11.12.12 中南米カリブ海諸国共同体発足

中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)発足
12月3日、ラテンアメリカ・カリブ海諸国33カ国が参加して、新しい地域機構「中南米カ
リブ海諸国共同体 (CELAC)の 首脳会議が、ベネズエラの首都カラカスで開催され、
CELACが設立されました。米州大陸35カ国のうち、米国とカナダを除き、33カ国が参加
し、設立されたものです。
CELAは、総面積:約2000万平方㎞(世界の陸地の15%)をかかえ、人口、約5億9400万
人(世界の約9.8%)が住み、合計国内総生
産は4兆8045億ドル(世界の7.9%)に達し
ます。公式原語は、旧植民地の歴史を反映
し、スペイン語、ポルトガル語、英語、フ
ランス語となっています。
CELACは、リオ・グループ(1986)、中南
米・カリブ統合・開発首脳会議(CALC2008)
を発展的に引き継いだものです。従って、今回のCELACの設立をもって、この二つの機
構は解消しました。会議では、三つの基本文書:カラカス宣言、機構規約、2012年カラカ
ス行動計画が採択されました。機構規約によれば、機構は、首脳会議、外相会議、担当議
長局、諸国家調整会議、特別会議、前・現・次期議長国会議で構成されます。
CELACには、次の2つの基準
① 新自由主義経済政策(階級支配)
②
それを押付けた米国から自立した政策(民族支配)
に基づき、分類すると、次の4つの傾向の諸国が参加しています。
左翼政権(①を厳しく批判し、②がはっきりとしている政権):6カ国
キューバ、ベネズエラ、ウルグアイ、ボリビア、ニカラグア、エクアドル
中道左派政権(①を批判し、②がはっきりとしている政権):6カ国
ブラジル、アルゼンチン、エルサルバドル、ガイアナ、ドミニカ、ペルー
中道政権(①を批判しないが、②の自主的立場を堅持している政権):14カ国
チリ、グアテマラ、パラグアイ、ハイチ、ドミニカ共和国、セントビンセント及び
グラナディーン諸島 、アンティグア・バーブーダ、他カリブ海諸国(7)カ国
対米従属的傾向(①も②ももっていない政権):7カ国
ベリーズ、コロンビア、コスタリカ、ホンジュラス、メキシコ、パナマ、スリナム
と、様々な政治的、経済的国々が参加しています。しかし、そうした異なった理念、政治
的傾向を尊重しながら、33カ国が一つの組織に結集したことは歴史的な意味があります。
それでは、CELACは何を目指しているのでしょうか。その設立宣言(カラカス宣言)で
は、骨子を次のように述べています。
1. 社会の発展の外に排除されてきた人々を社会的に包摂すること。
2.
平等を伴った持続可能で、また統合の未来に希望をもたせる成長を図る。
3.
域内の言語、文化、政治形態、経済制度の多様性を尊重し、複数主義的統合をめざ
す。
4.
公正、民主的、自由な社会の建設という共通の課題と各国独自の道の選択を追求す
る。
5.
法律と人権を尊重する。
6.
国連憲章、国際法を遵守する。
7.
地域間の国際関係の原則として、次の原則を守る。
y
紛争の平和的解決、
y
武力の行使と脅迫の禁止、
y
民族自決権の尊重、
y
主権の尊重、
y
領土保全の尊重、
このように各国の多様性を尊重しつつも、平等、公正な社会の建設をめざすという共通の
社会的目標も掲げています。保守派の代表と思われる、メキシコのカルデロン大統領でさ
えも、共同体を中南米の「団結の主軸」としつつ、「貧困削減や教育・医療の向上など問
題を共同で解決していこう」と呼びかけています。
さらに、注目されるのは、CELACが核問題について、これまでになかったほど明確な原
則的態度を一致して表明したことです。
1. トラテロルコ条約に基づき、非核地帯を創設する。
2.
NPT は核廃絶への重要な貢献である。
3.
2010 年 5 月の NPT 会議を高く評価する。
4.
核保有国に核兵器使用禁止・廃絶を緊急に進めるように要求する。
5.
世界のすべての国に核実験全面禁止条約への加盟を要請する。
6.
全般的核軍縮、核兵器の全面的廃止、核エネルギーの平和利用を世界に提案する。
7. できるだけ早期の核廃絶を実現するための国際会議の開催に努力する。
なお、トラテロルコ条約は、1968年に発効し、2002年キューバが加盟して、中南米・カ
リブ海すべての国が参加した非核条約です。この条約では、中南米において、この地域に
おける核兵器の製造、実験、保有、使用また、他国の核兵器の持込、貯蔵を禁止していま
す。いちおう、この条約を米国、フランス、イギリスは尊重すると議定書に署名していま
す。しかし、この地域の核兵器の通過は、各加盟国の判断にゆだねるとしています。また、
核兵器不拡散条約(NPT)は、これも2002年のキューバの批准ですべての国が批准して
います。
(2011年12月12日
新藤通弘)