地層から読み取る土地の生い立ち 熊本西高等学校 地学部1年 ●研究目的 見岳山層から産出する化石と御船層から産出する化石を使い、それらの地層がどのよ うな環境で堆積していたかを調べる。 ●地層の概略紹介 ○見岳山層 見岳山層とは熊本県山都町の東方5 km にある見岳山より東南東方向にのびる長方形 (約1 km の幅長さ約4 km)の区域に分布する白亜系である。阿蘇火砕流堆積物に広く 覆われ露出の状態はあまり良くない。田村(参考文献)は御船層群下部と対比している。 ○御船層群 御船層群とは熊本平野の南方に飯田山を中心にして南西(松橋)から北東(西原村)にか けて向斜構造をもつ、層厚約 1500 mの地層である。豊富な化石を産出し、ミフネリュウ など恐竜化石の産出で有名である。中生代白亜紀後期の地層であることがわかっている。 ●研究準備 Ⅰ化石の採取・・・調査地から化石を採取 する。 Ⅱ化石のクリーニング・・・採取した化石 の周囲の不要な部分を取り除く。 Ⅲ化石の型取り・・・化石を水洗いして余 分な砂を落としシリコン樹脂で 化石の型を取る。 ●研究方法 見岳山層と御船層群の場所 外套線湾入の割合比較 アサリ、ヤマトシジミ、ゴショライアの 外套線湾入の割合をだし、それぞれの潜 る深さを比べる。 ●外套線と湾入の割合 ・二枚貝の軟体部分が殻の中に収まっている部分とその外側では、僅かな境界線の存在 や殻の表面の状態が異なる(ツヤやテカリ等)などの特徴がある。上記のシジミの画像 では、右上の部分(中央右側の部分ではない)に水管を収めた小さな凹み(外套線湾入) が見られる。また、ゴショライアの場合は外套線の一部をS字状に補助線で示している。 次の表は外套線の湾入の割合を示すもので、Sは湾入の深さをLは殻の横の長さを表 している。湾入の割合の大きいもの程深く潜り、小さいもの程浅く潜ったことになる。 ●調査結果 野外での調査と、化石から以下のことがわかった。 〇見岳山層の特徴・・・・・・全体が少し荒めの砂岩でできていた。 〇見岳山層化石の特徴・・・・二枚貝のゴショライアが大半を占めていた。 〇御船層の特徴・・・・・・・泥岩が主だったが一部は砂岩もあった。 〇御船層の特徴・・・・・・・シュードアサフィスやオステレア等も産出することにな っているが、今回の調査では主にテトリアが産出した。 ●研究結果 ○見岳山層の堆積環境 ・合弁のゴショライアが多数産出したため、その場所で化石になったと考えられる。 ・見岳層は化石広場の御船層と違い水流の影響を受ける浅い海で形成された 。 ○御船層(化石広場付近)の堆積環境 ・テトリアはシジミの仲間なので、河口付近などの汽水域であったと考えられる。 ●今後の課題 ・柱状図の取り方が雑だったのでもっと丁寧にとる必要があった。 ●謝辞 ・この研修を進めるに当たっては、御船恐竜博物館の池上直樹学芸員に、現地調査か ら化石の処理・写真撮影・研究のポイントにいたるまで全面的にご指導いただいた。 厚くお礼申し上げる。 ●参考文献 ・「上部白亜系見嶽山層」田村 実・沢村昌俊 第 12 号 第 1 分冊(自然科学)(1964) 熊本大学教育学部紀要 昭和 39 年 2 月 28 日発行
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