時計と地図について 1 アインシュタインの時計

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Dated: 2016/Nov/05
時計と地図について
現代物理学といえば、すぐアインシュタインと連想されるほど有名である。数多くの物
語が出版されているが、ここでは、WEBや出版本から引用して、ローレンツ変換とい
う光速に関する問題を双曲幾何がどこに出てくるのか少し述べてみる。
1 アインシュタインの時計
アインシュタイン (*) が 1905 年に発表した特殊相対性理論に関する論文「運動する物体の電気力学につい
て」は、今日の 20 世紀でもっともよく知られた論文である。時間という不変で永劫に変ることがないと思わ
れていた概念を、アインシュタインは絶対時間を解体したことを通し、かつての古典力学による「実際の世
界」からは根本的に離脱し、この世界との物理的、直感的把握から離れた、革命的思考の見本となっている。
この同時性、同期性に関する再検討は物理学のみならず、哲学的な側面からも、現代物理学での時間と空間の
枠組みについて、古典的な物理から現代での量子物理学への飛躍的な発展をもたらした。
一方同時期に数学では有名なポアンカレ(「ポアンカレ予想」で有名)は、フランスの最高峰の研究機関の
教授を歴任し、天体力学、電気と磁気、無線電信、熱力学など本棚を埋めるほどの多くの本を書き、200本
以上の論文を発表していた。この影響は哲学的な論考を含んだ本は、アインシュタインに少なからず影響して
いる。スイスのベルンで、26 歳の特許審査官であった。フランス、イギリスとは違い、ヨーロッパアルプス
の小さな国スイスは、経済的な意味で、精密な時計生産を主として、その発展を「特許という武器」で、大国
と対峙せざるを得なかった。植民値大国に対抗するには、時計の生産技術と研究特許さらには、資源によらな
い研究、学問分野は独特の文化として、貴重であったに違いない。
参考文献: ピーター・ギャリソン 「アインシュタインの時計、ポアンカレの地図;鋳造される時間」 (松浦俊介訳)、名古屋大学出版会、2015 年
いま時に相対性理論などとは、物理学では古典的な話になるが、携帯電話を持ち歩き、空高く大気圏外にあ
る衛星からの電波を受け取り、ほんの数十メートルの誤差内で地図を参照できるなどとは驚きすべきことであ
る。相対性理論によれば、時速2万キロで地球を回る衛星の時計は地球に対して一日に百万分の七秒遅れると
いう。GPSは地球の回転と整合して航空機の運航、ミサイルの誘導、野生動物の追跡、カーナビの道案内な
ど身近な道具になっている。上記の本は有名な数学者ポアンカレと物理学者のアインシュタインを組み合わせ
た、数式がもちいていない物語として、技術、物理、哲学という観点から取り上げていて、翻訳もたいへん読
みやすい。こんな文化の発展において数学と物理とが深く関与して、素晴らしい成果を残している。
*アルベルト・アインシュタイン(1879 年 - 1955 年)
(Wikipedia より引用)特殊相対性理論および一般相
対性理論、相対性宇宙論、ブラウン運動の起源を説明する揺動散逸定理、光量子仮説による光の粒子と波動の
二重性、アインシュタインの固体比熱理論、零点エネルギー、半古典型のシュレディンガー方程式、ボーズ=
アインシュタイン凝縮などを提唱した業績により、世界的に知られる。20 世紀最大の物理学者とも、現代物
理学の父とも呼ばれる。特に彼の特殊相対性理論と一般相対性理論が有名だが、光量子仮説に基づく光電効果
の理論的解明によって 1921 年のノーベル物理学賞を受賞した。
* 「ニュートン力学とガリレイの相対性原理」(Wikipedia より引用)力学の基本法則は 17 世紀にニュー
トン力学として確立された。ニュートンは力学を構築するに当たって以下の絶対時間と絶対空間を仮定した。
“絶対時間 その本質において外界とはなんら関係することなく一様に流れ、これを持続と呼ぶことのできる
もの絶対空間 その本質にとっておいていかなる外界とも関係なく常に均質であり揺らがないもの”̶ニュー
トン(『プリンキピア』より)つまり時間と空間はそこにある物体の存在や運動に何ら影響を受けないと仮定
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したのである。これは我々が抱いている時間や空間に対する漠然とした感覚を明確化したものであった。
2 走る棒は縮む、走る時計は遅れる
時間と空間の2つの概念は、古典的な考え(慣性系)では時間の進みが変わるなどあり得ないことであっ
た。慣性座標系において、位置と時間を (x, t) で静止状態で表し、移動状態を (x′ , t′ ) という座標で表すとこ
の 2 つの座標の値の関係は
{
x′ = x − vt,
t′ = t
(2.1)
であり、ここで移動状態の慣性系は物体が速度 v で動くとした。これが「ガリレオ変換」とよばれる。もし時
間と空間のあいだにはより一般的な座標変換の関係式を表すような線形変換:
{
x′ = αx + βt,
t′ = γx + δt
↔
( ′) (
x
α
=
t′
γ
β
δ
)( )
x
t
(2.2)
を仮定して、ある条件 (光速不変) のもとで4つの定数 α, β, γ, δ を定めるとしよう。
*Wikipedia より:
ローレンツ変換 (Lorentz transformation)は、2 つの慣性系の間の座標(時間座標と空間座標)を結びつけ
る線形変換で、電磁気学と古典力学間の矛盾を回避するために、アイルランドのジョセフ・ラーモア(1897
年)とオランダのヘンドリック・ローレンツ(1899 年、1904 年)により提案された。アルベルト・アインシュ
タインが特殊相対性理論(1905 年)を構築したときには、慣性系間に許される変換公式として、理論の基礎
を形成した。特殊相対性理論では全ての慣性系は同等なので、物理法則はローレンツ変換に対して不変な形、
すなわち同じ変換性をもつ量の間のテンソル方程式として与えられなければならない。このことをローレンツ
不変性 (共変性) をもつという。幾何学的には、ミンコフスキー空間における 2 点間の世界間隔を不変に保つ
ような、原点を中心にした回転変換を表す。
《 光速度不変の原理 》
命題 1
1. 「相対性原理」 :任意の二つの座標系で、互いに他に対して一様な並進運動をしているならば、
それらの基準で物理系の状態変化に関する法則を表しても、導かれる法則は座標の選び方によらない。
2. 「光速度不変の原理」 :ひとつの静止系を基準にとった場合、光線の速度(光速)は静止状態、移動状
態のいずれから放射されたかには関係なく、一定の速さ (c) をもつ。
数式でこれらを表すと、
(ct′ )2 − (x′ )2 = (ct)2 − x2 = (一定)
参考文献:山口栄一 「死ぬまでに学びたい 5 つの物理学」 筑摩選書 2014 年
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(2.3)
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3 円と双曲線
原点を中心、半径 r とする円の方程式は、直交座標 (x, y) や極座標 (r, θ) で
{
x2 + y 2 = r 2
↔
√
eiθ + e−iθ
eiθ − e−iθ
, sin θ =
をもちい、i = −1
2
2i
で 三角関数の関係: cos2 θ + sin2 θ = 1 であり、cos θ =
とする。
一方、双曲線は
{
x −y =r
2
2
2
x = r cos θ
y = r sin θ
↔
x = r cosh θ
y = r sinh θ
と表され、ここで双曲線関数の関係式:cosh2 − sinh2 = 1 や cosh θ =
eθ − e−θ
eθ + e−θ
, sinh θ =
に注意
2
2
する。もし座標を 45o 回転させれば、反比例の関係を表す式 xy = 1 という形の双曲線に帰着される。
4 双曲幾何がみえた
双曲幾何がみえてきたかも知れない。いま光速を c, 物体の速度を v として、
tanh θ =
とおくと、
v
c

1
1

=√
,

 cosh θ = √
2
1 − v 2 /c2
1 − tanh θ
v/c
cosh θ


=√
 sinh θ =
tanh θ
1 − v 2 /c2
(4.1)
この関係式はもとの位置と時間で表す式は

1
1
′

=√
,

 ct = cγ x + cδ t = √
2
1 − v 2 /c2
1 − tanh θ

 x′ = α x + β t = cosh θ = √ v/c

tanh θ
1 − v 2 /c2
つまり γ =
β
= cosh θ,
c2
α = δ = − sinh θ とおけば得られる。
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(4.2)
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* 1905 年のアインシュタインの論文
A.Einstein (June 30, 1905). “Zur Elektrodynamik bewegter K ö rper [運動している物体の電気
力学について]”. Annalen der Physik (Leipzig) 322 (10): 891 ‒
921. Bibcode 1905AnP...322..891E.
doi:10.1002/andp.19053221004. ISSN 0003-3804. OCLC 5854993. 邦訳:アルベルト・アインシュタイン
『相対性理論』 内山龍雄訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1988 年 11 月 16 日。全国書誌番号:89014307。ISBN
978-4003393413。NCID BN02773137。OCLC 674504252。ASIN 4003393414。
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* 相対性理論における双曲線幾何 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/特殊相対性理論
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