Japanese Association of Industrial Counseling 大会企画シンポジウム 第 18 回大会を振り返って 学会と大会がさらに充実し質的に向上するために 会 長 宮城まり子 2 本学会の法人化検討について 副会長 上脇 貴 3 心理職国家資格問題 全体の進行状況と学会の対応状況 副会長 宮崎 圭子 4 委員会の活動状況 定義委員会の活動状況 委員長 渡部 卓 5 連携推進委員会の活動目標 委員長 作田 稔 5 〈JAIC論壇〉茨城就職支援センター 土田 明裕23 〈リレー随想〉 「マザーズハローワーク横浜」から マザーズハローワーク横浜 就職ナビゲーター 坂本 良子24 〈会員投稿コーナー〉「チェンジ・エージェント」 陸上自衛隊臨床心理士 松村 千賀 25 〈図書紹介コーナー〉 「サイコエデュケーションの理論と実際」(宮崎圭子著) 尾久 裕紀 26 入退会のお知らせ………………………………………26 常任理事会議事録、理事会議事録…………………27 日本産業カウンセリング学会 第 18 回大会特集 第 18 回金沢大会を振り返って 準備委員長 小山 善子 6 大会企画シンポジウム報告 広報委員会 平 和俊 7 広報委員長 堤 貞夫 7 学会企画シンポジウム報告 研究委員長 五十嵐 敦 9 大会記念講演を聴いて 大正大学 廣川 進10 大会企画講演を聴いて 副会長 宮崎 圭子11 受賞者記念講演実践賞報告 広報委員長 堤 貞夫12 ラウンドテーブル報告 7 分科会…………………13 個人研究発表 14 テーマ……………………………16 研修会 10 テーマ………………………………………17 自主シンポジウム 5 テーマ…………………………19 懇親会……………………………………………………21 地方還元特別出前講座 Ⅰ・Ⅱ………………………22 次回第 19 回大会は、大正大学(東京)で開催 −1− 第 18 回大会を振り返って、学会と大会が さらに充実し質的に向上するために 日本産業カウンセリング学会 会長 宮 城 まり子 11 月 2 日~ 4 日に日 本海側の古都である文 化の香り漂う加賀百万 石の金沢の町で日本産 業カウンセリング学会 18 回大会が開催され無 事終了いたしました。 日本産業カウンセリン グ学会にとっては、初 めての日本海側の都市 での開催の大会でした。遠方より足をお運びいただ いた多くの参加者に恵まれ、連日大変内容の充実し たプログラムが行われた大会でした。 今大会の開催にあたり、長期に渡り心を傾け多方 面に声をかけながら、ご準備いただきました小山善 子先生はじめ準備委員の皆様方には、改めて心より お礼を申し上げます。このように盛会に大会を終了 できましたことは、ご準備をいただきました委員の 皆様のお陰と厚く感謝いたしております。誠にあり がとうございました。 さて、来年の 19 回大会は、東京の大正大学にお いて、廣川進教授のもとで開催される予定になって おります。今から、19 回大会への期待が大きく膨ら みますが、次大会へ向けて学会がさらに質的に向上 することを願い、今後への課題をここで考えてみた いと思います。 課題は多様に存在しておりますが、まず第一に何 よりも大会での「個人研究発表」を質、量ともにさ らに充実させたいと願っています。産業カウンセリ ング学会は、研究者ばかりではなく、実務家の多い 学会であることが特徴です。そこで、現場で実際に カウンセリングをご担当されているカウンセラーの 皆様や実務ご担当者が、日頃の活動の研究発表をし ていただけることを期待しております。 ご担当のカウンセリングの事例を具体的に整理し まとめていただき、事例発表を通して会員同士が共 有しあうことができることは大変勉強になります。 また、組織(大学など学校を含む)内で、キャリア やメンタルヘルスの支援を担当されているカウンセ ラーや人事担当者、看護師や保健師の皆様など、組 織(学校)内でどのような仕組みを作り、これまで 支援を展開されてきたのかなど、活動報告に関して も研究発表していただきたいと思っています。大会 で研究発表をされることを通して、通常の活動を一 度まとめ、整理していただくことは、今後の皆様の 支援活動のヒントとなることも、必ず多いと確信し ています。来年度の大会では、是非、研究発表をい ただきたく多いに期待をしております。 また、個人研究発表や論文作成をさらに充実させ るために、学会では研修会などを通して、研究法、 論文の書き方などの研修会を開催しております。そ して、会員の研究活動への側面からの支援を実施し ております。研修会などを大いにご活用いただき、 研究発表や論文作成に挑戦していただきたいと願っ ております。 また、大会でのシンポジウムのテーマなどご希望 の内容がございましたら、事務局にお寄せいただき たいと思っております。会員の皆様の声を反映した 学会、大会になるように絶えず努め、学会の質的な 向上を絶えず図って行きたいと考えています。 −2− 本学会の法人化検討について 日本産業カウンセリング学会 副会長 上 脇 貴 本会が法人化について検討し始めたのは 2009 年の ことで、既に 4 年が経過しました。このことが本会 のテーマとして取り上げられるようになったのは、 現名誉会長の桐村先生が第5代会長となられた際、 それまで会長や事務局長の先生の研究室をお借りし て行っていた本会の事務局業務を現在の飯田橋の賃 借事務所で行うようになったことが一つのきっかけ でした。このときは、本会が法人挌を有していない ため賃貸借契約締結や預貯金口座開設に大変往生し たのです。 また、本会のような学術研究団体はもともと営利 を目的としている訳ではありませんが、会やセミナー 等の運営には経費が必要であり、どうしても金銭授 受が発生します。出納や会計については監査を含め て適正に行っている自負はありますが、残念ながら、 これらは現状の任意団体では会長や事務局長等個人 名での取り扱いとなり、対外的な責任は不明確とい う状況です。 これらのことから、本会が「産業カウンセリング」 という看板を掲げ、社会的に認知された権利義務の 主体として活動を行うには、法人格取得が必要不可 欠という常任理事会での認識のもとで、2009 年の総 会で「本会の法人化案」を提出し承認されたのでした。 しかしながら、その後は今日まで各種規程や事務の 整備等を優先したため、法人化のための具体的な手 続きは進展しておりませんでした。 そういう中で、今年 3 月、日本学術会議(注 1) の機能強化方策検討等分科会委員長より、本会も指 定を受ける協力学術団体(注 2)宛てに下記の内容 の書面が送付されてきました。 (書面抜粋) 「学会の形態が法人として承認されない「任意団体」 の場合、会費収入や機関誌や大会の事業費も課税の 対象となる危険があり、最悪の場合は脱税行為と見 なされる危険もあります。 」 「今回の法人法の改正の目的の一つが「任意団体」か らの徴税にあることを考慮すれば、未だ法人格を取 得していない学会におかれましては、できるだけ早 く、可能ならば新公益法人法適用の移行期限である 11 月 30 日までに何らかの法人格を取得されること をお薦めいたします。 」 この書面は説明不足の感は否めませんが、勧告と も受け取れる内容ですので、本会では真摯に受け止 め、5 月以降の常任理事会では法人化について毎回 取り上げ議論を重ねています。9 月度の常任理事会 では、初めて法人定款案が説明されました。しかし ながら、本件は、ガバナンスのあり方をどうするか という問題にも絡んでおり、定款を作成し登記すれ ばすむということではありませんので、会長が主幹 となって早急にとりまとめることとなりました。ま た、会員の皆様にとりましても重要事項ですのでと りまとめがひと段落した後は、いち早く公開してご 意見を求める予定です。 (注1)日本学術会議:わが国の人文・社会科学、自 然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内 外に対して発信する日本学術会議法に基づく 内閣総理大臣所管の日本国代表機関 (注2)協力学術団体:日本学術会議から学術研究の 向上発達を図ることを主たる目的とする団体 として指定を受けた学術研究団体 (参考)日本学術会議登録団体 1,943 のうち、何らか の法人化団体は 401 ある。 第19回大会、会場決定 大正大学 東京都豊島区西巣鴨 3 − 20 − 1 準備委員長 廣 川 進 開催日 未 定 −3− 心理職国家資格問題 全体の進行状況と学会の対応状況 日本産業カウンセリング学会 副会長 宮 崎 圭 子 2013 年 10 月 18 日に開催された、第 35 回推進連協議会の報告をさせて頂く。 議題としては、 1.国家資格関連:動向報告(議連、三団体、四団体、その他)、推進連要望署名について、 2.心理研修センターについて:国家資格試験機関指定要望賛同署名等、研修会の予定等、 3.各団体報告が挙げられていた。 「2.」の方では、(社)日本心理臨床学会資格関連委員会は「(財)日本心理研修センター試験機関指定へ の要望」に関して、去る 9 月 20 日において検討し、理事長・理事会に以下のように報告した。その報告の 要旨は以下のようである。 ◆ 議連、および省庁、法制局による国家資格化に関する論点整理が進む中、試験機関を担える候補が 必要とされる段階である。 ◆ (財)日本臨床心理士資格認定協会は三団体(推進連、心理学諸学会連合、医療心理師国家資格制度 推進協議会)の要望した「心理師(仮称)」創設、試験機関のエントリーに対して未だ慎重である。 しかしながら、心理職国家資格化早期実現のために、さらに前向きな話し合いを重ね、合意形成が なされることを期待する。 ◆ 試験機関候補が必要となっている状況において、心理研修センターは意義深い活動であると評価す る。 ◆ 以上より、心理研修センターがナショナルセンターを志向し、研修活動を一層充実させるための重 要な礎として試験機関指定をようぼうすることは、当学会として賛同すべきである。 この報告書を受けて、日本心理臨床学会は次のように決定した。「当団体(日本心理臨床学会)は一般財 団法人日本心理研修センターが心理職国家資格の試験・登録機関に指定されることに賛同します。但し、 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会と連絡、調整を行うことを要望します。」 なお、日本産業カウンセリング学会も、諸々の状況を鑑みて、常任理事会(2013.9.27)にて一般財団法 人日本心理研修センターが心理職国家資格の試験・登録機関に指定されることに賛同の意を決定している。 「1.」に関しては、11 月の上旬に第 3 回議連が開催される予定である。この議連に関する報告は、12 月 20 日開催予定の推進連にて報告されるだろう。なお、「『心理師(仮称)』の国家資格創設早期実現の請願」 署名は 11 万 3 千人を集めたとのことである。 <参考>関係団体の役員、事務局 ・日本心理学諸学会連合 理事長 子安増生 日本発達心理学理事長 副理事長、織田正美 (社)日本健康心理学会理事長 〃 鶴 光代 (社)日本心理臨床学会理事長 事務局長 大熊保彦 日本家族心理学会会長 事務局 〒 113 ‐ 0033 文京区本郷5−26−5扇屋ビル 901 号室 −4− 委員会の活動状況 定義委員会の活動状況 委員長 渡 部 卓 定義委員会では、日本産業カウンセリング学会 よる意見交換を行っております。 として正式に採択し、公表できるような「産業カ 現時点での委員会の認識として、定義に関する ウンセリングの定義」について、そのたたき台を 前提や論理的な組立、歴史、表現方法は、他の隣 委員会内で考案し、理事会に答申しつつ、完成ま 接する学会やコンサルティング、コーチングなど でを担当していくことを任務としております。 の分野でも正式、唯一と言える定義が存在しない このプロセスの中で、当委員会だけが一人歩き 現状からも、定義の設定自体がそもそも容易では をしないよう他の委員会とも連携、調整をしつつ、 ないことも理解しております。 客観性に注意をしながら素案作りを行う所存です。 今後のスケジュールとしては、私の海外渡航な 本年度は、私を含めての 6 名にて、6 月の第 1 回 ども重なったことから、スケジュールの遅延もあ 会合以降、隔月にて、活動を実施してきました。 りますので、年度末にむけて臨時委員会も開催し 10 月末の時点では、産業カウンセリング、キャリ ながらキャッチアップし、定義のドラフト第一稿 アカウンセリングについて、既出の書籍や出版物、 を完成し理事会への答申を行う予定です。引き続 本学会及び関連の他学会での論文、隣接するコン き、皆様からのご理解とご支援を宜しくお願いい サルティングやコーチングなども含めてその定義 たします。 に関する記述のリサーチを行い、議論とメールに 連携推進委員会の活動目標 委員長 作 田 稔 連携推進委員会は、産業カウンセリングの実践 (1)産業カウンセリング近接組織との協働的活動 現場に役立ち得る、重要課題領域の掘り下げと、 の検討 関連する他組織との連携のあり方を現在検討して 日本産業カウンセラー協会、キャリアおよび関 います。 連する心理諸学会との情報交流、人材育成、共 本年度は、平成 25 年 4 月 20 日(第 7 回)会合 同提案等連携活動 にて、 「連携」の再定義を行った後、9 月 19 日(第 (2)企業組織への、キャリアおよびメンタル・ヘ 10 回)では、「企業でのメンタルヘルスと EAP の ルス課題への取り組み 現状」について、松本桂樹氏の報告をいただきま 計量的評価および中小企業等への組織診断含む した。更に、11 月 3 日、本学会第 18 回金沢大会 の自主シンポジウムを企画し、「産業カウンセリン 連携活動 (3)超高齢社会の生き方の質向上を目指した、他 グにおける『連携』とは何か」と題し、会員の皆 組織との協働的活動の検討 様から意見を伺いました。その主な論点は、「実践 高齢者、世代間交流、特別なニーズの人々の支 現場に役立つ連携を模索する」ことにありました。 援に繋がる連携活動など 今後、本委員会では、本学会が取り組むべき重 点課題に沿って、タスクフォース・チームにより、 具体的活動の展開にあたっては、本学会の他の 2014 年 3 月目途に、具体的な展開施策を含む連携 委員会および、現場で活動されている学会員のみ 推進に関わる答申原案を集約する予定でいます。 なさまの叡智の結集が図り得ればと願っています。 重点課題は、引き続き検討中ですが、以下の領 域をその候補としています。 −5− 日本産業カウンセリング学会 第 18 回金沢大会特集 第18回金沢大会を振り返って 第 18 回大会準備委員長 小 山 善 子 平成 25 年 11 月 2 日~ 4 日開催の第 18 回金沢 大会は皆様のご支援ご 協力のもとで盛会裡に 終了いたしましたこと ここに報告いたします。 大会参加者も 200 人を超 え、研修会も 80 人のご 参加をいただきました。 特別出前講座の参加者 は 30 数名でした。 昨年 9 月 29 日、亡き楡木満生前学会会長と上脇事 務局長の来沢、会場候補地をご案内した際に「来年は 金沢で頼みますよ・・」が私には、楡木先生からの御 遺言のように思え、金沢大会をお引き受けすることと なりました。北陸では初めての開催であり、しかも支 部組織もない状況で、ただ学会への熱いおもいの有志 上村、金下、田中、長島、橋本、広野、船木、吉野 で準備委員会が結成され大会準備が開始されました。 月に1、2回、委員会をもち夜中にもメールが飛び交 う議論を重ね、大会テーマ、企画シンポジウム、ラウ ンドテーブル、特別講演等と順次決めそれぞれの講師、 シンポジスト、座長は吉野が中心に精力的に依頼交渉 し、一方会場準備、各自積極的にPR活動を繰り返し、 プログラム作成、本番を迎えることとなりました。1 日目は受賞者記念講演、大会記念講演、大会企画講演、 大会企画シンポジウム、2 日目は個人研究発表 14 テー マ、学会企画シンポジウム、ラウンドテーブル 7 分科 会、自主シンポジウム 5 企画、3 日目は研修会 1 日コー ス 2、半日コース8、特別出前講座と興味ある盛り沢 山のプログラムトなりました。 激変する現在の産業界・社会を考え、産業カウンセ ラー、カウンセリングが果たす役割を考えてみること は重要課題と思い大会のメインテーマを「産業カウン セリングの役割と実践~生きがい・働きがいのある社 会の実現~」とし、大会企画シンポジウムもそのテー マで宮城まり子会長を座長に厚労省から伊藤正史先 生、金沢大学の八重澤美知子先生のお二人の熱い語り にいぶし銀ともいえる一言ひとことが重みあるコーセ ル創業者の飴 久晴先生のスピーチの素晴らしいシン ポジウムが組めたと思います。特別講演は今日の話題 の発達障害者への支援法を姜 昌勲先生にお願いしま したが、わかりやすくご講演いただき明日からの現場 に役立つお話だったと思います。2 日目のラウンドテー ブルは今までと異なり今回はメインテーマに合わせさ らに深く討論をと思い分科会という形式を取りそれぞ れが活発に討論されたことと思います。自主シンポも 今回は 5 企画もありそれぞれ産業カウンセリングに重 要なテーマになっていたと思います。3 日目の研修会 は1日コース 2 個、半日コース 8 個これもやはり日頃 の活動に役立つ研修になったと思います。 今回初めての取り組みとして地方還元特別講座とし て、学生、保護者、学校関係者対象に企画しましたが、 折悪しく、休日・天候不順で参加者が 30 数名と少なかっ たのは残念でしたが、参加者には講演内容に非常に刺 激されたことと思われます。 どの企画をとっても皆様の日頃の活動に少しでも役 に立ったのでないかと願っております。 懇親会は加賀藩祖前田利家、お松の方を祀る尾山神 社のギヤマンの明かりを眼前に見える幽玄の世界、横 笛の開宴で始まり、会員間の和やかな交流とともに金 沢を味わっていただけたでしょうか。 プログラムの誤表記に始まり、会場の設営にいろい ろと不備があり、皆様には多大なご迷惑、御不満をお かけしましたこと伏してお詫びいたします。しかし、 皆さんの温かいご支援に支えられて全日程を無事終了 できましたこと、心より皆様に感謝申し上げます。 準備の途上、本部事務局との行き違い、本部事務局 と準備委員会との役割不明確さ等、今後地方での大会 開催する際のいくつかの課題もありましたが、この ように盛会裡に大会が終了しましたのも、会員の皆 様、後援いただいた関連諸機関、本部事務局等の支援 があったからこそだと思っております。また、演題を 聞くだけの学会でなく、参加者が自発的に討論なり何 らかの形で積極的に参画していただいた参加型学会で あったと思っております。 金沢大会をご支援いただいた皆様に心より厚くお礼 を申し上げ、無事閉会しましたことご報告いたします。 皆様のご健勝、ますますのご発展ご活躍をお祈り申 しあげます。 来年の学会で皆様にお元気でお会いできますこと、 祈っております。 −6− 大会企画シンポジウム報告 「生きがい働きがいのある社会の実現」 広報委員会 平 和 俊、堤 貞 夫 まず、コーディネーターの宮城会長より、午前 中の大会記念講演で小山委員長が「職場のメンタ ルヘルスの現状と対策」として話された、我が国 の労働者のストレスフルな環境、それにもかかわ らず、対策に取り組む職場が依然として 50%に及 ばないこと、これまでの周知・啓発から踏み込ん だ活動・支援が必要な局面になっているという指 摘を引用され、それぞれのお立場の 3 名のシンポ ジストから、生きがい・働きがいに繋がる具体的 な活動の話をお聞きしたい、と始められました。 トップバッターとして、厚生労働省伊藤正史氏 が、厚生労働行政の基本使命「国民生活の保障及 び向上」 「労働者の働く環境の整備及び職業の確保」 を引き合いに出しつつ、生き抜く「力」の形成と 能力の見える化、キャリア形成支援を行う社会シ ステムの必要性、そして生きがい働きがいから排 除されがちな層、すなわち、経済的困窮状態に置 かれている人たちへの支援の必要性について言及 されました。 次に、飴 久晴氏(コーセル株式会社創業者)が、 経営者の立場から「今、大概の企業で取り組まれ ている人材育成は、職業能力(ジョブスキル)開発、 つまり業務遂行能力を高める訓練中心に行われて いるが、仕事というものはチームでなされること を考えると、ヒューマンスキルが非常に大切であ り、それを高めてこそジョブスキルの高まりが望 めると力を込めてお話しになりました。 対人コミュニケーション能力の低い人間が管理 職になり、企業の将来を暗いものにしていること、 職場の活性度の定期的・継続的なチェックを通し てマネジメント課題を抽出し、納得性を高める人 事評価を進めていくことが大切であることにも触 れられました。 3 番目の八重澤美知子氏(金沢大学大学院教授) のテーマは、「ワーク・ライフ・バランスの実現を 目指して~産みやすい・育てやすい・働きやすい 社会への転換期に見られる問題~」でした。 日本の仕事と家庭の状況について、企業におけ る長時間労働、M 字型カーブ、あるいは日本人の 夫の家事・育児時間が極端に短いことなど、デー タに基づく現状を説明されました。 社会状況が変わっているにもかかわらず、男は 仕事・女は家庭という古い社会通念が固持され、 男女の役割が固定したままで、多くの勤労世帯(共 働き世帯が過半数を占める)は苦労を強いられて いるとの問題点を提起されました。 シンポジウムは、まとめのフェーズへと移って、 伊藤氏から厚生労働省のジョブスキル施策、特に ジョブスキルの形成、そしてその評価すら受けら れない非正規労働者の現状に言及され、その支援 のための施策が喫緊の課題とされました。 PIAAC の概要にもとづき、日本人の課題として、 1)平均的にはよいが最高レベルは米国に劣ること、 2)IT 活用レベルの向上、3)高い能力が実際の場 で活かされていないことがあることを指摘されま した。 飴氏は、コーセルでの多面評価の実践を引き合 いに出され、多面評価を通して自分と他者のギャッ プに気づき、そのギャップを埋める努力が必要で あり、かつ継続してやることが重要であるとされ ました。 最初のお話のなかでカウンセリングに対する疑 問符を呈されましたが、まずは社長のカウンセリ ング、あるいは、パワハラをしたり部下の仕事の 重箱の隅をつつくような管理職へのカウンセリン −7− グは必要であるということを述べ「耳は大きく偏 飴氏からは、例えば企業内うつからの復帰、仕 りなく、口は小さく、目は春風のように」という 事上の失敗の克服など、逆境をばねとして成功し 言葉で締めくくられました。 た人たちがいる企業は強い、病気になっても、挫 八重澤氏はこのような、転換期にある社会のな 折しても、それをバックアップし復帰を果たした かで見られる問題点について具体的にふれ、多様 人たちは、職場にいい影響を与える。人材育成は、 性を尊重した活力ある社会実現が望まれることを 職場の一隅を照らす人材を育てることであり、そ 力説されました。男性と女性の、仕事と家庭のバ れが企業の人材育成であり原動力となると力説さ ランスが、男女共同参画社会の実現を牽引してい れました。 くと話されました。 八重澤氏はカウンセラーへのメッセージとして 最後に、カウンセラーへのメッセージをという 以下 3 点を挙げておられます。1)カウンセラーは、 宮城会長からの投げかけがあり、特に伊藤氏に対 ぜひ、自分のジェンダー枠組みに気づいてそれを 大会企画シンポジウムの続き しては、キャリアコンサルタント自身が非正規雇 確認して欲しい。2)クライエント支援の方向性は、 用であり、不安定であり、正規雇用に結びつかな 特に若い世代に、自分が置かれた立場を相対的、 いこの現状を労働行政上どうする?という質問が 客観的に見ることができるようなものであると認 出されました。伊藤氏は、まずはカウンセラー自 識して欲しい。日本の学生は諸外国に比べて未熟 身が専門性のさらなる向上を目指し、アクティブ であり、ぜひ知識を獲得して欲しい。3)ワーク・ な人的ネットワークを構築し、それぞれの人がそ ライフ・バランス。クライエントが自分自身の自 れぞれの職場のなかでキャリア支援に従事し、キャ 己理解が進むように、自分の多面性に気づかせる リアオリエンティッドな職制と人事制度の実現に 支援をして欲しい。 加え、キャリアという視点からの支援を続けるな 絶妙な取り合わせのお三方に、宮城会長のメリ かで、ボトムアップでトップに影響を与えていく、 ハリの良いコメント、問いかけがあり、終始白熱 そのような活動が必要であろうと応答され、複合 した中に、ユーモアも含まれた意見の交換が行わ 的役割を持つカウンセラーがこれからは求められ れ、満足感に満ちたシンポジウムを経験すること るだろうとされました。 ができました。 受付風景 受付風景 会場の石川県文教会館 会場の石川県文教会館 書籍販売が行われました 書籍販売が行われました 仙台からの復興支援のお願い 仙台から復興支援のお願いに −8− 学会企画シンポジウム報告 現場の「変化」のとらえ方と生かし方 研究委員長 五十嵐 敦 産業カウンセリン グや関連する支援活 動において,「変化」 をどうとらえるかは 大きな問題であり難 し い 課 題 で も あ る。 思い入れや経験則に 陥ることなく科学的 な効果測定などによ 五十嵐 敦 氏 るエビデンスに基づ いた実践が求められる。しかし,それは数字や 統計分析だけでできるものではない。産業現場で の実践的な取り組みを通じて数字と現実現象をす り合わせていく試みが求められる。「状況の変化」 「介入による変化」,そして外からは気づかない「見 えない変化」もある。現場でのこれからの相談や 支援には,普段の行動パ ターンをモニターする力 と変化を作る力が求めら れる。これまでの働き方 によって多くの健康被害 が生まれているのだから, 新しい働き方を工夫する ことが必要であることを 経営の面からも見直され 浅川 正健 氏 ることが必要である。 川上範夫氏からは,臨床心理学の歴史的流れを追 う中で「いま」をとらえなおすことが産業カウンセ リングに求められているとの指摘があった。相談援 助技法の変遷を軸に,21 世 紀型のパラダイム転換につ いて述べられ, 「表面上の 変化を追い求める支援を模 索する」動きのもとで, 「本 質的な改善につながる支援 を模索すること」が困難に なってきているとの指摘が あった。原因追求の難しさ や解決の難しさにおいては 「変化の過程」そのものを 大切にする思考が重要であ る。ライフ・サポートモデルということや個人から コミュニティ支援といった方向性においても,止め られない時間経過の中で動態として「かかわるなか で考える」実践が必要であるとされた。それは「い ま」を大切にすることでもあろう。 企業の実践の現場から浅川正健氏は,職場,あ るいはその組織が大きく変化している中で働く 人々,「個」を尊重することが大切であると指摘 さ れ た。 そ こ で 何 よ り も 重 要 な の は「 キ ャ リ ア形成支援」であるこ と に 触 れ ら れ, 組 織 の 変化と個人の変化の両 面 か ら「 変 化 」 を 恐 れ ないことの必要性とそ の た め の つ な が り( コ ミュニケーション)が 川上 範夫 氏 大 切 で あ る と い う。 現 場でのいくつかの事例が紹介され,いずれも変化 に対応しきれない組織や個の問題,新しい状況に 溶け込もうとする(=変化)ことが少なくなって いるのではないかと述べられた。 最後にフロアとの活発なやり取りの中で,時間 的流れにおける「効果」をどのようにとらえるの か,あるいはその変化を待つゆとりの問題も話題 となった。さらに多様化への対処としての体制づ くりの難しさやそれに対する産業カウンセリング の社会活動や啓もう活動の必要性なども取り上げ られた。 −9− 大会記念講演を聴いて 「職場のメンタルヘルスの現状と対策」 小 山 善 子 先生 (第 18 回大会準備委員長、石川産業保健推進センター所長、金城大学教授) 大正大学 廣 川 進 小山善子先生のご講 演は日本の職場のメ ンタルヘルスの現状に ついての全体像を示し てくださったように私 は受けとめた。それは あたかも患者を診る際 に、初めからある病気 に特化して診断処方を 小山 善子 先生 下すのではなく、心理 社会的な観点や、生活面、福祉領域や就労など患 者自身とそれを取り巻く環境まで含めた全体像を 把握することが重要であることと通底するかのよ うであった。 まず労働政策研究・研修機構(JILPT)や生産 性本部メンタルヘルス研究所、厚労省労働者健康 状況調査等のデータを紹介し職場のメンタルヘル スの状況が悪化していることを示された。また自 殺者数においては、ようやく 3 万人下回ったもの の、勤務問題が動機の人はあまり減っていない点 を指摘された。うつ病については生涯に 15 人に 1 人が過去 12 ヶ月では 50 人に 1 人がかかる可能性 がある身近な病になっていること。うつ病を病ん でいる人の 4 分の1しか受診していないこと。平 成 20 年の患者調査ではうつ病患者は 70 万 4 千人 で平成 8 年の 20 万7千人 に対して、この 12 年間で 3.4 倍になったこと。自殺 者のうちうつ病の割合は 21%であること(これは研 究によって様々なデータが ある)。 さらに職場のいじめ、ハ ラスメント、大人の発達障 害等、職場のコミュニケー ションをとることは若者に とっても上司先輩にとって も難しくなっていることを 指摘された。 小山先生が所長である石川産業保健推進セン ターが行った「職場風土からみた職場のメンタル ヘルス対策に関する調査研究」がとても興味深かっ た。組織風土尺度には強制的・命令的な封建的風 土を表す「伝統性因子」と、合理的な組織管理が されている「組織環境性因子」の 2 つがある。「伝 統的因子」の得点が低く、「組織環境特性因子」の 得点が高いほど従業員がいきいきと能率よく働け る良好な職場となる。それぞれの得点の高/低の 組み合わせで4つの類型に分けると、「伝統自由・ 組織活発型」が他の 3 類型に比べて精神健康度も よく、職場ストレスも少なく、職場への適性度も 高く、働きがいもみられ、職場満足度・支援も高い、 「イキイキ」職場であった。それに対して「伝統強 制・組織不活発型」はストレスも高く、精神健康 度や職場満足度も 4 類型中最低の「イヤイヤ職場」 だった。他に「伝統強制・組織活発型」は「「シブ シブ職場」、「伝統自由・組織不活発型」は「バラ バラ職場」と名付けられた。このように職場風土 は職場のメンタルヘルスに影響を与えるのみなら ず、職場改革、生産性にも影響を及ぼすと考えら れる。 生きがい・働きがいのある社会の実現には何よ りも人を大事にする企業風土が大切であることを 教えていただいた記念講演であった。 − 10 − 大会企画講演を聴いて 「大人の発達障害を理解する‐事例から学ぶ自助努力を高める支援について‐」 姜 昌 勲 氏(きょうこころのクリニック理事長・院長) 副会長 宮 崎 圭 子 講演者の姜先生への まずの第一印象が、小 柄ながら年齢不詳の精 悍かつエネルギッシュ な先生(実は青年と見 紛うかのような)と い う も の で し た。 後 日、 姜 先 生 の オ フ ィ シャルサイトを拝見さ 姜昌 勲 氏 せ て 頂 き ま し た。 奈 良県立医科大学卒業後、病院勤務後、東大阪市療 育センターにて、自閉症児の診断、療育指導に従 事、奈良県立奈良東養護学校での校医を勤められ る。2003 年より、奈良県立医科大学精神医学講座 助手、同大付属病院精神科児童思春期外来に携わ られた。2004 年より同大付属病院精神科病棟医長 を勤め、同年末開業のため退職。2005 年 2 月より、 きょうこころのクリニック開設、2010 年には大和 西大寺きょうこころのクリニックを開院。現在は 学園前と西大寺の 2 院体制で診療にあたっておら れ、2012 年 8 月より、品川にてオフィス To-Kyo を開設と、文字通り西に東にと大活躍の先生です。 しかも、多くのご著書を出しておられるようです。 ところが、そのような疲れなど一切感じられませ ん。講演が始まって、トライアスロンに挑戦し続 けておられると話され、その第一印象に大いに納 得したという次第です。また、毎日、必ずブログ を更新されておられるとか…。上記のようなご活 躍の中で一体どのように時間を作っておられるの かと、またまた感心したという次第です。 配布資料がなく、エネルギッシュに軽快にドン ドン話されるので、メモを取ることが非常に難し かったのです。そういう状況下でこの会報原稿を 執筆しております。言い訳で恐縮ですが、断片的 なメモの整理のような原稿になっていますこと、 何卒ご理解頂きまして、ご容赦下さい。 皆様もご存じのように、米国にて DSM- Ⅴが発 刊されました。アスペルガーという呼称が消え、 ADHD の 診 断 と し て 従 来 の DSM- Ⅳ -TR で は、 その症状のいくつかが 7 歳以前に存在していると いうものでありました。DSM- Ⅴでは 12 歳に引き 上げられたとの情報も下さいました。それに伴っ て、姜先生の 2:6:2 の原理の説明がとても深いもの でした。2:6:2 の原理とは、「2」に所属する方々を 排除したとしても、残りの群「8」の中で新たに 2:6:2 となって再編成されるという説明でした。つまり、 キリがないということになります。まさにその通 りで、共存していくことが社会の発展のためでも あるのです。 もっと多くのことをお話し下さいましたが、上 述の理由で執筆するのに限界 があります。さらに詳しいこ とをお知りになりたい会員の 皆様、ぜひ、姜先生のご著書 をお読み下さい。 こぼれ話をおひとつ:毎日 ブログを更新しておられると いう件です。確認してみまし た!ありました! 2013 年 11 月 2 日(土)22:45 の更新です。 ちなみに、当講演は 11 月 2 日 の 14:20 ~ 15:40 で す。 皆 様もどうぞアクセスしてみて 下さい。 − 11 − 2012 年度実践賞 受賞者記念講演を聴いて 「企業におけるメンタルヘルス対策の意義:A社の取組事例」 小 玉 一 樹 氏(広島大学マネジメント研究センター 客員研究員) 広報委員長 堤 貞 夫 大会初日、学会会長 挨拶に引き続き、2012 年度実践賞小玉一樹氏 の講演が行われまし た。 この記念講演は、昨 年の大会に小玉氏が参 加できなかったため、 今回の大会で発表して 小玉 一樹 氏 いただいたものです。 学会としては、本年 5 月発行の会報 40 号に、 「2012 年度実践賞を受賞して」という小玉氏の文章をい ただき、受賞内容を報告いたしました。また、論 文については次号学会誌「産業カウンセリング研 究 Vol.15」に掲載されます。したがって、今回は、 金沢大会特集号の大会報告の一部として、講演内 容を報告します。 を得る、というサービス業の利益連鎖の考え方を 持っている。 しかし、メンタルヘルスに対する知識不足、制 度の不備から、上司・部下間のコミュニケーショ ン不足があり、年長者、若者間のストレス、スト レスメンタル不調者が出ていた。 そこで、まず第 1 期、従業員全員(パートタイマー を含む)の面接、従業員相談室の開設、から始まり、 第 2 期、メンタルへルス方針、メンタルヘルス宣 言を代表取締役が発信、さらにメンタル不調者の 休職、職場復帰支援制度、などメンタルヘルスの 推進体制を固めた。 また、全員に労働時間の調査アンケートを実施 した結果、労働時間と不調者の高度の相関が明ら かになり、長期労働時間撲滅の取組を実施された。 第 3 期にはパートタイマーの職務満足向上の為、 人事制度改革、社内教育・研修制度、第 4 期には、 職務能力評価制度、休職者の給与制度改善、人事 関係者のメンタル知識教育、安全衛生委員会の報 告改善等が行われた。毎年実施する組織風土調査 ではほとんどの項目で改善となり、残業時間は 4 割に減少、休取得は 4 割アップ、教学する組織と して社内研修受講者は約 4 倍になっている。 現在、メンタル不全の休職者はゼロになってい るそうだ。 小玉さんは企業におけるメンタルヘルス対策は① クライアント、カウンセラーによる、一対一の個 人を大切にする関係を作ること、②継続的な職場 改善で、組織内のすべてからメンタルヘルス不全 を排除すること、とおっしゃっている。 A 社は、54 か所の店舗展開をしている食品スー パーで、取り組まれたメンタルヘルス対策の 5 年 間にわたる実践と効果の報告である。 A 社には、現在約 4000 人の従業員がいるが、そ の85%はパートタイマーである。 小玉さんは、7 年前に転職入社され、5 年前か ら人事部の責任者としてメンタルへルス対策に取 り組まれた。 A 社には、企業理念に対する意識は強く、人的 サービスを提供する企業として、内部のサービス 品質が従業員の満足を生み、外部のサービス価値 に繋がり、顧客満足、その結果顧客ロイヤリティ − 12 − ラウンドテーブル・ディスカッション 中高齢者「生きがい・働きがいの再構築」 少子高齢化を迎え、定年後 20 年も人生を続けるにあたっ て、高齢期を如何に生きるか、働き方の見直し、セカンド、 サードキャリアをどのように形成し、それを実践するか、 それを支援する産業カウンセラーやキャリア・コンサルタ ントに問われている。 <発表者> 岡本祐子(広島大学大学院教育研究科)、 横山慶一(Toi Toi Toi)、 渡邉祐子(昭和女子大総合教育センター) コメンテータ木村周(学会特別顧問) 発表者から特に下記の点が強調され、活発な質疑応答が行われた。 ①「高齢期就労」の人生にとっての意味、その心理社会的課題、現役引退期のアイデンテイテイの危機、 アイデンティティ達成のための要件(生き方の再構築、みずみずしさ、バランス)(岡本) ②スーパーの「ライフ・レンボウ」の日本文化の観点からの解釈、ライフロング・キャリア・デザイン の企業と個人から見た観点と必要な能力(流動性、結晶性、総合能力へ)(横山) ③中高年問題への関心、孔子により表現された「従心のキャリア」、40 歳、50 歳代の内的キャリア、 「目 下の仕事を真摯に実行」などこれまでの活動報告(渡邉) ④質問に応じ、経済状況と関連で、個人に対する支援にあたって、産業カウンセラーやキャリア・コン サルタントは雇用創出に具体的に関わるべきこと (木村 周 記) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 若年「若者が生きがいをもって働ける社会の実現」 「若者が生きがいをもって働ける社会の実現」というテー マのもとで、主にキャリア教育の実施と若年者の就職や職 場適応の面から情報交換が行われた。まず高田理尋氏から 金沢工業大学のキャリア教育と専門教育の取り組みについ て紹介があった。ポートフォリオ教育を柱に課題解決に積 極的に取り組む機会を用意していること、その土台となる 生活管理が大切であると指摘された。学生が学修すること と職業との結びつきでは、現実社会の中で「気づき」、「生 かす」という経験が重要であるとのことだった。 大弥寛司氏は、会社の人事管理の立場から、仕事ができるかどうかはふるまい方の問題であり、自分で 学ぶ姿勢こそが大切だという。難しいが「ビジネス習慣」につながるものを身につけることが今の若者に 不可欠だとされた。集中力なども含めた仕事への取り組み方といった習慣である。そして「日本語」の使 い方がカギになること、語句の使い方などすべて意思の伝え方として働き方の基本となるという。 これらを受け、跡見学園女子大の宮崎圭子先生から、卒業生や学生のフォローの具体的な在り方、採用 時の学生への配慮などについて質問がなされた。特に、採用試験時のフォローは若者の挫折防止にもなり、 企業が人材を育てるということのひとつの在り方ではないかされた。最後に、生きがいとは、誰かに与え てもらうのではなくキャリア形成の中で培われるものである。教育の場はもちろん若年者を受け入れる職 場自体が人を大切にする中で「生きがい」が育まれるのではないかということが確認された。 (五十嵐 敦 記) − 13 − 女性「次世代へつなぐ~わたしたちのネクストイノベーション~」 タイトルの「次世代へつなぐ~わたしたちのネクストイノベー ション~」をテーマに、4 名のパネリストが「研修現場から見 た女性のワークスタイルの変化」 、 「行政における子育て支援」 、 「女性にとっての育児・介護」 、 「企業における育児介護支援と女 性活躍推進の取り組み」と、自身の経験をふまえて現在おかれ ている立場から、これからの女性の働き方やキャリアの積み方、 職場や行政の支援の在り方についてメッセージを発信しました。 参加者からの質疑応答も含め、これから女性が社会で活躍して いくにあたって、女性が「働く」から「生きがいを持って働く」 ということへのシフトや、家事・育児・介護との両立の在り方、女性とパートナーとの関係の構築の重要性につい てなど様々な意見の応酬がなされ、女性がキャリアを構築し、社会で貢献していくためには、本人の意識改革・努 力はもとより、職場、そしてパートナーの理解と支援が重要との結論で締めくくられました。 (永島 朋子 記) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 障害者「障害者の就労について」 ・本ラウンドテーブルの参加者は 10 名弱であった。 ・参加者について、プレゼンテータは、行政、企業、教育の 3名でそれぞれの視点から “ 障害者の就労 ” について、取 り組みの説明を行った。 ・一方聴衆された方はハローワークの担当官あるいは福祉事業場 の運営者と日常的に障害者と関われている方が中心であった。 ・取り組み事例につき、説明および質疑応答を行ったが、障 害者の就労支援方法については当然 “ 個人差 ” があり、障 害者向けに一定の手段がないことは全体で理解した。 ・ただ企業担当者あるいは支援者および周囲の関係者が粘り強く、工夫も行うことが、障害者の雇用促進に 繋がることも確認し、参加者全体が改めて気持ちを強く持つ機会になったように思われる。 ・注意事項としては、障害者の雇用促進に関し法律の強化が行なわれる中、無理な雇用や数合わせの雇用は 厳禁である。あわてず確実に就労の定着を目指すことも全体で確認された。 ・終了時間ギリギリまで話し合いが行われ、あと 1 時間あってもいいような状況であった。 (高野 裕一 記) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 企業Ⅰ「職場のメンタルヘルス不調者への対応の問題」 まずファシリテータから実際の復職困難な3つのケース が提示された。それぞれ過重労働、昇進、いじめから発症 したケースで、近年職場のメンタルヘルス不調の原因とし て問題となっていることである。その3つのケースをもと に検討した。 過重労働については面談をして、疲れていることが把握 できても、仕事内容の関係や本人のこれが普通という認識 のため労働時間を減らすことが困難な状況が実情であり、 どうすればよいのかと悩んでいる。復職については厚労省 から職場復帰の手引きもでているが、職場によっては短時間勤務では仕事にならない職場もあり、実際に は決まったとおりにはいかない。パワハラについては本人との認識のギャップの問題等、現場からの意見 が出された。小山先生からは双極性障害(躁うつ病)も考慮することや、復職時の主治医との連携の大切さ、 リワークの利用、短時間勤務から徐々に復帰していくことが必要であること、いじめに対しては相談にのっ − 14 − てくれる人、窓口が必要である等の助言があった。労災認定も増加してきている現実もあり、メンタルヘル ス不調者への対応はますます難しくなってきているといえる。産業カウンセラーとして本人へのかかわり方、 組織への働きがけの大切さ、難しさについて再認識できた場であった。また働きがいや、面談を多くして話 をよく聴くことがメンタルヘルス不調を減らすことができるということも再確認できた。 (高嶋 美紀 記) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 企業Ⅱ「現役世代の働きがい」 本ラウンドテーブルは二十名足らずと小振りではあったが、 企業の実践家、研究者、さらには行政、とりわけ厚労省から も三名参加をしていただき逆に濃密な議論が出来た。通常「働 きがい」については個人的な意見に流されやすいところがある が、参加者のおひとりがいみじくも指摘した通り、データを ベースにしたことで「軸のある議論」が出来た。ファシリテー タの古山氏が強調した通り、 「働きがいのある職場づくり」を いかに進めるかが重要で、それを単に従業員福祉と捉えるだけ ではなく、生産性を高める条件と考えるならば、企業も本気になるはずである。その必要を説くためにも今回デー タから得られたように<男性は何に働きがいを求めるかではなく、働きがいを意識に置いて働くことでそれは得 やすい><女性は仕事の働きがいよりも心配事がないことを望んでいる>という知見はすぐにでも実践に使えそ うである。昨今の実情からとかく病気の対応に目が奪われがちではあるが、 『心配事に応じる』 というカウンセラー の本分の重要性に気づかされたことも有意義であった。治療的カウンセリングも必要であるが、人を組織を元気 づかせるために何をするか考えさせられたラウンドテーブルであった。 (根本 忠一 記) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 社会全般「社会的排除と社会的包摂」 失業、疾病、傷病、大震災後の長期失業者、単身高齢、ひと り親家庭、引きこもり、介護、いじめなど社会的に排除され、 帰属する場を失い、孤独感に苛まれ話し相手もいない人に対し て「居場所と出番」を見出し、全員参加型社会の実現を目指す 上で、カウンセラーは何が出来るのか、について話し合った。 田中純一講師(北陸学院大学)は、地域社会、環境社会学 の研究者。被災地の陸前高田等に通い、北陸地震や中国四川 の大地震の経験を生かした活動を続けている。被災者から、 今気がかりなことを聞き、独居の高齢者、住宅再建、健康、 仮設住宅での苦労、入居期限後への不安、コミュニティの再生・維持、医療・介護や買物の不便さなどへの 対応と支援を進めた。住民だけでなく、行政職員の疲弊についても深刻な状況が報告された。 遠藤瑞江講師は、日本産業カウンセラー協会のリーダーの一人。これまで、企業や従業員からパワハラや セクハラの相談を数多く受けてきた。ケース研究が話題の中心。 パワハラにより、社内に居場所を失ってひきこもりになったケース。上司の指導方法と本人の希望のアン マッチから「新型うつ」に陥った若手。こうした状況の中で自己破産に追いこまれたり、家庭崩壊に至るこ とが報告された。 桐村は、社会参加のきっかけを作る方法として下記のことを報告した。 1)自立支援(例)―雑誌「ビッグイシュー」の路上販売等。2)複合的支援施設―居場所(食事やお茶の 出来るたまり場) 、配食サービス、高齢者デイサービス、障害者作業所の連携した運営。3)労働者の共同組 合(ワーカーズコープ)―構成員全員が出資し、経営者兼労働者となり、利益は均等にわける新しい働き方。 (桐村 晋次 記) − 15 − 個人研究発表 個人研究発表は、大会2日目、11月3日午前、5会場14テーマの発表が行われました。 それぞれユニークな研究で、発表者と参加者の間で真剣な意見交換が行われていました。 学会の「肝」となるものであり、今後も、多くの研究発表が期待されます。 A-1 B-2 アンガー・マネージメントプログラム キャリア この不可思議なもの~人間の 有効性の検討 存在・絆を読み解く私からのメッセージ - 1 回限りのサイコエデュケーションの枠組みで- ○樋口 榮治(有限会社八六) ○宮崎 圭子(跡見学園女子大学) B-3 A-2 中年技術者の能力限界の知覚と精神的 ひきこもるわが子に対する母親の理解と 不健康との関係性 かかわり方の変容過程に関する研究 -ソフトウェア企業A社のアンケートデータを用いた分析- -ひきこもり家族支援が与える影響について- ○古田 克利(関西外語大学) ○田原 直久(東京成徳大学大学院) 藤本 哲史(同志社大学) 小野坂益成(冨田病院) 蓮見 篤(セカンドスペース) 富永 洸太(台東区立子ども家庭支援センター) C-1 愛着スタイル診断テスト」の洗練化 岡田尊司著「愛着障害」(光文社新書) A-3 巻末テストを分析する キャリア発達をテーマにしたサイコエ ○根本 樹宏(株式会社ネモト) デュケーションプログラムの効果検討 -キャリア・アンカーを中心に- ○斎藤やす子(学校法人国際学園星槎大学) C-2 宮崎 圭子(跡見学園女子大学) 目標管理制度が看護師の キャリア発達に及ぼす影響 -キャリア・プラトー現象の観点から- B-1 ○松下由美子(山梨県立大学看護学部) 産業カウンセリングの満足度を 田中 彰子(山梨県立大学) 規定する要因の検討 吉田 文子(佐久大学) ○緒方 一子(名古屋学大学院教育発 山本 寛(青山学院大学経営学部) 達科学研究科) 竹内久美子(東京医科大学) 木村 周(元筑波大学) 杉本 君代(富士吉田市立病院) 篠田 晴男(立正大学心理学部) 雨宮 久子(共立高等看護学院) − 16 − C-3 D-3 クライエントのニーズ ( 知りたいこ 中国進出日系企業の採用・人材育成 と ) に応じて開発してきたもの -キャリア形成の実態と課題- -戦略的メンタリングということ- ○葛西 和恵(法政大学キヤリアデザ イン学部) ○堀之内高久(( 有 ) メンタリング研究所) D-1 E-1 スーパーヴァイジング ~効果的な面 メディアに掲載されている自叙伝の 接とその指導方法・スーパーヴィジョ ガイダンスの役割 ン体制構築の試み~ ○林 潔(白梅学園短期大学) ○横山 慶一(Toi Toi Toi !!! The Life Design Professionals) E-2 職場のストレス軽減をめざした D-2 サイコエデュケーション アサーショントレーニングが勤労者のメ ~カウンセリングと色彩セラピーのコ ンタルヘルスに与える影響に関する検討 ラボレーションを通して ○安田 淑恵(名古屋大学大学院) ○岸 弘市(岸アートライフ研究所) 平木 典子(統合的心理療法研究所) 涌波 理絵(色彩脳トレ&ボディサ ポートぴふか) 研 修 会 今年は大会3日目11月4日に、一日コース2テーマ、半日コース8テーマ合計10テーマが 開催され、例年以上に実践的な内容が多かったこともあって、時間いっぱいをかけて、 熱心な質疑応答が行われていました。 A 構成的グループエンカウンター・エクササイズ演習 東京聖栄大学 教授 岡田 弘 B 自分で試す認知行動療法 金沢工業大学大学院 教授 塩谷 亨 − 17 − C 成人期・高齢期のアイデンティティ再構築への援助 生きることと働くことを問い直す 広島大学大学院 教授 岡本 祐子 G 職場のメンタルヘルスケアにおける産業カウ ンセラーの役割 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長 山本 晴義 D 内的キャリアと生きがい・働きがい 立正大学 教授 小澤 康司 H リアリティセラピーの理論と実際 ウィリアムグラッサー国際連盟 基礎インストラクター 高野 和子 E 現場からみた女性社員のキャリア開発 50 年の変遷 株式会社社員教育研究室 代表取締役 坂巻美和子 I メンタルヘルス不全を発生させない職場作りとは ―裁判判例から学ぶハラスメント対策― 沼田社会保険労務士事務所 所長 沼田 博子 F 実践的研究の進め方/論文の書き方 跡見学園女子大学 准教授 宮崎 圭子 J アルコール依存症とメンタルヘルス 石川産業保健推進センター 所長 小山 善子 − 18 − 自主シンポジウム 今年は大会2日目11月3日、例年より長時間、5件が行われました。 シンポジウムの内容を企画者の報告として書いていただいています。 「統合的ライフ・プランニング(ILP)」のキャリ ア教育への導入について 平 和 俊 11 月 3 日(日) 、表題のテーマで自主シンポを開催 した。作田稔氏(組織能力研究所)の企画協力のもと、 全体企画および当日司会を平、パネラーとして小澤康 司氏(立正大) 、浅野衣子氏( (株)キャリア開発サポー ターズ)という布陣で進めた。 まず平が「ILP の概要とキャリア教育への導入の意 義と重要性」について概説し、小澤氏が立正大学キャ リア教育「キャリアとライフ(必修) 」の授業コンセプ トを説明した。加えて平が、授業で実施したワークの 1 例と合わせながら、受講した学生の反応をまとめた ものを示し、ILP に対する学生の理解度などに触れた。 ILP の考え方や実践についてよく理解し興味を示す学 生がいる一方で、かなりの学生が難しいと感じその辺 りに今後の授業の作り方、進め方の課題を見た。浅野 氏からは、若者支援実践者の立場から、学生のキャリ ア教育に対する期待と要望についての話がなされた。 3 人の発表の後、小グループでの対話、そして全体 での分かち合いへと場は進んだ。そのなかで、ILP の 考え方や実践はとても大切だと思う。しかし、どのよ うに講義に落としこんでいくか、学生に理解してもら えるように教材を作るかといったところに、難しさの 1 つがあるという感想があった。また、学生のみなら ず、特に昨今は、親たちへのキャリア教育の必要性が 高まっているという意見も出された。いずれも重要で 難しい課題ではあるものの、今後の展開を図る上で貴 重なフィードバックであった。 スーパーヴァイジング 横 山 慶 一 午前中の個人研究報告に続き同名のシンポジウムが 開催された。 午前のでスーパーヴァイジング(スーパーヴィジョ ンを進めるシステム体制やスーパーヴァイザーの姿勢 などを中心にした報告)に対し、午後の自主シンポジ ウムは、3 ヶ月間スーパーヴィジョンの試行検討に参加 したスーパーヴァイジー 2 名が登壇し、具体的なスー パヴィジョン体験を発表するところかは始まった。 その後、聴講者が少なかったので各自の自己紹介を 交えつつお互いに感じ事を自由に話しあい、指定討論 で、学会スーパーヴィジョン養成委員の宮崎圭子先生 からの深いご指摘や、それに対する意見など、全体で 非常に活発な議論が交わされた。 学会の使命である「質の高いスーパーヴァイザーを 世にだす責任」と、走りながら「現場でのニーズにい ち早く応えていこうする実践」と、お互いの立場での 真摯な意見交換は大変有意義なものであった。 日本でスーパーヴィジョンはまだ未開拓な部分が多 く、今回のようなディスカッションによりエヴィデン スに裏付けされた質の高いスーパーヴィジョンが広く 容易に実施される環境が近いうちに訪れる事を願って いる。 中小企業のメンタルヘルス対策支援 取り組む 「きっかけ」とその「促進」に焦点をあてて 石 見 忠 士 この自主シンポジウムは「中小企業のメンタルヘル ス対策支援」をテーマに、木村顧問、古山氏の 2 人が 中心となり、毎年実施されています。今年は、昨年に − 19 − 引き続き、こころの耳運営事務局長の石見と、労働者 健康福祉機構メンタルヘルス対策推進アドバイザーの 菅野氏の報告に、適宜、木村顧問にコメントを頂戴し ながら、進められました。 最初石見より、厚生労働省「平成 24 年労働者健康状 況調査」結果を基に、 メンタルヘルスケアの取り組みは、 従業員 300 人未満の中小企業での取組状況が低く、産 業医選任の法的義務のない 50 人未満の企業ではさらに 低くなる点から、中小企業と言っても、従業員規模で 2 つの区分に分けて考える必要がある点などを問題提起 しました。その後、 「こころの耳」における取材を通じ た企業現場の実態と考察を報告しました。 菅野アドバイザーからは、 「メンタルヘルス対策支援 センター」の実績や利用者満足度の報告、並びに全国 の促進員に対するアドバイスを通じて得られた中小企 業の現状や好事例を報告しました。 その後、古山アドバイザーの司会により参加者に自由 に発言していただき意見交換しました。 「講演は生もの」 ですので、毎回どこに話が行きつくのか予測できない 点もありますが、最後は、元の会社に復職できなかっ た方々の支援先としての NPO 団体の実態報告となりま した。現場視点でものごとを語る私たちシンポジウム の話の延長線上にあるものだと感じました。 産業カウンセリングにおける「連携」とは何か 作 田 稔 本シンポジウムは、これから私たちが産業カウンセ リング分野で取り組むべき「連携推進」の対象、その 意味と意義および現場の課題などを、参加者と共に明 らかにすることを狙いとして実施しました。冒頭司会 より、今後 10 年を展望する時、超高齢社会を生きる 人々の主要な3世代に向けた取り組みの重要性に触れ た後、碇明生氏からは、メンタルヘルスやキャリア開 発展開に関わり、実際の企業現場で変革を生み出す上 での課題が報告されました。平川完氏からは、連携の 原理と社会の課題への取り組み事例として、健康生き 甲斐財団の取り組みや、ご自身の被災地栄村で展開中 の世代間連携の事例等が報告されました。堤貞夫氏か らは、本学会の社会活動委員会の提言から今日に至る、 学会の重要課題への取り組みと連携の具体化の方策が 報告されました。総勢 14 名のこじんまりとしたシンポ ジウムでしたが、限られた時間の中で、参加者からは、 産業カウンセリングの現場の連携促進への期待、連携 課題の実践の中での掘り下げと情報の公開やこの問題 を更に多くの方々と共有し、議論するための広報活動 の重要性など意見交換されました。実践現場に役立つ、 「連携」のあり方の重要性を改めて確認できる場となり ました。 キャリアトーク2の活用 榧 野 潤 キャリトーク2とは、キャリア・コンサルティング の逐語記録*を活用し、その特徴とプロセスを解析す ることにより、コンサルタントの専門性の向上ならび にコンサルティングの改善をサポートするソフトウェ アのことです。 この自主シンポジウムでは、まずはキャリトーク2 の機能(キャリア・コンサルティングの特徴の数値分析、 クライアントとコンサルタントの間の言葉のやりとり 分析、作成した逐語記録の編集・印刷・データ管理等) を実演して紹介し、ついで飯田哲也氏(東京労働局 職業安定部)から相談現場での活用の可能性等のご意 見を話してもらいました。それからフロアと一緒になっ て、その活用方法のアイディアやソフトウェアへの要 望等について話し合いました。 サポステ、メンタルヘルス、看護などの様々な分野 で相談の仕事に関わる方 10 人に参加していただいたの ですが、このソフトウェアに対する様々なご要望や活 用上のヒントについて多くの意見を頂くことができま した。参加者、そして、こういった機会をつくってい ただいた学会事務局の皆様に、この場を借りて御礼申 し上げます。どうもありがとうございました。 *逐語記録とは、キャリア・コンサルティングならび にキャリア・コンサルティングにおけるコンサルタ ントとクライエントの間の言葉のやりとりを文字に 起こし、記録したものです。 − 20 − 来年へバトンタッチ 木村先生 カンパ〜イ 絆 を深めた懇親会 ご挨拶される小山先生 横笛 藤舎様 桐村先生 小山先生と 活躍されたスタッフ − 21 − 地方還元特別出前講座 Ⅰ・Ⅱ Ⅰ 「働くこと」について語り合おう 学会理事 浅 川 正 健 左から竹澤敦子氏・野村康則氏・浅川正健氏・岡崎優範氏 特別出前講座の前半は、大学生を対象に、企業内での勤務、学校や企業の経営、大学で教鞭を取る、更に 家庭でと幅広く、様々に「働く」経験豊富な、野村康則、竹澤敦子、岡崎優範各氏そして浅川と 4 人のパネラー が語り、学生からの質疑に応じるという形でした。 ファシリテーターは、大学就職支援室のキャリア・コンサルタントであり、今大会の準備委員会の大役を担っ ていただいた吉野ゆかりさん。 「企業の求める人材」 「就職活動はこれでいいのか」という学生が知りたい話から、 「心豊かな人生を」 「人 生をきらきらさせる」といった、どのように生きるかというところまで、限られた時間の中で、何かを伝え たいというパネラーの熱意が感じられました。 一方、学生の質問は、 「若手を育てる上で会社は何を一番大事にしているか」 「仕事の負荷がかかってから」 「海 外では」 「働き方」などについて質問が広がり、 最後には、 「幸せのネットワーク作り」 「好奇心を持って工夫を」 などというアドバイスも出たりして、 2 時間は、 あっと言う間に過ぎました。尚、 終了後にも、 学生二人からキャ リアについて個別の相談があり、東京に戻ってからもメールの交信と、 「出前」から今後につながる足がかり はできているかもしれません。今後少人数の時には、車座になって、気楽に話し合うなどという「講座」も 一つのアイディアではないかなと考えました。 事務局、御登壇頂いたパネラーの先生方、お世話になり有難うございました。 ●●●●●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● Ⅱ 「就活うつにならない・させないためのこころの持ちよう」 日本産業カウンセリング学会会長 宮 城 まり子 特別出前講座の後半は、学生、保護者、学 校関係者を対象とする講演会となった。 宮城先生は、臨床心理士、法政大学キャリア デザイン学部教授であり、大学キャリアセン ターの総元締めもしておられ、キャリア・カ ウンセラーの立場で学生のキャリアカウンセリングにも対応し ておられる。豊富な資料を次々と繰り出しながら、就活の現状や、学生の思い込み(否定的認知、不合理 な信念など)に対する見直しなど、時には、ユーモアもまじえて分かりやすい役に立つお話でした。 ・就活に対して、学生は対策本などを見て、画一的なエントリーシートを作成している。企業は、幅広い 多様な人材を採用しようとしている。自分らしくありのまま自分の言葉で話そう。 ・企業へ入って3年以内に辞める人が約 3 0%もいる。自分が描いたイメージと違う、やりたい仕事では ない、仕事がきつい、上司や周囲が教えてくれない、聞けないなど考え違いである。どんな仕事にも意 味があり得るものがある。成功した人は、つらかった経験があるからこそ、今の自分がある、と言って いる。「苦労が、人を磨く」。 ・自己理解も大切だが、それより、企業研究をよく行うことが大切で実益がある。 卒業した先輩が勤めている会社を訪ね、現場の話を聞けば本音がわかり、企業理解 にも有効。 ・社会・企業が求める若い人材は、自分で考え行動し自分で決定できる人。やる気と人間的魅力。好奇心、 持続性、楽観性、柔軟性、挑戦が大切。 (広報委員長 堤 貞夫 記) − 22 − 〈JAIC論壇〉 地方公共団体における就職支援 いばらき就職支援センターを例として シニア産業カウンセラー キャリアコンサルタント 土 田 明 裕 現在、私は茨城県商 工労働部で運営される 「いばらき就職支援セン ター」にキャリアカウン セラーとして勤務してお ります。就職相談、生活 相談、労働相談を行って いるワンストップ型の相 談機関になっています。 《いばらき就職支援センターの概要》 就職相談はキャリアカウンセラー、生活相談は 社会福祉士、労働相談は人事労務経験者が行って いる他、地域出張相談や県立高校、県内大学への 出張セミナー等も行っているワンストップ型の就 職支援機関になります。 来場者は中学校卒業の若者から高校・大学生、 若年者、壮年、高齢者、若者まで様々な方、生活 保護受給者または県や地方公共団体の福祉支援を 受けている方など多種にわたります。また、内職 等の斡旋も行っているのが特徴です。 求人開拓も専門の開拓員がおり開拓しています が、地方ということもあり労働市場が大きくな く、ハローワークとの差別化が難しいことも課題 です。 《メール相談》 インターネットを使ったメール相談も行ってお ります。カウンセラーが希望者とメールでキャリ アカウンセリングを行うものです。 《複雑な背景を持つ求職者》 求職者については、多種多様な希望を汲みなが ら紹介業務を行っていますが、ハローワークで相 談しても上手くいかない、なかなか就職に結びつ かないという求職者が多いのも事実です。 ・30社50社受けているが書類選考や面接で不合 格。面談練習しても上手くいかない。 ・引きこもりをしているので内職をさせたいと 思っている両親からの相談。 ・保護司と一緒に来所する保護観察中の少年。 など県の施設ということもあり、県民福祉課と の連携もあり福祉的な背景が強い相談が多く、 キャリアカウンセリング技能だけでなく、専門 的な支援技能が必要とされるのではないかと考え ます。就職相談と障がい者相談などの区分がなく 一人で全ての相談を受けるため、広範囲な知識が 必要だと感じました。特に私は今まで犯罪歴のあ る方の相談などにあまり経験がなく戸惑うことが 多いのですが、相談の基本はしっかりと人として 話を聴く原点に立つことだと考えるようになりま した。 《クライエントを抱え込み病理をつくらない》 現在様々な方々と面接を行える機関に属させてい ただき本当にありがたいと思っております。 様々な方というのは、時に自分の手に負えない方 とも面談する機会を得るということです。 このことには特に注意をしなければならないので はないかと考えています。 《クライエントが見えなくなってしまう時》 私も時としてカウンセラーは良くなってほしい、 就職してほしいと自分の欲求が先に考えてしまい、 今のクライエントが見えなくなってしまいます。 「こうしたほうが良い」「こういう療法をしたら どうか」「認知」行動療法といういい療法があるん だけど・・・」とクライエントに言えば、クライエ ントは「はい」と言います。 あまり乗り気でなくても「はい」と言うのです。 また、病理がある場合、病気への影響を考えずに提 案をすることもあるかもしれないのです。 昔ですが、「朝、太陽を浴びるのがいいね、散歩 も良いと思うよ」と何気なく言った言葉が毎日数キ ロの散歩に繋がってしまい疲れさせてしまった経験 があります。 私の中では、鬱病理の理論で勉強した「朝日を浴 びたほうがいい」「適度な運動」がつながって発言 しましたが実際はクライエントに負担感を与えてい ました。 《目の前の人を直視する》 このセンターに来て思ったことは「目の前のクラ イエントをしっかり見る」ことです。 そうすれば信頼感も得られますし、間違った見方 で観察しなくなります。 まさにクライエントが先生であり、私たちカウン セラーは伴走者でしかないと感じています。 − 23 − リレー随想 「マザーズハローワーク横浜」から マザーズハローワーク横浜 就職ナビゲーター 会員 坂 本 良 子 皆 様 始 め ま し て。 廣川先生からのバト ン を、 う っ か り 受 け 取ってしまった坂本 良子です。 こ の 機 会 を 頂 き、 ま ずは私の所属する「マ ザーズハローワーク」 についてご説明をさ せていただきます。 子育てをしながら就職を希望する方々へ、き め細やかで総合的な就職支援をおこなう目的で 平成 18 年 4 月に始まり、平成 25 年 10 月時点で「マ ザーズハローワーク」全国 13 カ所、一般のハロー ワークの中にある「マザーズコーナー」は 163 カ所設置されています。その数は現在も増えつ つある状況です。 「マザーズハローワーク」は、広いスペースの 検索機や相談の窓口(バギーを横に置いて安心 して相談等が出来るように)、おもちゃや絵本等 のあるキッズスペース、ベビーベットのある授 乳コーナーが用意されています。キッズスペー スには保育士さんが見守っています。担当者制 の個別相談や無料のパソコン講習、就職セミナー の実施・保育所等の情報提供等就職を応援する 体制が整っています。横浜では他に、国と県の 連携で労働相談の日や弁護士の無料相談日を設 けており、県による面接用のスーツの貸出もあ ります。まだまだご存じない方が多く残念です。 ね、 「利用しないと勿体ない」とは思いませんか? ここでの相談は多岐にわたります。「子育てしな がら働くには何から始めたらいいのか?」「育児 休暇中で復職に不安がある」「育児や家庭と両立 で き る 仕 事 は?」「 ブ ラ ン ク が 長 く 仕 事 が 出 来 るか心配」「今の職場で上司とうまくいかない」 等々。丁寧にお話を聴き、問題を整理する事か ら始まります。 こうした日々の相談の中で強く感じる事は「女 性の転機の多さ」です。結婚・出産・子育て・転勤・ 介護・離婚、それ以外でも夫の失業や子供さん の事等。その都度自らの歩みを変えていくのはか なりのストレスです。 確かに、子育て中は制約が多く、思うような動 きが取れなかったり、また厳しい就職状況に自 信を失い落ち込んでしまう事もあります。目標や キャリアをしっかり考えている方は、思い通りに 行かない事にますます苛立つ事も…。やっと働き 始めたら、初日から子供さんが熱を出し、数日休 んでしまってそのまま退職というケースもありま した。再就職のハードルの高さを感じ、私自身も 辛かった瞬間です。 でもそんな時こそ、それを嘆くのではなく諦め るのでもなく、今の環境・状況の中で最善を尽く す事の大切さを考えて頂きたいのです。その経験 や仕事を含めたスキルを、次のステップに繋がる よう貯金して欲しいですね。「転機の多さ」を逆 手にとって実りに繋げ、納得のいく生き方をして 頂けるよう日々支援をしています。 「柳のようにしなやかに、且つしたたかに。」「し たたか」という言葉は悪いイメージもありますが、 どんな場面や転機にも折れない強さを持って欲し いというメッセージです。私の目標であり、伝え たい言葉です。 初回相談で労働問題が見え隠れしたり、子供さ んの問題についてのアドバイスを求められたりと 幅広い知識もですが、適切な連携先の情報も必要 です。 こんな風に日々頑張ってはいますが、 「どうだっ かかな」と、クヨクヨした振り返りもしばしば。 来所者が固い表情から笑顔に変わったり、後日嬉 しい連絡を頂いたりして、初めてホッとします。 そんな私にとって、学会での学びは大切です。 「一生涯、勉強!」という恩師の言葉を噛みし め乍ら、そしてまた「いつまで続く、この蟻地獄」 と呟きつつゴールの無いマラソンをしています。 共に学び、励ましあい、刺激を与え合う仲間の存 在があるからこそ、これからも走り続けていける のでしょうか。 次のバトンは勉強会仲間である小路直丈さんに お渡ししたいと思います。 − 24 − 会員投稿コーナー 「チェンジ・エージェント」 キャリア・コンサルテイング技能士会北海道支部会員 陸上自衛隊臨床心理士 松 村 千 賀 今回の会員投稿を書くにあたり学会の知り合い から1冊の本「キャリア開発と統合的ライフ・プ ランニング(ILP)」を紹介された。手にしてみ たところ、まず序文を読んだ時点で「チェンジ・ エージェント」という言葉が目に飛び込んでき た。私のキャリアは今まで「チェンジ・エージェ ント」と称されてしかるべき多くの方々に支えら れ導かれてきた由縁であろう。 「私たちは誇り高き○○大のナースです。」私 が新人ナースとして勤務した部署の婦長(当時は 看護婦の名称であった。)に事あるごとに聞かさ れた言葉である。駆け出し新人ナースは、その忙 しさに目先の事しか見えなくて、当時3K(きつ い、きたない、給料安い)と呼ばれた仕事をこな すのに、身体も心も精一杯であった。悲しいかな 婦長の言葉は、そのようなナースにとって腑に落 ちる言葉ではなかった。 その一方で、婦長は看護部長に新人ナースの事 を「私はアフリカの星(高級ダイヤの原石)を預 かっています。」と言っていたそうである。部署 としては使い物にならない新人ナースより、即戦 力のベテランナースを配置して欲しかったに違い ないのに。「いつものポジテイブ思考で」と私が 言っていられるのは、婦長のリフレーミングに よって護られていたからだと思う。婦長の元で働 いたのは僅か1年でしかなかったのに、あれから 20数年を経ても近況をやりとりしている。 このように、私のキャリアはナースから始まっ た。訪問看護師として働く事を目指して夫の異動 に帯同し、北海道に来たはずであった。訪問看護 ステーションから「転勤族(夫が2年ごと転勤) はお断り」と言われ、ハローワークで勧められた 大手企業の健康相談室に就職した。この時が産業 カウンセリングの場への入門となり、職場での知 人から産業カウンセラーの養成講座を熱心に勧め られた。資格を取った後も、養成講座の同期と キャリア・コンサルタントの資格を目指し、もっ と深く学ぼうと一緒に放送大学に編入した。通勤 のJRで放送大学のテキストを広げていたら、自 分も放送大学の学生だと称する人から大学院進学 を勧められた。大学院進学のため一旦産業の場を 離れ、臨床心理士になった。そして、エンカウン ターグループ研修で知り合った人から産業カウン セリング学会入会を勧められた。 それ以来、大会や年2回開催される研修会を通し てさまざまな学びを得られたと同時に、学会は私 自身のキャリアにとって、かけがえのない人達や 有益な情報を与えてくれている。 数年前から年に1度、大学の後輩に対して 「キャリア・プランニング~自己分析~」の講義 を担当している。グループワークで自己分析を発 表し合い、それをグループでリフレーミングし て、3つの文章(一人1分程度の内容)にまと め、全体に向けてプレゼンテーションする。グ ループワークは苦手という学生が多いので、最初 は小さな声でやりとりしているが、リフレーミン グ効果は学生の声を大音量に変え、最後の全体プ レゼンテーションでは目を輝かせて、3つ文章の 他にパフォーマンスが入ることさえある。お互い が、お互いの良い所を認め、笑顔が生まれる瞬間 に立ち会える幸せな一時である。 私のキャリアは、現在産業カウンセリングに携 わるに至るまで、多くの「チェンジ・エージェン ト」と称されてしかるべき方々に支えられ導かれ てきた。今後は支えられ導かれてきたことを、少 しでも後輩たちに伝えて行きたいと思っている。 気がつけば、看護の仕事を離れてしばらく経 つ。今は心理士として、キャリア・コンサルテイ ング技能士として、仕事をしている。「私たちは 誇り高き○○大のナースです。」看護の仕事を離 れた今でも、歳月を重ねれば重ねるほどに、その 言葉は重みを増して私を導いている。 − 25 − 図書紹介コーナー ■宮崎圭子著 「サイコエデュケーションの理論と実際」 遠見書房、2013 年 3 月 31 日刊 紹介者 尾 久 裕 紀 サイコエデュケーションはわが国では、「心 理教育」ともいわれ、医療、教育領域などで普 及している。サイコエデュケーションでは、参 加者が自分で自らの問題を解決するための必要 な情報、対処技術などを身につけていく。その 際、どのようなサイコエデュケーションが参加 者のニーズにあっているのか? そのニーズを どのように決定すればよいのか? 多くのニー ズが存在する場合、どのようにして優先順位を 決定すればよいのか? これらの疑問に 1 つの パラダイムを提供することが本書を書いた目的 であると著者は述べている。 本書は三部からなり、第Ⅰ部「サイコエデュ ケーションの理論」では、サイコエデュケーショ ンとは何か、海外および国内におけるサイコエ デュケーションの動向を概観し、第Ⅱ部「サイ コエデュケーショナル・グループ 実践編」で は、著者の多様なテーマにおけるサイコエデュ ケーションの実際を詳細に展開している。そし て第Ⅲ部「サイコエデュケーショナル・グルー プ 応用編」では、最終目的である、サイコエ デュケーションのテーマの設定、参加者のニー ズに合致したテーマをどのように決定するのか に対するパラダイムを具体的に提供している。 これからサイコエデュケーションを学びたい人 にとっては包括的なテキストとしてお勧めの 1 冊である。とくに大学生、大学院生、研究を 志す人にとっては、第Ⅰ部はサイコエデュケー ションに関する海外、国内の貴重な文献がまと められていており、この領域の動向を把握する のに大変有用である。また、すでに臨床の場を もっている人には、日々の実践の方向を示して くれ、自らのサイコエデュケーションについて 振り返るよい機会になるだろう。ぜひ多くの人 に一読してほしい力作である。 会員入退会のお知らせ 入会者 jjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjj 平成25年9月27日現在(敬称略) 野呂 康之 土居 大亮 宮北 昌輝 桐山 理 文川 実 柳 圭子 牧野 佐智子 上野 由紀 岡本 和子 佐藤 あゆみ 川瀬 公美子 山田 信子 松島 秀明 見波 利幸 高嶋 美紀 安藤 聡一朗 加島 直美 原 一也 桐井 久美子 浅野 和徳 手塚 紀子 松野 義夫 熊澤 美貴子 小林 仁 細田 稔尚 萬田 しのぶ 西堂路 淳 退会者 jjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjj 平成 24 年 11 月 1 日現在(敬称略) 松浦 陽 小島 一利 吉田 修 後藤 雅司 小菅 恵美子 儘田 信夫 福原 達也 日下 加悦子 吉田 則子 宮下 ゆり 伊藤 雅彦 吉田 尚司 喜多 紀史 細倉 美由紀 岩渕 圭雄 − 26 − 第 107 回常任理事会議事録 日 時 平成25年9月27日(金) 18:20~21:00場所 跡見学園2号館5階M2503教室 出席者 阿南、五十嵐、上脇、桐村、杉、堤、松下、 宮城、宮崎、渡部、渡邉 欠席者 今野、作田、平木、廣川、三川 (敬称略) 1.審議事項 (1)入会希望者、退会届について 入会希望者27人の入会承認。14人の退会届受理、 3年間会費未納会員57人資格停止。これらの結果、 9月27日現在の会員数は1,489人となった。 (2)一般財団法人日本心理研修センター 「試験・登録機関」指定への賛同及び協力について 宮崎説明、本会は一般財団法人日本心理研修セ ンター「試験・登録機関」指定に賛同。承認。 (3)平成25年度総会について 事務局長より説明、議題法人化案を除き、承認。 開催日:11月2日(土) 議 題:平成24年度事業報告・収支実績、 平成25年度事業計画・予算、及び、法人化案 (4)法人化案について 事務局長より第105回常任理事会での説明の振 り返りと、定款案が説明。しかしながら、標題は 定款作成、登記だけの事項ではなく、会長が主幹 となって早急にとりまとめる。 (5)その他 18回大会準備委員会から常任理事会に意見を求 められた事項について審議。内容別紙参照。 2.報告事項 (1)「これからの日本産業カウンセリング学会の あり方を語る会」について 8月16日(金)開催。内容のまとめが会長より 報告。あらためて文書にて常任理事に配信。 (2)18回大会準備状況について 9月27日現在、大会参加申込者が120名となった こと等が報告。 (3)委員会活動状況について ①広報員会 会報41号の発行、第42号の企画につ いて報告。 ②連携推進員会 委員会の現状と9月度の活動状 況報告。委員に松本桂樹氏が加わる。 ③研究員会 第18回大会学会企画シンポジウムと 会員に対するアンケート調査について。 ④総務委員会 特別セミナーを平成25年度第4四 半期に開催する準備を進めている。 ⑤SV養成委員会 9月27日現在の応募書類請求状 況と選考スケジュールが報告 ⑥定義委員会 9月度の活動状況が報告。 3.その他 (1)108回常任理事会は11月29日(金)18時20分よ り開催する。 別紙(説明を縮小した):審議事項(5) 1.大会運営に関する常任理事会での確認事項 2.「ラウンドテーブルのみの参加を北陸3県在住 者限定で無料にする」提案について (常任理事会の意見)ラウンドテーブルに北陸3 県在住者を参加しやすくする提案には賛成、無料 ではなくラウンドテーブルのみの参加費を設定さ れることが妥当 (個別の意見)過去記念講演を1000円で学会員以 外の受講例あるが、無料にしたことなし。 3.講師謝金および交通費について (常任理事会の意見) 提案された方法で問題は ないと考えます。 4.本部企画の研修について (常任理事会の意見) 、認知行動療法について はタイミングを考えるべきでした。 5.研修会の最低開催人数について (常任理事会の意見)最低開催人数に関する規程 なし。準備委員会で検討、対応が望ましい。 6.出前講座の受付 個人情報の取り扱い、災害発 生時の参加者に電話で中止連絡は無理。以上 − 27 − 平成 25 年度 理事会議事録 時 間 平成25年11月2日(土) 12時10分開始13時15分終了 場 所 石川県文教会館 203会議室 出席者 浅川正健、浅野衣子、五十嵐敦、石川邦子、 遠藤瑞江、緒方一子、小澤康司、上脇貴、 菅野由喜子、桐村晋次、作田稔、寺田正美、 堤貞夫、長坂廣幸、西澤肇、根本忠一、 萩原弘子、廣川進、松下由美子、宮城まり子、 宮崎圭子、渡邉祐子(理事22名) 阿南憲治(監事1名) オブザーバー出席 木村周(特別顧問) 理事会に先立ち第18回大会準備委員長小山善子先 生より大会開催に当たっての挨拶があり、その後、 宮城まり子会長が議長となり、議事にそって審議、 報告が行われた。 (審議事項) 議長の指名により上脇貴事務局長が議題1.平成 24年度事業報告、議題2.平成24年度決算報告、議 題3.平成25年度事業計画、議題4.平成25年度予算 案の個々の議題の内容を議題説明書類に基づき詳細 に説明した。議長の指名により阿南憲治監事が、平 成24年度の監事2名の監査結果は、別紙の付議事項 に添付の監査報告のとおりであり、法令および会則 に違反する事項および不当な事項はない旨の報告を 行った。 (質疑応答) 続いて議長が審議事項について質問等審議に関す る発言を受ける旨を告げたところ、次の2点の発言 があった。 議題4.平成25年度予算案における次年度繰越金の 誤りに関する指摘 議題1.平成24年度事業報告および議題3.平成25年 度事業計画における支部設立支援委員会開催等に関 する要望 以上をもって審議を終了し、議長が議題1.~ 4.について、それぞれ個別に出席者に賛否を諮っ たところ、各議題とも出席者の過半数の賛成を得た。 よって、議長は、各議題について原案どおり承認可 決された旨を宣した。 (報告事項) 報告1.第19回大会開催の件について同大会準備 委員長廣川進先生より報告された。報告2.平成25 年度各賞の件では、初めに会長より学会賞について は平木典子先生に授与することが報告された。 続いて、副会長宮崎圭子より学術賞は該当研究な し、副会長上脇貴より実践賞は該当報告なしとそれ ぞれの選考結果が報告された。 編集後記 第18回学会から2週間、昨夜会報の編集が終了し金沢大会特集第42号会報が出来あがりました。2週間 というけっこう厳しい?日程にもかかわらず、遅れることなくスケジュールを進めることができまし た。ご執筆をいただいた皆様に感謝すると同時に、堤広報委員長を始め委員一同ホッとしているところ でもあります。 今回の学会、当初は参加者の集まりが少ないことが懸念されました。そして、いざ終わってみると参 加者数は200人を超えたとか!しかしこれは単なる偶然ではなく、この大会の企画とまたプログラム内 容の充実度を見れば、当然のごとくうなずける結果でしょう。一参加者としても強くそう感じます。ま さに、大会準備委員のご尽力の成果ですね。 数々の気づきと思い出を残して終了した金沢大会。それらを忘れ去ることなく次は形に結びつけてい く番です。歴史、文化、食、人等々に彩どられた金沢の街並み、私もまた訪れたいと思う場所の1つと なりました。 (広報委員 平 和俊) − 28 −
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