原油・原材料価格の高騰に関する ヒアリング調査

原油・原材料価格の高騰に関する
ヒアリング調査(追跡調査)
2007年10月
名古屋商工会議所
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○調査概要
1.目
的
原油・原材料価格の高止まりが企業に及ぼしている影響の実態を把握
するとともに、今後の意見活動に役立てる。
2.内
容
Ⅰ.原油・原材料価格の高騰に関する追跡調査・調査結果
Ⅱ.原油・原材料価格高騰の影響について
Ⅲ.価格転嫁について
Ⅳ.対策について
3.時
期
平成 19 年 8 月
4.対
象
平成 18 年 11 月に本所で実施した『中小企業の経営課題に関するア
ンケート』にご協力いただいた企業約 340 社(すべて名古屋市に本
社を有する従業員 300 名以下の会員事業所)
5.方
法
6.回答状況
訪問および電話によるヒアリング調査
202 社(回答率 70.6%)
7.回答企業内訳
業種
回答社数(社)
全体
構成(%)
202
100.0%
製造業
58
28.7%
卸売業
55
27.2%
小売業
8
4.0%
建設業
24
11.9%
2
1.0%
運輸業
13
6.4%
サービス業
35
17.3%
7
3.5%
不動産業
その他の業種
2
8.集計方法
本調査は平成 18 年 11 月の『中小企業の経営課題に関するアンケート調査』で行っ
た【原油・原材料価格の高騰による収益への影響】にご回答いただいた企業への追跡調
査として行った。そのため、質問の選択肢は、昨年のアンケートに用いたものをそのま
ま使用し、今回の回答もそれに合わせて集計した。
手順としては、ヒアリングの際、まず、相手方に前回調査時点の回答を告げ、それと
比較し、今の状態が「良くなった」か「変わらない」か「悪くなった」か、を判断して
いただいた。その判断を元に、前回の回答と比較し、回答の選択肢を単純に移行させた
ものを今回の回答として使用した。
EX)
②収益をやや
悪くなった
①収益を大幅に圧迫している
変わらない
②収益をやや圧迫している
良くなった
③それほど影響はないが、今
圧迫している
後圧迫するかもしれない
(前回の回答)
(判断)
(今回の回答)
尚、あくまで昨年のアンケートの選択肢を用いるので、①大幅に圧迫している、を回
答の上限、④影響はない、を下限とする。
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Ⅰ.原油・原材料価格の高騰に関する追跡調査・調査結果
平成 18 年 11 月の『中小企業の経営課題に関するアンケート調査』で行った【原油・
原材料価格の高騰による収益への影響】の調査結果より、今回、回答を得た企業(同一
企業)202 社のものを抜粋し、円グラフに表した。ふきだしの中には、今回の調査での
回答の変化について解説を示した。
(*網掛け部分は前回よりも影響が大きくなった企
業を表している)
前回、
④影響はないと回答した企業20社
前回、①収益を大幅に圧迫し
のうち、今回、5社で②収益をやや圧迫し
ていると回答した企業38社の
ているとの声が聞かれ、3社でも③それほ
うち、35社で今回の調査でも
ど影響はないが、今後圧迫するかもしれな
①収益を大きく圧迫していると
いとして、影響の拡大を懸念している。
回答した。
前回、③それほど影響はないが、今後圧
前回、②収益をやや圧迫してい
迫するかもしれないと回答した企業75社
ると回答した企業69社では、今
のうち、今回の調査では、3社が①収益を大
回の調査で8社が①収益を大幅
きく圧迫、21社で②収益をやや圧迫して
に圧迫しているとしており、前回
いるとし、実際に影響が現れてきている。
に比べて影響の拡大が見られた。
42社は前回に引き続き、③それほど影
また、59社で、前回に引き続
響はないが、今後圧迫するかもしれないと
き、②収益をやや圧迫している。
考えている。
また、上のグラフを数値で表すと右記の表のようになる。
(*網掛け部分は前回よりも影響が拡大した企業、☆は今回の調査から新たに影響が出
てきた企業を表している)
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【前回の回答】
【今回の回答】
35 社
①大幅に圧迫
①収益を大幅に圧迫している
38 社
②収益をやや圧迫している
②やや圧迫
1社
③今後圧迫するかもしれない
0社
④影響はない
2 社※
①大幅に圧迫
8社
59 社
②やや圧迫
69 社
③今後圧迫するかもしれない
1社
④影響はない
1社
③今のところ影響はないが、今後
①大幅に圧迫
3社 ☆
収益を圧迫するかもしれない
②やや圧迫
③今後圧迫するかもしれない 42 社
75 社
④影響はない
20 社
④影響はない
9社
①大幅に圧迫
0社 ☆
②やや圧迫
5社 ☆
③今後圧迫するかもしれない
2社
④影響はない
※ヒアリングの結果、前回の記入ミスと判明
21 社 ☆
(
計・・・39 社
13 社
☆計・・・29 社)
この結果、今回ヒアリングを行った 202 社のうち、2006 年 11 月の調査時点よりも
影響が拡大した企業は 39 社(19.3%)にのぼる。また、そのうちの 29 社(14.3%)は、
前回の調査時点ではまだ影響が見られなかったが、今回、新たに影響が出たと回答して
いる。
【ヒアリング結果より抜粋】
・金属類の価格が全て上がっている。銅で 3 倍、アルミニウムで 2 倍、亜鉛も 2 倍強
の値上がりをした。企業内努力で吸収するにはそろそろ限界がきている。
(製造業)
・原油、原材料の値上に乗じた便乗値上げもみられ、仕入れコストが上昇し、厳しくな
ってきた。価格転嫁は困難で、人件費を削って対応している。
(製造業・機械器具)
・半年に 11 回ペースで仕入れ価格が上昇し、徐々に収益が圧迫されてきた。価格転嫁
はできないが粘り強く交渉している。価格は秋ごろには落ち着くと予測しているが、
来春は増収減益だと思う。
(卸売業・機械器具)
・今まで以上に原油高の影響が出てきた。価格転嫁はできず、現在、ガソリンスタンド
と交渉している。
(運輸業)
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Ⅱ.原油・原材料価格高騰の影響について
今回ヒアリングを行った企業のうち、原材料価格の高騰で最も影響が大きかったのは
製造業で、約 8 割が収益に影響があると回答した。一方、原油価格高騰の影響は運送業
で最も大きく、8 割弱の企業が収益に影響があると回答した。
原油・原材料価格の高騰による企業への影響について、ヒアリング結果を以下にまと
めた。
原材料価格の高騰について
①鉄・非鉄金属
鉄や、銅、ステンレスなどの非鉄金属の値上がりにより、一般機械や自動車部品製造
業を中心に影響がみられた。好調である自動車部品メーカーでも先行きについては、受
注は高水準であっても、利益は減少すると見込んでいるとの声が多く聞かれた。
金属製品や機械部品を扱う卸売業でも、現時点では、仕入れ価格の上昇分の製品への
転嫁が困難で、時期をみて値上げを考えているとの声が多く聞かれた。また、今回の調
査対象の全 55 社の卸売業うち 15 社で昨年 10 月時点よりも影響の拡大が見られた。
【ヒアリング結果より抜粋】
・昨年の秋から状況に変化はなく、全体的に仕入れ価格は上昇している。半年位はフル
操業が続くので、仕事はあるが、利益が低くなっている。
(製造業・機械器具)
・銅、ステンレスを中心とする金属が上昇している。在庫販売分は利益が出るが、新規
仕入れ分を現在の価格で販売すると赤字になる。
(卸売)
・銅線価格が上昇しており、1∼2年前に見積もりを行った案件については再見積もり
している。
(建設業・設備)
②鉄・非鉄金属以外
砂糖、とうもろこし、小麦などの食料品や、木材、パルプ、ダンボールなど、幅広い
品目にわたり仕入れ価格が上昇しているが、現状では大きな影響は見られなかった。し
かしながら、一部のサービス業、卸売業をはじめ幅広い業種で、梱包資材の値上がりに
よる影響が見られるとの声や、現在値上げの要求を受けているとの声が聞かれ、今後の
動向によっては影響の拡大が懸念される。
【ヒアリング結果より抜粋】
(食品)
・とうもろこしの値上げでブドウ糖関連の製品の価格が上昇している。原油高の影響で梱
包材も1部上がっているが、現時点では企業努力で吸収している。
(製造業・食品)
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・秋頃から小麦、油の価格が上昇するとの通知があった。価格転嫁は困難な上、経費削
減はすでに行っており、特に対策はない。先行きは売上減少傾向。
(製造業・食品)
(木材・梱包資材)
・合板価格が上昇しており、以前よりもやや苦しくなってきた。価格転嫁は比較的進ん
でいるが、荷動きが悪くなっており、昨年に比べると落ち込むだろう。
(卸売業・木
材)
・木材価格が上昇している。価格転嫁はできず、対策は特にない。昨年よりも厳しく我
慢も限界に近い。
(卸売業・家具)
・梱包用に大量に使うダンボールや発泡スチロールに、9 月から値上げ要求があった。
(サ
ービス業・食品)
・ダンボールなどの梱包材の価格が上がっている。材料価格の値上げ要求があるものの、
まだ認めていない。
(製造業・化学製品)
原油価格の高騰について
原油価格の高騰による影響については、大きく①ガソリン代、機械、ボイラー設備等
の燃料費の影響②石油製品の影響の2つの特徴が見られた。
①ガソリン代、機械、ボイラー設備等の燃料費の影響
ガソリン価格の上昇については、社員の交通費、営業車のコスト増による影響がほと
んどの企業で見られたが、運輸業を除けば収益を圧迫するほどの影響はあまりみられな
かった。
しかしながら、運輸・倉庫業では、今回の調査対象の全 13 社のうち 10 社で実際の
影響が見られ、残りの 3 社でも今後の影響を懸念する声が聞かれており、原油価格上昇
による影響の大きさが伺えた。
その他には、ガラスや金属などを溶かす炉や建設用の重機、給湯や暖房、ビニールハ
ウスなどのボイラー設備の燃料費のコストアップにより、
「やや収益が圧迫されている」
との声が製造業、種苗業界、ホテルなどで聞かれた。
【ヒアリング結果より抜粋】
(運輸業界)
・軽油価格が上昇し、依然として状況は厳しい。価格転嫁もできず有効な対策は特にな
い。
(運輸業)
・今年の春以降大きく圧迫してきた。価格転嫁はとてもできず、対策は我慢しかない。
(運
輸業)
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・業績が改善傾向にあったが9月より原・燃料価格が上昇分を含んだ請求書が来るので
少し心配。価格転嫁はできない(運輸業・港湾)
(その他の業界)
・マイカー通勤が規則なので、社員に支給する交通費の補助が増えた。
(サービス業)
・ガソリン高により、営業所間での移動コストは上昇している。価格転嫁はできない。
利用者が減少するほどの影響はない。競争激化で厳しい状況にある。
(リース・自動
車)
・重機用に多量の軽油を消費しているので、軽油の高騰に頭を悩ませており、転嫁はで
きず経営努力で耐えることしかできない。
(建設業)
・ホテルで使用する給湯や暖房のための重油価格が上昇している。競争相手が多く、宿
泊料等への転嫁は難しい。
(サービス業・宿泊)
・ビニールハウスで重油を使用するため、影響が出ており、厳しい状況。価格転嫁が困
難で、先行きが不安である。
(製造業・種苗)
②石油製品の値上がりについて
樹脂製品、ビニール、発泡スチロール、ゴム等の石油製品の仕入れ価格が上昇してい
る一方で、上昇分を転嫁することが困難で、卸売業や小売業では「やや収益が圧迫され
ている」との声がいくつか聞かれた。
【ヒアリング結果より抜粋】
・9 月に、一斉に樹脂関係の材料の値上げ要求があると予測している。価格に転嫁せざ
るを得ないだろう。
(卸売業・樹脂)
・ビニール製品、トイレットペーパーなどの価格が上昇している。売値には転嫁してい
ないがそろそろ限界。
(サービス業)
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Ⅲ.価格転嫁について
全体的には、満足のいく価格転嫁はできていないという傾向が見られた。
原材料価格の価格転嫁の状況について
・卸売業では、価格転嫁を進めているとの声が最も多く聞かれたが、仕入れ値の高騰分
が自社で吸収できる限度を超えており、やむを得ず転嫁しているとのパターンが目立
った。
・製造業でも、価格転嫁が進んだとの声が比較的多く聞かれたが、進捗度合いについて
は企業間でばらつきが見られた。また、原材料の値上がりのスピードに価格転嫁が追
いつかないとの声も聞かれた。
・建設業では、新規の契約のときには上昇分を計算に入れて見積もりができる一方、既
に契約済みの案件については、ほとんど値上げが認められないとの声がいくつか聞か
れた。
・対消費者向けの商品やサービスについては、安価な外国商品などとの価格競争が激し
く値上げが困難であるとの声が目立った。
・ガソリンに関しては全体的にほとんど進んでおらず、価格転嫁を行わない企業も多く
見られた。
・深刻な影響を受けている運輸業では、競争激化のため、価格転嫁が思うように進まず
経営努力の限界に達しつつあるとの声がいくつか聞かれた。
【ヒアリング結果より抜粋】
【原材料】
(卸売業)
・以前に比べて、金属を使う製品やゴム手袋などの価格があがってきた。弊社は卸売業
なので転嫁せざるを得ない。
(卸売業・医療機器)
・9 月に、一斉に樹脂関係の材料の値上げ要求があると予測している。価格に転嫁せざ
るを得ないだろう。
(卸売業・樹脂)
(製造業)
・以前の急激な値上がり比べれば影響は少ない。取引先で状況に対する理解が進み、価
格転嫁はしやすくなった。
(製造業・電気機器)
・仕入れコストがあがったが、売値を連動してあげられず、仕入れ価格の値上げ分との
バランスが取れていない。半分くらいは価格転嫁ができた。取引先も現状を理解はし
ているものの、容易に認めてはくれない。
(製造業・機械器具)
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(建設業)
・電線価格が上がり、少し収益に影響が出てきた。価格転嫁はその都度交渉することで、
理解を得ているが、事前に契約した分については値上げできない。
(建設業・設備)
(対消費者向け商品やサービスを扱う企業)
・商品をスーパーに卸しているのだが、消費者は価格に敏感なため、とても転嫁はでき
る状況ではない。
(サービス業・食品)
【原油】
(運輸業)
・軽油価格が上昇し、依然厳しい。価格転嫁もできず有効な対策は特にない。
(運輸業・
一般貨物)
・運賃は 1 年契約のため見積もり金額以上の値上げは不可能。契約更新時には経費の明
細を見せて顧客に納得いただくよう交渉している。荷物の量も減っており、運賃も上
げられない状況で先行きが不安。
(運輸業・一般貨物)
・タクシー会社なので、燃料費の高騰は大変厳しい。運賃値上げは難しい。
(運輸業・
タクシー)
(その他の業界)
・8 月に再度値上げがあった。加工業なので仕入れ分は価格に転嫁できる。ガソリン代
などの経費は難しい。
(製造業・金属加工)
・運送会社から値上げ要求もあるが、価格転嫁はできない。
(建設業・設備)
・原材料価格分の転嫁は認めてもらえたが、工場の工作機械を動かすための油類は転嫁
できない。
(製造業)
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Ⅳ.対策について
最も有用な対策である価格転嫁は、ほとんどの企業で思うように進んでおらず、交渉
を粘り強く続けている企業が目立った。収益に影響があった企業の 9 割が、価格転嫁以
外の具体的な対策が聞かれなかった。
原材料価格高止まりへの対策としては、新製品や高付加価値製品の投入により既存製
品の減益分をカバーすることを検討しているとの声が聞かれたが、実行できている企業
はほとんどなかった。
原油価格の高止まりについては、ガソリン代の節約が多く聞かれた。具体的には、エ
コドライブの推進、営業ルートの効率化をはじめ、営業車を従来のものより、小型の車
への買い替えなどが聞かれた。運輸業の場合は、あるタクシー会社で、徹底的な見直し
により従前以上の利益を確保できたとの声が聞かれた。しかし、これは稀な事例であり、
ほとんどの企業で有効な対策ができず、価格転嫁のために粘り強い交渉をしている現状
にある。また、ガソリン以外の燃料費への対策としては、高効率の設備の導入による効
率化が聞かれた。
以上のように、原材料価格の高止まりには代替材料もなく、高付加価値商品の投入に
よる利益の確保など、材料価格以外の部分で対策を行っている。
原油価格の高止まりに関しては抜本的な解決策はないものの、ガソリン代の節約によ
り影響をやや抑制する効果が一部で見られた。
【ヒアリング結果より抜粋】
【原材料について】
・ボール紙が 7 月、9 月に 15%前後値上げになっている。価格転嫁は交渉しているが
困難で、とても吸収できない。新規製品の開発をしている。
(卸売業・紙パルプ)
・価格転嫁は困難で、既存製品の価格は変えられないので経費削減に力を入れている。
新製品の開発による付加価値創造が課題。
(製造業・電気機械)
・製品そのものを手に入れるのが困難。コストを下げることで上昇分は吸収しきれてい
る。旧製品は無理なので、新製品から転嫁している。
(製造業)
・売れていない旧製品を取りやめ、新製品を投入し、その際、原材料の上昇分を価格に
上乗せした。状況は以前よりもずっとよくなった。
(製造業・食品)
【原油について】
・待機中はタクシーのエンジンを切るよう運転手に指導、運転記録を分析し効率の良い
業務を促し、エコドライブのランキングをつける等の企業努力をしている。結果、燃
料が月あたり1万ℓほど削減された。
・運搬のために大型車を動かしているので、燃料費高騰の影響が大きい。対策としては
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効率の良いルートの設定をするくらい。
(サービス業・廃棄物処理)
・営業車の給油をセルフスタンドに変えて経費を節約している。
(建設業・設備)
・鋼材に関しては使用量が少なかったのであまり影響がなかったが、全国で60台ある
営業車のガソリン代が収益を圧迫している。現在、大型車の数を減らし、近距離移動
用に小型車を導入した。今後の効果に期待。
(製造業)
・ホテル業なので、光熱費は若干上昇したが影響が出るほどではない。客室に省エネタ
イプのシャワーヘッドを導入し、対策を行っている。
(サービス業・宿泊)
・ステンレス製品、燃料を中心に上昇(年間 3000 万円程度)している。価格転嫁はで
きないが昨年設備投資を行い省エネ効果が上がっている。まだ、7∼8 割程度の稼動
のため本格的に稼動できれば吸収可能。
(製造業・金属加工)
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