災害時の健康危機管理における保健師の役割

災害時の健康危機管理における保健師の役割
勝
俣
暁
子
新見公立短期大学地域看護学専攻科
【目的】
災害時の健康危機管理について市町村保健師は実際にどのような役割を自覚し、行動しているの
かを知る。また災害時の健康危機管理についての現状を知り、どのような課題があるかを明らかに
する。
【方法】
A 県の B 市、C 市、D 市に勤務している保健師を調査の対象とした。期間は平成 19 年 7 月 22 日∼
8 月 22 日。調査内容は先行研究「災害時ヘルスケアニーズに対する保健師の役割意識」で使われて
いた質問項目に筆者が加筆修正した質問紙を用いた。質問紙の項目は、災害や災害活動経験の有無、
研修・訓練等への参加の有無や災害発生時の健康危機管理とその準備に関する役割意識、現在の対
策で不足していると思うか、保健師の役割を遂行するにあたっての気がかりなどとした。
倫理的配慮として、回答は無記名とし、調査結果は統計的に処理されるため個人が特定されるこ
とはないこと、研究目的以外には使用しないことを文書で説明し、アンケートの回答をもって同意
を得たものとした。
【結果】
保健師の災害時の健康危機管理への役割意識は高く、また実際に訓練や研修への参加経験者も多
いことが分かった。しかし、訓練や研修へ参加はしているものの、実際に災害時に自分の役割意識
に基づいて役割行動を起こす自信を持っている者は少なかった。さらに、勤務年数が長い者ほど自
信がある者が多くなる傾向がみられたが、中には勤務年数が 10 年以上であり、災害時健康危機管理
についてなんらかの研修・訓練に参加したことがある者でも、全く自信がないと答えた者もいた。
また、多くの保健師が現在の対策では不足していると考えていた。具体的に不足していると思わ
れることとして「具体的な訓練の不足」「具体的かつ詳細なマニュアルの作成」などが挙がっていた。
【考察】
多くの保健師が現在の対策では足りていないと感じており、それが災害時に自分の役割行動を起
こす際の自信のなさにつながっていると考える。保健師は災害時の健康危機管理に対する準備の大
切さを感じている。しかし、日々の仕事に追われ、なかなかそれを実現できないと感じていた。保
健師はその葛藤を抱きながら仕事をしており、それが災害時の健康危機管理の現状なのではないか
と思われる。それを解消するためにも、研修やシミュレーションで過去の活動経験を保健師同士で
確認し合う場を設けることは大切なことである。さらに、活動経験者からノウハウを伝承してもら
うことで保健師が災害時の健康危機管理についてイメージをしやすくなる。このことから、活動経
験を分かち合うための機会をつくる努力が必要であるという認識を保健師一人ひとりが持つことが、
具体的な研修・訓練・マニュアルの作成につながるのではないかと考える。