一般演題(245) 循環虚脱をきたした肺塞栓症2症例 1 筑波学園病院救急診療部麻酔科 斎藤 重行 1、左津前 剛 1、森 智子 1 循環虚脱を伴う重症肺塞栓症は急激に発症し、蘇生 は容易ではない。今回、血管造影翌日に生じた1例 と、開腹術後4日、歩行開始3日目に生じ蘇生処置 を行い、共に循環が回復した1例を経験したので報 告する。 症例 1:58 歳 女性 150cm、55kg 膵臓癌の精査 のため腹部血管造影を行った。造影カテーテルは右 大腿静脈から挿入し、圧迫止血を行い、1日の安静 の後、歩行開始時に循環虚脱に陥った。直ちに蘇生 処置を行いながら、体表心エコーで右房右室の拡大 と三尖弁に血栓を認め肺塞栓症と診断した。心マッ サージを約1時間行い循環は回復したが、脳機能は 回復せず植物状態となり、6 ヶ月後に現疾患である 膵臓癌の進展により死亡した。 症例 2:71 歳 男性 157cm、49kg 腸重責で発 症した下降結腸癌のため開腹術を行った。翌日から 立位 歩行開始となったが 歩行開始3日目に突然 の意識障害循環虚脱をきたした。心マッサージを主 とする蘇生処置中に体表心エコー、経食道心エコー で右室の拡大を認めたが血栓は明らかではなかった。 肺塞栓症を疑い血栓溶解療法を開始したところ次第 に循環が安定した。心マッサージを 40 分行い循環は 回復した。 造影CTでは右肺動脈に欠損像を認めた。 その後循環は安定し、意識はほぼ回復した。 最近、肺塞栓症のリスクを評価しそれに応じた予防 処置がなされているが、いまだに多くの発症してい る。手術患者は術前から運動療法 術中のフットポ ンプ 臥床時の弾性ストッキング等で予防処置を行 っているが、血管造影後はそのリスクが十分認識さ れていない。 歩行開始 3 日目に生じたことで、潜在的な下肢静脈 血栓の危険性を認識すべきであると思われた。予防 には、リスク状態のより厳密な評価や抗凝固薬の投 与を考慮すべきであると思われた。
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