NCNPの活動 2013–2014 - 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究

NCNP ANNUAL REP O RT
2013–2014
NCNP
2013–2014
ANNUAL REPORT
/
本レポートはNCNPホームページ 広報誌欄からもご覧いただけます。
http://www.ncnp.go.jp/general/magazine.html
NCNP 広報
印刷時に、VOC(揮発性有
機化合物)などを含む湿し
水が 不要となる水なし印
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このアニュアルレポートを印刷
した工場の消費電力の一部は
CO 2を排出しないグリーン電
力を使用しています。
VOC(揮発性有機化合物)成
分フリーのインキを使用して
います。
2014年11月発行
NCNP 年報 2013–2014 が
完成しましたのでお届けします。
この年報は 2012-2013 号が第1号としてスタートし、
今回が第2号になります。
この年報の発行の主旨は前号にも記しましたが、当センターの活動や研究成果
などを、広く国民の皆様に知っていただき、当センターの活動にご理解をいた
だくことにあります。
NCNP は独立行政法人になって5年目を迎えております。NCNP の使命は
「精神疾患、神経疾患、筋疾患および発達障害の克服を目指した研究開発を行い、
その成果をもとに高度先駆的医療を提供するとともに、全国への普及をはかる」
ことにあります。私共は毎年、過去1年間の業績評価を国から受け、上記の使
命を果たしているか評価されます。評価の項目はたくさんありますが、その中
で「研究開発の推進」に関連する評価項目は常に最高の評価をいただいており
ます。実際、研究所での地道な研究が実を結び、これまで治療法がなかった
難病の治療に道を拓く成果を得て、センター病院での臨床試験へと進めており、
これらが高い評価を得ることにつながったと思います。この年報では、このような
画期的な研究成果をできるだけわかりやすく解説することを心がけました。
NCNP は精神・神経・筋・発達障害の4分野を扱っていますが、これらの領
独立行政法人
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
樋口 輝彦
総長 域の疾患の多くが、まだ、未解明であり、根治療法が開発されておりません。
一日も早く、これらの疾患の原因を明らかにし、根治療法を患者様にお届けで
きるよう、センター職員は日々努力を重ねております。この年報に目を通して
いただき、今、どこまで研究が進んだかを知っていただければ幸いです。また、
ご感想や当センターへの期待などもお待ちしております。
Greetings from the President
研究・開発
国立高度専門医療研究センターとして、精神・
神経疾患等の臨床研究推進のための中核的役割
を担い、基礎研究はもとより、臨床研究、治験
の円滑な実施を行っていきます。また、多くの
外部施設との共用研究基盤整備を行い、研究資
源の適切な活用を実現する司令塔機能を果たす
こと等を通じて、国際水準の研究成果を継続的
に創出することを目指しています。
人材育成
レジデントや流動研究員等への充実した教育・指導
システムによって、専門性を有するリーダー的人材
の養成を進めるとともに、医療従事者等に対する各種モデル的研修・
講習の実施を推進しています。また、地域医療の指導的役割を担う
人材や臨床研究の推進者を育成し、医師、研究者以外の職種にも対応
した課程の整備にも着手しています。
NCNPのミッション
私たちは、医療と研究が一体となった国立高度専門医療研究センターとして、
基本理念のもと、5つのミッションを掲げ、活動しています。
Mission
医療の提供
精神・神経疾患等の研究成果を活かし、患者様の生活の質の向上
を目指した医療を提供します。特に、希少疾患や重症・難治性
基本理念
病院と研究所が一体となり、精神疾患、神経疾患、筋疾患、及び発達障害の克服を目指した
研究開発を行い、その成果をもとに高度先駆的医療を提供するとともに、全国への普及を図る。
情報発信
精神・神経疾患等に関する基本情報や、予防・診断・治療法等について、
様々なメディアや関係機関を通じて、適切な情報発信を行っています。
特に災害等の緊急時においては、蓄積した信頼性の高い研究成果に
基づく実用性のある情報提供を迅速に行っていきます。
疾患等については、症例、臨床情報の集約を行い、高度先駆的
な医療を提供していきます。また、これらの疾患の特性による、
患者様のご家族や介護者等の身体的、精神的、経済的負担等にも
配慮した支援も行っていきます。
政策提言
精神・神経疾患等に関する政策の企画・立案に関して、先行
研究の分析、疫学研究、臨床研究等により、様々なサポート・
貢献をしています。また、医療政策や自殺対策等の緊急性の
NCNP(エヌ・シー・エヌ・ピー)とは、独立行政法人 国立精神・神経医療研究
センターの英語表記 National Center of Neurology and Psychiatry の頭文字を
とった略称です。
●
4
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
高い課題に対し、国内外での研究成果や実態調査結果等に
基づく、専門的な政策提言を行っています。
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
5
NCNP 2013–2014
ANNUAL
REPORT
多目的室
宿泊施設
CONTENTS
巻頭言 総長 樋口輝彦
P2
NCNP のミッション
P4
■研究と医療 2013–2014
1. 多発性硬化症・視神経脊髄炎に対する新規治療の開発
P10
2. NCNP が提案する神経筋疾患のナショナルレジストリー:Remudy
P12
3. 抗精神病薬減量を安全で現実的に行うために
P14
4. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインを策定
P16
5. 神経難病リハビリテーション:新たな可能性への挑戦
P18
6. 統合失調症早期診断 ・ 治療センター発足
P20
7. 認知行動療法の展開:研究・臨床・研修
P22
8. 臨床研究・治験の取り組み:組織再編でより充実した支援を
P24
9. 統合的脳画像から見えてきた「脳研究の未来」
P26
10. 子どもの読み書き障害の診断法開発と病態解明に基づいた効果的な治療法を探索
P28
11. 栄養とこころの関係を科学する:基礎・臨床両面からのアプローチ
P30
■NCNP
2014 年 7 月、教育研修棟がオープンしました。1階には図書館と大会議室 “ ユニ
バーサルホール ”(写真 P.32-33)、多目的室、小会議室があり、さまざまなシンポ
ジウムや研修会等を行っています。2階~4階は、宿泊・居住棟。国内の若手研究者
や医療従事者だけでなく、海外からの研究生・研修生にも利用されています。
6
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
の活動 2013–2014
広報活動
P34
社会貢献活動 1
P36
社会貢献活動 2
P38
人材育成
P40
教育活動
P42
組織図
P44
各施設の役割
P45
財務状況
P46
沿革・問い合わせ先
P47
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
7
Research and Medical
Activities 2013–2014
研究と医療 2013–2014
NCNP が挑戦するさまざまな研究と医療から、最新の取り組みを
ご紹介します。
IBIC(P.26-27)ホットラボにて。GMP 基準で PET 薬剤が合成できるようになりました。
8
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
9
多発性硬化症・視神経脊髄炎に
対する新規治療の開発
神経研究所 免疫研究部 病院 神経内科診療部
URL: http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r_men/ 多発性硬化症・視神経脊髄炎に対する新規治療の開発
免疫系の異常によって発症する免疫性神経疾患のなかで、多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMO)
は難治例が多く、視力障害、歩行障害、高次脳機能障害が大きな問題になっています(図1)。私たち
は MS と NMO の根本的な治療法の開発を目指していますが、この数年、研究所で開発した治療法を
NCNP 病院で評価する体制の整備が進み、マウスで検討が進んでいた薬剤の効果をヒトで検証する医
師主導治験や、他の疾患の治療薬を NMO の治療に応用する試みが進んでいます。既に NMO に対する
抗 IL–6 療法の有効性を実証することに成功しており、NCNP で開発している新しい治療法に期待が集
まっています。
MS の脳病変
MS の新薬開発
MS は脳や脊髄の炎症病変と瘢痕(脱髄斑)が徐々に増加する難病です。
フローサイトメーターを使用し、リンパ球の変化を追う
右から免疫研究部山村隆部長、中村雅一研究員、能登大介研究員
NMO の抗 IL-6 受容体抗体治療
NMO は視神経炎や脊髄炎を繰り返す難病で、アストロサイトを傷害する抗アクアポリン4抗体が
終生の治療が必要になり、安全性と有効性に優れた薬剤が待ち望まれていま
診断のマーカーです。我々は NMO 患者では抗アクアポリン4抗体を産生するプラズマブラストとい
す。糖脂質 OCH は NKT 細胞というリンパ球を刺激する薬剤ですが、免疫研
うリンパ球の一種が異常に増加することを発見し(Chihara ら PNAS 2011)
、プラズマブラストを標的
究部で探索研究を行い、2001 年にはその薬効を動物モデルで証明しました
NMO の視神経病変
(図 2)
(Miyamoto ら、Nature 2001)
。OCH を投与されたマウスでは、NKT
とする治療法の開発に取り組んできました。基礎研究の結果から、プラズマブラストの栄養因子 IL-6
を阻害する薬物が NMO 治療に有用であることを予測してきましたが、関節リウマチの治療薬である
細胞から炎症を抑制する物質(サイトカイン IL-4)が分泌され、炎症を引き
抗 IL-6 受容体抗体(トシリズマブ)が NMO の難治例に対して有効であることを示しました(図3:図
起こすリンパ球(Th1 細胞)の機能を抑え、病気が軽くなります(図3)
。既
4)
。最初の7例では、再発頻度の著明な減少、NMO に伴う痛みや疲労感の軽減が確認され(Arakiら
に準備段階の研究を終了し、ヒトでの薬効を検証する医師主導治験が NCNP
Neurology 2014)
、内外で期待される治療法になっています。
病院で進んでいます。免疫研究部では、OCH を服用したヒトの体内でどの
再発
ような変化が起こっているか、フローサイトメーター(細胞培養解析装置)
研究を進めています。
10
4
10
10
3
10
2
10
B: OCH 経口投与による EAE の発症抑制
α-GalCer 刺激
IL-4
炎症を抑える
OCH 刺激
IFN-
IL-4
炎症を促す
IFN-
NKT 細胞
α-GC
OCH
脂肪鎖を短縮
臨床 EAE スコア(麻痺の程度)
※炎症を抑える IL-4 を選択的に産生→治療効果が高い
2
0
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
OCH
治療群
0
5
10
15
20
25
10
3
10
4
10
5
Miyamoto, Miyake and Yamamura
Nature 413: 531-534, 2001
MS の動物モデルであるマウス実験的自己免疫性脳脊髄炎
(マウス EAE)では、中枢神経系の炎症にともなって、四
肢の麻痺が出現します。この図では OCH を経口投与され
たマウスで麻痺が軽くなることが示されています。
5
10
4
10
10
3
10
3
10
2
10
2
10
2
10
3
10
4
10
5
再発
2
5
再発
4
10
2
10
3
10
4
10
5
CD19
図3:抗 IL-6 受容体抗体投与による末梢血プラズマブラストの減少
我々はトシリズマブを難治性 NMO 患者に投与する臨床研究を進めていま
す。トシリズマブは、関節リウマチ薬として認可されている抗 IL-6 受容体抗
体です。リンパ球のフローサイトメーター解析では、トシリズマブを投与
される前(左)に比べて、投与5日後(中)では、CD27brightで CD19int
のプラズマブラスト(ピンク色の細胞集団)が顕著に減少することが確認さ
れました。なお投与後4週間(右)では、一部が投与前の状態に戻っています。
30(日)
感作後日数
図2:糖脂質医薬 OCH の概要
10
a-GalCer
治療群
1
抗原提示細胞
OCH は NKT 細胞を活性化する糖脂質α -galactosylceramide(α -
GalCer)の脂肪鎖を短縮した改変物質です。α -GalCer には NKT
細胞を強く活性化する能力がありますが、活性化された NKT 細胞
は、炎症を抑えるサイトカイン IL−4とともに、炎症を促すサイト
カインであるインターフェロンγ(IFN- γ)を産生します。一方、
OCH で活性化された NKT 細胞は、IL−4を選択的に産生するので、
より高い治療効果が期待されます。
対照群
3
2
1
4 週間後
者
5
10
10
A: OCH 刺激による NKT 細胞の選択的 IL-4 産生
5 日後
患
図1:MS と NMO の代表的 MRI 画像
MS の多発性脱髄病変(上:主に赤丸で囲ん
だ部分)と NMO の視神経病変(下:矢印)
が白く描出されています。
CD27
や DNA マイクロアレイの技術によって詳しく調べ、OCH の薬効を証明する
初回治療前
3
再発
4
再発
5
発症
6
発症
7
再発
再発
トシリズマブ投与開始
­36
­30
­24
­18
­12
­6
0
6
12
18
24
初回トシリズマブ治療の前後期間(ヶ月)
図4:抗 IL-6 受容体抗体の NMO における有効性
個々の症例で再発が起こった時点を赤いカラムで示し、横軸の0
(月)はトシリズマブを投与した時点を表しています。トシリズ
マブを開始してから、難治性 NMO 患者7例中5例で再発が見ら
れなくなりました(Araki ら 2014)。
:トシリズマブの投与日、 :ステロイドパルス
:経口パルス、 :血液浄化療法、 :免疫グロブリン療法
今後の展開
10 年前には MS と NMO は区別されていませんでしたが、今では、それぞれに別の治療を行うことに
よって、治療成績が明らかに向上しています。この事実は、個々の患者さんの病態を正確に把握して、もっ
とも相応しい治療を実践する医療(テイラーメイド医療:精密医療)が重要であることを示しています。
この流れは加速し、MS や NMO の医療現場を大きく変えることになるでしょう。我々は、NCNP の研
究成果がテイラーメイド医療を進化させ、近未来の医療現場に活用されることを祈っています。
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
11
NCNPが提案する神経筋疾患の
ナショナルレジストリー:Remudy
トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)
次世代シークエンサー
URL: http://www.remudy.jp
NCNPが提案する神経筋疾患のナショナルレジストリー:
私たち NCNP は、患者さんの数が少ない難治性疾患の治療法開発のために、
全国の患者さんが自分自身で登録する情報を、新薬の開発に役立てるシステ
ムを提案しています。筋ジストロフィーに代表される、希少な神経筋疾患の
研究を進めるための患者情報登録 Remudy(レムディー)を紹介します。
Remudy 患者登録部門 左から、中村治雅室長、森まどか医師、
竹内芙実研究員、事務局海老澤洋子、木村円室長
国際協調による臨床研究を推進する
神経筋疾患レジストリー
遺伝子解析部門:正確な登録情報を支える役割
2009 年7月から、Remudy による登録は始まりました。日本に
おける神経筋疾患のナショナルレジストリー(国に一つの疾患レ
遺伝性筋疾患の診断には遺伝子の塩基配列や構造を知るこ
ジストリー)として国際的な協調のもと運営されています。全国
とが必要です。遺伝子解析部門では、神経研究所 疾病研究
の先生方の協力のもと、患者さん自身の意志により正確な病気の
従来のサンガーシークエンス法を用いて、2013 年 3 月末まで
型筋ジストロフィー(DMD/BMD)
:1,314 名、縁取り空胞を伴う
に、ジストロフィン遺伝子だけでも 347 検体を解析してきま
遠位型ミオパチー(DMRV/hIBM、GNE ミオパチー)
:155 名か
にすべく、次世代シークエンサーなどの最新技術の取り入れ
床研究の計画のために対象疾患の疫学データを提供し 2)登録者
へ情報提供と効率的な試験参加者のリクルートに貢献しています。
や、サザンブロット法などの改良を精力的に行っております。
Remudy ホームページ
これによって、多くの患者さんの遺伝子解析を可能にし、将
来の治療法開発に貢献できると考えています。
DMD/BMD 1,314 名
総数
1000
2013 年、Remudy に登録された 791 人の臨床情報(2009 年
600
7月〜 2012 年6月)を解析し、デュシェンヌ型筋ジストロ
フィー(DMD)におけるステロイド治療の歩行機能延長効果
400
を我が国で初めて明らかにしました(図3)
。これは DMDに
200
2010.1
2011.1
都道府県別
2012.1
2013.1
180
160
協力施設数 255
120
協力医師数 469
100
2014.1
月別数
関する世界最大規模の横断的観察研究であるとともに、昨年
9月に公知申請により承認されたプレドニゾロンによるDMD
治療の根拠を示しています。疾患レジストリーを構築するこ
DMRV 155 名
140
∼5
5∼
10∼
20∼
40∼
100
0
2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2
2009 年
2010 年
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年
図 2 累積ジストロフィン遺伝子解析数
とによって、難治性疾患に対する治療薬の有用性を示すこと
総数
ができました。NCNP が運営するナショナルレジストリーは、
希少な難治性疾患の研究基盤整備のプロトタイプを提示して
80
います。
60
%
100
歩行機能維持の割合
Re m u d y
800
2009.7
200
疾患レジストリーの情報を解析することで、
疾患の自然歴や治療薬の効果もみえてきます
1200
0
300
した(図2)
。さらに、さまざまな筋疾患の遺伝子解析を可能
ら登録依頼を受けています(図1)
。当初からの目的である 1)臨
月別数
359
(2014 年 3 月時点)
400
第一部の協力により、遺伝子の解析をおこなっております。
情報が登録され、2014 年8月末現在で、デュシェンヌ型 / ベッカー
1400
最新技術を駆使した遺伝子解析を実施
80
中央値
(25%­75%)
60
40
0
5
6
プレドニゾロン
使用群
121m
(10y1m)
(120­126)
132m
(11y0m)
(126­138)
ログランク検定
P=0.0002
ハザード比
0.665
プレドニゾロン
使用群
n=245
プレドニゾロン
未使用群
n=315
20
プレドニゾロン
未使用群
7
8
9
10
年齢
図 3 ステロイドによる歩行機能の延長効果
40
注 釈
20
0
図 1 Remudy の登録依頼数 (2014 年8月末現在)
12
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
2012.6
2013.1
2014.1
■サンガーシークエンス法:DNA 塩基配列の解読方法
■サザンプロット法:目的の DNA 断片を特異的に検出する方法 NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
13
抗精神病薬減量を安全で
現実的に行うために
精神保健研究所 社会精神保健研究部
URL: http://www.ncnp.go.jp/nimh/syakai/01_project06.html
抗精神病薬減量を安全で現実的に行うために
日本では統合失調症患者さんの治療に使われる抗精神病薬は、種類も多くかつ大量に使用されていると
言われてきました。2012 年の調査では、40% を超える患者さんが 3 種類以上の抗精神病薬を服用しており、
高齢化の進行により社会移行の遅れなどに課題を抱えています。当研究部では、163 例の臨床研究結果に
裏付けられた
「ゆっくり、
ひとつずつ、
休んでもいい」
抗精神病薬の減量法の普及を Web 公開しました。今後、
センター病院と共同で研究成果のさらなる精緻化を図っていきます。また、こういった処方の最適化を
はじめとした、精神科医療の質のインディケーターとなるような統合的な指標の開発も行っています。
抗精神病薬の多剤大量処方はいけないのか ?
げになっていると言われています。一方で、抗精神病薬は治療に使われるようになってまだ 60 年
当研究部ではこの臨床研究の結果を受け、その成果を普
しか経っておらず、汎用性のある画期的な薬剤は開発されていません。そのため、患者さんを良く
及すべく、まずは医療従事者が無理なく安全に減量が行え
する一心で処方を工夫するうちに、種類や量が増えてしまったというやむを得ない事情もあります。
るようWeb で減薬支援シートを 2013 年 10 月に公開しまし
昨年発表されたナショナルデータベースを解析した 2012 年
た(図4)
。減量前に処方している薬物を入力するとどれだ
時点の統合失調症患者さんへの抗精神病薬の使用状況による
処方は普通に行われていますが、3剤以上が4割を超えるの
1剤
27.3%
42.1%
以上飲んでいました(図1)
。諸外国でも、複数の抗精神病薬
2剤
3剤
22.5%
は日本の特徴です。その多くは、長年3剤以上投与されたこ
4剤
30.6%
行の妨げになってはいけないと思います。
同でこれら課題に応えるべくさらなる研究を進めています。
Web で公開中(タイトル下 URL をご覧ください)
多剤大量処方をゆっくりと安全に
減らしても何も変わらなかった
2010 年から 2013 年まで行われました。すでに多剤大量処方さ
ゆっくり 3-6 か月
減量
れている全国 50 余施設 163 例の患者さんに対して、
「ゆっくり
( 週 あ た り 25–50mg
結果、精神症状・副
作用・QOLも、変わ
らないことが示され
ました(図 3)。
14
薬だけじゃない ?! 医療の質の「見える化」を目指して
減量群
101 例
で、多剤大量処方の安全で効果的な是正に関する臨床研究が
ました(図 2)
。その
減らしたまま 3 か月
経過観察
おり、これに抗精神病薬処方などのプロセス指標やきちんと治って退院したのかなどのアウトカ
減量群 101 例
対照群 62 例
ム指標を加えた、統合的・現実的・簡便なクオリティーインディケーターの開発を、OECD など
処方を変えずに
3 か月経過観察
8
抗精神病薬の最適な処方は、よりよい精神医療につながるひとつの側面だと考えています。当
研究部では、2006 年から精神科医療の質の向上に向けた取り組みを行っています。精神病床での
隔離・拘束といった行動制限最小化のベンチマークを目指した eCODO システムの開発を行って
対照群
62 例
10
の国際機関と協調して進めています。
症状測定
6
0週
12 週
24 週
4
図 2 ゆっくりと減薬する臨床研究の経過概要
2
0
図 4 Web 上での減薬支援シートの入力画面と結果画面イメージ
ゆっ
くり
、減
薬
そこで、藤田保健衛生大学や鳥取医療センターなどが共同
6か月かけて減量し
薬を選べばよいか、どこまで減らせばいいかなど)との声
信していく必要があります。2014 年度には NCNP 病院と共
奥村ら 臨床精神薬理 16(8):1201-1205 2013 より改変
図 1 抗精神病薬の処方剤数(出来高入院患者)
休んでもよく」3〜
課題として、使用法などの説明やガイドがほしい(どの
究データの精緻な解析や追試等を通じた成果を継続的に発
していく中、多剤を飲んでいることが身体的な負荷や社会移
12
力すると、どれだけ減量が達成されたかが示されます。
をいただいており、これらの声に応えるためには、臨床研
とで安定している患者さんです。これらの患者さんが高齢化
14
Web 上で情報入力すると
達成結果を確認できます。
けのペースで減らせばよいかが示され、減量後の結果を入
19.6%
と、出来高病棟において 42.1% の患者さんが抗精神病薬を3剤
研究室メンバーとのミーティング風景
Web で減薬支援シートを公開
多剤大量処方は、副作用が数多く出現したり過剰に鎮静されたりして、患者さんの社会移行の妨
ずつ)
、ひとつずつ、
山之内芳雄室長
0週
12 週
24 週
36 週
図 3 減薬による精神症状の推移
36 週
注 釈
■マンチェスタースケール:統合失調症の症状の重症度を測定する心理検査 32 点満点で値が大きいほど重症
■ eCODO システム:当研究部が中心となって開発している精神科医療の質を高めあうための IT ツールとそれを利用した仕組み
縦軸は、マンチェスタースケール(低いほど軽症を表す)
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
15
睡眠薬の適正な使用と休薬の
ための診療ガイドラインを策定
精神保健研究所 精神生理研究部
http://labo.sleepmed.jp/
不眠の訴え
症状把握
●
●
●
●
不眠症状の特徴
日中の機能障害
要
治療の
要否判定
身体因、
環境因、
心理要因
その他の睡眠障害
(睡眠状態誤認、
レストレス
レッグス症候群ほか)
●
恒常性異常
(午睡過多)
睡眠衛生指導
●
リスク評価
無効
不要
睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインを策定
私たちは 2013 年6月「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライ
ン」を発表しました(1、2)。不眠症は成人の約 10%が罹患する頻度の高い疾患
であり、睡眠薬は国内で最もよく処方される治療薬の一つです。近年の睡眠薬
は安全性も向上していますが、漫然とした長期服用や多剤併用により薬物依
存や転倒、眠気による事故などのリスクが高まることが懸念されています。特
に日本人は睡眠薬に対する不安が強いため、緊張のため薬が効きにくい、服薬
が不規則となり症状が悪化する、自己判断による急な断薬により離脱症状が出
現するなど問題を抱えるケースも少なくありません。そこで、睡眠薬を適切に
用い、不必要な長期処方を避け、出口(減薬・休薬)を見据えた安全、安心な
不眠医療を普及させるため本診療ガイドラインは作成されました。
不眠の再評価
過覚醒
(不安・抑うつ)
● リズム異常
(夜型・夜勤)
薬物療法
1)
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
2)
メラトニン受容体作動薬
3)
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
4)
催眠・鎮静系抗うつ薬
無効
部分寛解
認知行動療法
1)
刺激制御法
2)
睡眠制限法
3)
漸進的筋弛緩法
4)
認知療法
有効
有効
維持薬物療法
再燃
休薬
休薬トライアル
寛解
漸減法
● CBTI 併用法
●
治療終了
維持療法
睡眠衛生指導
図 1:不眠症の治療アルゴリズム(文献 (2) から引用)
ガイドライン作成を先導した 三島和夫部長
ガイドラインを作成した背景
番号
大規模診療報酬データを利用して国内の睡眠薬の処方実態を解析した結果、成人の 20 人に
1人、60 歳以上では7人に1人が睡眠薬を常用もしくは頓用しており、一日当たりの服用量、
①睡眠薬の特徴
【Q1-3】
②服用法について 【Q4-8】
多剤併用率が徐々に増加していることが明らかになりました(3、4)。そこで国立精神・神経医
④難治性
(慢性)
不眠症への対応
【Q23-30】
療研究センターが中心となり、厚生労働科学研究費による研究班と日本睡眠学会ワーキンググ
医療のあり方に関するエビデンスを検証し、学際的な視点からガイドラインを策定しました。
Q24
睡眠薬を服用しても眠れません。増量すれば効果が
出ますか?
Q25
睡眠薬を服用しても眠れません。何種類か組み合わせ
れば効果が出ますか?
正常
Q30
薬を使わない治療法はあるでしょうか?
治療期間
Q33
徐々に睡眠薬の効果が弱くなり、量が増えるのが心配です。
Q34
睡眠薬を止められなくなるのではないか心配です。
反跳性不眠
再評価
臨床徴候
ゴール設定
末治療期
初期治療期
維持療法期
寛解
③二次性不眠症の治療
【Q9-22】
再発
再然
減薬
休薬
休薬・フォローアップ期
回復
⑥不眠治療のゴール設定
【Q38】
⑦睡眠薬の減薬・中止法
【Q39-40】
しました。睡眠薬に関する不安や不満の背景には治療のゴールが見えにくいという問題があり
から眠れる”
“なければ眠れない”と決めつけず(諦めず)
、不眠がある程度改善した後は正し
睡眠薬より寝酒の方が安心のような気がします。
睡眠薬を服用中に妊娠に気づきました。胎児に影響は
ないでしょうか?
本ガイドラインでは不眠症の開始から終結までの治療の流れ(アルゴリズム、図1)を明示
ます。本ガイドラインでは「出口を見据えた不眠医療」をキーワードにしています。
“薬がある
眠れない時だけ睡眠薬を服用してもよいでしょうか?(頓服)
Q7
Q21
不眠症
不眠症状
ガイドラインの構成
睡眠薬、睡眠導入剤、安定剤の違いは何でしょうか?
Q5
かゆみで眠れません。眠気の出る抗ヒスタミン薬を
服用すれば一石二鳥 ?
重度症
関係者や研究者を迎えました。日本の不眠医療の現状を踏まえた上で、睡眠薬を用いた不眠
Q3
Q13
難治性(慢性)不眠症
ループの協力の下、本ガイドラインを作成しました。作成メンバーには日本睡眠学会など関連
学会の関係者のほか、睡眠医療、臨床・基礎薬理、エビデンス医学等の幅広い分野から医療
⑤睡眠薬の副作用とその対処
【Q31-37】
クリニカルクエスチョン
図 2:不眠医療のステージと代表的なクリニカルクエスチョン(文献 (2) から引用)
い手順で減薬・休薬を心がけるように推奨しました。薬物療法の効果を最大限に引き出すため
Q35
睡眠薬を服用していると認知症になると聞いて心配です。
Q38
睡眠薬はいつまで服用すればよい? 薬で眠れますが
治っているのでしょうか?
Q40
睡眠薬の減量法を教えてください。
表1:不 眠医療のステージと代表的なクリニカルクエ
スチョンからの抜粋(文献 (2) から引用)
の情報に加えて、認知行動療法や睡眠衛生指導などの非薬物療法を十分に活用するよう求め
ています。
本ガイドラインのもう一つの特徴は診療場面でしばしば問題となる睡眠薬に関する不安や疑
問(クリニカル・クエスチョン、図2、表1)を取り上げた点です。各クエスチョンに関する
既存のエビデンスを網羅的に抽出し、専門家によるシステマティックレビューとコンセンサス
会議によって勧告と解説を行いました。患者さんにも理解しやすい解説をしていますのでご一
読いただければ幸いです。
http://www.ncnp.go.jp/pdf/press_130611_2.pdf
16
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
文 献
1. 三島和夫 . 睡眠薬の適正使用および減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究 . 厚生労働科学研究費補助金 障害者対策研究事業「睡
眠薬の適正使用および減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究」2012 年度総括・分担研究報告書 .2013:1-12.
2. 三
島和夫.睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン.睡眠薬の適正使用及び減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究班編、東京:じほう:2014.
3. 三島和夫 . 日本人における睡眠薬の使用実態とその問題点に関する研究 . 厚生労働科学研究費補助金・長寿科学総合研究事業「高齢者に対する
向精神薬の使用実態と適切な使用方法の確立に関する研究」2008 〜 2010 年度総合研究報告書 .2011:165-88.
4. 三島和夫 . 診療報酬データを用いた向精神薬処方に関する実態調査研究 . 厚生労働科学研究費補助金・厚生労働科学特別研究事業「向精神薬の
処方実態に関する国内外の比較研究」2010 年度分担研究報告書 .2011:15-32.
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
17
神経難病リハビリテーション:
新たな可能性への挑戦
病院 身体リハビリテーション部
URL: http://www.ncnp.go.jp/hospital/sd/rehabili/
神経難病リハビリテーション:新たな可能性への挑戦
当院を受診する患者さんの多くは、疾患の特性上、時間とともに症状が進
行し、起き上がり、歩行動作や身の回り動作、摂食・嚥下などの能力も進行に
従い低下します。そのため、患者さんの障害に応じたリハビリテーション(以下
リハ)を適切な時期に受ける必要があります。
当部では神経内科、小児神経科、脳神経外科と連携し、神経筋疾患患者さ
んに対する訓練・指導と研究を行っています。パーキンソン病患者さんには米
国で開発されたLSVT®BIG、LSVT®LOUDに加え、神経内科ブラッシュアップ
入院でのリハと外来集中リハプログラムを提供しています。神経筋疾患患者
さんの歩行能力維持・向上を目的とした、福祉型ロボットスーツHAL® を用い
た研究も開始しています。療法士も35 人となり、院内外のリハニーズに応え
られるよう努めています。
HAL® 装着での歩行練習
ブラッシュアップ入院案内
右から、理学療法士長 佐藤福志、言語聴覚士主任 織田千尋、
作業療法主任 粟沢広之
作業療法部門
近年の IT 技術の進歩は目覚ましく、我々の生活や
理学療法部門
コミュニケーションのスタイルは変化しています。同
様に、障害をもつ方の生活もこれらの技術を活用する
当部門はパーキンソン病、筋ジストロフィー、その他の神経筋疾患の各専門分
ことで変化しつつあり、体がほんの少しでも動けば、
野において、専門性の高い多種多様なプログラムを提供します。神経筋疾患の歩
機器を操作して遠くにいる友と語らうことや、自宅就
行障害に対しては、ロボットスーツ HAL® を用いた歩行トレーニングや BWSOT
によるバランス歩行訓練、また、脊髄小脳変性症患者における集中トレーニングを、
労することも不可能ではありません。様々な意思伝達
装置やデバイスを駆使し、利活用ができるように支援
新たな試みとして行っています。チーム医療にも積極的に関わり、呼吸ケアサポー
することで、患者さんの社会参加を促進することがで
トチームでは様々な排痰機器を利用した排痰ケアを行います。また、新薬や医療
きます。これらは、当院での作業療法の取り組みの一
機器開発に伴う治験の効果判定の評価者としても活動しています。
つです。
ロボットアームと視線でパソコン操作が可能な機器。最新の支援機器を
体験できます。
様々な排痰機器
言語聴覚療法部門
リー・シルバーマン音声治療(LSVT® LOUD)は米国で開発されたパー
キンソン病患者さんのための声の集中治療プログラムです。自分の声へ
の意識を高め、大きな声で話せるようになることを目的としています。
当院では、ST 全員がプログラム実施のための認定資格を持ち、これまで
20 人以上の患者さんに LSVT® LOUD を行いました。参加された患者さ
んからは、「治療前より声が大きく、はっきり話せるようになった」と
喜びの声をいただいています。
左手足を外側に開き、
片足立ちになる
つま先を
あげる
後方に体重をあずける
この写真は HAL® 福祉モデルですが、HAL® 医療モデルを治験として行って
います。HAL® によって装着者の意思に従って動作支援が実現できます。
18
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
右手足を外側に開き、
片足立ちになる
言語聴覚療法 LSVT®LOUD
かかとを
あげる
おしりを後ろに突き出す
BWSOT は、天井吊り下げ式の免荷装置を用いた床上歩行訓練です。
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
19
統合失調症早期診断 ・
治療センター 発足
病院 統合失調症早期診断・治療センター
URL: http://www.ncnp.go.jp/hospital/disease/center_06.html
統合失調症早期診断
統合失調症は、幻覚、妄想や、意欲や興味関心の低下等の症状を主体とし、主に思春期、青年期に発症
する疾患です。慢性の経過をたどることで知られ、全国に約 80 万人の患者さんがいると言われています。
現在、主な治療方法は薬物療法です。効果があり、より副作用が少なく服用しやすい薬剤が開発されてい
るものの、全く症状が認められなくなる完全寛解に至るのは約 30%、症状が残る不完全寛解を含めても
60%ほどと言われており、現在の治療方法では、まだ十分とは言えません。また、最近の研究からは、就
職などの社会的予後に対しては症状だけでなく、注意、記憶、実行機能等の神経認知機能および社会認知
機能の障害も影響を及ぼすことが分かってきました。さらに、発症から治療を受けるまでの「精神病未治
療期間」が長いほど、より強く認知機能が障害され、社会的予後の悪化をもたらすのではないかと考えら
れています。そのため、より早期に適切な治療を受けることが、早期の社会復帰を目指すために重要です。
今 回 NCNP に 開 設 さ れ た 統 合 失 調 症 早 期 診 断 ・ 治 療 セ ン タ ー(Early Detection and Intervension
Center for Schizophrenia: EDICS)は、未治療もしくは治療を開始してまもない(1〜2年以内)
、いわゆ
る臨界期の患者さんを対象として、専門外来において診断や症状評価を行い、その患者さんに合わせた適
切な治療を目指します。また、患者登録システムの活用により、定期的な情報の提供、年1回のフォロー
アップ診察や、患者手帳(EDICS NOTE)を用いた心理教育を行い、治療が円滑かつ適切に行われるよ
うサポートします。
統合失調症早期診断・治療センタースタッフ
治
・ 療センター 発足
EDICS NOTE(患者手帳)を用いた心理教育
かかりつけ医や保健師、訪問看護師、ヘルパー等の地域スタッ
フとの連携を促すため、医師・看護師・臨床心理士・作業療法士・
精神保健福祉士などが協力して、
NCNP 独自の患者手帳(EDICS
NOTE)を作成しました。この手帳には、
「治療記録」
「治療に
用いる薬剤(わたしが選んだ薬)
」
「セルフモニタリングの方法」
「症状が起きた場合の対処法」などの項目があり、患者さん自身
がメモを書き込める形式になっています。この患者手帳を用い
EDICS 専門外来 —患者登録システム—
て、精神看護専門看護師によるマンツーマンの心理教育を計 4
EDICS の専門外来を初めて受診された際、診断や治療方針を決めるために、脳画像検
回行います。その後は、患者さんご自身が手帳を参考にしたり
査、心理検査、認知機能検査等を患者さんの希望や話し合いに応じて行います。その上
で、発症2年以内の統合失調症と診断された方には、患者登録システムへの登録をお願
いしています。これにより、病気や治療に関する情報、地域で活用できるサービス、栄
書き込んだりしながら、主治医や地域のスタッフとのコミュニ
ケーションおよびセルフモニタリングなど、病気と上手につき
あっていくために利用して頂きたいと考えています。
養士や心理士などによる日常生活におけるアドバイス、治療薬開発のための治験や臨床
研究に関する情報等を定期的に提供させていただきます。さらに、1年ごとの再評価に
ついてご案内をする予定です。
希望される患者さんには、次に紹介する NCNP 独自の患者手帳(EDICS NOTE)を用
いた、心理教育を精神看護専門看護師が行います。
その後、概ね3ヶ月以内に地域の医療機関へ紹介し、継続した治療を連携して行う
ことを原則とします。
他部門との協力 —診療の充実に向けて—
NCNP は、神経研究所やバイオバンクと連携したバイオリソースの集積および解析による
統合失調症の病因探索や、精神保健研究所と恊働した認知行動療法などの開発に参画して
います。また、認知矯正療法、社会認知と対人関係のトレーニングなどの治療技法の開発や、
臨床研究推進部が主導する新たな薬物療法の開発にも協力しています。これらの活動を通し
て、よりよい医療を患者さんに提供できるように努めます。
国立精神・神経医療研究センター(NCNP) には、現在7つの専門疾病センターがあります。
パーキンソン病・運動障害疾患センター
てんかんセンター
筋疾患センター
地域精神科モデル医療センター
睡眠障害センター
多発性硬化症センター
統合失調症早期診断・治療センター
EDICSNOTE
20
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
21
認知行動療法の展開:
研究・臨床・研修
国際強迫性障害財団との意見交換会
左から堀越部長、シマンスキー代表、コイン教授
(サフォーク大学、ハーバード大学)、大野センター長
認知行動療法センター(CBT) 病院 精神リハビリテーション部・クラスター病棟
URL: http://www.ncnp.go.jp/cbt/
認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy; CBT)は、認知
(ものの受け取り方や考え方)に焦点を当てながら気持ちのコン
研修
認知行動療法の展開:研究・臨床・研修
トロールを手助けする精神療法(心理療法)のひとつです。うつ
病や不安障害などの精神疾患に効果があるだけでなく、日常的
なストレス対処法としても使うことができ、医療場面はもちろ
NCNP では、認知行動療法を必要とされる方に活用していただ
研究
くことを目指して、研究・臨床・研修、そして国際連携に取り
組んでいます(図1)
。
国際
協同
医学
発展
んのこと、地域や職域、教育場面などで広く活用されています。
普及
啓発
人材
育成
病院
連携
国際連携について講演するシマンスキー代表
認知行動療法センターのメンバー(一部)
臨床
図1:CBT センターの活動概要
研究:確かな治療を安全に実現するために
研修:専門家や一般の方に広く活用していただくために
研究では、様々な疾患や困難に対して CBT が安全かつ有効に実施できるのかを検証する臨床試験
に取り組んでいます。その多くは、臨床試験の実施を支援する国立精神・神経医療研究センター病
研修では、CBT のベーシックなプログラムから、統合失調症、双極性障害、複雑性悲嘆といった、
院クラスター病棟で行われています。
代表的な臨床試験は、以下の通りです。
疾患に応じた特別な CBT 研修を提供しております。また、一般の方への市民講座も設けております。
● うつ病や不安障害に適用できる汎用性の高い CBT(統一プロトコル)
2013 年度には 29 コースの研修が開かれ、延べ 1,505 名が参加されました。
研修情報:http://www.ncnp.go.jp/cbt/training.html
● 強迫性障害に対する家族への援助を含めたCBTプログラム
●
外傷後ストレス障害に対する認知処理療法
●
パーキンソン病におけるうつや不安への CBT
国際連携:世界的なネットワークを強化するために
臨床支援:必要な方に届けるために
海外の主要機関との連携も進めております。研究としては、ボストン大学のデイビッド・バーロウ教授や、
米国行動認知療法学会と国際認知療法学会の会長をつとめるステファン・ホフマン教授とともに共同研究
臨床としては、NCNP 病院 精神リハビリテーション部の臨床心理室における活動を支援して、認知
を実施しています。2014 年には、国際強迫性障害財団のジェフ・シマンスキー代表やハーバード大学のス
行動療法の提供を始めております。現在、病院内の医師からの依頼を受け、一部の患者さんに対して、
ロスター・ボービンソン教授らを招いて、国際連携を進めるためのシンポジウムを開催しました(写真)
。
グループ形式の認知行動療法などを提供しています。また、近隣地域のクリニックとの連携も徐々に始
めております。
認知行動療法とはなんでしょうか?
かんがえのパターンを知ろう
簡単すぎる
難易度
難しすぎる
ちょうど良い 85.5%
6回目
少し簡単すぎる
その他
物足りない
時間配分
ちょうど良い 78.7%
国立精神・神経医療研究センター病院
さみしい
怒り
空しい
先が見通せないとき
コントロールを失いそうなとき
こころのしくみ図
このセッションの内容
考えの反応
P.3
不安
ここがポイント!
6回目
その他
できごと 人間関係
その他
どちらともいえない
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
悲しい
自分で選んでいないとき
6回目
P.8
感情
人とのつながりがないとき
孤立しているとき
その他
まあ活かせる
勧めたい 71.0%
状況
大切な何かを失ったとき
活かせない
市民講座についてのアンケート結果
(受講生の内、約 200 名による回答結果)
22
かんがえのパターンを知ろう
できごと 人間関係
他の人にも
勧めたいか
活かせる 55.1%
感情を理解しましょう
このセッションの内容
こころのアラームとは?
思い通りにならないとき
自分の領域を侵されているとき
詰め込みすぎ
今後に
活かせるか
国立精神・神経医療研究センター病院
アラーム(感情)は不快な感覚を伴いますが
私たちの必要の欠如を知らせる役割があります。
ほほう?
考え
出来事の解釈
ひとりごと
こころのしくみ図
このセッションの内容
考えの反応
ほほう?
身体
緊張・動悸
食欲・睡眠
など
身体
緊張・動悸
食欲・睡眠
など
P.3
考え
6回目
現実
の世界
出来事の解釈
ひとりごと
こころ
の世界
こころ
の世界
感情
こころのアラーム
喜怒哀楽
ERPの4つの原則
気分と考え方の関係
OCDの特徴
OCDを強める考え方
4
行動
アラームを
消す手段
うつ・不安な時の考えは…
問題を変える・何もしない・避ける
感情
こころのアラーム
喜怒哀楽
– 最悪な結果が思い浮かぶ
アラームを
消す手段
問題を変える・何もしない・避ける
– 漠然としていることも多い
悪循環の
スパイラル
考え
うまくいって
ない点、悪い点に
注目した考え
行動
気分
困難な状況を避ける
引きこもる等
心配、
落ち込み、
不安、
怒り等
図2:考え・行動・気分の悪循環
– 非現実的・極端になりやすい
– そうとしか思えない
CBT センターで用いている治療教材の一部
行動
現実
の世界
P.6
気分が落ち込んだり不安なとき、「自分なんて
だめだ」と考えたり、「もうやめておこう」と
行動が起こせなくなることはありませんか?
そうした考え(認知)や行動が悪循環すると、
ますますつらくなって、気分が落ち込んでしま
うことがあります。認知行動療法とは、認知行
動モデル(図1)にそって、考え方や行動の仕
方を工夫して問題解決や精神症状の改善に取り
組む精神療法(心理療法)のひとつです。
考え・気分・行動は影響し合います
1
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
23
臨床研究・治験の取り組み:
組織再編でより充実した支援を
病院 臨床研究推進部
治験や臨床研究は委員会の審査を経て
承認されたものが実施されます。
URL: http://www.ncnp.go.jp/hospital/sd/chiken/
臨床研究・治験の取り組み:組織再編でより充実した支援を
NCNP が扱う精神・神経・筋・発達障害領域の多くの疾患に対して、より効果的な治療法の開発が求め
られています。その目的は、
臨床研究
(医師あるいは企業が主体の治験を含む)
により最終的に達成されます。
臨床研究推進部は、NCNP に期待される質の高い臨床研究・治験を促進するため、2013 年 10 月に発足
しました。
「臨床研究・治験推進室」および「研究管理・調整室」の2つの部門から構成され、前者は適切
な研究計画の実施や正確な評価の促進などを、後者はデータ管理機能の充実や研究成果の信頼性向上など
を、それぞれ担います。2014 年度から室長・副室長を各室に迎え、より充実した体制になりました。
臨床研究・治験の円滑な運営・実施
臨床研究及び治験の実施、多施設共同臨床研究の企画などを担当するのが、臨床研究・治験推
進室です。大きく治験事務局部門と臨床研究コーディネーター(CRC)部門に分かれます。2014 年
10 月現在、総勢 21 名の大所帯であり、NCNP で行われている臨床研究・治験を陰に日向に支えて
います。CRC は、臨床研究・治験に参加中の患者さん対応の最前線です。
調剤室にて医師主導治験薬の調整。スタッフ
の業務内容は多岐にわたります。
医師、薬剤師、看護師、検査技師、心理士、事務職などの豊富な経験を生かし、臨床研
究をサポートします。
多施設共同臨床研究・治験の促進
多施設共同臨床研究・治験などの調整およびデータの管理等も担います。昨年は精神疾患
領域の研究に関する計画の調整・実施体制の提案や、安全性情報の収集および提供・標準
業務手順書の作成への支援等を行いました。今後は、NCNP で構築される患者レジストリー
と連携した臨床研究・治験ネットワークの支援など、精神・神経疾患の臨床研究・治験をさ
コンプライアンス 医薬品医療機器
総合機構
部門
TMC
監査部門
臨床開発部
先端診断技術・
バイオリソース
精神疾患
神経疾患
筋疾患
臨床研究支援部
研究所
支援
臨床研究
支援室
フィードバック
知財部門
情報管理・解析部
シーズの開拓
共同開発契約
製薬・医療機器企業
ベンチャー企業
外部研究機関
臨床研究推進部
薬事戦略相談
人材の交流
病院
臨床研究・治験推進室
治験事務局部門
臨床研究コーディネーター(CRC) 部門
・臨床研究・治験の実施
・多施設共同研究企画・患者相談窓口
研究管理・調整室
データマネージャー、臨床開発モニター
システムエンジニア 等
・品質管理
(EDC システム導入→モニタリング、
データマネージメント業務、症例管理など)
連携・支援
精神・神経・筋
多施設共同臨床研究
TMC=トランスレーショナル・メディカルセンター
らに推進することを目指します。
患者さんや一般の方々への情報発信
精神、神経、筋疾患、発達障害に特化した国立高度専門医療研究センター
として、その領域の臨床研究・治験の市民講座を実施しています。2012 年
「認知症治療と診断の最前線」
、
「うつ病治療の最前線」
、2013 年「てんかん
治療と診断の最前線」
、2014 年 3 月「正しく向き合う統合失調症」を行いまし
た。開催後にホームページに YouTube で動画も公開しています。今後も、
NCNP の特色を生かした情報発信に努めます。
http://www.ncnp.go.jp/general/movie_20140323.html
(統合失調症)
http://www.ncnp.go.jp/general/movie_20130901.html
(てんかん)
市民公開講座
品質管理部門の構築
臨床試験データの妥当性と信頼性など品質管理を担当するのが、研究管理・調整室です。データ
マネージャー、
臨床開発モニター、
システムエンジニアなどの人的体制の整備を始めました。さらに、
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
入場無料
開会挨拶・座
長:中込和幸
独立行政法人国立精神
・神経医療研究センタ
( 治験管理室
室長
ー
)
「うつ病治療
の最前線」講座
内容
1 うつ病の最新
治療について
独立行政法人
国立精神・神
経医療
研究センター
総長 樋口
輝彦
2 薬ができるま
で ∼治験とは∼
会社
エーザイ株式
↑
至 砂川
北口
多摩都市
モノレール
ルミネ
グラン ローソン
●
デュオ
り
は通
いろ ●
南口
当日参加も可能ですが
JR 中央線
立川駅
つるかめ
食品館
●
参加を希望さ
事前にお申し れる方は
込みください
立川通り
24
経医療 研究セ
ンター
http://www.crestho
tel.co.jp/tachikawa
南口
大通
り
会に関する書類等の確認を行う中央モニタリングの体制が、確立されつつあります。
2年 3月3日
(土)
午後1時 30分
∼3 時 30分
立川
南駅
メント業務や EDC 画面を介した症例管理が可能となります。また、共同研究施設の倫理審査委員
国立精 神・神
会場:ザ・クレス
トホテル立川
桐の間
東京都立川
市錦町 1-12-1
042-52
1-1111
立川北駅
試験データの電子的収集を行うElectronic Data Capture(EDC)システムを導入し、データマネジ
独立行 政法人
「うつ病治療
の最前線」
201
ニッポン
レンタカー
す
ず
ら
ん
通
ウインズ
代々木
ゼミナール
●
至 国立→
川野病院
●
下水道局
●
綿町郵便局
●
綿町交番
面の FAX 用紙で
、満席の場合はお断りす
ることもあります
メール又 はFAX
にて氏名 、連絡先を
までに下記までお
申し込みください 明記の上 2 月 15 日
会場:ザ・クレスト
。
東京都立川市錦町 ホテル立川 桐の間
1-12-1 Tel 042-521
-1111
ザ・クレストホテル
立川
●
ampm
り
JR 中央線「立川駅
」南口より 徒歩7
多摩都市モノレー
分
ル「立川南口駅」
より 徒歩8分
車利用・中央自動
車道「国立府中」I.C
. より 約 20分
(5.4km)
お申込み:裏
お申込み方法
至 新宿→
綿町1丁目
西交差点
お申込み先
FAX:042-346-2
Mail:chiken26@ 120
ncnp.go
連絡先
.jp
独立行政法人 国
立精神・神経医療
治験管理室
研究センター
TEL:042-341-2
URL:http://www712(内線 7289)
.ncnp.go.jp/
お申込み下さ
い。 FAX:042
-346-2120
HP 市民公開講座動画ページ(統合失調症講座)
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
25
統合的脳画像から見えてきた
「脳研究の未来」
脳病態統合イメージングセンター(IBIC®)
URL: http://www.ncnp.go.jp/ibic/
統合的脳画像から見えてきた「脳研究の未来」
IBIC® は、磁気共鳴画像(MRI)やポジトロン断層像(PET)などの脳画像技術を統合的に用いて、精神・
神経疾患の病態解明や診断技術の向上を目指しています。統合的脳画像技術の役割の一つは、認知症の
ような疾患に罹ることで、脳が健康な状態からどのように 「変わるか」 をさまざまな視点から見えるよう
にすること、また時間が経つと病気の脳がどのように変化するかを見いだすことです。そして、この技
術は、健康な脳が 「学習」 によって示す、わずかな変化を捉えるためにも用いることができます。
IBIC® は、Good Manufacturing Practice(GMP)準拠の PET 施設を運用するとともに IBISS(Integrative
Brain Imaging Support System)を用いて多施設共同画像研究拠点としても機能します。
英語学習で進化する言語ネットワーク
脳病態総合イメージングセンター研究員
多施設画像研究サポートシステムに進化する IBISS
私たちは、統合的脳画像技術を用いて、137 人の右利き日本人成人で、英語の語彙力と脳灰
白質の量及び白質線維結合の関係を調べました。すると、英語の語彙力が高い人ほど下前頭
IBISS とは、被験者の画像データと臨
回や大脳基底核の脳灰白質量が多いことがわかりました(図1)。さらに、下前頭皮質と大脳
臨床施設
床情報をオンラインにより収集・管理す
基底核の線維結合の強度も語彙力と相関していることがわかりました。これらの相関関係は両
IBISS サーバー(クラウド)
IBISS
るための画像研究サポートシステムです。
側の大脳半球に見られましたが、意外なことに、言語優位半球である左半球よりも、右半球で
《データ構造》
縦断的な臨床研究に対応すべく大幅な機
強く認められました。
研究テーマ
臨床情報 画像データ
(e-CRF)
能追加を行っています(図3)。現在、新
システム「症例データ管理サブシステム」、
次に、24 名の日本人大学生に4か月間の英語学習コースに参加してもらい、期間の前後に英
限管理サブシステム」などから構成され、
3割アップし、右下前頭皮質容積の増加がみられ、右下前頭皮質と基底核の結合も強くなって
解析情報
精神・神経医療研究センター
解析チーム
により、信頼性の高い高品質なデータベー
英語学習によって、皮質容積と結合が平行して変わり、しかもその変化が通常言語と関わりの
読影
品質管理
データ
提供
スの構築を支援します。
少ない右半球中心に生じたことを意味します。
臨床情報
医師・研究者
効率的なデータ収集と適切なデータ管理
いました(図2)
。受講しなかった 20 名の人たちには変化は見られませんでした。この結果は、
画像情報
登録・参照
「画像解析支援サブシステム」、「ユーザ権
語能力テスト(TOEIC®)と統合的脳画像の撮像を行いました。コース受講者の TOEIC® 点数は
被験者
連携
ブレイン
バンク DB
その他 DB
読影・品質管理担当
しかし一年後にコース受講者を再度検査したところ、成績も脳の構造も学習を始める前と差の
ない状態に戻ってしまいました。もっとも、自発的に英語学習を続けていた少数の学生は、英語
図 3:IBISS の再構築:多施設画像研究を支えるオンラインサポートシステムとして機能します。
力、右下前頭皮質容積、右下前頭皮質と基底核の結合強度の全てが学習の効果を保っていました。
つまり、折角学んだことも学習を続けなければ忘れてしまうことに対応し、脳の変化も失われる
というわけです。私たちは、統合的脳画像法を、さまざまな学習メカニズムの理解に役立てると
GMPに進化した PET 施設での
臨床研究 ・ 治験の推進
同時に、精神・神経疾患に応用し病気の脳がどのように変わるのかを明らかにしていきます。
英語語彙が多いほど発達していた脳部位
(日本人成人 137 名)
右下前頭
基底核結合
30
50
英語語彙力
100
0
右下前頭基底核
結合増加率
左
右下前頭
% 基底核結合
8
NCNP 病 院 の PET 施 設 は GMP 準 拠 に 改 造 さ れ、
左下前頭
基底核結合
※
※
※
4
4
IBIC® により運用されています(図4)
。短寿命放射性
ホットセル室
製剤の製造・品質管理及び品質保証ができる組織体制
の構築によりPET を用いた治験および臨床研究を実施
します。
10
50
英語語彙力
100
図 1:英語語彙力と相関して発達している脳部位:日本人成人
137 名における横断的検討で、右下前頭皮質の灰白質量や右
下前頭皮質と基底核の白質結合強度が、英語語彙力と相関し
ていました。
26
右
%
8
20
結合強度
灰白質容積
%
40
右
基底核
0
右下前頭回灰白質
容積増加率
英語力向上率
右下前頭回
ホットラボの GMP 準拠化
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
0
学習後 一年後
0
学習後 一年後
0
学習後 一年後
図2:英語学習による成績と脳構造の変化:英語学習者では、非学習者と比べ、
学習後(紫縦棒)に英語力、右下前頭回の容積、下前頭回と基底核結合の強度が
有意(※)に増加しましたが、一年後には学習前と有意差のない値(橙縦棒)に戻っ
ていました。左半球には変化が見られませんでした。参加者は全員右利きです。
ホットセル+準備室
準備室
図 4:GMP 準拠 PET 施設:従来のホットセルと準備室が一体化したホットラボは、
GMP 準拠化によりホットセル室と準備室に分かれ、差圧管理がなされています。
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
27
子どもの読み書き障害の診断法開発と
病態解明に基づいた効果的な治療法を探索
精神保健研究所 知的障害研究部
URL: http://www.ncnp.go.jp/nimh/chiteki/
あまり知られていない、
でも実は多い発達障害
小中学校の通常のクラスにおいて、発達障害の可能性のあ
研究ミーティング後
読む・書く
聞く・話す
計算する・推論する
4.5%
り、1クラス(30 ~ 40 人)には、少なくとも1人が学習面で
の困難がある児童がいて、その3人に1人は重篤な読み書き
障害であると考えられます。日本の社会ではあまり知られて
はいませんが、治療や特別な支援を必要とするお子さまが多
いといえます。また、保護者への支援も必要です。
不注意
衝動性ー多動性
全児童のうち約 4.5% に学習に関する発達障害の可能性が
ある。特に1〜2%が重篤な読み書き障害と考えられます
(2012 年文部科学省調査結果より作成・改変)
本邦初の診断ガイドラインの策定
な症状がみられるかを調べました。全国の病院や施設と協力
診断することが可能となるとともに、この障害を対象とした
臨床研究を進める環境が整いました。
あり、日本語圏において独自の病態が存在することを、
世界で初めて見出しました。
0
­10
音韻操作
無
有
成人群
無
有
健常児群
無
有
読み書き障害
異常がみられた脳の場所とその活動の様子。読み書き障害の子供たちで
は、活動が必要でないときも、基底核が過剰に活動しています。
(Kita et
al. 2013; Brain より改変)
るタイプの病態があることも考えられています。現在、私たちは、異なる病態の解明を目指
み書きに関わる心理的な負担などの症状があることも分かり
できました。このことで、日本でも読み書き障害を医学的に
常が認められました。これらは欧米圏とは異なる知見で
10
日本語の読み書き障害の主たる病態の一つが解明されました。しかし、この障害には異な
して研究をすすめたところ、読みや書きの症状に加えて、読
日本で初めてとなる読み書き障害の診断ガイドラインを策定
たところ、大脳基底核などいくつかの部分で脳の活動異
20
病態類型に基づいた効果的な治療に向けて
まず、私たちはこの障害のお子さま達に共通してどのよう
ました。このような調査とともに、
音読検査を開発することで、
(アルファベットと平仮名など)
、異なる病態があるので
お子さまに御協力頂いて脳の活動を調べました。そうし
行動面
対人関係
こだわり
りませんでした。特に欧米圏とは使う文字が違うために
はないかと、考えられていました。私たちは、日本人の
の 4.5% に、読み書き障害は含まれており、この中でも特に1
行動面
30
日本において、この障害の病態はほとんど分かってお
学習面
る児童の割合を示したものが右の図です。この図の“学習面”
~2% が医学的にみて重篤な障害と考えられています。つま
左から、稲垣真澄部長、北洋輔室長
脳の異常部位を同定 ―
日本語独自の病態を解明
contrast estimate
子どもの読み書き障害の診断法開発と病態解明に基づいた効果的な治療法を探索
本を読んだり、メモを書いたりすること。私たち人間
にとって、「文字の読み書き」は日々の生活を送る上で、
とても大切な力の一つとされます。この力は、成長に伴っ
て徐々に伸びるものですが、生まれつき文字の読み書き
だけが苦手、という特異的発達障害が存在します。それ
が発達性読み書き障害(ディスレクシア)とよばれる病気
です。この障害は原因が特定されておらず、治療法も定
まっておりません。私たちはこれらの発達障害の病態解
明と治療法の開発に取り組んでいます。
すとともに、
病態のタイプに応じた最も効果的な治療方法を模索しています。流暢に読めない、
読字
①心理的負担
□ 字を読むことを嫌がる
□ 長い文章を読むと疲れる
②読むスピード
□ 文章の音読に時間がかかる
□ 早く読めるが、理解していない
③読む様子
□ 逐次読みをする(文字を一つ一つ拾って
読むこと)あるいは、逐次読みが続いた
□ 単語または文節の途中で区切ってしまう
ことが多い(chunking が苦手)
□ 文末を正確に読めない
□ 指で押さえながら読むと、
少し読みやすくなる
正しく書けないなどの症状に今まで苦しんできたお子様一人ひとりに合わせた治療法、すな
わち病態生理に応じた治療法を提供できるように、研究を発展させていきたいと考えます。
刊行したガイドラインおよび症状のチェックリスト(抜粋)
本ガイドラインに収載した音読検査は診療報酬点数(80 点)
が認められました。
28
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
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栄養とこころの関係を科学する:
基礎・臨床両面からのアプローチ
3 系:6 系=1:7
プレシナプス
抑制
神経研究所 疾病研究第四部、トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)
http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r4/
3 系:6 系=1:1
プレシナプス
シナプス伝達
http://www.ncnp.go.jp/tmc/
抑制が
CB1 受容体
強まる
CB1 受容体↑
シナプス伝達
が弱まる
ポストシナプス
活性化物質
ポストシナプス
活性化物質
仮説
オメガ 3 系と 6 系の比率が高い(1:1)エサを食べるとカンナビノイド
CB1 受容体のはたらきが強まり、興奮性神経伝達物質(●)の放出が
減少し、シナプス伝達が弱まる
恐怖記憶強い
(動かない時間が長い)
恐怖記憶強い
(動かない時間が長い)
それぞれの点は
1 匹のマウスでの値
それぞれの点は
強い 1 匹のマウスでの値
強い
恐怖を司る神経細胞ネットワークの過活性化が抑えられ
恐怖記憶が弱まる
前列左から疾病研究第四部 関口正幸室長、TMC 松岡豊部長。
後列左から疾病研究第四部 山田大輔研究員、TMC 渡辺範雄室長。
恐怖記憶弱い
(動きまわる)
恐怖記憶弱い
(動きまわる)
1.5
2.0
2.5
シナプスが変化する!
3.0
脳内のオメガ 3 系とオメガ 6 系の比率
弱い
1.5
2.0
2.5
3.0
脳内のオメガ 3 系とオメガ 6 系の比率
オメガ6系に対するオメガ3系の比率が高い程、恐怖記憶が弱く
なります。
部位が主に働いて形成されると考えられています。オメガ6系に
対するオメガ3系の比率が高い餌を摂取することで恐怖記憶が弱
ら不飽和脂肪酸の比率により変化するという新たな機構があるこ
とも今回の研究で分かりました。この機構は神経細胞ネットワー
脳の中は様々な物質で満ちあふれています。これら
物質は、それぞれ、脳の発揮する多彩な機能に関わ
ることが知られています。多価不飽和脂肪酸も脳の発
達や機能にかかわる重要な物質で、大きく分類すると
「オメガ3系」と「オメガ6系」の2種類に分かれます。
私たちは、マウスにオメガ3系を豊富に含む食事を習
慣的に食べさせると、恐怖記憶が和らぐことを見出し
ました。しかし、オメガ3系を豊富に摂取しても、オ
3 系:6 系=1:1
3 系:6 系=1:7
プレシナプス
プレシナプス
プレシナプス 抑制
プレシナプス
強まる
抑制
シナプス伝達
シナプス伝達
3 系:6 系=1:1
CB1 受容体
CB1 受容体
活性化物質
ポストシナプス
活性化物質
CB1 受容体↑
抑制が
CB1 受容体↑
強まる
シナプス伝達
が弱まる
ポストシナプス
抑制が
シナプス伝達
ポストシナプス
が弱まる
活性化物質
ポストシナプス
活性化物質
仮説
仮説
オメガ 3 系と 6 系の比率が高い(1:1)エサを食べるとカンナビノイド
CB1 受容体のはたらきが強まり、興奮性神経伝達物質(●)の放出が
オメガ 3 系と 6 系の比率が高い(1:1)エサを食べるとカンナビノイド
減少し、シナプス伝達が弱まる
CB1 受容体のはたらきが強まり、興奮性神経伝達物質(●)の放出が
減少し、シナプス伝達が弱まる
メガ6系を同時に多量に摂取したマウスでは恐怖記憶
恐怖を司る神経細胞ネットワークの過活性化が抑えられ
は弱まりませんでした。これは、多価不飽和脂肪酸と
恐怖を司る神経細胞ネットワークの過活性化が抑えられ
恐怖記憶が弱まる
生理学的現象に根ざしていると考えています。
オメガ 3 と 6 の比率が 1:1 程度
のエサを食べたマウス脳内
CB1 受容体が存在する領域にはコレステ
ロール( )が多く存在し、CB1 受容体
はコレステロールが結合しているとはたら
きが弱まる。
オメガ 3 系が細胞膜に多くなると、
細胞膜
の流動性(柔軟性)が高まる。
するとCB1
受容体に結合していたコレステロールが
減り、
CB1 受容体のはたらきが強まる。
オメガ 3と 6 の比率が高まると CB1受容体のはたらきが強まる
仕組み(仮説)
Happy Nurse Project ― オメガ 3 系脂肪酸と精神療法に
よる病棟看護師さんの精神健康維持のための臨床研究
うつや不安障害などの精神疾患は誰にでも起こり得るため、職域においてもその予防は重大なテーマ
です。医療者の中でも病棟看護師さんは精神疾患を持つ割合が高く、病院経営や患者さんケアにも重要
な影響を及ぼすため、精神疾患予防は大変重要な目標です。トランスレーショナル・メディカルセンター
では、うつ病・不安障害の治療で効果が見込まれるオメガ3系脂肪酸が、看護師さんの精神疾患予防効
果があるという仮説のもと、臨床研究を開始しました。もう一つ、予防効果が見込まれる精神療法をも
とにした介入プログラムを組み合わせて、この研究を順調に進行しています。
恐怖記憶が弱まる
いう物質の脳内バランスが恐怖記憶を調節する重要な
要因のひとつであることを意味しています。
オメガ 3 と 6 の比率が 1:7 程度
のエサを食べたマウス脳内
今回紹介した「恐怖記憶」は、脳の側頭葉にある扁桃体という
まる背景には、その扁桃体の神経細胞ネットワークの活動がこれ
3 系:6 系=1:7
神経細胞膜(脂質二重層)の模式図
CB1 受容体
弱い
クのつなぎ目でもある「シナプス」の活動性の変化、という細胞
脳の中の物質と恐怖記憶
マウス脳スライス標本を用いて神経細胞の
電気活動を記録している様子。
CB1 受容体
恐怖記
恐憶
怖の
記程
憶度
の程度
栄養とこころの関係を科学する:基礎・臨床両面からのアプローチ
私たちは身に危険が迫るような怖い体験をした
場合、好むと好まざるとにかかわらず、その時の
嫌な感覚を記憶してしまいます。このような記憶
のことを恐怖記憶と呼び、不安症等の精神疾患と
の関係が考えられるため世界中で盛んに研究され
ています。この恐怖記憶の強弱が食事による脂肪
酸の摂取バランスで調節されていることを見いだ
しました。この調節には神経細胞同士の情報交換
の場であるシナプスでの脂肪酸の作用が重要であ
ることも見いだしました。
この研究はマウスを用いた研究ですが、NCNP
ではこのような基礎研究成果も参考にして、脂肪
酸を主とした栄養成分摂取による「精神健康維持」
についてのヒトでの研究も始まっています(トラ
ンスレーショナル・メディカルセンター情報管理・
解析部)。この分野で世界をリードする研究体制
が整いつつあります。
神経細胞同士の情報伝達(シナプス伝達)の模式図
看護師さんがこころ健やかにすごすために
注 釈
神経細胞膜(脂質二重層)の模式図
オメガ 3 と 6 の比率が 1:7 程度
神経細胞膜(脂質二重層)の模式図
オメガ 3 と 6 の比率が 1:1 程度
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National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
CB1 受容体が存在する領域にはコレステ
ロール( )が多く存在し、CB1 受容体
はコレステロールが結合しているとはたら
CB1 受容体が存在する領域にはコレステ
きが弱まる。
ロール( )が多く存在し、CB1 受容体
はコレステロールが結合しているとはたら
きが弱まる。
CB1 受容体
CB1 受容体
CB1 受容体
CB1 受容体
のエサを食べたマウス脳内
のエサを食べたマウス脳内
■オメガ3系
オメガ 3 と 6 の比率が 1:7 程度
オメガ 3 と 6 の比率が 1:1 程度
DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)やαリノレン酸など。青魚
(イワシ、サバ、ニシン、ブリ、カツオ、マグロ、
のエサを食べたマウス脳内
のエサを食べたマウス脳内
サケなど)やキャノーラオイル、クルミなどに含まれる。
■オメガ6系
リノール酸、ガンマ・リノレン酸など。大豆油、コーン油、ゴマ油、豚レバーなどに含まれる。
オメガ 3 系が細胞膜に多くなると、
細胞膜
の流動性(柔軟性)が高まる。
するとCB1
受容体に結合していたコレステロールが
オメガ 3 系が細胞膜に多くなると、
細胞膜
減り、
CB1 受容体のはたらきが強まる。
の流動性(柔軟性)が高まる。
するとCB1
受容体に結合していたコレステロールが
減り、
CB1 受容体のはたらきが強まる。
2013 年6月に国立健康・栄養研究所、国立国際医療研究センターと共催で第1回国際栄養精神医学会
を行いました。
病棟看護師さんの心理的ストレス・サポート
の効果を調べるプロジェクト
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
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Operations and
Management 2013–2014
NCNP の活動 2013–2014
社会と NCNP をつなぐ広報活動、NCNP の資源を生かした
社会貢献や人材育成への取り組みをご紹介します。
教育研修棟内の大型会議室 “ ユニバーサルホール ”。約 200 席。
様々なシンポジウム、研修会等が開催されています。
32
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
33
広報活動
NCNP の医療・研究活動を広く知っていただきご理解
いただくため、積極的な情報発信を行っています。
脳とこころの医療と研究に関する NCNP の総合
的な取り組みや成果を、国民・患者さん、医療・
研究開発関係者等の皆様にわかりやすく、的確
にかつタイムリーに伝えることがで
きるよう企画戦略室 広報グループが
「NCNP の見える化」として積極的な
発信に努めています。
NCNP 市民公開講座
http://www.ncnp.go.jp/general/symposium.html
NCNP では、国民・患者さん、医療・研究開発関
係者等の皆様に対して、私たちの取り組んでいる新
しい医療や研究について、第一線にいる研究者や医
師などの職員がテーマ別の対話型市民公開講座を開
広報出版物
http://www.ncnp.go.jp/general/magazine.html
NCNP では以下の広報出版物を制作し、Web 公開
も行っています。
『NCNP ANNUAL REPORT(センター年報)』
(日本語版)
NCNPの 最 新 の 活 動 の見
える化として、新しい広報誌
『NCNP ANNUAL REPORT
2012 –2013』
( センター年 報 )
を 初 発 刊 い た し ま し た。
NCNP の 最 新 の医 療・研 究
活動をご覧いただけます。
催しています。また、当日の様子について、公開用
NCNP ANNUAL REPORT
2012–2013(センター年報)
スライドと講演動画(YouTube
動画配信)を掲載した Web サイ
トもイベント終了後に公開して
います。
NCNP の活動 2013–2014
報道メディア向け
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release.html
報道メディア向けには最新のタイムリーなプレス
リリース配信を行うほか、より詳しい情報提供の場
として記者会見やプレス説明会なども実施していま
す。2013 年度は、26 本のプレスリリース、4 本の記
者会見・プレス説明会を実施いたしました。
また、2014 年度よりNCNP の第一線の研究者・医師
多様な情報発信手段
より多くの方々に NCNP の活動に関する情報をお
届けできるよう、Web サイトの情報を補完するも
のとしてソーシャルメディアの活用も実施していま
す。(YouTube、Twitter 等)
YouTube 動画配信本数は 60 本を超え、今後も講
演映像を中心に新たな配信を続けていきます。
たちとジャーナリストの皆様方が一同に集まり、新しい
対話の場である
「第1回 NCNPメディア塾」をスタート
させました。NIH
(アメリカ国立衛生研究所)の活動を
モデルとして 2014 年 8
月22日〜23日に合宿形
式で開催し、最終的に
27名のジャーナリスト
の方々と活発な議論も
交わされました。
NCNP パンフレット(日本語版、英語版)
市民の皆様にNCNPという組織、NCNPのミッション
とその活動を知っていただくために作成しています。
第1回 NCNP メディア塾開講
(2014 年 8 月22 日〜 8 月23 日)
http://www.ncnp.go.jp/press/mediaseminar.html
YouTube NCNP Channel(動画配信サイト)
病院紹介映像や市民公開講座などの動画を掲載
http://www.youtube.com/user/NCNPchannel
病院や研究所他各施設の概要、沿革なども掲載してい
ます。
NCNP 病院「診療のご案内」
患者さんやそのご家族、あるいは医療関係者の
方々などに NCNP 病院で行われている診療について
紹介をしています。
NCNP 病院ニュース(年3回発行)
患者さんやそのご家族、あるいは医療関係者の方々な
どに、NCNP病院の活動を紹介しています。
NCNP 主催 市民公開講座 Web サイト
NCNP 病院看護部ニュースレター(月1回発行)
看護師、あるいはこれから看護師をめざす方々に
NCNP 病院看護部の活動を紹介しています。
四季を楽しむ植物マップ
病院の患者さんやご家族などにお配りしているフ
ラワーマップです。東京ドーム約4つ分の NCNP 敷
地内には 70 種以上の植物があり、1年を通して四季
折々に変化を見せる花や木々、そこに集まる鳥や虫
などもお楽しみいただけます。
東京都小平市の「こだいら名木百選」に選定され
た桐の大木は、毎年美しい花を楽しませてくれてい
ます。また、NCNP ホームページの「センター素描」
コーナーでは、敷地内の季節の移り変わりを、スナップ
写真でご紹介しています。
NCNP 病院医療連携ニュース(年数回の発行)
連携医療機関など医療関係者の方々に NCNP 病院
の活動を紹介しています。
『TMC NEWS』(年4回発行)
2013 年 11月 4 日開催
「発達障害の子どもたち
のために社会ができる
こと〜最新研究からみ
えてきたもの〜」
400 名にご来場いただ
きました。
34
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
研究者や医療関係者の方々等に NCNP トランス
レーショナル・メディカルセンターの活動を紹介して
います。
田村憲久 厚生労働大臣による視察
2014 年1月23日(木)には、田村憲久厚生労働大臣、
赤石清美厚生労働大臣政務官はじめ同省職員数名に加
え、松本洋平衆議院議員が、当センターに来所され、
樋口輝彦理事長によるセンター概要説明、糸山泰人病院
長による NCNP における神経難病等に対する取り組み
の説明の後、病院及び研究施設を視察されました。
※役職名等は当時のものです。
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
35
社会貢献活動 1
災害時のこころのケアについて
NCNP の活動 2013–2014
http://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/
災害派遣精神医療チーム
DPAT(ディーパット)
ています。またこうした活動を支えるためには、被災
地での活動実態をリアルタイムでモニタリングし、そ
の結果からのフィードバックを受けて次の活動につ
http://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/system.html
なげていくことも必要です。従来は、活動記録が手
心理的応急処置
PFA(ピーエフエー)
つ、適切な支援をとどけるためのスキルです。災害
後に PTSD ※ 1 を発症するリスクについての研究から
は、社会的サポートと、二次的なストレスが強く関与
http://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/who.html
していることが示されております。PFA はこうした
これまで災害が生じると精神科医、看護師、心理
書きで書かれており、被災地域各地に分散して保管
災害時のいわゆる心のケア活動において、広範囲
研究の上に立って、効果的なサポートを被災者に届
職、精神保健福祉士、事務職らから成る「心のケア
されていたため、その集計には年余を要し、災害時
にわたる被災地を、急性期に限られたチームだけで
けることを目的としています。災害時こころの情報支
チーム」が被災地からの要請に応えて派遣されてき
の活動については何もフィードバックできないという
カバーすることには限界があります。そこで災害前か
援センターでは WHO 関係機関から講師を招聘して、
ました。このシステムは東日本大震災の後、DPAT
状況が続いていました。災害時こころの情報支援セ
ら、精神医療関係者以外の一般支援者にも基本的な
日本国内で指導者を育成し、各地で研修を行うなど
(Disaster Psychiatric Assistance Team)と名称を変
ンターでは、この目的のために災害時のメンタル情
ケアのスキルを習得してもらう必要があります。その
して、着実に PFA を普及させております。これまで
え、災害前から組織し、研修や登録を行うことになっ
報システム(DMHISS)を開発、改良中です。このシ
災害精神保健医療情報支援システム:Disaster Mental Health Information Support System(DMHISS)
a 平常時
d 随時(活動中・後) 活動記録等の効果的な活用
有事に備えた事前準備
・都道府県等担当窓口
・DPAAT 体制 等の事前登録
活動記録
情報掲示板
・厚生労働省
・災害時こころの情報 支援センター
・都道府県等
・厚生労働省
・災害時こころの情報 支援センター
・都道府県等
NCNP
災害時こころの情報
支援センター 情報支援システム演習(2013 年2月)
災害時こころの情報支援センター
<対象者>精神保健福祉センター長、精神科医、担当課職員
<参加自治体>56 都道府県・政令市(全67か所中)計 155 人
集計による
「報告書等の作成支援
イコロジカルファーストエイド:心理的応急処置)で
データベースに個人情報を除いて
す。これは「見る」
「聴く」
「話す」という基本原則に
心理士などを対象に研修を行っています。
記録し、自動集計することによっ
則って、被災者を傷つけることを可能な限り回避しつ
※ 1 PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)心的外傷後スト
レス障害
※ 2 DMAT(Disaster Medical Assistance Team) 災害派遣医
療チーム
て、被災地のニーズ、活動実態が
目で見て分かるようになっていま
す。災害時の支援を、急性期から
ようなシステム作りにも取り組ん
c 災害発生時(主に活動中)
災害精神保健医療
情報支援システム
に厚労省職員、都道府県政令市の精神保健福祉セン
ター、自衛隊心理士、DMAT ※ 2、警察、消防、臨床
中長期まで切れ目無く提供できる
傾向分析による
施策立案等の支援
DMHISS
ために導入したのが、WHO などが開発した、PFA(サ
ステムでは日々の活動を Web 上の
でいます。
診察
厚生労働省
災害時健康支援システム
(国立保健医療科学院)
被災自治体
派遣要請
DPAT
派遣斡旋
EMIS
有事に備えた事前準備 派遣申入れ
DMHISS
情報掲示板
DPAT
保健師
災害時健康
支援システム
被災地情報等の
情報提供
DMHISS
都道府県等担当窓口
災害発生時(主に初動)
②訓練
● 全国規模の訓練、先遣隊訓練
→災害時こころの情報支援センターで実施 ● 自治体内の訓練
→都道府県等で実施
災害対策本部
(災害医療本部)
派遣要請
派遣斡旋
災害時こころの
情報支援センター
DMHISS
派遣
都道府県等
災害時こころの
情報支援センター
派遣申入れ
DMHISS
EMIS
活動報告
活動集計
診察・相談等
36
DMAT
調整本部
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
派遣医療
本部
DPAT
調整本部
派遣都道府県等
DPAT 統括者
DMAT・JMAT・保健師チーム等との連携
場所
日時
参加者職種
人数
2012 年度指導者一日研修
東京
2012.10.10
医師、心理士、看護師、保健師、NGO/
NPO 団体職員、教育関係者、学生など
109
2
在東南アジア邦人精神保健専門家連携会議
シンガポール
2013.1.26
医師、心理士、看護師、教育関係者、大使館員
27
3
国立医療科学院/災害時こころの情報支援
国立医療科学院
センター 共催
2013.2.1
地域保健所長、保健士
22
4
埼玉県臨床心理士会
さいたま市
2013.3.3
臨床心理士
50
5
東京大学医学部
東京大学
2013.5.9-10 看護学部生
13
6
東京医科歯科大学医学部
東京医科歯科大学
2013.7.22
27
●
NCNP 内に設置された「災害時こころの
情報支援センター」は、DPAT の情報支
援システムの構築や研修・訓練の企画・
実施、PFA の普及活動などを行ってい
ます。
看護学部生
全国の陸・海・空自衛隊に所属する
2013.7.23
看護学部生
27
2013.8.29
99
臨床心理士
ジャムズネット会員、大使館員、教員、企
東京医科歯科大学
8
ジャムズネット・アジア
タイ日本大使館
2013.8.25
9
自衛隊
朝霧駐屯地
2013.8.29
全国の陸・海・空自衛隊に所属する臨床心
理士
99
10 徳島県保健福祉部
徳島県
2013.9.20
臨床心理士
32
11 さいたま市こころの健康センター
さいたま市
2013.10.29
臨床心理士
20
12 外務省
霞ヶ関
2013.11.13
領事、事務官
18
13 外務省
霞ヶ関
2013.11.20
課長、課長補佐、事務官
18
14 沖縄県精神保健福祉センター
沖縄県
2013.12.5
業関係者
県内精神科病院に勤務する医師、看護師、
(臨床)心理士、精神保健福祉士等
国士舘大学
2013.12.8
大学生・留学生
2013.11.13
領事、事務官
33
30
21
18
2013.12.11
医師、心理士、看護師、保健師、NGO/
NPO 団体職員、教育関係者、学生など
香川大学院
2014.1.11
大学院生
40
18 浜松市精神保健福祉センター
浜松市
2014.2.6
保健師、psw、心理士
20
19 埼玉県臨床心理士会
さいたま市
2014.2.11
臨床心理士
23
20 日本集団災害医学会
東京医科歯科大学
2014.2.24
日本集団災害医学会員
30
21 新潟市保健衛生部こころの健康センター
新潟市
2014.3.7
市役所職員、消防、学校関係者
22
22 DMAT
災害医療センター
2014.4.27
DMAT 隊員
39
23 埼玉県臨床心理士会
さいたま市
2014.2.11
臨床心理士
23
24 NPO Green Project(国士舘大学)
国士舘大学
2014.6.28
大学生・留学生
24
26 東京医科歯科大学医学部
東京医科歯科大学
2014.7.23
看護学部生
26
27 奈良市消防局
奈良
2014.7.27
奈良市消防局職員
27
28 千葉県精神保健福祉センター
千葉
2014.7.29
保健所・精神保健福祉センター・精神科医療
センター等の精神保健福祉業務担当者
23
16 2012 年度指導者一日研修
東京
17 香川大学院
13 外務省
被災自治体
精神保健
福祉センター
災害時こころの
情報支援センター
主催
1
15 外務省
NPO Green Project(国士舘大学)
12
霞ヶ関
DPAT 調整本部の支援
被災
都道府県
つなぐ
・生きていく上で基本的なニーズが満たされ、サービスが
受けられるように手助けをする
・自分で問題に対処できるように手助けする
・情報を提供する
・人々を大切な人や社会的支援と結びつける
東京医科歯科大学医学部
97 自衛隊
朝霧駐屯地
②被災地での統括
(被災都道府県 DPAT 調整本部)
①総合調整と情報の収集と集約
(厚労省・災害時こころの情報支援センター)
厚生労働省
・支援が必要と思われる人々に寄り添う
・必要なものや気がかりなことについてたずねる
・人々に耳を傾け、気持ちを落ち着かせる手助けをする
心理的応急処置(サイコロジカル・
ファーストエイド:PFA)
PFA 一日研修会実施履歴
保健師チーム、
DMAT等
との情報連携
災害時こころの
情報支援センター
DPAT
統括社
聞く
DPAT
EMIS
DPAT 運用の基本方針
①DPAT 情報の登録
(都道府県等⇒災害時こころの情報支援センター)
先遣隊
見る
・安全確認
・明らかに急を要する基本的ニーズがある人の確認
・深刻なストレス反応を示す人の確認
支援自治体
派遣計画立案
活動地域割当
(DMAT)
・危機的な出来事について調べる
・その場で利用できるサービスや支援を調べる
・安全と治安状況について調べる
DPAT
活動記録の蓄積
被災者
全国統一の
相談・診療記録
保健師チーム、
DMATとの連携
広域災害救急医療情報システム
平常時
厚生労働省
準備
活動記録の蓄積とフィードバック
DPAT
b 災害発生時(主に初動) 被災地へのDPAT派遣
PFA 活動原則
霞ヶ関
2013.11.20
課長、課長補佐、事務官
22
DMAT
災害医療センター
2014.4.27
DMAT
隊員
25 東京医科歯科大学医学部
東京医科歯科大学 2014.7.22
看護学部生
27 奈良市消防局
奈良
2014.7.27
奈良市消防局職員
51
18
39
26
27
研修の様子
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
37
社会貢献活動 2
子どもの特性と心の発達に寄り添って
自閉症の早期支援の実現に向けて
見落としがちだった乳幼児期の社会性の発達状態を
http://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/research.html
近年、自閉症への対応は世界各国で社会問題として
注目され、わが国でもその早期発見と早期介入は発達
障害対策の要として取り組みが始まったところです。
NCNP の活動 2013–2014
http://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/
確認することが出来、かつ自閉症の早期発見に有用
であることを示しました。現在、M-CHAT は国内多
数の市町村で導入されており、私たちが作成した絵
(図1)は諸外国でも人気です。
さらに、M-CHAT の項目が 2012 年春に改正され
子どもの健康と環境に関する全国調査
(エコチル調査)
な影響を与えているのか?」という疑問にエビデンス
にもとづいて答えを出すことです。子どもたちの健や
かな成長にとって、精神・神経の発達における健康(心
の健康)は大変重要な要素であり、エコチル調査では
エコチル調査は、赤ちゃんがお母さんのお腹の中
にいるときから 13 歳になるまでの健康状態を定期的
子どもたちの心の発達の軌跡をきちんと追跡できる
に調べる、わが国ではかつてないほどの、大規模かつ
ような調査計画を立てています。そこで用いられる
私たちは、発達障害のある子どもさんとご家族が全国
た母子健康手帳に掲載され(図2)、育児支援に関わ
長期的な環境省が企画・立案している調査です(図4)
。
質問紙や面接検査法には、これまで私たちが行って
どの地域に暮らしていても、既存の地域資源を活用し
る専門家が知っておくべき基礎知識として位置づけ
2010 年度に全国 15 地域を対象として立ち上がり、現
きた新しい研究成果(図6)も活用されます。子ども
て早期から支援を受けることができる地域システムづ
られました。現在、これらの最新知識に基づき、地
在、10 万組を超す親子のご協力を得て進行中です(図
たちの心の健康についての評価を適切に行うことで、
くりをエビデンスにもとづいて提唱しています。
域における発達障害支援のリーダーとなる人材の育
5)。
一つには、世界中で広く用いられている『乳幼児
成を目的に、各自治体の保健師や小児科医などを対
期自閉症チェックリスト修正版(Modified Checklist
象とした研修を行っています。(図3)
for Autism in Toddlers; M-CHAT)』に改良を加え、
http://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/training/training.html
1歳6ヵ月健診時にこれを用いることで、これまで
なに
きょうみ
も
とき
ゆび
環境が健康に及ぼす影響が明らかになれば、次世代
の子どもが健やかに育つ環境の実現に役立つものと
この調査の目的は、
「胎児期から小児期にかけての
信じています。
化学物質暴露が子どもたちの成長や発達にどのよう
エコチル調査の流れ
全国の調査拠点
つた
7. 何かに興味を持った時、指をさして伝えようとしますか?
1ヶ月時
み
とき
み
も
9. あなたに見てほしいモノがある時、それを見せに持ってきますか?
ただ
れい
正しい例
6 ヶ月から
13歳になるまで
○
図4 エコチル調査の流れ(環境省 HP より引用)
ちが
図5 エコチル調査の全国拠点(環境省エコチル調査パンフレットより
引用)
れい
違う例 ™
部屋の離れたところにあるおもちゃを指差すと、
その方向をみますか。(指さしの追従)
こ
いっしょ
み
2012 年春の母子健康手帳の改正:1歳の保護者記
載欄の項目に追加されました。
図2 改訂後の母子健康手帳 保護者の記録【1 歳の頃】のページ
ちが
とき
かお
み
はんのう
0.25
比率(性別ごと)
み
17. あなたが見ているモノを、お子さんも一緒に見ますか?
SRS score(保護者回答)n=22,529
0.3
男 n=11,455
0.2
女 n=11,074
0.15
全国の小中学校通常学級に通う一般
児童集団(n=22,529)における SRS
(対人応答性尺度:自閉症的特性を定
量的に測る尺度)の得点分布を示す。
SRS 得点が高くなると自閉症的特性
が強いことを意味する。男児は で、
女児は で示した。
(Kamioetal(2013).Acta
PsychiatricaScandinavicaより改変)
0.1
たし
23. いつもと違うことがある時、あなたの顔を見て反応を確かめますか?
0.05
0
5
15
25
35
45
55
65
75
85
95
105 115 125 135 145 155 165
SRS score
図 1 M-CHAT 日本語版の保護者への質問に追加された絵
38
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
図 3 厚 生労働省発達障害支援事業の発達障害早期総合支援研修
の一風景(於 NCNP)
図 6 日本の子どもの発達特性分布に関する研究知見の一例
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
39
人材育成
臨床研究を支える医療者の育成
NCNP の活動 2013–2014
http://www.ncnp.go.jp/tmc/
未来の医療をより良いものにしていくためには、
研究が欠かせません。トランスレーショナル・メディ
カルセンターは、リサーチマインドを持つ人材の育
成こそが、臨床研究を牽引し成功に導くための重
伝統ある筋病理セミナー
http://www.ncnp.go.jp/tmc/seminar/seminar06.html
「超」希少疾病である筋疾患は、専門的知識や技
臨床研究計画書ブラッシュアップ特訓
セミナー
http://www.ncnp.go.jp/tmc/seminar/seminar03.html
要な基盤と考えています。私た
術を学べる機会が極めて限られています。私たち
臨床研究を行うためには、正しい研究方法論に基
ちは若き初学者一人一人に丁寧
は、若手医師に対して筋疾患に関する学習の場を提
づいて研究計画を立て、さらに研究を行うための研
に時間をかけて、医療や研究の
供すべく、毎年夏に筋病理セミナーを開催しており、
究費が必要となります。私たちは、臨床研究の方法
ABC、そして研究することの喜
2014 年には第 50 回を迎えました。例年7〜8倍の競
論や研究費の獲得方法・利用方法を若き研究者に学
びを指導しています。そして研
争率となる人気のセミナーで、病院レジデントと全国
んでもらうための段階的な教育システムを作ってい
究における誠実さを考え直すこ
から公募で集まった若手医師計 10 〜 12 名を対象に、
ます。2013 年度からは、参加者一人ひとりが文部科
とにも取り組んでいます。
一週間にわたって、筋疾患と筋生検・筋病理の実際
学省・学術振興会の科学研究費に応募できる水準の
に関する講義と実習を行います。筋疾患の知識を身
臨床研究計画書を実際に完成することを目標とした
に付けたこれまでの受講生約 500 名が医療の最前線で
標題のセミナーを始め、成果をあげています。
活躍し、日本の筋疾患医療を支えています。
研究不正の撲滅対策セミナー
TMC-CRT キャラクター
むさし君
http://www.ncnp.go.jp/tmc/university_01.html
近時の研究不正事例の頻発を鑑みて、私たちも再
度研究の倫理について研究者自身に再考してもらう
公開セミナー 一覧
機会を設けるべきと考えました。そこで、“Rethink
▶ Meet the Expert
Research Ethics”と題したセミナーを開始しました。
外部の有識者(第 1 回大隅典子先生(東北大学)、第
▶ 臨床研究入門講座ワークショップ
2回山崎茂明先生(愛知淑徳大学))をお招きし、
「研
▶ 臨床研究実践講座ワークショップ
究者としての高潔さ(integrity)とは何か ?」、「公正
切片の作製実習
な研究発表に必要なことは何か ?」という普段の忙し
▶ 臨床研究計画書ブラッシュアップ特訓セミナー
い業務の中では見過ごさ
▶ メタ・アナリシス入門講座
れがちな問題を再度真剣
に 考 え る 機 会 を 提 供 し、
▶ 筋病理セミナー
多くの方々のご参加をい
▶ 遺伝カウンセリングセミナー
ただきました。
▶ その他セミナー
多くの事例を学ぶ講義風景
白熱の症例討議
40
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
2013 年の参加者
真剣にワークに取り組む参加者たち
大隅典子先生( 上段)と山崎茂明先生(下段)
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
41
教育活動
NCNP は、精神・神経・筋疾患、および発達障
害分野における研究・医療のトップランナーとし
て、国内外のアカデミア、国際機関との連携によ
る共同研究開発、研究交流を進めると共に、若い
世代へ向けた教育活動にも取り組んでいます。
国内のアカデミアとの連携
http://www.ncnp.go.jp/staff/partner_school.html
国内の大学・研究機関等と教育研究協力に関する
協定を締結し、NCNP の研究者が客員教員として大
学等の学生への講義を行ったり、研究所に派遣され
た学生への指導、各機関と共同でのセミナー開催、
共同での研究開発やガイドライン普及等の研究交流
を図っています。
また、千葉大学、山梨大学、東京医科歯科大学には、
連携大学院として本センター職員が在籍し、働きな
がら学位の取得を目指しています。
研究開発交流と、若い世代への発信
また、世界保健機関(WHO)の会議への参加、国
連大学グローバルヘルス研究所との連携により、世
界の精神保健対策の発展に寄与する貴重な機会を得
ました。
海外の主な連携機関
メルボルン大学
NCNP の活動 2013–2014
海外からの研修生及び研究者の受け入れ
精神・神経疾患等の医療における我が国の代表的機
関として、積極的に海外からの研修生や研究者を受け
入れ、人材の育成・教育及び共同研究を行っています。
マックスプランク研究所
海外からの研修生及び研究者の受入数推移
ジョンズホプキンズ大学
(人)
ピエール・マリー・キュリー大学
国連グローバルヘルス研究所
2013 年度はメルボルン大学と「脳・こころ・社会
を結ぶ研究の発展に向けて」をテーマに合同シン
ポジウムを開催しました。http://www.ncnp.go.jp/
25
20
15
10
ンポジウムを日本で、ピエール・マリー・キュリー
大学との合同シンポジウムをパリで開催する準備を
国内の主な連携機関
進 めています。http://www.ncnp.go.jp/news/news_
早稲田大学
140210.html
17
18
18
11
5
0
general/symposium_20130628.html
2014 年度は、マックスプランク研究所との合同シ
28
30
21 年度 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度(平成)
※出身国別内訳
中国8名、イギリス1名、フランス3名、オーストリア1名、
韓国4名、コロンビア1名、インド1名、スリランカ1名、
スイス2名、キルギス2名、イラン1名、スペイン1名、ドイ
ツ1名、リトアニア1名
山梨大学
千葉大学
若い世代への教育活動
東京医科歯科大学
http://www.ncnp.go.jp/news/news_140728.html
独立行政法人放射線医学研究所分子イメージングセンター
東京農工大学
NCNP では、「世界脳週間」キャンペーンの一環と
して、若い世代の皆さまに脳科学の入門から最先端
医学系大学産学連携推進ネットワーク協議会 (medU-net)
までの知見を分かりやすくご紹介し、脳研究の最前
2013 年度には山梨大学と合同シンポジウムを開催
線の現場を体験していただけるイベントを開催して
しました。
います。
2013 年度からは主に高校生を対象に、脳科学に関
するレクチャーと NCNP 内各研究室の研究現場を見
レクチャーとラボツアーの様子
世 界
脳
World Brain Awareness Week
2014
学・体験いただくラボツアーを開催しています。今
年(2014 年度)は、7月 19 日に約 70 名の生徒さんを
お迎えし、半日にわたって開催いたしました。
参加した高校生からは「脳について教科書レベル
のことから最新の研究のことまでとてもわかりやす
かった」「最先端の研究を見学させて頂き、知識の
幅が広がり、より広い視点から物事を考えていくヒ
山梨大学との合同シンポジウム
ントになりました」「将来研究職に就きたいと考え
ており、そのイメージがわいたので良かったです」
海外のアカデミア・国際機関との連携
などの感想が寄せられました。
今後も、未来を担う若い世代に向けて、研究・医療
海外の大学等との研究協定等を締結し、研究者の
の最先端の現場から、情報発信を行ってまいります。
派遣や合同シンポジウムの開催等により、人材育成・
研究交流を行っています。
42
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
様々な国からの研究者たち
週
間
主催
共催
協力
特定非営利活動法人 脳の世紀推進会議
独立行政法人 理化学研究所脳科学総合研究センター/
理化学研究所脳科学総合研究センター
公益財団法人 ブレインサイエンス振興財団
日本神経科学学会/日本神経化学会
日本神経化学会
日本神経回路学会
開催趣旨
「世界脳週間」とは、脳科学の科学として
の意義と社会にとっての重要性を一般に
社会にとっての重要性を一般に
啓蒙することを目的として、世界的な規模で行われるキャ
的として、世界的な規模で行われるキャ
ンペーンです。
アメリカでは神経科学者が中心となり、1992年から毎
アメリカでは神経科学者が中心となり、
年から毎
年3月に「脳週間」を設け、公開講演・討論、病院や研究
「脳週間」を設け、公開講演・討論、病院や研究
所の公開、学校訪問などの公開行事を企画し、実施してき
ました。それに呼応して、1997年からヨーロッパにおい
年からヨーロッパにおい
ても「脳週間」が実施されています。この両者が連携して
1999年には同時期に「脳週間」を開催、さらに
年には同時期に「脳週間」を開催、さらに2000
2000年
からは、国際脳研究機構やユネスコの後援を受け、アジ
ア・南米・アフリカの各国にも呼びかけ「世界脳週間」と
銘打って世界的な規模に拡大しました。
我が国もこの「世界脳週間」の意義に賛同し、本法人が
主体となり、高校生を主な対象として2000
2000年より参画し
年より参画し
てきています。
我が国においては、高校生が参加しやすいようにするた
め、各地の高等学校の既存行事と重ならないよう必要に応
じ、3月15日を中心としてその前後を含めて企画されてい
日を中心としてその前後を含めて企画されてい
ます。また、これらの行事には、高校の先生方にも参加を
お願いしております。皆さまの積極的な参加を期待してお
ります。
主催者 特定非営利活動法人 脳の世紀推進会議 理事長 伊藤 正男
【総合事務局】
〒102-0072
東京都千代田区飯田橋3-11-15 UEDAビル6F
E-mail: [email protected]
脳
を
知る・創る
守る・育む
参加費
無料
全国開催イベント
◆開催会場 ◇主催
◇主催団体
団体
2月1日
(土)
◆奈良女子大学附属中等教育学校 多目的ホール(奈良市)
◇奈良女子大学附属中等教育学校
3月16日
(日)
◆松本中央公民館(M-Wing)
(松本市)
◇世界脳週間 in Matsumoto
3月25日
(火)
◆新潟大学脳研究所(新潟市)
◇新潟大学脳研究所
5月21日
(水)
◆名古屋市立向陽高等学校(名古屋市)
◇名古屋市立大学神経科学グループ
5月24日
(土)
◆岡崎げんき館(岡崎市)
◇自然科学研究機構生理学研究所
5月31日
(土)
◆広島大学医学部第5講義室(広島市)
◇広島大学神経科学研究会
6月21日
(土)
◆京都市立堀川高等学校(京都市)
◇京都市立堀川高等学校/京都神経科学グループ
7月19日
(土)
◆群馬大学昭和キャンパス アメニティモール2階(前橋市)
◇群馬大学神経科学グループ
30日
(水)
or
7月下旬( 31日
(木) )
◆東北大学星陵キャンパス(仙台市)
◇東北大学大学院医学系研究科 創生応用医学研究センター
7月後半(予定)
◆国立精神・神経医療研究センター教育研修棟(予定)
(小平市)
◇国立精神・神経医療研究センター
8月5日
(火)
◆北海道大学医学部医歯学総合研究棟(札幌市)
◇北大脳研究会、北大医学研究科
8月8日
(金)
◆理化学研究所大河内記念ホール(和光市)
◇独立行政法人理化学研究所脳科学研究推進室
8月22日
(金)
◆玉川大学脳科学研究所(町田市)
◇玉川大学脳科学研究所/玉川大学工学研究科/科研費新学術領域「予測と意思決定」
夏休み∼秋にかけて
◆大阪大学吹田キャンパス内(吹田市)
◇大阪大学神経科学グループ
未定
◆東京学芸大附属高等学校(世田谷区)
◇公益財団法人 東京都医学総合研究所
未定
◆未定(福岡市)
◇九州大学大学院医学研究院
http://www.braincentury.org/
「世界脳週間」ポスター
「世界脳週間」は、脳科学の科学としての意義と社会にとっての重要
性を広く一般の皆さまに知っていただくことを目的として世界的な
規模で行われているキャンペーンです。日本では 2000 年より特定
非営利活動法人「脳の世紀推進会議」が主体となり参画しています。
毎年各地で様々なイベントが開催されます。
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
43
組織図
理事長
理 事
理事(非常勤)
2014 年 10 月 1 日現在
監事(非常勤)
監事
理事長
(樋口 輝彦)
監査室長 ●
● 理事会
● 企画戦略室長
●
● コンプライアンス室長
運営会議
病院
病院
神経研究所
精神保健研究所
病院長(水澤 英洋)
神経研究所
● 第一精神診療部
● 第二精神診療部
● 神経内科診療部
●
●
●
●
●
●
小児神経診療部
脳神経外科診療部
総合内科部
総合外科部
外来部
手術・中央材料部
●
●
●
●
医療連携福祉部
臨床研究推進部
薬剤部
看護部
●
●
●
●
放射線診療部
臨床検査部
身体リハビリテーション部
精神リハビリテーション部
トランスレーショナル・
メディカルセンター
センター長(武田 伸一)
● 情報管理・解析部
● 臨床研究支援部
● 臨床開発部
脳病態統合
イメージングセンター
センター長(松田 博史)
● 先進脳画像研究部
● 臨床脳画像研究部
トランスレーショナル・
メディカルセンター
脳病態統合
イメージングセンター
研究所長(髙坂 新一)
認知行動療法センター
精神保健研究所
●
●
●
●
●
●
●
疾病研究第三部
疾病研究第四部
疾病研究第五部
疾病研究第六部
疾病研究第七部
●
●
●
●
病態生化学研究部
微細構造研究部
代謝研究部
免疫研究部
神経薬理研究部
遺伝子疾患治療研究部
モデル動物開発研究部
●
●
●
●
●
自殺予防総合対策センター
災害時こころの情報支援センター
精神保健計画研究部
薬物依存研究部
心身医学研究部
児童・思春期精神保健研究部
成人精神保健研究部
精神薬理研究部
社会精神保健研究部
精神生理研究部
知的障害研究部
社会復帰研究部
司法精神医学研究部
● 実験動物管理室
● 中型実験動物管理室
● ラジオアイソトープ管理室
事務部門
● 企画経営部
● 財務経理部
● 総務課
● 人事課
● 研究所事務室
● 労務管理室
● 企画経営課
● 企画医療研究課
● 情報管理室
センター長(大野 裕)
● 認知行動療法診療部
● 研究開発部
● 研修指導部
44
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
病院
http://www.ncnp.go.jp/hospital/
NCNP 病院は、脳および神経・筋肉の病気の原因を解明し、診断・治療を発展させるため、日本の
研究と医療をリードする役割を持った病院です。これらの脳や神経・筋の疾患の中には、病気の原
因が分からず治療法も乏しい難病も数多く存在しています。また、これらの病気に罹ったために仕
事や日常生活が妨げられて「生活の質(QOL)
」が低下して困っている方も大勢います。私たちは、
これらの心や精神の病気、神経の病気、運動が妨げられる筋肉の病気、発達障害をもつ患者様に対
して、人権を尊重しながら誠意をもって、高い医療技術を提供していきます。
神経研究所
http://www.ncnp.go.jp/nin/
神経研究所は、高度専門医療センターの研究機関として、原因や治療法がわからないさまざまな精
神・神経・筋疾患・発達障害の病気を対象として、それらの診断・治療・予防法の開発を目指した
生物学的研究をおこなっています。分子細胞生物学的アプローチを中心に、生理学や脳イメージン
グも積極的に取り入れ、特に橋渡し研究や臨床研究に繋がるシーズを生み出す研究に重点を置いて
います。
精神保健研究所
http://www.ncnp.go.jp/nimh/
精神保健研究所では、社会で人々が幸福に暮らせるように、
「脳とこころの問題」を解決するための
研究を、NCNP 病院、全国の医療機関、行政機関と連携し、臨床、施策に直結したかたちで行って
います。
また、その成果や専門知識を広く社会に還元するよう、専門的研修や一般向けの講演を行う等、年
間を通じて、社会と密接に関わる活動も精力的に行っています。
トランスレーショナル・メディカルセンター
http://www.ncnp.go.jp/tmc/
脳病態統合イメージングセンター
http://www.ncnp.go.jp/ibic/
脳病態統合イメージングセンターは、NCNP の二つの研究所並びに病院と密に連携し、精神・神経・
筋疾患、発達障害に対する統合的イメージング研究を推進しています。また、イメージングをもち
いた多施設共同研究の中核施設として、わが国の臨床画像研究を牽引します。
● 財務経理課
認知行動療法センター
● 医事室
● 図書館
認知行動療法センター
各施設の役割
トランスレーショナル・メディカルセンターは、病院と研究所との橋渡しを担います。
私たちの役割は、最先端の研究成果を臨床応用に結び付けることと同時に、臨床疑問を基礎研究や
臨床研究として展開していくことです。そして、臨床研究に関わる人材育成にも積極的に取り組ん
でいます。
● 霊長類管理室
● 総務部
事務部門
研究所長(福田 祐典)
●
●
●
●
● 疾病研究第一部
● 疾病研究第二部
●
●
●
●
●
樋口 輝彦
水澤 英洋
池淵 恵美
加藤 一郎
南 砂
長崎 武彦
林 哲治郎
http://www.ncnp.go.jp/cbt/
認知行動療法センター(CBT センター)は、日本初の「認知行動療法(CBT)
」を専門とする研修・研
究センターです。NCNP 内の本部とサテライトオフィス(高田馬場)で活動を行っています。私たちは、
国内最先端の認知行動療法の研究と研修を通じて、日本の精神医療技術の向上と、よりよい精神医療
サービスを患者様に提供できる社会の実現を目指しています。
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
45
2013 年度の財務状況
独立行政法人
国立精神・神経医療研究センター
NCNP においては、研究所と病院が一体となり、精神疾患、神経疾患、筋疾患及び
発達障害の克服を目指した研究開発を行い、その成果をもとに、高度先駆的医療を
提供するとともに、全国への普及を図るため、医業収入、研究収入等の業務収益や、
国からの運営費交付金、補助金等収益などにより業務を行っております。
金額
負債
7,685
4,282
流動負債
2,564
固定資産
37,951
固定負債
5,121
純資産の部
金額
純資産
42,234
負債純資産合計
(単位:百万円)
金額
科目
経常費用
14,249
人件費
7,548
業務収益
9,074
材料費
1,576
運営費交付金収益
4,326
委託費
1,688
補助金等収益
23
減価償却費
1,427
寄付金収益
38
支払利息
40
その他経費
1,970
臨時損失
22
経常収益
金額
寄附金収益 0.3%
補助金等収益
0.2%
施設費収益
1
その他収益
65
臨時利益
14
△ 229
施設費収益 0.0%
運営病床数
敷地総面積
金に含まれる「精神・神経疾患研究開発費」や、文
部科学省、厚生労働省、独立行政法人科学技術振興
機 構(JST)、 医 薬 基 盤 研 究 所、 理 化 学 研 究 所 及 び
業務収益
64.7%
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)からの競争的研究資金で行われております。
(この表では業務収益に含まれます)
常勤役員2名、常勤職員 728 名
(平成 25 年 10 月 1 日現在)
許可病床数 474 床
稼働病床数 466 床
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
新小平
西武新宿線
JR総武本線
中央自動車道
調布IC
池袋
高井戸IC
京成特急スカイライナー/
アクセス特急
上野
JR総武本線
秋葉原
新宿
南船橋
JR特急成田エクスプレス
J
R
線
独立行政法人
国立精神・神経医療研究センター
NCNP
東名高速道路
日暮里
高田馬場
JR中央本線
八王子 西国分寺 国分寺 三鷹
国立府中IC
198,001m2
首都高速
品川
大橋JCT
東京IC
蒲田
成田空港
京葉道路
東京
東関東道
浜松町
羽田空港
天空橋
京急空港線
東京湾
羽田空港 羽田空港
第 1 ビル 第 2 ビル
交通アクセス
◆西武新宿線拝島行または西武遊園地行にて「萩山駅」
( 南口)下車、徒歩 7 分
「萩山駅」下車、徒歩 7 分
◆JR 中央線国分寺駅乗換え、西武多摩湖線
◆JR 武蔵野線「新小平駅」下車、徒歩 10 分
沿 革
昭和 15 年 12 月
昭和 20 年 12 月
昭和 53 年 1 月
昭和 61 年 10 月
傷痍軍人武蔵療養所として設立
厚生省に移管、国立武蔵療養所として発足
神経研究所
昭和 53 年 1 月
昭和 61 年 10 月
国立武蔵療養所・神経センターとして設立
国立精神・神経センター設置により、
同神経研究所に改称
精神保健研究所
昭和 27 年 1 月
国立精神衛生研究所として設立
昭和 35 年 10 月
昭和 40 年 7 月
昭和 48 年 7 月
昭和 61 年 10 月
精神薄弱部を新設
社会復帰部を新設
病院
センター
昭和 61 年 10 月
昭和 62 年 4 月
昭和 62 年 10 月
平成 11 年 4 月
平成 12 年 4 月
平成 15 年 10 月
平成 17 年 3 月
平成 17 年 7 月
平成 18 年 10 月
平成 20 年 4 月
平成 20 年 10 月
平成 22 年 4 月
平成 22 年 9 月
平成 23 年 4 月
平成 23 年 12 月
平成 26 年 7 月
46
萩山
拝島線
京成本線/
成田スカイアクセス線
小平
〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1
代表: 042-341-2711
その他収益 0.5%
これまで御紹介してきた研究活動は、運営費交付
運営費交付金収益
30.8%
従 業 員 数
平成 22 年 4 月 1 日
501
NCNP の収益の内訳(2013 年度実績)
資産見返負債戻入 3.6%
立
14,027
資産見返負債戻入
当期純損益
設
多摩湖線
川口JCT
赤羽
京急本線
科目
新青梅街道
新宿線
練馬IC
南浦和
美女木
JCT
東京モノレール
損益計算書
42,234
大泉JCT
武蔵浦和
路
環道
京外
東
手
山
資産合計
34,549
街道
府中
多摩湖線
流動資産
http://www.ncnp.go.jp/
JR
常
磐
自
動
車
道
負債の部
42,234
JR武蔵野線
所沢IC
東北
自動車道
金額
JR
TEL: 042-341-2711[代表]
道
車
動
自
越
関
資産の部
資産
独立行政法人
国立精神・神経医療研究センター
(NCNP)
京浜
東北線
(単位:百万円)
〒187-8551 東京都小平市小川東町 4-1-1
〒187-8502[神経研究所]
〒187-8553[精神保健研究所]
埼京線
貸借対照表
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
研究センター
(国立武蔵療養所・神経センター)
を併設
国立精神・神経センター設置により、
同武蔵病院に改称
老人精神衛生部を新設
国立精神・神経センター設置により、同精神保健研究所に改称。精神保健計画部、薬物依存研究部を新設
国立武蔵療養所、
同神経センター、
国立精神衛生研究所を統合し、
国立精神・神経センターを設置
国立国府台病院が国立精神・神経センターに加入
神経研究所に遺伝子工学研究部を新設。精神保健研究所に心身医学研究部を新設
精神保健研究所の精神薄弱部を知的障害部に名称変更
神経研究所に遺伝子疾患治療研究部を新設
精神保健研究所に司法精神医学研究部を新設
精神保健研究所が小平地区へ移転
全国で初の医療観察法病棟
(8病棟)
を新設
精神保健研究所に自殺予防総合対策センター開設
国府台病院は国立国際医療センターへ組織移管。武蔵病院は国立精神・神経センター病院に名称変更
トランスレーショナル・メディカルセンター
(TMC)
発足
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター設立。センターとして2つ目の医療観察法病棟(9病棟)を新設
センター新病院竣工
脳病態統合イメージングセンター発足。認知行動療法センター発足
精神保健研究所に災害時こころの情報支援センター開設
教育研修棟竣工
NCNP ANNUAL REPORT 2013–2014
47
NCNP ANNUAL REP O RT
2013–2014
NCNP
2013–2014
ANNUAL REPORT
/
本レポートはNCNPホームページ 広報誌欄からもご覧いただけます。
http://www.ncnp.go.jp/general/magazine.html
NCNP 広報
印刷時に、VOC(揮発性有
機化合物)などを含む湿し
水が 不要となる水なし印
刷を採用しています。
このアニュアルレポートを印刷
した工場の消費電力の一部は
CO 2を排出しないグリーン電
力を使用しています。
VOC(揮発性有機化合物)成
分フリーのインキを使用して
います。
2014年11月発行