揺籃期のインド物流 揺籃期のインド物流

特集 1
揺籃期のインド物流
物流を阻む港湾・鉄道インフラ
中長期の成長へ克服が不可欠
2008 年 11 月 24 日 同時多発テロ 2 日前のムンバイ・マリンドライブ
1990 年代初頭の規制緩和を機に高度経済成長時代に入り、2030 年代には国内総生産(GDP)
世界第 3 位に成長すると期待されるインド。世界各国からの直接投資も増え、日本からは自動
車や電機関連を中心に現地進出が進んだ。しかし、企業進出の加速とは裏腹にその物流を支え
る港湾、鉄道、道路といった主要インフラは貧弱で、企業の物流戦略はもちろん経済成長の阻
害要因にもなる恐れがある。中国と違って国を挙げた大工事が一気に進むこともない。巨象は
確かに動き出したが、その動きは極めて緩やかだ。今回はインドの主要都市を巡り、インフラ
の最新状況とともに現地に進出した荷主や物流企業の動向を紹介する。
CARGO JANUARY 2009
11
特 集 1 揺籃期のインド物流
きない」
(マルチ・スズキの大石修司取締
役)のが現状だ。
インド経済概況
中長期で息の長い成長
一方、耐久消費財や鉱工業の 8 %前後
の伸びを続けている。足元の環境は悪化
しているが、進出メーカーや物流会社は中
表 1 インドに関係する各種統計数字
がある経済面での動向として、税制改革
2005 年度
2006 年度
2007 年度
GDP 成長率
9.4%
9.6%
9.0%
コンテナ取扱量
21%
17%
9%
輸出額
1555 億 1249 万㌦
1264 億 1399 万㌦
1030 億 9054 万㌦
輸入額
2359 億 1073 万㌦
1857 億 3517 万㌦
1491 億 6573 万㌦
インフレ率
6.68%
5.90%
6.40%
の動きがある。インドの税制は毎年度の予
算編成の際に見直されるが、最近の流れ
は簡素化と直接・間接税比率のバランス化
が主要課題だ。
直接投資受入額
192 億 8380 万㌦
111 億 1466 万㌦
43 億 7261 万㌦
長期の成長持続については不安を抱いて
人口
11 億 4000 万人
11 億 2000 万人
11 億人
これまでは所得税逃れによる税収低下
インドは「BRICs の中でもっとも高い潜在成長力を有する国」と評され、急成長
いない。経済のファンダメンタルズ自体は悪
人口成長率
1.79%
1.45%
1.47%
を防ぐため、課徴しやすいモノやサービ
を続けてきた。しかし、昨今の金融危機の余波でその勢いは失速気味。事態を重
くなく、
「もとより何の問題もなく高成長が
スに対する間接税を増やしてきた経緯が
くみた政府は引き締めから景気刺激へと軸足を移しつつある。
(小堺祐樹)
続くとは思っていない。ある時点で調整が
あり、インドの税制を非常に複雑なものと
入るのは当然で、その波が少し大きく、早
ている感は否めない。しかし、インフラ整
の認可が必要で、既に 300 を超える数が
している。現在は中央売上税(CST)や州
く来たに過ぎない」
というのが進出企業に
備の進展で市場がさらに拡大した際、日
申請済み。その多くはグジャラート州、タ
付加価値税(VAT)
、サービス税、越境税
共通した考え。政府の経済対策も昨年末
本企業がその波に乗り遅れる恐れもある。
ミル・ナドゥ州、ウッタル・プラデシュ州、ハ
など多数の税金があるが、10 年をめどに
リヤナ州に集中している。ただ、すべてが
CSTとVAT を物品・サービス税(GST、
順調に稼働しているわけではなく、むしろ
Goods Sales Tax)へと一本化していく方
問題を抱えるものも少なくない。
針だ。CST は州を越える物品売買に対し
から従来のインフレ抑止から景気刺激へ
BRICsで最も高い潜在成長力
金融危機の影響で消費低迷
ゴールドマンサックスは 03 年 10 月に発
経済発展に伴い、そのゆがみも目立っ
表した投資家向けリポートで、インドを
てきた。そこへ来て金融危機の影響が直
「BRICs の中で最も高い潜在成長力を有
撃。インフレ悪化を抑えるため、政府は金
する国」
と位置付けており、32 年までに経
融引き締めを進めてきたが、金融危機で
済規模は世界第 3 位になると予測。同じ
BRICs でも現在は高成長率を保っている
と変化しつつあり、この影響が注視される。
日系企業進出は他国に後れ
外資優遇に SEZ 制度活用
インドの外資優遇政策として、しばしば
もともと州政府の権限が強いインドでは、
て課される税金で、州内での売買に対し
特別経済区(SEZ)制度が注目される。政
各州政府が相互に開発や外資誘致を競い
て課される VAT が後日還付されるのに
府が産業育成や外資誘致を目的に定めた
合って SEZ の数だけが伸びてきた経緯が
対し、CST は還付されない。進出企業は
の援助額では第 1 位であるにも係らず、貿
もので、最大 15 年間の法人税減免、原材
ある。開発用地の取得計画が強引で、用
CST 回避のため同一州内で調達・売買し
貸し渋りなどを背景に消費の低迷が深刻
易での存在感は決して大きくない。商工
料・部品の輸入関税免税、さらに物品税、
地を保有する農民達から反対運動が発生
たり、各州に倉庫を設置してそこから州内
化している。
省・通商情報統計局(DGCI&S)によると、
サービス税、中央売上税の免税措置など
することもしばしば。また、それぞれの農
バイヤーに販売するケースが多い。
日本は、インドへの政府開発援助
(ODA)
中国やロシアが 20 年代までに失速するの
代表的な消費者物価指数である卸売物
07 年度(07 年 4 月∼ 08 年 3 月)の輸出入
が定められている。
「みなし外国」とされる
民が所有する土地面積が小さいため、多
ただ、連邦政府と州政府間で税配分を
に対して、インドは 50 年まで平均して 5 %
価指数(WPI)は、07 年末時点で 12 %前
相手国別の貿易額では、日本は輸出入と
ため 労 働 法 の 適 用 外となるのも特 徴 。
数の土地保有者と交渉をしなければなら
めぐる争いがあり、さらに州ごとに税率も
以上の成長率を保つとの見方を示した。
後と高い水準を維持。消費拡大やそれに
もに 11 位。輸入では中国、サウジアラビ
SEZ 外への進出の場合、撤退する際の
ないケースもある。こうした複雑な土地問
異なるため、10 年時点で GST を導入でき
かつては経済発展の重荷であった 10 億人
伴うローンの伸びなどがインフレを加速し
ア、UAE(アラブ首長国連邦)、輸出では
「撤退プラン(Exit Plan)」を厳密に定め
題が理由で、当初の事業計画を見直さざ
るのは一部地域にとどまる可能性が高い。
を上回る巨大な人口が、現在は労働力供
てきた。しかし、政府の金融引き締め政策
米国、UAE、中国が上位を占めており、ド
る必要があり、労働者の雇用契約も簡単
るを得ない企業も少なくない。
さらに今年半ばには下院選挙があるため、
給の源泉と同時に市場へと変化。若年層
によって伸びは鈍化し、現在の WPI は
イツやオランダ、シンガポールが 10 位圏内
には解消できない。しかし、SEZは「外国」
ほど多いという人口構造は将来さらに市
8 %前後。その他代表的な物価指数も
に入ってくる。
と見なされるため、労働法からも原則とし
場が拡大する可能性を秘め、事実、こうし
10 %未満で推移しており、インフレは依然
現地進出も、自動車や電機関連企業が
た中間層の拡大が消費をけん引してきた。
進んではいるものの、伸び率は落ち着い
注目される一方、全体としては欧米や韓
てきている。
国企業の進出が先行。アジア進出と言え
また、通常は農業から工業分野、最後
にサービス産業へと経済発展が進むのに
ただ、インフレ抑制を意図した金融引き
ばタイやマレーシア、ベトナムなどの東南ア
対し、インドではまず情報技術(IT)など
締めは、経済活動にもインパクトをもたら
ジア地域への進出を意味していた日系企
サービス産業が経済のけん引役を担っ
した。金融機関による企業・消費者への
業にとって、インドは心情的にも、またイン
た。産業別の GDP 構成比はサービス業が
融資厳格化により、国内消費は急ブレー
フラ問題や不透明な国内事情からも
「遠い
55 %、製造業が 28 %、農業 17 %とサービ
キ。貸し渋りが進み、消費者心理や企業
国」だった。既に進出した日系企業も「東
ス業が過半を占める。言い換えれば、農
の景況感が悪化した。昨年 10 月の新車販
南アジアなどで得たノウハウを当てはめよ
業・工業にはまだ大きな発展余地が残さ
売(乗用車)
は前年同月比で 9.1 %減の 12
うとしても、うまくいかないケースが多い」
れていることになる。一方で農業は全人口
万 6098 台となり、08 年通年では良くても
と指摘する。また、この未整備のインフラ
の 6 割が集中する重要産業であり、さらに
07 年と同程度と見込まれる。インドでは預
が大きなボトルネックとなっており、メーカ
小規模農家が多いことから貧困者層を生
金比率が高く、欧米と比べてクレジット依
ーや物流業者にとって最大の克服課題と
み出す背景にもなっている。
存率は低い。それでも、
「自動車を買いた
なっている。インドは歴史的に欧州とのつ
いてもローンが組めないので買うことがで
ながりの方が強く、日系企業が後れを取っ
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CARGO JANUARY 2009
政権交代を機に大規模な税制見直しが行
10 年の CST 廃止の影響は?
われる可能性がある。
て適用外となる。
SEZ は中央政府および州政府両方から
今後の物流動向に影響を与える可能性
CARGO JANUARY 2009
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特 集 1 揺籃期のインド物流
図 1 インド主要港配置図
港湾編
ナバシェバ・チェンナイ最新状況
進出したメーカー・物流企業にとって
最大の障害が、港湾や鉄道など主要イ
ンフラ設備のキャパシティー不足や整
備の遅れだ。トレード増加に伴い、ナバ
シェバ港やチェンナイ港といったゲー
トウェーの処理能力は限界近いとされ
てきた。しかし、トレードの減速はイン
ド港湾を取り巻く状況も変えつつある。
ナバシェバ港
(現地リポート担当、小堺祐樹)
3ターミナルが稼働中
とも言われ、これは上海港の半分にも満た
AD
エバーグリーン
年間“わずか”800 万 TEU
インドには中央政府が直轄管理する12の
“Major Port(主要港)
”に加え、州政府や
ない物量だ。中国と同等の人口を有しな
ナバシェバ港では、89 年に稼働した国営
がらインド全体で 800 万 TEUにとどまると
ターミナルであるJNPT(ジャワハルラル・ネ
いうことは、言い換えれば大きなポテンシャ
ルー・ポート・トラスト)のほか、ドバイ・ポー
ルを秘めているということになる。
ツ・ワールドが運営するNSICT、さらに 06
民間企業が運営する約 185 の港が存在し
最重要のゲートウェーは西部ムンバイの対
年に稼働した APMターミナルズの新鋭タ
ている。主要港の概要とコンテナ取扱量は
岸に位置するナバシェバ港だ。このナバシェ
ーミナルの GTI(ゲートウェー・ターミナル・
表のとおり。グジャラート州のムンドラ港など
バ港と首都ニューデリーを結ぶ回廊がイン
インディア)の 3ターミナルが稼働している
は定期コンテナ船社の寄港地としてしばし
ドの一大経済圏であり、日系をはじめ多数
(表 3 参照)。ちなみに、ナバシェバ港は代
ば登場するが、同港はインドの有力財閥ア
の企業の進出地でもある。このムンバイ
(ナ
表ターミナルである JNPT の名を借りて
ダニグループが運営する民間港だ。
バシェバ)/デリー間と、南部のチェンナイ
J N P T 港と表 現され るケー スもある。
昨年の主要 12 港の合計コンテナ取扱量
港/カルナータカ州の州都バンガロールを
NSICT および GTI の 2ターミナルは 30 年
は約 671 万 TEU だった。正確な統計は存
結ぶ 2 地域に多くの貨物が集中している。
間の BOT(Build, Operation, Transfer)
方式で開発・運営されている。
在しないが、インド全体では約 800 万 TEU
表 2 インド主要港コンテナ取扱量
港
ナバシェバ
西部
東部
南部
(単位:TEU、Indian Ports Assocation より作成)
2007 年度
合計
4,060,000
合計
2006 年度
輸出
輸入
合計
2005 年度
輸出
輸入
3,298,000
1,769,000
1,529,000
2,667,000
1,258,000
1,541,000
ムンバイ
118,000
138,000
43,000
95,000
159,000
43,000
113,000
カンドラ
167,000
178,000
82,000
96,000
148,000
68,000
80,000
マールムガオー
14,000
13,000
6,000
7,000
9,000
4,000
5,000
コルカタ
297,000
239,000
110,000
129,000
203,000
93,000
110,000
ハルディア
128,000
110,000
61,000
49,000
110,000
59,000
51,000
パラディプ
4,000
2,000
2,000
─
3,000
1,000
2,000
チェンナイ
1,128,000
886,000
426,000
460,000
735,000
354,000
381,000
ヴィシャカパトナム
71,000
56,000
28,000
28,000
47,000
24,000
23,000
ツチコリン
450,000
377,000
196,000
181,000
321,000
165,000
156,000
ニューマンガロール
21,000
17,000
9,000
8,000
10,000
5,000
5,000
コチン
254,000
227,000
114,000
113,000
203,000
103,000
100,000
6,712,000
5,541,000
2,846,000
2,695,000
4,744,000
2,177,000
2,567,000
合 計
* 2007 年の輸出・輸入内訳は未公表
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特 集 1 揺籃期のインド物流
表 3 ナバシェバ港ターミナル概況
AD
Dars Consulting
ターミナル名称
JNPT(1989 年稼働)
Jawaharlal Nehru Port Trust
NSICT(1999 年稼働)
Nhava Sheva International Container Terminal
GTI(2006 年稼働)
Gateway Terminal India
運営会社
インド国営
ドバイ・ポーツ・ワールド
バース総延長
680m
600m
APM ターミナルズ
712m
水深
12.3m
12.3m
12.3m
ガントリークレーン
8基
8基
8基
ヤード荷役機器
18 基
29 基
29 基
リーファープラグ
320
672
504
鉄道引込み線
4本
2本
3本
コンテナ蔵置能力
2 万 5000TEU
1 万 6000TEU
4 万 5000TEU
いずれのターミナルもバース部分を沖出
危機はインド国内の消費・生産活動にも深
として多くの船社をひきつけてきたナバシェ
しして水深を稼いでいるが、それでも岸壁
刻な影響を与えており、これに伴ってインド
バ港の価値を変化させつつある。商都ム
は水深 12.3mと浅く、水路も水深 11mに過
発着貨物の伸びも急速に鈍化してきた。
ンバイに隣接し、ニューデリーの玄関口と
ぎ な い 。常 時 入 港 が 可 能 な 船 型 は
実際にナバシェバ港を訪れてみると、ヤ
しての重要性は変わらないものの、配船各
3000TEU 型船までに限られ、満潮時でも
ードには空きスペースが目立つ。皮肉に
社はムンドラ港やピパバブ港などインド西
4000TEU 型船が限界だ。
も、トレードの鈍化が、限度一杯だったナ
部の他の港への寄港も進めている。訪問
世界の一流コンテナターミナルと比較す
バシェバ港に一定の余裕を生む結果となっ
時もアーム部分を上げた状態のガントリー
ると、ナバシェバ港の設備や処理能力はか
た。さらに同港では、既存施設のままでも
クレーンが目立ち、キャパシティー限度一杯
なり見劣りするのが実情。それでも首都ニ
処理能力を拡大できる余地が残されてい
のターミナルという印象は薄い。トレードが
ューデリーのゲートウェーとしての重要性か
る。89 年稼働の JNPT ではガントリークレ
急拡大する中、
「他に選択肢がない」ため
ら、インド西岸向けの貨物はナバシェバ港
ーンが老朽化しており、これを新型に代替
に嵩 上げされてきたナバシェバ港の価値
にほぼ一極集中する。さらに BRICsの一
することで同ターミナルの処理能力は 30 %
が、本来の役割相応のものとして認識され
角としてインド経済が台頭し、インド発着貨
は向上が見込めるという。ただし、実際に
るようになった、と言うこともできるだろう。
物が急増するのに合わせて定航コンテナ
代替計画はあったものの現在は白紙状態
船社が新規インド航路を相次いで開設。06
となっている。また、APMターミナルズが運
かさ
第 4CT 計画の先行きは不透明
年の GTI 稼働後も貨物増に処理能力が追
営するGTI ではヤードの拡張に加え、ガン
いつかず、船社が新規サービスを開設しよ
トリークレーンとRTG の追加作業が進行中
ターミナル運営側にも影響は及びつつあ
うにもバースウィンドーが確保できないとい
だ。ガントリーは昨年 12 月に 2 基追加され
る。インドでは「ターミナルの建設費用を
う状況が続き、ナバシェバ港のキャパシティ
て 10 基体制となり、RTGは今年 3 月までに
BOT 期間で確実に回収しなければならな
ーは早晩限界に達するとされてきた。
計11 基を追加する予定。昨年11 月末時点
い」
という法律があり、このため各ターミナ
で、既に新型 RTG の導入作業が始まって
ルの THC(ターミナル・ハンドリング・チャー
いた。これにより、GTI でも30 %程度の能
ジ)
はタリフ庁(TAMP、Tariff Authority
力向上が見込めるという。
for Major Ports)が個別に定めている。
実際の処理能力にはまだ余裕
しかし、米国発の金融危機が全世界に
波及する中で状況は変わりつつある。金融
貨物の伸び鈍化とターミナルの処理能力
同じ港でもターミナルごとに THC 額が異な
向上は、
「インドで唯一無二のゲートウェー」
り、ターミナルオペレーターが自由に変える
ことはできない。このため、一説には約 850
億円と1ターミナルとして破格の建設費用が
か かったとされる G T I では 、必 然 的に
THCも高額になり、他に選択肢が生まれ
た船社からは敬遠されるケースも出てきて
いるという。
こうした問題は、ナバシェバ港で以前より
第 4ターミナルの建設計画が立案されなが
らも実現しなかった理由の 1 つともなってい
ターミナル背後の鉄道引き込み線
JNPT の G クレーンは老朽化が進む
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特 集 1 揺籃期のインド物流
GTI に納入された RTG の部品
一部。特に完成車ではインド最大の輸出拠
さらに民間物流企業などがそれぞれ個別
点となっており、昨年はインド全体の 51 %に
に行っている。バンニング、デバンニング、保
上る約 12 万 5000 台を輸出した。08 年は約
税蔵置や通関といった各種サービスを提供
鉄道輸送編
17 万台となったもよう。また、バンガロール
しており、船社は 2 ∼ 3 のオフドックCFSと
インフラ問題の真のボトルネック
に完成車工場を構えるTKM(トヨタ・キルロ
契約して自社貨物をコンテナヤードから
スカ・モーター)社をはじめ同地域に進出し
CFSに搬入。輸出でも、ヤードは直前の搬
た自動車メーカー各社の CKD 輸入の拠点
入しか受け付けないため、オフドック施設で
トレードの減速やターミナル開発の進展で、港湾のコンテナ処理能力には一定
でもあり、10 年のルノー日産の進出でこうし
通関などを行っている。ただ、オフドック
の余裕が生まれてきた。しかし、もう1 つの物流ボトルネックである鉄道輸送は依
た需要も拡大する見通しだ。
CFS 使用料やヤード間のドレージは受荷主
チェンナイ港のコンテナターミナルは岸壁
道路は大雨でたちまち冠水する
湾よりむしろ鉄道輸送の問題がより重要になるとの認識を強めている。
側の負担となっており、コスト面での負担も
少なくない。
然大きな課題を抱え、しかも改善の見通しはなお不透明。船社や物流業者は、港
る。過去数年の世界各地での大規模なタ
長 850mの4 バース体制で、水深は 13.4m。
ーミナル開発ブームは、船社や専業ターミ
荷役機器として計 7 基のガントリークレーン
TKM 社や現代自動車、フォードといった
ナルオペレーターといった従来のプレーヤ
と24 基の RTGを導入しており、さらにガン
大量の貨物を動かす大手メーカーは、こうし
延長し、水深も13.5mから15.5mまで浚渫。
ーに加えて、投資ファンドや年金基金など
トリークレーン1 基、RTG3 基の追加導入計
た問題を避けるために「グリーンチャンネル制
鉄道引き込み線も導入する。また、既存コ
多くの新規プレーヤーの流入を加速してき
画がある。運営はドバイ・ポーツ・ワールドが
度」
を活用している。これは関税の預託を条
ンテナターミナルの北側部分には「メガ・ター
た。BRICsの一員として経済成長が期待
75 % を 出 資 す る「 Chennai Container
件に港湾での迅速な貨物引取りが認めるも
ミナル計画」
という新規ターミナルの建設計
されてきたインドでもこの傾向は顕著で、第
Terminal」が行っている。ナバシェバ港と同
ので、ターミナル側で直接貨物を引き取るこ
画もある。
4ターミナル開発の国際公募には必ずしも
じくチェンナイも水深が不十分なため、基幹
とができる。中央政府が認可を与えるため、
海運とはかかわりのない多数の企業コンソ
航路の大型船による直接寄港は不可能。
ーシアムが応札。08 年春頃の試算では開
マースクラインや CMA− CGMなど一部欧
発費用が 2000 億円にも達し、資材コストの
州船社は、4000 ∼ 5000TEU 型船を投入し
高騰でこの金額がさらに膨らむ恐れがある
とすら言われるようになっていた。
所は完成車ターミナルの対岸で、岸壁長は
フェーズ1 で 400m。最終的には 832mまで
ール地方など多数の企業が進出するエリ
事実上の CONCOR 独占が続く
アへと輸送されてゆく。
コンテナ列車は 1 段積みで、通常 42 ∼
国土が広いインドでは、国内での旅客・
45 両で 1 列車を編成。1 両当たり20 フィー
一方、チェンナイ港の北側 24kmに位置す
貨物輸送における鉄道の重要性は極めて
ト型コンテナ 2 本を積載可能で、1 編成で
いずれの港湾でも優遇措置を受けることが
るエンノール港でもコンテナターミナルの開発
高い。一大経済圏であるムンバイ/ニュー
約90TEU を輸送する。本船から陸揚げさ
可能だ。
計画が進行中。12 年ごろに稼働を予定し、
デリー間ではトラック輸送がコストや輸送
れた後、鉄道に積み替えられるまでに要
一方、輸出企業への同様の措置として
開発運営会社の国際公募も最終段階に入
品質、輸送能力などさまざまな問題を抱え
する時間は通常 3 日間。ナバシェバ港から
て地中海経由の北米東岸航路や北欧州航
ACP( Applied Clearance Program)制
っている。最終ショートリストには日本郵船を
ることから、多くの貨物が鉄道輸送されて
ニューデリーまで輸送距離は約 1500km
路で寄港するが、その他はコロンボでのト
度も利用されている。輸出主体で一定のボ
はじめとする船社コンソーシアムなど 4コンソ
いる。ニューデリーとその周辺地域には、
で、出発後は 2 日前後で到着する。
開発費用が 2000 億円にも達すれば、そ
ランシップするパターンが一般的。直航サ
リュームコミットがあること、特に自動車や機
ーシアムが残っている。今年前半にも応札者
鉄道とトラック輸送の結節点となるICD(イ
こから導かれるTHC 額もビジネスモデルと
ービスとしては東アジア域内各地とを結ぶ航
械関連の貨物であること、コンプライアンス
が明らかになる見通しだ。開発計画の概要
ンランド・コンテナ・デポ)が点在しており、
当たり16 便の貨物列車が発着する。この
して回収不可能なほど高額になる。このた
路網が中心だ。
重視であること、などが認定条件。各税関
は岸壁総延長 1000m、水深 15m、年間処
船社は ICD までスルー B/L を発行して内
うちデリー近郊に向かうのは 7 ∼ 8 便だ。
が管轄しており、利用企業は港ごとに申請
理能力150万TEU。開発投資額は1300カロ
陸輸送を行っている。ICD まで輸送され
ニューデリー市南部の ICDトゥガラカバッ
する必要がある。
ール・ルピー
(約 3 億㌦)
とされる。ルノー日産
た貨物はここでトラックに積み替えられ、
ド(略称 TKD)
と、ニューデリー市東隣の
は同港を完成車輸出の拠点港とする方針を
グレーターノイダ地区やグルガオン、マネサ
ウッタル・プラデシュ州グレーターノイダ地
め計画はほぼ頓挫していたが、最近の景気
後退で応札会社の数も減っており、見通し
ヤード狭く出入りも夜間のみ
は流動的になっている。
チェンナイ港が抱える問題は、その決定
環状道路の整備が加速
バンガロールへのゲートウェー
インド南東部タミル・ナドゥ州に位置する
チェンナイ港の年間コンテナ取扱量は約 112
明らかにしており、今後存在感が高まりそうだ。
開発のめどが立ってきたターミナルに対し、
的なヤードの狭さ。ヤード内のコンテナ蔵置
チェンナイ港
港背後の道路網は問題が多い。雨が多い
能力はわずか 3960TEUに過ぎず、本船か
インフラ面では、来年後半にもPSAコー
ら陸揚げしたコンテナ貨物はただちにヤー
ポレーションと現地企業 SICAL 社の合弁に
土地柄の上、下水道設備が未整備のため、
ド外へ搬出することが求められる。一方で
よる第 2ターミナルが稼働予定だ。建設場
モンスーンの時期に集中豪雨が発生すると
ターミナルへのトレーラーの出入りは法律で
市内の道路はたちまち冠水する。渋滞や道
夜間のみに限定されており、使い勝手は一
路自体の状態が悪いことも重なり、港湾周
層悪くなっている。
辺の物流環境は不安定だ。ただ「Interlink」
このため、港周辺の半径 25km 圏内には
「Outerlink」
と呼ばれる市街地環状道路の
ナバシェバ港に次いで第 2 位の規模で、チ
ヤード能力不足を補うために計 24 のオフド
建設計画はあり、タミル・ナドゥ州政府も外資
ェンナイ/バンガロール間の経済圏のゲー
ックCFS(コンテナデポ)が設置されてい
誘致に積極的なことから対応が柔軟で、計
トウェー機能を担う。港全体としては鉄鉱石
る。鉄道や主要道路に沿って点在しており、
画進展に期待がかかっている。特にルノー日
や石炭・肥料、さらに完成車も扱う総合港
運営は CONCOR や国営倉庫運営会社の
産の進出が決まって以降は、この環状道路
湾で、コンテナ取り扱い機能は全体のごく
CWC
(Central Warehousing Corporation)
、
万 TEU で、東岸では最大のコンテナ港だ。
ナバシェバ港には全仕向地合計で 1 日
整備が加速しているという。
ICD で編成中の貨物列車
チェンナイ港近隣のオフドック CFS
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CARGO JANUARY 2009
CARGO JANUARY 2009
19
特 集 1 揺籃期のインド物流
区に立地する ICD ダドリの 2 カ所が最大
T O P I C
仕向地。TKD には 1 日 5 便、ICD ダドリに
Focus
三井物産
も1 日 3 便が発着している。
ダドリと TKD の今後は?
貨物鉄道は、インド国鉄の貨物鉄道子
会 社 で あ る C O N C O R( コンコー ル 、
して鉄道とトラックの結節点として機能する。当
デリー近郊の ICDダドリとICDトゥガラカバッド
と大きいが、
「将来的に縮小が予定されている」
と
(TKD)は、CONCOR が輸送するコンテナの
指摘する声が多い。市街地に近く渋滞が悪化し
る。2006 年に民営化されたが、鉄道省の
50 %を取り扱う最重要 ICDだ。しかし、この 2 大
ており、拡張余地にも乏しい。さらに、10 年に開
出資比率は 63.09 %を占めており、半官半
ICD にはそれぞれ異なる未来が待ち受けている
催予定のコモンウェルスゲームズに向け、デリー
可能性がある。
周辺は再開発が計画されている。これに伴って
Container Corporation of India)が運行す
民というのが実態だ。また、民営化の際に
ダドリは 2004 年に稼働した新鋭 ICD。年間取
TKDはその機能を徐々にダドリに移すことが検討
インド政府は民間企業にも貨物鉄道事業
扱量は約 12 万 TEUとTKDに比べて規模は小さ
への参入を認めており、これまでに 17 社
いが、コンテナ蔵置ヤードや鉄道引き込み線の拡
ただ、TKDはグルガオンなどハリヤナ州に進出
が免許を取得済みだ。しかし、実際に事
張用地がそれぞれ確保されており、成長潜在性は
した企業にとって存在価値が高く、ナバシェバと
高い。現在 4 本の鉄道引込み線は、7 本へ増設
の貨物鉄道便数も最も多い。このため閉鎖を疑
する方針という。現在はナバシェバに加え、ムン
問視する声も少なからずあり、TKD の先行きは不
ドラ港で週 3 便、ピパバブ港で週 2 便が運行さ
透明な状況となっている。
業を開始しているのは約半数に過ぎず、
業務範囲も限定されていることから「事実
上、CONCOR の独占状態が続いている」
デリー近郊に大型物流施設開発
初の事業費は100 億円前後を見込んでおり、需
要に応じて整備を進める。また、民間鉄道会社
三井物産はFTWZ(自由貿易倉庫地域)制
ナバシェバ港のブロックトレイン
とも連携し、ムンバイ/デリー間の輸送インフ
度を活用し、デリー近郊に大型物流施設を開
ラをトータルで提供する方針。提携先は現在、
発・運営する計画を進めている。日系企業をは
検討を進めている。
じめデリー近郊に進出した荷主に対し、鉄道輸
インド側のパートナー2 社が既に事業会社を
送と連携して高品質の保管・輸配送サービスを
設立しており、土地取得の完了後に一部株式
た、こうした混乱時には列車を仕立てやす
提供する。稼働は早ければ 10 年半ばごろとな
取得を通じて出資することで合意している。出
いニューデリー向けの便数が増え、17
る見通しだ。
資比率については 3 社中で最大とする方針だ。
されているという。
便/日のうち 13 便がニューデリー向けと
なるケースもあるという。
デリー近郊には自動車、二輪、家電、化学品
FTWZは SEZ 制度の一環で、特に倉庫・物
関連など多くのメーカーが多数進出している。周
流施設を対象としたもの。一定期間の法人税
辺には複数の ICD があるが、高度なロジスティ
れている。敷地内ではマースクライン、CMA −
こうした鉄道の不安定さを嫌い、コスト
免除やサービス税(12.36 %)が免除されるな
クスに対応する高機能物流施設は不足してい
(船社関係者)のが実態。各社は事業化に
CGM、APL の 3 社がそれぞれ CONCORと合弁
面では不利でも敢えてトラック輸送を選ぶ
ど、直接税や間接税で優遇措置が受けられる
るのが現状。三井物産の物流施設は輸出入品
あたって CONCOR に一定のボリュームコ
で自社専用倉庫を確保。このほかにインドの総
荷主もある。例えばマルチ・スズキは月間
のも特徴だ。
だけでなく国内調達品の取り扱いも可能で、輸
ミットメントを行っているが、貨物の成長鈍
合物流会社トランスワールドが、同じくCONCOR
900FEU の CKD をトラックでニューデリー
との合弁で「アルバトロスCFS」を運営する。上
化で当初の目標に達せず、ペナルティーの
記 3 社以外の船社は、基本的にこの「アルバトロ
近郊の工場まで輸送している。常に工場
支払いで事業採算の面でも厳しい状態と
スCFS」を使用している。
ラインを稼働状態に置く必要がある自動車
伝えられる。
一方の ICD TKDは規模こそ年間 40 万 TEU
ダドリICD
取得予定の土地はウッタル・プラデシュ州内
入時は最長 2 年間の長期保税保管が認められ
で、デリーからは極めて近い。鉄道路線とも隣
る。外貨のまま保管し、需要に応じて必要な分
接しており、施設内には鉄道の引込み線やコン
だけ通関して配送するなど柔軟な物流需要にも
テナヤード、国際標準の倉庫群を整備。ICDと
対応できる。
メーカーにとって、輸送が不安定な鉄道は
使いづらい。船社や物流会社は自らコント
図 2 ナバシェバ/ムンバイ間鉄道路線
旅客・内貨優先のスケジュール
国際海上貨物の主要輸送手段であるに
ロールすることができない輸送モードで物
度対応していけるめどが立ってきたが、鉄
ンバイ間産業大動脈構想(DMIC)
と、同じ
流サービスを提供しなければならず、この
道の輸送能力はほぼ限界。便数を増やす
くデリー/ムンバイ間を結ぶ貨物専用鉄道
点での対応力やバックアップ体制が荷主の
余地がなく、輸送インフラのボトルネックは
( DFC= Dedicated Freight Corridor)
信頼を勝ち取るポイントとも言える。
進出企業の物流や今後の経済発展も阻害
構想だ。インド政府はデリー/ムンバイ間
しかねない。
およびルディアナ/デリー/ソンナガル間
もかかわらず、鉄道における海上コンテ
ナの優先度は低い。まずは旅客スケジュ
貨物専用鉄道構想に期待と不安
ールが最優先され、さらにその次が農作
物などに代表される国内貨物。海上コン
ターミナル側では今後の貨物増にある程
このインフラ問題の解決策として期待さ
に貨物専用鉄道の整備を決定している。
れているのが、昨年 11 月に日本とインド両
貨物鉄道は電気けん引方式で整備され、
政府が推進に向けて合意したデリー/ム
全区間で時速 100km のダブルスタックトレ
テナなど国際貨物の輸送は後回しにされ
る。貨物便は旅客便ダイヤのすき間を縫
って運行されるため、スケジュールは不安
定で変更が生じやすい。
それでも通常時は大きな問題は発生し
ないが、悪天候や貨物のラッシュ時になる
と大幅な遅延が頻発する。港では「先入
れ、先出し」が基本だが、混雑時には荷役
を止めないよう、後から来た貨物を先に出
すこともしばしば。いったんターミナル内
で貨物が滞留すると、鉄道に積み込まれ
るまで 1 週間経過することも少なくない。ま
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特 集 1 揺籃期のインド物流
向で交渉している。
現在の CKD 輸入量は月間約 900FEU。
オに多少の修正はあるかも知れないが、
マルチ・スズキ/トヨタ・キルロスカ・モーター
クで陸送する。コスト競争力では鉄道輸送
需要予測が必要など課題もあるが、州を
中長期的に見て伸びていくとの見方は変
が有利だが、港湾での貨物滞留などで輸
跨ぐ売買に課されるCST(中央売上税)が
わらない」と今後も成長トレンドは続く、と
送が不安定になるため鉄道は利用しない。
10 年に廃止される見通しとなったことで
している。
国内では、工場と南部・西部地域間で
海外からの CKD 輸入量は今年で年間
の生産部品調達やディーラーへの完成車、
5000TEU ほど。ASEAN 域内、特にタイ
で課題を抱えつつ、その改善に取り組んでいる。ここではマルチ・スズキ・インデ
サプライパーツ輸送の改善に取り組んでい
からの輸入が最も多く、一部日本からも直
ィアとトヨタ・キルロスカ・モーターの 2 社を紹介する。
る。現在約 240 社のサプライヤーから部品
を調達しており、このうち約 180 社が工場
廊の第 1 フェーズであるハリヤナ州レワリ
部には約 40 社、西部には約 20 社がそれ
とグジャラート州バドーダラ間(約920km 区
マルチ・スズキ・
インディア
(JBIC)が DMIC 推進に向けたプロジェク
DMICはデリー/ムンバイ間の貨物鉄道
設置を決めた。
ンドにおいて、国内・海外からの部品調達や完成車輸送など物流のさまざまな局面
近郊のデリー・グルガオン地区に集中。南
ることも確認された。
調子で好調が続くとは見ていない。シナリ
庫削減を図る。在庫金利の発生や精確な
MOU の内容は、日本政府が DFC 西回
ト開発ファンドに最大 7500 万㌦を融資す
ク輸送の平準化やディーラー間の重複在
ナバシェバで陸揚げした後、工場までトラッ
ーンとする。
で支援。これに合わせ、国際協力銀行
ている。ただ、中川社長は「もともと一本
自動車メーカー編
日系企業のインド進出の代表格である自動車産業。輸送インフラが未整備のイ
間)の整備に向け、約 4500 億円を円借款
ズキが自ら需要予測を行うことで、トラッ
調達・完成車輸送で合理化推進
中間倉庫活用し安定化
トヨタ・
キルロスカ・モーター
接輸送する。現在は輸入が大半だが、イ
ンド国内のトランスミッション工場からは他
国に向けて輸出も行っている。将来的に
第 2 工場稼働に向け現地調達率向上
州政府にインフラ整備加速を呼び掛け
は金額・物量ベースともに輸出を増やし、
海外生産拠点と相互に部品供給を行う体
年からほぼ横ばいが続く見通し」
(大石取
ぞれ展開する。生産台数増加に伴って納
締役)
。ただ、政府が金融引き締めから景
入量が増加しているため、ミルクランは行
気刺激へと政策を転換しつつあるため、
わずに各社がトラックで直接工場へ納入し
トヨタ自動車は 97 年にインドのキルロス
げした貨物は全量トラックでバンガロール
これが追い風となって販売の回復に結び
ている。一方、南部・西部など遠方からの
カグループとの合弁により、カルナータカ州
工場まで陸送する。スケジュールや便数
付く可能性もあるそうだ。
調達では輸送インフラの不備で JIT(ジャ
バンガロール郊外に車両生産拠点としてト
が不安定なため、鉄道輸送は利用してい
完成車輸出台数は昨年で 6 ∼ 7 万台と
スト・イン・タイム)の納入が難しく、加えて
ヨタ・キルロスカ・モーター(TKM)社を設
ない。
なったもよう。当初は 7 万台を予定してい
納入量の増加で悪化した工場周辺のトラ
立した。稼働中の第 1 工場は最大で年間 8
中川社長は 10 年に稼働する第 2 工場に
制を構築する。また、チェンナイ港で陸揚
の両側 150km の地域に、工業団地や港湾
スズキのインド子会社マルチ・スズキ・
たが、海外の消費低迷の影響は輸出にも
ック渋滞緩和が課題となっていた。このた
万台の生産能力を有しており、カローラと
ついて「従来以上に現地調達率を高め
をはじめとしたインフラを集中的に整備す
インディアはデリー南西部のハリヤナ州グ
及んでおり、6 万台程度にとどまる可能性
め、工場近隣に南部・西部からの貨物を
IMV( Innovative International Multi-
る」と語った。このため、第一工場ベース
る両国共同のプロジェクト。JBIC が融資す
ルガオンおよびマネサールに完成車工場
もある。一方、今年の輸出台数は約 12 万
対象とする中間倉庫を確保。両地域から
purpose Vehicle)
シリーズのイノーバの 2
では物量は今後も大きくは増えない見通
る7500 万㌦は、現地に進出する日本企業
を置いている。07 年の新車販売台数は約
台と倍増する見通し。昨年末に発売した
の貨物をトラック1 台にまとめていったん
車種を生産している。また、昨年 4 月に
し。また、国内の部品調達や完成車輸送
の国際競争力強化に資するインフラプロジ
71 万 2000 台で、インド国内での販売台数
新小型車「A-Star」の欧州向け輸出が始
中間倉庫に納入し、そこから必要に応じ
TKM 敷地内に第 2 工場の建設を決定し
は三井物産が出資する Transystem 社を
ェクトの事業性評価に活用される。
シェアは 55 %と圧倒的シェアを誇る。ま
まるためで、同車を年間6 万台輸出する計
て必要な部品をラインに送り込む体制に
ており、10 年の稼働を予定している。主に
起用するが、新工場稼働や現地調達率向
た、国外輸出ではアルジェリアやチリ、北
画だ。これに備え、昨年 2 月にはグジャラ
切り替える。
カローラや新開発小型車を生産し、当初は
上で輸送量の増加に対応し切れなくなる
発電および特定地域開発について、5 つの
アフリカ、中南米を主要仕向地としており、
ート 州 ムンド ラ 港 の 管 理 運 営 会 社
国内の完成車輸送ではバンガロールに
年産 10 万台、将来的には20 万台へ拡大す
可能性がある。他メーカーとの相乗りや復
先行インフラ案件(アーリーバード・プロジ
07 年は約 5 万 3000 台を輸出した。
MPSEZL(ムンドラ港・特別経済特区)
と
完成車とサプライパーツの中間倉庫を設
る方針だ。
路便を活用するほか、起用会社を増やす
DMIC 地域では、物流、人的資源開発、
ことも視野に対策を検討している。また、
ェクト)へ日本企業が参加することも決定
一方、国内外の完成車を取り巻く環境
の間で完成車専用ターミナル契約を結ん
置し、そこから周辺の各ディーラーへ配送
TKM の中川宏取締
済み。日本郵船がニムラナで建設予定の
は急速に悪化している。大石修司取締役
でいる。また、
「A-Star」を生産するマネサ
する体制を構築する。ディーラー1社当た
役社長は「国内の新車
新開発小型車は海外にも輸出する計画だ
倉庫・ICD 事業や、三井物産の ICD 事業
は「08 年の新車販売市場は全体で毎月平
ール工場からムンドラ港までは鉄道輸送
りの年間販売台数が平均 1500 ∼ 1800 台
販売は、昨年前半まで
が、輸出港はチェンナイその他の港を含め
もこれに含まれる。
均 4 %増を記録してきたが、昨年 7 月・8
を利用する方針。このため、マネサール工
と多いため、現在は工場から各ディーラー
は 10 %増前後で推移
て検討中という。
これら一連の事業には、プロジェクト推
月・10 月・11 月は 3 年ぶりの対前年同月
場へ直接、鉄道引き込み線を導入する方
に直接完成車を配送しており、空荷輸送
していたが、7 月が前
進に伴う関連貨物も含めて期待は大きい
割れとなった。通年では良くて昨年並み
削減のため他地域の自動車メーカーとは
年並となり、さらに 10・
など主要交通インフラが未整備で、輸送品
が、同時に不安もある。果たしてどこまで
の水準となるだろう」
と
帰り便の相互利用を進めている。しかし、
11 月で状況が悪化す
質が安定しないことだ。このため、州政府
順調に進むのか。また、前述のようにイン
指摘する。インフレ抑
「現状ではディーラー間の在庫最適化が困
ドでは再開発に向けた土地取得の際に、
制のため政府が金融
土地の所有者である農民とのトラブルなど
物流面での最大の課題は、道路や鉄道
中川社長
るなど、前半と後半で
に対してインフラ整備の推進を働き掛けて
難。また、セールスシーズンに入ると、例
状況が大きく変わった」と話す。08 年の販
おり、道路整備については加速しつつあ
引き締めを強化してお
えば南部のメーカーはより多くの製品を南
売台数は、07 年実績の 5 万台強をやや下
るという。また、中川社長は「デリー/ム
で計画の変更を余儀なくされるケースが少
り、銀行の貸し渋りと
部に投入するため、結果として南北間の
回る見込み。さらに今年にいても「何とか
ンバイ間で計画されている産業大動脈構
なくない。
「ニューデリーやムンバイなど大
合わさって「買いたくて
輸送能力が不足する」のが課題になって
08 年の販売実績は超えたいが、前半は
想と同様のプロジェクトが、チェンナイ/バ
都市周辺で、DFC 用の開発用地が確保で
もローンが組めない状
いた。
10 %台の減少幅が続くだろう」と語り、少
ンガロール間でも実施されることが望まし
なくとも年前半は厳しい状況が続く、と見
い」と語った。
きるのか」
と不安視する声もある。
22
CARGO JANUARY 2009
況」が続く。今年も「昨
大石取締役
このため中間倉庫を確保し、マルチ・ス
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23
特 集 1 揺籃期のインド物流
シニアゼネラルマネージャー)方針だ。イン
ドでは大手欧州系船社がそれぞれ 6 %以
船社編
上のシェアを握っており、物量の大半をし
海上・物流でサービス強化目指す
めるグローバルアカウントや NVOCC の多
くはこうした 欧 州 系 船 社 に 集 中 す る。
NYK のグローバル戦略において空白とな
ここでは邦船 3 社のインド市場への取り組みを紹介する。インドでは歴史的に欧
っているアフリカ・南北航路も見据え、
「イ
ほ
州船社の存在感が高く、邦船はじめアジア船社のシェアはまだ低い。しかし、各社
ンド市場で橋頭堡 を築けるかどうかが、
とも主要顧客である日系メーカーからの輸送需要に応えるべく、海上サービスや国
競争が激化する定期船業界で生き残れる
内ロジスティクス事業の充実に取り組んでいる。
かの試金石になる」
(梁シニアゼネラルマネ
ージャー)
と見ている。
港湾・鉄道のインフラ整備が進まず、キ
ャパシティ不足も問題となっているため、
未整備な中でもドアツ
物流サービスを安定して提供する拠点作
ードアの高品質な物流
りを進めている。チェンナイ北部のエンノ
サービスが求められて
ール港では、開発運営会社を決定する公
おり、
「SEA − LIP を具
募に参加しており、最終候補 4 コンソーシ
体化する余地が大きく、
アムのうちの 1 社としてショートリストされて
日本郵船は、インドでのマーケットシェ
グループの強みを発揮
いる。チェンナイ支店の川口浩ダイレクター
ア倍増とグループ間の連携による高水準
して顧客により容易に
の物流サービス提供を目標に事業展開を
他社とのサービスレベ
進めている。海運、物流、完成車輸送を
ルの違いがご理解頂ける」とNYK Line
日本郵船
シェア倍増へ、グループ連携強化
総合力生かし SEA-LIP を具現化
AD
日本郵船
石島 CEO
によると
「公募結果は、早ければ来年初頭
に明らかになる見通し」という。また、デ
リー近郊のパトリとニムラナには専用 ICD
担う現地法人 3 社に、国際航空貨物輸送
(India)の梁源治シニア
を 開 設 す る 。パトリ
の郵船航空サービスを合わせて総合物流
ゼネラルマネージャーは
ICD はグルガオンのす
アクションプラン「SEA − LIP」の具現化を
自信を見せる。
ぐ南側で、土地面積は
目指す。
海 上 輸 送 では 、日
22 エーカー(約 8.9ha)
主体となるのは、コンテナ船や自動車専
本/インド間で唯一の
で鉄道引き込み線も備
用 船 な ど を 中 心 と す る NYK Line
直 航 サ ービスで ある
える。営業開始は今年
( I n d i a ) に 加 え 、物 流 事 業 の N Y K
「ヘラクレス
(HLS)」の
Logistics(India)、完成車陸送事業を行
ほか、タイと南部チェン
うNYK Master Auto Logistics の 3 社。
ナイ間でウィークリーサ
さらに郵船航空サービスとも協力し、グル
ービスを運航。昨年 8
ープ各社間での情報交換やサービスの相
月には北中国/インド
互活用を通じて多様な物流ニーズに対応
を結ぶ「ICS」を開設し
する。NYK Line(India)の顧客に対
た。全インドでのマー
し、NYK Logistics(India)が通関、配
ケットシェアは 約 3 %
送、倉庫業務を提供したり、あるいは完成
(アジア航路では 10 %
車輸送の復路便を利用して他社の貨物を
超)だが、将来的に欧
輸送するなど、
「相互に需要がかみ合うと
州直航サービスの開設
ころからビジネスを拡大し、SEA−LIPの実
も視野に入れて「インド
現を進める」
( NYK Logistics < India >
でのメジャーリーグ入
の石島一広 CEO)考え。主要顧客である
りを目指しシェアを6 %
大手日系メーカーからは、輸送インフラが
強まで引き上げる」
(梁
10 月を予定する。ニム
梁マネージャー
ラナでは土地 40 エー
川口ダイレクター
CARGO JANUARY 2009
25
特 集 1 揺籃期のインド物流
カー(約 6.2ha)を手配済みで、ICDと合わ
せて倉庫建設も計画しており、今後の企業
Processing
進出動向を見て判断していく。バンガロー
に 316 人、船員配乗管
ルでも同様の ICD 設置を検討している。
理会社の Mitsui O.S.K
ナバシェバ港では自社スタッフが各ター
Sercies)
Lines Maritime
(India)
ミナルや貨物鉄道運行会社、CONCORと
P v t . L t d . では 船 員 約
連絡を取り、自社コンテナのターミナルで
1400 人を擁する。
の蔵置状況や鉄道への積み込み予定を常
コンテ ナ 船 事 業 で
に把握する体制を整えている。インド西部
は、ここ数年のインド発
ではナバシェバに加えてピパバブやムンド
着トレードが年率 2 割
ラにも寄港しており、問題が発生した際に
弱で成長してきたのに
は他港への転送や輸送モードの切り替え
対 し 、MOL India の
など、グループ各社間の連携を通じて迅
宮部基取締役は「取扱
速に対応。自動車関連など安定輸送を重
実績は 04 ∼ 07 年で年率約 4 割増、昨年は
このほど国際航空運送協会(IATA)ライ
視する荷主からは、こうした対応力が特に
約 14 万 TEU を取り扱った」と話す。主要
センスも取得しており、航空貨物にも力を
評価されているという。
貨物は、輸入では自動車関連や機械、雑
入れて行く。宮部取締役は「10 年の CST
貨関係。輸出では農産物、食品、衣料繊
(中央売上税)廃止で、荷主がより柔軟に
がムンバイ、チェンナイ、コルカタ、グルガ
維、化学品、自動車関連部品が多い。宮
物流を構築する中でモノの流れが多様化
オンの 4 カ所に専用倉庫を確保。日系大
部取締役は「足元のペースはスローダウン
する。また、デリー/ムンバイ間産業大動
手電機メーカーの貨物を主に取り扱うほ
しているが、欧米諸国に比べて影響は比
脈構想が進展すればさらに貨物量が拡大
か、タタ・モーターズや英国の大手建機メ
較的小さく、前年比マイナスになることは
する」
と指摘し、将来の物流動向を睨んで
ーカー工場で梱包・バンニングなど構内作
ない」との見方を示した。
対応を進める考えだ。
物流事業では、NYK Logistics(India)
AD
商船三井
( Mitsui Information
業を行っている。ムンバイ、ニューデリー
日本発着貨物はシンガポールでトランシ
また、完成車輸送事業への取り組みも強
地区およびチェンナイでは自社通関を行っ
ップしており、ナバシェバ向けは「NS2」
、東
化 する。Mitsui O.S.K. Bulk Shipping
ており、主要電機メーカーのほかマルチ・
岸のチェンナイ・ヴィシャカパトナム向けは
<Asia Oceania> Pte Ltd.の片田聡駐
スズキが来年から開始するムンドラからの
「SMX」で寄港する。米国東岸向けサー
在員は、
「完成車輸出は今後は確実に伸び
完成車輸出でも通関作業を提供。近く、
ビス「SZX」
と北欧州向けサービス「SCX」
る」
と自信を見せる。
「インドで主に生産す
バンガロール、プネー、コルカタでも自社通
にはそれぞれコロンボで接続。この他に
る小型車は現在の世界のニーズにマッチ
関を開始する。貨物取扱実績は、輸出で月
東アフリカ向けで「IOS」、南ア・西ア向け
しており、輸出はさらに伸びる分野」と片
間約 1000TEU、輸入では 200 ∼ 300TEU
で「MRX」を展開している。インド発着の
田駐在員は説明する。現在はインドとアフ
前後となっている。
定期コンテナサービスでは、アジア発着貨
リカ各地域間で自動車専用船を運航して
物が約 6 割を占めている。
おり、南アフリカ向けでは当初投入してい
今後は海上輸送に加え、国内の物流も
商船三井
物流網強化、デリー近郊に専用倉庫
完成車輸送会社が営業開始
含めて顧客ニーズを把握し、サービス向
上を図る。新規顧客からは倉庫や通関、
ドアデリバリー輸送などへの要望が増え
ており、それぞれ案件ごとにサービスのコ
商船三井は02 年にインド現地法人Mitsui
ーディネーションを行っている。日系企業
O.S.K. Lines(India) Pvt.Ltdを設立し
のインド進出が今後加速する見通しであ
た。コンテナ・物流事業のほかに不定期船
るため、サービス提案力の強化を通じて
のハズバンディング業務を行っており、人員
利用者の拡大を図る。このほど初の専用
は 194 人。このほかに B/L へのデータ入力
倉庫をデリー近郊に確保しており、さらに
などバックオフィス機能を担うMOLIPS
他地域への展開も加速する方針だ。また、
宮部取締役(右)
と
商船三井ロジスティクスの川島マネージャー
CARGO JANUARY 2009
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特 集 1 揺籃期のインド物流
種、地域に応じて ULA
社や"K" STEAMSHIP
AGENCY PRIVATE
LIMITED の 2 社を代
理 店 に 起 用して い た
が、自動車・電機関連
を中心に日系企業の進
片田駐在員(右)
と清家氏
出が加速している状況
を踏まえ、ULA 社との
AD
川崎汽船
た 1000 台積みから現在は 3000 台積みへ
提携を決めた。ULA
と船型を大型化した。
社とはコンテナ船事業
今後、マルチ・スズキや現代自動車の生
で20 年以上の関係があ
産能力拡大に伴って乗用車輸出が増える
り、"K" LINE INDIA
のに加え、2011 年に進出予定のルノー日
の現在のスタッフは ULA 社から移籍。ム
規の航路開設は我慢の時期」
(岸副社長)
産は年間生産 20 万台のうち 13 万台を輸
ンバイ本社のほか、ニューデリーとナバシ
という。欧州・地中海向も減速感が出てお
出に振り向ける方針。また、人件費が安い
ェバに支店を置いており、スタッフ数は
り、今後は中国・ASEAN 地域とのトレー
ことから生産に人手がかかるバス・商用車
116 人。"K" LINE INDIA の岸俊雅副社
ド拡大に期待を寄せる。
の輸出増も見込まれる。こうした動きを受
長は、
「インドでの自社代理店設立で、
け、チェンナイを拠点に完成車陸送会社の
BRICs諸国への展開が一巡した」と説明
いが、岸副社長は「昨年のインド港湾の合
する。
計コンテナ取扱量は 800 万 TEU 前後。中
「MOL Auto Logistics( India)Pvt.Ltd.」
ナバシェバ港コンテナヤード
インド発着トレードでのシェアはまだ低
を設立した。商船三井の 100 %出資で資
岸副社長は「今のイ
国と同程度の人口でこれだけの取扱量し
本金は2000 万ルピー
(約 4000 万円)
。まずト
ンド経済は踊り場。こ
かないということは、言い換えれば今後の
ラック4 台を自前で整備し、来年年明けか
の間に会社の基盤整備
ポテンシャルが大きいということ」とシェア
ら営業を開始。チェンナイ港経由で完成車
を進めて今後のパイ拡
拡大に意欲的だ。日系企業はインド国内
輸出を行っている自動車メーカーに対し、
大に備えたい」と語り、
での内需主体で輸出志向の企業は少ない
工場から港への陸送サービスを提供する。
コンテナトレードでは今
が、ULA のネットワークも生かしてインド・
片田駐在員は「まずは下請けの立場でノ
後中国や ASEAN 地域
欧米系荷主の開拓を進め、輸出入で取り
岸副社長
扱い増を目指していく。
ウハウを蓄積し、実績の積み上げと規模
とのトレードが伸びる
拡大を目指す。完成車の高品質な陸送サ
との見通しを示す。ゲートウェーであるナ
インド北西部/デリー間はインド全体の
ービスを提供することで、将来的な海上輸
バシェバやチェンナイ港のインフラ整備状
6 割以上の貨物が集中するエリアだが、ゲ
送案件の獲得に結び付けたい」と語った。
況はまだ抜本的な改善は見込めないた
ートウェーであるナバシェバ港や南部のチ
め、ムンドラやグジャラートなど他港も並行
ェンナイ港では内陸への輸送ルートも含め
して使っていくことも検討。また、ULA 社
てインフラの抜本的な改善は進んでいな
の兄弟会社であるボックストランス社が貨
い。岸副社長は「ムンドラなどグジャラー
物鉄道輸送のライセンスを取得しており、
ト州の港湾利用も並行して拡大する必要
今後は同社との協力関係も推進する方針
がある。グジャラート州はモンスーンの勢
だ。
力外で天候も安定しており、ナバシェバ港
川崎汽船
昨年 5 月に現法設立、成長へ体制整備
印・欧米系荷主の開拓も目指す
川崎汽船は昨年 5 月、代理店として起用
現在のインド発着サービスは、東アジア
に対してもサービス改善に向けたプレッシ
していたユナイテッド・ライナー・エージェン
とナバシェバを結ぶ「INDFEX」と同じく
ャーになる」との考えを示す。内陸向けで
シーズ(ULA 社)を合弁パートナーとして
東アジアとチェンナイを結ぶ「INDFEX2」
は、ULA の兄弟会社で貨物鉄道オペレー
"K" LINE INDIA を発足。日系企業だけ
の 2 ループ。
「INDFEX2」はこのほど投入
ターのボックストランス社との協力関係も
でなくインドや欧米系荷主も含めて輸出入
船を大型化したが、現在は世界的な景気
拡大し、内陸までのサービス強化を進め
でのシェア拡大を目指している。従来は船
後退の影響で荷動きが鈍化しており、
「新
る。
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