たなか醫院診聞

たなか醫院診聞 148 号
『現代のベートーベン』と呼ばれる日本人がいる。佐村河内守(サムラゴウチ マ
2013.4.1 発行
新しい年度が始まりました。昨日盛岡はちらちらと粉雪。今朝も零下一度。三月の
モル)、49歳。14年前に原因不明の病で両耳の聴力を失いながら、クラシック作
品の中で最も困難とされる交響曲を書き上げた。現存作曲家の交響曲が演奏される事
がほとんどない中、彼の「交響曲第一番“HIROSHIMA”」は、広島、東京、
四日。それまでの厳しい冬の終わりを祝うかのようなポカポカ陽気。思わずズボン下
京都、大阪など5回も演奏されただけでなく、一昨年発売されたCDは、音楽チャー
を脱いだところ、八日には吹雪。なんとも気まぐれな春です。
トでTOP10入りを果たしJ-POPと上位を競うなど、“偉業”とも言える空前
のヒットを記録した。そんな彼が、今取り組んでいるのは、東日本大震災の被災者へ
今月は日曜夜9時からのNHK{NHKスペシャル}の御紹介。まず初めは、被爆
向けたピアノ曲「レクイエム」。彼の曲に勇気づけられたと、多くの被災者から声が
二世で、二十歳前に音を無くし、絶え間ない低い大きな耳鳴りに悩まされ、その雑音
届いたことを受け、“鎮魂”の思いを強く願うようになったのだ。しかし、震災を体
の向こうから聞こえる旋律を拾い出す若い作曲家の話。TVに映るだけでも数種類の
験した訳でもない自分に、納得できる鎮魂曲が作れるのか…。被災地を訪ね、被災し
薬を飲み、時に歩行もできず、オムツをあてがうことも。そこから生まれる音は硬い
た人たちとの交流を深めるなど、佐村河内の格闘の日々が続いている。』
岩盤から浸み出る水の様。早速CDを買い求めます。
3.11 あの日から2年
魂の旋律
わが子へ
~音を失った作曲家~
~大川小学校 遺族たちの2年~
この3月11日大震災と原発事故から丸二年が経ちました。TVにも新聞にも、こ
れでもかこれでもかという、「頑張る」「希望」「負けない」「絆」「心ひとつに」
という文字が踊り、どこか違和感を持って聞いたり読んだりしたのは私だけだったで
しょうか?厳しい現実がまだ続いている中での美辞麗句は、危険でさえある。そんな
運命の一枚
~"戦場"
戦場"写真 最大の謎に挑む~
中で、このドキュメントは、重い課題を背負った、教師である息子を津波で失い、同
時に子供達を校庭に集め、多くを失った責めを負う老夫婦や、孫を助けることのでき
なかった老人の悔やんでも悔やみきれない日々を、誰かに責任を求めるでもなく、し
っかりと腰を据えて見つめている番組でした。
『巨大津波によって全校児童108人のうち70人が亡くなり、4人の行方が今も
わかっていない、石巻・大川小学校。学校の管理下で唯一、多くの犠牲者を出した“震
災最大の悲劇”といわれている。NHKは、震災半年後に放送したクローズアップ現
代「巨大津波が小学校を襲った」の後も、深い悲しみを背負った遺族の日々を見つめ
続けてきた。子どもという「希望」を失った家族や地域が、再生への一歩を模索して
いる姿を記録し、この大災害が人々に何をもたらしたのか後世に伝えるべきだと考え
たからである。番組では大川小学校の遺族の2年の月日を見つめる。』
『これは、作家沢木耕太郎さんの取材と思索を軸に、テレビ60年にふさわしい映像
表現・分析手法を駆使して、現代史の謎に迫るドキュメンタリーである。
確か、青森出身で写真家沢田教一のベトナム戦争に関する講演を、名古屋から外
戦争報道の歴史の中で、最大の謎と言われる一枚の写真がある。「最も偉大な戦場カ
れた瀬戸の街まで聴きに行ったのは、高校三年生の時のような気がします。以来、同
メラマン」と称されるロバート・キャパ(1913-54)が、スペイン内戦のさな
じ戦争写真家R.キャパを何となく知り、何となく気になっていました。今回の、N
かに撮った「崩れ落ちる兵士」である。銃弾によって身体を撃ち抜かれた兵士の「死
HKの番組相前後して(本の方が先に世に出ていたのですが)沢木耕太郎『キャパの
の瞬間」を捉えたとされるこの写真は、フォトジャーナリズムの歴史を変えた傑作と
十字架』を、読みました。色々伝えたいことはあるのですが、一応「消化器内科医」
され、それまで無名だったキャパを時代の寵児に押し上げた。だが、この「奇跡の一
(特に内視鏡をするものとして)、あるいは科学に身を置くものとして、一枚の写真
枚」は、真贋論争が絶えない「謎の一枚」でもあった。ネガは勿論、オリジナルプリ
(そこにあるもの)の凝視、新しい発見、仮設、その証明、結論といった手順の大切
ントもキャプションも失われており、キャパ自身も詳細について確かなことは何も語
さ、精密さに驚かされます。この番組は、更にコンピューターを駆使し更にその仮説、
らず、いったい誰が、いつ、どこで撃たれたのか全く不明なのだ。
実証へと導いてくれます。
キャパに魅せられた沢木耕太郎氏は、20年近くこの謎を追い続け、今意外な「真実」
にたどり着こうとしている。それは、自殺願望があると噂されるほど危険な最前線に
沢木耕太郎 推理ドキュメント
赴き、ついに戦場で命を落とすことになったキャパの「人生の秘密」を解き明かすも
のでもあった。』