順だったこ
元ギフトが家庭用需要として加わるほか、ビール
とも心理的にビールギフト選択にマイナスの影響
の場合は瓶ビールの消費が加わるということも要
を与えた」と分析している。
因。ただ、1~8月累計でみると、新ジャンルの
なお、今中元期の4社のビール類ギフトセット
構成比が前年を大きく上回り、他の分野を上回っ
数量の合計は1,500万セット。これは8年前と比
た。特に発泡酒と比べると、前年同期は0.3ポイ
べほぼ半減。最近のビールを取り巻く環境や景気
ント差でほとんど変わらなかったが、今年は10ポ
動向、消費者のギフトに対する意識変化などを総
イント以上に差が開いた。家庭用需要では新ジャ
合すると、今後しばらくはビールギフト需要は落
ンルが完全に「主役」の座に着いたと言える。
ち込みが続くことが予想される。
食品と容器
617
(醸造産業新聞社 編集部)
2009 VOL. 50 NO. 10
業
界
ト
ピ
ッ
ク
ス
◇09年の日本茶飲料もマイナスへ
では85.5%と総市場のそれを大幅に上回ってい
08年は麦茶のみプラスも,寄与小さく
る。前年の構成比と比較しても0.7%アップして
2008年の日本茶飲料市場は,07年から2年連続
いる。一方,紙容器では成長著しいPBチルドが
のプラスが期待されたが,競合カテゴリーの伸び
規模が小さいながら増え続けており,紙全体を押
や天候要因,経済環境の悪化を背景にした生活防
し上げているようだ。日本茶飲料全体から見ると,
衛意識の高まりなど,さまざまな複合要因からマ
08年の紙容器は4.7%とわずか5%程度を占める
イナスを喫した。麦茶飲料のみが気を吐いたが,
だけだが,伸び率では13.7%増と大きな伸長を見
規模に勝る緑茶飲料,混合茶飲料が共に苦戦し,
せた。
マイナス成長を喫した。
PET,紙が増えていることは,取りも直さず
08年は3カテゴリーで3%減
缶容器の減少を意味している。08年の日本茶飲料
08年の日本茶飲料3カテゴリー合計実績は,箱
市場において,缶容器が全体に占める割合は9.9
数ベースで3.1%減の3憶2,699万箱,容量ベース
%と,遂に1割を切ってしまった。
で2.1%減の347万8,160㎘(ともにポストミックス
今年の日本茶飲料
を除く)となった。最大量の緑茶飲料と,それに
今年の清涼飲料総市場は,7月までの累計実績
続 く 混 合 茶 飲 料 が 前 述 の 通 り 苦 戦 し, 合 計 で
で2%減と苦戦している。市場では,炭酸飲料の
1,145万箱を減らしたのに対し,麦茶飲料の増分
みが気を吐いている状況だ。緑茶飲料は累計実績
はわずか85万箱に過ぎず,全体を押し上げるほど
で7%減,混合茶飲料が4%減とそれぞれマイナ
のポテンシャルは持ち合わせていなかった。
スで推移し,麦茶飲料は,プラスで推移している
日本茶飲料で最大規模の緑茶飲料は,05年をピ
が,3カテゴリートータルで見ると5%程度のマ
ークに減少が続いている。このピーク前後から競
イナスとなっている。
合関係にあったミネラルウオーターが拡大,炭酸
ちなみに,ウーロン茶は7月までの累計実績で
飲料も復活し,それらが減少の要因となっている。
3%減,ミネラルウオーターが同じく2%減と,
今年は,ミネラルウオーターがマイナス成長(1
無糖系飲料では“甘みの感じるもの”(カロリー
~7月累計実績で2%減)に転じているが,炭酸
ゼロタイプのコーラや透明炭酸,缶コーヒーなど)
飲料は引き続き好調に推移(同3%増)しており,
以外は,総じて苦戦している。約350万㎘の巨大
この煽りから緑茶飲料は引き続き苦戦,通年での
な市場を有する日本茶飲料にとって,ここからが
実績確保は厳しい状況にある。
正念場となろう。商品開発寄りの資本投下や,魅
容器別,缶容器構成比1ケタへ
力あるプロモーションに期待したい。
清涼飲料総市場の容器構成では,PET容器が
あお
(業界誌記者 戸田雅雄)
63.3%(08年実績)となっているが,日本茶飲料
第1表 日本茶飲料の年次別生産量
年次 単位
千箱
㎘
千箱
06 年
㎘
千箱
07 年
㎘
千箱
08 年
㎘
05 年
缶
32,110
239,800
31,100
220,300
29,800
211,090
25,890
183,390
食品と容器
緑
PET他
214,570
2,330,200
207,240
2,260,800
207,600
2,246,620
206,510
2,247,810
茶
計
前年比
246,680 115.4
2,570,000 115.9
238,340
96.6
2,481,100
96.5
237,400
99.6
2,457,710
99.1
232,400
97.9
2,431,200
98.9
麦
缶
PET他
670
14,980
5,980 177,540
290
15,160
2,590 179,700
250
18,250
2,230 210,980
240
19,100
2,140 222,780
618
茶
混 合
計
前年比
缶
PET他
15,650
98.2 7,520
57,990
183,520
99.1 61,000 652,800
15,450
98.7 7,050
65,890
182,290
99.3 57,200 732,900
18,500 119.7 7,810
73,890
213,210 117.0 63,370 817,630
19,340 104.5 6,140
69,110
224,920 105.5 49,820 772,220
茶
計
前年比
65,510
81.5
713,800
82.5
72,940 111.3
790,100 110.7
81,700 112.0
881,000 111.5
75,250
92.1
822,040
93.3
2009 VOL. 50 NO. 10
〜〜〜〜 技術用語解説 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(4)粉末スープ,インスタントコーヒー,粉末
そ
味噌,粉末カレーの素,各種香辛料,凍結乾燥食
可食性フィルム
(Edible film)
品などの包材(ヒートシール可),(5)可食性ラ
ップフィルム,(6)食品の積層化(バインダー
フィルム)などとして用いられる。
可食性フィルムは,古くからばれいしょやかん
大豆タンパクフィルム
こ
しょのでん粉を糊化(アルファ化)し,それを急
大豆タンパクフィルムの特性として,柔軟性が
速乾燥して作ったオブラートがよく知られている
あり,機械適性,ヒートシール性があり,充填・
が,今ではこれ以外にもプルランや大豆タンパク
フィルムなどいろいろなものが製品化されている。
これらを原料としてつくられたフィルムの多くは,
無味無臭で可食であることはもちろん,ヒートシ
製袋機により連続包装が可能である。湿潤強度が
あり,薄くて透明感があり,水分の多い食品を包
装することができる。フィルムに着色,着香も可
能である。用途としては,ネット付きロースハム,
ールによって製袋加工できる,光沢と透明性に優
焼き豚,リテーナーベーコンなどの可食性フィル
れ,引っ張り強度に優れている,可食性インキな
ムとして用いられている。このフィルムを使用し
どにより印刷することができるといった特徴を持
たベーコンは,従来のセロファンに比べて包材の
っている。用途としては,外袋として使用したの
はく
剥離作業がない分,作業性が良くなる利点がある。
では水分を吸収して溶解,腐敗が進んでしまうた
コラーゲンフィルム・シート
め,たとえば食品の内袋として使用し,可食性フ
コラーゲンは,動物の結締組織のコラーゲン,
ィルムで作った袋のままお湯をかけて食べるとい
主に牛の皮の真皮層を原料にして作られる。牛皮
った使い方などさまざまな工夫がされている。ま
の真皮層を消石灰の液に浸漬し,不純物を除去す
た,原料の段階で香料,着色剤などを練り込んで
るとともに組織を軟らかくする。コラーゲン繊維
おくことで,さまざまな香りや味を持ったフィル
がほぐれるようにした後に中和し,酸で膨潤させ
ムが得ることができ,フィルム製造時にゲル化剤
て機械的に解繊,微細化処理,希酸に薄く分散さ
などとの併用により溶解速度をコントロールし,
用途に合わせた特性を持たせることも可能である。
可食性フィルムには,水溶性の炭水化物系(多
せ,押し出してコラーゲンケーシングを作る。こ
のケーシングの特性は,天然ケーシングと同様に
くん
可食であり,薫煙成分が透過して中に風味が着き,
糖類系)と非水溶性のタンパク質系(大豆タンパ
肉詰めや結さつなどの操作にも破袋せず,衛生的
ク質系と動物性のコラーゲン等)がある。この中
に良く,形状や色などの外観が良いことなどが挙
から主なものを紹介する。
げられる。ウィンナーソーセージ,フランクフル
プルランフィルム
トソーセージ,などに多く使われている。
プルランフィルムは,Aureobasidium Pullulans
という黒酵母が菌体外に産生する多糖類(プルラ
ン)から作られる可食性フィルムである。乾燥時
参 考 文 献
はガスバリアー性が高く,耐油性があり,透明性
1) 特 許 庁「 標 準 技 術 集 食 品 用 包 装 容 器 」: http://
が良く,ヒートシール性もある。印刷適性,機械
www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/
syokuhinyou/mokuji.htm
適性,保香性も良く,冷水にも温水にも速やかに
2)横山理雄「最新 食品用機能性包材の開発と応 用」,
溶解する。用途としては,(1)フィルムを用い
日本食品包装研究協会編,シーエムシー出版発行,
て食品への絵付けなどを行う印刷用(フィルムは
114-123(2006)
水分で溶け印刷だけが残る),(2)着色・着香し
((独)農業・食品産業技術総合研究機構
たフィルムをハートや星型に型抜きし菓子などに
付ける装飾用,(3)ペースト食品,ハム・ソー
食品総合研究所 石川 豊)
セージ,魚卵などの包装に用いる可食性成形容器,
食品と容器
619
2009 VOL. 50 NO. 10
業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より
業界の話題
食品ニューテクノロジー研究会講演:
「ナノスケール
べると数十分の一程度であり,はるかに小規模で
食品の開発状況と今後の展望」
(独)農研機構 食品
ある。しかしながら,ナノスケール食品の開発は
総合研究所 ナノバイオ工学ユニット長・杉山滋氏
始まったばかりであり,その特性の解明と今後の
展開いかんでは,急速に市場が拡大することも考
(日食 2009/08/14 日付)
ナノテクノロジーの概念は,1970年代にすでに
えられる。
提唱され,工業分野では80年代から90年代初頭ま
そこで,農林水産省では,平成19年からナノス
でに,材料分野,IT・エレクトロニクス分野を
ケール食品素材の特性評価と生体影響の検討を目
中心として急速に開発が進み,現在では,エネル
的とした委託研究プロジェクト「食品素材のナノ
ギー産業,機械産業から航空宇宙産業に至るさま
スケール加工及び評価技術の開発」を開始してい
ざまな分野でナノテクノロジーが利用されている。
る。工業製品においては,ナノテクノロジーの範
食品分野でのナノテクノロジーの応用は,工業分
囲を,ナノサイズの特性が現れやすい領域,すな
野に比べて進んでいなかったが,近年になって,
わち特徴的なサイズが100nm未満であるものとし
ナノスケールの食品およびナノテク応用食品関連
ているが,食品においては,ナノスケール食品の
製品の開発が始まり,すでに上市されているもの
研究開発そのものが初期段階にあることもあり,
もある。
明確な定義は定まっていない。
ナノスケールをうたった食品については,これ
食品は,工業材料などとは異なり,数十μmの
までにも市場に出ているが,その数は,まだそれ
サイズにおいて,すでに食感や加工特性に大きな
ほど多くない。米国のWoodrow Wilson Center
変化が表れるため,上記プロジェクトでは,ナノ
のProject on Emerging Nanotechnologiesでは,
メートル領域に加えて,100μm以下のマイクロ
さまざまなカテゴリーのナノテク製品情報を収集
粒子も研究対象に含めている。現在,プロジェク
しているが,その中には食品および食品関連製品
トは開始後2年を経過したところであるが,すで
(Food and Beverage)も含まれている。この中
に実用につながりそうな成果も得られている。
にリストされている食品製品は4種類に過ぎない
例えば数十μmに微細化全粒粉を使用した,滑
が,ミセルなどのナノスケールキャリアに有効成
らかな食感を持つ全粒粉パンが開発され,試験販
分を保持させたサプリメント類は43種類と多い。
売を開始している。また,水産物を数ミクロンに
食品用の保存容器や調理器具も28種類が掲載され
微細化した加工食品も実用化に近づいており,マ
ている。このリスト以外にも,国内外でサプリメ
イクロ・ナノテクノロジーによって,新規な特性
ントとして市販あるいは食品添加物として利用さ
を持つ食品開発が可能なことが実証された。
れている例がある。
一方で,ナノスケール食品については,その安
一方,ナノスケール食品ないし容器などを含む
全性を正しく評価することも非常に重要であり,
食品関連ナノテク市場は,世界において,06年に
プロジェクトでは,食品微粒子化技術の開発と並
約7000億円,10年には約2兆円規模に膨らむとの
行して,吸収性評価や生体影響評価による安全性
予測がある。また,日本国内に関しては,05年時
に関するデータの蓄積も進めており,海外の動向
点で10億円,10年に200億円,30年に2500億円と
ともリンクしつつ研究を遂行していく予定である。
予測されている(ナノスケール食品のみ,関連ナ
ノテクは含まず)。
大和製罐,インプレス社とリシール容器の欧州独
この市場規模は,ナノテク化粧品などと比べて
占販売で包括契約
も現時点では小さく,さらにエレクトロニクスや
大和製罐とインプレスグループBV(インプレ
エネルギー産業関連などのナノテク工業製品に比
ス社)はこのほど,欧州における大和製罐のリシ
食品と容器
620
(日食 2009/09/14 日付)
2009 VOL. 50 NO. 10
業界の話題
ール容器に関する独占販売に関する包括契約を締
結した。今回の契約は,大和製罐が2000年から事
食品ニューテクノロジー研究会講演:「遺伝子組
業展開してきたボトル缶で,インプレス社に対し
換え作物の検知手法開発」独農研機構 食品総合
て欧州での独占販売権を与えるもの。対象はニュ
研究所 GMO検知解析ユニット 橘田和美氏
ーボトル缶(清涼飲料・ワインなどのアルコール
飲料向けのアルミボトル缶),ミニボトル缶(ド
遺伝子組み換え(Genetically Modified=GM)
リンク用100mℓ小容量),WORC缶(コーヒー,
農作物の世界的な商業利用が拡大・進行している。
スープなど飲料向け170gスチールボトル缶)。契
食品としての利用もすでに10年以上の経験を有し,
約の第一段階として同社は,欧州のインプレス社
わが国で利用される大豆,トウモロコシの最大の
に対してプロジェクトチームを作ってサポート体
供給国である米国におけるGM大豆,GMトウモ
制をとり,ボトル缶を供給する。次に,合弁会社
ロコシの栽培割合はそれぞれ92%,80%に達して
を欧州に作り,現地で生産を行う。
いる。わが国では,GM農作物について科学的に
インプレス社(フランシス・ラベーCEO)は
安全性評価を行い,安全性審査を終了したものの
オランダに本社を置き,欧州を中心に北米はじめ
み流通が可能となる仕組みが確立されており,
世界21 ヵ国56製造拠点で食缶,スプレー缶など
2009年4月現在食品として利用可能なGM農作物
を製造する金属容器業界のグローバルリーダー。
は98品種を数える。
特にシーフード界では世界のリーダーであり,レ
このような背景のもと,消費者の商品選択の幅
トルト加工食缶では欧州およびオセアニア地域で
を広げるため2000年からGM食品に関する表示制
2位,スプレー缶では欧州およびオセアニア地域
度が実施されている。GM農作物,あるいはGM
のリーダーだ。08年売上高2303億円,欧州15拠点,
と非GMが不分別の農作物を含む食品は,「遺伝
北米2拠点,その他日本,サモアなど4拠点の生
子組み換え」「遺伝子組み換え不分別」などの表
産体制を持つ。従業員8000人。
示が義務づけられている。一方,GM農作物栽培
大和製罐は,消費者ニーズの変化に対応させつ
国からの輸入原材料であっても,栽培から加工ま
つ,環境負荷を継続的に軽減させる金属容器を開
で分別生産流通管理(IPハンドリング)を行って
発していかなければならないと考えている。付加
いるものについては,任意で「遺伝子組み換えで
価値が高く,より高品質の商品を欧州市場で展開
ない」などと表示することが可能となっている。
したいと考えていた。インプレス社も消費者ニー
しかし,GM農作物栽培国からの輸入の場合,
ズと環境面で同社と同様の見解を持っており,環
現状の流通実態からGM食品の意図しない混入は
境負荷軽減では金属容器が最適だと考えていた。
起こり得る。そこで,わが国では,大豆,トウモ
欧州での金属缶の将来を考えた場合,技術革新の
ロコシなどについてIPハンドリングが適切に行わ
必要性を感じていたことから,レトルトが可能で
れている場合には,5%以下の非意図的な混入は
リシールができる同社のリシール容器を高く評価
許容されている。従って,
「遺伝子組み換えでない」
し,今回の契約締結に至った。
と表示されている食品であっても,組み換え体の
同社は以前から欧米,台湾,韓国など海外市場
混入およびその検知は起こり得る。国による表示
に向けて日本で培ってきた製缶技術を生かして販
制度の監視,さらには企業による製品の品質保証
売展開を図り,市場開拓を進めてきた。米国では
にも定量分析が必要であるため,わが国では食品
2005年からイリノイ州にあるDSC社がエアゾール
総合研究所などを中心とするグループにおいて,
缶の生産を開始しており,
得意先から高い評価を受
GM農作物の検知技術を開発し「標準分析法」と
け,現在ではさらに設備増強の計画に入っている。
して公表している。
食品と容器
621
(日食 2009/09/16 日付)
2009 VOL. 50 NO. 10
業界の話題
GMトウモロコシなどの定量のための「標準分
gmdaizu.htmlを参照)
析法」は,リアルタイムPCR法を用いたもので,
その最大の特徴は定量のための検量線作成に種子
食品ニューテクノロジー研究会講演:「米および
ではなくプラスミドを標準物質として用いること
米加工品のDNA判定技術」
である。プラスミドは大腸菌により安定生産でき
新潟大学農学部応用生物化学科教授・大坪研一氏
るので,一定コピー数の高品質な標準物質の大量
調整が可能となった。GMトウモロコシ5種,
近年,食品の偽装表示が増加し,消費者の食品
GM大豆1種を特異的に検知できるPCR用プライ
表示に対する信頼が揺らいでいる。また,わが国
マーを設計し,その増幅産物をプラスミド上につ
で多大な労力と年月をかけて育成された優良品種
なげたPCR用の標準物質を開発したが,これらに
が不正に海外に持ち出される事例があり,育成者
ついては入手可能となっている。
権の保護が必要とされている。
リアルタイムPCRを用いたGM農作物の定量は,
コメの品種,産地などは,JAS法によってその
現在のところその絶対量を知る方法がないため,
表示が義務づけられており,内容物と表示の異同
該当する作物が必ず持っている内在性遺伝子に対
を科学的に検証する技術が必要である。また,こ
する組み換え遺伝子の存在比率から相対的にGM
れらの加工品についてもDNA判別技術の開発・
農作物の混入率を計算している。具体的には,混
実用化が必要とされている。筆者らは,こうした
入率未知試料について,抽出したDNA中の内在
ニーズに応えるために,精米などの判別に加えて,
性遺伝子特異的なDNA配列のコピー数に対する,
米飯や糯,米菓など,コメ加工品を試料とする
組み換え遺伝子特異的なDNA配列のコピー数を
DNA判別技術の開発も行っている。
測定し,混入率(%)を求めている。この際,そ
1995年の食糧法改正でコメの品種などの表示が
れぞれのコピー数は,前述のプラスミドを用いた
推奨されることが見込まれ,その際の表示と内容
検量線から求める。また,式中の内標比(Cf)は
物の異同を科学的に検証することが必要であった。
各組み換え系統特有の値として公表されている。
当時の食糧庁品質管理室,農水省農業生物資源研
GM農作物の検知法でも明らかなように,食品
究所と共同で精米を試料とするDNA品種判別技
の分析法は,科学技術の進展により飛躍的に進歩
術の開発に取り組み始めたのが93年であり,2年
を遂げている。昨今,分析結果の信頼性が強く求
後に,RAPD法(ランダムプライマーを使用する
められ,信頼性確保のための内部質管理の必要性
PCR)によって94年産の作付け上位10品種の識別
も認識されるようになってきた。この内部質管理
が可能になった。
には,分析対象成分の認証値が決められている認
RAPD法の場合には,操作が煩雑となり,多数
証標準物質(CRM)を利用することが望まれる。
の共通バンドの中から識別バンドを選定し,識別
食研では,GM種子と非GM種子の粉砕物を混合
する必要がある。そこで,PCR用のプライマーを
し,認証値として「標準分析法」で測定したGM
新しく設計し,STS化プライマーを開発した。こ
濃度を付与したものを組成CRMとして生産・配
れによってRAPD法の問題とされていた再現性,
付することとし,GM大豆とGMトウモロコシの
識別誤認の問題が解決された。さらに,これらの
標準物質生産についてISOガイド34およびISO/
複数のSTS化プライマーを同時に使用する「STS
IEC17025に基づく認定を取得した。現在GM大豆
化マルチプレックス法」を確立した。これにより,
を含むCRMを頒布しており,今後は,GMトウモ
1回のPCRで識別バンドのみがバーコードのよう
ロコシを含むCRMの頒布も予定している。(URL
に現れ,簡易に再現性よく品種識別を行うことが
:http://nfri.naro.affrc.go.jp/yakudachi/iso/
可能になった。
食品と容器
622
(日食 2009/09/16 日付)
もち
2009 VOL. 50 NO. 10
業界の話題
筆者らは,96年に米飯試料向けDNA抽出精製
によって産地の判別が可能であるかどうかを検討
法として,「酵素法」を開発した。この方法の特
する必要がある。新潟県産コシヒカリは,05年産
徴は,耐熱性のα-アミラーゼとプロテアーゼKを
から全県を挙げて,いもち病に強いコシヒカリ
用いることにより,DNA分解酵素の作用を抑え
BLに作付けが転換された。筆者らは新潟県農総
ながら糊化デンプンと変性タンパク質を分解除去
研と共同で,いもち病抵抗性に着目したDNAマ
し,DNAの抽出・精製を容易にする点である。
ーカーを開発することで,コシヒカリとササニシ
こうして米飯一粒の場合にも,主要な品種の識別
キにおいて,同質遺伝子系統を識別する技術を開
が可能になった。
発した。同技術を基に05年,実用的マルチプレッ
コシヒカリは,その良食味性と広域栽培適応性
クスプライマーセットとしてタカラバイオ社を通
から,流通量は最も多く,高価格で取引されるた
じて市販を開始した。
め,偽装表示の多い品種であった。そこで,筆者
このいもち病抵抗性に着目した判別技術は,行
らは前述のSTS化マルチプレックス法による「コ
政や農業生産者が産地や年産によってBL使用の
シヒカリ判別キット」を2001年に開発した。この
有無や配合割合を変える時代となるならば,産地
場合,(1)マルチプレックス化(2)各県のコ
や年産を判別するための貴重なマーカーとなるこ
シヒカリ同士での共通性の確保(3)近縁品種で
とが期待される。
も異品種は識別可能—という3点が重要であった。
次いで,筆者らはDNA食味推定技術の開発を
次いで翌年,混米検出用の「コシヒカリネガキッ
目的に研究を行い,コメの主成分である澱粉やコ
ト」の開発を行った。この場合は,(1)全国の
メタンパク質などに関係するプライマーを使用し
コシヒカリの原種で,識別バンドが全く現れない
たPCRの結果,重回帰分析によって重相関係数が
(2)コシヒカリ以外の品種の場合には,何らか
約0.9の推定式を作製した。これらの推定式につ
の識別バンドが出現する—という2点がポイント
いて,未知試料を用いて検討し,適用性を確かめ
になった。こうした技術開発で不正混米は年々減
た。このDNA食味判別技術は,半粒良食味選抜
少している。このほか,北海道産米同士の識別や
技術に発展する可能性もある。この技術を実用化
食品企業が委託炊飯している原料米判別用のプラ
するためには,葯培養などの半数体固定技術の適
イマーセットなども開発,実用化してきた。
用が必要である。
もち米加工品製造に,ワキシーコーンを混合し
醸造酒には,ワイン,ビール,日本酒などがあ
て使用する場合があり,製品の物性調節やコスト
り,発酵過程におけるDNAの分解,発酵微生物
ダウンなどのメリットがある。しかし,「水稲も
のDNAの混在あるいはPCRを阻害する色素成分
ち米100%使用」などと表示すると,消費者の信
の共存などの問題のため,原料植物のDNA品種
頼を損なうことになる。筆者らは新潟県農総研お
判別は困難とされていた。筆者らはPCRが可能な
よびたかい食品と共同で,もち米加工品における
鋳型DNAを調製する技術を開発し,麹 菌や酵母
ワキシーコーン検出技術の開発に取り組み,コー
などのDNAは増幅せず,植物由来DNAのみが増
ンの主要タンパク質であるゼインの遺伝子の塩基
幅する酒米やブドウ品種同士の判別に適したプラ
配列および澱粉合成酵素の遺伝子の塩基配列に基
イマーを選定あるいは開発し,これらのプライマ
づいて,混入コーンをPCR法で検出するプライマ
ーによるPCRの最適条件を選定した。同技術は,
ーを設計した。
日本酒やワインなどの醸造酒を試料とする原料米
この結果,もち米加工品における混入コーンの
や原料ブドウ判別に関する基礎技術であり,今後,
検出が可能となった。同一品種のコメでも,産地
醸造などの専門研究機関と共同で,酒米の多型や
によって食味や価格が異なっており,DNA解析
本技術の適用性について検討する必要がある。
こ
やく
こうじ
でん
食品と容器
623
2009 VOL. 50 NO. 10
今月の統計
(本)
250
(キリンビール株式会社調)
228.9
211.5
※ 日本の消費量については,ビール,発泡酒,新ジャンルの合計。
大びん(633㎖)換算本数
200
176.2 167.6
159.4
142 138.8 137.6 135.9
170.8
130 126.4
122 120.1
142.6 142 138.1
136.5 130.2 129.7 125.3
109.6 107.4
93.5 91.9 90.2 88.5
121.7 119.9
77.7
108.1 97.2 92.6 91.3
85.7
88.8
45.7
150
100
50
0
第1図 2007年国別一人当たりビール消費量
(千㎘)
200
(財団法人 日本清涼飲料検査協会調)
2009年
2008年
150
100
50
0
1
2
3
4
5
6
7
8
(月)
第2図 炭酸飲料のJAS格付実績・月別推移
第1表 炭 酸 飲 料 のJAS格 付 実 績(2009年1~8月 累 計)
缶
炭酸水
3,217
クリームソーダ
25,651
果汁5%未満
1,028
果汁10%未満
フレーバー系
68,600
コーラ
167,083
透明飲料
73,573
炭酸入りドリンク
3,648
その他
3,418
合計
346,218
容器別構成比(%)
35.2
前年容器別構成比(%)
34.2
食品と容器
格付数量(㎘)
ビン・他
計
6,983
10,200
24,075
49,726
1,028
131,138
199,738
229,521
396,604
197,596
271,169
26,610
30,258
20,169
23,587
636,092
982,310
64.8
100.0
65.8
100.0
624
缶
122
90
71
94
90
91
16
46
86
-
(財団法人 日本清涼飲料検査協会調)
前年同期比(%)
品種別構成比(%)
ビン・他
計
缶
ビン・他
計
61
73
0.9
1.1
1.0
99
94
7.4
3.8
5.1
71
0.3
0.1
111
105
19.8
20.6
20.3
60
70
48.3
36.1
40.4
110
104
21.3
31.1
27.6
93
59
1.1
4.2
3.1
69
64
1.0
3.2
2.4
82
83 100.0
100.0 100.0
2009 VOL. 50 NO. 10
今月の統計
第2表 2008年国別ビール生産量
(キリンビール株式会社調)
順位 国 名
2008
1 中国
2 アメリカ
3 ロシア
4 ブラジル
5 ドイツ
6 メキシコ
7 日本※
8 イギリス
9 ポーランド
10 スペイン
11 ウクライナ
12 オランダ
13 南アフリカ
14 ベネズエラ
15 カナダ
16 ルーマニア
17 タイ
18 チェコ共和国
19 コロンビア
20 韓国
21 ベトナム
22 ベルギー
23 オーストラリア
24 アルゼンチン
25 ナイジェリア
世界総合計
2008年 構成比 対前年 5年前 10年前 2003年 構成比 順位 1998年 構成比
(千㎘) (%)増減(%)増減(%)増減(%) (千㎘) (%) 1998 (千㎘) (%)
41,031 22.7
5.5 61.1 108.9 25,463 17.2
2 19,640 14.8
23,011 12.7 -1.2 -0.5 -1.5 23,132 15.6
1 23,370 17.6
11,400
6.3 -0.6 51.6 235.8
7,521
5.1
8
3,395
2.6
10,340
5.7 -0.4 -1.8 26.8 10,530
7.1
4
8,156
6.1
10,286
5.7 -1.1 20.7 -7.9
8,523
5.8
3 11,170
8.4
8,234
4.5
1.7 24.0 47.8
6,642
4.5
7
5,570
4.2
6,132
3.4 -2.8 -6.2 -15.0
6,535
4.4
5
7,215
5.4
4,947
2.7 -3.6 -14.7 -12.7
5,801
3.9
6
5,665
4.3
3,560
2.0
0.3 30.4 76.1
2,730
1.8 13
2,022
1.5
3,340
1.8 -2.8
8.9 33.6
3,068
2.1 10
2,499
1.9
3,203
1.8
1.5 92.4 362.2
1,665
1.1 31
693
0.5
2,650
1.5 -2.8
5.5 10.5
2,512
1.7 11
2,399
1.8
2,590
1.4 -2.4
3.6
1.2
2,500
1.7
9
2,560
1.9
2,491
1.4 -5.1 66.0 40.3
1,500
1.0 17
1,775
1.3
2,366
1.3 -1.1
0.9
3.9
2,344
1.6 12
2,278
1.7
2,077
1.1
7.0 66.1 103.1
1,251
0.8 24
1,023
0.8
2,073
1.1 -4.5 36.0 122.7
1,524
1.0 25
931
0.7
1,904
1.1
2.2
4.5
4.1
1,822
1.2 16
1,829
1.4
1,900
1.0
0.0 26.1
3.8
1,507
1.0 15
1,830
1.4
1,862
1.0
4.1 -6.0 30.9
1,980
1.3 19
1,422
1.1
1,850
1.0
2.8 76.2 225.7
1,050
0.7 35
568
0.4
1,780
1.0 -4.1 13.7 26.2
1,565
1.1 20
1,411
1.1
1,708
0.9
1.8
2.8 -2.1
1,662
1.1 18
1,745
1.3
1,550
0.9
6.9 21.8 25.0
1,273
0.9 22
1,240
0.9
1,540
0.9 14.1 79.1 266.7
860
0.6 41
420
0.3
181,103 100.0
1.2 22.2 36.5 148,173 100.0
132,720 100.0
※日本の生産量については,ビール,発泡酒,新ジャンルの合計。
平 均 気 温,降 水 量, 日 照 時 間
平 均 気 温 (℃)
平年差
前年差
2008年 8月 平均
26.8
-0.3
-2.2
9月 平均
24.4
+0.9
-0.8
10月 平均
19.4
+1.2
+0.4
11月 平均
13.1
+0.1
-0.2
12月 平均
9.8
+1.4
+0.8
2009年 1月 平均
6.8
+1.0
+0.9
2月 平均
7.8
+1.7
+2.3
3月 平均
10.0
+1.1
-0.7
4月 平均
15.7
+1.3
+1.0
5月 平均
20.1
+1.4
+1.6
6月 平均
22.5
+0.7
+1.2
7月 平均
26.3
+0.9
-0.7
8月 下旬
25.8
-1.0
+2.0
平均
26.6
-0.5
-0.2
9月 上旬
23.9
-1.6
-3.0
中旬
22.5
-1.0
-2.3
注)平年値は1971年~2000年の月,旬平均値
食品と容器
387.5
158.5
204.5
74.0
70.5
142.0
46.5
98.5
162.5
242.0
226.0
78.5
101.5
242.0
0.5
42.0
625
(9月中旬・東京)
降 水 量 (mm)
平年比(%) 前年比(%)
250
4079
76
50
125
151
80
200
178
98
292
811
77
82
86
82
125
68
189
95
137
100
49
164
168
53
156
62
1
8
55
71
日 照 時 間 (h)
平年比(%) 前年比(%)
130.0
73
40
124.1
110
102
141.0
109
118
142.9
101
96
190.8
112
113
174.7
97
106
131.2
81
61
162.9
102
87
226.7
137
151
154.6
85
113
98.8
82
92
103.5
70
61
54.4
93
275
136.1
77
105
52.0
112
82
49.4
141
132
2009 VOL. 50 NO. 10
最近の技術雑誌から
国
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内
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ɜព៥ɝ食品に含まれる生体防御活性化物質
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ɜព៥ɝ入門講座―食品鑑別の知識―
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ɜព៥ɝ食品トコトリエノールの新たな機能性について
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˖ˏ˞̀̎ᶬ¶²ᶨºᶩµ±᷾¶²ᶨ'±ºᶩᶮ
ᶨ '±º¯ ¹ᶩᶮ
ɜព៥ɝ食品咀嚼中の香気フレーバーリリースの測定
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ɜព៥ɝ特集─わが国における食品によるがん化学予防
研究の現況と将来への展望─
᷆᷆᷉ˎ˹̎ˠ ́ ᶬ ³²µ ᶨ ´ᶩ ³²µ᷾ ³··ᶨ ' ±º¯¸ᶩᶮ
ȾᅉࠜለኴʍႻ຤ʇ࢘ಙƃƃƃƃƃƃƃƃƃໄᨅధͥᦿ
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ɜព៥ɝ特集1─食の低糖・低カロリー・低GI技術─
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ɜព៥ɝ講座―メタボリックシンドローム予防のライフ
スタイル―
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ɜព៥ɝ特集─骨対策の新指標─骨質と食成分─
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۹
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ɜព៥ɝ特集1―飲食店,食品工場の異物混入をなくそ
う!!─現場で取り組む改善策―
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ɜព៥ɝ特集2―気をつけよう!自然毒─フグ毒と毒き
のこについて─
ᯨʇѪ॓ᶬ¶´ᶨºᶩ¶³᷾·µᶨ'±ºᶩᶮ
Ⱦ๨ʱʃɰʧɥᶡ˫ˆ๘ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃྰᨂ፥ͥ
Ⱦ๘ɬʍɲʊ๨ʱʃɰʧɥƃƃƃƃƃƃƃƃƃ೽ᄑ ࡻ
ɜព៥ɝL-シトルリンの生理機能
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²᷾¶ᶨ'±ºᶩᶮ
ɜព៥ɝ特集─異物混入問題を考える─
ᯨ‫ق‬ʇቿࠜᶬ¶²ᶨºᶩ·´᷾¸¹ᶨ'±º¯ᶩᶮ
Ⱦϵᡸᄍʆᜓɥᄴၑ༌Ӂ᫾หࡩጐʍఄຫʇᒑɧఄ
ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃՒᙸҴ‫ބ‬
Ⱦᨅ࢙˅̂̎˶ʍӖᆌ᫾หጐʊʃɣʅ
ƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃƃປࢲ࠮‫ح‬
ɜព៥ɝアミノ酸・シトルリンの働きと効果
ᦘᙸ௮‫ބ‬ᶺˡ˻̎˫̎˟ʺ̉˖ˏ˞̀̎ᶬ¶²ᶨºᶩ
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ɜព៥ɝ特集―[異物混入防止機器]―
ᯨ‫ق‬෤ീᝀᑝᶬµ·ᶨºᶩ¶¸᷾¹¹ᶨ'±ºᶩᶮ
ɜព៥ɝ果物で骨粗鬆症を予防できるか∼最近の研究か
食品と容器
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626
2009 VOL. 50 NO. 10
最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝ特集─話題の清涼飲料の開発とマーケット─
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ɜព៥ɝ特集―天然調味料の近況―
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ɜព៥ɝ特集─2009年上半期の清涼飲料市場─
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ɜព៥ɝ特集2─オリゴ糖の最新利用技術─
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ɜព៥ɝ最近の冷凍食品産業の動向
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ɜព៥ɝ缶びん,レトルト食品生産数量(2009年1∼3
月期1次集計分速報)
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ɜព៥ɝ低価格グレードの出現に戸惑う?!/即席めん業
界の消費活性化策
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ɜព៥ɝ成分調整牛乳“大幅増”の背景を探る─低価
格?それとも商品の魅力?─
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ɜព៥ɝもち米価格は2年連続で上昇/原料高と価格志
向との板挟みで/商品政策に迷う包装もちメーカー
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ɜព៥ɝ09年スポD市場,2年連続で縮小見通し─08年
市場は5年ぶりのマイナス─
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ɜព៥ɝ2009年酒類・食品産業の上期動向と下期展望─
消費停滞でデフレ再燃に憂慮/2009年の酒類・食品
産業/「景気」に翻弄された上期,「天気」に泣い
た夏─
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ɜព៥ɝ高品質な国産ワイン造り志向する生産者─良質
なぶどう確保が課題─
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ɜព៥ɝ09年の日本茶飲料市場もマイナスへ─08年は麦
茶飲料のみプラスも,寄与小さく─
食品と容器
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ɜព៥ɝ特集―食品産業におけるマイクロ・ナノ技術─
627
2009 VOL. 50 NO. 10
最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝ特集1―食品長期保存と包装の新局面―
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ɜព៥ɝ2008年度全国酒類・食品問屋200社の業績ランキ
ング─値上げ新価格体系移行が反映,明るい数字に─
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ɜព៥ɝ自販機オペレーター,初の水面下成長に─主力
自販機の再活性化が課題─
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ɜព៥ɝ特集2 ―食品包装の“安心と安全”を考えるpart2
―寄稿/食品包装業界におけるISO22000の必要性/
世界で導入進む食品安全マネジメントシステム
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ɜព៥ɝ特集―容器包装の3R―
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ɜព៥ɝ年間特集―食品の品質保証技術―高度化,多様
化,法制化,国際化の潮流を探る―食の安全と包装
・物流の役割―「食品包装を中心に」(後編)
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ɜព៥ɝ特集―コーデックスのバリデーション指針と検
証書式の作成方法―
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ɜព៥ɝ特集─食品産業におけるCO2削減策∼コスト削
減とCO³削減の両立の視点から∼
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ɜព៥ɝ特集1 ―食品包装の“安心・安全”を考える―
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ɜព៥ɝ食品産業のCO2削減対応
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素材メーカーと共同で
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食品と容器
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ɜព៥ɝ海外情報―食品の健康表示制度の国際比較―
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628
2009 VOL. 50 NO. 10
最近の技術雑誌から
海
外
The Canmaker(U.K.)Vol.22 Jul.(2009)
編
○世界のエネルギー飲料市場
Unrelenting Growth
T.Woerndl…………………………………………43~44
邦文の題名は内容に従って付けてありま
すので,原題と異なる場合があります。
Food Technology(U.S.A.)Vol.63 Jul.(2009)
○食と楽しみ
The Pleasure Principle
A.E.Sloan… …………………………… 18~20, 22~27
○持続可能な食品生産を消費者に理解させる科学的
アプロ-チ
The World of Food Ingredients(Neth.)
Jun./Jul.(2009)
Understanding‘Green' Consumers
○世界のスープ市場の傾向
○食品中の化学物質のリスク評価
Sauces Market Battles on
Assessing Food Chemical Risks
M.Hilliam… ………………………………… 10, 12~13
R.L.Newsome… …………………………………36~40
○ソースを安定化させる処方
○新しい食品素材と加工法の探求
Keeping Sauce Steady
The Quest for Innovation
K.J.Decker … ……………………………………14~19
D.E.Pszczola… ……………… 42, 45~46, 48, 50~55
○ベーカリー産業の現状と課題
○乳製品と健康効能の多様性
Rising to the Challenge
The Diversity of Dairy
T.Barker……………………………………… 24, 26~28
L.M.Ohr………………………………… 57~58, 60, 63
○ヘルスクレームに関するFDAの新しいガイダンス
○粘度とテクスチャーの測定
と企業の対応
Measuring Viscosity and Texture
Holding Up Your Claim
N.H.Mermelstein…………………………………64~67
L.C.Dolan,Ph.D… ………………………………36~40
○ライン速度の最適化
C.M.Bruhn……………………………… 28~30, 32, 35
Optimizing Line Speed
International Bottler & Packer(U.K.)
Vol.83 Jul.(2009)
J.P.Clark… ………………………………… 68~69, 72
○最近の金属缶と缶詰製造機械
Aseptic Packaging 2009
Cans & Canning Equipment
A.L.Brody… ………………………………………70~72
○無菌包装の現状と課題
…………………………… 32~34, 36, 38~40
Beverage World(U.S.A.)Vol.128 Jul.(2009)
Cereal Foods World(U.S.A.)Vol.54
Jul./Aug.(2009)
○代替甘味料としての天然甘味料
○TD-NMR技術:シリアル製品の非破壊による品質管
Sweetener Alternatives Naturally Sweet
理およびシリアル生産の改善
H.Landi… …………………………………………83~84
TD-NMR Technology: A Noninvasive Tool for
High-Throughput QC and Rapid Cereal Product
Food Engineering(U.S.A.)Vol.81 Jul.(2009)
Improvement
○2009年、交換部品および構成部品に関する調査
S.Ghosh and X.Tombokan……………………152~157
Processors Remain Cautious in an Era of
○食品安全のためのナノテクノロジー
Uncertainty
Nanotechnology for Food Safety
K.T.Higgins… ……………………………… 12~15, 17
B.Park……………………………………………158~162
食品と容器
629
2009 VOL. 50 NO. 10
最近の技術雑誌から
○成長を続けるアメリカのオーガニック市場
○天然醸造しょう油を用いた食品中の食塩の低減
U.S. Organic Sales Continue to Grow
Salt Reduction in Foods Using Naturally
B.Haumann… …………………………………164~165
Brewed Soy Sauce
○ピーナッツ粉で作られるスナッククラッカーの製
S.Kremer et al.…………………………… S255~S262
造と評価
Formulation and Evaluation of Snack Crackers
Packaging Digest(U.S.A.)Vool.46 Aug.(2009)
Made with Peanut Flour
○安全な包装の自動化
B.M.Howard et al.… …………………………166~171
Safe Automation
A.Glaser……………………………………………35~36
Fruit Processing(DEU)Vol.19 Jul./Aug.(2009)
○スーパーフルーツの信頼性
Beverage World(U.S.A.)Vol.128 Aug.(2009)
Superfruits: Are They Authentic?
○2009年、アメリカのボトラートップ25
Dr.E.Jamin………………………………………170~175
Top 25 US Bottlers Report 2009
○飲料中のビタミンの分析
………………………………… 30~32, 34~35
Vitamin Analysis of Beverages
○新しいタイプのワイン容器
S.Stengl………………………………… 178~180, 182
Niche or Not?
○新しい野性アップルの選択と応用
A.Kaplan… ……………………………………104~105
New Wild Apple Selections
○新しいフレーバーのトレンド
G.Wosiacki et al.………………………………188~193
Breakout Flavors
H.Landi… ……………………………………… 106, 108
Journal of Food Science(U.S.A.)Vol.74
Aug.(2009)
Prepared Foods(U.S.A.)Vol.178 Aug.(2009)
○食品の官能特性と品質の定量:R-Index 分析
○世界の機能性飲料市場
Quantification of Sensory and Food Quality:
Benefiting Beverages
The R-Index Analysis
W.A.Roberts
H.-S. Lee and D.van Hout………………… R57~R64
…………………… 13~14, 16, 19~20, 23~24
○緑茶、ウーロン茶、紅茶由来のポリサッカライド
○アメリカの甘味料の現状
の物理化学特性と抗酸化能
Sweet Cravings
Physicochemical Properties and Antioxidant
L.Swann………………………………… 42~44, 47~48
Capacity of 3 Polysaccharides from Green Tea,
○健康的なベーカリー製品のための素材と処方
Oolong Tea, and Black Tea
Banking on Ingredients for Baked Goods
H.Chen et al.… ………………………… C469~C474
E.Mannie and B.T.Nessinger
○高圧処理が合成フィルムおよびバイオポリマー
………………… 51, 53, 55~56, 59~60, 62, 64
フィルムの物理特性に与える影響
○コメタンパク質の効能
Effect of High-Pressure Food Processing on
Performing Rice Protein
the Physical Properties of Synthetic and
K.Hughes… ……………………………………………67
Biopolymer Films
M.J.Galotto et al.………………………… E304~E311
Food Engineering(U.S.A.)Vol.81 Aug.(2009)
○均質化技術がマイクロカプセルのサイズ低減と
○変化した工場建設用地の選択
プロバイオティクバクテリアの生存に及ぼす影響
The Changing Face of Site Selection
Effect of Homogenization Techniques on
C.Chapin… ………………………………………35~41
Reducing the Size of Microcapsules and the
○食品工場に適したポンプ
Survival of Probiotic Bacteria Therein
Dump the Dumb Pump
W.K.Ding and N.P.Shah………………… M231~M236
K.T.Higgins… ………………………… 53~56, 58~59
食品と容器
630
2009 VOL. 50 NO. 10
うな野菜を嫁に食べさせてはいけない。特に妊娠
野菜・果物を巡って
中の女性には避ける方がよい。という嫁に対して
大変思いやりのあるお姑さんのアドバイスとする
解釈。また,秋なすは種子が少ないので,子種が
少なくなるのを避けようとの理由によるとするも
(第十話)
秋なすは嫁に食わすな
の。一方,このように美味しいなすを嫁などに食
わせるものかという嫁いびりの意地悪い解釈があ
る。「秋茄子嫁に食わせて七里追う」との表現も
ある。姑が嫁を虐待し,身体に害のある秋なすを
食べさせた上,さらに七里も遠いところへ仕事に
出す。との意味である。第二次世界大戦前の日本
の一般的な嫁姑の関係から推察すると後者のよう
吉田 企世子
(女子栄養大学名誉教授)
な意味あいで生まれた諺なのであろうか。特に農
村では姑の嫁いびりはひどかったことを書物や身
近なご老人から耳にする。現在の家族関係からは
食欲の落ちた暑い夏には,蒸して冷たくしたな
想像しがたいことであるが。
すを裂いてしょうが醤油で食べる。ご飯にも麺類
ことわざ大事典を開いたところ,なすに関する
にも合う食べ方で,ぐんと食欲がでてくる。
表現が大変多いので驚いた。なすが縁起のよい食
かつて,なすにはその淡白な美味しさが求めら
品として扱われている諺で「一富士二鷹三茄子(い
れ,栄養効果を期待することはなく,繊維質の供
ちふじにたかさんなすび)」というのもよく知ら
給源程度に扱われていた。しかし,果皮に含有す
れている。お正月になると祖母から聞かされたこ
る紫色色素のアントシアニンや果肉に含有するフ
とを思い出す。初夢に見ると縁起の良い順とのこ
ラボノイドに抗酸化作用があり,動脈硬化予防,
とである。江戸時代からの諺で将軍家に縁の深い
発ガンの抑制,老化防止,高血圧予防などの作用
駿河の国と結びつけたとの解釈がなされている。
があるとされて,その食品価値がぐんと上がった
富士はいうまでもなく,鷹も茄子も駿河の名産
野菜である。
を並べたとのこと。吉夢としている理由は富士は
本来は代表的な夏野菜であったが,施設栽培の
高く美しい山,鷹は掴み取る,茄子は成す,ある
普及により周年出回っているので,活用しやすく
いはむだ花がないなどによるとされている。
なった。大きくは夏秋なすと冬春なすに区別され
「瓜の蔓に茄子はならぬ」ある原因からはそれ
ている。夏秋なすは7月から11月を中心に茨城,
相当の結果しか生じないということ。子が親に似
栃木,群馬県などの大都市近郊で主に露地栽培に
ることの例えでもある。平凡な親から非凡な子は
より生産されている。冬春なすは12月から6月を
生まれないとか蛙の子は蛙などともいわれる。し
中心に暖かい高知や福岡県でハウス栽培により生
かし,必ずしもそうではないことも事実である。
産されている。
「親の意見と茄子の花は千に一つも仇が無い」
秋になると味が深くなり,一段と美味しくなる。
というのもよく耳にする諺である。茄子の花は咲
「秋なすは嫁に食わすな」とは古い諺であるが秋
けば必ず実を結んで無駄がない。同様に親の意見
なすの美味しさを伝えつつ広く普及している表現
もすべて必ず役に立つものだ。という意味で,子
である。これには好意的な解釈も意地悪な解釈も
供の頃は先生からも親からもよく聞かされたこと
あるが,本来はどうなのか。好意的な解釈の方を
である。現在では親の品格も変わってきているの
信じたい。
で,必ずしも通用しない面もある。
秋なすはあくが強く身体を冷やすので,このよ
なすの原産地はインド東部といわれており,東
食品と容器
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2009 VOL. 50 NO. 10
方へは4~5世紀に中国へ伝わり,日本には中国
が, 英 国 で はaubergineと い う。 な す が 何 故
から8世紀頃に伝わったとされている。西方には
eggplantなのか理解できないと英国の先生がおっ
5世紀にアラビア方面へ,13世紀にはヨーロッパ,
しゃるが,その気持ちはよくわかる。日本人であ
16世紀にはアメリカに広まったようである。日本
ればなるほどeggplantであると納得できることで
では奈良時代にはすでに栽培されていて,東大寺
あるが。味は日本のなすほどの特徴はないが煮込
正倉院文書にはなすを献上したとの記録があると
み料理やソテー(英国ではフライになる)に用い
のこと。「なす」の語源は,夏にとれる野菜「夏
られ,よく活用されている。住まいの近くにフラ
の実」が「なすび」になり,いつしか「なす」に
ンス人が経営しているカフェがあって,味も良く,
なったという説がある。古くから栽培されていた
値段も手ごろなのでよく利用したが,そこのサラ
ことから,地方独特の品種が多く生まれている。
ダの一品になすが用いられていた。細切りにした
果実の大きさと形状から小なす,丸なす,卵型
なすをソテーにして少し辛味のあるドレッシング
なす,長卵型なす,長なす,大長なすなどに分け
で和えたものであるが,油っこくなく美味しい味
られている。丸なすの代表格は京都の賀茂なすな
であった。
ので,一般には賀茂なすと呼ばれている。大形で
なすは油と相性が良い素材である。味はもちろ
卵型の米なすもかなり普及している。多くの品種
ん,果皮の色を生かすにも油で処理すると美しく
は果皮が紫色であるが,白色や緑色をした品種も
保たれる。煮物やカレーに用いるとき,油にさっ
店頭でみかける。伝統的に卵型なすは関東,長卵
と通してから用いるのが一般的な手法である。
型なすは東海から関西,長なすは関西以西,大長
かつて,なすはあくが強く,切って水に晒すと
なすは九州で生産が多かった。しかし,近年では
濃い褐色に変化したが,品種改良の結果によるの
栽培が容易なことや種々の料理に使いやすいこと
か,現在は水に晒してもそれほどあくは出ない。
などから長卵型なすが全国的に生産されている。
このあく成分はポリフェノールであり,抗酸化成
小なすは一口なすとも呼ばれ,皮が柔らかく,種
分としての機能が注目されている。
が少ない品種で,辛子漬けに用いられているが,
しかし,多く含有することが望ましいというの
外観の愛らしさとその特有のおいしさに食欲がそ
ではない。ポリフェノールが多いとあくが強く感
そられる。好物の漬物である。
じられて美味しくないし,料理が美しく仕上がら
ロンドンで見かけたなすはほとんどが大形で賀
ない。
茂なす,米なすに似ていて日本で一般的な長卵型
食べ物は美味しいと感じることによって心と身
なすとは異なった。なすは英語でeggplantである
体が健全に維持されるのである。
朝晩はめっきり涼しくなり,店頭
日最低30分(約5,000歩)は歩くなど無理しない程度で
からは夏の象徴であるスイカが消
継続できる運動から実践し,メタボへの不安解消ととも
え,梨・ぶどう・栗や新さんま・秋
に日本の秋の味覚を満喫しましょう。
(ー)
鮭等の秋の味覚が並ぶ季節となりま
した。秋といえば真先に思い浮かべ
食 品 と 容 器 第 50 巻 第10号
るのは,ちょっと古いかも知れませ
FOOD & PACKAGING 平成21年10月 1 日発行
んが「食欲の秋」と「スポーツの秋」です。
発行所 缶
最近では,メタボという言葉がちらついて好きな物も
お腹一杯食べられないご時世です。内閣府の「食育に
定 価
1部 800円
年間 8,000円
(送 料 共)
関する意識調査」では約90%の人がメタボを知っている
のにも関わらず,中高年男性の約50%がメダボまたは予
備軍であり,約65%の人が予防のための食事・運動を実
−禁無断転載−
践していないようです。この秋をきっかけに,週末の紅
編 集 人 発 行 人 印刷所
飯
十
塚
時
秀
正
夫
義
大和サービス株式会社
乱丁・落丁本はお取り替えいたします。
葉狩りをしながらのウォーキング,通勤等を利用して毎
食品と容器
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