建設工事・製品の構造計算と耐火性能評価の方法 CSTB 技術担当理事

建設工事・製品の構造計算と耐火性能評価の方法
CSTB 技術担当理事 エルベ・ベリエ
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------私からは、構造計算と耐火性能評価についてご説明申し上げたいと思います。もちろんこれ
らは技術的なテーマですので、技術的に詳細な点までは私のテーマには入りません。ですから、
私の説明としては、概要を説明することにとどめたいと思います。皆様に資料をお渡ししてお
りますので、後で皆さん方の質問に答えたいと思います。
まず、ヨーロッパの企業が、建築及び建築製品の構造計算方法、耐火性能の評価について、
共通の計算方法を設立したいという政治的意図についてお話ししたいと思います。まず、安全
性ということを考えるときに、各国においては、安全性を守らせるためのルールづくりを大切
に思っております。つまり、私たちが科学的、技術的な手法が同じであっても、それをもとに
して各国において出す解決方法、また、実施方法はそれぞれまちまちです。しかし、EUにお
きましては、欧州共通市場が出来上がっておりまして、そこにおいては、EUのある国から出
たものは自由にEUの他の国に流通できる決まりになっております。また、製品が欧州市場の
中で自由に流通できるように、サービスも、そしてまた企業も自由に活動ができるわけです。
ですから、1980 年から、EUとしては、この建築材料の計算及び火に対する性能を共通化すべ
きであるという認識を持っていました。
これから、構造物のユーロコードについてお話ししたいと思います。
まず、構造物のユーロコードには 59 の規格があります。ユーロコードはCEN(欧州規格
委員会)によって確認されました。これは量的に多大なプロジェクトでありまして、何千人も
のエンジニアや専門家が関わりましたし、 1,000 ページにもわたる資料となっております。2
0 年にも及ぶ努力の結果でもあるわけです。皆様方にお渡ししてあります資料に 59 の規格リス
トが掲載されています。そして、この 59 の規格は、構造物のユーロコードという名前がつい
ていますが、これは様々な方法論の集大成であり、この中から、それぞれの国が問題点に応じ
て、各機能、経済的、技術的な観点から自由に選ぶことができるようになっています。この審
査の方法は、表などを使ったシンプルな計算方法もありますし、あるいは、複雑な計算方法も
あります。このように標準化をしたメリットは、
構造物を最適化するための計算ができること、
そしてまた、各エンジニア達がそれに対応できるような能力を持つことができます。構造物の
ユーロコードは自主的な規格ですから、ほかのもののように欧州レベルで義務づけられている
というものではありません。各国は、このようなユーロコードを事業者が自由に使うことに対
して反対はできません。そしてまた、国よっては、必要と思われる場合は、その中の幾つかを
国内において義務づけることができます。欧州レベルでのあらゆる共通化と同じように、構造
物のユーロコードは、各国の国内での標準に直されています。各国が国内向けの付属条項にお
いて、その各国の技術的あるいは経済的観点から、国内用の規格を設けることができます。
それはどういうものかと申しますと、例えばギリシャにおける耐震構造については、仮に地
震があったときに、その建物が再使用できるようにということを要求しております。しかし、
フランスにおいて地震はめったにありませんので、ユーザーがそれを使用できるようにすると
いう、ユーザーにとって安全であることを求めているだけです。このように、各国において、
その規格が違うわけです。
実際に、構造物のユーロコードが全部完成するのは 2006 年です。現在確立されているのは、
各国における設計のベースとなる計算方法についてのルール、及び構造物の計算です。私たち
がこれから行うことは、各関係者に対して、この新しいユーロコードの方法論と、それからで
きる責任というものに対して今から議論をしていくことです。といいますのは、この前にあっ
たユーロコードの規格は、実際に活用する事業者たちのイニシアチブがとれない、つまり、対
応改善の余地が少ないところがありました。
以上で、構造についてコードの話は終わりまして、次に、耐火性能の評価についてお話しし
たいと思います。耐火安全性に関する規則につきましては、10 年ぐらい前から検討を始めてお
ります。最近、その作業が終わったところで、フランスは既に、この新しいルールを国内に導
入する予定でいます。耐火構造につきましても、皆様方にお配りしたペーパーの中にあります
が、その説明にスライドを使います。フランス語のスライドですけれども、写真や図を見てい
ただくということで、これを使いながら説明したいと思います。
ある建築材料又は内装に使う製品の耐火性能は、実際に火災が起こったときに、どのくらい
の熱に耐え得るか、あるいはまた、燃え上がるフラッシュオーバーにどのくらい耐えるかとい
う度合いにより分類されます。私が皆様方に配った資料の中に、その対象となる材料のリスト
があります。実際には、壁に使うような内装材料もありますし、ガラスもあります。また、排
煙器具設備に使う材料もあります。
それらはA〜Fのカテゴリーに分けられております。次に、
どうしてこのようなカテゴリー分けをするのかということについて説明したいと思います。
Fは一番可燃性が高く、それが ISO と同じような基準で決められています。一方のAは、可
燃性が低く、室内全体に火災が広がったときにこれに火がつくというものです。ですから、A
のカテゴリーに関しては、火が広がった面積や温度が関係してきます。中間のB、C、Dのあ
たりは、実際に火がついた物によって作用されるとか、あるいはまた、隣の部屋において十分
に火が広がっているときに作用されるものです。例えば隣で大きな火事があったとすると、大
変な高温になるので、こちらの部屋のカーペットに引火する。つまり、熱が輻射することによ
って起こります。このように様々な火炎に対応するということでAからFまで分けられていま
すけれども、煙の発生についても段階ごとに規定されています。また、火がついた破片が発生
することによって起こるものがあります。
ですから、様々なクラス分けをするための試験として、まずFのカテゴリーに関しては、こ
のような小さな炎に対するものがあります。Aのカテゴリーに関しては、ある熱量の計測、非
可燃性(不燃性)の測定があります。また、中間的なカテゴリー(B、C、D)に関しては、
例えば床の内装材に関しては、このような輻射するパネル、あるいはまた、それ以外の製品に
関しては、分離されている物が燃えているというものを使います。
それから、このテストの展開といたしまして ISO9705、ルームコーナーテストと呼ばれるも
のがあります。これは、全体的に火に覆われている事態が起こったときに、どのように推移す
るかというものです。
次に、ユーロクラスのカテゴリーについてご説明いたします。
まず、最初に重要な判断基準は、火の広がりと速度です。つまり、この表に記載されている
のは、どのくらいの時間をかければ全体に広がるかという時間でありまして、ユーロクラスの
カテゴリーを書いてあります。20 分以上かかる場合にはB、あるいは、それよりもいいランク、
一番下がEです。これをテストしますと、今、ユーロクラスで、B-s1-d0、つまり、d0 という
のは、先ほどのような火の玉が落ちてこない段階で、煙の発生は未知の段階である。そういう
ものについてのテストです。
まず、B-s1-d0 クラスのテストをお目にかけます。これは5分後の状態です。もちろん、コ
ーナーにある火は標準化された火です。このように、燃えているものは燃え終わります。
今度は、ユーロクラスの D の製品を使った実験(D-s2-d0)をお見せします。これはもっと
大変で、2分間で既に天井に到達しています。3分後には、この部屋の中にいることができな
いぐらい熱くなります。このように煙が出てきていますから、熱が広がり、たぶん、床を伝わ
って広がりまして、このようにフラッシュオーバーが始まります。
次に、火に対する抵抗性についてご説明したいと思います。
火に対する抵抗性というのは、このように標準化された火災が起こったときに、構造物ある
いは建築材料が、いかに本来の機能を果たし続けるかということです。グラフの茶色のライン
が国際的なスタンダードで決められているカーブです。このように、ゆっくりした発達の火災
のカーブになります。
次に、緑色のラインは化石燃料のカーブです。上にあるのは、それに割増した化石燃料のカ
ーブで、例えばトンネルの中で起こった火災のような場合です。
それから、火災時の壁や柱の機能について実験しております。これは、いかに分離する機能
が進んでいるかというドアの実験です。これは、排煙の実験で、映画館の例です。それからこ
れは、安全装置などに対する信号の点検の例です。
ヨーロッパで新しく決められた表示方法ですが、ロード(荷重)に対する抵抗性、Rという
ものがあります。次に、Eは火に対する密閉性、Iは熱に対する断熱性能です。次に、Wは輻
射熱抵抗。つまり、ガラス窓の場合がそうですが、輻射熱があまり強いと、火災が起こってい
ない隣の部屋でも発火が起こるので、それを避けるために輻射熱を避けるということです。ま
た、火災のショックに対する抵抗性(M)を見ます。また、ドアのような構造のものが分離の
役割をきちんと果たすことができるか(C)、また、煙に対する密閉性(S)が要求されます。
例を一つだけ挙げて、このクラスをどのように使っているか説明をしたいと思います。これ
は支え壁でありまして、支え能力として 130mm。火に対する密閉性は 92mm で、断熱性が 4
6mm あります。ですから、この壁につきましては R120/RE90/ REI45 と表示されます。つま
り、支えの能力については R120 、火に対する密閉性は RE90、断熱性に対しては REI45 とな
ります。というわけで、これはメーカーにとっても、設計事務所にとっても、また、建設会社
にとりましても、ヨーロッパ全体で耐火性能について説明する統一した規格ができたことにな
ります。この情報はインターネットに掲載してありますのでサイト(dssf.cstb.fr)を見てくださ
い。これには、CSTBの安全・構造・耐火性能部局のデータが載っております。
以上です。ありがとうございました。
ベリエ氏の発表に関するディスカッション
●:日側メンバー、○:仏側メンバー
●
どうもありがとうございました。ご質問あるいはご意見をどうぞ。
●
今、EUの中で共通になるような基準をつくったという話ですが、それぞれの国は違った
基準規制の制度を持っていると思います。耐火性を例にとれば、どの国もそれぞれの製品に
対して、耐火性についてこれ以上の試験をそのプロダクトに対しては課さないという理解で
よろしいでしょうか。
というのも、日本では、例えば、窓は、市街地が密集しがちなために、表と裏の両方から耐
火の試験をします。延焼防止の点から、日本では
両面から窓を焼いて耐火性を確認し、ア
メリカでは、焼いた後に水をかけて、さらに安全性を確認するという試験をしますが、EU
では、どの国もこれ以上の試験はしないという理解でいいですか。
ユーロクラスを実現するのに 10 年前から準備しています。ですから、これ以上新しい試
○
験はしません。
ユーロクラスにはAからFまでありますけれども、Fはドイツのためにつくったクラスです
し、また、A1とA2もドイツのためにつくったようなクラスです。つまり、初めからすべ
ての国のこれまでにあった既製品全部をカバーするようにしておりますから、これですべて
をカバーできます。それからまた、EFTAの国々、新たにEUに入る国に対しても対応で
きるようになっています。
それから、もしもほかの国で、もっといい試験があるとか、あるいは、もっと厳しい試験が
あるということがありましたら、欧州標準化委員会は柔軟にできていますから、それも取り
入れようという対応になります。
●
確認のために伺いますが、そのCEマークは、各国の建築規制の中にそれが採用されるこ
とが合意されていて、それぞれの建築規制当局と話ができていると理解していいですか。
○
実際にこれを決めるまでは非常に数多くの実験をしましたし、あらゆるケースにおいて同
じような結果が出るような努力を重ねております。
ですから、例えばCEというマークがついたものはあちこちに流通して、CEをつけると、
より多くの市場に受け入れられるわけですから、いいわけです。そういう意味で、自由に競
争させることができます。
●
関連してご質問させていただきます。ということは、フランスの中での防火関係の規制は、
私が知る限りにおいては、内務省の省令で定められています。それと、今ご説明いただいた
ユーロコードは、今のところは無関係ということでよろしいでしょうか。
○
フランスの内務省令で定められた基準は今後アップデートされます。つまり、第1段階目
として、フランスの省令とヨーロッパのユーロクラスとの間の同等規格をつくります。そし
て、第2段階では、フランスの省令ではなくて、EUの規格だけを使うことになります。
●
ありがとうございました。
●
それでは、大変ありがとうございました。時間もかなりたっておりますので、次のレポー
トに移りたいと思います。