平成 27 年 9 月 6 日 ~改訂版を書くにあたって~ USMLE STEP1 の

平成 27 年 9 月 6 日
~改訂版を書くにあたって~
USMLE STEP1 のマニュアルを手に取ってくださった方、お久しぶりです。そうでない
方ははじめまして。亀田総合病院後期研修医の瀬嵜智之と申します。私事ですが、2012 年
に山形大学を卒業し、国立国際医療研究センター病院で初期研修を終え、現職に至ります。
山形大学の後輩に向けて作った USMLE
STEP1 のマニュアルを世間に公開したほうが
いいと皆に後押しされ、2012 年秋にインターネットで公開して以来様々な方から反響があ
りました。
連絡先や職場も一般公開はしていませんでしたが、何かのご縁があって何人かの USMLE
に興味ある方とお話しする機会に恵まれました。講演会をする機会も頂けました。
人生とは不思議なものです。英語がコンプレックスだった僕がアメリカの医師国家試験
の勉強の指導をすることになるなんて誰が思ったのでしょうか。
あれから 3 年もの時が過ぎ、
ようやく STEP 2CS に合格することができました。STEP2CS
のマニュアルも作りました。人生最大の大作です。是非ご笑覧ください。
またその時が移りゆく中で STEP1 の対策方法にも多少の変化が出ているようです。そこ
で僕の知る限りで改変してみることにしました。
USMLE の勉強は楽しいけど辛いものです。結果が出なくて悩んでいる人も多いでしょ
う。今までに何十人もの生徒を指導してきましたが、結果が出た人には共通点があるよう
です。やり方でも特技でもない。いかに強い信念を持って継続出来たのか。その一点に限
ります。
人生における幸福は、才能や地位・名誉によって決定されるものではないと思います。
過去の自分をどれだけ肯定できるのか。それが幸福なのではないかと最近思っています。
これからも頑張る皆さんを応援しています。縁が会ったら会いましょう。
興味ある方は是非一度当院の見学に来てください。それではまた。
亀田総合病院
心療内科・精神科 後期研修医
瀬嵜 智之
~USMLE について~
・まえがき
ここでは、USMLE の概要について説明していきます。資料改訂時点では STEP1, 2CK,
2CS を終了している段階で、STEP3 はまだ未受験です。そのため STEP3 に関する体験
を記述することが難しい点を留意していただき読み進めていってもらえたらと思いま
す。また試験情報は不定期にアップデートされているようなので、疑問点がありました
ら必ず USMLE のホームページでご確認ください。
① USMLE とは?
A:概要
Wiki よ り 引 用 し ま す が 、 USMLE と は United States Medical Licensing
Examination の略称であり、つまり米国の医師国家試験のことです。USMLE は、FSMB
(Federation of State Medical Boards:医事審議会連合)と NBME(National Board
of Medical Examiners:国立医療試験審議会)によって主催され、アメリカ合衆国各州
で医師免許取得の際に行われる試験です。一般にアメリカ合衆国内のメディカル・スク
ールの在学生・卒業生(M.D.)は、各州で医師免許取得の際に USMLE の 3 段階の試
験に合格することが要求されます。また、アメリカ合衆国以外における医学校を卒業し
た学生がアメリカ合衆国各州で医師免許を取得し診療を行う場合にも、USMLE の 3 階
段の試験に合格することが必要となります。
B:方法
随時受験でき、アメリカの臨床研修指定病院に研修希望する際にはここでの成績がマ
ッチングの選定に影響します。
C:構成
試験方式は MCQ 方式のコンピュータによる学科試験によって行われます。 日本の
医学生が4年次に受ける CBT は USMLE をモデルとしており、試験方式も殆ど一緒で
す。USMLE は STEP1、STEP2(CK・CS)
、STEP3 の 3 段階の形式で構成されてい
ます。
STEP1: 基礎医学分野からの出題です。内容は 1block:46 問/h× 7block = 322 問となっ
ています。 一般的な米国の医学生は2年次の終わりに受験するようです。また日本人
では、基礎医学修了者に受験資格があると聞いたことがありますが、USMLE のホーム
ページで確認したところ医学生または医学部卒業生であれば誰でも受験可能なようで
す。しかし、実際の受験時期は 4 年生後半以降が現実的でしょう。2015 年 3 月時点の
合格最低点は 192 です。STEP1 の点数の詳細は後ほど詳しく説明します。
STEP2CK(Clinical knowledge): 臨床医学からの出題であり、一般的な米国の医学生は
4 年次に受験するようです。内容は 1block:44 問/h × 8block = 352 問(問題の中には論
文の 1 部を読ませて問題を答えさせるような長文問題も含まれており、そのような問題
を含む場合は 1block:42 問になります。
)です。合格最低点は 209 です。STEP1 よりは
簡単と言われることが多いです。なんと合格最低点がここ最近の 3 年間で 189→209 と
20 も跳ね上がりました。どんどん合格が厳しくなっている印象です。
STEP2CS(Clinical skills):基本的臨床技能に関する技能試験です。日本でいう OSCE に
相当するものだと考えてください。12 種類のスタンダードな症例に対し、模擬患者役
から、問診、診察、診断等を行っていくというものです。試験会場は全米でフィラデル
フィア、シカゴ、アトランタ、ヒューストン、ロサンゼルスの 5 都市で開催されていま
す。
STEP3: 総合的な医療知識と実践に関する CBT 形式の試験です。STEP1, 2CK, 2CS ま
でを合格すると ECFMG certificate が発行されます。ここでレジデントとして働くこと
ができるようになります。STEP3 はその州で働くための州免許試験のような役割があ
るようです。アメリカ人の多くはレジデンシーの初年度に受験するようです。試験は 2
日間に渡って行われます。日本人では最も近いグアムで受験する人が多いそうです。合
格最低点は 190 です。
② USMLE の点数について
ここで STEP1 の点数について述べて行きます。まずは以下のグラフをご覧ください。
上記のグラフが示すように、2010 年時点では点数が 2-digit score と 3-digit score
mの 2 つの指標で表されていました。しかし 2015 年 3 月現在では 3-digit score のみ
の表記に変更されています。当時は 2-digit score で 99 を取ることが 1 つの指標にな
っていましたが、現在では 3-digit score のみの表記になってしまったため状況は変わ
ってしまいました。詳しい点数の付け方については一切公表されておりませんが表記さ
れるスコアは恐らく偏差値のような相対評価により決定されるものだと推察されます。
問題によって難易度が異なりますし、受験者によって解く問題も毎回異なります。恐ら
くブロック内の問題パターンは一緒です。つまり人によって解くブロックは異なります
が、もし同じブロックに当った場合にはそのブロック内の問題は全て一致すると思いま
す。そして、前ブロックの正答率によって次のブロックの難易度が決定されていると考
察しています。現実に 280 点台を取っている人がいる一方で、模試で 90%程度の正答
率をとっても 250 程度にしか満たないことを考えると、仮に同じような難易度の問題を
全員が解いているとした場合、280 のような高スコアは存在しえないのではないかと思
います。実際に米国の看護師試験である NCLEX では、途中経過の正答率によって出題
される問題が変化するとのことです。一般的に公表はされていませんが、USMLE でも
同様の形式が取られている可能性は高いと思います。また、322 問の中には採点されな
い問題もあると聞いたことがありますがこれも詳細は不明です。採点されない問題は試
験的に問題を解かせて今後実際に採点する問題としての精度が高いかどうかを見てい
るものと思われます。
合格最低点は 192 で、2010 年時点での合格率は以下の通りです。
受験者全体の合格率は 78%です。U.S./Canadian は 91%と高いのですが、日本人
を含めた International Medical Graduates(IMG)の合格率は 63%と低いです。海外に
はインド人を代表としてかなり優秀な受験生が多いことを考えると、日本の合格率は
63%より低いと考えるのが妥当でしょう。(個人的には、50%を下回っているのではな
いかと思っています。
)受験料が 1070 ドルと高額であり、受験にかける労力も相当なも
のであることを考慮すると記念受験をする人は少ないと考えられることに加えて、かつ
日本の中でも上位層が受けているのだろうと推察されますので、それでいてこのように
低い合格率だということは、日本人にとっては合格するだけでもある程度のステータス
になるのではないでしょうか。
最近(2015 年 9 月現在)ではスコアのインフレーションが顕著になってきています。
毎年平均点が 3 点~5 点くらい伸びている印象で、STEP1 の平均点も 230 くらいまで
伸びてきているようです。そのため、過去の 230 点と現在の 230 点を単純比較できる
のかという問題になりますが、採点方法が公表されていないのでそれも不明です。ただ
一つ言えるのは 2 digit score があった昔のように 99 という皆が掲げるような目標が今
は無くなってしまったということです。230 や 240 を目標にしている人が多いようです
が、これらも結局その時点での相対評価でしかなく昔のように 99 を取れば 99ers と崇
められていた時代は終わりました。そうであっても高得点をとるにこしたことはなく、
230 が一つの基準になることが多いようですので、高得点を目指す方はやはり 230 や
240 を目標されてみてはいかがでしょうか。あと、これは私見ですが、高得点を意識し
すぎて受験に踏み込めない方が多くなってきた気がします。これはマニュアルの副作用
とも言えるかもしれませんが、多くの方が高得点を目指す一方で、高得点をとったとこ
ろで臨床留学は保証されません。むしろ推薦書など他に重要な要素がたくさんあります。
またフェローで行く場合には点数は大事ではありません。そのように USMLE の点数は
たった 1 つのファクターでしかないため、いつまでも準備をするよりも思い切って受験
をし、次のステップに行かれてみてはいかがでしょうか。人間万事塞翁が馬。将来何が
あるか分かりません。思いっきり準備したら思い切って受験してみてください。
~USMLE
STEP1 受験方法~
・まえがき
ここでは USMLE
STEP1 の受験方法を記します。受験の申し込みから、受験完了まで
の流れを順序立てて説明していきます。試験を臨むに当たり、この受験の申し込みがやや
複雑であるため、多くの受験生の大きなハードルとなっているようです。しかし、申し込
みに手間取り勉強時間が削られているのでは非常にもったいないので、スムーズに受験で
きるよう誘導していきます。尚、ここでの説明は個人的な体験を基にしているため、これ
が唯一の方法とは言えません。今後、申し込み方法等の手段も変更する可能性があります
ので、受験される方は各自インターネットで変更点等を調べることをおススメします。ま
た医学生と、卒業生で申し込み方法が異なる部分があるので必要な部分は 2 つに分けて説
明します。
最初に概要を説明します。USMLE は3ヶ月単位で受験日を決定して受験できます。例
えば、1-2-3月、2-3-4月のように受験期間を希望でき、その期間内で希望日を
決定します。全体の流れは、オンラインでのアカウント作成、書類の記入、学務課を通し
た医学部長のサイン、郵送、書類審査、受験日決定となっていますが、順調にいっても受
験日決定までに1カ月程度かかります。また書類審査は、自分の希望する3ヶ月単位の最
初の24日以内に終わらせる必要があります。例えば、オンラインでアカウントを作る際
に1-2-3月での受験を希望した場合、1月24日までに書類審査を通過する必要があ
るようです。これを過ぎてしまうと、自動的に2-3-4月になってしまいます。指定し
た受験期間内では、一度だけ受験日の変更が可能なようです。
① ECFMG でのアカウントの作成
受験申込の第1歩目はオンライン上でのアカウントの作成です。ここは医学生と卒業生
と大きな違いはないと思います。ECFMG(http://www.ecfmg.org/)にアクセスし、
IWA/Apply for examination から情報を入力して ID を作成していきます。(IWA のペ
ージの一番下からアカウント作成にアクセスできます。)ここで、受験希望期間3カ月
を決定します。入力の際に、特につまずき易い注意点を以下に示します。
(ECFMG と
は Educational Commission for Foreign Medical Graduates の略です。外国医学部出
身者がアメリカ国内で医療を行うための資格を認可する機関だと思います。
)
A:住所
山形大学医学部の住所を英語表記で例示します。
日本語:山形市飯田西 2-2-2
英語:2-2-2-(アパートであればここに部屋番号)iidanishi yamagata-city JAPAN
これで十分でしょう。Zip code とあれば郵便番号を記入してください。
B:電話番号
さ す が に 大 丈 夫 だ と は 思 い ま す が 電 話 番 号 は 090-1234-5678 の 場 合 で は 、
81-90-1234-5678 となります。090 や 023 の市外局番の最初数字である 0 を省略するこ
とに注意しましょう。81 は日本の国番号ですね。
C: dates of attendance の title of medical degree(非常に重要!)
ここには「Igaku(Bachelor of Medicine)」と記入してください。
「Medical Doctor(MD)」
と記入してしまう人が多いのですが、このままだと書類審査で確実に reject されますの
で注意しましょう。
D:clinical clerkships
この欄には何も記入しなくていいそうです。
上記に注意をしながら登録を完了すると、web 審査があり3日後くらいに USMLE
のサイトにログインするための ID が発行されます。稀に ID がいつまでも届かないこ
とがあるようです。その場合は腹をくくって ECFMG(215)386-5900 に電話するしかな
いです。
② 受験の申込・支払
ID 発効後、IWA から ID を使って log in します。するとさらに情報を入力していく
ことになりますがここで受験料の支払いがあります。受験料と書類の郵送料で合計
1220 ドルです。高いです。申し込んでしまえばもう後には引けません。勇気を出して
支払ってしまいましょう。支払うことで USMLE 受験にかなりの現実感が出てきますの
で、やる気が上がること間違いなしです。入力の途中で「あなたの大学は IMED に加
盟しているか?」という質問がありますが、IMED(International Medical Education
Directory)に加盟しているかどうかは https://imed.faimer.org/で確認できます。山形大
学は加盟されているのでご安心を。以上で申込み・支払は完了です。これだけでも大変
な労力ですね。
*2023 年問題について
みなさんは ECFMG の 2023 年問題について聞いたことがありますか?恐らく皆さん
の大学でも徐々に実習期間が長期化し、それに伴い座学期間が短くなりタイトなスケジ
ュールになってきているものと思います。それは大学がただ学生をいじめようとしてい
るわけではなくこの 2023 年問題が関係しているのです。それは ECFMG が 2023 年以
降に医学部を卒業する USMLE 受験生はある一定の基準を満たした大学を卒業してい
なければ受験資格を得ることができなくなるというものです。2015 年現在では、日本
のどの医学部を卒業または所属していても自動的に USMLE の受験資格を得ることが
できますが 2023 年以降では基準を満たした医学部を卒業した者しか受験資格を得るこ
とができません。ECFMG が世界の医学部に課している基準の 1 つが「実習時間が 60
週以上であること」なのです。この基準を満たすためには現在の実習期間をかなり延長
する必要があり、早速山形大学ではそれを実現し、実習が大学 4 年の 10 月から始まる
ようにました。ただやみくもに長期化することに意味はありませんし、延長した以上は
それが充実するように各大学が努力する必要がありますが、この延長傾向にはこのよう
なバックグランドがあることを知っていただき、かつ日本の医学部教育が USMLE の影
響を受けているということを理解して頂けたらと思います。
③ 書類審査
オンラインでの受験申込みが完了すると、次に書類をアメリカに送らなければなりま
せん。オンラインでの手続きが完了すると、郵送するための Form を見ることができる
ようになるので、これをプリントアウトします。ここは医学生と卒業生で提出すべき
Form が異なるので分けて説明します。
A:医学生の場合
ここで数種類の Form が表示されますが、郵送するのは Form183 だけで大丈夫なよう
です。
(少なくとも山形大学は。
)Form186 を郵送する方もいるようです。よく分かり
ませんが、僕は 183 だけで大丈夫でした。Form186 だけで受理される人もいるので、
結局はどちらを郵送しても問題無いのでしょうか。Form183 に自分で記入すべき内容
は、自分のサインと日付です。これに写真を貼るだけです。スーツ姿が無難でしょうか。
無理に写真欄に合わせたサイズの写真を貼る必要はないようです。記入をする時に特に
気を付けることはありませんが以下のサンプルを参考にしてください。
ペンの色は青でなければならないという噂がありますが黒でも大丈夫でした。記入後に
は学務課の担当者に提出してください。提出後、学務課を通して学部長のサインをもら
い、学校側から直接書類を郵送してもらいます。提出から郵送まで、郵送期間を考慮す
るとこれだけでも 1 週間はかかります。郵送後 4~5 日すると ECFMG から以下のよう
なメールが届きます。
We are pleased to confirm that your Certification of Identification Form (Form 186)
has been received by ECFMG. Your USMLE/ECFMG Identification Number is
listed in the Subject line of this message. You must use this number in all
communications with ECFMG.
ECFMG typically processes on-line USMLE applications within 3 weeks of receipt of
both the on-line part and the Certification of Identification Form (Form 186). You
may track the status of your application by using ECFMG's On-line Applicant
Status and Information System (OASIS). Access OASIS on the ECFMG website at
oasis.ecfmg.org.
内容は恐らく「オンラインの情報と書類を 3 週間以内に手続きするので、随時 OASIS
で処理状況を確認してください。」といった感じでしょう。その後以下のような内容の
メールが届くと思います。
Your Certification of Identification Form submitted 09/14/2010 has been accepted.
This form will remain on file and be valid for a period of five years. The validity
dates are as follows: 10/12/2010 through 10/12/2015
The Certification of Identification Form is processed independently of the on-line
application. Acceptance of the Certification of Identification Form does not
automatically guarantee acceptance of the application. Once your application has
been reviewed, ECFMG will notify you of the outcome of your application.
これに加えて以下のメールも届きます。
The processing of your USMLE Step 1 application is complete. You have been
registered for the Oct 01, 2010 - Dec 31, 2010 eligibility period in the Japan testing
region. ** Please see BELOW for details on the option to submit a request to have
the exam results for this Step 1 withheld from your medical school**
これで受験の申込が完了となります。(受験日の決定はまだですよ。)このやりとりに
かかる期間はかなり個人差があるようです。僕は書類が届いたというメールが来てから、
申込が完全に受理されるまで丸1ヵ月かかりました。年末年始を挟んだことであちらの
方々の処理が遅れたせいか、全然メール来なかったためかなり焦りました。Reject され
るのだけは勘弁してほしかったので、Accept された時は本当に安心しました。
OASIS では以下のように表示されるようになります。
USMLE Exams
Your Most Recent USMLE Step 1 Application
Date Received:
Processing Status:
Date Accepted:
Eligibility Period:
Testing Region:
Scheduling Permit Sent:
06 Dec 2010
Accepted
11 Jan 2011
01 Mar 2011 - 31 May 2011
Japan
19 Jan 2011
手続き処理中では Processing Status の欄が In Process になっています。
B:卒業生の場合
既に医学部を卒業している場合は提出する Form や資料を多くやや煩雑になります。
提出すべき Form は Form186,187,344,345 です。もし既に学生時代に何らかの STEP
受験済みであり、卒業後に違う STEP を受験する場合には Form186(恐らく学生時代
には Form183 または 186 のいずれかを提出)の提出は必要ありません。また卒業生は
上記の Form に加えて、その他提出すべき資料を列挙すると以下のようになります。
*学位記:これは原本のコピーをレターサイズで印刷しないといけません。これが非常に
面倒くさいです。レターサイズとはアメリカの公的な書類に適用される紙のサイズですが、
日本では一般的ではありませんので一般のコピー機では対応できませんし、仮に対応して
いたとしても肝心のレターサイズの紙がありません。僕も困り果てたので近所の某印刷会
社に行き対応していただきました。と言っても完全にお任せしたわけではなく、カッター
と定規をもらって自分で大きな紙をレターサイズにカットしたのですが(笑)。
*学位記の逐語訳:今なら学位記の英語訳は卒業時に日本語版と一緒にもらえる大学が多
いのではないでしょうか。ポイントは学位記の記載内容を英語に直訳してあることです。
要約ではダメと聞きました。もらってない方は学務課にお願いしましょう。
*成績証明(英語)
:これは学務課にお任せでいいです。
*Form344(ECFMG Medical Education Credentials Submission Form)
:ECFMG のホ
ームページから PDF に保存できます。A4 に印刷し、空欄を全部手書きで埋めます。
*Form345(the Medical School Release Request)
:同上。
*Form 187(IWA Document Submission Form)
:同上。
*Form 186:既に学生時代にいずれかの STEP を受験し、その際に Form186 を提出して
いる場合は今回は提出する必要はないです。これも ECFMG のアカウントを作成し終わる
と最後のページで印刷できるようになります。顔写真貼り学務課に提出します。
*カラー顔写真:さらにもう 1 枚の顔写真が必要です。
④ 受験日の決定
書類審査が終了したという内容のメールが届いてから1~3日以内に、
Your
STEP 1 SCHEDULING PERMIT IS NOW AVAILABLE on the ECFMG
Interactive Web Application (IWA) website.
YOU MUST PRINT YOUR SCHEDULING PERMIT AND BRING IT WITH YOU
TO THE TEST CENTER ON YOUR SCHEDULED DATE. You will not be able to
take the test if you do not bring your Scheduling Permit to the test center. Note: You
will NOT receive an orange Scheduling Permit for this exam in the mail.
To access your Scheduling Permit, go to IWA at https://iwa2.ecfmg.org, login, and
select "Print/Reprint your USMLE Step 1 Scheduling Permit." Your permit will open
in a new browser window. Use your browser's "Print" function to print the permit.
というメールが届きます。
受験日を決定するためには、Prometric という機関を通じて申し込みをする必要があ
ります。Prometric は、米国の認定試験(USMLE を含めた)を実施する企業のようで
す。ECFMG や NBME のような USMLE を主催する機関が、試験の運営業務を
Prometric に委託しているようです。上記のメールでは、IWA で Scheduling Permit
が発行されたという内容がありますので、IWA にアクセスし Scheduling Permit を確
認してください。Prometric のページ(http://www.prometric-jp.com/)にアクセスし受験
日を決定する時に、Permit に記載されている Number を使うことになります。
Prometric のページは殆ど日本語表記ですので対応に困ることは少ないと思います。
Prometric のサイトでは受験する試験を USMLE
STEP1 と選択して登録を進めて
いきます。試験名が USMLE STEP1 ではなく「STEP1」とだけ記載されていること
もあります。受験会場は東京2か所(南麻布・御茶ノ水)、大阪1か所(中津)です。
以前は茅場町で受験できましたが、御茶ノ水に変更になりました。お勧めは御茶ノ水で
す。受験会場も広いし快適でアクセスもとてもいいです。最初のアカウント作成時に選
択した受験期間3ヶ月間の中から受験日を決定します。基本的に平日、祝祭日を問わず
開催されているようですが空いている席(日数)が少ないです。僕は受験3カ月以上前
に受験日を決めましたが、その時には南麻布は3カ月間で0日、茅場町で5~10日し
か予約可能な日がありませんでした。大阪も茅場町と同程度だったと思います。試験が
近付くにつれ予約可能な日数は増えていきますが、必ずしも自分の希望日に受験の予約
ができるとは限りませんし、試験5日前までなら無料で試験日を変更できるのでとりあ
えずは事前に予約しておきましょう。
試験の申し込みから受験日の決定の流れは以上のようになります。申し込み全体の工
程で最低1カ月は費やすと思うので早めの行動が大切です。
⑤ 試験会場に関すること(茅場町の場合)*参考:2015 年 9 月現在は茅場町では受験で
きません。
ここでは試験に臨むにあたり、試験の会場での注意点等を説明していきます。僕は茅
場町で受験したため、他の試験会場のことは分かりませんのでご了承ください。茅場町
では、茅場町センター15F が試験会場となっています。茅場町は東京駅からも近く、
地下鉄「茅場町」駅もあるのでアクセスに困ることはありません。茅場町センターは茅
場町駅から徒歩5~10分の距離にあります。
ホテルに関してですが、ご存知の通り USMLE STEP1 は試験時間が7時間(チュー
トリアルと休憩を含めると8時間)と長く、かなりの体力を要求される試験であるため、
前日から試験会場に近いホテルに泊まり、当日に公共交通機関など使わずに徒歩でいけ
るようにしておいたほうが無駄な体力使わずに済みます。そのため、茅場町周辺(現在
であれば御茶ノ水周辺)のホテルを予約しておくといいでしょう。僕は試験会場から徒
歩5分のホテルに3日前から泊まりました。
試験当日に必要な持ち物は以下のようになっています。
・パスポート(自分の名前が英語表記で記載されているものなのでパスポートが無難で
しょう)
・Scheduling Permit:プリントアウトして持参しましょう。
・Confirmation Number:Prometric で受験日を決定した時に発行されるはずです。
・耳栓:必須ではありませんがあると役立ちます。試験会場には USMLE 以外の試験の
受験者が多数います。USMLE の受験者は少数だと思います。試験中に周囲には他の試
験を受けている方がいます。試験によっては、タイピングをする試験もあるようなので
場合によっては周囲の音が気になるかもしれません。なので、耳栓を使ったほうが安心
して試験に臨めます。耳栓は会場で貸出してくれるという話を聞いたことがありますが、
持参したほうが無難です。
・飲食物:試験室には持ち込めませんが、控室で昼食をとり、飲み物を飲むことになり
ます。ただでさえ少ない休憩時間を使って買い物に行くことは不可能なので試験会場に
到着する前に買っておきましょう。
試験会場に到着すると受付の方が対応してくれるのでそれに従いましょう。もちろん
日本語です。荷物は殆どロッカーにしまう必要があるので、試験室に持ち込めるものは
パスポートと耳栓、ロッカーの鍵だけです。ロッカー荷物を収納後、呼ばれるまで試験
控室で待機します。試験開始時間は9時となっていますが、実際には試験の準備ができ
次第開始することになることが多いようです。僕は8時40分には開始しました。控室
と試験室の間にもう一部屋あります。この部屋では最初に顔写真を撮られ、試験中の計
算やメモに使う為のホワイトボードとペンを受け取ります。また、入退室の際には毎回、
記帳に自分のサインをし、ボディーチェックを受けます。休憩毎にこれがあるため、こ
の作業に時間を取られトイレに行って帰ってくるだけでも5分以上費やします。余談で
すが、僕は当日ポケットが7つもあるズボンを履いていたためボディーチェックが面倒
なことになりました(笑)
。そして、いよいよ試験室へ。試験室は各ブースで仕切られ
ており、周りの受験生は視界に入らないようになっています。耳栓をし、ヘッドホンを
すると周囲の音は完全に遮断されます。
(別章に記載しましたが、USMLE では Audio
を使った問題が出題されます。例えば心雑音などです。そのため、ヘッドホンをしなが
ら受験することになります。
)最後に Scheduling Permit に記載されている Candidate
Identification Number(CIN)を打ち込むと試験開始です。ここまで本当にお疲れ様でし
た。皆さんの健闘を心よりお祈りします!
~医学英語を学ぶ意義について~
ここでは医学英語を学ぶ(USMLE を受験する)意義またはメリットについて僕個人
の意見を述べていきます。もちろん人それぞれ目的が異なると思いますので A:臨床留学
を目指す人用、B:それ以外の人用(こちらがメインです。具体的には、これから医学英
語を学ぼうと志している3~6年生を対象にしています。特に STEP1 を勉強すること
の意義について詳しく書きます。大学生活を送る中で、何かに力を入れたいがまだそれ
が見つからない人にも見ていただきたいです。)の二つに分けて述べていきます。
A:臨床留学を目指す人向け
当然ですが、USMLE を受ける目的は臨床留学するためです。
臨床留学に必要な最低条件は、USMLE STEP1,2CK,CS の取得です。STEP1(2 か
ら受けてもよい。)の合格から7年以内に全てを取る必要があります。これ以降、さら
に臨床留学に関する情報を紹介していきますが、マニュアルを書いている時点で僕自身
が留学を経験しているわけではないのでこれらの情報は参考程度に留めておいてくだ
さい。臨床留学には USMLE に合格することが必須ですが、必要なものはそれだけでは
ありませんし、どのように留学するかによって必要なものも変わってきます。人気病院
のプログラムにレジデントとして参加するには USMLE での高得点のほかに、名の知れ
たアメリカ人医師の推薦書が必要になる一方で、フェローとして留学する場合には点数
は全く重要ではないようです。いずれにせよ高得点を取ることにこしたことはありませ
んが、留学にもさまざまな形がありますし、海外で活躍されている先生が必ずしも高得
点を取ったから留学できたわけではないようなので、高得点を狙いすぎて受験を躊躇す
うよりは合格できそうな時期に思い切って受験してしまうほうがいいような気がしま
す。また日本とは異なり、米国では全員が自分の希望科に進むことはできません。人気
科毎にマッチに必要な USMLE の得点が異なります。参考として 2010 年時点でのマッ
チするために目安となる点数(STEP1)を科別に載せておきます。
B:これから医学英語の勉強を始める人向け(重要)
医学英語を勉強する方が必ずしも USMLE の合格を目指しているわけではありま
せん。USMLE 合格以外に医学英語(ここでは特に USMLE を勉強すること)を勉強
する意義とはなんでしょうか?ここでは僕は大学 3 年生の時に医学英語の勉強を始め、
STEP2CS に合格して ECFMG certificate を取得するまでに気付いたその意義を述べて
いきたいと思います。
メリットだと思われるものを箇条書きにして、それに対してコメントしていきます。
1、 医師にとって不可欠な医学英語を学生のうちから効率よく学べること
これは当然でしょう。医師になれば、論文を読む・書く、文献を探す等の能力が必
須となります。医学英語を苦手とした状態で医師となれば、診療を行う上で「英語」
が大きな障壁となる可能性があります。では日々忙しい医師になってから英語を学ぶ
よりも、自由時間のたっぷりある学生の間に学んでおくほうが断然効率的です。僕は
英語が大の苦手でした。(体験談でも書いていますが、現役時のセンター英語は 120
点未満でした(笑)
。また僕は昔から優秀な生徒だったわけではありません。2 年時
のウイルス学で下位 10%に入ったこともあるくらいです。)そのため、3 年生の初め
に病理学の Robbins(問題集)を始めた当初はかなり苦労した覚えがあります。1 問
に 1~2 時間も費やしていました。しかし、努力と継続の甲斐もあり、読んだり、解
いたりするスピードは徐々に上がっていきました。そして、STEP1 本番が近付いて
きた 5 年生の終わり頃、あることに気付きました。いつもようにオンラインの問題集
を解いていた時、知らない単語に出会いました。そして、それを当然のように「英語」
でネット検索している自分に気がついたのです。思い返すと以前は、問題集で知らな
い単語や疾患が出てきても日本語に変換して検索していました。しかし勉強を繰り返
す中で、インターネットという膨大な情報の中でも、英語によって書かれた情報の占
める割合は日本語のそれに比べて遥かに多いことに自然に気付きました。そのため、
未知のものに出会った時に英語で検索する癖が付いていたのです。何と、一緒に勉強
会をしていたメンバーも同様に英語で検索する癖を身につけていました。これは大い
に役立ちました。医学論文の殆どは英語で書かれていますし、何よりネット上の情報
の 80%以上が英語だそうです。医師になった今も診療で迷った際には色々とネットで
調べものをしますが、その場合も情報の多くは英語で書かれています。それをわずら
わしく思わなくなったのは学生時代から医学英語に触れていたおかげでしょう。
2、 医学をより深く理解できる
医師になってから過去を振り返り、つくづく思うのは医学的な問題を考える際に病
態生理から考えるくせがついているということです。これは間違いなく USMLE を学
んだことによる結果でしょう。日本の国家試験も徐々に変わりつつありますが、まだ
まだ深い知識を問う問題が少なく、重箱の隅をつつくような問題も散見されるようで
す。STEP1 では病態の構造を如何に理解しているかということが問われます。その
ため、STEP1 を勉強することが基礎医学の土台作りに直結するのです。かなり深く
て正確な理解を求めてきますので、これに立ち向かうことで相当な基礎力が付きます。
日本の医学教育を受けた人の中には「橋本病の合併症:乳漏症・無月経」のように
単純暗記している人がいるようです。実際に国家試験や CBT ではこのような知識で
も対応できること場合があります。しかしその病態生理を問われた場合に正確かつ端
的に答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。その反面、STEP1 ではそ
の病態生理こそが問われます。
(一応解説:甲状腺ホルモンが減少すると TRH や TSH
に対する Negative Feedback が外れ、TRH↑、TSH↑となります。TRH は TSH 以
外に Prolactin の分泌を促すため Prolactin↑となり、Prolactin の乳汁産生作用によ
り乳漏症となるわけです。
また Prolactin は GnRH の分泌を抑制します。よって GnRH
↓、LH↓ ,FSH↓となります。LH サージが無ければ排卵できません。このように甲
状腺機能低下が無月経を引き起こすと説明できます。
)
基礎をしっかり身に着けていれば自然と応用が効きます。多くの方が USMLE と日
本の国家試験は別物と考えているようです。しかし実際には大部分が重なりあってい
ますし、USMLE を勉強することで国家試験の対策になります。実際に僕は学生時代
には殆ど日本の試験に特化して勉強はしませんでした。しかし卒業試験の勉強はしっ
かりしましたし、必修と公衆衛生、産婦人科だけはクエスチョンバンクをしっかり解
きました。その程度の準備でしたが、模試でも常に上位でしたし本番でも全体で 8 割
後半の得点率でした。
最近では山形大学では USMLE に合格することが卒業判定にも
影響するようになってきています。つまり USMLE を勉強することは国家試験や大学
の卒業の妨げになるどころか、その近道にすらなり得るのです。
3、 客観的な評価を得ることができる
これも重要なことです。医学生は 6 年生の夏に研修病院を決めるためにマッチング
なるものを受けます。マッチングでは筆記試験や面接、小論を課されます。大事なこ
とは病院のニーズと学生のニーズがマッチすることなので、必ずしも成績の良い人が
人気のある病院にマッチするわけではありません。病院が学業面において最も懸念し
ていることはマッチした後に国家試験に落ちたり、留年してしまいその枠が一つ空い
てしまうことです。そのため USMLE に合格しているという事実は病院側を安心させ
る要素となります。
また肩書きの重要性を否定する人がいますが、僕は正直、肩書きは非常に重要だと
思っています。例え同じ発言であってもそれを発言する人によってその言葉の持つ重
要性が大きく異なります。アメリカの国家試験に合格していることを自慢して大きな
顔をしているのは問題外ですが、やはり世間の目は変わるものです。そういう人こそ
謙虚になる必要性があり、まさに「実るほどこうべを垂れる稲穂かな」ですが、それ
は置いておいて良くも悪くも世間からの評価を得ることになります。
4、 そこに出逢いがある
これから医学英語の勉強を始める方には、勉強会をお勧めします。大きな目標を達
成する上で最も大事なことは「継続力」です。大事なことなのでもう一回言います。
「継続」が何より大事なのです。僕は今までに数十人もの USMLE 受験生に直接アド
バイスをしてきました。合格した人とそうでない人の違いは、結局最後までやり遂げ
ることができたかどうかだけです。
「USMLE はごく一部の優秀な人が受けるものだ」
と勘違いしている人が多いようですが、実際には違います。山形大学のような地方国
立大学の中でも成績が中くらいだった人が 1 年弱の勉強で危なげなく合格していま
す。
僕は今まで USMLE を勉強・指導してくる中で様々な出会いがありました。その一
つが勉強会です。一人でやり遂げる方もいらっしゃいますが、勉強開始時は中々ペー
スがつかめず、色々と不安になるものです。そこで勉強会が役に立ちます。勉強会を
することで勉強のペースが作られますし責任感も出るので継続せざるを得なくなり
ます。しばらくすると自分自身で勉強のペースができてくるので最終的には勉強会は
いらなくなることが多いのですが、勉強を継続することが不安な方には勉強をおすす
めします。今でも勉強会のメンバーとはやりとりをしています。
また臨床留学を目指すような志の高い全国の友人と知りあうことができるかもし
れません。僕も様々な出会いがありました。努力をしていればおのずと道は開かれて
いくものだなと思います。
5、 とにかくかっこいい
これは3の「客観的な評価を得る」ことに似ています。今まで色々なメリットを説
明してきましたが、USMLE を受験する醍醐味に「合格した時のかっこよさ」を忘れ
てはいけません。
「アメリカの医師国家試験に合格した。」なんて言ってみたいじゃないですか。僕
もそのカッコよさを求めて勉強を開始した部分が大きいです。きっかけは何でもいい
です。どんなに俗な理由で開始したとしても、努力をしていく過程で気持ちに変化が
生まれるものです。
6、 その他のメリット
他にもたくさんのメリットがありますが、かなり個人的な体験が絡んでくるため、
残りは「体験談」の章に書くとします。
7、 デメリット???
ここまでメリットについて書いてきましたが、果たしてデメリットはあるのか。個
人の捉え方次第ですが、例えば部活や遊ぶ時間が削られることをデメリットと捉える
人もいます。
僕個人の考え方ですが、正直物事に良いも悪いもないと思うんです。つまり森羅
万象全てがニュートラル。その物事に僕らが意味づけをしているだけです。受験に失
敗した。それは悪いことでしょうか。いえ、もしかしたら失敗して入った大学で掛け
替えのないで出会いがあるかもしれない。では、受験失敗は良いことでしょうか。い
え、出会った人に裏切られてしまうかもしれない。つまり、僕たちはその時々で起き
た出来事に意味づけをしているだけなのです。人間万事塞翁が馬という言葉をご存じ
でしょうか?これはいちいち一喜一憂せずに、今やるべきことに集中しなさいという
意味です。USMLE を勉強することをいいことだと思えばいいこと、悪いことだと思
えば悪いことになります。大事なことは今自分が本当にやりたいことは何か、何をす
ることでより幸せになれるか、そしてその目標達成のために今何ができるかというこ
とです。僕にとってはつらい勉強も良いことでした。皆さんはどうとらえますか?
~USMLE STEP1 勉強方法の提案~
・まえがき
ここでは主に山形大学医学部の 3~6 年生に向けた勉強方法・計画の提案をしていきます
が、山大以外の方でも活用できるに説明していきます。医学英語を始める時期・各個人の
目標によって教材の選び方から、問題量、ゴールの時期等全て異なってくると思うので、
ここでは開始する学年毎に分けて説明していきますが、どの学年を対象にした説明も相互
に関係し合い重なり合う部分が多く、完全にクリアカットには説明できないので全ての文
章に目を通してもらったほうが良いです。また、各教科書や問題集の詳細については章を
変えて説明します。
注:どんな場合であっても、大学の授業を疎かにしてはいけません。大学の授業を聞かず、
USMLE に力を入れている人が散見されますが、大学の勉強は大切にしてください。
① 2~3 年生から開始
山形大学に限定されますが、
北中先生からの薦めで、3 年生から病理学の問題集「Robbins」
を始める人が多いです。僕自身も 3 年生から Robbins を始めることには賛成です。
その理由は Robbins のとっつきやすさにあります。USMLE 合格を目指し、最初から
FIRST AID Q&A(以下 Q&A)を始めたい気持ちになるとは思いますが、基礎医学を終え
たばかりの 3 年生には正直難易度が高く、面を喰らってしまうことが多いようです。
Robbins は病理学の問題集であって、病理学は基礎医学と臨床医学をつなぐような位置にあ
り、内科学と共通する部分が多いため初学者にはとっつきやすいと思います。また、Robbins
は「全身」と「臓器別」と大きく二つのパートに分かれています。山大の 3 年では授業が
器官コース別に行われるため、これに合わせて Robbins を臓器別に解きすすめていくこと
をお勧めしています。3 年生から Robbins を始める方は、ポリクリ前までに 1 周終わらせ
ることを目標するといいでしょう。1 周終えた頃には、かなり医学英語にも慣れ、病理の力
もついていることでしょう。最初は 1 問に 1~2 時間かけてもかまいません。継続していけ
れば、徐々にペースがつかめてきます。僕は最終的に 1 問に費やす時間が 5 分弱になりま
した。
では、
Robbins を始めることだけが正解かというと、そうではありません。人によっては、
Q&A から始めることが良い場合もあります。USMLE の合格を目指すには Q&A は避けて
通れない問題集である一方、Robbins は良書ですが必須ではありません。Q&A 以外にも必
須な問題集・参考書があることを考えるとなるべく早く Q&A を終わらせたいところです。
そのため問題が難しくても継続していける自信がある人、学力に自信がある人であれば最
初からこれを始めても問題ありません。難しいかもしれませんが、一周解き終えると全体
像が把握できるようになります。これも Robbins 同様 4 年のポリクリまでには終わらせた
いところです。
続いて問題集を利用した具体的な方法を説明します。Q&A を使う場合は、参考書である
FIRST AID(以下 FA)が必須です。本のタイトルを見れば一目瞭然ですが、問題集の FIRST
AID Q&A は参考書の FA に対応しています。FA 無しに USMLE は語れません。それ程定
評のある参考書であり、この内容を全部覚えれば合格はもちろんのこと、230 や 240 も取
れると思います。あくまでも FA は出題範囲全体を網羅している参考書であって読み物でも
ないので、一つ一つの疾患について深く知ることはできません。よって、FA 以外にも大学
の授業プリントや、日本の参考書を調べてみるのも有効な手です。また、Q&A は「基礎医
学」
、
「臓器別」で構成されています。基礎医学を終えたばかりの 3 年生では「基礎医学」
から始めたほうが入りやすいのかもしれませんし、3 年生の器官別コースに合わせて「臓器
別」から始めたほうがいいかもしれません。これは各自の判断にまかせます。話をまとめ
ますと、Q&A を解き、その問題で出てきた疾患や keyword を FA で調べる。そして、FA
に書いていない情報は FA の空いているスペースに書き込む。それでも、まだ全体像が掴め
ないときは他の参考書を読んだり、インターネットで調べてみる。これを何千回も繰り返
してください。解いた問題が 3000 問にも満たないのに、成果が上がらないことをなげくの
はナンセンスです。
Robbins の場合も同様です。問題を解いたら FA で調べてください。FA ではカバーでき
ない部分があると思いますので、その場合はあらゆる手を使って調べて、FA の余白に書き
込んでください。情報を 1 つに集約することはとても大切です。
問題を解き始めたばかりの段階では 1 問解くのに何十分も、人によっては 1 時間もかか
ってしまうかもしれません。でも心配しないでください。はいてます。は、冗談ですが、
慣れていくと徐々にそのスピードも上がっていきます。僕も最終的には 1 日に 120-150 問
程度は解けるようになりました。とにかく継続です。積み重ねることが唯一「とんでもな
くところ」へ辿りつく道だとイチロー選手も言っています。
追記:最近では Fire cracker という勉強アプリが流行っているようです。毎日のように宿
題が出され、それを繰り返し解きます。間違えた問題は後日再び出題されるようになって
おり、覚えるまで繰り返し解くことできます。週・月単位で購入可能であり、最近アメリ
カで高得点を取る人達の中で定評があるようです。僕の後輩でも 3 年生の時に 1 年間 Fire
cracker をやり通し 3 年生の後期には模試を受けて合格点を超えていた人もいました。これ
も結局やり通すことによってのみ力がついていきます。
Q&A を終えた方のそれ以降の勉強計画については「③5,6 年生から開始」を参照してく
だい。
② 4 年生から開始
基本的には 3 年生と変わりません。3 年生との違いは、勉強できる時間が限られている点
と、器官別コースが終わっているため全体像が把握できているという点です。ポリクリが
始まった時点で Q&A は開始していたいので、4 年生から Robbins を始めると中途半端にな
ってしまう可能性が高いです。もちろん全部終わらせる気合いのある方は別ですが。3 年生
と比べて時間が限られていることや、臨床的な知識を一通り学んでいることを考慮すると、
4 年生から開始する方は Q&A から始めたほうが良いのかもしれません。基礎医学から 1 年
以上も離れているので、最初から「基礎医学」のパートを始めるのは抵抗があるかもしれ
ません。そのため「臓器別」のパートから始めることお勧めします。FA を利用してくださ
い。目標はポリクリまで、または 4 年の間に Q&A を終わらせることにします。
③ 5,6 年生から開始
本格的な USMLE の勉強を始めるには、3~4 年を通して全体像を把握できてきた 5 年生
が最適です。受験する意思の有無に関係なく、まずは Q&A から開始してください。6 年生
から始める方も同様です。まずは Q&A です。半年から 1 年も集中して勉強すれば十分に合
格できるレベルまで到達が可能です。
さて、ここからの話は各個人の目標によって勉強計画が異なってきます。
A:在学中に 3-digit score:188(合格)~230 を目指す人
私見ですが、もちろん勉強開始時の個人の学力にもよりますが、STEP1 を合格するだけ
なら 1 年(実際には半年でも十分可能。最短だと一か月。
)あれば十分だと思いますし、下
記のものをこなすことができれば大半の人は合格できると思います。アメリカの医師国家
試験を聞いて、腰が引けてしまう人が多いと思いますが敵を知ることができれば恐れるに
足りません。目標を達成するために何をすべきかを知るだけで目標に大きく近づきます。
あなたも USMLE に合格することができます!さて、いざ受験をするとなると受験時期が
大事になってきます。個人的にお勧めなのは、5 年の夏・冬休み、6 年の春休み又はゴール
デンウィーク付近です。長期休暇を利用して受験前に集中的に仕上げていくためには上記
の日程がいいのでないでしょうか。今回は、4 年の 10 月に Q&A を開始し、5 年の 8 月に
受験する場合を想定してお話していきます。もちろん、それ以前に Q&A を終えている人は
以下にお勧めする勉強計画を各自のペースで早めてもらえばいいです。逆に、5 年後期や 6
年から開始する方は以下の学習計画を、期間を短くするか後ろにずらすしかないのでやや
タイトなスケジュールになります。
4 年 10 月~4 年 1 月:Q&A(約 1000 問)を終わらせる。Q&A が終了したら模試(NBME
がいい)を受けてみましょう。模試に関しては別章で説明します。この時点での点数は全
く気にする必要はありません。まだ合格ラインには達していないと思います。模試受験の
目的は現状の学力の把握と、その結果を後に受ける模試の結果と比較し、学力の伸びを確
認する材料にすること、そしてタイムマネージメントの難しさを認識することです。
4 年 2 月~5 年 7 月:USMLE WORLD(オンライン問題集:約 2100 問/以下 UW)を終了
させる。同時に BRS Behavioral science や Fire cracker を進めてもよいです。(BRS
Behavioral science は必修なので、好きな時期に終わらせてください。)UW が終了したら
また模試を受けてみましょう。点数が飛躍的に伸びていると思います。UW の学習方法は
まずは全問解き終えます。その中で間違えた問題と正解したけど良く分からなかった問題
にチェックをして、2 周目以降はそれらの問題を中心に復習していきます。2 周目以降でも
理解できなかった問題や間違えた問題にはチェックをして、最終的にチェックがついた問
題が無くなるまで復習を続けてください。復習後にまた模試です。また、この時期に受験
の手続きをしてしまいましょう。
5 年 8 月:UW の模試を受け、その復習をします。最後に USMLE のホームページで、無
料でダウンロードできるサンプル問題を解きます。そして、それを試験の 2 週間前までに
終わらせるようにスケジュールを組み、
ラスト 2 週間はひたすら FA を読み込んでください。
何度も何度も隅々まで読み込んでください。
以上です。これを全てこなすことができれば合格はほぼ確実でしょう。解く問題数は、
Q&A:1000 問+UW:2100 問+BRS Behavioral science:650 問+NBME3 回:200 問
×3+UW の模試 2 回:200 問×2+サンプル問題:150 問=4900 問くらいになります。
NBME の成績は、本番の成績を非常に正確に予測してくれることで有名です。NBME で
3-digit score:200 を超えていれば合格は確実だと思います。UW の模試は予想スコアが 10
~15 くらい高めに出ると言われています。なので、UW の 210~215 は NBME の 200 く
らいに相当すると考えましょう。
*以上の問題を解いても成績が伸びない方へ
同じ問題数をこなしても人によって成績の伸び方は大きく違います。自頭の良さの違いと
決めつけるのは危険です。今まで多くの方を指導してきましたが、成績が伸びない方の共
通点に、問題を淡々とこなすことはできても、問題で得た知識が定着していないことが挙
げられます。その原因に、各問題の出題の意図が理解できていないか、そもそもそんな問
題に出題の意図があることすら考えたことないことがあります。もし、皆さんが問題作成
を頼まれた場合にはどのようなことを考えて問題を作成しますか?そこにはみなさんのメ
ッセージがあると思います。どんな問題も人間が作った問題であり、あることを理解して
ほしいからその問題が作られています。USMLE のようによく作られた問題ならなおさら
です。単純暗記をするだけではなく、その問題の意図を考え、もし問題が少し変えられた
状態で出されても解答にたどり着けるように準備することが大切です。成績が伸びない方
は一度自分の勉強方法を見直す必要があると思います。
B:在学中に 3-digit score:230~250(昔の 2-digit score:99 に相当します。)を目指す人
以前は 230 以上(2-digit の 99 に相当)の点数は日本ではごく一部の人しか取れない高
得点でしたが、最近(2015 年現在)では平均点もインフレーションを起こし、僕が受験し
た時よりも 10 点くらい上がっており 230 点の希少性も薄れてしまいました。2-digit があ
った頃は、99 という点数が特別な意味を持っていましたが、3-digit だけになってしまった
今、特別な点数自体がなくなりました。点数が高い程いいことには変わりませんが、点数
の目標設定が難しくなっています。どうやら内科のレジデントであれば 230、外科のレジデ
ントであれば 240 程度とっていると書類で落とされるようなことはなさそうなので
230-240 あたりを目指すのは一つの指標になりそうです。この場合の受験の時期は 5 年の冬
休みを目標にします。
4 年 10 月~4 年 3 月:この期間に Q&A と USMLERx(UW と同様にオンライン問題集。
FA の会社が作っており、FA と完全対応している。約 3000 問。以下 Rx)を終わらせてく
ださい。Q&A 終了後に模試を受け、Rx 終了後にもう一度模試を受けてください。また是
非 Fire cracker を並行して勉強してください。
5 年 4 月~5 年 8 月:UW を全て解き、この期間内に復習も終わらせます。そして、BRS
Behavioral science もこの時期に終わらせます。可能であれば、BRS Biochemistry もやっ
てください。UW1 週目終了後と復習後に模試を受けてください。この時期に受験の手続き
をしてください。
5 年 9 月-12 月:余裕があれば Kaplan Qbank(オンライン問題集:約 2300 問/以下 Qbank)
をここで終わらせます。ここまでに上記のものをこなすことができた人ならこの短い期間
で Qbank を終わらせることができると思います。ちなみに僕は Qbank を 40 日で一周しま
した。Qbank 終了後にまた模試です。
5 年 1 月:直前はサンプル問題を解き、試験 2 週間前になったらひたすら FA を読み込んで
ください。
以上です。解くべき問題数は、先の 4900 問に加え、USMLERx:3000 問+Qbank:2300
問+BRS biochemistry:300 問=10500 問くらいになります。
NBME で 230 以上、UW の模試で 240 以上取れていれば十分に可能性があります。
・さらに具体的な勉強方法について
上記でも FA の使い方などをさらっと説明してきました。ここからはさらに具体的な勉方
法を提案していきます。
① FA の使い方
先にも述べましたが、大事なことなのでもう一度説明します。問題を解き進める過程で
知らない知識に幾度も遭遇していきます。そこで、その疾患名や keyword を利用して、FA
の中でその内容に該当する部分を探しだし、その該当箇所を読みます。次に、問題の解説
に書いてあることが FA に書いていない場合は、その不足している部分の知識を FA に書き
込みます。余白が無くなるくらいまでどんどん書き込んでください。ワンポイントアドバ
イスとして書き込む時には芯の細いボールペンで書き込むことをお勧めします。とにかく
いっぱい書き込むことになるので細いボールペンが重宝します。僕は 0,28mm のボールペ
ンを使っていました。また、FA に全く載っていないような疾患も問題集では出題されるこ
とがあります。その場合は、ノートを作ってそちらに書き込むか、FA の余白に書き込むか
どちらかでしょう。以下の僕の FA の一部を乗せておきます。参考にしてください。
こんな感じです。あとは自分にとってベストな書き方を追求していってください。
② まとめノートについて
STEP1 を勉強するにあたり、強調したいことの一つがまとめノートの作成です。まとめ
ノートが必要である理由は、FA には載っていない、または FA だけでは理解しにくい知識
が USMLE の問題集や本番では出題され、その知識をどこかにまとめておく必要があるた
めです。まとめノートを作ることで知識が整理されることが多いようです。
個人的には薬理学、生化学、解剖学はまとめノートを作るべきだと思っています。薬理
学も生化学も FA に多くの情報が載っていますが、自分自身でノートにまとめないと全体像
が把握しにくく理解するのが難しいことがあります。また解剖学は、その範囲がかなり広
く FA に載っていない知識が本番では多く出題されますので、それらはノートに図を書き込
んでいくのがいいと思います。ノートの作り方にルールはないので、自分にとって最も理
解しやすい形を追求してください。ノートのまとめ方の巧さは個人によって大きく差が出
てしまうと思いますが、その上達には長い経験が不可欠なのでこればかりは自分自身で模
索していくしかないです。これも僕のノートを例に載せておきます。僕のノートはメモリ
ーツリー(知らない人は自分で調べてみてください。)を意識して作っていることが多く、
人によっては見慣れないまとめ方かもしれません。色や図を多用したほうが記憶に定着し
やすいです。文章だけノートに書いてもあまり意味ないと思います。
こんな感じです。自分でノートに書くと全体像が見えて記憶に定着します。上記の中でも、
特に薬理学はメモリーツリーが役立ちました。
③ 勉強中に意識すること
かなり漠然としたタイトルですが、後輩より質問があったため説明することにしました。
最初に、一問あたりにどれだけの時間・労力を費やすか、という質問にお答えします。
もちろん、その人の実力や問題の難易度によって費やす時間・労力は毎回変わります。で
すが一つだけアドバイスするとすれば、一日に何問解くか予め決めておくとよいというこ
とです。これだけではよくわからないと思いますので詳しく説明します。
まず、受験を 100 日後に控えている人がいると仮定します。この人はこれから Kaplan
Qbank(2300 問)を解く予定とします。直前の 10 日間は FA の暗記のために空けておき
たいので、90 日間を費やすことになります。また、学校行事や部活もありますのでそのう
ち 20 日はろくに勉強することができないとします。すると 70 日間が Qbank に費やすこと
のできることになります。そして、一日の平均勉強時間を 6 時間と仮定しますと、2300÷
70÷6=5.476 問/時となりますね。つまり、勉強できる日は 1 時間あたり 5~6 問解いてい
ければ目標までに全ての問題を解き切ることができるわけです。この考え方は様々な場面
で応用できますので是非活用してみてください。
「ポリクリまでに Robbins を終わらせると
なると、1 問あたり何分くらいかければいいのか?」などは自分で計算することができると
思います。僕はこの考え方で計画し、多少のずれはありましたが殆ど全て計画的に終わら
せてきました。費やすべき時間が決まれば、そこで 1 問の問題にやり込む深さも自然と決
まります。1 問 10 分で終わらせたいのに変にこだわって、1 問に 1 時間もかけていたら本
末転倒ですよね。
次の質問です。どの段階で暗記していますか?わざわざ暗記の時間を取っているのか、
または繰り返しているうちに自然と頭に入っているのか?という質問です。
非常に答えるのが難しい質問ですが、問題を大量に解くことが実力をつけるために最重
要事項だと思います。これは自分の経験からも言えることですし、色々な掲示板で議論さ
れている中でも、高得点で受かっている人は、問題を大量に解くことが最も重要だと強調
しています。僕は問題を解きながら、そこで得た知識を一つずつ頭にいれていきました。
すると自然に頭に入ってくるものと、何度やっても頭に入ってこないものが存在すること
に気がつきました。これには個人差があると思います。何度やっても頭に入らないものと
いうのは、概して単純暗記に頼らざるを得ないものです。そこで各自の判断が大切になり
ます。それを覚えなければ次に進めないものはその場で何とか覚えようとします。直前に
詰め込めばいいものは、
「直前に頭に詰め込むリスト」を作り直前の 2 週間で繰り返し暗記
します。例えば、Histamine antagonist などは薬の名前に統一性がなく非常に覚えにくい
です。10 何種類もありますし。こういうものは直前に暗記します。反対に、ビタミンの働
きのように、これを覚えなければ欠乏時の症状も覚えにくいような場合は最初に働きを掴
むことに力をいれます。これも経験です。臨機応変に対応できるよう常に心がけることが
大事です。
質問にはありませんでしたが、もう一つ非常に大事なことがあります。それは、
「時間を
意識して問題を解きなさい」ということです。先に述べた一問あたりに何分費やすかとは
論点が異なります。
違う場所でも書きましたが、STEP1 は 1block 46 問/h×7block=322 問で構成されてい
ます。ここから分かることですが、1 問に費やすことができる時間は 78 秒です。これは想
像以上にきついです。高得点を取る上で最後の難関となるのが、時間との勝負です。一度
体験してみるとわかると思います。問題を読んで、考えて、選択肢を選ぶ。この一連の流
れを 78 秒で行うには、正確な知識はもちろん、英語の速読力が欠かすことができません。
そしてこの速読力は即座に身に付くものではありません。そのため、勉強開始当初から時
間を意識して問題を解く必要があります。
今日 10 問解く予定だとします。その時に 1 問解いては単語を調べて、解説を読み・・・
を繰り返すことはやめましょう。まずは、10 問一気に解いてください。ここでは、辞書な
しに時間を計って解きましょう。そして、かかった時間をどこかに記録しておいてくださ
い。最初は 1 問に何分かかって良いです。しかし、意識して問題を解いていく中で徐々に 1
問あたりにかける時間が少なくなっている自分に気がつくはずです。ある程度、勉強が進
んでくると、模試を受けることが一番のタイムプレッシャーの練習になります。
スピードの話はここまでにして、
次に 7 時間というクレイジーな試験時間についてです。
CBT の試験時間は 6 時間程ですが、CBT は USMLE に比べると格段に簡単な上、日本語
であるため時間が足らなくなることはまずありません。そして休憩時間も十分に確保され
ています。これとは対照的に USMLE は、時間は足らない、休憩時間は少ない、難しいと
いう三重苦です。すると、この長時間のテストに対抗できるだけの集中力が必要となって
きます。NBME などの模試は全て 4block で構成されているため費やす時間は 4~5 時間程
度です。これだけでも大変な集中力が必要ですが、本番はそれに 3 時間加わります。その
ため、5block 以降で集中力が激減したと証言する人がいます。つまり普通に模試を受ける
だけでは対策不足になり得ます。集中力持続対策として、僕らの勉強会のメンバーは模試
を 1 日に 2 連続で受けることにしました。NBME1(4 時間 20 分×2)=8 時間 40 分を連
続して受験しました。みなが満身創痍になるほど大変でしたが、これを乗り切ったことで
自分達の集中力に自信がつき、本番も全く集中力が途切れずに終わることができました。
これは非常に有効な試験対策になりますので、本番直前にチャレンジしてみることをお勧
めします。先に提案した学習計画の中で、2 連続模試を受けてみるのがいいと思います。
④ 学校の勉強のこと
上述しましたが大学の勉強は大切にしてください。大学で勉強した知識は意外にも
USMLE にも有効だったりします。学校の勉強をしっかりやっておけば日本の国家試験に
も十分対応できるようになると思います。学校の勉強をしっかりしてさえいれば、それ以
外の時間は心置き無く USMLE に集中できます。
定期試験の勉強方法は人それぞれなので、具体的な方法を指示するのは難しいですが、
敢えて言うなら過去問 3 年分だけじゃなく授業プリントもしっかり見たほうがいいと思い
ます。
~勉強会の活用方法~
「医学英語を学ぶ意義」の章で勉強会のススメを書きました。ここでは、その勉強会の
具体的な活用方法を紹介します。
僕自身が勉強会で使った教材は、Robbins→Q book なので Robbins を教材とした場合の
具体的な勉強方法の話をしていきます。
① メンバー集め
まず、近い目的意識を持ったメンバーを集めることから始まります。この時に仲良し同
士が集まっても意味がありません。
(これ大事ですよ。仲がいい=良い勉強会のメンバーと
はなりません。
)自分と考えが似ている人、信頼・尊敬できる人を目安に声をかけてみまし
ょう。僕が勉強会を始める時にメンバー選びで重視した点は、自分同等またそれ以上に勉
強ができて、部活やプライベートなどの面が充実している人を選ぶことでした。つまり、
頭でっかちじゃないバランスの取れた人を選んだということです。
② リーダーの決定と目標設定
メンバーが決まった後には、勉強会のリーダーを決めます。声掛けをした人がリーダー
になるのが筋でしょう。勉強会は一つの組織ですので、各個人に役割を持たせたほうがい
いです。そして、役割が決まった後に勉強会の目標(ゴール)を設定します。最初は大き
な目標じゃないほうがいいです。
「USMLE で 250 点取る」なんて大きな目標を設定した勉
強会にしてしまうと、99.9%の人が挫折してしまうでしょう。最初は「ポリクリが始まるま
でに Robbins または Q&A を終わらせる」なんて目標はいいのではないでしょうか。人間
は適度な難易度の課題を目標にした時にやる気がでるものです。簡単すぎたり、難しすぎ
ると必ず挫折します。リーダーの大事な役割は、メンバーの意見を傾聴し、無理の無いよ
うな勉強会全体の目標を設定することにあります。
目標が設定されると、設定した期間内に何回勉強会ができるかという計算をします。す
ると一回の勉強会でやる問題数、一人当たりの担当分が決まります。例を挙げると、ポリ
クリまでに 50 回勉強会ができると仮定した場合、1000 問の問題をこなすためには一回の
勉強会で 20 問こなす必要があります。勉強会のメンバーが 4 人だった場合では、一回の勉
強会あたり 1 人 5 問が担当となりますね。
③ プレゼンテーション資料の作成
実際の勉強会では各自で勉強してきたものを他のメンバーにプレゼンする必要がありま
す。そのため事前に自分でプレゼンテーション用の資料を作っておく必要があります。そ
の方法は自由ですが、英文の全訳を書き写す行為はお勧めしません。全訳は非常に効率が
悪く、得るものも少ないですし大変な負担がかかります。お勧めの方法としては、問題文
を自分で読みノートに要約する。そして、解説文を要約し他の参考書を引用してノートに
付け加える、といった方法でしょうか。例を紹介します。1,2 枚目が僕の勉強会第一回目
の資料です。残念ながら全訳どころか、英文まで書き写しています。当時は右も左も分か
らない状態でした。あまりに稚拙なのでここに載せることすらためらうほどです。1 枚目は
問題文の書き写し、和訳、単語訳で、2 枚目はその解説分書き写し、和訳、僕のひどい解説
で構成されています。
1 枚目
2 枚目
ひどすぎる!(笑)
続いて、勉強会も Qbook が終了目前に迫った時期(具体的には 5 年の秋です。)の資料を
紹介します。3 枚目は、僕の解説分です。もうこの時期には、英文の書き写しはもちろんの
こと、和訳もせず、もはや問題文は本文をコピーして渡していました。たまに難しい単語
にだけ和訳を入れ、それ以外は原文のまま読ませてその場で解かせていました。これでか
なり効率が上がりました。冷静に考えても、全訳は非効率的ですよね。4 枚目は、3 枚目と
同時期の谷内田さんの解説資料です。字が非常にきれいなことが個人的に envy なのは置い
ておいて、コンパクトにエッセンスがまとまっております。ここで分かるように、一つ一
つの問題には深入りせずにエッセンスだけを押さえて進んでいきました。
3 枚目
4 枚目
そして 4 枚目の資料を見て気付いた方もいると思いますが、解説資料には空欄が散見さ
れます。4 枚目の補足の下に。「CNS,精巣に播種しやすい。」とありますが、これは本来、
「
、
に播種しやすい。
」という形で、勉強会で配られました。このような空欄は
僕が提案したものなのですが、もう何度も出てきて常識になりつつある知識は穴埋め形式
にして、自分の記憶からアウトプットする練習にしよう、ということを目的としていまし
た。何度も出てきている知識でも、穴埋めのような形で出題されると意外と答えることが
できないものです。答えることができないと、頭の中に強く印象に残り記憶に定着してい
きます。これから勉強会を始める人たちも、是非「穴埋め形式」を採用してみてはいかが
でしょうか。でも、何でも穴埋めにすればいいってもんじゃありませんよ。先に進みませ
んからね。
④ 小テストのススメ
僕らの勉強会は Robbins に加えて 2 種類の小テストを行っていました。
一つ目は解剖トレーニングノートからの出題です。この参考書をご存じの方は多いと
思いますが、この本はかなり使えます。僕らはこの本で受験直前まで活用していました。
3 年生の時に、自分の解剖の知識の無さに気付いたため解剖学を何かしらの方法で学びた
いと感じていました。そこで思いついたのが、勉強会で解剖の小テストをすることです。
方法は、解剖トレーニングノートの中で出題範囲を決め(例えば、来週は「循環器」か
ら出題するとか。)、出題者を持ち回りにして、その週の担当者がその出題範囲から問題
を出します。以下に例を載せます。
ただ、穴埋めの部分を問題にするだけでなく、自分で問題をつけ足したりするのもおも
しろいと思います。点数が低かった人が点数高い人にジュースとかアイスをおごる等ル
ールを決めても良いと思います。
二つ目のテストは大学の授業からの出題です。Robbins の勉強ばかりを必死にやってい
ると、大学のテストは大丈夫かなという不安に駆られることがあると思います。それを
少しでも解消しようと発案されたのが、大学の授業 1 週間の中から小テストを作ること
でした。毎回、大学の授業から出題されるため否応なしに授業に集中することになりま
す。こうすることで、大学の授業にも対応していける形にしました。これも出題者を持
ち回りしています。しかし、これには多少欠点があります。負荷が大きいことです。た
だでさえ、Robbins と解剖だけでも大変なのに、この授業からの小テストは正直ヘビーで
した。最悪、出題者じゃない時は何も対策せずに小テストを受けて、そこで間違えて学
ぶことにしていました。正直きつかったです(笑)
。なので、もし時間的にも体力的にも
余裕がある場合に試してみてはいかがでしょうか?以下に参考を載せます。
⑤ 勉強会の行方
「さて、Robbins、Q&A(、Qbook)全て終わってしまいました。どうしましょう。
」
ここまで来たら、勉強する習慣が身についていると思います。後は自分達一人ひとり
でどんどん問題(ネット問題集など)を解き進めていってください。週に一度集まる
必要はありません。この段階に入るとメンバー同士の関係性が築かれてきていると思
います。たまに勉強の方向性について話し合ってみたり、進路のことを相談するなど
してみたらいかがですか。みんなで最後まで支えあって本番を迎えてください。そし
て、思いっきり打ち上げましょう。
~USMLE STEP1 の教材・模試等の紹介~
・まえがき
ここでは、USMLE STEP1 の受験に必要な教材や模試等を紹介していきます。これら
教材の紹介は僕の主観が大いに影響しています。自分が教材を選ぶ際にも、インターネッ
トで入念に調べて、十分に吟味してから購入していましたが、それでもやはりまだ偏りが
あるでしょう。なので、ここでの紹介は参考に留めておいて頂き、各自でよく吟味してか
ら教材を選択してください。例えば、昔は王道だった Kaplan Qbook や Qbank は今ではや
や時代遅れになっています。
とはいっても、以下の教材は僕が自信を持って紹介します。少なくとも王道から大きく
外れていることはないので安心してください。
① 実際に使用した教材
最初に僕が実際に使用した教材を以下に列挙します。必ずしも洋書ではありません。右
に使用した期間(本番は 2011.4.30 でした。)を付記します。途中で使うのを止めたものも
あります。順番は開始した時期が早いものほど上にしました。
・解剖トレーニングノート:2008.3~2011.4
・Robbins:2008.5~2010.3
・Year note:2009.9~2011.4
・FIRST AID 2009:2010.1~12
・FIRST AID Q&A:2010.1~7
・Kaplan Qbook:2010.1~10
・NBME self assessment(以下 NBME SA)6:2010.7
・LANGE Q&A:2010.8~12
・BRS Behavioral science:2010.8~2011.4
・USMLE WORLD:2010.9~2011.1
・Lippincott Biochemistry(日本語版)
:2010.9~10
・NBME SA 1:2010.9
・Clinical Microbiology Made Ridiculously Simple:2010.10
・NBME SA 2:2010.12
・FIRST AID 2011:2011.1~4
・USMLE WORLD self assessment 1(以下 UWSA):2011.2
・Kaplan Qbank :2011.2~2011.4
・BRS Biochemistry:2011.3
・NBME SA 7:2011.3
・UWSA 2:2011.4
・NBME SA 11:2011.4
・NBME SA 12:2011.4
・USMLE sample test 2011:2011.4
以上です。これは参考程度にしておいてください。
② 各教材の紹介(紙媒体)(評価は完全に主観です。本番の難易度は★ 3or4 だと考えて
ください。
)
A:解剖トレーニングノート
他の章でも述べましたが、この本は最後までお世話になります。自分の求めている情報
がこれでもかってくらい載っています。(言い過ぎたかな。)解剖学を勉強する時にはこの
本を参考にするのがよいでしょう。
重要度:★★★★☆
B:Robbins
山大の新 3 年生の多くが初めて手に取る「英語」の医学書です。Robbins と言えば病理
学の中でも最も定評のある教科書であり、それに対応するのがこの問題集です。内容は病
理学の問題が約 1500 問収録されており、この本一冊で STEP1 の十分な病理対策になるで
しょう。実際に僕は改訂される前の version を一冊解き終え、病理学が得点源になりました。
では、Robbins の参考書も買うべきかとなると、あまりお勧めできません。何故ならあまり
に膨大な量であり全て読み切ることは難しく、病理学だけにそこまで時間は割けません。
コストパフォーマンスが悪いです。
なので、参考書は FIRST AID にとどめておきましょう。
読みたい人は止めませんが。では、何故敢えてこの Robbins を選択するのかということに
なりますが、それは他の章でも述べましたがそのとっつきやすさにあります。難易度がそ
れほど高くなく、病理学は内科学に近いので日本人にとって抵抗が少ないようです。
難易度
:★★★☆☆
マニアック度
:★★★☆☆
重要度(山大)
:★★★★☆
重要度(非山大) :★★★☆☆
C:Year note
日本の医学生(5,6 年生)は皆持っています。お馴染み year note です。これも USMLE
対策に使えます。かなりマニアックな疾患まで網羅されているため、辞書として活用でき
ます。いつか必ず買うんだからってことで、僕は 4 年の移行試験(秋)にもう買ってしま
いました。移行試験はかなりタフな試験で出題範囲が広いので、year note のような辞書が
あると便利ですよ。
重要度:★★★☆☆
D:FIRST AID(FA)
FA に関してはもはや語るまでもありません。STEP1 受験者のバイブルです。試験本番
では、FA に書いてあることからしつこく出題されます。なので、この FA を全て覚えるく
らいの勢いで勉強するのが高得点ゲットの近道です。しかし、これだけでも対応しきれな
い部分もあるので、問題を解きながらその都度余白に書き込んでいきましょう。FA の内容
と余白の書き込みを覚えれば完璧です。STEP1 の FA は毎年改訂されますので、その都度
購入することをお勧めします。本番の試験も毎年のようにリニューアルされるので、最新
の情報を掴んでおくことが大切です。僕は 2009 年版と 2011 年版を買いましたが、たった
2 年間でかなり改訂されていました。2011 年版は 4 カ月しか使っていませんが、ぼろぼろ
になるほど使い込みました。
重要度:★×3 億
E:Kaplan Qbook
先にも述べましたが以前は 1st チョイスの問題集でした。中身が薬理、微生物のように科
目別になっており、全 850 問です。下で紹介する FIRST AID
Q&A ではカバーしきれな
い分野を網羅していることがメリットですが、如何せんマニアック。どう考えても今後 2
度と出会うことの無いであろう問題が散見されます。それ以外の問題は割と無理がなく勉
強になるものが多いのですが。なので、大事なものとそうでないものが見極められない初
学者には不向きです。Q&A を終えてもう一冊紙の問題集を解きたい人が選ぶべきでしょう。
難易度
:★★★☆☆
マニアック度:★★★★☆
重要度
:★★☆☆☆
F:FIRST AID Q&A(Q&A)
これから USMLE
STEP1 を始める人はこれから初めてください。(Robbins から始めた
山大の 3 年は別ですよ。
)問題は約 1000 問で、大きく科目別のパートと臓器別のパートに
分かれています。問題の難易度も高くなく、マニアックなものは殆どありません。また、
FA に対応しているため調べやすいのもメリットです。5 年生以降なら三か月もあれば終わ
ります。これを一冊終わらせてどんどん力をつけていきましょう。
難易度
:★★☆☆☆
マニアック度:★☆☆☆☆
重要度
:★★★★★
G:LANGE Q&A(笑)
いりません。
あ、一応説明します(笑)
。昔は多くの人が重宝した LANGE
Q&A です。ですが今で
は完全にすたれてしまいました。その理由は問題のスタイルが本番と似つかないこと、簡
単な問題は内容が浅すぎるし、難しい問題は頭を捻らせることなくただひたすらマニアッ
クであることです。特に biochemistry はとにかくマニアックでです。
(Morquio syndrome
とか Maroteaux-Lamy syndrome とかガンガン出てきます。)
全 1200 問で構成されていて、
科目別に分かれています。僕は 1100 問まで解いて止めました。判断が遅かったです。大幅
な改定を望みます。
最後に一番記憶に残った知識を紹介↓
・サイトメガロウイルスは感染性が高いため、輸送する際には-70 ℃に冷やしドライアイス
に乗せて運ばなければならない。
なにそれ。
難易度
:★★★☆☆
マニアック度:★★★★★
重要度
:ぜろ(要改訂)
H:BRS Behavioral science
これは行動科学(Behavioral science)の定番中の定番です。受験する方は必ず購入してく
ださい。日本には行動科学というくくりは無く、敢えて説明するなら精神科、公衆衛生、
医の倫理、保険、統計学、成長・加齢が混ざったような学問です。日本人はとにかく行動
科学が苦手です。そして、その対策のためにはこの本をするしかありません。(実際、医の
倫理などはかなりアメリカンな感覚が要求されるので、勉強しても点数が伸びないかもし
れません。
)医の倫理は別にして、統計学などは対策することで十分に得点できる分野なの
で対策しない手はないでしょう。内容は 30 くらいのチャプターに分かれていて、それぞれ
のチャプターの最後に確認問題がついています。そして、本の最後には総復習として 130
~140 問くらい問題がついています。全て合わせて 650 問くらいです。本番でも行動科学
で失敗する人が多いので、2 周することをお勧めしておきます。
難易度
:★★★☆☆
マニアック度:★★★★☆
重要度
:★★★★☆
I: Lippincott's Illustrated Reviews: Biochemistry
生化学の参考書としては最も定評があるリッピンコットシリーズです。Biochemistry は
FA だけでは網羅しきれない部分が多いため、それを補うためにこの参考書を選択する人が
多いようです。僕自身 Biochemistry が苦手であったため、これの日本語版を買いました。
(英語版は個人的に重いと感じた。
)ある時期だけ使っていましたが、よく理解できていな
い分野を理解するのに役立ちました。生化学の参考書が一冊欲しいという方にお勧めです。
重要度:★★☆☆☆
J: Lippincott's Illustrated Reviews: Pharmacology
同じくリッピンコットシリーズの薬理学です。僕は持っていませんが、一応巷では人気な
ので紹介しました。個人的には、薬理は FA と問題集だけで十分だと思いますが、まだ足り
ない、もっと勉強したい人もいるかもしれないので試してみてはいかが?
重要度:?
K: Clinical Microbiology Made Ridiculously Simple
微生物学の名著と言われています。僕も微生物は苦手だったので何か一冊参考書が欲し
くこの本を選びました。しかし、ただでさえ時間に追われていたため殆ど目を通すことが
できませんでした。もっと時間に余裕がある時だったらよかったかもしれません。
ですが、やはり名著なので以下に Amazon のレビューから文章を引用します。
「本書は、アメリカの医師国家試験の対策本としても有名な名著である。範囲として、細
菌学、ウイルス学、寄生虫学を網羅している。著者は微生物学を楽しく勉強できるように
いろいろな工夫をしている。たとえば、一見無駄とも思える多数の図(漫画といった方が
適切か?)があり、記憶しやすいようにギャグを交えて、重要な部分は繰り返し説明され
ている。また、平易な英語で書かれており、英語が苦手な人でも短期間で読破可能です。
アメリカ版国試記憶術といったところか?しかし、病原微生物の最近のトピックスや詳し
い抗生物質の説明など他書に見られないような目から鱗が落ちる記載が見られる。また、
各章ごとにまとめの表があり、試験前の知識の整理に有用である。医学生のみならず、現
場の臨床医も一読の価値があると思います。
」
らしいです。もっとしっかり読めばよかったかな。
重要度:★★★☆☆
L:BRS Biochemistry, Molecular Biology, and Genetics
隠れた名著です。先にリッピンコットを紹介しましたが、個人的にはこちらをお勧めし
ます。BRS シリーズは行動科学同様に小項目に分かれて、各章末に確認問題が載っていま
す。全 300 問くらいです。僕は途中までしかできませんでしたが、谷内田さんは全部読破
し生化学を得意科目にしていました。日本人は生化学を苦手にしていることが多いので、
時間がある方は是非やってみてください。
難易度
:★★★☆☆
マニアック度:★★★★☆
重要度
:★★★☆☆
③ オンライン教材(問題集)
M:USMLE WORLD(UW:http://www.usmleworld.com/)
もはや STEP1 対策の王道に登りつめた UW です。これを避けては通れません。Q&A と
同様に必須教材です。オンライン問題集の最大の特徴は、UPDATE が頻回なことです。ど
んどん問題が削除・追加されていきます。PC で勉強できるため、自分で問題をカスタマイ
ズできるのもメリットでしょう。
(例えば、問題数や科目を指定できる。その他にも様々な
機能があります。
)UW には約 2100 問あり、難しい問題が多いですが質は高く、重箱の隅
をつつくような問題ばかりでなく思考力を問う問題が多いように思えます。また、見た目
も本番そっくりに作られています。分からない問題が無くなるまでやりこみましょう。本
番では、数は多くありませんが Audio を使った問題が出題されます。
(具体的には心雑音や
呼吸音など。また動画が提示される問題もある。Parkinson 病の手の振戦をビデオで見る
ことができたりする。
)UW でも Audio を使った問題が出題されるので練習になります。
UW を終えると、3-digit score が 30 点上がると言われています。実際に僕は 30 点くらい
上がりました。他の二人も 30 点くらい上げています。
ちなみオンライン問題集の料金は使用期間により異なってきます。参考までに、2015/10/18
現在の料金を載せておきます。
1 か月:129$ 3 か月:219$
難易度
:★★★★★
マニアック度:★★★☆☆
重要度
:★★★★★
N:Kaplan Q Bank(Q bank: http://www.kaptest.com/Medical-Licensing/index.html)
言わずと知れた Kaplan のオンライン版問題集です。昔はオンライン問題集が Kaplan し
か無かったため皆これをやっていました。今では UW に完全に押されてしまっています。
UW に比べて思考力を問う問題が少なく、やたらマニアックなことを聞いてきます。UW で
はカバーできていない範囲からの出題もあるのでやる価値はありますが、全 2300 問もある
ので結構大変です。しかも、納得できない解説も散見されたりしたのでフラストレーショ
ンがたまりました。特に行動科学の分野はやたら難しく、UW で行動科学の正答率 66%だ
ったのに、後にやった Q bank で 51%と激減し、それはもう萎えました。それ以外の分野
はさすがに Q bank のほうが正答率は高かったのですが。UW が終わり、まだ 2 か月くらい
時間的余裕があって 230 以上を狙う人にお勧めです。Q bank でも、もちろん Audio の問
題が出題されます。さらに、解説の中にたまに Kaplan 講師による解説授業動画が組み込ま
れていることがあります。リスニングに自信のある方はどうぞご利用ください。
参考までに料金載せます。
1 か月:99$
難易度
:★★★★★
マニアック度:★★★★☆
重要度
:★★☆☆☆
O:USMLERx
三つ目のオンライン問題集です。僕はやりませんでしたが、FA と完全対応しており非常
に勉強しやすいようです。オンライン問題集の中では最も簡単と思われるので、Q&A が終
えた後に初めてのオンライン問題集として勉強してみることをお勧めします。その後、UW
に移行するのが最近の主流です。
1 か月:99$ 3 か月:149$
P: FIRE CRACKER
ここ最近で受験生から非常に定評のある Fire Cracker を紹介します。勉強アプリの一種
で、登録すると毎日課題が与えられます。それを日々こなしていくだけですが、内容は
USMLE 形式の問題もあれば一問一答のような問題もあります。問題にレートを付けるこ
とができ、間違えてしまったような重要度の高い問題は後日何度も出題され、完全に記憶
に定着するまで繰り返し解くことになります。最初の 1 か月は無料のお試し期間があるよ
うです。これを使っている人の STEP1 の平均点は 243 とのこと。
④ 模試
ここでは模試の紹介をします。ところで、上記のオンライン問題集ではその正答率から
本番で取りうるスコアを予想できます。以下にスコアを予想してくれるサイトを紹介しま
す。
・http://www.clinicalreview.com/solutions/resources/usmle-score-calculator.html
・http://www.medfriends.org/step1_estimator/
例えば僕は、一週目の UW の正答率が 65%だったのですが、これは上記のサイトでは本
番で取る可能性が高いスコアは 237 と予想されます。Q bank では 72%だったので 246 と
予想されます。このように問題集の正答率から自分の実力を測ることができますが、問題
集の正答率とは今までの蓄積であるし、問題の解き方も自分でいくらでもカスタマイズで
きるので、現状の自分の実力を正確に反映しているとは言えないです。
そこで自分の実力をより正確に測るために模試を受けることをお勧めします。
2015/10/18 現在、模試には 2 種類あります。NBME と USMLE WORLD self assessment
の二つです。
Q:NBME(http://www.nbme.org/)
NBME は本番に出題される問題を提供している機関です。この NBME が自ら模試を提
供してくれています。現在の模試の種類は 11,12,13,15,16,17 の 6 種類あります。これは本
番の問題傾向に対応して新たに作られていきます。2011 年の 5 月中旬には免疫学の出題量
が増える等の変更点があり、それに対応して新たに模試(11,12)を作られました。最近
の傾向と大きくかけ離れた過去の模試は削除されていきます。
NBME では払う料金によってサービスが異なります。50$払う(Normal)と結果のみ
が表示されるだけですが、60$払う(Expanded Feedback)と間違えた問題が表示されるよ
うになります。非常に残念ながら解説はありません。ネットの掲示板で議論されているこ
とはありますが、正確性に欠けます。
NBME の模試は、1block:50 問/65min ×4block(Standard-Paced)で構成されていま
す。購入する際に Self-Paced を選択すると制限時間が四倍になりますが、これでは時間に
追われる感覚が体験できないため本番のような緊張感も薄れますし、自分の本当の実力が
反映されません。模試を受けるときは Standard-Paced にしましょう。解説はありませんの
で、間違えた問題以外は深入りしない程度にインターネット等を駆使して復習してくださ
い。
R:USMLE WORLD self assessment(UWSA)
もう一つの模試です。UWSA1,2 の 2 種類あります。これらは、1block:46 問/h ×4block
で構成されています。こちらの模試は安く、一回 30$です。全体的な難易度は NBME よ
りも高いですが、UW の問題集と同様に非常に質が高い模試ですので是非 1,2 とも受けて
ください。この模試は解説付きなので全ての問題をしっかり復習しましょう。
この模試には難点が一つだけあります。それは点数が高めに出てしまうことです。本番
で 230 くらい取れる実力のある人が受ければ 240 以上の予想スコアが出てしまうと思いま
す。よって、230 を狙っている人が UWSA を受けて 230 取れたからといって 230 取れる実
力があるとは限りません。非常に質が高い模試ですが、模試のスコアは NBME のほうを参
考にするのがいいと思います。
⑤ サンプル問題
S:Free USMLE Practice Test
最後にサンプルテストの紹介をします。USMLE(http://www.usmle.org/)では、毎年リ
リースされるサンプル問題を無料で配布しています。これも NBME が提供している問題で
あり、本番で同じ問題が出題されることが多々ありますので直前に必ずやってください。
構成は、
1block:46 問/h×3block+Audio test:5 問/10min となっていて、
全部で 143 問です。
サンプルとは言いますが本番より大分簡単な気がします。これには解答は付いていますが、
解説は付いていません。昔は Kaplan で解説を配布していたようですが最近は見つからなく
なりました。また、このサンプル問題には他に、本番と全く同じチュートリアルが付いて
きています。本番ではチュートリアルのために 15 分時間が設けられていますが、これを読
まずに飛ばすことでその 15 分が、
休憩時間の 45 分に足されて休憩時間が 60 分になります。
本番のチュートリアルは、サンプル問題に付いてくるチュートリアルと全く同じものなの
で、事前にチュートリアルを見ておきましょう。そして、本番ではチュートリアルが読み
飛ばして休憩時間を 60 分確保しましょう。
⑥ その他
教材ではありませんが、臨床留学を本気で考えている方に以下の本を紹介します。現実
的に、臨床留学を目指す場合にはこの本を是非手に取ってください。
T:アメリカ臨床留学への道
本には臨床留学に必要な知識はもちろん、10 数人もの臨床留学に至った体験談が書かれ
ています。興味ある方は買われてみてはいかがでしょうか。
~USMLE STEP1 学習記録~
ここでは、僕の学習記録を記します。どれくらいの問題を解き、どんな参考書を使うで
どれくらいの成績を取ることができたのかを詳細に書いていきます。これから勉強を始め
る人、または既に勉強を始めている人にとって、何かしらの指針になることを願っていま
す。尚、成績を詳細に載せるため、僕の自己顕示欲が表れているように感じられるかもし
れません。リスキーなことは承知していますが、ここで詳細を伏せると参考にならなくな
るので思い切って載せることにしました。
「この正答率だと、これくらいの成績が取れるのか。」とか、「この問題集をやるとこん
なに成績が上がるんだ。
」または「やっぱり行動科学は伸ばしにくいんだ。」などと感じて
いただければと思います。
最後にはサマリを書きますが、最初から物語のように読んでもらってほうが流れが掴み
やすいと思います。
・スペックの紹介(つまり、STEP1 の勉強を始める前の成績)
最初に、
STEP1 の勉強を始める前の実力を明らかにしておく必要があります。
何故なら、
学校の成績が常に 1 位のような人と、いつも追試にかかっている人ではスタートラインが
全く違ってしまうからです。
僕の CBT(CBT は 4 年の 12 月に受けました。
)の成績は、90.72%でした。また、学校
の成績は 10 位には入っていると思うけど決して 1 位ではない。って、感じでしょうか。CBT
の勉強に関しても、誰よりも早く 4 年の 4 月から勉強を開始しているので、この成績も努
力の結果であり、僕に豊かな才能があったとは言えません。
FIRST AID を使い始めた 4 年の 1 月をスタートとします。その時点で Robbins は殆ど一
周していました。
目標は 2-digit score:99 にします!どれくらい難しいかわかりませんが、困難な目標ほど
やりがいがあります。山形大学では誰も達成していないと聞いています。本当かどうか知
りませんが。さぁ・・・達成できるのか??
・USMLE ってどれくらい難しいの?
CBT は USMLE をモデルに作られていることをご存じでしょうか?出題形式は似ていま
すが、言語の違いという条件を除いても、CBT は USMLE に比べて格段に簡単です。また、
出題範囲が異なるという点も、日本人の受験生を苦しめている理由となっています。
そこで僕の経験から言えることは、CBT など今までの成績が、今後の USMLE の成績に
とって決定的な要素には成り得ないと言うことです。
(95%越えてしまうような人の中に例
外はいるかもしれませんが。
)例えば、僕は CBT で 90%を超えましたが、勉強を開始した
当時では FIRST AID の Q&A(恐らく一番簡単な問題集。)ですら歯が立ちませんでした。
薬理や微生物などは 4 割も正解できませんでした。では、95%の人なら対応可能かという
と、そうではありません。ある大学で主席の人が、対策も不十分なまま STEP1 を受験して
不合格だったという話もあります。逆に CBT で 80%程度の人が、しっかり対策をして
STEP1 を 2-digit score:90 以上で合格するという話も珍しい話ではないのです。つまり、
対策の有無が STEP1 の結果に最も大きく影響を与えるファクターだと言えます。
結論を急ぎますと、これから勉強を始める人は過去の成績なんか忘れて今の勉強に集中
しなさい。と、言うことです。
「私は CBT70%だから合格できるわけない。
」とか「俺は CBT
で 90%越えているから、ちょっとやれば受かる。
」なんて、本当にナンセンスです。前向き
な勉強の継続、これだけがあなたを合格に導きます。尚、山形大学の学生の過半数以上は、
対策さえすれば合格できるポテンシャルを秘めていると思います。はっきり言います合格
は難しくありません。
・第 1 回模試(NBME6:2010/7)
1 月に Q&A を始めた当初は一日に 10 問くらいしか解けませんでした。当時はやはりま
だ理解も浅く、問題を読むのも遅かった気がします。5 月に、他大学で既に合格している人
と知り合い、そこでやる気が上がります。ここからが本気モードです。
さて、7 月に入り Q&A が 8 割、Q book が 5 割終わった段階で、自分の現状を知ろうと
思い初めての模試に無謀にもチャレンジしてみました。ちなみに当時、Q&A の正答率は
65%くらいでした。
で、肝心の点数は 340(右上)だったのですが、これは以下の表と照らし合わせて予想ス
コアを出します。各科目、各臓器別の成績は右に行く程パフォーマンスが高いです。
ということで、模試のスコア 340 は 3-digit score:188 に相当します。何とちょうど合格
最低点でした。正直、合格ラインにはまだ及ばないと思っていたのでびっくりしました。
この NBME6 は Expanded-Feedback version(別章参照)を購入したので間違えた問題数
が分かりましたが、200 問中 71 問不正解でした。なので、正答率は 64.5%となります。こ
こで、65%前後が合格ラインだと予想できます。しかし、実力不足のため、この模試は本
当に難しく感じ 65%も解けた気がしませんでした。時間にも追われ疲労困憊で、受験後は
瀕死状態でしたね。辛かったー。でも、やっぱ半年で合格ラインには乗るのね。
8.9 月は Q&A を終了させ、LANGE と BRS Behavioral science を半分程度やりました。
そして、第二回目の模試です。さてどうなることやら。
・第 2 回模試(NBME1:2010/9)
440 です。2 ヶ月で 100 上がりました。3-digit で 209 に相当します。当時、まとめノー
トが段々と出来上がってきた時期で、徐々に頭が整理されてきたような感覚がありました。
さて、この模試のあと USMLE WORLD を開始することになります。さて、UW をやり込
むと、得点が 30 も UP するという噂は本当なのでしょうか。
UW を始めた頃は、一日に 30 問解くのが精一杯でした。最初の頃の正答率は 60%くら
いでしたね。
(実際には UW の正答率は 50%弱でも合格可能だと思います。70%取れたら
240 以上狙えます。世の中には 91%って人もいるんですよ。人間ですか?)
さて 3 カ月の時が経ち、この間に Q book は終了しました。UW はまだ 2 割程度残ってい
ましたが、冬休みに入るタイミングで三回目の模試にチャレンジしてみることにしました。
じゃん!
・第 3 回模試(NBME2:2010/12)
大分グラフが右に寄ってきました。510 なので、3-digit socre:225 に相当します。目標の
99 は 3-digit score:230~235 に相当するので、もう少しです。当時の感覚としては、「合格
はもう確実だろうけど、99 はきついなー。」って感じでしたね。この時点では既に、問題を
解くのが苦ではなくなっていた気がします。気合いを入れなおして冬休みに突入です。
冬休み中に LANGE(実際には 100 問だけ残した。)、BRS Behavioral science の1周
目を終了させました。そして 1 月中には UW の1周目を終了させています。UW の1周目
の成績を載せておきます。
正答率は 65%まで上がりました。あるスコア予想機によると、UW の 65%は 3-digit
score:237 に相当するそうです。お、99 に乗ったのか。しかし、所詮は問題集の正答率。模
試ではない。よし、このまま復習に入ります。
ちなみに上の成績を見ていただくと分かると思いますが、病理は得点源です。これは、
Robbins 効果なのかな?それとも、単に日本人はみな病理が得意なだけなのか?どうなんで
しょう。対照的に、生化学、微生物、薬理学は苦手で 60%を下回っていました。ここを重
点的に伸ばしたいものです。臓器別(Sub Divisions)では,腫瘍学(Oncology)が圧倒的に
高いです。北中先生パワーが炸裂した瞬間でした。
ここから一か月で、分からない問題が無くなるまで復習を繰り返しました。この時期は、
ある境地に足を踏み込んでいたようで勉強漬けの生活でした。一番ストイックだった日は、
朝の 3 時半に学校に到着し、実習まで問題を解き、実習後は夜中 1 時まで問題を解き続け
るという気が狂ったこともしていました。自分では「体育会系の勉強」だと思っていまし
たが(笑)
。中々理解できないと思いますが、ここまでやりまくると変な爽快感が生まれま
す。最高記録は一日 150 問です。是非この記録に挑戦してみてください。
(インド人は一日
200 問解くらしいです(笑)
。
)下に復習後の成績も載せておきますね。ただ、ここでの正答
率は成績がひたすら加算されていったもので実際の実力は反映していないため、参考にと
どめておくしかないです。解いた問題数に注目してください。
さて、2 月中旬に UW の復習が終わり 4 回目のチャレンジがやってきました。UW を狂
うほど解きましたが、これで 99 届くかどうか、自分の真価が問われているようで緊張しま
した。
・第 4 回模試(UWSA1:2011/2)
ばん!247・・・超えたぜ・・・。
今回の模試は NBME と違い、USMLE WORLD self assessment(UWSA)なのでここの
640 と上の点数表は相関しません。この 640 は UWSA 独自のスコアです。また別の章でも
述べましたが、UWSA は高めのスコアが出ることで有名です。NBME より 10 は高く出る
と言われています。実際には 237 くらいかな。でも余は満足です。
UWSA は解説もあるし、もちろん正答率も出ます。73.3%でした。UWSA のほうが難し
いとは言え 73.3%で 247 はちょっと高く出しすぎている気がします。
さぁ来月は、本番のスコアを最も正確に予想してくれる NBME7 に挑戦します。これで、
230 超えればかなり可能性が高まります。最も大事な模試かもしれません。
さて、ここからは Kaplan Qbank を開始します。全 2300 問もありますので、正直終わら
せる自信がありません。でも、やりきります。
きたる 3 月 30 日・・・なんと全部解き切りました。
追い込みの時期は一日 100 問ペースで解いたため、
かなりのハードスケジュールでした。
この時期は辛かった時期の一つですね。
一日のスケジュール例(実家にて)
:起きる、いや起こされる→寝ぼけながら問題を解く
(昼まで)→昼から夜までスターバックスで問題を解く→家に帰ってご飯食べたら、また
問題を解く→むしゃくしゃする→また問題を解く→もうやだ→ふて寝
気持ち悪いですか、そうですか。
そして 3 月 31 日決戦の日です。NBME7 かかってきなさい。
以下結果↓
・第 5 回模試(NBME7:2011/3)
570・・・ということは 3-digit score:238!セーフ。
一安心です。正答率は 85.5%でした。伸びにくくなってはいますが、大分上がりました
ね。ところで、グラフを見ていただくと分かる通り右端に赤い星ついているラインがあり
ます。これは、その分野の成績が優秀であるため右に振りきれていることを示しています。
尚、今回では Nervous System/Special Senses の分野が右に振りきれてラインが無くなっ
ています。これはその分野の問題を全て正解したことを示します。いやぁ成長したな。
本番は 4 月 30 日ですので、一か月を切りました。ここからは Qbank の復習と、苦手な
行動科学の 2 週目をしていきます。
Qbank の成績を載せるのを忘れるところでした。
ちょっと見にくいですね、すみません。
正答率は 72%まで上がりました。UW で 65%だったので、難易度はあまり違いが無いと
仮定すると 7%UP です。Qbank の 72%は 3-digit score:245 に相当するそうです。
しかし、この Qbank,どこまでも重箱の隅をつついてきます。なので、余計にむしゃくし
ゃしていました。そして、この輝かしい行動科学の成績。51%・・・。今までの勉強はな
んだったのでしょうか?(笑)でも、前向きに頑張ります。
そして、Qbank の復習と、行動科学の 2 週目を終え UWSA2 にチャレンジすることにし
ました。この時点では、
「UWSA は点数が高めに出るからどうせいい点になる」なんて気持
ちになっていました。1 年で気持ちの面も変化するようです。
・第 6 回模試(UWSA2:2011/4)
700!?そして 3-digit score:256 です。予想以上に高く出てびっくりしました。ただ、UWSA
なので 10 高く出ていると考えて実際は 246 くらいですかね。
正答率は 78%でした。あと 5%は取れるなという感じがします。この模試は気負うことな
くリラックスして受けることができました。うん、なんだか 99 取れそうだ。
4 月の初旬にある情報を掴みます。どうやら、5 月中旬から試験の内容に若干変化がある
らしい。今まで以上に臨床寄りの問題が増え(基礎医学を臨床医学に応用した問題程、問
題分が長くなります。なので、臨床医学が出題範囲である STEP2CK は全体的に STEP1
より問題分が長いです。)
、免疫学の出題量が増えるとのことでした。その影響の現れの一
つですが、NBME の模試に 11 と 12 が追加されました。なるほど、この 2 つは新傾向と対
応して作られているのだな。僕が受験する日はまだ新傾向ではないが、採点対象外問題と
して新傾向の問題が組み込まれている可能性がある、ならば 2 つともやるしかない。と、
考えたわけです。
さらに、この時にはまだ模試の 4 時間が最長試験時間であり、本番の 7 時間という長い
試験時間に不安がありました。5block 以降に集中力が切れるという話は耳にタコができる
くらい聞いています。なら、対策するしかないです。そこで、NBME11,12 を連続で受験す
ることにしました。1 つ 4 時間 20 分なので、計 8 時間 40 分です。休憩を含めると 10 時間
近くなります。この話を提案した時の、谷内田さんと新井君の反応があまりに異なってい
たことが面白かったです。
(普通はびっくりして嫌がりますが、新井君はびくともしません
でした。さすがです(笑)
。
)
今回の模試の目的はただ成績を求めるものではなく、どこまで集中力が持続するのか見
極めることです。そして、本番よりも長い試験時間を体験することで、本番への怖さを軽
減させることも目的の一つです。もし、この経験をせずに本番を迎えると「5block 以降に
集中力が切れたらどうしよう」という不安が常に付きまとうと思います。是非、受験前に
は超長時間模試を体験してください。
模試の結果です。一つ目は NBME11 です。
・第 7 回模試(NBME11:2011/4)
前回の NBME7 と全く一緒でした。570 なので、3-digit score:238。正答率は 86%でした。
まぁ、新傾向だしそこまで成績が伸びることもないのでしょうか。あと、いよいよ頭打ち
してきた可能性もあります。実際 86%以上取るのはきつい。グラフの赤い星も 13/19 個に
なりました。そして、後半戦開始!きついぞ(笑)
。NBME12 が最後の模試になります。
・第 8 回模試(NBME12:2011/4)
あれ・・・?上がった(笑)
。今までの NBME 模試の中で最高得点でした。610 なので、
3-digit score:247 に相当します。正答率はなんと 90%でした。赤い星は 16/19 まで増え、
苦手だった微生物/免疫学は満点でした。勉強を開始した頃は自分が 9 割も取れるようにな
るとは思ってもいませんでした。努力は報われるのですね。
忘れてはいけないのが、この模試は後半に受けているということです。なんと後半の成
績のほうが良い、ということは集中力には自信を持っていいということになります。もう、
本番の試験時間は怖くありません。
最初の模試と比べてみましょう。
これがたった 9 ヶ月で↓に
未来はどうなるか分からないもんですね。しかし、Behavioral science だけはどうにもな
らないのか・・・。
試験 2 週間前に、サンプルテスト(2011 年版)を受けることにしました。以前より、サ
ンプルテストは本番より簡単だと聞いています。
結果: 1block: 41/46
2block: 44/46
3block: 43/46
Audio: 5/5
Total: 133/143(93%)
でした。93%ってちょっと取れすぎではないかい。それほど簡単なのか、運を使い果たし
たのか。予想スコアは 266 と出ました。さすがに嘘ですやん、それは・・・(笑)
。
サンプルテスト後は 本番までひたすら FA を詰め込みます。僕は以前より、直前に詰め
込みたいものを携帯にメモしておいたので、まずはそれを詰め込みます。そして、また FA
を最初から全ての知識を覚える勢いで読み込みます。
僕の暗記方法は少し特徴的です。まずはノートを買い、ページの表に問題を作り、その
裏に答えを書く。これを一通り作り、完成後にひたすら解きます。例えば「~(薬)の作
用機序は?」とか「~を宿主とする微生物を 3 つ挙げよ」のように作ります。これを直前
に 1100 問作りました。
この暗記法はかなり使えます。まず、FA を読みまだ覚えていないところを問題にしてい
きます。それをひたすら繰り返します。すると、自分の覚えていない知識は全てノートに
ある状態になります。
(実際には 100%ではないですよ。
)では、そのノートの問題を全て解
けるようになった時、自分は FA を殆ど覚えたと言えるわけです。何を覚えていないかを知
る、これが大事なんですね。
この作業は予定より時間がかかってしまい、前日まで続きました。これはよくなかった
な。
試験の二日前より東京入りし、いよいよ明日本番を迎えた夜のことです。前日はさすが
に早く寝ようと思い 10 時に布団に入りましたが、前日なのに勉強しすぎたせいか、緊張の
せいか頭が冴えまくっています。まずいぞ。11 時頃にやっと眠れましたが、目を覚ますと
なんとまだ夜中の 12 時でした。
「えええ・・・これで本番むかえるの?」
。メンタル崩壊。
これはもう無理です、眠れません。諦めてコンビニに行きましたが、これは英断でした(笑)。
コンビニで飲み物を買い、2 時頃にやっと就寝。最後の最後までハラハラさせてくれます。
当日は 8 時半集合で 9 時試験開始だったので、8 時過ぎに会場の茅場町タワーに到着。さ
て、15F までエレベーターで昇ると受付に 2 人女性がいました。ここでパスポートと、
scheduling permit を見せます。次いでロッカーに荷物を預け、待合室で名前を呼ばれるの
を待ちます。9 時開始だと言われていましたが、どうやら準備でき次第試験開始するようで
す。
ついに名前が呼ばれ、隣の部屋に誘導されます。ここで顔写真を撮り、入室のサインを
します。そして、ポケットチェックを受けます。7 つもあるズボンのポケットをチェックす
るスタッフを、少しおどけた表情で見つめてみました。
「7 つもあるんだから、もう勘弁し
てください。
」←心の声。だめでした。このスタッフはしっかりものです。
ポケットチェック後に、メモ・計算用のホワイトボードを渡されます。いよいよ、隣の
試験室に誘導され指定されたブースに座ります。さぁ試験開始です。
1block 目。緊張で最初の 10 問くらいは頭に入ってきません。しかし、時間との戦いなの
でどんどん解き進めます。結構難しく時間もぎりぎりで、自信のない問題は 13 問/46 問で
した。取りあえずトイレに行くために休憩します。出る時はサインだけで大丈夫です。ト
イレに行って気合いを入れなおし、すぐに試験室に帰ります。また、ポケットを見ますか
あなたは。ただトイレに行っただけで 7 分費やしました。やっぱり休憩時間少ないなぁ。
2block 目以降は、緊張もほぐれ問題集中できました。4block 目だけ妙に簡単に感じまし
たが、2~7block まで自信のない問題数は、14、12、7、14、13、11 で合計 84/322 になり
ます。僕は模試でも同じように自信のない問題にはチェックを入れていましたが、自信の
無い問題の内 5~6 割は正解していました。なので、本番での予想不正解問題数は 33~42
問になります。厳しく予想すると 33~50 くらいになります。正答率は 85~90%くらいでは
ないでしょうか。
7block 終了後、最後にアンケートに答えて無事に STEP1 受験は幕を閉じました。茅場町
タワーの横には隅田川が流れています。試験後に、川の畔に座り、時間を気にせず川の流
れだけを見ているだけで幸せな気持ちになれました。「やり切ったな。」この一言に尽きま
す。
本気モードに入ってからは 11 カ月ですが、医学英語を初めてからは約 3 年にもなります。
3 年間の集大成があの 7 時間に詰まっていたんだなと思うと何だか感慨深い気持ちになりま
した。
翌日、新井君と谷内田さんの受験が終わり上野の飲み屋で打ち上げをしました。一年前
に思い描いていた情景が目の前にあり、不思議な気持ちになり、そして自分は本当に恵ま
れていると感じました。長かった試験勉強から解放され、本当に楽しい時を過ごしました。
結果発表は試験から 3~4 週後です。やり切りきったので、後はおとなしく待つのみです。
5 月 18 日、ついに結果がでました。
どきどきです。
次のページに結果→
無事 99 取れました。感謝します。
3-digit score は模試よりも低かったので少し残念ですが欲張ってはいけませんね。素直に
喜びを享受します。やはり、NBME7 の成績に極めて近い結果になりました。この結果に
よると、アメリカ人の平均が 221、カナダ人が 224 だそうです。大半の人は 140~260 の範
囲に含まれるとあります。これをそのまま大半の人は「±2SD に含まれる」と読み取ると、
世界の受験生の平均は 200 で、1SD は 30 でしょうか。そう考えると 188 は偏差値 46 に相
当します。受験生全体の合格率は 78%なので、偏差値 46 という数値は結構妥当な数値でし
ょう。
(偏差値 40 以上は 84%、50 以上は 50%です。)うん、大きく間違ってはいないな。
となると、僕の偏差値は 62 くらいですか。
これが科目別の成績表です。
行動科学・・・・・・・・・なんてこった。
ま、しょうがないですね。消化器もあまり成績が良くありませんが、普段から苦手意識は
全く無いので偶然低く出ただけでしょう。普段よりもさらに行動科学が悪く、それ以外は
普段通りなので、模試より少しだけ正答率が下がって 85%ってとこでしょうね。
これで僕の STEP1 体験記は終了です。今回の体験談では敢えて僕の人となりについては
触れませんでした。これに関してはまたいつかの機会に話すかもしれません。ご縁があっ
たら世界のどこかで会いましょう。
最後にサマリです。
・勉強期間
1 年 4 カ月(本気だしてからは 11 カ月)
・解いた問題数
Robbins 1300
USMLE Q&A 1000
Q book 850
LANGE 1100
BRS Behavioral science 650
USMLE WORLD 2100
Q bank 2300
NBME 200×6
UWSA 200×2
Total: 10000~11000 問
・模試の結果
NBME6 (9 months ago) 340/188
NBME1 (7 months ago) 440/209
NBME2 (4 months ago) 510/225
UWSA1 (2 months ago) 640/247
NBME7 (4 weeks ago) 570/238
UWSA2 (3 weeks ago) 700/256
NBME11 (2 weeks ago) 570/238
NBME12 (2 weeks ago) 610/247
Sample Test (1 week ago) 93%
Actual step1 score: 235/99
Fin.