直接基礎の設計

建築基礎構造講義(5)
基礎形式の種類と選定
1
到達目標
z基礎構造と上部構造の違い、基礎の種類(直
接基礎と杭基礎)と直接基礎の種類(独立・
複合・連続フーチング基礎、べた基礎)につい
て説明できる。
z地耐力と基礎形式の選択の関係を説明でき
る。
z免震基礎の原理と選択の基準がわかる。
テキスト 第5章 p.61~65,p.85~86
2
基礎の構造
最下階の柱脚より下
が基礎構造
3
基礎の種類
フーチング基礎
直接基礎 基礎
独立フーチング基礎
複合フーチング基礎
連続フーチング基礎
べた基礎
杭基礎
支持杭基礎
摩擦杭基礎
4
直接基礎の種類
5
独立基礎(住宅)
z柱下だけに基礎を設け建物重量を地盤に伝
える
6
連続フーチング基礎(布基礎)
z 躯体の外周部および、重力のかかる部分の下に線上に構造
物(一般には鉄筋コンクリート造)を置き、それらをしっかり繋
いで一体構造にした基礎。
http://www.2550.net/myhome-jiban.htm
7
べた基礎
z 躯体の外周部だけではなく、躯体の下部全体を一枚の鉄筋
コンクリートの板にして、それと外周部(床下換気の必要性
から、外周部は床下スペース分だけ高くなっているのが標準
的)とをしっかり接続して一体構造としたもの。
8
基礎構造の選定
z 上部構造の構造計画と基礎形式は深く関連してい
るので,上部構造の計画を作る段階で地盤条件を
十分に把握して,基礎を含めた総合的な構造計画
を行う必要がある。
z 基礎構造の選定にあたっては,上部構造の条件,
地盤条件,敷地の条件,施工法,および経済性など
を十分考慮して,総合的に判断しなければならない。
9
上部構造の条件
z 上部構造からの条件としては,規模,重量,用途,
構造などが考えられる。
z 建物重量と基礎構造の選定は密接な関係がある。
z 上部構造の剛性と不同沈下は密接な関係がある。
{RC造では剛性が高く不同沈下が起こりにくいが,大き
な不同沈下には亀裂が発生する。
{S造では,剛性は低いが,不同沈下には粘り強い構造
である。
10
上部構造の重量
日本建築学会『建築物荷重指針・同解説』
11
地盤の条件
z 基礎形式の選定は地盤の性質を適切に判断して行
う必要がある。
{支持層が深い場合は杭基礎になるが,その杭基礎を摩擦
杭とするか,支持杭にするかの判断は,周辺の建物の基礎
形式や経験に基づいた高度の判断が必要
{一つの建物で異種の基礎の混用は極力さけるべき
{凍結の恐れのある地域では基礎の根入れ深さは凍結深
度より深くする
{地下水位より深い位置に基礎を設ける場合は,止水や排
水に多額の費用を要することが多いので,地盤の透水係
数の調査が必要
{地下水位が将来低下する恐れのある地域では地盤沈下
が生じる可能性があるので,その影響も考慮する
12
敷地の条件
z敷地の状態によって基礎形式が変わる。
{隣地境界線近くに設けられた柱の基礎は偏心基礎
として,基礎が隣地にはみだすことがないようにす
る
{隣地の地盤掘削によって基礎支持力が低下する
恐れがあるので注意が必要
{隣地の建物による地中応力も配慮して基礎を選定
する必要がある
13
施工方法
z基礎の建設には騒音や振動を伴うので,建
設地点に対応した騒音規制法や振動規制法
に基づいた基礎形式や工法の選択が必要
{杭基礎の場合,所定の長さの杭が現場に搬入可
能かの調査が必要
{施工方法によっては施工機械や付属設備のため
のスペースが確保できるか等を調べて基礎を選定
する
14
経済性
z基礎は建物の大元であるから十分安全でな
ければならないが,上部構造とのバランスを
考慮して基礎を選定する必要がある。
{基礎形式とコストは関連するので,各種基礎形式
による安全性,コストの比較を行い総合的な判断
に基づいて基礎の選定が必要である。
{無理のない範囲でできるだけ経済的な基礎を選択
すべきである。
15
過剰設計
建築地盤工学より
16
直接基礎と杭基礎の選定
z 一般に直接基礎は杭基礎より経済的であり,地盤
の許容支持力と建物規模が概ね次の場合は直接
基礎を採用することが多い。
{RC造2階以下,S造3階以下の場合で許容支持力が
50kN/m2程度あるとき。
{許容支持力が300kN/m2程度あり10階以下であれば直接基
礎が可能
{地下室がある場合は基礎根入れによる浮基礎的な設計が
可能であり,上記の地盤支持力より小さな許容支持力でも
べた基礎としての設計が可能
z 地表から軟弱地盤が厚く堆積し,この地盤に構造物
を直接支持されることが困難な場合に杭基礎が採
用される。
17
直接基礎のスラブ形式の選択
z 独立基礎,複合基礎,連続基礎,べた基礎のどの
基礎を用いるかは上部構造や地盤の許容支持力に
より判断する
{上部構造が壁式構造の場合は連続基礎(布基礎)とする場
合が多い
{S造やRC造のラーメン構造の場合,柱から建物重量をその
直下の地盤に独立基礎で直接支持されるのが合理的であ
り,経済的な場合が多い。しかし,地盤支持力が小さい場合
は独立基礎の底面積は大きなものになり,隣の柱に繋がる
ような場合は,建物全体を一体の基礎としたべた基礎が用
いられる。
18
{べた基礎に適した建物は,地下室をもつ建物や柱
間隔が小さく耐圧盤が地中梁によって小さな面積
に区画できるものなどである
{階数や地盤支持力が上記の条件を満足していても,
大スパンの建物の場合は,各柱の軸力が大きくな
り,直接基礎より杭基礎のほうが適切な場合があ
る。
19
免震基礎の選択
z地震に対する対策として免震基礎が普及して
きている。
20
建物が地震に耐える3つの方法
制震
減衰を大きくする
地動の
最大加速度
耐震
建物を軽く剛く造る
免震
建物を思い切り
柔らかく造る
固有周期って何?
行って
帰る時間
Mu
Te = 2π
Ke
初期変位を与えた場合の自由振動
免震建物の仕組み
23
積層ゴム(アイソレータ)の原理
積層ゴムとゴムの固まり(ゴム
ブロック)の働きの違いは右図
のとおりです。
柱の大きい荷重を支えながら、
地震の大きな揺れをも可能とす
るのが積層ゴムです。鋼板に
挟まれたゴム板は、水枕のよう
に全ての方向へ張りつめた張
力だけによって柱の大きな荷重
や、地震の大きな揺れにも耐え
ています。日常的に使われてい
る輪ゴムの張力と全く同じ働き
によって、何千㌧もの重たい建
物を支えています。
24
アイソレーターの種類
z天然ゴムアイソレーター
z高減衰積層ゴムアイソレーター
z鉛プラグ入り積層ゴムアイソレーター
z滑り支承アイソレーター
25
ダンパーの種類
zオイルダンパー
z鋼棒ダンパー
z鉛ダンパー
z摩擦ダンパー
26
免震構造とコスト
z 免震構造を採用した建築物では、免震装置の上の
部分の地震荷重は当然小さなものになり、強度をさ
げることができるため、コストダウンにつながります。
z しかし一方では、新たに免震装置が必要になり、そ
れを取り付ける下部構造の部分や、建物周辺のクリ
アランスを確保するために、別なコストが発生するこ
とになります。これらを全て含めたトータルコストで
は、一般に数%のコストアップと言われています。
http://www.maruhiko.co.jp/03eigyo/04.html
27
免震ピット
「基礎下免震」ではメンテナンススペースを確保するた
めに、免震装置を取り付ける部分に“免震ピット”が必要
になり、装置の上下に基礎梁を配置することになります。
また、ピットスペースが取れない場合は、中間柱に免震
装置を取り付ける「中間免震」があります。
28
クリアランス
z 建物の揺れを吸収するために、周囲全ての方向に
クリアランスを設けます。このため、敷地に余裕が必
要になり、また、地震のときに挟まれないように安全
対策を講じなければなりません。当社社屋の設計で
は水平500mm、垂直50mmのクリアランスを確保し
ています。
29
設備配管
建物の水平方向の変位(ズレ)に対応するため、建物内外
の接続が必要な給排水管、電力線等の取り付けは、下の
図に示すようにフレキシブルにしなければなりません。
平面図
平面図
断面図
断面図
電力引込図
給排水・消火管設備
30
コストアップとコストダウン
コストアップ要因
コストダウン要因
•免震装置費用
•基礎の二重躯体、アクセス部など、
免震用のディーテイル
•設備配管のフレキシブルジョイント
•設計、許認可用の追加費用
•免震構法の採用によって、上部構
造に働くせん断力が大幅に減ります
ので、柱や梁などの構造部材は小さ
くすることができます。従って上部構
造体のコストは低減できます。
•高層ではSRC構造にするところを、
構造計画を変更し、RC造で造ること
が可能です。
•カーテンウォールや設備機器取付
部など、非構造材でのコスト削減が
可能です。シーリング材やサポート
金具も簡略化できます。
31
http://www.ando-corp.co.jp/j/ja/ja0904.htm
木造住宅の免震技術
転がる。
滑る。
免震装置の種類
■転がり支承
凹面の皿の上をボー
ルまたはローラーが転
がり、加速度を低減
免震性能が高い
■すべり支承
凹面状の皿の上を
すべり部がすべり、
加速度を低減
■積層ゴム支承
ゴムの変形により加
速度を低減
戸建免震のコスト
z 鉄骨架台は標準的に4ton~5ton程度の重量となり、60万円
前後は必要。
z 免震設計は免震装置廻り,架台を含む上部構造,下部構造
の、申請施工可能な設計図と限界耐力計算(告示)法免震構
造計算が必要。設計料は現状では90万円前後。
z 免震装置の数はメーカーによって異なるが、標準的木造住
宅の免震装置は、6組×25万円=150万円前後。
34
まとめ
z 基礎の種類には,直接基礎と杭基礎があり,直接
基礎には,独立基礎,複合基礎,連続基礎,べた基
礎がある。
z 基礎の選定にあたっては,上部構造の条件,地盤
条件,敷地の条件,施工法,経済性などを考慮して
総合的に判断しなければならない。
z 免震基礎は地震力を低減できる有効な方法である
が,架台の設置,免震ピットの確保,クリアランスの
確保,設備配管の配慮などが必要となる。
35