論文内容要旨 論文題名 頭頸部癌に対する S-1,Nedaplatin/放射線同時併用療法の安全性に関する検討 掲載雑誌名 日本頭頸部癌学会雑誌 第 39 巻 4号 484-489 頁 2013 年 掲載 外科系耳鼻咽喉科学専攻 藤居直和 内容要旨 今回我々は 2005 年 1 月から 2011 年 8 月までに当科で頭頸部扁平上皮癌の一次 治療として S-1,Nedaplatin/放射線同時併用療法(SN 療法)を行った 100 例を 対象とし,治療効果と疾患特異的生存率,完遂率,有害事象,合併症,再発率, Performance status の悪化などにつき臨床的検討した.対象は 2005 年 1 月か ら 2011 年 8 月までに昭和大学藤が丘病院において頭頸部扁平上皮癌に一次治療 として SN 療法を施行した 100 例で SN 療法の適応として 80 歳未満,クレアチ ンクリアランスが 60ml/分以上とし,重篤な肝疾患,心疾患がないものとしてい る.上顎癌に対しては T2,T3 症例で上顎部分切除術後に SN 療法,T4 症例では SN 療法 1 コース後に上顎部分切除術を行い,その後 2 コース目を行っている. また治療に際して胃瘻造設は行っていない.結果は 3 年疾患特異的生存率が 93.0%,Complete response が 88.0%,Partial response が 12.0%,奏効率は 100%,完遂率 85.0%であった.有害事象は血液毒性で Grade3 以上が 66.0%, 非血液毒性で Grade3 以上が 45.0%であった.治療開始後の主な合併症は 9.0% にみられ,せん妄が最も多く 5.0%であった.再発率は 13.0%で PS の悪化した 症例は 4.0%であった.完遂率に関しては 85%でありこれまでの諸科の報告で 66~92%と同程度であり,完遂できなかった症例の原因は,せん妄,Grade4 の血液毒性,膵炎,肺水腫,敗血症,胆嚢炎,うつ病であった.原発部位別で は中咽頭の症例が 7 例と約半数を占めていた.なお中咽頭癌 19 例中 7 例(36.8%) が完遂できていないことを踏まえ,現在化学療法の用量を 80%として投与し検 討中である.有害事象の発生率は,血液毒性が Grade3 以上の発生率は 31~47%, 非血液毒性では 43~71%とされており,本治療での発生率は同程度かやや高い 傾向であった.今回の検討で血液毒性は Grade3 以上が 62%であったが,実際 は白血球,血小板の低値となる期間は数日間であり G-CSF 製剤,血小板輸血で 対応出来ており,血小板輸血を行った症例は 3%であった.非血液毒性は 45% であり,摂食に関してはうつ病になった症例以外は疼痛コントロールと補液を 行うことで対応でき,胃瘻の造設を行った症例は認めなかった.これまでの報 告で経管栄養が必要となったのは 37~83%とされており,本治療では放射線治 療を 1~2 週間の休止期間を置いていることが影響していると考えられた.再発 率は 13%であり,これらの原発,頸部リンパ節再発症例に対し救済手術を施行 したが,リンパ漏が 1 例認められた以外には合併症を認めなかった.CCRT 後 の救済手術には,組織の線維化や血流障害などのため手術に難渋することがあ り,その合併症の発生率に関してはさまざまな報告があり 24~59%とされてい る.本治療の救済手術は,まだ症例数が少ないため今後も検討していく必要が あると考えられた.これらの結果から SN 療法は頭頸部扁平上皮癌に対し有効 な治療法であると考えられた.
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