プロパティマネジメント会社 それぞれの個性と強み2013 (PDF 16.7MB)

11
4910180171130
03200
特集
市況回復期に改めて考える 強み と 伸ばす箇所
プロパティマネジメント
事業者総覧2014
本特集は 2002 年の調査開始より、今年で 12 回目となった。
約 300 社の PM 事業者にアンケートを送付し、回答を得られた 143 社について、
回答内容とそれらをまとめた分析を掲載する。
PM 事業者の経営状況はおおむね良好で“安定飛行”に入ってきた模様だ。
活発な物件取引が行われるなか、J-REIT をはじめとする中長期運用物件が増加、
しっかりした運営計画のもとバリューアップに取り組める状況が
生まれてきたためと思われる。
Illustrated by Hiroki Hasegawa
19
REPORT
PM 会社それぞれの個性と強み
ザイマックス
不動産市況は回復も、PM 会社受難の時代は続く
新時代のCREサービス提供で事業多角化をさらに推進
グループ会社を再編
COMMENT
事業会社のニーズも取込む
当社 がこのたびグループ 各社 の 企業再編 を 実施 したのは、一般事業会社
ザイマックスはオフィス・ 商業 ・ ホ
提供 していこうとする 狙 いがあります。日本 はデフレが 長 く 続 きすぎた
などの 不動産 オーナーに 対 してワンストップの 利便性 が 高 いサービスを
ことで、企業はあまりにも " 持たざる経営 " に偏りすぎてしまいました。
テルなど様々なアセット、そしてサー
ビスとしてもAM ・ PM ・ BM を全て
手掛ける総合不動産サービス企業
である。今年の 4 月 1 日時点の PM
受託件数は合計 593 棟 ( オフィス:440
しかし、不動産 を 自己 で 所有 し、使用 している 会社 もあれば、賃借 して
杉本和也 氏
常務執行役員
いる 会社 もある。本来、不動産 にはもっとさまざまな 取 り 組 み 方 があっ
てしかるべきです。当社 はこれまでアセットとしても 業務内容 としても
幅広 い 分野 で 不動産管理 サービスを 手 がけてきました。企業活動 に 欠 か
せない 不動産 との 関 わり 方、 マネジメントの 仕方 について、有意義 なソ
リューションを提供していけるものと自負しています。
棟、商業施設他 :153 棟 )、BM 受託件
数 1,418 棟 ( 部分管理含む )、ファシリ
うに語る。
「安倍政権の誕生と相前
といわれるなかにあっても、PM や
ティマネジメント対象拠点数 8,196
後して、日本の不動産市況は回復
BM など管理会社の " 冬の時代 " は
拠 点、AM 運 用 資 産 残 高 約 1,500
の動きを強めている。しかしこれはあ
続いている。期待先行型で賃料の
億 円にも上る。同 社は 今 年 10 月、
くまでデフレ、景気低迷からの脱却
目立った増額が見込みにくいなか、
グループ各社の大規模な再編を実
を先取りしたものであり、期待先行
物件取得競争ばかりが続いている。
施した。再編の内容は図表の通り。
の印象は拭えない。いまのマーケッ
そのしわ寄せは、AM ・ PM フィーな
これまではアセットや手掛けるサー
トはリーマンショック以前とは大きく
ど " コスト"と見做される部分に向か
ビス内容で分業体制を敷いていた
異なる。かつては不動産が金融マー
う。すでに金融商品化され、流動化
が、今後はワンストップ型による総合
ケットと結びつき、流動化あるいは
している不動産にはトラックレコード
力をより強固にしながら、エリア軸で
投資商品化されることでマーケットに
が蓄積されており、かつての費用水
の強化も図っていく。
物件が供給された。しかしいまは、
準をベースとしてさらなるディスカウ
ザイマックスグループでは近年、ホ
投資家間での物件循環が中心で新
ントに挑むわけである。
テル ・ 旅館の AM ・ PM を手がける
たな流入は以前ほど期待できない
「新規案件といっても、幾度かの投
アビリタス・ホスピタリティの M & A、
状況だ。そして先高感があるなかで
資家の所有を経ており、都度の入札
オフィス仲介サイト「サガーシア」の
は、売り手は少ない」。
によって PM フィーや BM コストがか
立ち上げ、シンガポールの駐在員事
これまでファンドや REIT などが主
なり低くなったと思われるものが多く
務所や韓国現地法人設立など、多
導してきた不動産投資市場が一つ
(同氏)。
みられる」
方面でのアクションがみられる。今
の踊り場を迎えたとみられるなかで、
アベノミクスのもとでデフレ脱却が
回の組織再編の主眼は、ファンド・
今回の組織再編は、いまいちど一般
叫ばれるなかにあっても、不動産運
REIT や機関投資家などいわゆるプ
事業会社への不動産ソリューション
営の足元を支える PM マーケットで
ロ投資家へのサービスに加え、一般
にも目を向け、サービスラインナップ
は、いまだにデフレスパイラル型の
事業会社に対しても積極的に不動
を多角化していく方針だ。
競争が続いているというわけだ。
産に関わるソリューションを提供して
いくというところにあるという。
この動きには、足元のマーケット
環境が大いに影響している。同社常
務執行役員の杉本和也氏は次のよ
30
PROPERTY MANAGEMENT 2013 Nov.
そのうえで杉本氏はこう警鐘を鳴
フィー価格競争では業界が疲弊する
生き残り策としての多角化が必要
実際、マーケットが回復しつつある
らす。
「責任を持って請けられる水
準を下回ってくるとなれば、証券化
不動産のマネジメントを担おうという
プレーヤーが減ってくるし、そういう
[図表]ザイマックスグループの再編内容
(現在)
オフィスビル
商業施設・店舗
ホテル・旅館
物流・倉庫
住居
ザイマックス
ザイマックスアクシス
(AXIS) ザイマックスキューブ
(CUBE) ザクテクノ
サービス
(XACU) アビリタス ホスピタリティ ザイマックスビルマネジメント
(XYBM)
ザイマックス
メンテナンスファクトリー ザイマックス
プロパティズ関西 地域を軸に組織体制の変更を実施
(2013 年 10 月以降)
東日本地区
ザイマックスプロパティズ
(AXIS/CUBE の合併)
不動産種類に関係なく、サービスを提供
ザイマックス
ビルマネジメント
ザクテクノ
サービス ザイマックス
メンテナンスファクトリー
関西地区
九州地区
ザイマックス
プロパティズ
関西
(AXIS/CUBE/XYBM の関西事業承継)
ザイマックス
プロパティズ
九州
(AXIS/CUBE/XYBM の九州事業承継)
(都内のビルメンテナンス契約について一定の範囲で
XYBM・XACU から承継)
各地区において全てのサービスを 1 社で提供
現象が既に出始めている。こうなる
できる場面も多いのではないか」。
動産を保有すべきか、賃貸すべきか
と、日本の不動産証券化市場の土
例えば、これまでのデフレ経済対
というCRE 戦略を当社とSGリアル
台が揺らいでくることになるのではな
応の CRE 戦略を実施してきた企業
ティとで考えてきたなかでの一つの
いか」。
では、オフバランスはノンコアの不
結果」
と説明する。
今回、独立系最大手のザイマック
動産から実施してきたはずである。
この 取り組 みには 時 勢もある。
スが新たな取り組みをはじめたこと
コアとなる不動産については継続し
リーマンショック以前の投資家のス
は、こういう背景を踏まえたところが
て保有しているが、老朽化したまま
タンスは、比較的短期での売買に
あるのかもしれない。
再投資せずに使用するなど、設備
よって高い IRR を稼ごうとするもの
の耐用は限界にきているケースも多
であった。その後、市場は大規模な
い。あるいは立地が良い場所にあり
調整を経験し、投資家の投資姿勢
ながら容積率を消化していない建物
はより中長期で安定した利回りを狙
も多く、再開発を行うことで再収益
う不動産本来の投資行動へと回帰
化を見込めるものもあろう。
しつつある。そうした動きが、SG ア
同社ならではのソリューションを提供
「CRE サービス」としてAM 会社を設立
ザイマックスが力を入れる事業会
社向けの不動産サービスとは、すな
「不動産を本業としていない会社に
セットマックス設立を後押ししたこと
わちCRE 関連ということになろうが、
とっては、思いもよらなかったような
は明らかだ。
過去 20 年間続いたデフレ環境のな
アイデアや選択肢を提供できる可能
杉本氏も「個々の企業が置かれ
かでの、" 持たざる経営 " を推進す
性もある。証券化のストラクチャーを
た状況、保有物件の立地やその他
るといった意味での CRE サービスと
利用できれば、ファイナンスの面でさ
の特性、あるいはマーケットの流れ
は大きく異なる。
(同氏)。
らに選択肢は広がる」
などを注意深く分析し、当社の経営
杉本氏はこう解説する。
「かつて
また、今年 10 月には SGリアルティ
資源やノウハウを活かして、ベストな
日本が元気だった時代、一般企業
と共同で、物流施設に投資する私
ソリューションを提供していく」と意
が事業の一部として、前向きに不動
募 REIT 立ち上げを前提とする AM
気込みを語る。
産を保有したり、投資事業を行った
会社「SG アセットマックス」を立ち
ザイマックスの提供する CRE サー
りということは当たり前のごとく行わ
上げた。この取組みもCRE サービ
ビスには早くも注目が高まっている。
れていた。確かに市場の先行きは
スの一環として位置付けられるもの
これまで PM や管理を受託してきた
不透明だが、今後日本経済が徐々
だ。
クライアントのほか、新規で問合せ
にインフレ傾向に向かうとすれば、
杉本氏は「佐川急便を中核とす
をしてくる企業も多い。不動産管理
企業の不動産への取り組み方が変
る SG ホールディングスグループは、
サービス業界の雄、ザイマックスの
わっていく可能性も高い。当社が不
運送業という業種上、多くの不動産
活躍のフィールドはさらに広がってい
動産の管理事業を通して蓄積してき
を利用している。今回の SG アセット
きそうである。
たノウハウを活かし、その手伝いが
マックスの設立は、多くの事業用不
31
REPORT
PM 会社それぞれの個性と強み
京阪カインド
2011年からPM事業をスタート
手厚いサービスを徹底的に提供することで信頼を獲得
グループ全体の不動産戦略を発展
COMMENT
フィービジネスにより注力する方針
山本哲也
氏
(左)
PM 事業部 課長
京阪カインドは、京阪電気鉄道が
小林仁
開発した分譲マンションの管理会社
PM 事業部 主任
小川頼人 氏(右)
常務取締役
氏
(中)
として 1978 年に創業。97 年に現在
の社名へと商号変更し、2011 年に
京阪グループ以外のオフィスビル ・
マンションの PM ・ BM 受託を目指
すべくプロパティマネジメント事業を
スタートした。
当社はまだ受託件数の少ない企業ですが、逆に言えばオーナーと密に接することで、彼らが必要
としていることをより深く理解できる企業だと考えています。オフィスビル・マンションともに、
日々の管理に至るまで、
全社で一丸となって運営にあたります。
(山本氏)
収益性の改善はもちろん、
PM をはじめとしたフィービジネスの強化は、京阪グループ全体でも主要なテーマのひとつです。
当社としては今後よりニーズが高まるであろう、物件のバリューアップをいかに達成するかとい
う点を当面の目標としています(小川氏)
。
2013 年 4 月時点の受託実績は、
分譲マンションが 8,601 戸(管理組
合 数 は 95 )、PM を受 託 するオフィ
スビル ・ マンションが 26 棟 ・ 23 万
32
“PM業務”の範疇をも超える
手厚いサービス提供を強みに
同 社は 2013 年に「京 阪 淀 屋 橋ビ
ル」のリニューアルを計画している。
同 物 件 は 地 下 1 階 地 上 9 階 建て、
4,695㎡に上る。オフィスビルは京阪
京阪カインドの強みとする部分を、
延床面積 9,692.71 ㎡の中規模ビル
電鉄の駅ビルが中心だが、分譲マ
運営の現場に携わる PM 事業部 主
であり、大阪市中央区の京阪本線 ・
ンションでは 11 年にはエス・ジェイ・
任 小林仁氏は「オーナー、テナント
淀屋橋駅に直結するが、築 50 年を
プロパティー ・ マネージメントのマン
の双方に対し、契約書上のメニュー
迎え、ハード面の改修が必要とされ
ション管理業務を譲受しており、首
に表 現しきれない領 域も含め、手
ていた。
都圏でも約 2,700 戸の管理を手掛
厚いサービスを徹底的に提供するこ
同社では「2023 年になっても選
けている。
と」と語る。PMとして後発であるか
ばれるオフィスビル」
とのコンセプトを
京阪グループとしては、これまで
らこそ、
どんな些細な事柄でも信頼構
立て、競合となるリニューアル実施
不動産事業の主軸は分譲マンショ
築の好機と捉え、
業務範囲ではない
物件について、一つひとつ現地に赴
ンと商業施設であったが、2000 年
と一蹴せずに対応するスタンスだ。
き綿密な調査を行った。トレンドをふ
代後半にはオフィスビルの取得にリ
同 社で は 担 当 物 件 の PM 業 務
まえつつも、できるだけ傷みにくいデ
ソースが割かれた。
以外の相談、例えば自宅リフォーム
ザインや素材を模索するなど、中長
「当社の PM 参入は鉄道系企業とし
や鉄道沿線の広告設置といったグ
期的な維持管理の目線に立ち、オー
ても後発にあたるが、京阪電鉄での
ループのリソースで解決できるオー
ナーと何度も意見を刷り合わせ、EV
直営時代からの人材とノウハウを引
ダーも、同社社員が最後まで責任を
ホール、トイレ、喫煙ルームといった
き継いでいる。技術系社員が在籍し
もって対応する。テナントが保有す
共用スペースの改装を計画中とのこ
ているので BM 業務も受託可能だ。
るある工場では、避雷針設置といっ
とである。
グループ全体では、単なる開発や取
た、グループでの対応も難しい要望を
同社では、今後も全社一丸となっ
得から発展し、不動産流動化ビジネ
受けたが、適切な解決策を提案し、
てテナントやオーナーとの信頼を積
スも視野に入れつつフィービジネス
継続的にフォローを行う徹底ぶりだ。
み重ね、
リレーションを拡大させてい
を強化していく。本件もその流れの
また、そうした 丁寧さ はビルの
くなかで案件受託を増やしていきた
(常務取締役 小川頼人氏)。
一環だ」
リニューアルでも活かされている。
いとしている。
PROPERTY MANAGEMENT 2013 Nov.
公共シィー・アール・イー
フルラインの専門性と経験が生み出す違いで
物流施設投資市場の発展を牽引
リーシングに強みを発揮
COMMENT
受託施設の稼働率は97%
物流施設 の 管理・運営には、 オフィスビルなど他 のアセットタイプと
公共シィー ・ アール ・イー(以下、
や 企画・開発を行っており、 テナントや荷主企業とも豊富なパイプを
は異 なる独特 のノウハウが必要 です。当社は物流施設に注力して PM
有しています。施設タイプも、最新型のマルチ型・BTS 型はもとより、
公共 CRE )は、かつてのコマーシャ
ル ・ アールイー(以 下、CRE 社)を
前身とし 2009 年に設立された会社
である(2011 年に天幸総建を合併)。
中小規模 のストック型の施設まで幅広く対応、高い実績をあげていま
後藤信秀 氏
執行役員
不動産管理事業本部
本部長
す。
「もっと早くから委託すればよかった 」
「
、次の 物件もお願いします」
と引き続き評価していただけるよう、今後も質の高い PM を提供して
いくことで、一層のシェア拡大を実現するとともに、物流施設投資市
場 の発展に貢献していきたいと考えています。
2013 年 7 月末時点の受託実績は合
計 68 万 4,166 坪。このうち物 流 施
フィスビル開発 ・ 賃貸業で実績のあ
ている。
設が 81%の55 万 4,768 坪を占める。
る不動産会社でさえ、物流施設の
同社によれば、物流施設開発で
CRE 社が手がけた物流施設など事
リーシングで苦戦するケースもある。
最も大切なのは徹底的なマーケティ
業 用 不 動 産の PM 事 業を承 継し、
この点において公共 CRE は、長
ングだと指摘する。特定のテナント
実績を伸ばしている。
年のテナント企業との豊富なリレー
向けの BTS 型に比べ、マルチテナン
この背景には、公共 CRE が物流
ションにより、企業ごとに適確な窓
ト型施設のほうが投資家受けは良
施設の管理 ・ 運営に特化し、リーシ
口担当者とのパイプを有しているこ
く、デベロッパー間では主流となって
ングや PM、あるいは開発段階にお
とが強みであり、更に業種別荷主向
いるが、汎用性を重視すれば結果
ける企画アドバイザリー業務にいた
けセミナーを開催するなど、その繋が
最大公約数的なものとなり、テナント
るまでワンストップで提供できるとい
りを強化している。2013 年 4 月末時
目線では過不足が目立つスペックと
う付加価値がある。物流施設投資
点で、運営する物流施設の稼働率
なりかねないリスクがある。大型のマ
の拡大に伴い、近年、同分野へ新
は 97 %の高稼働を実現、同社への
ルチテナント型物流施設へのニーズ
規参入する PM 会社も増加している
依頼も近年増加傾向だという。
が高まっているとはいえ、多層階の
中型の BOX タイプのニーズも確実
が、その多くは建物管理にとどまり、
AM 自らが PM 領域の大半をカバー
することで成り立っている PM 業務
とは専門性と経験値が大きく異なっ
物流施設専門PM会社のノウハウを
結集した開発プロジェクトが始動
に存在するという。
ひと口に大型物流施設とはいえ、
保 管 型の DC 型 や、通 過 型の TC
ているといえる。
公共 CRE では、自ら物流施設の
型などがあり、物流のスピード、庫
昨今では、大型の物流施設開発
企画 ・ 開発を行う「物流投資企画
内オペレーションや入出庫オペレー
に新たに参入する企業が増え、企
事業」にも取り組んでいる。将来的
ション、扱う荷物に応じた空調設備
画段階でのノウハウを求める依頼も
には流動化し、管理 ・ 運営を受託
レベルなどもテナント・ 荷主ごとに
増加しているという。また AM の力
する事業であるが、同事業が注目さ
異なり、物流施設は非常にオペレー
量により、竣工直後は満室稼働を達
れるのは、長年に渡る PM 実績に裏
ショナルな要素が強い。立地や想定
成しても、将来のテナント入替え局
付けされた専門ノウハウを結集した
されるテナントの属性などを綿密に
面でのリーシングに不安を抱える投
物流施設開発事業であるということ
マーケティングできる同社の高い専
資家や AM 会社は数多い。リーシン
だ。すでに埼玉県草加市と八潮市
門性を土台とする開発物件は、将来
グ窓口が総務部などではなく、経営
で 2 施設の開発に着手し、草加の
キャッシュフローにおいて違いを生
企画や財務部門なども絡むため、オ
施設は今年 6 月に竣工、満室稼働し
んでいくであろう。
33
REPORT
PM 会社それぞれの個性と強み
国際ランド&ディベロップメント
ソフトとハード両面で直接収益に繋げるバリューアップ
環境価値向上に加えアセアン進出関連の不動産・建設支援も
従来型PMに効果的
「+α」
もたらす
COMMENT
ベトナムでCM、PM事業も展開
金丸直幹 氏(左)
代表取締役社長
国 際ランド&ディベロップメント
玉置武治 氏(右)
(以下、KLD )は不動産の開発やコ
ンサルティング、そして AM や PM
を手掛ける会社である。近年では成
長著しいアジアにも進出し、ベトナ
ムでコンストラクションマネジメント
(CM )や PM 事業を展開している。
KLD の PM の特徴は、伝統的に
PM 業務で行われてきたリーシング
&マネジメントによる収益向上策に
プロパティマネジメント部
プロパティマネジメントグループ主任
当社の PM の特徴は、不動産のそのものの価値と環境価値の向上に一体的に取り組めるところに
あります。PM 事業でもっとも重要なことはキャッシュフローの源泉となるリーシングにあるこ
とはいうまでもありません。当社 でもこの 部分 に 力点 をおき PM を 行 っています。 これに 加 え、
メガソーラー事業の建設や管理で培ったノウハウを活かし、省エネ、CO2 削減などの環境価値を
高める提案を行うことで高い成果をあげています。大手 PM 会社では手掛けない案件にも対応可
能なケースもあり、大手企業やファンド会社だけではなく、個人の不動産オーナーからの引き合
いも多くあります(玉置氏)。
国際ランド&ディベロップメントが取組む建物の省エネ・創エネ・蓄エネ対策のイメージ図
加え、
「省エネ・ 創エネ・ 蓄エネ」対
策に取り組むことで資産価値&収益
価値の両面から不動産バリューアッ
プを達成できる点にある(図参照)。
こうした施策が可能なのは、KLD
がオフィスビルなどのいわゆる伝統
的なアセットタイプに限らず、メガ
ソーラー事業も推進し、太陽光発電
所の企画 ・ 建設から管理までを一
34
貫して手がけていることによる。
ニューアルでは、補助金の活用も積
ストを削減できるケースもある。
不 動 産の環 境 価 値の向 上 策に
極的に検討する。どのような補助金
日本企業の進出も依然旺盛であ
は、設備機器を更新して大きな成果
が利用可能となるのかは個別の事
る。それに伴い、企 業 活 動に必 要
を生み出すものや、照明のLED化
例ごとに綿密な調査が必要である。
な、住まい、食事、娯楽、交通を始
など小規模なものまでさまざまある。
KLD では、補助金導入を条件に成
め、一体的なまちづくり、サービスの
ビルでは空調や照明の電気料金が
功報酬型で取り組むケースもある。
必要性が出てきている。
コストの大きな部分を占めており、例
また同社ではベトナム・ ホーチミ
ベトナムは ASEAN 諸国でも3 番
えば会議室の照明、トイレなどに自
ン市に拠点をおき、日系のメーカー
目となる 8,000 万人の人口を抱える
動タイマーを設置するだけでも効果
や商社などが現地に工場を建設、
新興国。経済成長で内需が見込め
はある。エネルギーコスト低減が今
移転する際の CM を展開している。
るほか、
ミャンマーなど他のインドシナ
後重要になる。KLD は、ハードとソ
2013 年 10 月時点で 11 のプロジェク
半島の隣国にも近く地の利は大き
フトの両面を通して、ビルオーナーの
トが進行中である。KLD が事業主
KLDはベトナムを中心として、そ
い。
ニーズと予算にあった提案を行うこ
とゼネコンの間に入り、建築計画や
の隣国も含め、日系企業の進出を積
とが可能である。
見積りの精査を行うことで、CM な
極的にサポートをしていく方針だ。
大 規 模なビルの 設 備 更 新 やリ
しの直接発注に比べ 2∼3 割程度コ
PROPERTY MANAGEMENT 2013 Nov.
清水総合開発
清水建設グループの確かな技術力を活かし
シームレスなPM・BM サービスを提供
ソフト・ハードが一体となったPM
COMMENT
長谷川隆一 氏(中) 斉藤智宏 氏(右)
清水総合開発は清水建設グルー
ビル管理事業本部
営業企画部
プの不動産会社であり、その前身
長津太郎 氏(左)
は清水建設の用地部から分離独立
ビル管理事業本部
マンション管理事業第 2 部
した丸喜不動産である。オフィスビ
ルやマンションなどの PM に強みを
もつほか、自らマンションの開発も
手がけている。2013 年 9 月時点の
受託実績は、分譲マンションの管
理などを除く純 粋な PM のみで 約
ビル管理事業本部
PM 事業第 2 部
当社は清水建設グループの一員として、ソフト面からハード面まで一体的に建物の運営・管理サー
ビスを提供できることを最大の強みとしています。不動産市場が回復の動きをみせるなか、投資
家の保有スタンスは短期から中長期へと変化をみせています。建物診断や LCC(ライフサイクル
コスト)の算定、大規模修繕やリニューアルに実績をもつ PM・BM サービスは一層ニーズが高ま
ると 考 えています。PM でもっとも 大切 なリーシングについても、当社独自の 戦略 と 親会社 であ
る清水建設との連携から成果を上げています。今後は大阪や名古屋も含め、三大都市圏でもサー
ビスを展開していく狙いです。
130 棟となっている。クライアントは、
J-REIT や私募ファンドなどの投資
いまだ回復の動きは鈍い。賃貸マン
ハード面についてはどうか、ビル
家や AM 会社が 60%程度(面積ベー
ションについては、1 ルームなど小
管理事業本部 PM 事業第 2 部の斉
ス)を占める。
型のユニットの市況は回復してきた
藤智宏氏は説明する。
「確かな技術
清 水 総 合 開 発 が 提 供 する PM
が、ファミリーなどグロス賃料が大き
力を持って積極的にバリューアップ
サービスの最 大の特 徴は、なんと
い物件についてはいまだ弱含みの
策を提案する。オフィスビルでは、例
いってもPMとBM を一体的に提供
傾向もある」。
えば共用部の水回りやサインの更
できる「PBOS(PM ・ BM One-Stop
こうしたなか、金融危機直後から
新、賃貸マンションでは部屋の壁紙
Solution )」である。PM ・ BM 間 の
受託先の投資家やAM会社からもっ
をエリアの特性に合った柄に変更す
業務のもれや重複を排除し、シーム
とも多く寄せられるのは、やはりリー
るなど、簡単なリニューアルを行うだ
レスかつ効率的な運営 ・ 管理体制
シングに関する要望である。
けでも稼働率アップや賃料水準の
を敷いている。ゼネコン系列不動産
同社ならではのリーシングの強化
維持に効果が見込める」。
会社として、設計 ・ 施工、設備機器
策について、ソフトとハードの両面か
こうしたリーシング面での努力は
あるいは CM 分野に明るい人材を
ら以下のように両氏は語る。ソフト面
確実に結果を生んでいる。湾岸エ
社内に数多く抱えているからこそ実
については、
「さまざまな仲介会社と
リアのオフィスビルでは、稼働率が
現できる体制といえる。
密接にコンタクトをとり、リーシングを
50 %以下だった物件の PM を受託
進めている。また、親会社である清
し、約 1 年で稼働率を 100 %に高め
水建設関連部署とも連携を取りなが
ることに成功した。賃貸マンション
ら情報の収集に努めている。賃貸マ
については、受託物件の平均稼働
ンションについては、事業本部内に
率は 96 %を超えている。清水建設
同社ビル管理事業本部 営業企画
土 ・ 日、祝日も含めて稼動する専用
グループの一員として培ってきた確
部の長谷川隆一氏と同事業本部 マ
のリーシングセンターを設け、エンド
かな技術力を礎に、PMとBM が一
ンション管理事業第 2 部の長津太
ユーザーの問合せへの対応、あるい
体となった同社の管理 ・ 運営サービ
郎氏は、足下の不動産マーケットに
はマーケティングなどを行うことで、
スは今後も投資家やオーナーの支
ついてこう説明する。
「オフィス市場
借り手側の生の声を収集し、成約率
持を集めていくだろう。
は都心部のプライムエリアを除けば、
を高める努力をしている」。
清水総合開発ならではのリーシング
マンションの平均稼働率は 96%超
35
REPORT
PM 会社それぞれの個性と強み
千代田ビルマネジメント
受託物件のテナント定着率が高水準を維持
オーナー、テナントに愛される独自のPBMを確立
BMを基盤とするテナントとの
日常的なコミュニケーションが強み
千代田ビルマネジメントは、1951
COMMENT
浅場友美 氏(左
★1
)
ビル事業部
プロパティマネジメント第一課
年創業の老舗の建物管理会社であ
る。1 都 3 県に所在するオフィスビル
を中心に161 物件、約 44 万㎡(2013
年 10 月時点)の管理 ・ 運営実績を有
している。受託資産をみると、個人
や一般事業会社が保有するビルの
ほか、上場 REIT や私募ファンドの
所有する大型ビルの管理 ・ 運営も
★2
)
ビル事業部
プロパティマネジメント第ニ課
課長代理
私 が 新卒採用で入社した初の女性社員です。設備を含めビルそのものを深く知っていることが私の
武器であり、 それを誇りに思っています。 メンテナンスの 作業立合 や設備 のトラブル対応 でテナン
トと接する時などは、あえて作業着で臨むこともありますね。
(前原氏)
前職 は旅行代理店 で 務めていました。 お客様との関係 が 1 回きりになってしまうことに寂しさを感
じていましたが、PM 業務 はオーナーやテナントと長 いお付き 合 いができることが 魅力的です。子
(浅場氏)
育 ての経験もビル・マンション管理にフィードバックできると思います。
★ 1– 2007 年入社、2012 年長男出産、2013 年職場復帰
★ 2– 2000 年入社、2006 年一級建築士、2010 年長女出産、2011 年職場復帰
手がけている。
時の説得力を増すのだという。
社会であることを踏まえれば特筆す
同社の管理・運営スタイルの特徴
ビルに訪れる機会が増えれば、必
べき数字といえようが、それが同社
は、創 業から62 年の実 績のある建
然的にテナント企業とのフェイス トゥ
PBM のクオリティ向上に大きく貢献
物のハード部分の BM を基本として、
フェイスでのコミュニケーションを密
しているのだという。家賃の督促な
PM の領域までのいわゆる PBM に
接にできるため、日々の管理に対す
どのテナント対応やクレームの処理
ある。今でこそPBM を標榜する管理
る要望を直接ヒアリングできるほか、
における女性ならではの人当たりの
会社は珍しくないが、同社では既に
他のビルから引き抜きの動きなどが
良さはもとより、清掃や管理に対す
1975 年にビル経 営 代 行 業へ 進 出
あった際にもいち早く情報をキャッチ
るこだわりや、美観のセンスに関し
し、1984 年よりサブリースを行い実
でき、オーナーとテナント両者に納得
ても、男性社員にはない持ち味が発
績を積み上げた、
いわば PBM の草
できる交渉を迅速に開始することも
揮される。それらが活かされた結果、
分け的存在である。
もちろん、
クライア
可能になっているという。
「千代田ビ
テナントや投資家の満足度を高める
ントのニーズに合わせ PM あるいは
ルマネジメントが受託するビルはテナ
成果につながっているため、同社で
BMのみを受託するケースもあるよう
ントの定着率が高い」というオーナー
は産休 ・ 育休制度なども整備した。
にオーダーメイド型の管理も得意とす
からの評価には、
こうしたテナントか
オーナーやテナントに長く愛される理
るところだが、PMとBM を合わせた
ら愛されるPBM があると言えそうだ。
由のひとつには、こうした社員を大
受託のほうがより強みを発揮でき、
業
務集約によるメリットにとどまらない大
切にする同社の社風も大きく影響し
PM マネジャーに女性社員を積極活用
ていると思われる。
きめ細かなサービス対応に高評価
いずれにせよ、BM を基礎とした
は、担当者自らがビルに足を運ぶ頻
こうした同社の PBM は、多くの女
接なコミュニケーションを加えた同
度を高める。日常的にビルの設備か
性社員が支えていることも注目され
社の管理・運営手法は、REIT・ファ
ら使い勝手、管理状態までも知り尽
る。かねてより同社では女性社員を
ンド物件においても大きな成果を上
くしているということは、入居テナン
積極的に登用しており、ビル事業部
げており、規模や効率性ばかりが追
トおよびオーナーからの信頼を高め
では約 3 分の 1 を女性社員が占め
求される潮流に一石を投じるものと
ることに加え、テナント候補の内覧
ている。不動産業界が伝統的に男
して、大いに注目される。
きな違いを生み出せるのだという。
PMとBM を一体に提供すること
36
前原敦子 氏(右
PROPERTY MANAGEMENT 2013 Nov.
PBM に、テナントやオーナーとの密
東急コミュニティー
PMとBM が一体となった管理が最大の強み
入居テナントの要望も管理・運営に活かす
全国ネットワークを活かした管理
COMMENT
住宅分野では M& Aで管理戸数増
東急コミュニティーは、賃貸マン
444 戸、オフィスその他が 268 件と
なっている 。
管 理 の 受 託 先は、個 人 や 一 般
賃貸住宅事業部
開発営業センター
事業企画課 課長
ビルマネジメント事業部
第一資産マネジメント部 運営チーム マネージャー
管理 ・ 運営を幅広く手がけている。
託実績は、マンション 792 件 ・ 2 万
石黒行隆 氏(右)
営業開発事業部
第二営業部 営業チーム マネージャー
児玉武幸 氏(中)
ション、オフィスビルや商業施設の
2013 年 3 月末 時 点 の 賃 貸 管 理 受
本島与平 氏(左)
当社の PM の特徴は、PM と BM が一体となった管理・運営ができるところにあります。BM の視点
を活かしつつ、競争力の高い PM を提供していきます(本島氏)
。
オフィスマーケットについては、都心部の空室率低下傾向とは裏腹に、周辺部ではいまだ回復に遅れ
がみられます。市況やテナント情報を漏らさず収集・分析することでリーシングに役立てるとともに、
。
立地やビルの特性に合わせたリニューアルも積極的に提案し、稼働を高めていきます(児玉氏)
賃貸 マンションの PM では入居 テナントの 意見や 要望 にも注意深く耳 を 傾 け、 オーナーに的確 に
フィードバックすることで、質の高い管理・運営サービスを実現しています(石黒氏)
。
事 業 会 社 の ほ か、私 募ファンド、
J-REIT など多岐にわたる。なお東
急不動産からの物件受託は約 2 割
産、東急リバブル、そして同社が持
同社としても、地域やビルの特性に
で、グループ以外からの受託が多い
株会社「東急不動産ホールディング
合わせ、ビルのコンバージョンも含
点も特徴だ。
ス」のもとに統合されたことにより、3
めたさまざまな提案を行い稼働率向
同社の強みは、PMとBM が一体
社間の連携もさらに密なものとして
上を達成している。
となった管理 ・ 運営サービスを全国
いく。
賃貸マンションについてもオフィス
ビルと同様、郊外部で回復の遅れ
区で提供できるところにある。拠点
を各主要都市に構え、そのネットワー
回復が遅れる郊外マーケットでも
が見受けられる。とくにファミリータイ
PM としての実力を最大限発揮する
プにはその傾向が強く、消費税 8 %
その PM の 特 徴 は、現 場 の 声、
東急コミュニティーは賃貸市況に
のなかには賃貸住宅から分譲マン
入居テナントからの意見や要望を
ついて、ここ 1 年あまりで好転してき
ション購入へ踏み切る動きもある。
取り入れた管理にある。現場からの
たと説明する。まずオフィスについて
そうした駆け込み需要も影響してい
フィードバックをオーナーに的確に伝
は、都心 5 区を中心に空室率は低
る可能性が高い。
えることで、オーナー目線だけでな
下を続けている。同社の主要拠点
同社営業開発事業部 第二営業
く、入居者の目線も意識した質の高
がある渋谷や恵比寿周辺エリアに
部 営業チーム マネージャーの本島
い PM を目指しているのである。
ついても、テナントの床需要が旺盛
与平氏は「オフィス、マンションとも、
また同 社は 今 年 2 月、分 譲マン
で品薄感も出ており、賃料も強含み
回復のスピードが都心部と郊外部で
ション管 理のユナイテッドコミュニ
で推移しつつある。
異なる。遅行するマーケットでいかに
ティーズ(本社:東京都品川区)の株式
一方で郊外部、都内でも依然と
パフォーマンスを上げていけるかが
を M & A により取得した。ユナイテッ
して回復が弱い地域もある。個人
PM 会社として最大の腕の見せどこ
ドコミュニティーズは分譲マンション
や事業会社のビルオーナーのなか
ろである」と話す。市況やテナント情
の管理がメインであるものの、ともに
には、オフィスとしての求心力が弱く
報を徹底的に収集し、リーシングを
連携して取り組んでいくという。
なった地域ではビルを医療関係など
含む管理 ・ 運営で、オーナーに全力
さらに今年 10 月からは東急不動
の別の業態に賃貸する動きもある。
で貢献していく構えだ。
ク力を活かして幅広い地域でサービ
スを提供する。
への引上げを前にして、ファミリー層
37
REPORT
PM 会社それぞれの個性と強み
東急不動産SCマネジメント
商業PMとして再生・リニューアルに加え
大規模ビル商業ゾーンのマネジメントにも注力
東急不動産とも連携し
COMMENT
再生・リニューアル案件を積極推進
小原雅春 氏(左)
経営企画部 経営企画・広報グループ
兼 運営力向上推進グループ サブリーダー
東 急 不 動 産 SC マネジメントは、
2009 年 1 月に 東 急 不 動 産 60 %、
東急コミュニティー40 %の出資で設
立。東急不動産所有物件のほか、
グループが運営するファンド・ REIT
渡辺修五 氏(中)
述本匡平 氏(右)
事業企画部
プロジェクト推進グループ
サブリーダー
賃事業企画部
プロジェクト推進グループ
当社は東急プラザの開発・運営で培ったノウハウが核にあり、設立時点の受託件数は渋谷、蒲田
と箕面(大阪府)の 3 施設だけでしたが、徐々にここまで積み上げてくることができました。リー
の組入れ物件、そしてグループ外の
マンショック後は PM フィーについても価格競争一辺倒の部分が大きかったものの、ここにきて
物件を受託するPMとして、独立性・
「成果を上げるためにはこれだけの投資・費用が必要です」と説明できれば納得いただけるように
もなってきました。商業施設は特に個別性が高く、現状厳しくともマーケットとして可能性があ
専門性をより高めるべく誕生したとい
る施設については、しっかりとサポートできる用意があります。総合デベロッパー直系という強
う経緯をもつ。
みを活かしながら、積極的にグループ外からの案件受託も目指していきます(小原氏)
。
同 社 は 2013 年 9 月末 時 点では
50 施設、合計約 65 万㎡の店舗面
ン、地上 5 階∼9 階を行政ゾーンと
町ビル」商業ゾーンのプロジェクトマ
積に、入居テナント数は約 1,500 に
する官民一体の複合施設として再生
ネジメント業務を受託した。
も上る。50 施設のうち、日本リテール
し、2014 年春にオープンする計画。
同物件は来年 6 月を竣工予定とし
ファンド投資法人の「Gビル三軒茶
同社は、商業ゾーン開業までのプロ
て建替えが進行中で、同社はマーケッ
屋01 」や日本土地建物の「LuRaRa
ジェクトマネジメントと開発後の運営
ト調査、MD プランニング、リーシン
をサポートする。
グ、テナント内装監理に至るまで全般
ループ外の物件となる。
この 9 月20 日に開業した「東急プ
的に請け負っており、竣工後の PM
東急不動産グループの商業施設
ラザ 新長田」は今年 1 月に大丸新
受託についても協議を進めている。
開発 ・ 運営を通して培ってきたノウ
長田店が撤退した後、東急不動産
「単に商業施設の運営を請け負うだ
ハウを基に実績を積み上げ、グルー
が神戸市の外郭団体である「神戸
けでなく、業務の幅を広げていきた
プ外からの業務受託を伸ばしてい
すまいまちづくり公社」より借り受け、
い。活 躍できる場は、SC や 店 舗 ・
くというスタンスが同社の基本方針
同社が PM 業務を受託している。西
飲食店ビルだけではないはずだ。今
だ。主にグループ外からの案件を担
友を核店舗に書店や衣料品店、カ
後も増えていくであろう大規模ビル
当する事業企画部 プロジェクト推進
フェなど 53 店舗を誘致し運営を開
の建替えや商業ゾーン再活性化案
グループの述本匡平氏は「直近で
始した。
件では、特に専門の運営チームを持
(ルララ)こうほく」など 15 施設がグ
寄せられる相談は、稼働率や売上
が低下、あるいはキーテナントが退
去してしまった施設のリニューアル ・
再生関連の案件が多い」
と語る。
38
たない企業を中心にこうした提案を
大規模ビル建替え・リニューアル時の
商業ゾーン部分にさらなるチャンス
積極的に進めていきたい」(事業企
画部 プロジェクト推進グループ サブリー
ダー 渡辺修五氏)。
例えば現在進行中の「(仮称)あ
既存施設の再生に加えて近年同
同社としても既存運営施設で着
つぎ元気館」プロジェクトは 2008 年
社による新たな動きとして挙げられ
実に成果を上げながら、グループ外
に撤退したパルコが入居していた
るのは、オフィスビルの新築 ・ 建て
物件の受託、提供サービスの多角
旧厚木パルコビルを厚木市が取得
替え物件のプロジェクトだ。同社は
化を全社的な目標として積極的に推
し、地下 1 階∼地上 4 階を商業ゾー
昨年 1 月に「(仮称)日本生命大手
進していく構えだ。
PROPERTY MANAGEMENT 2013 Nov.
長谷工ライブネット
業務ごとに専門特化した分業体制で
高品質かつ均一なPMサービスを提供
法人ネットワークと BM 機能の内製化
COMMENT
によるワンストップサービスが強み
PM 会社に求められているのは、ハード面を含む建物の管理や運営を
しっかりと行うだけではなく、 いかに賃料や収益性を上げていけるの
長谷工ライブネットは、賃貸住宅
かというところにあると思います。築年数 が経過した物件では積極的
に内外装 の 効果的 なリニューアルを提案 するなど、投資家 や AM 会
に特化した PM 会社である。その受
託 ・ 運営実績(社宅代行事業含む)
は 2013 年 9 月 1 日時点で合計 9 万
1,866 戸。うち東京が 2 万 6,977 戸、
社に真に貢献できる PM 会社を目指していきます。
松山 浩 氏
賃貸管理事業部
資産マネジメント部 部長
また 当社 は 社宅代行事業 も 行っており、地方の 物件 を含め法人契約
の賃貸需要 を 効率的 に 取り込むことが 可能 です。実際、当社受託案
件では法人契約 の比率が 70 %近くを占めています。投資家の 皆様に
は、リーシングの部分で大きな力になれると自負しております。
関 西が 2 万 4,499 戸、社 宅 代 行 事
業で 4 万 戸 超の規 模を誇り、賃 貸
住宅 PM の最大手の一角を占めて
いる。J-REIT でのシェアをみても、
受託実績があるが、同事業で各都
る。また家賃の未収率も 1 %未満の
J-REIT が保有する住戸総計約 9 万
道府県の管理会社と提携しており、
水準にとどまるほか、AM 会社や投
2,000 戸(2013 年 9 月1 日時点)のう
こうしたネットワークも含めると、全国
資家へのレポーティングにおいても、
ち、同社シェアはその 15%強 ・ 約 1
どの都道府県においても受託が可
50 社以上の仕様に合わせた正確
万 4,000 戸に及んでいる。
能となっている。
かつきめ細かな対応を可能とするな
ここまで受託を伸ばした背景には
いくつかの同社独自の強みがある。
そのひとつは、PMとBM の機能を
ワンストップで提供できることだ。
ど、各業務の担当者が専門性を高
分業体制を機能させる独自の取組みで
投資家ニーズにきめ細かく対応
めることで、より質の高いサービス提
供につながっている。
こうした縦割り型の組織体制は、
グループで分
かつて BM 機能は、
組織構成で独自の体制を敷いて
AM や投資家にとって担当窓口を一
譲マンションの管理を手がける長
いることも、他の PM 会社にみられ
本化しにくく、コミュニケーションを図
谷工コミュニティ内にあった。
しかし
ない特徴と言える。
りにくいという弱みも生まれやすい。
PM 機能の強化を目指し、BM 機能
案 件あるいは物 件ごとに PM マ
しかし同社は分業体制の弊害を克
の一部を同社内に移管、
内製化を実
ネジャーを割り当て、建物管理や入
服する狙いから、資産マネジメント部
現させている。こうした背景から、設
居者対応、あるいはリーシングなど
を設立し、投資家への窓口としての
備などのハード面に明るい人材も社
を一人で対応させるのではなく、同
役割を果たした。また部署ごとの業
内に多い。建築士のほか、管工事
社では PM 業務ごとに専門特化し
務の隙間を埋めることで、効率性を
施工管理技士、土木施工管理技士
た組織として運営に当たる分業制を
重視しつつも、投資家 ・ AM サイド
などの有資格者も多数抱えている。
とることで、均一かつ効率的な PM
にとっても使い勝手の良い PM サー
業務のカバーエリアが広域である
サービスの提供が目指されている。
ビスを追求している。
ことも強みのひとつだ。東京、大阪
これにより、PM マネジャー個 人
PMとBM の機能を両立し、かつ
のほか、名古屋や福岡、仙台にも支
の能力に頼ることなく、受託面積の
円滑に機能する独自の分業化組織
店を有しており、支店をもつエリアで
増加に合わせた人材確保をしてい
でサービスを展開する同社は、投資
は他社に頼ることなく直接 PM を提
かなければならないわけでもないた
家からも熱い支持を受けており、今
供できる体制となっている。同社は
め、1,000 戸単位のバルク案件など
後も受託実績を大きく伸ばしていくと
社宅代行事業で全国 231 社からの
も即座に受け入れが可能となってい
思われる。
39
REPORT
PM 会社それぞれの個性と強み
ベスト・プロパティ
積極的 M&A が奏効
グループ連携力が PM受託に貢献
PM事業環境が好転
COMMENT
市況回復、稼働率向上
ここ 数年、 ビケンテクノが 積極的 に 進 めてきた M&A 戦略 に 具体的 な 成
果 が 現 れはじめています。不動産収益 アップに 対 しグループを 随所 に 活
ベスト・ プロパティは BM ・ FM
かせる 業務 プラットフォームの 存在 が、当社 の 大 きな 強 みだと 思 ってい
ます。 さらなる 成長 に 向 け 今後 もグループ 連携 を 一層高 めていきたい。
をコア事業とするビケンテクノ傘下、
PM 部門を担う戦略的子会社であ
る。受託資産のタイプはオフィスと住
居をメインに一部商業や物流倉庫、
不動産 サービスにおける 各分野 でシナジーが 見込 める M&A があれば 積
和田啓志
極的 に 取組 み、PM 会社 としてのアドバンテージを 高 めていきたい 考 え
氏 です。
取締役副社長
ホテルまで。エリアでは首都圏を中
心に関西圏、九州エリアをメインとし
成果を示せることは大きなアドバン
加盟する飲食 FC 事業者から社宅
ている。
テージとなっている。ファンド AM サ
関連業務を受託したり、当社 PM 物
同社取締役副社長である和田啓
イドの検討材料として最もアピール
件での店舗開発につながったケース
志氏は現下 PM 事業について「流
できる要素であり、実際レンダーや
もある。また、シンガポール ・ビケン
れが変わってきた」と語る。
「既存受
投資家に対して説明しやすい材料と
を窓口に日本国内で案件化したとい
託物件の売却が多くみられる一方、
して好評価をいただいている」(同
(同氏)。
う事例もあった」
新規受託にかなりの引き合いがでて
氏)。
このように、事業多角化に向けた
取組みが実を結んでいる同社だが、
きた。これを受けて当社ではスタッフ
を増員し体制を拡充したところだ」。
J-REIT や不動産ファンドに加え、一
般事業会社による不動産取引ニー
40
成長のカギ握る
“グループ連携力”
とりわけ案件受託拡大の鍵を握るの
はマイムコミュニティーの存在のよう
だ。同社のクライアント層には東証 1
ズが 活 発 化しており、新 規 PM 受
ベスト・ プロパティの業績好調の
部やジャスダックに上場する成長企
託機会が増えてきていることが要因
背景には、ビケンテクノグループ各
業が多く、平均的にみると5 年に 1
だ。これは投資市場ばかりではなく、
社の 連携力 が欠かせない。ビケ
回は事務所移転を検討しているとい
テナントマーケットにおいても好転の
ンテクノでは 2008 年 12 月に全国規
う。マイムコミュニティーでは各企業
兆しは現れてきている。
「賃料上昇
模で社宅管理代行を手掛けるマイム
総務部門に直接アクセスできる優位
までには至らないものの、企業増床
コミュニティ−を買収。また、ベスト・
性を活かしリーシング機会につなげ
ニーズの高まりを肌で感じる。傾向
プロパティにおいては 2011 年 12 月、
ているのである。また、各企業の直
は今年 3 月頃からみられはじめ、9
首 都 圏 のオフィス PM を手 掛ける
接の社員異動ニーズを把握している
月に入ってからさらに勢いを増して
ユーネックスを吸収合併。M & A 戦
ため、レジ ・リーシングにおいても
(同氏)。
いる」
略を積極展開してきた。さらにアジ
更なる相乗効果を目指していく。
「マ
同社の PM 受託物件数は約 240
ア拠点としてシンガポール ・ビケン
イムコミュニティーの現在の顧客数
棟。都心主要5区のオフィスビルの
を設立し海外事業展開も図るなど、
は 約 140 社。これを 300 社に拡 大
平均稼働率は 97 %に達する。回復
PM 受 託 規 模、事 業 領 域ともに拡
すれば、PM 会社としてさらに差別
が言われるなかでなお高い水準は、
大。これらグループ各社の連携力を
化し、マーケットプレゼンスを高める
競合との大きな差別化ポイントとし
高めることで、潜在的な顧客とPM
ことができる」と和田氏はグループ
て受託棟数増加につながっていると
ニーズの掘り起こしに成功している
のシナジー効果をさらに活かしてい
いうことだ。
「稼働率向上の具体的
のである。
「たとえば、ビケンテクノが
くとの展望を語った。
PROPERTY MANAGEMENT 2013 Nov.
P40