分野材料・プロセス № シーズの名称 アパタイトを用いた人工骨の製造 シーズの分野 無機材料化学、複合材料工学 シーズの保有者 鹿児島大学工学部応用化学工学科 教授 平田好洋 108 TEL 099-285-8325 (1)技術の内容 *人の体は、多くの組織や器官から構成されている。それらの一部が疾患、老化、事故などによって失われ たときに、その組織や器官の機能を代行、あるいは補助するための生体組織や体液に接して使用されるの が生体材料である。その中でも骨組織は水酸化アパタイトとコラーゲンからなる複合材料である。 *20世紀前半から人工骨充填材料として金属やセラミックスなどによる代替が行われてきた。金属は人骨 としての力学的条件をある程度充たしているが、生体と直接結びつかない生体不活性な材料である。また、 化学的な面からみると金属材料の体内への溶出が心配される。しかし、水酸化アパタイトは生体硬組織の 無機主成分であり生体活性が非常に高い。 そのため、生体内で骨組織と直接結合する事ができる。 *このメカニズムを化学的な面からみると、体液は水酸化アパタイトに対して過飽和であり水酸化アパタイ ト表面に炭酸水酸アパタイト層が形成する。 このことにより骨を作る骨芽細胞の生成を促進し、骨芽細胞が水酸化アパタイト表面で新生骨を形成して 既存の骨と結合する。 (2)技術の特徴、特性(作用・効果) *これまでの研究例でさまざまなアパタイトを用いた生体材料が開発されてきた。 *強度や適合性に優れた材料の開発も進んできている。 しかし、変形挙動に注目して研究している例はほとんどない。 *骨は緻密化した部分とポーラスな部分とからなる複合材料である。この気孔部分にコラーゲンや生体組織 が入り込み新しい骨を作り出す。よって人工骨開発において気孔の存在は重要な要素である。 *骨は塑性変形ののち破壊が起こることが確認できる。この塑性変形には気孔の存在が大きく関係している と思われる。また、気孔が存在することで骨芽細胞やコラーゲンなどの有機物、血管などが気孔部分に入 り込む。これまではアパタイトサスペンジョンをスポンジに含浸したり、あるいは発泡剤を入れて多孔体 を作製していいる。 *これまでの研究結果からカーボンブラックを混合した試料でわずかな塑性変形を保っている事が確認で きた。 (3)技術の用途 *人工骨 (4)製品化、事業化に向けての当該技術の進捗レベル *現在、まだ基礎研究の段階でありこれまでの研究では強度が人骨の5分の1程度の低いものしかできてい ない。 *今後は成形時に等方加圧を行い、そして焼成をアルゴン中で行うことでカーボンブラックを含んだ状態で アパタイトの焼結を行う。その後、カーボンブラックを消失させる事でナノサイズの気孔を資料中に分散 させ強度上昇をはかる必要がある。 (5)技術の将来性(将来的な市場など産業への波及効果) *高齢化の時代を迎え、大きな市場が見込まれる (6)技術育成上の課題 *人体に使用する材料であることから、信頼たる材料ができた時点で医学的な分野で利用のための研究を経 る必要がある。 (7)特許等知的財産権の取得状況 *現時点では該当なし、研究が進むに従い今後出願の必要がでてくる。 (平成 13 年度認定)
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