いろいろな運動 1. 自由落下 2. 投げ上げ 3. 放物運動 4. 標的にボールを当てる 5. 斜面に向かって投げ上げる 6. ブレーキをかけた自動車 7. 摩擦のある斜面上を滑り落ちる物体 8. ばね振り子(単振動) 9. 摩擦を受けるばね振り子 10. 補足:微分方程式の解き方 自由落下 質量 m の質点を高さ h の地点から初速 0 で落とした.鉛直上向きを z 軸正 z の向き,地表を原点とし,重力加速度の大きさを g とする.ただし,空気による抵 mg 抗は無視できるものとする. (1) z 軸方向の質点の運動方程式を立てよ. (2) (1)の微分方程式の一般解(z および dz/dt)を求めよ.ただし,任意定数は適宜定めよ. (3) (2)の一般解に初期条件(t=0 で z=h, dz/dt=0)を適用して,特解(この問題の題意を満たす 解,z および dz/dt)を求めよ. (4) 地上に達するまでに要する時間と地上に達したときの速度を求めよ. この問題の(1)から(3)は(4)を解くための導入になっている.(4)を解くためということであれば,高 校物理で「公式」を覚えてきた人にとっては,簡単な問題をわざわざ面倒な方法で解いていると思 われるかもしれない.しかし,さらに発展した,「公式」では解けないような問題を解くためには,この (1)から(3)の手順が必要になってくるのである.この問題の目的は,単に地上に達したときの速度 を求めることではなく,力学の問題を解く手順を簡単な問題を扱うことを通して習得することである. なお,地上に達したときの速度を求めるには,力学的エネルギー保存則を用いる方が簡単であ る. r r (1) 位置座標を r = ( x, y, z ) ,外力を F = Fx , Fy , Fz とすると,運動方程式は r d 2r r =F d 2t ( ) である.この式は一見 1 つの式のようであるが,ベクトルの式であるから,一般的には 3 つの式 を意味している.すなわち, d2 x d2 y d2 z m 2 = Fx , m 2 = Fy , m 2 = Fz dt dt dt である.さて,運動方程式を立てるために初めに行うべきことは,対象となっている物体に作用 する力を過不足なく書き出しておくことである.空気抵抗を無視すると,どんなに高速で落下し ても空中を落下している質点に作用しているのは重力だけである.すなわち,この場合の外力 r r F は重力 W だけである.重力は z 軸に対して負の向きである点に注意すれば,重力は r W = (0,0,−mg ) であるか,運動方程式は次のようになる. m d2 z = − mg dt 2 ついでに,速度に比例する空気抵抗があるとした場合にはどのようになるかを見ておこう. たったこれだけのことが加わっただけでも,高校で習った「公式」はもう使えなくなってしまう.運 r 動方程式の右辺に空気抵抗 f の項を加えてやるだけでよい.空気抵抗の比例定数をηと 1 r r ⎛ dz ⎞ dz する.空気抵抗 f は常に速度 と逆向きであるから負符号が付いて f = ⎜ 0,0,−η ⎟ とな dt ⎠ dt ⎝ る.したがって,速度に比例する空気抵抗がある場合の運動方程式は次のようになる. m d2 z dz = − mg − η 2 dt dt この微分方程式は単に積分するだけで解くことは出来ない([補足]参照)が,次第に速度 を増すため空気抵抗も大きくなり,終いに空気抵抗が重力とつり合い一定速度で落下する 状態になる.そのときには, − mg − η dz =0 dt のつり合いが成り立つ.このときの速度 vt = − mg η を終端速度という. これから先は,全問に対してこのような例を取り上げることはしないが,公式で解けない問題 はいくらでも出てくるということを理解していただきたい.なお,この微分方程式の解法について は,のこと. (2) 力学の運動方程式は数学的には微分方程式になっている.この微分方程式を解くにはど うしたらよいか? 一般にはいろいろな解き方があるが,この場合には単に積分してやるだけ でよい. 運動方程式の両辺を m で割って整理すると d2 z = −g dt 2 この式から,加速度が一定になるので,等加速度運動であることがわかる.これを1回積 分すれば,任意(積分)定数を c1 , c2 として 1 dz = − gt + c1 , z = − gt 2 + c1t + c2 2 dt これが求める一般解である.(3) (2)の一般解に初期条件を入れると, c1 = 0, c2 = h したがって, 1 dz = − gt , z = − gt 2 + h 2 dt こうして,高校で習う「公式」が導出できたわけである. (4) 地上に達したときは z=0 であるから, 1 0 = − gt 2 + h 2 2 より t=± 2h g t>0 であるから,地上に到達するまでに要する時間は t= 2h g また,このときの速度は dz 2h = −g = − 2 gh dt g となる.負符号は,速度の向きが下向きであることを示している. なお,初めにも書いたように,地上に達するときの速度は,力学的エネルギー保存則を用 いると容易に得られる.すなわち,高さ h と地上での力学的エネルギー(運動エネルギー+位 置エネルギー)が一定であるから, 1 0 + mgh = mv 2 + 0 2 ∴ v = 2 gh 向きを考慮すれば v = − 2 gh となる.しかし,この方法も抵抗がある場合には使えない.抵抗は保存力(2 点間を移動する ときにする仕事が途中の経路に依らないような力)でないため,力学的エネルギーが保存さ れないのである. 3 投げ上げ 質量 m の質点を地表から初速 v0 で真上に投げ上げた.鉛直上向きを z 軸正 z の向き,地表を原点とし,重力加速度の大きさを g とする.ただし,空気による抵 抗は無視できるものとする. mg (1) z 軸方向の質点の運動方程式を立てよ. (2) (1)の微分方程式の一般解(z および dz/dt)を求めよ.ただし,任意定数は適宜定めよ. (3) (2)の一般解に初期条件(t=0 で z=0, dz/dt= v0)を適用して,特解(z および dz/dt)を求め よ. (4) 到達できる高さと地表に再び落ちて来るまでに要する時間を求めよ. (1) 図を見てわかるように,質点に作用する力は自由落下の場合と同じである.したがって,運 動方程式も同じである. d2 z m 2 = − mg dt (2) 微分方程式が同じであるから,一般解も同じである. dz 1 = − gt + c1 , z = − gt 2 + c1t + c2 2 dt (3) 初期条件が違うので,特解は違ってくる.自由落下と投げ上げの違いは初期条件が違う だけである.(2)の一般解に初期条件(t=0 で z=0, dz/dt= v0)を入れると, c1 = v0 , c2 = 0 したがって,特解は次のようになる. dz 1 = − gt + v0 , z = − gt 2 + v0t 2 dt (4) (3)で得られた特解から 2 1 1 ⎛ v ⎞ v2 z = − gt 2 + v0t = − g ⎜⎜ t − 0 ⎟⎟ + 0 2 2 ⎝ g ⎠ 2g v0 v0 2 したがって, t = のときに z は最大値 z = となる.これが到達できる高さである. g 2g また,再び地表に落ちて来るまでに要する時間は 1 0 = − gt 2 + v0t 2 で,t≠0 より t= 4 2v0 g となる.最高点に達するまでに要する時間の 2 倍となっている. 類似の問題に投げ下ろしがあるが,扱い方はまったく同じであることは理解できるだろう. 5 放物運動 質量 m のボールを水平となす角がθとなるように右斜め上方 z に初速 v0 で投げた.ボールの運動する面内で,水平方向右向き を x 軸正の向き,鉛直上向きを z 軸正の向きとし(投げた地点を θ 原点とする),重力加速度の大きさを g とする.ただし,空気抵抗 mg x は考えないでよい. (1) ボールの運動方程式(x 軸方向と z 軸方向)を立てよ. (2) 初速の x 成分を v0x ,z 成分を v0z として(1)の運動方程式を解け. (3) ボールの軌跡を求めよ. (4) 到達距離が最大になるときのθを求めよ. (5) ボールを 100 m 遠方まで投げるのに必要な初速を求めよ.ただし,重力加速度の大きさを 9.8 m/s2 とする. r (1) 放物運動でも,ボールに作用している力は重力だけで F = (0,0,− mg ) ある.したがって,z 軸 方向の運動方程式は自由落下の場合と同じである.また,x 軸方向については,力が作用 しないので,等速度運動となる.(慣性の法則) m d2 x = 0 ・・・① dt 2 m d2 z = − mg ・・・② dt 2 すなわち,放物運動は,x 軸方向の等速度運動と z 軸方向の自由落下運動の合成である. なお,自由落下や鉛直方向への投げ上げ・投げ下ろしの場合でも水平方向への運動方程 式を立てることは可能である.初期条件を入れて解くと,ずっと静止(すなわち x=0)している, という解が得られるはずである.投げ上げのところで,運動方程式は自由落下と同じになると 書いたが,実は放物運動までも同じ運動方程式になる.すなわち,重力の作用だけを受ける 運動の微分方程式はすべて同じとなる. (2) ①より dx = v0 x (一定), x = v0 x t ・・・③ dt ②より 1 dz = − gt + v0 z , z = − gt 2 + v0 z t ・・・④ dt 2 (3) ボールの軌跡は③④より t を消去して, 6 2 1 ⎛ x ⎞ x ⎟⎟ + v0 z z = − g ⎜⎜ 2 ⎝ v0 x ⎠ v0 x ⎛ v v ⎜ x − 0x 0z =− 2 ⎜ g 2v0 x ⎝ g 2 ⎞ v0 z 2 ⎟⎟ + 2g ⎠ ⎛v v v 2 ⎞ これは,頂点を ⎜ 0 x 0 z , 0 z ⎟ とする上に凸の放物線である. ⎜ g 2 g ⎟⎠ ⎝ (4) v0 x = v0 cos θ , v0 z = v0 sin θ であるから,到達距離 L は L= = 2v0 x v0 z g 2v0 cos θ sin θ g 2 v sin 2θ = 0 g 2 したがって,L は 2θ=π/2,すなわち,θ=π/4(45°)の時に最大値 v02/g となる. (5) 100 m 遠方まで投げるのに必要な初速は,L が最大となる条件で投げたときで考えればよ い.(4)の結果を用いれば, 2 v 100 = 0 g したがって v0 = 100 × 9.8 ≅ 31.3 m となる. 7 標的にボールを当てる 質量 m のボールを水平となす角がθとなるように右斜め上方 z に投げ,水平距離 s,高さ h のところにある標的に当てるための初 速 v0 を求めたい.ボールの運動する面内で,水平方向右向きを θ mg h x 軸正の向き,鉛直上向きを z 軸正の向き(投げた地点を原点) とする.重力加速度の大きさを g とし,空気抵抗は考えない. x s (1)ボールの運動方程式(x 軸方向と z 軸方向)を立てよ. (2)初速度の x 成分を v0x,z 成分を v0z として(1)の運動方程式を解け. (3)ボールが標的に当たるための初速度の x 成分(v0x)と z 成分(v0z)を求めよ. (4)ボールが標的に当たるための初速(初速度の大きさ)を求めよ. (1)と(2)は前問とまったく同じである. (1) d2 x m 2 =0 dt m (2) d2 z = − mg dt 2 dx = v0 x , x = v0 x t ・・・① dt 1 dz = − gt + v0 z , z = − gt 2 + v0 z t ・・・② 2 dt (3) ①②に x = s, z = h を代入し,連立方程式として v0x について解けばよい.ここで未知数は t , v0 z , v0 x になるが, v0 z = v0 x tan θ の関係を用いれば未知数が 2 つとなり解ける. v0 x = s g 2 (s tan θ − h ) したがって, v0 z = v0 x tan θ = s tan θ (4) v0 = v0 x 2 + v0 z 2 = 8 s cos θ g 2(s tan θ − h ) g 2(s tan θ − h ) 斜面に向かって投げ上げる 水平面と角θをなす斜面上で,斜面の高くなる方に向かって z 質量 m のボールを投げた.ボールの初速を v0,投げた方向と斜 面とのなす角をαとする.投げた地点を原点とし,水平右向きを x 軸正の向き,鉛直上向きを z 軸正の向きとする. α mg θ X x (1)重力加速度の大きさを g として,ボールの運動方程式(x 軸 方向と z 軸方向)を立てよ. (2) (1)の運動方程式を解け. (3) 斜面の形状(直線)を x,z,θで表せ. (4) ボールの到達点の x 座標を求めよ. (5) 到達距離 X の最大値とそのときの角αを求めよ. 初速度の x 成分を v0x,z 成分を v0z とすれば,(1)と(2)は前問とまったく同じである. (1) m d2 x =0 dt 2 d2 z m 2 = − mg dt (2) dx = v0 x , x = v0 x t dt dz 1 = − gt + v0 z , z = − gt 2 + v0 z t 2 dt (3) 斜面の形状は, z = x tan θ (4) ボールの到達点は,ボールの軌跡と斜面の形状を連立すれば求められる. ボールの軌跡は放物運動で扱ったように 2 1 ⎛ x ⎞ x ⎟⎟ + v0 z z = − g ⎜⎜ 2 ⎝ v0 x ⎠ v0 x であるから,斜面の形状を表す式と連立させると 2 1 ⎛ x ⎞ v0 z ⎟ + x tan θ = − g ⎜⎜ x 2 ⎝ v0 x ⎟⎠ v0 x ここで x≠0 とすると 9 x= = 2v 0 x g ⎛ v0 y ⎞ 2v 0 x v 0 y 2v 0 x 2 ⎜⎜ − tan θ ⎟⎟ = tan θ − v g g ⎝ 0x ⎠ 2 2 [ 2v 0 sin (θ + α )cos(θ + α ) − cos 2 (θ + α ) tan θ g ] 2v cos(θ + α ) [sin (θ + α )cosθ − cos(θ + α )sin θ ] = 0 g cosθ 2 = 2v0 cos(θ + α )sin α g cosθ 2 2 v = 0 [sin (2α + θ ) − sin θ ] g cos θ (5) 到達距離 X は 2 v0 [sin (2α + θ ) − sin θ ] X= g cos 2 θ であるから,2α+θ=π/2 のとき,すなわち, α= π 4 − θ 2 のとき,最大値 2 X max v0 (1 − sin θ ) = g cos 2 θ となる. 下り斜面の場合も斜面の形状を表す式が変わるだけで,同様に扱うことが出来る. 10 ブレーキをかけた自動車 速さ v0 で走っている質量 m の自動車が急ブレーキをかけた.止ま z るまでに滑る距離を以下の手順で求めよ.ただし,動摩擦係数をμ, 自動車 v0 垂直抗力を N,重力加速度の大きさを g とし,自動車の進行方向 を x 軸正の向き,路面に垂直上方を z 軸正の向きとする.なお,空 x 気の抵抗などは無視できるものとする. (1) 右図の□を自動車とみなし,走っている自動車に作用している力を過不足なく書き込み, その力の名称(「重力」など)を書き込め. (2) x 軸方向および z 軸方向の運動方程式を立てよ. (3) (2)で立てた x 方向の運動方程式の一般解(x および v=dx/dt)を求めよ.ただし,積分定 数は適宜定めよ. (4) x 方向の運動方程式に初期条件を適用したときの解を求めよ. (5) 自動車が止まるまでに要する時間 T を求めよ. (6) 自動車が止まるまでに滑る距離 X を求めよ. この問題,高校生だと「公式」を使って,あっという間に解いてしまうが,それでは意味がない. 発展性を考えて大学生らしく解いてみよう. (1) 力学問題を解くときの基本.まずは対象となっているものに作 用している力を書き出すことである. r (2) ここでは外力が F = (− μN ,0, N − mg ) であるから x 軸方向: m d2 x = − μN dt 2 z 自動車 垂直抗力 v0 摩擦力 重力 x d2z z 軸方向: m 2 = N − mg dt (3) z 軸に関する運動方程式で,「自動車は路面上を走る」という暗黙の束縛条件から N − mg = 0 が得られる.これを用いて d2 x = − μg dt 2 これは,自由落下の式の重力加速度 g にμがかかっただけである.あとは単に積分すれ ば一般解が得られる. dx = − μgt + C1 dt 11 1 x = − μgt 2 + C1 ⋅ t + C2 2 (4) dx = − μgt + v0 ・・・① dt 1 x = − μgt 2 + v0 ⋅ t ・・・② 2 (5) dx =0 となったときの時刻を求めればよいから, dt T= v0 μg なお,①,②式が成り立つ t の範囲は 0≤t ≤ v0 μg である.これ以降に①,②式を適用すると,走ってきたのとは逆向きに走り出すという妙なこと が起きることになってしまう. (6) (5)で求めた T を(4)の解に代入して 2 v0 v0 2 1 ⎛ v0 ⎞ ⎟ + v0 ⋅ X = − μg ⎜⎜ = 2 ⎝ μg ⎟⎠ μg 2 μg 12 摩擦のある斜面上を滑り落ちる物体 質量 m の物体が傾角θの斜面を速さ v0 で滑り降りている.斜 y 面に沿って下向きを x 軸正の向き,斜面に垂直上方を y 軸正の 向き,垂直抗力を N とし,空気の抵抗などは無視できるものとす る. θ x (1) 右図で物体に作用している力を過不足なく書き込み,その 力の名称(「重力」など)を書き込め. (2) x 方向,y 方向の運動方程式を立てよ. (3) この運動の束縛条件を示せ. (4) 物体が減速して停止するための条件を求めよ. (5) (2)で立てた x 方向の運動方程式の一般解(x および v=dx/dt)を求めよ.ただし,積分定数 は適宜定めよ. (6) (2)で立てた x 方向の運動方程式の初期条件(t=0 で x=0 とする)を満たす解を求めよ. (7) 物体が停止するまでに滑り降りる距離 L を求めよ. (1) または 垂直抗力 y y 抗力 摩擦力 重力 重力 θ x θ x 直接的に作用しているということでは,抗力だけ書き込むべきだと思うが,後の解析を考え ると軸方向に分解しておくのも悪くはない. r r (2) 作用している外力 F は F = (mg sin θ − μN , N − mg cosθ ) であるから,運動方程式は x 軸方向: m d2x = mg sin θ − μ N dt 2 d2 y y 軸方向: m 2 = N − mg cosθ dt (3) y = 0 x 軸方向の運動方程式に束縛条件を入れて整理すると, d2 x = g (sin θ − μ cos θ ) dt 2 となる.右辺は一定になっていることから,これも等加速度運動であり,傾きθの斜面上では, 自由落下に比べて (sin θ − μ cos θ ) 倍された加速度(g より小さい)で運動することを示してい る. 13 (4) g (sin θ − μ cos θ ) < 0 ∴ μ > tan θ (5) dx = g (sin θ − μ cosθ )t + C1 dt x= g (sin θ − μ cos θ )t 2 + C1 ⋅ t + C2 2 (6) C1 = v0 , C2 = 0 となるから dx = g (sin θ − μ cosθ )t + v0 dt g x = (sin θ − μ cosθ )t 2 + v0t 2 (7) dx =0 dt となる時刻は t= v0 g (μ cos θ − sin θ ) したがって 2 ⎛ ⎞ v0 g v0 L = (sin θ − μ cos θ )⎜⎜ ⎟⎟ + v0 2 g (μ cos θ − sin θ ) ⎝ g (μ cos θ − sin θ ) ⎠ 2 = 14 v0 2 g (μ cos θ − sin θ ) ばね振り子(単振動) 水平に置かれたばね定数が k のばね振り子で,水平方 向右向きを x 軸とし,ばねが自然長のときのおもりの位置 を x=0 とする. x (1) おもりに作用する力 F はどのように表されるか.ただし,ばね定数を k とし,力の向きを考 慮すること. (2) おもりの質量を m として,このばね振り子の運動方程式を書け. (3) (2)の運動方程式(微分方程式)の一般解を求めよ.ただし,積分定数は適宜定めよ. (4) t=0 のとき x=x0,dx/dt=0 の初期条件の下で,(2)の運動方程式の特解を求めよ. (5) (4)のときの振幅 A と周期 T を示せ. (6) このばねの弾性力のポテンシャル U(x) を求めよ. (7) 一般に,単振動するおもりに対して,力学的エネルギー保存則が成り立つことを示せ. (1) ばねによる弾性力は変位 x に対して 0 に戻そうとする復元力になるから F = − kx r (2) F = (− kx,0,0) であるから,運動方程式は m d2 x = − kx dt 2 (3) (2)の微分方程式を整理すると d2 x + ω2x = 0,ω = 2 dt k m ここで,解が指数関数になると仮定して, x = eγt を代入すると 2 dx γt d x = γe , 2 = γ 2 eγt dt dt となるから γ 2 eγt + ω 2 eγt=0 ∴γ 2 + ω 2=0 :特性方程式 この 2 次方程式の解は, γ= ± iω であるから一般解は x = C1e iω + C2 e −iω = C1 (cos ωt + i sin ωt ) + C2 (cos ωt − i sin ωt ) = (C1 + C2 )cos ωt + i (C1 − C2 )sin ωt ここで i (C1 − C2 ) = A2 , C1 + C2 = A1 と置けば x = A1 cos ωt + A2 sin ωt となる.さらに,三角関数の合成を用いると 15 x = A12 + A2 2 sin (ωt + δ ), δ = tan A1 A2 A12 + A2 2 = A と置けば,一般解として ここで x = A sin (ωt + δ ) と書くこともできる. (4) t=0 のとき x=x0 より A1 = x0 t=0 のとき dx/dt=0 より A2ω = 0 したがって,初期条件を満たす特解は x = x0 cos ωt となる. (5) 振幅 A と周期 T は A = x0 T= 2π = 2π ω k m となる. (6) 自然長の状態を基準点とすると,弾性力を x から 0 まで積分すればよいから, U ( x ) = ∫ (− kx )dx 0 x 1 = kx 2 2 となる. (7) おもりの運動エネルギーK および位置エネルギー(ポテンシャル)U は 1 2 1 ⎛ dx ⎞ mω 2 2 k K = mv = m⎜ ⎟ = A cos(ωt + δ ) = A2 cos 2 (ωt + δ ) 2 2 ⎝ dt ⎠ 2 2 1 k U = kx 2 = A2 sin 2 (ωt + δ ) 2 2 2 したがって,力学的エネルギーE は E = K +U = = となる. 16 k 2 k A cos 2 (ωt + δ ) + A2 sin 2 (ωt + δ ) 2 2 k 2 A :一定 2 摩擦を受けるばね振子 水平な床の上にある質量 m のおもりがばね定数 k のばねにつながれ,ばねの他端は壁に固 定されている.床とおもりの間の動摩擦係数をμ,静止摩擦係数をμ0 とし,重力加速度の大きさを g とする.また,ばねが自然の長さのときの位置を原点として水平右向きに x 軸をとる.おもりを原 点から x0 だけ引き伸ばした後,t=0 でそっと手を離したときのおもりの運動を調べよ. k m x O 抵抗を受けて振幅を減らしながら振動するが,速度の向きが変化するときには一瞬静止状態と なるため引き続き運動し続けるか否かについては静止摩擦係数で制限され,そのときの変位の絶 対値が μ0mg/k よりも小さくなった場合にはその位置で静止することになる. まさつ力は運動の向きと逆向きに作用するから運動方程式は次のように dx/dt の符号により異な ったものとなる. d2 x dx = − kx + μmg for < 0 2 dt dt (1) d2 x dx m 2 = − kx − μmg for > 0 dt dt (2) m (ⅰ) 0 ≤ t ≤ π ω 初期位置 x0 のとき, x0 > μ0 mg k であればおもりは壁に向かって動き始める(dx/dt<0).式(1)を整理すると d2 x μmg ⎞ k k⎛ = − x + μg = − ⎜ x − ⎟ 2 dt m m⎝ k ⎠ (3) となる.ここで, y = x− μmg k (4) と置くと,式(3)は 17 d2 y = −ω 2 y 2 dt (5) ここに, k m ω= となる.これは単振動を表す微分方程式であるから,その一般解は y = A sin ωt + B cos ωt (6) となる.ここに,A,B は任意定数である.したがって,微分方程式(1)の一般解は x = A sin ωt + B cos ωt + μmg (7) k また, dx = ωA cos ωt − ωB sin ωt dt (8) となる.初期条件 t=0 で x=x0,dx/dt=0 より x0 = B + μmg 0 = ωA (9) k (10) ∴ A = 0, B = x0 − μmg k したがって,式(1)の特解は μmg ⎞ μmg ⎛ x = ⎜ x0 − ⎟ cos ωt + k ⎠ k ⎝ (11) μmg ⎞ dx ⎛ = −ω ⎜ x0 − ⎟ sin ωt k dt ⎝ ⎠ となる.dx/dt=0 となるのは (n = 0,1,2,L) ω t = nπ , (12) (13) のときから,t がπ/ω ごとに dx/dt の符号が変化する.したがって,式(1)の特解が満たされるのは t=0~π/ω の範囲である.t= π/ω のとき μmg ⎞ μmg ⎛ x = −⎜ x0 − ⎟+ k ⎠ k ⎝ 2μmg μ mg = − x0 < − 0 k k すなわち, 18 x0 > mg (2μ + μ0 ) k (14) であれば振動運動が続く. (ⅱ) π 2π ≤t ≤ ω ω 式(2)を整理すると k k⎛ μmg ⎞ d2 x = − x − μg = − ⎜ x + ⎟ 2 m m⎝ k ⎠ dt (15) となる.ここで, y= x+ μmg (16) k と置くと,式(15)は d2 y = −ω 2 y 2 dt (17) ここに, ω= k m となる.これは単振動を表す微分方程式であるから,その一般解は y = A' sin ωt + B ' cos ωt となる.ここに,A’,B’は任意定数である.したがって,微分方程式(2)の一般解は x = A' sin ωt + B' cos ωt − ∴ μmg (18) k dx = ωA' cos ωt − ωB ' sin ωt dt (19) となる. t=π/ω における式(11),(12)との接続条件を用いれば 2 μmg μmg − x0 = − B'− k k 0 = −ωA' (21) ∴ A' = 0, B ' = − (20) 2 μmg μmg 3μmg + x0 − =− + x0 k k k したがって,t=π/ω ~ 2π/ω の範囲における式(2)の特解は 3μmg ⎞ μmg ⎛ x = ⎜ x0 − ⎟ cos ωt − k ⎠ k ⎝ (22) 19 dx 3μmg ⎞ ⎛ = −ω ⎜ x0 − ⎟ sin ωt dt k ⎠ ⎝ (23) となる.t=2π/ω のとき 3μmg ⎞ μmg 4 μmg μ0 mg ⎛ = x0 − > x = ⎜ x0 − ⎟− k ⎠ k k k ⎝ すなわち x0 > mg (4μ + μ0 ) k (24) であれば振動運動が続く. (ⅱ) 2π ω ≤t ≤ 3π ω 式(1)の一般解,式(7)に t=2π/ω における式(22)(23)との接続条件を適用する.t=2π/ω のと き x0 − 4 μmg μmg =B+ k k 0 = ωA (26) (25) より A = 0, B = x0 − 5μmg k (27) したがって,t=2π/ω~3π/ω の範囲の式(1)の特解は 5μmg ⎞ μmg ⎛ x = ⎜ x0 − ⎟ cos ωt + k ⎠ k ⎝ (28) dx 5μmg ⎞ ⎛ = −ω ⎜ x0 − ⎟ sin ωt dt k ⎠ ⎝ (29) ∴ となる.以下,同様に t=nπ/ω のときの変位の絶対値がμ0mg/k 以下になるまで振動運動が続く. 20 x μmg ⎞ μmg ⎛ x = ⎜ x0 − ⎟ cos ωt + k ⎠ k ⎝ π ω μmg 5μmg ⎞ ⎛ x = ⎜ x0 − ⎟ cos ωt + k ⎠ k ⎝ 3π ω 2π ω t dx 3μmg ⎞ ⎛ = −ω ⎜ x0 − ⎟ sin ωt dt k ⎝ ⎠ 21 補足:微分方程式の解法 抵抗を受けながら落下する場合の運動方程式 d 2z η dz = −g − ・・・① 2 m dt dt の解き方(t=0 で z=v=0 とする) η dz の項がなければ,単に積分するだけで z(一般解)を求めることが出来るが,このように z dt の 1 階微分が入っている場合にはどのようにして解けばよいだろうか.いくつかの方法があるが, ここでは2つだけ紹介することにしよう. v= dz として v に関する 1 階微分方程式とする方法 dt v= dz を用いて整理すると,①は dt η⎛ dv m ⎞ = − ⎜⎜ v + g ⎟⎟ η ⎠ dt m⎝ と書き直せる.ここで V = v + m η g とおくと, dV dv であるから = dt dt η η dV dV =− V , = − dt :(変数分離型) dt m V m 両辺を積分すれば dV ∫V = −∫ η m dt , ∴ ln V = − η m t + C1 , C1 :任意定数 したがって, ⎛ η ⎞ ⎛ η ⎞ ∴V = C2 exp⎜ − t ⎟ , V = exp⎜ − t + C1 ⎟, ⎝ m ⎠ ⎝ m ⎠ 元の v に戻すと v =V − ⎛ η ⎞ m g = C2 exp⎜ − t ⎟ − g η ⎝ m ⎠ η m 初期条件から C2 = v= η g となるから m ⎡ ⎛ η ⎞ ⎤ g exp⎜ − t ⎟ − 1 η ⎢⎣ ⎝ m ⎠ ⎥⎦ もう一回積分すると 22 m C2 = ±e C1 :任意定数 z= m ⎡ m ⎛ η ⎞ ⎤ g ⎢− exp⎜ − t ⎟ − t ⎥ + C3 , C3 :任意定数 η ⎣ η ⎝ m ⎠ ⎦ 初期条件より C3 = m2 g η2 したがって,解は m2 ⎡ ⎛ η ⎞⎤ m z = 2 g ⎢1 − exp⎜ − t ⎟⎥ − gt η ⎣ ⎝ m ⎠⎦ η となる. 定数係数 2 階線形常微分非斉次方程式として解く方法 ①を整理すると d 2 z η dz + +g =0 dt 2 m dt この微分方程式の特解を求める. η dz m dt +g =0 より z=− mg η t が特解となる. 一方,この微分方程式の斉次方程式は d 2 z η dz + =0 dt 2 m dt となる.この斉次方程式の特性方程式 γ2+ η m γ =0 より γ = 0,− η m したがって,斉次方程式の一般解は ⎛ η ⎞ z = C1 + C2 exp⎜ − t ⎟ ⎝ m ⎠ 23 となるから,もとの非斉次方程式の一般解は,この斉次方程式の一般解と特解の和とな る. ⎛ η ⎞ mg z = C1 + C2 exp⎜ − t ⎟ − t ⎝ m ⎠ η また, dz η ⎛ η ⎞ mg = − C2 exp⎜ − t ⎟ − dt m ⎝ m ⎠ η であるから,これらの式に初期条件を入れると C1 + C 2 = 0 − η m mg C2 − η =0 すなわち, C1 = m2 g η2 , C2 = − m2 g η2 したがって求める解は z= = となる. 24 m2 g η 2 − m2 g η 2 ⎛ η ⎞ mg t exp⎜ − t ⎟ − ⎝ m ⎠ η m2 g ⎡ ⎛ η ⎞⎤ mg t 1 − exp⎜ − t ⎟⎥ − 2 ⎢ η ⎣ ⎝ m ⎠⎦ η
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